説明

音声多重トラックコンテンツ再生装置

【課題】複数系統の音声が異なるトラックに記録されており、各トラックは複数のセグメントに分割され、各セグメントに音声メッセージが記録されるようになっている音声多重トラックコンテンツを再生するための音声多重トラックコンテンツ再生装置であって、操作ボタンの数を少なく抑えつつ、且つ一回のボタン押下でトラックの切換が可能なものを提供することである。
【解決手段】本発明の音声多重トラックコンテンツ再生装置においては、装置のケースの表面に、異なるトラックに記憶された音声メッセージを再生するためのトラック数より少ない複数の再生ボタンが設けられており、複数の再生ボタンの各々がどのトラックを再生すべきかを設定するための設定手段をさらに備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声多重トラックコンテンツを再生するための音声多重トラックコンテンツ再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のトラックのそれぞれに複数種類の言語で音声が録音された音声多重トラックコンテンツが記録された記憶媒体と、このコンテンツの中から所望の言語の音声を再生する装置とからなるシステムが提案されている(例えば特許文献1)。このようなシステムは、語学の学習用途に有用である。すなわち、トラックごとに異なる言語で同一内容のメッセージを収録するようなコンテンツを用いれば、言語習得者は、母国語で収録されたメッセージと、習得しようとする言語で収録されたメッセージとを選択し、それらを聴き比べることによって効果的に言語の学習を行うことができる。特に、コンテンツに3種類以上の言語が収録されている場合は、異なる言語を母国語とする不特定多数の利用者に対して、様々な言語を学習するための教材を提供できる。
【特許文献1】特開平9−146591号
【0003】
近年、フラッシュメモリ等の不揮発性の書き換え型メモリの大容量化、低価格化が進み、このようなメモリを上述のような音声多重トラックコンテンツ用の記憶媒体として使用することが充分可能な状況となっている。動作させるために発光部や駆動部を必要としない不揮発性メモリは低消費電力であるので、不揮発性メモリを記憶媒体として使用すると、小型のバッテリーで長時間動作させることが可能な携帯型の再生装置が提供可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような再生装置で言語学習を行う場合、利用者は、母国語の音声メッセージが収録されたトラックと、習得しようとする言語(以下、学習言語と呼ぶ)の音声メッセージが収録されたトラックとを頻繁に切り換えることになる。さらに、母国語と、学習言語と、ある程度習得できており且つ学習言語に近い言語が収録された各トラックを切り換えて学習を行う、という使用方法も考えられる。例えば、日本語を母国語とし、且つある程度英語を理解している利用者が、ドイツ語を習得しようとする場合に、日本語のトラックに収録された音声を聞いて内容を理解しつつ、英語とドイツ語のトラックに収録された音声を聴き比べることにより、ドイツ語をより効率よく学習することができる。
【0005】
従来の携帯型の再生装置においては、トラックを切り換える場合には、再生するトラックを順番に切り換えるボタンを用いるものがある。例えば、トラックが5つある音声多重トラックコンテンツのトラック1を再生している時にボタンを押すと、トラック1の再生を中止してトラック2の再生が始まり、ここでもう一度ボタンを押すとトラック3の再生が始まる。また、トラック5が再生されている時にボタンを押すと、トラック1の再生が始まるようになっている。このように、ボタンを押すたびに再生されるトラックが1→2→3→4→5→1→2・・・とサイクリックに順次切り替わる。
【0006】
或いは、特許文献1の構成のように、再生するトラックを選択するための選択モードと選択されたトラックの音声を再生するための再生モードを切り換える選択ボタンを備え、選択モード時に、再生するトラックを順方向に切り換えるボタン(スキップボタン)と、逆方向に切り換えるボタン(バックスキップボタン)とを操作して所望のトラックを選択するものもある。なお、再生モード時はスキップボタンは同一トラック内で再生する音声メッセージをスキップしたり、スキップバックしたりする時に使用する。
【0007】
このように、従来の携帯型の再生装置においては、所望のトラックに切り換えるまでにボタンを複数回押さねばならなかった。例えば、トラック1に日本語、トラック2に英語、トラック3にフランス語、トラック4にドイツ語、トラック5に中国語が収録されているような音声多重トラックコンテンツにおいて、トラック1とトラック2、トラック4とを適宜切り換えて利用したい場合は、切り換えようとするたびに複数回ボタンを押す必要がある場合があり、学習を行う際の効率があまりよいとはいえなかった。
【0008】
