音響機器
【課題】 必要なメモリ容量を増やさずにリコール可能なパラメータセット数を増やせるようにする。
【解決手段】 ダイナミクスのライブラリ画面(その2)4において、コンボボックス3dでシーン番号26を指定すると、シーンメモリに記憶された1ないし複数のシーンデータに含まれるタイプ欄3cで指定されたタイプ"Gate"に対応するパラメータセットのリストがリスト欄3fに表示される。リスト欄3fにおいて選択された入力ch3(i03: Vo 3)の"Gate"のパラメータセットの特性が第2グラフ欄3eに表示される。"Recall"ボタン3gをクリックすると、入力ch3(i03: Vo 3)の"Gate"のパラメータセットで、カレントメモリのカレントデータの中の"Gate"のパラメータセットが上書きされる。
【解決手段】 ダイナミクスのライブラリ画面(その2)4において、コンボボックス3dでシーン番号26を指定すると、シーンメモリに記憶された1ないし複数のシーンデータに含まれるタイプ欄3cで指定されたタイプ"Gate"に対応するパラメータセットのリストがリスト欄3fに表示される。リスト欄3fにおいて選択された入力ch3(i03: Vo 3)の"Gate"のパラメータセットの特性が第2グラフ欄3eに表示される。"Recall"ボタン3gをクリックすると、入力ch3(i03: Vo 3)の"Gate"のパラメータセットで、カレントメモリのカレントデータの中の"Gate"のパラメータセットが上書きされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響機器のシーンメモリのシーンデータのパラメータセットをリスト化して、仮想的なライブラリとして提示することができる音響機器に関する。
【背景技術】
【0002】
音楽コンテンツのレコーディングやコンサートにおける音声信号の調整等に使用される音響機器として、デジタルミキサが知られている。従来のデジタルミキサにおいては、各入力チャンネルのイコライザ(IEQ)、ダイナミクス(GATE or COMP)、出力チャンネルのイコライザ(OEQ)、ダイナミクス(GATE or COMP)、ミキサシステムのエフェクタ(EFFECT)、グラフィックイコライザ(GEQ)等の複数の機能ブロックを備えている。そして、その同種の機能ブロック毎に、その機能ブロックのパラメータセットを複数セット記憶するライブラリを備えており、ライブラリから所望のパラメータセットを機能ブロック毎にリコールすることができるようにされている。このように、各種機能ブロックのライブラリを有するデジタルミキサが知られている。
【0003】
また、機能ブロックのパラメータを編集する編集画面に、"Copy"ボタンと"Paste"ボタンとが表示されているデジタルミキサが知られている。このデジタルミキサでは、ある機能ブロックの編集画面で"Copy"ボタンを操作して、カレントメモリのその機能ブロックのパラメータセットをコピーバッファに入れ、その機能ブロックと同種の別の機能ブロックの編集画面で"Paste"ボタンを操作して、そのパラメータセットをカレントメモリの別の機能ブロックのパラメータセットに上書きすることができる。このように、パラメータセットのコピー&ペースト機能を有するデジタルミキサが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ヤマハデジタルミキシングコンソールM7CL 取扱説明書,P.31-37,[online], [平成23年6月17日検索],インターネット<http://www2.yamaha.co.jp/manual/pdf/pa/japan/mixers/m7cl_ja_om_e0.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のデジタルミキサにおいて、機能ブロック毎の多くのパラメータセットからなるライブラリを保存しておくためには、多くの記憶領域が必要になると云う問題点があった。
また、パラメータセットのコピー&ペースト機能を使用する際に、2つのシーンをまたいで、同種の2つの機能ブロック間でデータセットのコピーをする場合は、コピー元のシーンをリコールし、コピー元の機能ブロックのパラメータセットをコピーバッファに入れ(コピー)、さらに、コピー先のシーンをリコールし、コピー先の機能ブロックのパラメータセットに上書き(ペースト)して、そのシーンをストアしなければならず、操作手順が煩雑になるという問題点があった。この場合、仲介役として、コピーバッファの代わりに、その機能ブロックのライブラリを使用したとしても、手順はほぼ同じで煩雑になってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、必要なメモリ容量を増やさずにリコール可能なパラメータセット数を増やすことができる音響機器を提供することを目的としている。また、本発明は、パラメータセットのコピー&ペースト機能を簡単な手順で行うことができる音響機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の音響機器は、入力する複数の音響信号に対して、複数の処理ブロックからなる信号処理を施し、信号処理の施された複数の音響信号を出力する音響機器であって、ディスプレイと、前記複数の処理ブロックに対応する複数のパラメータセットからなるカレントデータを記憶したカレントメモリと、該カレントメモリの前記カレントデータに基づいて、前記複数の処理ブロックからなる信号処理を実行する信号処理部と、前記カレントデータと同じデータ構成のシーンデータが複数記憶されているシーンメモリと、1のシーンデータを指定してストアの実行が指示されたとき、前記カレントメモリからカレントデータを読み出し、前記シーンメモリの該指定された1のシーンデータに上書きするシーンストア部と、1のシーンデータを指定してリコールの実行が指示されたとき、前記シーンメモリから該指定された1のシーンデータを読み出し、前記カレントメモリのカレントデータに上書きするシーンリコール部と、1の処理ブロックを指定してライブラリの表示が指示されたとき、前記ディスプレイに、前記シーンメモリに記憶された1ないし複数のシーンデータに含まれる、該指定された処理ブロックに対応するパラメータセットのリストを含むライブラリ画面を表示するライブラリ表示部と、該リストの1のパラメータセットを指定してリコールの指示がされたとき、前記シーンメモリから該指定された1のパラメータセットを読み出し、前記カレントメモリのカレントデータの中の、前記指定された処理ブロックに対応するパラメータセットに上書きするシーンライブラリリコール部とを備えることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1の処理ブロックを指定してライブラリの表示が指示されたときに、シーンメモリに記憶された1ないし複数のシーンデータに含まれる、該指定された処理ブロックに対応するパラメータセットからなるライブラリのリストを表示している。この場合、当該パラメータセットの実体データはシーンデータにあることから、ライブラリに必要なメモリ容量を増やさすことなくリコール可能なパラメータセット数を増やすことができる。また、ライブラリのリストの1のパラメータセットを指定してリコールの指示がされたとき、シーンメモリから該指定された1のパラメータセットを読み出し、カレントメモリのカレントデータの中の、指定された処理ブロックに対応するパラメータセットに上書きしている。これにより、パラメータセットのコピー&ペースト機能を簡単な手順で行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の音響機器の実施例であるデジタルミキサの回路構成を示す回路ブロック図である。
【図2】本発明の音響機器の実施例であるデジタルミキサのパネルの構成を示す図である。
【図3】本発明の音響機器の実施例であるデジタルミキサにおける信号処理の等価回路を示す回路ブロック図である。
【図4】本発明の音響機器の実施例であるデジタルミキサにおけるチャンネルへのインサーションの様子を示す図である。
【図5】本発明にかかる実施例のデジタルミキサにおけるメモリとライブラリのデータ構造を示す図である。
【図6】本発明にかかる実施例のデジタルミキサに表示されるダイナミクスの編集画面を示す図である。
【図7】本発明にかかる実施例のデジタルミキサに表示されるダイナミクスのライブラリ画面(その1)を示す図である。
【図8】本発明にかかる実施例のデジタルミキサに表示されるダイナミクスのライブラリ画面(その2)を示す図である。
【図9】本発明にかかる実施例のデジタルミキサで実行されるフローチャートで使用される変数の図表である。
【図10】本発明にかかる実施例のデジタルミキサで実行されるダイナミクスのライブラリ画面を開く指示に応じた処理のフローチャートである。
【図11】本発明にかかる実施例のデジタルミキサで実行される変数値を変更するユーザ操作に応じた処理のフローチャートである。
【図12】本発明にかかる実施例のデジタルミキサで実行されるリコールボタンの操作に応じた処理のフローチャートである。
【図13】本発明にかかる実施例のデジタルミキサで実行されるリコール元に関する表示更新処理のフローチャートである。
【図14】本発明にかかる実施例のデジタルミキサで実行されるストアボタンの操作に応じた処理のフローチャートである。
【図15】本発明にかかる実施例のデジタルミキサに表示されるダイナミクスのライブラリ画面(その3)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の音響機器の実施例であるデジタルミキサにかかる回路構成を示す回路ブロック図を図1に示す。
