説明

音声パケット再生方式

【課題】受信された音声パケットから再生される音声に与える影響である違和感を軽減して音声再生を行うことができる音声パケット再生方式を提供する。
【解決手段】受信した音声パケットから音声を再生するための基準となる音声再生タイミング信号と受信した音声パケットの受信タイミングとのクロック周波数差に対応する補正量情報に従って、音声再生タイミング信号の分周比を制御して、受信した音声パケットから音声信号を再生する再生要求信号を生成する。受信された前記音声パケットを音声バッファに一時的に記録し、その記録された音声パケットの読み出し再生間隔が再生要求信号により制御されて、音声パケットのフレームデータへの再生タイミングを再生クロック単位で変化させることにより、音声サンプルデータを前記再生クロック単位でそのまま再生または廃棄もしくは挿入して再生データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク上のパケットを介して音声通信を行うシステムにおける音声パケット再生方式に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の音声パケット再生方式では、ネットワークから受信した音声パケットは、到着時間のばらつきを吸収し音声サンプルクロックをもとに等間隔で音声再生をするための音声バッファに格納される。音声バッファでは、一定数のパケットが蓄積されると音声再生が開始される。音声パケットの受信間隔が長くなるかパケットの欠落が発生し、バッファ内のパケットが枯渇すると、代替パケットが挿入される。また、音声パケットの受信間隔が短くなりバッファが溢れると、パケットが廃棄される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−45065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来の音声パケット再生方式では、音声パケットの受信タイミングと再生タイミング間でのクロック周波数差により、パケットの欠落がない良好な通信状態であっても、時間経過とともに音声バッファ内のパケットの蓄積あるいは枯渇が進み、周期的に音声バッファのオーバフローあるいはアンダフローが生じ、その都度音声パケット単位で音声データの廃棄あるいは挿入を行うため、再生される音声の違和感が大きいという問題点があった。
【0004】
本発明の目的は、受信された音声パケットから再生される音声に与える影響である違和感を軽減して音声再生を行うことができる音声パケット再生方式を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、本発明による音声パケット再生方式は、受信した音声パケットから音声を再生するための基準となる音声再生タイミング信号を出力するタイミング発生部と、
受信した音声パケットの受信タイミングと前記音声再生タイミング信号とのクロック周波数差を検出して該クロック周波数差に対応する補正量情報を出力する周波数差検出部と、
検出された該周波数差に対応する前記補正量情報に従って前記音声再生タイミング信号の分周比を制御して、前記受信した音声パケットから音声信号を再生する再生要求信号を生成する補正制御部と、
前記受信された前記音声パケットを一時的に記録し、その記録された音声パケットの読み出し再生間隔が前記再生要求信号により制御されて、前記音声パケットの再生タイミングを再生クロック単位で変化させることができる音声バッファと、
該音声パケットのフレームデータを前記再生要求信号による制御の下で音声サンプルデータに変換する音声復号部と、
前記再生要求信号に基づき該音声サンプルデータを前記再生クロック単位でそのまま再生または廃棄もしくは挿入して再生データを生成する音声再生部と、
を備えた備えた構成を有している。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、音声データの再生が再生クロック単位で廃棄および挿入が可能となるため、再生される音声品質の向上を期待することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明の実施例1を示すブロック図である。図2は、本発明方式の動作を説明するためのタイムチャートである。
〔LANインタフェース1〕
LANインタフェース1では、IPネットワークから受信したパケットデータをパケット受信制御部2に転送する。
〔パケット受信制御部2〕
パケット受信制御部2は、図3に示すように、パケットデータ受信部2−1,受信バッファ制御部2−2および受信タイミング情報生成部2−3により構成される。
パケットデータ受信部2−1では、LANインタフェース1から受信した音声パケットからその受信タイミングを抽出するとともに、また、そのシーケンス番号,タイムスタンプ,符号化音声フレームデータaを出力する。
受信バッファ制御部2−2では、符号化音声フレームデータaを音声バッファ3に転送する。