また、トラックの数だけ切換ボタンを用意し、特定のボタンを押すと特定のトラックに切り替わる構成とすることも考えられるが、携帯型の再生装置においてボタンを多数配置しようとすると、ボタンの一つ一つが小さくならざるを得ず、操作性が悪化するという問題があった。
【0009】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、ボタンの数を少なく抑えつつ、且つ一回のボタン押下でトラックの切換が可能な音声多重トラックコンテンツ再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の音声多重トラックコンテンツ再生装置においては、装置のケースの表面に、異なるトラックに記憶された音声メッセージを再生するための該トラックの数より少ない複数の再生ボタンと、前記複数の再生ボタンの各々がどのトラックを再生すべきかを設定するための設定手段と、が設けられている。
【0011】
このような構成とすると、利用者は、所望の複数のトラックの各々の再生を行うためのボタンを複数の再生ボタンに割り当てて使用することができる。よって、利用者は、再生ボタンを一回押すだけで所望のトラックを再生できるようになる。また、全てのトラックに対応するだけの再生ボタンをケースに設けないので、ケースに設けるボタンの数を必要以上に多くする必要はない。例えば、本装置の用途が語学学習であれば、再生ボタンの数は3つあれば充分といえる。このため、小型の再生装置であっても個々のボタンの大きさを充分に大きくすることができる。
【0012】
また、あるトラックのあるセグメントに記憶されている音声メッセージは異なるトラックのセグメントに記憶される音声メッセージと対応するよう構成されており、あるトラックのあるセグメントに記憶されている音声メッセージが再生されている時に複数の再生ボタンのいずれかを押すと、現在再生されているセグメントに対応し且つ押された再生ボタンに関連づけられたトラックのセグメントに記憶されている音声メッセージが再生されるよう構成しても良い。
【0013】
このような構成とすると、互いに関連する内容の音声メッセージ、例えば同一内容且つ異なる言語で録音されたメッセージを適宜切換えながら利用することが可能となる。
【0014】
また、設定手段は、設定を行うための設定モードとトラックの再生を行うための再生モードとを切り換えるモード切換手段と、特定の再生ボタンに割り当てるトラックを選択するためのトラック選択手段と、トラック選択手段による選択結果に基づいて特定の再生ボタンに割り当てるトラックを確定する確定手段と、を有する。ここで、確定手段は前記複数の再生ボタンであり、トラック選択手段によってトラックが選択された状態で複数の再生ボタンのいずれかが押下されると、トラック選択手段によって選択されているトラックが押下された再生ボタンに割り当てられる構成としてもよい。また、トラック選択手段は、再生モード時においては再生するセグメントを変更するためのセグメント選択手段であってもよい。このように、確定手段やトラック選択手段は、トラックの再生時に使用されるボタン等と共通化できるため、再生ボタンにトラックを割り当てるという本発明の機能を実現するために追加すべき手段はモード切換手段のみである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、ボタンの数を少なく抑えつつ、且つ一回のボタン押下でトラックの切換が可能な音声多重トラックコンテンツ再生装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態の音声多重トラックコンテンツ再生装置の外観を示したものである。図1に示されるように、本実施形態の再生装置1は、略長方形状のケース12の表面に、複数のボタン31、32、34B、34F、B1〜B3、液晶ディスプレイ37、ヘッドホンコネクタ38が配置されている。図1に示されているように、液晶ディスプレイ37は、ケース12の6面の内、最も面積の大きな面12aに、一方の側に寄せて形成されている。また、この面の他方の側には、第1〜第3再生ボタンB1〜B3、設定ボタン32が配置されている。以下の説明においてはこの面をケース正面12aと定義し、ケース正面12aのうち、液晶ディスプレイ37が配置されている側を再生装置の上側、第1〜第3再生ボタンB1〜B3や設定ボタン32が配置されている側を下側と定義する。また、通常の使用時(液晶ディスプレイ37を上、第1〜第3再生ボタンB1〜B3や設定ボタン32を下に置いた時)の左右方向を、「左」「右」と夫々定義する。この定義に準じ、通常使用時(液晶ディスプレイ37を上、第1〜第3再生ボタンB1〜B3や設定ボタン32を下に置いた時)にケース正面の左及び下に隣接する面12b及び面12cは、以下の説明では「左側面12b」「下側面12c」と夫々定義される。
【0017】
本実施形態の再生装置1は、再生装置1に接続されたフラッシュメモリカードから音声多重トラックコンテンツを読み出して再生するものである。本実施形態においては、ケース左側面12bに形成されたメモリカードスロット35にフラッシュメモリカードMを差し込むことによって、メモリカードMが接続されるようになっている。