図1に示す本発明の音響機器の実施例であるデジタルミキサ1は、デジタルミキサ1の全体の動作を制御すると共に、パネルに設けられた操作子の操作に応じて制御信号を生成しているCPU(Central Processing Unit)10と、CPU10が実行するミキサ関連処理のプログラム等の動作ソフトウェアが格納されている書き換え可能な不揮発性のフラッシュメモリ11と、CPU10のワークエリアや各種データ等が記憶されるRAM(Random Access Memory)12とを備えている。このように、フラッシュメモリ11に動作ソフトウェアを格納することにより、フラッシュメモリ11内の動作ソフトウェアを書き換えることで、動作ソフトウェアをバージョンアップすることができる。また、ディジタルレコーダ等のその他の機器は、入出力インタフェースであるその他I/O 13を介してデジタルミキサ1に接続される。
【0011】
デジタルミキサ1の全ての入力と全ての出力は波形I/O(波形データインタフェース)14により行われる。この波形I/O14は、アナログ信号が入力される複数のA入力ポートと、アナログ信号が出力される複数のA出力ポートと、外部からディジタル信号を入力すると共に外部へディジタル信号を出力する双方向とされている複数のD入力/D出力ポートとを備えている。また、信号処理部(DSP)15は、音響信号のサンプリング周期毎に複数ステップのマイクロプログラムを実行する1つ以上のDSP(Digital Signal Processor)を用いて構成されており、CPU10の制御の基で、音響信号に対するミキシング処理やエフェクト処理などを行っている。表示器16は、音響信号処理にかかる設定画面等を表示する液晶表示装置等からなるディスプレイである。電動フェーダ17は、入力チャンネルの音響信号あるいは出力チャンネルの音響信号のレベルを調整する音量設定部であり、手動および電動によりレベル調整することができる。操作子18は、複数チャンネル(以下、「チャンネル」を「ch」と表す)分設けられているchストリップを入力chあるいは出力chに割り当てる割当スイッチ、設定される値を増減する増減キー、設定される値を選択するロータリエンコーダ、設定した値を確定させるエンターキー等からなるパネルに設けられている操作子や、表示器16に表示された画面上で矢印型のカーソルの位置を制御し、クリック、ドラッグ等の操作を行うことができるマウス等のポインティングデバイスである。各部はバス19に接続されている。
【0012】
次に、本発明にかかる実施例のデジタルミキサ1における各種操作子18が設けられているパネルの構成を図2に示す。
図2において、表示器16とされるタッチパネル30の下側には、chストリップ40−1,40−2,40−3,・・・・が8本と、ステレオ用のSTchストリップ40−9が1本設けられている。8本のchストリップ40−1,・・・には、そのchストリップに割り当てられたchを選択するSELスイッチ41aと、そのchをオンオフするオンSW41bと、割り当てられたchのレベルを制御する電動フェーダ17におけるフェーダつまみ41cと、割り当てられたchを検聴するCUEスイッチ41dがそれぞれ設けられている。STchストリップ40−9にも同様にSELスイッチ41a、オンSW41bと、フェーダつまみ41cと、CUEスイッチ41dが設けられている。なお、SELスイッチ41aを押すと、押されたSELスイッチ41aのchストリップに割り当てられているchの詳細なパラメータの設定画面がタッチパネル30に表示されてパラメータの設定ができたり、当該chをミュートグループ等のグループに属させることができるようになる。
【0013】
デジタルミキサ1のユーザ(オペレータ)が、パネル右側の中段に設けられている「マスタ1」のボタン32aを押すと、8本のchストリップ40−1,・・・に、MIXバスの出力とされる出力ch1ないし出力ch8が割り当てられる。また、「マスタ2」のボタン32bを押すと、8本のchストリップ40−1,・・・に、出力ch9ないし出力ch16が割り当てられる。これにより、ボタン32a,32bを切り換えることで、出力ch1〜ch16を8本のchストリップ40−1,・・・を使用して制御できるようになる。さらに、「マスタ2」の下の「レイヤ1」のボタン33aを押すと、8本のchストリップ40−1,・・・に、入力ch1ないし入力ch8が割り当てられる。また、「レイヤ2」のボタン33bを押すと、8本のchストリップ40−1,・・・に、入力ch9ないし入力ch16が割り当てられる。さらに、「レイヤ3」のボタン33cを押すと、8本のchストリップ40−1,・・・に、入力ch17ないし入力ch24が割り当てられる。さらにまた、「レイヤ4」のボタン33dを押すと、8本のchストリップ40−1,・・・に、入力ch25ないし入力ch32が割り当てられる。これにより、ボタン33a〜33dを切り換えることで、入力ch1〜ch32を8本のchストリップ40−1,・・・を使用して制御できるようになる。
【0014】
このようにして、16chの出力chと、32chの入力chのレベル制御やCUE設定を、8本のchストリップ40−1,・・・により8chずつ制御できるようにしている。すなわち、8本のchストリップ40−1,・・・は、全入力chおよび全出力chに対応して、8ch毎の入力chあるいは出力chを8本のchストリップ40−1,・・・でそれぞれ制御できるようになる。また、ステレオchのレベル制御やCUE設定は、STchストリップ40−9で制御することができる。
「レイヤ4」のボタン33dの下にタッチパネル30に表示されるカーソルを上下左右に移動させるカーソル移動キー34と、種々の設定可能な値を増減する増減キー35と、種々の設定可能な値を選択できるロータリエンコーダ36と、増減キー35やロータリエンコーダ36により選択された設定値や、カーソルにより選択されたオブジェクトを確定させるエンターキー37とが設けられている。また、パネルの右側の一番上にオン/オフなどのあらかじめプログラムされた機能を実行するためのU1〜U6の6つのユーザ定義キー(user defined keys)31が設けられている。ユーザ定義キー31のU1〜U6には、それぞれ異なる機能をアサインできるようにされており、例えば、ミュートグループのミュートのオン/オフを切り換えるミュートグループマスタボタンをアサインすることにより、ユーザ定義キー31のU1〜U6を押すことにより、アサインされたミュートグループのオン/オフを切り換えることができるようになる。なお、ミュートグループマスタ(MUTE GROUP MASTER)機能は、ミュートグループに属する全chのミュートのオン/オフ状態の切り替えを一括して行う機能である。
【0015】
次に、本発明の実施例にかかるデジタルミキサ1における信号処理の等価回路を示すブロック図を図3に示す。
図3において、複数のアナログ入力ポート(A入力)50に入力されたアナログ信号は、波形I/O14に内蔵されているAD変換器によりディジタル信号に変換されて入力パッチ52に入力される。また、複数のディジタル入力ポート(D入力)51に入力されたディジタル信号は、そのまま入力パッチ52に入力される。入力パッチ52では、信号の入力元である複数の入力ポートのそれぞれを、32チャンネルとされる複数の入力ch部53の各入力チャンネルに選択的にパッチ(結線)することができ、各入力チャンネルには、入力パッチ52でパッチされた入力ポートからの信号が供給される。
【0016】
入力ch部53における各入力chには、アッテネータ、イコライザ、コンプレッサ(ダイナミクス)、フェーダ、パン、各バスへの出力をオンオフするセンドSW部、各バスへの出力レベルを調整するセンドレベル調整部等が備えられており、これらの入力chにおいて、周波数バランスやレベル制御およびMIXバス54への送出レベルが調整される。入力ch部53から出力される32chのディジタル信号は、それぞれMIX1〜16の16本のMIXバス54の1ないし複数に選択的に出力される。MIXバス54においては、16本の各バスにおいて、32入力chのうちの任意の入力chから選択的に入力された1ないし複数のディジタル信号がミキシングされて、合計16chのミキシング出力がMIX出力ch部55に出力される。これにより、16chのミキシング出力を得ることができる。また、図示されていないステレオバスとステレオ出力chとを設けて、32入力chのうちの任意の入力chから選択的にステレオバスに入力することにより、1ないし複数のディジタル信号がミキシングされたステレオのミキシング出力をステレオ出力chに出力するようにしてもよい。
【0017】
MIX出力ch部55における各出力chには、イコライザ、コンプレッサ、フェーダ等が備えられており、これらの出力chにおいて、周波数バランスやレベル調整および出力パッチ56へ送出されるレベルが制御される。出力パッチ56では、信号の入力元であるMIX出力ch部55からの16chの出力ch信号の何れか1つを、アナログ出力ポート部(A出力)58やディジタル出力ポート部(D出力)59の複数の出力ポートに選択的にパッチ(結線)することができ、各出力ポートには、出力パッチ56でパッチされた出力chからの信号が供給される。
また、複数のアナログ出力ポートを備えるアナログ出力ポート部(A出力)58へ供給されたディジタル出力信号は、波形I/O18に内蔵されているDA変換器によりアナログ出力信号に変換されてアナログ出力ポートから出力される。そして、アナログ出力ポート部(A出力)58から出力されるアナログ出力信号は、増幅されてメインのスピーカから放音される。さらに、このアナログ出力信号は出演者が耳に装着するインイヤーモニタに供給されたり、その出演者の近傍に置かれたステージモニタスピーカで再生される。また、複数のディジタル出力ポートを備えるディジタル出力ポート部(D出力)59から出力されるディジタルオーディオ信号は、レコーダや外部接続されたDAT等に供給されてディジタル録音することができるようにされている。
