説明

靴及び靴の締付け方法

【課題】靴紐を結ぶ動作のみにより、靴紐の締付けのみでは得られない足のフィット性、ホールド性を得ることができる靴及び靴の締付け方法を提供すること。
【解決手段】靴紐50を緊張させて甲被20を締め付けるタイプの靴において、基端部が左右の甲被羽根部22a、22bの内側において靴底部10に連結され、自由端部に靴紐50を通し得るリング43を有する左右一対の補助締付け部材40a、40bと、左方及び右方の補助締付け部材40a、40bのリング43を通すための、右方及び左方の甲被羽根部22b、22aそれぞれのリング通し開口44とを設ける。靴紐50を、靴紐通し孔23と各リング43とに通して緊張させることにより、靴紐50による締め付けに加えて、左右の補助締付け部材40a、40bによって足の甲部を部分的に締め付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足の甲部あるいは内外側部等に対するフィット性、安定性等を一層高めることができる靴紐締付けタイプの靴と、靴紐を用いた新規な靴の締付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
靴紐締付けタイプの靴では、周知のように、履き口から前方へと開放する中央ギャップ部(ここにベロが設けられる)を間に置いた左右の甲被羽根部に前後に設けられた複数の靴紐通し孔に靴紐を左右交互にジグザグ状に通し、履き口側で余った靴紐の両端側部分を引っ張って靴紐を緊張させ、これにより、左右甲被羽根部間間隔を狭めてベロを足甲部に押し付けるようにした後、靴紐の両端側部分を蝶結び等することにより、甲被を足甲部にフィットさせるようにしている。
【0003】
しかしながら、上記のような靴紐による締め付けでは、左右甲被羽根部間に靴紐がジグザグ状に存在するベロ領域全体で足甲部の比較的広い範囲を押さえ付けるものであるため、たとえ靴紐をきつく締めても、甲部の一部を集中的に押さえ付けるようなことはできず、個々人で微妙に異なる足甲部に完全にフィットさせ、甲部をホールドするには限界があった。そのため、特に、例えばテニスの試合等、激しい運動が要求される状況において、靴内部で甲部がずれる場合があった。
【0004】
また、足の甲部側での靴紐による締め付けのみでは、足の中足部及び後足部の内外側部に対する靴のフィット性や安定性を高めるにも限界があり、従来の靴紐締付けタイプの靴では、例えばランニング時等において、甲被と足の中・後足部内外側部との間にギャップが生じ、内側への倒れ込みやねじれといった中・後足部の過度な変形が発生する場合あった。このような過度な変形が走行中に続くと、足、膝等の故障につながるため、従来は、走行毎に事前にテーピング等して対処していた。
【0005】
更に、特開平11−32812号公報、特開2001−211903号公報は、靴紐とは別個独立の締付け手段により、足のフィット性、安定性等を向上させ得る技術を開示している。しかしながら、これらの先行技術は、使用時に靴紐を結ぶ動作とは別の特別な締付け動作を必要とするため、使用開始時及び終了時に靴紐操作以外に余計な手間がかかるのみならず、靴の構造が複雑でコスト高を招いたり、靴の外観が煩雑でデザイン性が損なわれるといった欠点がある。
【特許文献1】特開平11−32812号公報
【特許文献2】特開2001−211903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に着目してなされたもので、その目的は、靴紐を結ぶ動作のみにより、靴紐の締付けのみでは得られない足のフィット性、安定性等を得ることができる靴及び靴の締付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によれば、底部と底部に接合される甲被とを有し、甲被の履き口から前方へと開放する中央ギャップ部を間に置いた左右の甲被羽根部の複数の靴紐通し孔に靴紐を通し、該靴紐を緊張させることによって甲被が足の甲部を締め付ける靴において、基端側が左右の甲被羽根部の内側において底部又は底部付近の甲被に連結され、他端の自由端部に靴紐を通し得る環部を有する左右の補助締付け部材と、左方の補助締付け部材の環部を通すために右方又は左方の甲被羽根部に設けた第1環部通し開口と、右方の補助締付け部材の環部を通すために左方又は右方の甲被羽根部に設けた第2環部通し開口とを備え、靴紐通し孔と第1及び第2環部通し開口に通した左右の補助締付け部材の環部とに通した靴紐を緊張させることにより、左右の補助締付け部材によって足を部分的に締付け可能としたことを特徴とする靴が提供される。