【0018】
また、ケース左側面12bに形成されているヘッドホンジャック38にヘッドホンのプラグを差し込むことによって、再生装置1の利用者は、音声多重トラックコンテンツに含まれる音声メッセージを聴くことができる。
【0019】
なお、ケース左側面12bには電源ボタン31が設けられており、この電源ボタン31を2秒以上押し続けることによって、利用者は再生装置1の起動/終了を行うことができる。
【0020】
第1〜第3再生ボタンB1〜B3は、音声多重トラックコンテンツの所定のトラックの再生を開始するためのボタンである。音声メッセージの再生中にこれらのボタンが押下された場合は、再生するトラックを、押下された再生ボタンに関連づけられたトラックに変更する。なお、どの再生ボタンにどのトラックを割り当てるのかは、設定ボタン32を押すことによって開始する設定モードを用いて、利用者が自由に設定することができる。
【0021】
ケース正面12aにおいて、液晶ディスプレイ37の左右には、バックスキップボタン34B、スキップボタン34Fが夫々配置されている。本実施形態においては、音声多重トラックコンテンツの各トラックは、夫々複数のセグメントに分割され、このセグメントの各々に音声メッセージが記録されている。利用者は、バックスキップボタン34B及びスキップボタン34Fを操作して再生を行うセグメントを選択することができる。また、バックスキップボタン34B及びスキップボタン34Fは、設定モード時にも使用される。
【0022】
本実施形態の再生装置1のブロック図を図2に示す。本実施形態においては、再生装置1の動作は、プロセッサ41によって制御されるようになっている。プロセッサ41は、CPU、RAM、ROMを備えている。すなわち、プロセッサ41による各種処理は、ROMに格納されているプログラムをCPUが読み出してRAMに展開し、これを実行することによってなされる。なお、RAMはCPUがプログラムを実行する際のワークエリアとしても使用される。
【0023】
プロセッサ41は、カードI/F44、ボタンI/F45、画像処理回路46、D/Aコンバータ47と接続されている。カードI/F44は、カードスロット35に装着されたメモリカードMと接続されるようになっており、プロセッサ41はカードI/Fを制御してメモリカードMから、音声多重トラックコンテンツなどのデータを読み取ることができる。ボタンI/Fはボタン31、32、B1〜B3、34B、34Fと接続されており、ボタンが押されたかどうかの判定結果をプロセッサ41に送信することができる。画像処理回路46は、液晶ディスプレイ37を制御するためのデバイスである。プロセッサ41は、この画像処理回路46を制御することによって液晶ディスプレイ37に所望の文字情報を表示させることができる。D/Aコンバータ47は、プロセッサ41から送信されるディジタルの音声信号をアナログの音声信号に変換し、これをヘッドホンジャック38に送る。すなわちプロセッサ41がディジタルの音声信号をD/Aコンバータ49に送ることによって、ヘッドホンジャック38に接続されたヘッドホンを介して音声メッセージを聴くことができる。
【0024】
なお、プロセッサ41、カードI/F44、ボタンI/F45、画像処理回路46及びD/Aコンバータ47は共にケース12内に収納されている。
【0025】
本実施形態における再生装置1は、小型且つ携帯型の再生装置であり、ケース12に内蔵されたバッテリー42によって駆動される。バッテリー42は、リチウムイオン電池等の二次電池である。すなわち、バッテリー42は充電回路43と接続されており、且つ充電回路43は、ケース12の下側面12cに設けられた電源コネクタ39と接続されている。従って、ACアダプタなどの外部電源を電源コネクタ39に接続することによって、バッテリー42を充電することができる。また、外部電源が電源コネクタ39に接続されている時は、この外部電源で再生装置1を駆動させることができる。
【0026】
次いで、本実施形態による音声多重トラックコンテンツのデータ構造につき説明する。図3は、本実施形態の音声多重トラックコンテンツのメモリマップの概略である。音声多重トラックコンテンツの先頭部分には、ヘッダデータを格納するための第1フィールドが定められている。第1フィールドに続いて配置されている第2フィールドには、各セグメントのデータサイズが格納されている。そして、第2フィールドに続いて配置されている第3フィールドには、各セグメントの実データが格納されている。
【0027】
本実施形態の音声多重トラックコンテンツは、トラック数、1トラックあたりのセグメント数、各セグメントの大きさが可変である(ただし、セグメント数はどのトラックでも同じである)。そのため、トラック数、セグメント数がヘッダデータとして格納されるようになっている。
【0028】