【0018】
さらに、デジタルミキサ1には8機分の内蔵エフェクタ部57が備えられており、何れかのchへの挿入が設定された場合は、そのchの途中のブロックから出力される音響信号が内蔵エフェクタ部57へ入力され、エフェクト処理が施された音響信号が、同じchのその次のブロックへ入力される。例えば、入力ch部53のある入力ch53aへ内蔵エフェクタ部57の挿入が設定された場合は、入力ch53aの挿入されるポイントの前のブロックから出力される音響信号が仮想的な結線により、出力パッチ56から内蔵エフェクタ部57へ供給されてエフェクト処理が施される。エフェクト処理が施された音響信号は、仮想的な結線により入力パッチ52から入力ch53aの挿入されるポイントの後のブロックへ入力されるようになる。また、MIX出力ch部55のある出力ch55aへ内蔵エフェクタ部57の挿入が設定された場合も同様に、出力ch55aの挿入されるポイントの前のブロックから出力される音響信号が仮想的な結線により、出力パッチ56を介して内蔵エフェクタ部57へ供給されてエフェクト処理が施される。エフェクト処理が施された音響信号は、仮想的な結線により入力パッチ52から出力ch55aの挿入されるポイントの後のブロックへ入力されるようになる。
なお、何れのchへの挿入も設定されていない場合には、出力パッチ56で設定された、任意の1の出力chからの音響信号が内蔵エフェクタ部57へ入力され、エフェクト処理が施された音響信号が、入力パッチ52で設定された、任意の1の入力chへ出力されるようになる。
【0019】
このような、デジタルミキサにおけるchへのエフェクタのインサーションの様子を図4に示す。
図4には入力chおよび出力chの構成が示されている。この場合、入力chは縦続接続されたアッテネータ(ATT)60、4バンドパラメトリックイコライザ(PEQ)61、コンプレッサ(COMP)63、フェーダおよびchオンSW64、各バスへのセンド調整部65を備えている。また、出力chは破線のブロックで示すATT60と各バスへのセンド調整部65とを除く3つの処理ブロックを備えている。各ch毎に、エフェクタを挿入するポイントを1箇所選択でき、挿入が設定できるポイントは白抜きの矢印で示すブロックとブロックとの間とされる。例えば、図4に示すようにchの4バンドPEQ61とCOMP63の間にインサーションが設定され、かつそのインサーションがオンされた場合は、4バンドPEQ61とCOMP63の間にエフェクタ(内部EF or 外部EF)62が挿入されるようスイッチSWが切り換えられた図4に示す結線となる。すなわち、4バンドPEQ61の出力はエフェクタ62によりエフェクト処理が施され、スイッチSWを介してエフェクタ62の出力がCOMP63に入力される。なお、この図におけるコンプレッサ(COMP)63は、コンプレッサとしての動作だけでなく、ゲート、ダッカー、ディエッサーとしての動作も可能な、後述する図6の編集画面における「ダイナミクス」と同じものである。
【0020】
本発明の実施例にかかるデジタルミキサ1においては、パネルに設けられているフェーダ、ノブやスイッチ等の操作子により設定されたch毎の信号処理用のパラメータからなるパラメータセットはRAM12上のカレントメモリに格納される。このカレントメモリ上のパラメータセットを、シーンとしてシーンメモリにストアすることができる。シーンメモリは図示していないハードディスク等の大容量記憶媒体の記憶領域や、その他I/O13を介して接続されているUSBメモリやSDメモリ等のリムーバブルな外部記憶媒体の記憶領域に確保されている。このシーンメモリのデータ構造を図5(a)に示す。この図に示すように、シーンメモリには、シーンの各々にシーン番号が付与されてストアされる。シーンメモリに記憶可能なシーン数は機種により異なるが、例えば100シーンとされた場合は、図5(a)に示すように「シーン1」、「シーン2」、「シーン3」・・・、「シーン100」としてストアされる。そして、デジタルミキサ1のユーザが、シーン番号を指定してリコール操作することにより、指定されたシーン番号のシーンデータが読み出されてカレントメモリ上のパラメータセットが読み出されたシーンデータにより上書きされ、そのシーンに応じた設定状態がデジタルミキサ1で再現されるようになる。これにより、一度設定した会議室、宴会場、ミニシアターや多目的ホールまでの様々なシーンを再現することができるようになる。
【0021】
また、カレントメモリのデータ構造を図5(b)に示す。カレントメモリはRAM12上に記憶領域が確保されており、カレントメモリにはカレントデータが保存されている。カレントデータは、入力パッチ52のパラメータセットである入力パッチPS、入力ch部53のパラメータセットである入力ch部PS、出力ch部55のパラメータセットである出力ch部PS、出力パッチ56のパラメータセットである出力パッチPS、内蔵エフェクタ部57の8機分のエフェクタのパラメータセットであるエフェクタ部PS、その他のパラメータセットであるその他PSから構成されている。また、入力ch部PSは、入力ch1のパラメータセットである入力ch1PSないし入力ch32のパラメータセットである全32入力chの各入力chのパラメータセットから構成されている。図示していないが、出力ch部PSは全16出力chの各出力chのパラメータセットから構成されている。入力chのパラメータセットの構成を入力ch3のパラメータセットである入力ch3PSを例に挙げて説明する。入力ch3PSは、ATT60のパラメータセットであるAtt_PS、4バンドPEQ61のパラメータセットであるEq_PS、COMP63のパラメータセットであるComp_PS、フェーダおよびchオンSW64のパラメータセットであるFader_PS、各バスへのセンド調整部65のパラメータセットであるSend_PS、チャンネル名等のその他のパラメータセットであるOther_PSから構成されている。このように、入力chのパラメータセットは入力chを構成する各処理ブロックのパラメータセットからなり、入力ch3PS以外の各入力chのパラメータセットも同様とされている。さらにまた、出力chのパラメータセットは出力chを構成する各処理ブロックのパラメータセットから構成されている。
【0022】
本発明の実施例にかかるデジタルミキサ1においては、上記した各種パラメータセットの処理ブロック専用のライブラリ(以下、「Indiv.ライブラリ」という)を備えている。例えば、コンプレッサ(COMP)63(すなわち、後述するダイナミクス)の専用ライブラリであるComp Individual.(Comp Indiv.)ライブラリのデータ構造を図5(c)に示す。この図に示すComp Indiv.ライブラリには、20パラメータセット分のCOMPのパラメータセットが各々に番号が付与されてComp_PS1、Comp_PS2、Comp_PS3、・・・Comp_PS20として格納されている。COMP63は、タイプが「コンプレッサ」に設定されたとき、ある一定音量を超えた音を一定の割合で小さくする(圧縮する)、いわゆるコンプレッサの動作を行い、そのパラメータセットには、音を圧縮しはじめる音量を決めるスレッショルド、圧縮する比率を決めるレシオ、音量がスレッショルドに達してから実際に圧縮し始めるまでの時間を決めるアタックタイム、スレッショルドを下回ってから実際に圧縮をやめるまでの時間を決めるリリースタイム、出力する音量を調節するゲイン等のパラメータが含まれている。なお、COMP63のパラメータセットのパラメータ構成は、設定されたタイプに応じて変化する。デジタルミキサ1のユーザが、Comp_PSの番号を指定してリコール操作すると、指定されたComp_PSの番号のパラメータセットが読み出されて、カレントメモリ上の選択されたchのCOMPのパラメータセットが読み出されたパラメータセットにより上書きされ、そのパラメータセットに応じた設定状態が選択されたchのCOMPで再現されるようになる。また、ユーザがストア操作することより、カレントメモリ上のCOMPのパラメータセットを、Comp Indiv.ライブラリに所望の番号のComp_PSとしてストアすることができる。
【0023】
本発明において特徴的な構成は、シーンの各chにおける各処理ブロックのパラメータセットから所望のタイプの処理ブロック用のパラメータセットを抽出してリスト化した仮想的なライブラリ(以下、「Sceneライブラリ」という)を作成してディスプレイ(表示器16)に表示することができる構成とされている。例えば、シーンメモリ上のシーンの各chのパラメータセットからCOMPの処理ブロック用のパラメータセットを抽出して作成された仮想的なライブラリであるComp Sceneライブラリのデータ構造を図5(d)に示す。Comp Sceneライブラリには、シーンメモリ上のシーンから抽出したCOMPの処理ブロック用の各パラメータセットであるComp_PS、Comp_PS、Comp_PS・・・から構成されている。これらのComp_PSのデータの実体はシーンメモリ上にありComp Sceneライブラリには存在していない。そして、Comp_PSのいずれかを指定してリコール操作することにより、指定されたComp_PSのパラメータデータが読み出されて、カレントメモリ上の選択されたchのCOMPのパラメータセットが読み出されたパラメータセットにより上書きされ、そのパラメータセットに応じた設定状態が選択されたchのCOMPで再現されるようになる。
【0024】
本発明の実施例にかかるデジタルミキサ1において、オペレータが所定の編集ボタンを操作して、ダイナミクス(COMP)の編集開始を指示すると、表示器16には、図6に示されるダイナミクスの編集画面2が表示される。