【0008】
本発明に係る靴は、左右の甲被羽根部(本明細書中、甲被における履き口及び前方ギャップ部の左右部分(ベロを除く)を「甲被羽根部」と称している。)の内側に、底部(又はその付近の甲被部分)から上方に延びる左右の補助締付け部材を設け、左方の補助締付け部材の自由端環部を右方又は左方の甲被羽根部に設けた第1環部通し開口に好ましくは内側から外側に通し、同様に右方の補助締付け部材の環部を左方又は右方の甲被羽根部の第2環部通し開口に通した後、靴紐通し孔と共に左右の補助締付け部材の環部にも連続的に靴紐を通す(図2及び図7参照)。この準備状態から、靴を履き、次いで、通常の紐を結ぶ動作と同様に履き口側で靴紐の両端側を引っ張って靴紐を緊張させて結ぶ。これにより、通常の靴紐による締付けと同様に左右の甲被羽根部間間隔が狭まって足甲部を全体的に締め付けるのに加えて、左右の補助締付け部材が各環部が通された開口に向かって引っ張られて、足の甲部、内側側部、内外側部等の一部を集中的に締め付け、補助締付け部材が該一部分をホールドするようになる。これにより、本発明の靴では、例えば、激しい運動時等における靴内部での甲部のずれ、ランニング中等における足の中・後足部の過度な変形等を有効に防止することが可能となる。なお、左右の補助締付け部材は一組だけ設けることが好ましいが、複数組設けることもできる。また、左右の補助締付け部材は、左右がほぼ対称であっても、左右が対称でなくてもよい。
【0009】
本発明では、左方の補助締付け部材の環部を右方の甲被羽根部の第1環部通し開口に通すと共に、右方の補助締付け部材の環部を左方の甲被羽根部の第2環部通し開口に通す場合と、左方の補助締付け部材の環部を左方の甲被羽根部の第1環部通し開口に通すと共に、右方の補助締付け部材の環部を右方の甲被羽根部の第2環部通し開口に通す場合とがある。
【0010】
補助締付け部材は、伸縮性の無い帯状もしくは紐状のもの又はこれらを組み合わせたものが好ましいが、多少伸縮性があってもよい。補助締付け部材は、基端側に自由端側に比べ幅が広い幅広部分を有することができる。この幅広部分により、足側部をしっかりホールドさせると共に、締付けで甲部側部が痛くならないようにすることができる。左方の補助締付け部材の環部を右方の甲被羽根部の第1環部通し開口に通すと共に、右方の補助締付け部材の環部を左方の甲被羽根部の第2環部通し開口に通す場合、補助締付け部材のベロ上に来る部分及び第1及び第2開口に通される部分は紐状であってもよい。
【0011】
補助締付け部材はまた、各端部から基端側に向かって延びる複数の、好ましくは二つのストラップ部を有することができる。かかる各補助締付け部材の複数のストラップ部により、例えば、第5中足骨の付け根の出っ張り部分を避けるように該出っ張り部分の前後に各ストラップ部を配置させる等して、靴内での窮屈感や違和感を感じにくくしたり、より足の形状に合致させて隙間等が生じないサポートとすることができる。また、複数のストラップ部に沿う複数のラインで足を押さえることにより、足のサポートを足の過度な変形を許容しない安定したものとしたり、ストラップ部の押付け面積及び重量を低く抑えたままで比較的広範囲の足部分に対応させることができるといった利点がある。
【0012】
補助締付け部材が押さえる足の一部は、足の甲部、及び/又は、足の内側側部及び外側側部であり、具体例としては、図4及び5に示すような、中足骨の体前端付近に対応する部分を含む甲部部分(甲部左右両側部を含む)、あるいは、図9〜11に示すような、第5中足骨基部の前後に対応する部分を含む中足部外側側部、及び距骨に対応する部分を含む中・後足部内側側部等を好ましく挙げることができる。
【0013】