第2フィールドに格納されている各セグメントのデータサイズ情報は、トラック数をn、セグメント数をmとすると、一番目のトラック(トラックA)の先頭のセグメント(セグメント1)のデータサイズ、二番目のトラック(トラックB)の先頭のセグメント(セグメント1)のデータサイズ、・・・、n番目のトラックの先頭のセグメントのデータサイズ、一番目のトラックの二番目(セグメント2)のデータサイズ、二番目のトラックの二番目(セグメント2)のデータサイズ、・・・、n番目のトラックのm番目のセグメントのデータサイズ、という順番で配列されている。同様に、第3フィールドに格納されている各セグメントの実データは、一番目のトラック(トラックA)の先頭のセグメント(セグメント1)のデータ、二番目のトラック(トラックB)の先頭のセグメント(セグメント1)のデータ、・・・、n番目のトラックの先頭のセグメントのデータ、一番目のトラックの二番目(セグメント2)のデータ、二番目のトラックの二番目(セグメント2)のデータ、・・・、n番目のトラックのm番目のセグメントのデータ、という順番で配列されている。なお、図3の例においては、n=6である音声多重トラックコンテンツを想定している。
【0029】
第2フィールドにおける各セグメントのデータサイズ情報は夫々4バイトの固定長である。従って、第2フィールドのサイズは、(m×n×4)バイトとなる。それ故に、第1フィールドに格納されているトラック数n、セグメント数mを取得することにより、第2フィールドの先頭のアドレスから第3フィールドの先頭のアドレスへのオフセットを取得することができる。また、第2フィールドの先端のアドレスからあるトラックのあるセグメントのデータサイズが格納されているアドレスへのオフセットは、((4×n×(セグメント番号−1))+4×(トラック番号−1))バイトである。
【0030】
さらに第3フィールドの先頭のアドレスからあるトラックのあるセグメントの実データの先頭へのオフセットは、最初のセグメントから所望のセグメントの直前のセグメントまでのデータ長の合計と等しいので、所望のセグメントのデータサイズ情報が格納されているアドレスが判明すれば一意に計算可能である。
【0031】
なお、第2フィールドは第1フィールドに続いて配置されているので、第1フィールドを固定長とする、或いは第1フィールドの末端を示すマーカーを検出することによって、第2フィールドの先頭のアドレスは容易に取得可能である。
【0032】
以上の演算を行うことによって、所望のセグメントの実データが格納されているアドレスを抽出可能となっている。
【0033】
以上の構成を備えた再生装置1において、音声多重トラックコンテンツを利用する手順につき、以下説明する。まず、メモリカードMをカードスロット35に装着し、次いで電源ボタン31を2秒以上押し続けて再生装置1を起動する。
【0034】
再生装置1が起動すると、プロセッサ41(図2)は、メモリカードMに格納されている音声多重トラックコンテンツをオープンする。そして、音声多重トラックコンテンツの第1フィールド(図3)からトラック数n、セグメント数mを読み出す。次いで、このトラック数n、セグメント数mを用いて第2フィールドのデータサイズ情報の読み取りを行って、各セグメント毎の実データの先頭アドレスを演算し、これをメモリ内に保存する。
【0035】
この後、再生ボタンB1〜B3(図1、2)のいずれかを押すと、そのボタンに関連づけられたトラックのセグメント1の実データの先頭のアドレスをメモリから抽出し、次いでそのアドレスから始まる実データを読み出してこれをディジタルの音声信号に変換し、これをD/Aコンバータ47に送る。次いで、当該トラックの続くセグメントの実データを同様の手順で順次読み出して音声信号に変換し、これをD/Aコンバータ47に送る。かくして、再生ボタンB1〜B3を押すことによって所望のトラックの音声メッセージは先頭のセグメントから順番に再生される。なお、ボタンとトラックの関連づけについては後述する。
【0036】
再生中にボタンが押された時の挙動につき、以下説明する。図4は、音声多重トラックコンテンツのセグメントを、トラック毎にまとめて示したものである。以下の説明においては、第1再生ボタンB1にトラックAが、第2再生ボタンB2にトラックBが、第3再生ボタンB3にトラックCが夫々割り当てられているものとする。なお、本実施形態の音声多重トラックコンテンツのトラック数は4以上であるが、図4においてはトラックA、B、Cの3つのみが示されている。
【0037】
例えば、トラックAのセグメント3の再生が行われている最中にスキップボタン34Fが押されると、一旦再生が停止し、現在再生しているセグメントの次のセグメント、すなわちトラックAのセグメント4の再生が行われる(処理P1)。このセグメントの再生が終了すると、それに続くセグメントの実データの再生が順次行われる。また、トラックAのセグメント3の再生が行われている最中にバックスキップボタン34Lが押されると、一旦再生が停止し、現在再生しているセグメントの前のセグメント、すなわちトラックAのセグメント2の再生が行われる(処理P2)。このセグメントの再生が終了すると、それに続くセグメントの実データの再生が順次行われる。従って、再生中にスキップボタン34R及びバックスキップボタン34Lを操作することによって、あるトラック中で再生するセグメントを適宜選択することができる。