図6に示すダイナミクスの編集画面2において、上段の幅の狭い横長の欄のほぼ中央に"Library"ボタン2aが設けられている。この"Library"ボタン2aをクリックすることにより、後述するダイナミクスのライブラリ画面が表示器16に表示されるようになる。上段の下の大きな領域において、上部左側には、デジタルミキサ1で現在編集対象として選択されているチャンネルを示す選択ch欄2bが設けられている。編集対象のチャンネルは、ユーザが、複数の各chストリップ40のSELスイッチ41aを操作することにより選択することができる。また、この選択ch欄2bをクリック操作することによって表示器16に表示されるch一覧の中から選択することもできる。ここでは、チャンネル名が「Vo. 1」(ボーカル1を示す)の入力ch1(ich01:Vo 1)が、編集対象のチャンネルとしてch欄2に表示されている。編集画面2のほぼ中央の左側にはダイナミクス系エフェクトのタイプを選択するタイプ欄2cが設けられており、図示する例では楽音と共に入力される不要なノイズをカットするためのエフェクトである"Gate"(ノイズゲート)が選択されており、入力ch1のCOMP63はノイズゲートの動作を行っている。ダイナミクスのエフェクトのタイプには、その他に特定のchの音を大きくして、その他のchを小さくするためのエフェクトである"Duck"(ダッキング)、ある一定音量を超えた音を一定の割合で小さくする(圧縮する)エフェクトである"Comp"(コンプレッサー)」、ボーカルの「サ行」の音を小さくするためのエフェクトである"De.Es"(ディエッサー)等がある。
【0025】
タイプ欄2cの右側に設けられているグラフ欄2dには、ch欄2bで選択されているchにおけるタイプ欄2cにおいて選択された"Gate"のパラメータセットの大まかな入出力特性が表示されている。タイプ欄2cおよびグラフ欄2dの下には、タイプ欄2cで選択されたエフェクトのパラメータを編集するための操作子の摘み2fが複数設けられており、各摘み2fの操作に応じて、パラメータセットの対応するパラメータの値が変更され、グラフ欄2dに表示されている入出力特性が変化する。ここで変更される"Gate"のパラメータには、これ以下の音量でゲートを効かせるスレッショルド、アタックタイム、ホールドタイム、ディケイタイム、ゲートする際の減衰量を示すレンジ等が含まれる。また、右上に設けられている"ON"ボタン2eはダイナミクスのオン/オフを切り替えるボタンであり、図示する場合はダイナミクスがオンに切り替えられた状態とされている。このダイナミクスの編集画面2において、"Library"ボタン2aをクリックすることにより、表示器16に表示されるダイナミクスのライブラリ画面(その1)3を図7に示す。
【0026】
図7に示すダイナミクスのライブラリ画面(その1)3は、"Indiv."か"Scene"のシーン番号かを選択するコンボボックス3dにおいて"Indiv."が選択された際の画面とされている。コンボボックス3dにおいて"indiv."がオペレータにより選択されると、デジタルミキサ1に用意されているComp indiv.ライブラリのパラメータセットから、ダイナミクス系エフェクトのパラメータセットのデータ番号と名称のリストが作成されてリスト欄3fに表示される。このリスト欄3fにおいて、図示する例では"07"番の"fon"と云う"Comp"タイプのパラメータセットが選択されており、そのパラメータセットの大まかな入出力特性が第2グラフ欄3eに表示されている。そして、選択ch欄3aには、現在編集対象として選択されている入力ch1(ich01:Vo 1)」が表示され、その入力ch1に設定されている"Gate"タイプのパラメータセットの大まかな入出力特性が第1グラフ欄3bに表示されている。なお、選択ch欄3aに表示されているチャンネルが、リコール先のチャンネルとなる。
【0027】
ここで、ユーザは第1グラフ欄3bに表示されている"Gate"の入出力特性と第2グラフ欄3eに表示されている"Comp"の入出力特性とを対比して、入力ch1のCOMP63の入出力特性を、現在の"Gate"の入出力特性から第2グラフ欄3eに表示されている"Comp"の入出力特性に変更したい場合には、"Recall"ボタン3gをクリックする。"Recall"ボタン3gをクリックすると、選択ch欄3aに表示されている入力ch1のCOMP63を制御するパラメータセットが、"fon"という名称の"Comp"のパラメータセットに変更されるようになる。すなわち、Comp indiv.ライブラリが格納されているライブラリメモリの記憶領域Comp_PS7から"fon"という名称の"Comp"タイプのパラメータセットが読み出されて、カレントメモリにおける入力ch1のパラメータセットに上書きされるようになる。同時に、第1グラフ欄3bに、入力ch1のCOMP63にリコールされたパラメータセットの大まかな現特性が表示されるようになる。
また、ユーザが"Store"ボタン3hをクリックすると、リスト欄3fで選択された"fon"と云う名称の"Gate"のパラメータセットが、選択ch欄3aに表示されている入力ch1のCOMP63のパラメータセットで上書きされるようになる。すなわち、カレントメモリにおける入力ch1のCOMP63のパラメータセットが読み出されて、Comp indiv.ライブラリの記憶領域Comp_PS7の"fon"と云う名称のパラメータセットに上書きされるようになる。同時に、第2グラフ欄3eにComp indiv.ライブラリの記憶領域Comp_PS7にストアされたパラメータセットの大まかな入出力特性が表示されるようになる。なお、indiv.ライブラリへのパラメータセットをストアする際には、ユーザは、そのストアするパラメータセットに任意の名称("fon"や"chou"など)を付与することができる。
【0028】
次に、コンボボックス3dにおいてユーザにより"Scene"のシーン番号が選択された際のダイナミクスのライブラリ画面(その2)4を図8(a)に示す。
図8(a)では、コンボボックス3dにおいてシーン番号26のシーン名"foo"(26:foo)が指定されており、デジタルミキサ1のシーンメモリ上のシーン番号26のシーン名"foo"のパラメータセットから、各chのダイナミクス系エフェクトのパラメータセット(Comp_PS)が抽出される。抽出したパラメータセットにより、当該エフェクトの仮想的なSceneライブラリが作成されて、そのリストがリスト欄3fに表示される。このダイナミクスのライブラリ画面(その2)4では、"Store"ボタン3hが無効化されてダイナミクスのタイプでフィルタリングしたリストを表示するための"Type filter"ボックス3iが有効化されている。"Type filter"ボックス3iにおける右端の「▼」をクリックすると図8(b)に示すダイナミクスのタイプリスト3jが表示される。このタイプリスト3jにおいて、図示する場合は"Gate"が選択されており、リスト欄3fには、全入力chおよび全出力chのCOMP63のパラメータセットのうち、シーン番号26のシーンにおいて"Gate"タイプが設定されているパラメータセットのみがフィルタリングされ、その抽出されたパラメータセットに係るch番号とch名のリストが作成され、作成されたリストが表示される。このリスト欄3fにおいて、図示する例ではch名"Vol 3"の入力ch3(i03)における"Gate"のパラメータセットが選択されている。このように、"Type filter"ボックス3iによりフィルタタイプを指定しているのは、各シーンの全chを対象とすると、選択肢が膨大になるからであり、ダイナミクスのタイプを指定することにより、適宜フィルタリングして選択肢を絞るようにしている。なお、"Type filter"ボックス3iで"any"を選択した場合は、フィルタリングはなく全chのCOMP63のパラメータセットがリスト表示される。
リスト欄3fで選択されたch名"Vol 3"の入力ch3(i03)の"Gate"のパラメータセットの大まかな入出力特性が第2グラフ欄3eに表示されている。そして、選択ch欄3aには、入力ch1(ich01:Vo 1)が表示され、その入力ch1における"Gate"タイプのパラメータセットの大まかな入出力特性が第1グラフ欄3bに表示されている。先ほどと同様、選択ch欄3aに表示されているチャンネルが、リコール先のチャンネルとなる。
【0029】
ここで、ユーザは第1グラフ欄3bに表示されている"Gate"の現特性と第2グラフ欄3eに表示されている"Gate"の入出力特性とを対比して、入力ch1のCOMP63の入出力特性を、現在の"Gate"の入出力特性から第2グラフ欄3eに表示されている入出力特性に変更したい場合は、"Recall"ボタン3gをクリックする。"Recall"ボタン3gをクリックすると、選択ch欄3aにおいて表示されている入力ch1のCOMP63を制御するパラメータセットが、シーン番号26のシーン名"foo"のシーンデータにおけるch名"Vo.3"の入力ch3(i03:Vo.1)のCOMP63のパラメータセットに変更されるようになる。すなわち、シーンメモリのシーン番号26のシーンデータにおける入力ch3のCOMP63のパラメータセットが読み出されて、カレントメモリにおける入力ch1のCOMP63のパラメータセットに上書きされるようになる。同時に、第1グラフ欄3bに入力ch1のCOMP63にリコールされた"Gate"のパラメータセットの大まかな入出力特性が表示されるようになる。なお、リスト欄3fに表示されているSceneライブラリは仮想的なライブラリであって、このSceneライブラリにパラメータセットの実体はなく、パラメータセットの実体は当該シーン番号のシーンデータ中に含まれている。
なお、指定されたSceneライブラリにおけるchの指定では、入力chだけでなく、出力chも指定可能とされている。また、"Scene"が選択された際のダイナミクスのライブラリ画面(その2)4では、"Store"ボタンが無効化されて存在しないことから、間違ってリコール元のシーンに上書きすることを防止することができる。