補助締付け部材の基端は靴底部の縁に接合されるが、底部縁付近の甲被や底部縁よりやや内側(中央側)の底部に接合される場合もあり得る。他の形態としては、左右の補助締付け部材が、例えば靴底部に設けた左右に延びる貫通孔等を通じて、一連となるようなものであってもよい。
【0014】
本発明において、前記第1及び第2環部通し開口は、好ましくは、左右の甲被羽根部において、一つの靴紐通し孔と別の一つの靴紐通し孔との間に設けられる。更に好ましくは、左右の甲被羽根部において前後に所定間隔ピッチを置いて並ぶ複数の靴紐通し孔の一つに代えて、第1及び第2環部通し開口を設けることができる。なお、第1及び第2環部通し開口は、ここに通す環部及び補助締付け部材自由端側部分の形状に応じて、靴紐通し孔とは異なる形状とすることも靴紐通し孔と同じ形状とすることもできる。後者の場合、第1及び第2環部通し開口を特別に形成する必要はなく、靴紐通し孔を環部通し開口として利用することができる。環部は、例えば、補助締付け部材の自由端にリング状の部材を連結する他、該自由端部を穿孔したりあるいは管状に形成するようにしてもよい。更に、上記リング状部材は、例えば、環部通し開口に通した補助部材自由端に着脱自在に取り付け得る態様にしてもよい。
【0015】
別の本発明によれば、底部と底部に接合される甲被とを有し、甲被の履き口から前方へと開放する中央ギャップ部を間に置いた左右の甲被羽根部の複数の靴紐通し孔に靴紐を通し、該靴紐を緊張させることによって甲被が足の甲部を締め付ける靴であって、基端側が左右の甲被羽根部の内側において底部又は底部付近の甲被に連結され、他端の自由端部に靴紐を通し得る環部を有する左右の補助締付け部材と、左方の補助締付け部材の環部を通すために右方又は左方の甲被羽根部に設けた第1環部通し開口と、右方の補助締付け部材の環部を通すために左方又は右方の甲被羽根部に設けた第2環部通し開口とを備えた靴の締付け方法であって、左右の補助締付け部材の環部を第1及び第2環部通し開口に通した後、靴紐通し孔と左右の補助締付け部材の環部とに靴紐を通し、該靴紐の両端部から該靴紐を緊張させることにより、左右の補助締付け部材を各端部が通された第1及び第2環部通し開口に向かってそれぞれ緊張させ、甲被で足の甲部を締め付けると共に、左右の補助締付け部材で足を部分的に締め付けることを特徴とする靴の締付け方法が提供される。
【0016】
上記方法において、左右の補助締付け部材は、足の甲部を部分的に締め付けることができ、及び/又は、足の内側側部及び外側側部を部分的に締め付けることができる。
【0017】
本発明に係る靴の締付け方法は、上述した本発明に係る靴の使用法に実質上相当するものであり、本発明の靴について述べた点が本方法についてもそのまま当てはまる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る靴1の、靴紐を付けていない状態の甲被前方部分を破断して示す部分平面図であり、図2は、靴紐を付けた状態の図1と同様の図である。図3は、図2のA−A線から後方を見る靴1の縦断面説明図である。図4は靴1の使用状態を甲被を透視して示す側面説明図である。図5は、後述する補助締付け部材によって締め付けられる足の部分を示すための説明図である。
【0019】
靴1は、テニス等の運動用のシューズであり、アウトソール10a、ミッドソール10b及びインソール(中底)10cからなる底部(図3参照)10と、底部10に接合された、履き口30を有する甲被(アッパー)20とから基本的に構成されている。甲被20は、足の甲に対応する部分において、履き口30から前方へと連続して開放する中央ギャップ部21を間に置いた左右の甲被羽根部22a、22bを有する。甲被羽根部22a、22bの中央ギャップ部21に沿う縁部分には、一例として左右それぞれ五つの靴紐通し孔23が前後に所定間隔を置いて設けられている。更に、ベロ24が中央ギャップ部21を埋めて、ベロ左右両側部が甲被羽根部22a、22bの内側に重なるように設けられ、ベロ24の基端部(前端部)は、靴1のつま先部と甲被羽根部22a、22bの最前の靴紐通し孔23より前方の部分とに接合されている。なお、ベロ24は、履き口付近を除くその左右両側部が、伸縮可能な生地等を介して底部10の縁に連結される場合もある。
【0020】