【0038】
また、再生が行われている最中に再生ボタンB1〜B3が押されると、一旦再生が停止し、現在再生されているセグメントのセグメント番号は変えずに、トラックが再生ボタンに関連づけられたものに変わる。例えばトラックAのセグメント5が再生されている時に第2再生ボタンB2が押されると、このボタンに関連づけられたトラックBのセグメント5が再生される(処理P3)。本実施形態においては、各トラックにおいて同一のセグメント番号を有するセグメントに収録される音声メッセージは同一内容であるが、トラックごとに異なる言語で収録されている。例えばトラックAが日本語、トラックBが英語、トラックCがフランス語である時、トラックAのセグメント6が「こんにちは」という日本語の音声メッセージであれば、トラックBのセグメント6は「Hello」という英語の音声メッセージであり、トラックCのセグメント6は「Bonjour」というフランス語の音声メッセージである。従って、再生中に再生ボタンを操作することによって、同一内容の音声メッセージを異なる言語で聴くことができる。
【0039】
本実施形態においては、どの再生ボタンにどのトラックを割り当てられるのかは、設定ボタン32を2秒以上押し続けた時に実行される設定モードから行うことができる。以下、その手順につき説明する。
【0040】
設定ボタン32を2秒以上押し続けたことをボタンI/F45を介してプロセッサ41が検出すると、図5のような設定画面が液晶ディスプレイ37に表示される。設定画面には、各トラックの一覧と、各トラックの音声の言語と、トラックに割り当てられているボタン名が、一行に一トラックずつ表示されている。図5の例においては、トラックはA〜Fの6つであり、トラックAに第1再生ボタンB1が、トラックBに第2再生ボタンB2が、トラックCに第3再生ボタンB3がそれぞれ割り当てられている。なお、どのトラックの音声データがどの言語であるかは、音声多重トラックコンテンツの第1フィールド(図3)に収録されている。すなわち、設定ボタンを2秒以上押し続けたことをボタンI/F45を介してプロセッサ41が検出すると、プロセッサ41は音声多重トラックコンテンツの第1フィールドにアクセスし、トラック数と各トラックの言語情報を読み出し、これに基づいて図5の設定画面を作成し、画像処理回路46を制御して図5のような設定画面を表示させる。なお、どの再生ボタンにどのトラックが割り当てられているかの初期情報はプロセッサ41のROMに記憶されている。
【0041】
また、トラックAが表示されている行には、カーソルCが表示されている。カーソルCの表示される行はスキップボタン34F及びバックスキップボタン34Bを操作することによって変更可能である。換言するならば、スキップボタン34F及びバックスキップボタン34Bを操作することによってカーソルCを上下に移動可能である。例えば、図5の状態からスキップボタン34Fを4回押すと、図6のようにカーソルCはトラックEの位置に移動する。
【0042】
ここで、図6の状態で第1再生ボタンB1を押すと、図7のようにトラックAへの割り当てがクリアされ、カーソルCのあるトラックEに第1再生ボタンB1が割り当てられる。また、図5の状態から第2再生ボタンB2を押すと、図8のようにカーソルCのあるトラックAに第2再生ボタンB2が割り当てられ、代わりに今まで第2再生ボタンB2が割り当てられていたトラックBに第1再生ボタンB1が割り当てられる。
【0043】
そして、所望のトラックに再生ボタンB1〜B3が割り当てられた後、設定ボタン32を2秒以上押し続けると、設定モードが終了し、以降はこの設定内容で再生ボタンB1〜B3と再生されるトラックが関連づけられる。そして、この関連づけの情報は、プロセッサ41のRAMに記憶され、以降はこの設定内容に基づいて、再生ボタンB1〜B3を押した時に再生されるトラックが決定される。
【0044】
なお、本実施形態においては、音声多重トラックコンテンツはメモリカードMに記憶されているが、再生装置1のケース12に内蔵されたハードディスクやフラッシュメモリなどの書き換え可能なストレージやROMに音声多重トラックコンテンツが格納されている構成としてもよい。
【0045】
また、本発明の構成は、本実施形態の再生装置1のようなバッテリーで駆動される携帯型の再生装置において特に有効であるが、据え置き型の再生装置に本発明の構成を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態による音声多重トラックコンテンツ再生装置の外観を示した斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態による音声多重トラックコンテンツ再生装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態の音声トラックコンテンツのメモリマップの概要である。