【0030】
本発明の実施例にかかるデジタルミキサ1において実行される各種処理のフローチャートを以下に説明するが、このフローチャートにおいて使用する変数の表を図9に示す。この表において、変数"SCN"は現在編集対象のchとして選択され、選択ch欄3aに表示されている選択chのch番号を示す変数であり、識別子"dynaID"は処理ブロックの種別としてのダイナミクスを特定する定数であり、変数"SN(dynaID)"と変数"CN(dynaID)"とは、ダイナミクスの仮想的なライブラリからリコールを行う場合の、リコール元のシーン番号とch番号とを示す変数であり、変数"DN(dynaID)"は、ダイナミクスの専用のライブラリ(すなわち、Comp indiv.ライブラリ)からリコールを行う場合の、リコール元のデータ番号を示す変数であり、変数"FT(dynaID)"は"Type filter"ボックス3iで指定するダイナミクスタイプを示す変数である。処理ブロックの種別を示す識別子としては、"dynaID"以外に、イコライザ(4バンドPEQ61)を示す"eqID"、センド調整部(65)を示す"sendID"、内蔵エフェクタ(57)を示す"effID"などがあり、変数"SN()"、変数"CN()"、変数"DN()"、変数"FT()"はそれらの各種別毎、個別に用意されている。以下では、ダイナミクスの処理ブロックのみに注目して、ライブラリに関連する各種処理のフローチャートの説明を行うので、変数"SN(dynaID)"、変数"CN(dynaID)"、変数"DN(dynaID)"、変数"FT(dynaID)"の"(dynaID)"の部分を省略して、単に、変数"SN"、変数"CN"、変数"DN"、変数"FT"と表記することにする。また、この実施例では、変数"SN"が、"Indiv."か"Scene"かの指定と、"Scene"を指定した場合のシーン番号の指定とを兼ねているが、これを、シーン番号を示す変数"SN’"と"Indiv."か"Scene"かを示すフラグ"ISF"とに置き換えても良い。なお、ここでのリコール先は、同時にストア元でもあり、また、リコール元は、同時にストア先でもある。
【0031】
本発明の実施例にかかるデジタルミキサ1において実行されるダイナミクスのライブラリ画面を開く指示に応じた処理のフローチャートを図10に示す。図6に示すダイナミクスの編集画面2において、ユーザが"Library"ボタン2aをクリックすると、図10に示すダイナミクスのライブラリ画面を開く指示に応じた処理が開始され、ステップS10にてライブラリ画面が用意されて、表示器16に表示される。この時点では、ライブラリ画面のウィンドウと、そのウィンドウ中の各表示要素3a〜3hの枠(フレーム)とが表示されているが、その枠の中は空であり、各情報は未だ表示されていない。次いで、表示されたライブラリ画面の表示要素3a〜3cが、ステップS11にて、リコール先となる現在の選択chのダイナミクス(COMP63)のパラメータセットに関する表示で更新される。ここでは、選択ch欄3aに、現在編集対象として選択されている選択chのch番号が表示され、タイプ欄3cに、その選択chのダイナミクスに設定されているタイプのパラメータが表示され、第1グラフ欄3bに、その選択chのダイナミクスに設定されている当該タイプに固有の複数パラメータ(スレッショルドなど)に基づく入出力特性が表示される。さらに、表示されたライブラリ画面の表示要素3d〜3hが、ステップS12にて、リコール元に関する表示で更新される。ここでは、前回ライブラリ画面をクローズしたときに、変数"SN"に"indiv."("0":indiv.ライブラリ)が設定されていた場合は、表示中のライブラリ画面が図7の表示態様に更新され、変数"SN"に"Scene"("1"以上:シーン番号)が設定されていた場合は、表示中のライブラリ画面が図8の表示態様に更新される。ステップS12の処理が終了すると、ダイナミクスのライブラリ画面を開く指示に応じて処理は終了する。
なお、以下の説明における「ライブラリ画面」とは、ダイナミクスのライブラリ画面(その1)3あるいはダイナミクスのライブラリ画面(その2)4のいずれでもよいが、その一方を指している。
【0032】
次に、上記ステップS12で実行されるリコール元に関する表示更新処理のフローチャートを図13に示す。
上記ステップS12にて図13に示すリコール元に関する表示更新処理が起動されると、ステップS40にて変数"SN"から"Indiv."か"Scene"のいずれが指定されているか判断される。ここで、変数SNが"0"と判断された場合は、コンボボックス3dにおいて"Indiv."が指定されておりステップS41に進む。ステップS41では、"Store"ボタン3hが有効化されて表示され、"Type filter"ボックス3iは無効化されて表示は省略される。次いで、ステップS42にてデジタルミキサ1に用意されているComp indiv.ライブラリのパラメータセットに基づいて、当該ライブラリのパラメータセットのデータ番号と名称のリストが作成され、作成されたリストがリスト欄3fに表示され、リスト欄3fにおける変数"DN"が示すデータ番号のパラメータセットが、リコール元のパラメータセットとして選択表示される。
【0033】
また、変数"SN"が"1"以上と判断された場合は、コンボボックス3dにおいて"Scene"が指定されておりステップS43に分岐する。ステップS43では、"Store"ボタン3hが無効化されて表示は省略され、"Type filter"ボックス3iが有効化されて表示される。次いで、ステップS44にて、シーンメモリの変数"SN"が示すシーン番号のシーンデータ中の、各チャンネルのダイナミクス(COMP63)のパラメータセットが参照され、"Type filter"ボックス3iで指定されたダイナミクスタイプによりフィルタリングされて、その抽出されたパラメータセットのch番号とch名のリストが作成され、作成されたリストがリスト欄3fに表示され、リスト欄3fにおける変数"CN"が示すch番号のパラメータセットが、リコール元のパラメータセットとして選択表示される。
ステップS42の処理あるいはステップS44の処理が終了するとステップS45に進み、リコール元として選択されているパラメータセットの入出力特性が第2グラフ欄3eに表示される。ここで、リコール元として選択されているパラメータセットとは、変数"SN"が"indiv."("0":indiv.ライブラリ)の場合は、Comp indiv.ライブラリの変数"DN"が示すデータ番号のデータセットであり、変数"SN"が"Scene"("1"以上:シーン番号)の場合は、変数"SN"が示すシーン番号のシーンデータ中の、変数"CN"が示すch番号のchのダイナミクス(COMP63)のデータセットである。ステップS45の処理が終了するとリコール元に関する表示更新処理は終了する。
【0034】
次に、本発明の実施例にかかるデジタルミキサ1において実行されるリコール元に関する変数値を変更するユーザ操作に応じた処理のフローチャートを11図に示す。ここでのユーザ操作は、ライブラリ画面3、4のコンボボックス3dでの"Indiv."/"Scene"やシーン番号の選択、ライブラリ画面3のリスト欄3fでのIndiv.ライブラリのパラメータセットのデータ番号の選択、ライブラリ画面4のリスト欄3fでのSceneライブラリのch番号の選択、ライブラリ画面4の"Type filter"ボックス3iでのダイナミクスタイプの選択等である。
表示されているライブラリ画面において、リコール元に関する変数値が変更されるユーザ操作があると図11に示す変数値を変更するユーザ操作に応じた処理が起動され、ステップS20にて対象となる変数がユーザ操作に応じた値に変更される。すなわち、コンボボックス3dでの"Indiv."/"Scene"やシーン番号の選択に応じて変数"SN"の値を変更し、ライブラリ画面3のリスト欄3fでのデータ番号の選択に応じて変数"DN"の値を変更し、ライブラリ画面4のリスト欄3fでのch番号の選択に応じて変数"CN"の値を変更し、また、ライブラリ画面4の"Type filter"ボックス3iでのダイナミクスタイプの選択に応じて変数"FT"の値を変更する。そして、ステップS21にて、先述した図10のステップS12における処理(図13)と同様の処理を行い、表示されているライブラリ画面の表示要素3d〜3hの表示を更新する。ステップS21の処理が終了すると、リコール元に関する変数値を変更するユーザ操作に応じた処理は終了する。なお、ライブラリ画面4のリスト欄3fでは、表示されているリスト中のch番号のみが選択対象であり、表示されていないch番号を選択することはできない。
【0035】
次に、"Recall"ボタンの操作に応じた処理のフローチャートを図12に示す。
図12に示す"Recall"ボタンの操作に応じた処理は、ライブラリ画面においてユーザが"Recall"ボタン3gをクリックした際に起動され、ステップS30にて変数SNから"Indiv."か"Scene"のいずれが指定されているか判断される。この場合、コンボボックス3dにおいて"Indiv."が指定されている場合は、シーン番号は指定されないことから変数"SN"は"0"であり、"Scene"が指定された場合はシーン番号が指定されることから変数"SN"は"1"以上の値となる。ここで、変数"SN"が"0"と判断された場合は、コンボボックス3dにおいて"Indiv."が指定されておりステップS31に進む。ステップS31では、デジタルミキサ1に用意されている Indiv.ライブラリから、変数"DN"で特定されるパラメータセットが読み出される。変数"DN"は、リスト欄3fに表示されているダイナミクス系エフェクトの Indiv.ライブラリにおけるパラメータセットの内のリコール元として選択されたパラメータセットのデータ番号である。