次に靴1の特徴部分について詳述する。靴1は、左右一対の補助締付け部材40a、40bを備えている。各補助締付け部材40a、40bは、伸縮しない素材からなる帯状のもので、甲被羽根部22a、22bの内側に隠れる基端側の幅広部41と、幅広部41の上端から延びてベロ24上に現れる、幅広部41よりも狭い一定幅のレース部42とに区分される。幅広部41は、図4及び図5に示すように、レース部42との境目である上端から下方へと次第に幅が拡大し、幅広部41の下端(基端)は、左右内側では底部10の縁の土踏まずやや前方部分に、また、左右外側では、左右内側と前後方向同位置よりやや後方部分にそれぞれ強固に接合される。補助締付け部材40a、40bのレース部42は、運動時に必要な屈曲を妨げることなく甲部をサポートさせるため、甲部上部の中足骨の体前端付近を集中的に締め付けるようにされる。
【0021】
各補助締付け部材40a、40bのレース部42の自由端部には、靴紐50を通すための環部としての三角形状のリング43が連結される。他方、左右の甲被羽根部22a、22bには、前方から2番目の靴紐通し孔(第2孔)23と、3番目の靴紐通し孔(第3孔)23との間に、上記リング43を通すための長円形状のリング通し開口44が、その長径が前後方向に沿うようにそれぞれ設けられる。なお、左方の甲被羽根部22aのリング通し開口44は、右方の補助締付け部材40bのリング43を通すためのものであり、右方甲被羽根部22bの開口44は、左方締付け部材40aのリング43を通すためのものである。また、開口44と第2孔間及び開口44と第3孔間の間隔は、第1孔(前方第1番目の靴紐通し孔)−第2孔間、第3孔−第4孔間、第4−第5孔間の各間隔とほぼ同じになるように設定される。
【0022】
次に、本発明に係る靴の締付け方法として、以上の構成の靴1の使用方法について説明する。靴1の使用にあたっては、準備段階として、あらかじめ靴紐50を次のように通しておく。これは、まず、図1に示すように、左方の補助締付け部材40aのリング43をベロ24上から右方の甲被羽根部22bのリング通し開口44に内側から外側へ出るように通し、同様に、右方締付け部材40bのリング43を左方羽根部22aの開口44に通す。この状態で、各締付け部材のレース部42は、ベロ上でX字をなすように交差する。次いで、各靴紐通し孔23と、リング通し開口44に通した後の各リング43とに一本の靴紐50を連続的に通す。更に詳しくは、あたかもリング通し開口44に通したリング43が靴紐通し孔23の一つであるように、前方から後方の履き口30側へと靴紐50を通常の運動靴と同様に各孔23及びリング43に左右交互にジグザグ状に通す。
【0023】
以上の準備段階後の実際に使用する際は、通常の運動靴と同様に、靴1を履いた後、履き口30側で余っている靴紐50の両端部51側を引っ張り、靴紐50を緊張させた後に靴紐両端部分を蝶結び等するだけである。これにより、左右の甲被羽根部22a、22b間の間隔が狭まってベロ24及び両羽根部22a、22bが足甲部を全体的に締め付けるのに加えて、上記靴紐50の緊張により、左右のリング43が互いに近付くように内側に変位し、これに伴って、各補助締付け部材40a、40bが対応する各開口44側へと引っ張られる。これにより、各補助締付け部材40a、40bの幅広部41が、足の屈曲部(中足骨骨頭付近)を避け、船状骨よりも前方(足のアーチの前方)にかけて足甲部の側部を押さえ付けると共に、レース部42がベロ24を介して甲部上部の前後方向ほぼ中央部分(中足骨の体前端付近)を集中的に押し付けて、甲の一部をしっかりとホールドするようになる。そのため、激しい運動時でも靴1内部で足の甲部がずれるようなことはなくなり、特にベロ24上でクロスするレース部42が靴内における足の前方へのずれを有効に抑制する。なお、靴紐50による締付けを強めるほど補助締付け部材40a、40bによる締付けも強まる。
【0024】
また、図示はしないが、上述した各レース部42の交差部に対応するベロ部分に各レース部42を通すためのレース通し部を設けることにより、ベロ24が靴内部に入り込みにくくすることができる。
【0025】