【図4】本発明の実施の形態の音声多重トラックコンテンツ再生装置において音声多重トラックコンテンツを再生している時の挙動を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態の音声トラックコンテンツの液晶ディスプレイに表示される設定画面の一例である。
【図6】本発明の実施の形態の音声トラックコンテンツの液晶ディスプレイに表示される設定画面の一例である。
【図7】本発明の実施の形態の音声トラックコンテンツの液晶ディスプレイに表示される設定画面の一例である。
【図8】本発明の実施の形態の音声トラックコンテンツの液晶ディスプレイに表示される設定画面の一例である。
【符号の説明】
【0047】
1 音声多重トラックコンテンツ再生装置
32 設定ボタン
34B バックスキップボタン
34F スキップボタン
37 液晶ディスプレイ
41 プロセッサ
B1 第1再生ボタン
B2 第2再生ボタン
B3 第3再生ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数系統の音声が異なるトラックに記録されており、各トラックは複数のセグメントに分割され、各セグメントに音声メッセージが記録されるようになっている音声多重トラックコンテンツを再生するための音声多重トラックコンテンツ再生装置であって、
音声多重トラックコンテンツが記憶される記憶手段と、
前記記憶手段から該音声多重トラックコンテンツの任意のセグメントから音声メッセージを読み出して、これを音声に変換して出力するプロセッサと、
前記記憶手段と、前記プロセッサとを収めたケースと、を有し、
前記ケースの表面には、異なるトラックに記憶された音声メッセージを再生するための該トラックの数より少ない複数の再生ボタンが設けられており、
音声多重トラックコンテンツ再生装置は、前記複数の再生ボタンの各々がどのトラックを再生すべきかを設定するための設定手段を備えている、
ことを特徴とする音声多重トラックコンテンツ再生装置。
【請求項2】
あるトラックのあるセグメントに記憶されている音声メッセージは異なるトラックのセグメントに記憶される音声メッセージと対応するよう構成されており、あるトラックのあるセグメントに記憶されている音声メッセージが再生されている時に複数の再生ボタンのいずれかを押すと、現在再生されているセグメントに対応し且つ押された再生ボタンに関連づけられたトラックのセグメントに記憶されている音声メッセージが再生される、ことを特徴とする請求項1に記載の音声多重トラックコンテンツ再生装置。
【請求項3】
該音声メッセージは、トラックごとに異なる言語で発音されたものが収録されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の音声多重トラックコンテンツ再生装置。
【請求項4】
前記音声多重トラックコンテンツ再生装置は、前記プロセッサが前記ケースに内蔵されているバッテリーによって駆動される携帯型の再生装置である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の音声多重トラックコンテンツ再生装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、前記音声多重トラックコンテンツ再生装置に対して着脱可能なフラッシュメモリである、ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の音声多重トラックコンテンツ再生装置。
【請求項6】
前記設定手段は、該設定を行うための設定モードとトラックの再生を行うための再生モードとを切り換えるモード切換手段と、特定の再生ボタンに割り当てるトラックを選択するためのトラック選択手段と、前記トラック選択手段による選択結果に基づいて特定の再生ボタンに割り当てるトラックを確定する確定手段と、を有する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の音声多重トラックコンテンツ再生装置。
【請求項7】
前記確定手段は前記複数の再生ボタンであり、前記トラック選択手段によってトラックが選択された状態で前記複数の再生ボタンのいずれかが押下されると、前記トラック選択手段によって選択されているトラックが押下された再生ボタンに割り当てられる、ことを特徴とする請求項6に記載の音声多重トラックコンテンツ再生装置。
【請求項8】
前記トラック選択手段は、該再生モード時においては再生するセグメントを変更するためのセグメント選択手段である、ことを特徴とする請求項6または7に記載の音声多重トラックコンテンツ再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−96491(P2008−96491A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274866(P2006−274866)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】