【0036】
また、変数"SN"が"1"以上と判断された場合は、コンボボックス3dにおいて"Scene"が指定されておりステップS32に分岐する。ステップS32では、シーンメモリから変数"SN"が示すシーン番号のシーンデータ中の、変数"CN"が示すch番号のchのダイナミクス(COMP63)のパラメータセットが読み出される。ステップS31の処理あるいはステップS32の処理が終了するとステップS33にて、ステップS31あるいはステップS32の処理により読み出されたパラメータが、カレントメモリの変数"SCN"が示すch番号のchのダイナミクス(COMP63)のパラメータセットに上書きされる。変数"SCN"は現在編集対象として選択されている選択chのch番号を示し、そのch番号は選択ch欄3aに表示されている。次いで、カレントメモリの該ダイナミクス(COMP63)の、上書き後のパラメータセットの入出力特性が表示されるよう、第1グラフ欄3bの表示がステップS34にて更新される。ステップS34の処理が終了すると"Recall"ボタンの操作に応じた処理は終了する。
【0037】
次に、Storeボタンの操作に応じた処理のフローチャートを図14に示す。
ダイナミクスのライブラリ画面(その1)3においてユーザにより"Store"ボタン3hがクリックされると、図14に示すStoreボタンの操作に応じた処理が起動され、ステップS50にてカレントメモリから変数"SCN"が示すch番号のchのダイナミクス(COMP63)のパラメータセットが読み出される。変数"SCN"は選択chのch番号を示し、そのch番号は選択ch欄3aに表示されている。次いで、ステップS50で読み出された該パラメータセットが、Indiv.ライブラリにおける変数"DN"が示すデータ番号のパラメータセットにステップS51にて上書きされる。次いで、ステップS50で読み出された該パラメータセットに応じて、第1グラフ欄3bに表示されているリコール元の現特性の表示がステップS52にて更新される。ステップS52の処理が終了するとStoreボタンの操作に応じた処理は終了する。なお、"Store"ボタンが操作されてからステップS50の処理が行われるまでの間に一時的に開かれるダイアログボックス(図示せず)にて、Comp Indiv.ライブラリにストアするデータセットに対し、ユーザが任意の名称を付与することができるようになっている。
【0038】
次に、他の例とされるダイナミクスのライブラリ画面(その3)5を図15に示す。
図15に示すダイナミクスのライブラリ画面(その3)5では、リスト欄3fにシーン番号別にパラメータセットのリストを表示するのをやめて、リスト欄5fにシーン番号とチャンネル番号とを表示させてリスト欄5fで同時に選択できるようにしている。この場合、コンボボックス5dでは"Indiv."か"Scene"かを択一して選択するようにしており、ダイナミクスのライブラリ画面(その3)5は"Scene"が選択された際のダイナミクスのライブラリ画面とされている。図示するリスト欄5fには、シーン番号"26"のチャンネル名"Vo 1"の入力ch1(26_i01: Vo 1)、シーン番号"26"のチャンネル名"Vo 3"の入力ch3(26_i03: Vo 3)、シーン番号"26"のチャンネル名"MC"の入力ch9(26_i09: MC)、シーン番号"26"のチャンネル名"Choir 1"の入力ch12(26_i12: Choir 1)・・・からなるリストが表示されており、入力ch3(26_i03: Vo 3)が選択表示されている。ch欄5aないしタイプ欄5c、第2グラフ欄5e、"Recall"ボタン5g、"Type filter"ボックス5hは、ダイナミクスのライブラリ画面(その2)4のch欄3aないしタイプ欄3c、第2グラフ欄3e、"Recall"ボタン3g、"Type filter"ボックス3iと同様とされているのでその説明は省略する。このライブラリ画面(その3)5のリスト欄5fにおいて、ユーザが、複数のシーンの複数のchのダイナミクスのパラメータセットの中から、リコールしたい1つのパラメータセットを選択することができる。
なお、ダイナミクスのライブラリ画面(その3)5において"Indiv."が選択された場合は、図7に示すダイナミクスのライブラリ画面(その1)3と同様の画面とされるので、その説明は省略するが、"Type filter"ボックス5hが無効化されて表示が省略され、それに替えて"Store"ボタンが有効化されて表示されるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明した本発明の実施例にかかる対象となる音響機器は、デジタルミキサに限らず、マルチトラックレコーダ、複数chエフェクタ、複数chアンプ、スピーカプロセッサ、等であってもよい。また、 Indiv.ライブラリやSceneライブラリを開く処理ブロックは、上記で説明したダイナミクスに限らず、各チャンネル内のイコライザ、ディレイや、各チャンネルに挿入することができるエフェクタ、グラフィックイコライザ等の何れでもよい。何れの処理ブロックであっても、同様に、複数の各シーンデータの中に含まれている当該処理ブロックと同種の複数のパラメータセットをリスト化し、ユーザに1つのライブラリとして見せることができる。各チャンネルに挿入できる処理ブロックの場合、リコール元となる各処理ブロックを、その処理ブロックを挿入したチャンネルにより特定するのではなく、同種の処理ブロックに識別子となる通し番号をつけて、その通し番号で特定するのがよい。なお、処理ブロックの挿入場所を示すパラメータは、その処理ブロックのIndiv.ライブラリの記憶対象外であり、それと同様に、Sceneライブラリにも当該パラメータは記憶されない。
【0040】
以上説明した本発明の実施例では入力チャンネル53のダイナミクス(COMP63)のライブラリについて説明したが、仮想的なライブラリを用意する処理ブロックはダイナミクスに限らない。入力チャンネルのイコライザ(PEQ61)、センド調整部(65)、出力チャンネルのダイナミクス63、イコライザ61、8機の各エフェクタ等の何れの1の処理ブロックであってもよい。その場合、各仮想的なライブラリのフィルタリング条件としては、各処理ブロックに応じて異なる。実施例のダイナミクスの場合は、ダイナミクスタイプ(Gate、Duck、Comp、De_Esなど)であったが、イコライザの場合は、最高バンド(又は最低バンド)のタイプ(シェルビング又はバンドパス)、センド調整部の場合は、入力chに付与されたch名称に含まれる文字列("Vo.","MC"など)、エフェクタの場合は、エフェクトのタイプ(リバーブ、エコー、コーラス、フランジャーなど)でフィルタリングするのが好適である。
また、仮想的なライブラリのフィルタリングを1つの条件(ダイナミクスタイプ)で行うようになっていたが、2以上の条件でフィルタリングを行うようにしてもよい。2つ目のフィルタリング条件としては、例えば、各chの名称に含まれる文字列でのフィルタリングや、ch番号の範囲でのフィルタリングなどが考えられる。特に、図15の例では、リスト欄5fに表示されるパラメータセット数が多くなりがちなので、2つ目のフィルタリングを行えるようにすることが望ましい。
【符号の説明】
【0041】
1 デジタルミキサ、2 ダイナミクスの編集画面、2a "Library"ボタン、2b ch欄、2c タイプ欄、2d グラフ欄、2e "ON"ボタン、2f 摘み、3 ダイナミクスのライブラリ画面(その1)、3a ch欄、3b 第1グラフ欄、3c タイプ欄、3d コンボボックス、3e 第2グラフ欄、3f リスト欄、3g "Recall"ボタン、3h "Store"ボタン、3i "Type filter"ボックス、3j タイプリスト、4 ダイナミクスのライブラリ画面(その2)、5 ダイナミクスのライブラリ画面(その3)、5a ch欄、5b 第1グラフ欄、5c タイプ欄、5d コンボボックス、5e 第2グラフ欄、5f リスト欄、5g "Recall"ボタン、5h "Type filter"ボックス、10 CPU、11 フラッシュメモリ、12 RAM、13 その他I/O、14 波形I/O、15 信号処理部、16 表示器、17 電動フェーダ、18 操作子、19 バス、30 タッチパネル、31 ユーザ定義キー、32a ボタン、32b ボタン、33a ボタン、33b ボタン、33c ボタン、33d ボタン、34 カーソル移動キー、35 増減キー、36 ロータリエンコーダ、37 エンターキー、40−1〜40−3 chストリップ、40−9 STchストリップ、41a SELスイッチ、41b オンSW、41c フェーダつまみ、41d CUEスイッチ、50 A入力、51 D入力、52 入力パッチ、53 入力ch部、54 MIXバス、55 MIX出力ch部、56 出力パッチ、57 内蔵エフェクタ部、58 A出力、59 D出力、60 ATT、61 4バンドPEQ、62 エフェクタ、63 COMP、64 フェーダchオンSW、65 センド調整部
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響機器のシーンメモリのシーンデータのパラメータセットをリスト化して、仮想的なライブラリとして提示することができる音響機器に関する。
【背景技術】
【0002】
音楽コンテンツのレコーディングやコンサートにおける音声信号の調整等に使用される音響機器として、デジタルミキサが知られている。従来のデジタルミキサにおいては、各入力チャンネルのイコライザ(IEQ)、ダイナミクス(GATE or COMP)、出力チャンネルのイコライザ(OEQ)、ダイナミクス(GATE or COMP)、ミキサシステムのエフェクタ(EFFECT)、グラフィックイコライザ(GEQ)等の複数の機能ブロックを備えている。そして、その同種の機能ブロック毎に、その機能ブロックのパラメータセットを複数セット記憶するライブラリを備えており、ライブラリから所望のパラメータセットを機能ブロック毎にリコールすることができるようにされている。このように、各種機能ブロックのライブラリを有するデジタルミキサが知られている。