次に、本発明の第2実施形態に係る靴101について説明する。図6は、靴101の、靴紐を付けていない状態の甲被前方部分を破断して示す部分平面図であり、図7は、靴紐を付けた状態の図6と同様の図である。図8は、図7のB−B線から後方を見る靴101の縦断面説明図である。図9は、左右の補助締付け部材を透視して示す斜視説明図である。また、図10〜12は、補助締付け部材によって締め付けられる足の部分を示すための説明図である。
【0026】
靴101は、ランニングシューズであり、上記靴1と同様に、底部110と甲被120とから基本的に構成され、甲被120は、履き口130から前方へと開放する中央ギャップ部121を間に置いた左右の甲被羽根部122a、122bを有する。甲被羽根部122a、122bの中央ギャップ部121に沿う縁部分には、一例として左右それぞれ五つの靴紐通し孔123が前後に所定間隔を置いて設けられている。更に、ベロ124が中央ギャップ部121を埋めている。
【0027】
靴101は、左右の補助締付け部材140a、140bを備えている。各補助締付け部材140a、140bは、自由端部に設けられた管状の環部(端を折り返した後に接合して形成される)143と、左右甲被羽根部122a、122bの内側において各環部143から基端側へと相互間隔を次第に広げながら延びるそれぞれ二つのストラップ部141a、141a’、141b、141b’と、これら各組のストラップ部の基端がそれぞれ一体に連結する基端部142a、142b(図9、11及び12参照)とからなる。基端部142a、142bは、底部110の縁に接合され、底部縁からわずかに露出して前後方向に延び、各二つのストラップ部141a、141a’、141b、141b’と共に三角形を形成してその底辺をなす。該各三角形の頂角及び寸法は、左方(外側)の助締付け部材140aの方が右方(内側)の助締付け部材140bよりも大きい。かかる補助締付け部材の三角形は、後述するように関節の出っ張りを避ける等、足の骨格に合わせたサポートを実現すると共に、三角形の中央を開放させて軽量化を図ることができる。また、各ストラップ部141a、141a’、141b、141b’は伸縮しない素材からなる。
【0028】
補助締付け部材140a、140bは、リスフラン関節及びショパール関節を安定させるように次のように位置付けられる。すなわち、図6及び7において左方(外側)となる補助締付け部材140aは、図9〜11に示すように、前後のストラップ部141a、141bが中足部外側側部において第5中足骨の出っ張った基部を避けるように該基部の前後に配置される。他方、図6及び7において右方(内側)となる補助締付け部材140bは、図9、10及び12に示すように、前後のストラップ部141b、141b’が、上方における中足部のショパール関節とリスフラン関節との間の中央付近から下方における後足部内側側部のショパール関節にほぼ沿って距骨前端から距骨中央付近にかけて配置される。
【0029】
図6及び7を参照して、左方の甲被羽根部122aには、最後方の靴紐通し孔(第5孔)123と後方から2番目の靴紐通し孔(第4孔)123との間に、左方の補助締付け部材140aの環部143を通すための長円形状の環部通し開口144aが、その長径が前後方向に沿うように設けられる。また、右方の甲被羽根部122bには、後方から2番目の靴紐通し孔(第4孔)123と後方から3番目の靴紐通し孔(第3孔)123との間に、右方の補助締付け部材140bの環部143を通すための環部通し開口144bが設けられる。なお、環部143もしくは開口144a、144bの前後方向長さは、第1孔−第2孔間、第2孔−第3孔間、第3孔−第4孔間等の各間隔とほぼ同じになるように設定される。従って、左方の補助締付け部材140aの環部143は右方締付け部材140bの環部143よりも紐通し孔−孔間の1ピッチ分後方となる。
【0030】