受信タイミング情報生成部2−3では、周波数差検出部5に対して、音声バッファ3への転送を完了したことを示す転送完了タイミング信号を出力するとともに、当該音声パケットに記録されたシーケンス番号およびタイムスタンプを出力する。
〔音声バッファ3〕
音声バッファ3は、パケット受信制御部2から転送された符号化音声フレームデータaを蓄積する。
蓄積された符号化音声フレームデータbは、ジッタ吸収に必要な一定量蓄積された後、補正制御部6からの再生要求信号eにより制御されて、音声復号部7に転送される。
【0008】
〔タイミング発生部4〕
タイミング発生部4は、図示しない音声再生側基準クロック源からの基準クロックを分周し、音声再生タイミング信号fを生成する。
〔周波数差検出部5〕
周波数差検出部5は、受信した音声パケットの転送完了タイミング信号と基準再生タイミング信号f間のクロック周波数差を検出し、この周波数差に対応する補正量情報を出力する。即ち、この周波数差検出部5では、送受信点間で共通の音声符号化方式に基づいて構成された音声パケットに付与された時刻の推移を監視し、一定時間あたりの受信パケットと再生パケットとの時刻の変化量を計算することにより、送受信間でのクロック周波数差を算出し、これに対応する補正量情報を作成する
〔補正制御部6〕
補正制御部6は、タイミング発生部4からの音声再生タイミング信号fを分周して、音声復号化および音声再生の基準とする再生周期を生成する。また、図5に示すように、分周比制御回路6ー1と分周カウンタ6ー2を用いて、周波数差検出部5からの補正量情報をもとに、基準となる再生周期に対して、1再生クロック分のデータのタイミング補正制御を行うために、分周比を変化させた再生要求信号eを出力する。また、補正制御部6はクロック周波数差に対応する補正量情報をもとに受信から再生までのパケット転送間隔すなわち音声再生間隔を制御する再生要求信号eを生成する。
【0009】
〔音声復号部7〕
音声復号部7は、再生要求信号eに同期して、音声バッファ3から転送される符号化音声フレームデータbをもとに、実際に使用されるサンプリングレートにおける時間系列に対応した復号化音声データcに変換して出力する。
〔音声再生部8〕
音声再生部8は、復号化された音声データcを再生要求信号eの周期の変化に対応して、そのまま再生するか、1再生クロック分のデータを廃棄または挿入して再生音声データdを出力する。即ち、音声再生部8では、音声バッファ3からパケットを取り出す周期に連動して、補正量情報をもとに、音声サンプルデータ列に対して、そのまま再生するか1再生クロック分のデータの廃棄または挿入を行って再生音声データd1,d2,d3を取り出す。
【0010】
本発明方式の動作の概要を説明する。
本発明の実施例を示す図1において、周波数差検出部5では、送受信点間で共通の音声符号化方式に基づいて構成された音声パケットに付与された時刻の推移を監視し、一定時間あたりの受信パケットと再生パケットとの時刻の変化量を計算することにより、送受信間でのクロック周波数差を算出し、これに対応する補正量情報を作成する。また、補正制御部6はクロック周波数差に対応する補正量情報をもとに受信から再生までのパケット転送間隔すなわち音声再生間隔を制御する再生要求信号eを生成する。
【0011】
音声バッファ3では、補正量情報をもとにその音声バッファ3からパケットを取り出す周期を音声サンプルクロック単位で一時的に変化させる。
【0012】
音声復号部7では、取り出されたパケットから音声パケット符号化方式に基づいて音声サンプルデータ列に変換する。
【0013】
音声再生部8では、音声バッファ3からパケットを取り出す周期に連動して、補正量情報をもとに、音声サンプルデータ列に対して、1サンプル分のデータを廃棄あるいは挿入を行って再生音声データdを取り出す。
【0014】
図4は、本発明に用いる周波数差検出部5の構成例を示すブロック図である。
計数カウンタ回路501は、音声再生タイミング信号fにより連続計数動作し、転送完了タイミング信号211が入力された時点での計数値515をメモリ502に書き込む。
メモリ502は、受信パケットのシーケンス番号212およびタイムスタンプ213とともに、計数値515を順次記憶する。
差分回路503は、メモリ502から読み出した2個のパケットに対する計数値520,521から差分を求め、パケット受信間隔522を算出する。
メモリ504は、差分回路503で得られた受信間隔522を順次記憶する。
演算回路505は、メモリ504に記憶された個々のパケット受信間隔523を読み出し、一定数について平均化処理を行い、平均受信間隔524を算出する。
受信間隔レジスタ509は、一定数の受信パケットから算出された平均受信間隔524を一時的に記憶し、時間経過とともに順次更新され、パケット平均受信間隔525として出力する。
差分回路506は、メモリ502から読み出した2個のパケットに対するタイムスタンプ516,517から差分を求め、パケット送信間隔508を算出する。