【0003】
また、機能ブロックのパラメータを編集する編集画面に、"Copy"ボタンと"Paste"ボタンとが表示されているデジタルミキサが知られている。このデジタルミキサでは、ある機能ブロックの編集画面で"Copy"ボタンを操作して、カレントメモリのその機能ブロックのパラメータセットをコピーバッファに入れ、その機能ブロックと同種の別の機能ブロックの編集画面で"Paste"ボタンを操作して、そのパラメータセットをカレントメモリの別の機能ブロックのパラメータセットに上書きすることができる。このように、パラメータセットのコピー&ペースト機能を有するデジタルミキサが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ヤマハデジタルミキシングコンソールM7CL 取扱説明書,P.31-37,[online], [平成23年6月17日検索],インターネット<http://www2.yamaha.co.jp/manual/pdf/pa/japan/mixers/m7cl_ja_om_e0.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のデジタルミキサにおいて、機能ブロック毎の多くのパラメータセットからなるライブラリを保存しておくためには、多くの記憶領域が必要になると云う問題点があった。
また、パラメータセットのコピー&ペースト機能を使用する際に、2つのシーンをまたいで、同種の2つの機能ブロック間でデータセットのコピーをする場合は、コピー元のシーンをリコールし、コピー元の機能ブロックのパラメータセットをコピーバッファに入れ(コピー)、さらに、コピー先のシーンをリコールし、コピー先の機能ブロックのパラメータセットに上書き(ペースト)して、そのシーンをストアしなければならず、操作手順が煩雑になるという問題点があった。この場合、仲介役として、コピーバッファの代わりに、その機能ブロックのライブラリを使用したとしても、手順はほぼ同じで煩雑になってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、必要なメモリ容量を増やさずにリコール可能なパラメータセット数を増やすことができる音響機器を提供することを目的としている。また、本発明は、パラメータセットのコピー&ペースト機能を簡単な手順で行うことができる音響機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の音響機器は、入力する複数の音響信号に対して、複数の処理ブロックからなる信号処理を施し、信号処理の施された複数の音響信号を出力する音響機器であって、ディスプレイと、前記複数の処理ブロックに対応する複数のパラメータセットからなるカレントデータを記憶したカレントメモリと、該カレントメモリの前記カレントデータに基づいて、前記複数の処理ブロックからなる信号処理を実行する信号処理部と、前記カレントデータと同じデータ構成のシーンデータが複数記憶されているシーンメモリと、1のシーンデータを指定してストアの実行が指示されたとき、前記カレントメモリからカレントデータを読み出し、前記シーンメモリの該指定された1のシーンデータに上書きするシーンストア部と、1のシーンデータを指定してリコールの実行が指示されたとき、前記シーンメモリから該指定された1のシーンデータを読み出し、前記カレントメモリのカレントデータに上書きするシーンリコール部と、1の処理ブロックを指定してライブラリの表示が指示されたとき、前記ディスプレイに、前記シーンメモリに記憶された1ないし複数のシーンデータに含まれる、該指定された処理ブロックに対応するパラメータセットのリストを含むライブラリ画面を表示するライブラリ表示部と、該リストの1のパラメータセットを指定してリコールの指示がされたとき、前記シーンメモリから該指定された1のパラメータセットを読み出し、前記カレントメモリのカレントデータの中の、前記指定された処理ブロックに対応するパラメータセットに上書きするシーンライブラリリコール部とを備えることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1の処理ブロックを指定してライブラリの表示が指示されたときに、シーンメモリに記憶された1ないし複数のシーンデータに含まれる、該指定された処理ブロックに対応するパラメータセットからなるライブラリのリストを表示している。この場合、当該パラメータセットの実体データはシーンデータにあることから、ライブラリに必要なメモリ容量を増やさすことなくリコール可能なパラメータセット数を増やすことができる。また、ライブラリのリストの1のパラメータセットを指定してリコールの指示がされたとき、シーンメモリから該指定された1のパラメータセットを読み出し、カレントメモリのカレントデータの中の、指定された処理ブロックに対応するパラメータセットに上書きしている。これにより、パラメータセットのコピー&ペースト機能を簡単な手順で行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の音響機器の実施例であるデジタルミキサの回路構成を示す回路ブロック図である。
【図2】本発明の音響機器の実施例であるデジタルミキサのパネルの構成を示す図である。
【図3】本発明の音響機器の実施例であるデジタルミキサにおける信号処理の等価回路を示す回路ブロック図である。
【図4】本発明の音響機器の実施例であるデジタルミキサにおけるチャンネルへのインサーションの様子を示す図である。
【図5】本発明にかかる実施例のデジタルミキサにおけるメモリとライブラリのデータ構造を示す図である。
【図6】本発明にかかる実施例のデジタルミキサに表示されるダイナミクスの編集画面を示す図である。
【図7】本発明にかかる実施例のデジタルミキサに表示されるダイナミクスのライブラリ画面(その1)を示す図である。
【図8】本発明にかかる実施例のデジタルミキサに表示されるダイナミクスのライブラリ画面(その2)を示す図である。
【図9】本発明にかかる実施例のデジタルミキサで実行されるフローチャートで使用される変数の図表である。
【図10】本発明にかかる実施例のデジタルミキサで実行されるダイナミクスのライブラリ画面を開く指示に応じた処理のフローチャートである。
【図11】本発明にかかる実施例のデジタルミキサで実行される変数値を変更するユーザ操作に応じた処理のフローチャートである。
【図12】本発明にかかる実施例のデジタルミキサで実行されるリコールボタンの操作に応じた処理のフローチャートである。
【図13】本発明にかかる実施例のデジタルミキサで実行されるリコール元に関する表示更新処理のフローチャートである。
【図14】本発明にかかる実施例のデジタルミキサで実行されるストアボタンの操作に応じた処理のフローチャートである。
【図15】本発明にかかる実施例のデジタルミキサに表示されるダイナミクスのライブラリ画面(その3)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の音響機器の実施例であるデジタルミキサにかかる回路構成を示す回路ブロック図を図1に示す。
図1に示す本発明の音響機器の実施例であるデジタルミキサ1は、デジタルミキサ1の全体の動作を制御すると共に、パネルに設けられた操作子の操作に応じて制御信号を生成しているCPU(Central Processing Unit)10と、CPU10が実行するミキサ関連処理のプログラム等の動作ソフトウェアが格納されている書き換え可能な不揮発性のフラッシュメモリ11と、CPU10のワークエリアや各種データ等が記憶されるRAM(Random Access Memory)12とを備えている。このように、フラッシュメモリ11に動作ソフトウェアを格納することにより、フラッシュメモリ11内の動作ソフトウェアを書き換えることで、動作ソフトウェアをバージョンアップすることができる。また、ディジタルレコーダ等のその他の機器は、入出力インタフェースであるその他I/O 13を介してデジタルミキサ1に接続される。
【0011】
デジタルミキサ1の全ての入力と全ての出力は波形I/O(波形データインタフェース)14により行われる。この波形I/O14は、アナログ信号が入力される複数のA入力ポートと、アナログ信号が出力される複数のA出力ポートと、外部からディジタル信号を入力すると共に外部へディジタル信号を出力する双方向とされている複数のD入力/D出力ポートとを備えている。また、信号処理部(DSP)15は、音響信号のサンプリング周期毎に複数ステップのマイクロプログラムを実行する1つ以上のDSP(Digital Signal Processor)を用いて構成されており、CPU10の制御の基で、音響信号に対するミキシング処理やエフェクト処理などを行っている。表示器16は、音響信号処理にかかる設定画面等を表示する液晶表示装置等からなるディスプレイである。電動フェーダ17は、入力チャンネルの音響信号あるいは出力チャンネルの音響信号のレベルを調整する音量設定部であり、手動および電動によりレベル調整することができる。操作子18は、複数チャンネル(以下、「チャンネル」を「ch」と表す)分設けられているchストリップを入力chあるいは出力chに割り当てる割当スイッチ、設定される値を増減する増減キー、設定される値を選択するロータリエンコーダ、設定した値を確定させるエンターキー等からなるパネルに設けられている操作子や、表示器16に表示された画面上で矢印型のカーソルの位置を制御し、クリック、ドラッグ等の操作を行うことができるマウス等のポインティングデバイスである。各部はバス19に接続されている。