次に、以上の構成の靴101の使用方法について説明する。靴101の使用にあたっては、準備段階として、あらかじめ靴紐50を次のように通しておく。これは、まず、図6に示すように、左方の補助締付け部材140aの環部143を左方の甲被羽根部122aの環部通し開口144aに内側から外側へ出るように通し、同様に、右方締付け部材140bの環部143を右方羽根部122bの開口144bに通す。次いで、各靴紐通し孔123と、環部通し開口144a、144bに通した後の各環部143とに一本の靴紐50を左右交互にジグザグ状に連続的に通す(図7参照)。この状態の靴101の外観は、ベロ124上に来る靴1のレース部42のような部材が無いため、通常の紐靴とほぼ同様であり、環部143の色を靴紐50と同じにすれば、靴101の外観は通常の紐靴に一層等しくなる。なお、環部143の色を靴紐50に合わせなくとも、環部143(の色)を靴101のデザインに調和させたり、デザイン的なアクセントとすることができる。
【0031】
以上の準備段階後の実際に使用する際は、通常の運動靴と同様に、靴101を履いた後、履き口130側で余っている靴紐50の両端部51側を引っ張り、靴紐50を緊張させた後に靴紐両端部分を蝶結び等するだけである。これにより、通常の紐靴同様に左右の甲被羽根部122a、122bが狭まって足甲部を全体的に締め付けるのに加えて、上記靴紐50の緊張により、左右の環部143が左右方向において互いに近付く方向に引かれ、これに伴って、各補助締付け部材140a、140bが対応する各開口144a、144b側へと引っ張られる。これにより、各補助締付け部材140a、140bの各ストラップ部141a、141a’、141b、141b’が上述した対応する足の中足部及び後足部の内外側部をしっかりと押さ付ける。なお、靴紐50による締付けを強めるほど補助締付け部材140a、140bによる締付けも強まる。従って、例えばランニング時等において、事前にテーピング等をしなくても運動に必要な足関節の動きを損なうことなく足の中・後足部をしっかりと安定的にホールドするため、該部分が過度に変形するようなことはなくなる。
【0032】
以上述べたように、本発明に係る靴及び靴の締付け方法では、通常の靴紐の締結操作のみで靴紐のみならず補助締付け部材をも締め付けて、この補助締付け部材を介して前足部、中足部及び後足部の一部を集中的に押さ付けることができるため、靴紐のみでは得られない足の部分的な集中的締付けを得ることができ、靴のフィット性、ホールド性、安定性等を高め、特に激しい運動時に生じやすい足甲部のずれや走行時に発生し得る足の中・後足部の過度の変形等を有効に防ぐことができる。更に、本発明の靴は構造が簡単でコストもそれほど高くならず、また、補助締付け部材の大部分は、甲被羽根部の内側にあって外から見えないため、靴の外観を煩雑にしたり、デザイン性を損なうこともない。
【0033】
本発明は以上の実施形態に限定されず、例えば、上記第1実施形態における左右の補助締付け部材をベロ上でクロスさせず、第2実施形態のように左方の補助締付け部材の環部(リング)を左方の甲被羽根部の開口に通し、かつ右方の補助締付け部材の環部を右方の甲被羽根部の開口に通すことができ、これとは逆に第2実施形態における左右の補助締付け部材をベロ上へと延ばし、それぞれ右方及び左方の甲被羽根部の開口に通すようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】靴紐を取り付けていない状態の、本発明に係る靴の甲被前方部分を破断して示す部分平面図である。
【図2】靴紐を取り付けた状態の図1と同様の平面図である。
【図3】図2のA−A線から後方を見た縦断面説明図である。
【図4】甲被を透視して補助締付け部材を示す、本発明に係る靴の使用状態説明図である。
【図5】補助締付け部材による足の締付け部分を示すための説明図である。
【図6】靴紐を取り付けていない状態の、本発明に係る別の靴の甲被前方部分を破断して示す部分平面図である。
【図7】靴紐を取り付けた状態の図6と同様の平面図である。
【図8】図7のB−B線から後方を見た縦断面説明図である。
【図9】甲被を透視して補助締付け部材を示す斜視説明図である。
【図10】補助締付け部材による足の締付け部分を示すための上から見た説明図である。
【図11】外側の補助締付け部材による足の締付け部分を示すための説明図である。
【図12】内側の補助締付け部材による足の締付け部分を示すための説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1、101 靴
10、110 底部
20、120 甲被