送信間隔レジスタ507は、差分回路506により算出されたパケット送信間隔518を記憶する。
演算回路508は、パケット平均受信間隔525とパケット送信間隔518から周波数差を算出し、補正量情報526を出力する。
【0015】
この周波数差検出部5では、音声再生タイミングクロックで計数カウンタ回路501を動作させ、パケット受信制御部2から出力される受信完了タイミング信号が発生した時点での計数カウンタ回路501の値を記録するとともに、対応するパケットのシーケンス番号およびタイムスタンプを記録する。
ここで、図6に示すように、一定の差分nを示す2個のシーケンス番号(k,k+n)を持つ2個のパケットのタイムスタンプの差分値により、送信側における2個のパケット送信間隔TIを求める。
一方、その2個のパケットに対応する計数カウンタの値(Tk,Tk+n)の差分値により、実際に受信された時間間隔RIkを求める。同様に、連続する2n個のパケットに対して、シーケンス番号の差分nを示す2個のパケットに対応する計数カウンタの値の差分値をn個求め、平均時間間隔RIを求める。
TIとRIの差異の推移を順次監視し、1サンプル分の音声データを廃棄または挿入すべき補正時間間隔を算出し、補正制御部へ補正量情報として通知する。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、ネットワーク上でパケットを介して音声通信を行うシステムにおいて、音声パケットを再生する際に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明に用いる音声再生部の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図3】本発明に用いるパケット受信制御部の構造例を示すブロック図である。
【図4】本発明に用いる周波数差検出部の構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明に用いる補正制御部の構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明に用いる周波数差検出部の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0018】
1 LANインタフェース
2 パケット受信制御部
2−1 パケットデータ受信部
2−2 受信バッファ制御部
2−3 受信タイミング情報生成部
3 音声バッファ
4 タイミング発生部
5 周波数差検出部
6 補正制御部
7 音声復号部
8 音声再生部
9 バッファ監視部
211 転送完了タイミング信号
212 シーケンス番号
213 タイムスタンプ
501 計数カウンタ回路
502 メモリ
503 差分回路
504 メモリ
505 演算回路
506 差分回路
507 送信間隔レジスタ
508 演算回路
509 受信間隔レジスタ
515 計数値
516 タイムスタンプ
517 タイムスタンプ
518 パケット送信間隔
519 パケット送信間隔
520,521 計数値
522 パケット受信間隔
523 パケット受信間隔
524 平均受信間隔
525 パケット平均受信間隔
a 符号化音声フレームデータ
b 符号化音声フレームデータ
c 符号化音声データ
d 再生音声データ
e 再生要求信号
f 音声再生タイミング信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した音声パケットから音声を再生するための基準となる音声再生タイミング信号を出力するタイミング発生部と、
受信した音声パケットの受信タイミングと前記音声再生タイミング信号とのクロック周波数差を検出して該クロック周波数差に対応する補正量情報を出力する周波数差検出部と、
検出された該周波数差に対応する前記補正量情報に従って前記音声再生タイミング信号の分周比を制御して、前記受信した音声パケットから音声信号を再生する再生要求信号を生成する補正制御部と、
前記受信された前記音声パケットを一時的に記録し、その記録された音声パケットの読み出し再生間隔が前記再生要求信号により制御されて、前記音声パケットの再生タイミングを再生クロック単位で変化させることができる音声バッファと、
該音声パケットのフレームデータを前記再生要求信号による制御の下で音声サンプルデータに変換する音声復号部と、
前記再生要求信号に基づき該音声サンプルデータを前記再生クロック単位でそのまま再生または廃棄もしくは挿入して再生データを生成する音声再生部と、
を備えた音声パケット再生方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−100882(P2006−100882A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280972(P2004−280972)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】