21、121 中央ギャップ部
22a、122a 左方の甲被羽根部
22b、122b 右方の甲被羽根部
23、123 靴紐通し孔
24、124 ベロ
30、130 履き口
40a、40b、140a、140b 補助締付け部材
41 幅広部
42 レース部
43 リング
44 リング通し開口
50 靴紐
141a、141a’、141b、141b’ ストラップ部
143 環部
144a、144b 環部通し開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と底部に接合される甲被とを有し、甲被の履き口から前方へと開放する中央ギャップ部を間に置いた左右の甲被羽根部の複数の靴紐通し孔に靴紐を通し、該靴紐を緊張させることによって甲被が足の甲部を締め付ける靴において、
基端側が左右の甲被羽根部の内側において底部又は底部付近の甲被に連結され、他端の自由端部に靴紐を通し得る環部を有する左右の補助締付け部材と、
左方の補助締付け部材の環部を通すために右方又は左方の甲被羽根部に設けた第1環部通し開口と、
右方の補助締付け部材の環部を通すために左方又は右方の甲被羽根部に設けた第2環部通し開口とを備え、
靴紐通し孔と第1及び第2環部通し開口に通した左右の補助締付け部材の環部とに通した靴紐を緊張させることにより、左右の補助締付け部材によって足を部分的に締付け可能としたことを特徴とする靴。
【請求項2】
前記左右の補助締付け部材は、足の甲部を部分的に締め付けるためのものである請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記左右の補助締付け部材による締付け部分は、中足骨の体前端付近に対応する部分を含む請求項2に記載の靴。
【請求項4】
前記左右の補助締付け部材は、足の内側側部及び外側側部を部分的に締め付けるためのものである請求項1に記載の靴。
【請求項5】
前記左右の補助締付け部材による締付け部分は、第5中足骨基部の前後に対応する部分を含む請求項4に記載の靴。
【請求項6】
前記左右の補助締付け部材による締付け部分は、距骨に対応する部分を含む請求項4に記載の靴。
【請求項7】
前記第1及び第2環部通し開口は、左右の甲被羽根部において、一つの靴紐通し孔と別の一つの靴紐通し孔との間に設けられる請求項1〜6のいずれか一に記載の靴。
【請求項8】
前記補助締付け部材は、基端側に自由端側に比べ幅が広い幅広部分を有する請求項1〜3のいずれか一に記載の靴。
【請求項9】
前記補助締付け部材は、各環部から基端側に向かって延びる複数のストラップ部を有する請求項1及び4〜6のいずれか一に記載の靴。
【請求項10】
底部と底部に接合される甲被とを有し、甲被の履き口から前方へと開放する中央ギャップ部を間に置いた左右の甲被羽根部の複数の靴紐通し孔に靴紐を通し、該靴紐を緊張させることによって甲被が足の甲部を締め付ける靴であって、基端側が左右の甲被羽根部の内側において底部又は底部付近の甲被に連結され、他端の自由端部に靴紐を通し得る環部を有する左右の補助締付け部材と、左方の補助締付け部材の環部を通すために右方又は左方の甲被羽根部に設けた第1環部通し開口と、右方の補助締付け部材の環部を通すために左方又は右方の甲被羽根部に設けた第2環部通し開口とを備えた靴の締付け方法であって、
左右の補助締付け部材の環部を第1及び第2環部通し開口に通した後、靴紐通し孔と左右の補助締付け部材の環部とに靴紐を通し、該靴紐の両端部から該靴紐を緊張させることにより、左右の補助締付け部材を各端部が通された第1及び第2環部通し開口に向かってそれぞれ緊張させ、甲被で足の甲部を締め付けると共に、左右の補助締付け部材で足を部分的に締め付けることを特徴とする靴の締付け方法。
【請求項11】
前記左右の補助締付け部材は、足の甲部を部分的に締め付ける請求項10に記載の靴の締付け方法。
【請求項12】
前記左右の補助締付け部材は、足の内側側部及び外側側部を部分的に締め付ける請求項10に記載の靴の締付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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