【0012】
次に、本発明にかかる実施例のデジタルミキサ1における各種操作子18が設けられているパネルの構成を図2に示す。
図2において、表示器16とされるタッチパネル30の下側には、chストリップ40−1,40−2,40−3,・・・・が8本と、ステレオ用のSTchストリップ40−9が1本設けられている。8本のchストリップ40−1,・・・には、そのchストリップに割り当てられたchを選択するSELスイッチ41aと、そのchをオンオフするオンSW41bと、割り当てられたchのレベルを制御する電動フェーダ17におけるフェーダつまみ41cと、割り当てられたchを検聴するCUEスイッチ41dがそれぞれ設けられている。STchストリップ40−9にも同様にSELスイッチ41a、オンSW41bと、フェーダつまみ41cと、CUEスイッチ41dが設けられている。なお、SELスイッチ41aを押すと、押されたSELスイッチ41aのchストリップに割り当てられているchの詳細なパラメータの設定画面がタッチパネル30に表示されてパラメータの設定ができたり、当該chをミュートグループ等のグループに属させることができるようになる。
【0013】
デジタルミキサ1のユーザ(オペレータ)が、パネル右側の中段に設けられている「マスタ1」のボタン32aを押すと、8本のchストリップ40−1,・・・に、MIXバスの出力とされる出力ch1ないし出力ch8が割り当てられる。また、「マスタ2」のボタン32bを押すと、8本のchストリップ40−1,・・・に、出力ch9ないし出力ch16が割り当てられる。これにより、ボタン32a,32bを切り換えることで、出力ch1〜ch16を8本のchストリップ40−1,・・・を使用して制御できるようになる。さらに、「マスタ2」の下の「レイヤ1」のボタン33aを押すと、8本のchストリップ40−1,・・・に、入力ch1ないし入力ch8が割り当てられる。また、「レイヤ2」のボタン33bを押すと、8本のchストリップ40−1,・・・に、入力ch9ないし入力ch16が割り当てられる。さらに、「レイヤ3」のボタン33cを押すと、8本のchストリップ40−1,・・・に、入力ch17ないし入力ch24が割り当てられる。さらにまた、「レイヤ4」のボタン33dを押すと、8本のchストリップ40−1,・・・に、入力ch25ないし入力ch32が割り当てられる。これにより、ボタン33a〜33dを切り換えることで、入力ch1〜ch32を8本のchストリップ40−1,・・・を使用して制御できるようになる。
【0014】
このようにして、16chの出力chと、32chの入力chのレベル制御やCUE設定を、8本のchストリップ40−1,・・・により8chずつ制御できるようにしている。すなわち、8本のchストリップ40−1,・・・は、全入力chおよび全出力chに対応して、8ch毎の入力chあるいは出力chを8本のchストリップ40−1,・・・でそれぞれ制御できるようになる。また、ステレオchのレベル制御やCUE設定は、STchストリップ40−9で制御することができる。
「レイヤ4」のボタン33dの下にタッチパネル30に表示されるカーソルを上下左右に移動させるカーソル移動キー34と、種々の設定可能な値を増減する増減キー35と、種々の設定可能な値を選択できるロータリエンコーダ36と、増減キー35やロータリエンコーダ36により選択された設定値や、カーソルにより選択されたオブジェクトを確定させるエンターキー37とが設けられている。また、パネルの右側の一番上にオン/オフなどのあらかじめプログラムされた機能を実行するためのU1〜U6の6つのユーザ定義キー(user defined keys)31が設けられている。ユーザ定義キー31のU1〜U6には、それぞれ異なる機能をアサインできるようにされており、例えば、ミュートグループのミュートのオン/オフを切り換えるミュートグループマスタボタンをアサインすることにより、ユーザ定義キー31のU1〜U6を押すことにより、アサインされたミュートグループのオン/オフを切り換えることができるようになる。なお、ミュートグループマスタ(MUTE GROUP MASTER)機能は、ミュートグループに属する全chのミュートのオン/オフ状態の切り替えを一括して行う機能である。
【0015】
次に、本発明の実施例にかかるデジタルミキサ1における信号処理の等価回路を示すブロック図を図3に示す。
図3において、複数のアナログ入力ポート(A入力)50に入力されたアナログ信号は、波形I/O14に内蔵されているAD変換器によりディジタル信号に変換されて入力パッチ52に入力される。また、複数のディジタル入力ポート(D入力)51に入力されたディジタル信号は、そのまま入力パッチ52に入力される。入力パッチ52では、信号の入力元である複数の入力ポートのそれぞれを、32チャンネルとされる複数の入力ch部53の各入力チャンネルに選択的にパッチ(結線)することができ、各入力チャンネルには、入力パッチ52でパッチされた入力ポートからの信号が供給される。
【0016】
入力ch部53における各入力chには、アッテネータ、イコライザ、コンプレッサ(ダイナミクス)、フェーダ、パン、各バスへの出力をオンオフするセンドSW部、各バスへの出力レベルを調整するセンドレベル調整部等が備えられており、これらの入力chにおいて、周波数バランスやレベル制御およびMIXバス54への送出レベルが調整される。入力ch部53から出力される32chのディジタル信号は、それぞれMIX1〜16の16本のMIXバス54の1ないし複数に選択的に出力される。MIXバス54においては、16本の各バスにおいて、32入力chのうちの任意の入力chから選択的に入力された1ないし複数のディジタル信号がミキシングされて、合計16chのミキシング出力がMIX出力ch部55に出力される。これにより、16chのミキシング出力を得ることができる。また、図示されていないステレオバスとステレオ出力chとを設けて、32入力chのうちの任意の入力chから選択的にステレオバスに入力することにより、1ないし複数のディジタル信号がミキシングされたステレオのミキシング出力をステレオ出力chに出力するようにしてもよい。
【0017】
MIX出力ch部55における各出力chには、イコライザ、コンプレッサ、フェーダ等が備えられており、これらの出力chにおいて、周波数バランスやレベル調整および出力パッチ56へ送出されるレベルが制御される。出力パッチ56では、信号の入力元であるMIX出力ch部55からの16chの出力ch信号の何れか1つを、アナログ出力ポート部(A出力)58やディジタル出力ポート部(D出力)59の複数の出力ポートに選択的にパッチ(結線)することができ、各出力ポートには、出力パッチ56でパッチされた出力chからの信号が供給される。
また、複数のアナログ出力ポートを備えるアナログ出力ポート部(A出力)58へ供給されたディジタル出力信号は、波形I/O18に内蔵されているDA変換器によりアナログ出力信号に変換されてアナログ出力ポートから出力される。そして、アナログ出力ポート部(A出力)58から出力されるアナログ出力信号は、増幅されてメインのスピーカから放音される。さらに、このアナログ出力信号は出演者が耳に装着するインイヤーモニタに供給されたり、その出演者の近傍に置かれたステージモニタスピーカで再生される。また、複数のディジタル出力ポートを備えるディジタル出力ポート部(D出力)59から出力されるディジタルオーディオ信号は、レコーダや外部接続されたDAT等に供給されてディジタル録音することができるようにされている。
【0018】
さらに、デジタルミキサ1には8機分の内蔵エフェクタ部57が備えられており、何れかのchへの挿入が設定された場合は、そのchの途中のブロックから出力される音響信号が内蔵エフェクタ部57へ入力され、エフェクト処理が施された音響信号が、同じchのその次のブロックへ入力される。例えば、入力ch部53のある入力ch53aへ内蔵エフェクタ部57の挿入が設定された場合は、入力ch53aの挿入されるポイントの前のブロックから出力される音響信号が仮想的な結線により、出力パッチ56から内蔵エフェクタ部57へ供給されてエフェクト処理が施される。エフェクト処理が施された音響信号は、仮想的な結線により入力パッチ52から入力ch53aの挿入されるポイントの後のブロックへ入力されるようになる。また、MIX出力ch部55のある出力ch55aへ内蔵エフェクタ部57の挿入が設定された場合も同様に、出力ch55aの挿入されるポイントの前のブロックから出力される音響信号が仮想的な結線により、出力パッチ56を介して内蔵エフェクタ部57へ供給されてエフェクト処理が施される。エフェクト処理が施された音響信号は、仮想的な結線により入力パッチ52から出力ch55aの挿入されるポイントの後のブロックへ入力されるようになる。
なお、何れのchへの挿入も設定されていない場合には、出力パッチ56で設定された、任意の1の出力chからの音響信号が内蔵エフェクタ部57へ入力され、エフェクト処理が施された音響信号が、入力パッチ52で設定された、任意の1の入力chへ出力されるようになる。
【0019】
このような、デジタルミキサにおけるchへのエフェクタのインサーションの様子を図4に示す。
図4には入力chおよび出力chの構成が示されている。この場合、入力chは縦続接続されたアッテネータ(ATT)60、4バンドパラメトリックイコライザ(PEQ)61、コンプレッサ(COMP)63、フェーダおよびchオンSW64、各バスへのセンド調整部65を備えている。また、出力chは破線のブロックで示すATT60と各バスへのセンド調整部65とを除く3つの処理ブロックを備えている。各ch毎に、エフェクタを挿入するポイントを1箇所選択でき、挿入が設定できるポイントは白抜きの矢印で示すブロックとブロックとの間とされる。例えば、図4に示すようにchの4バンドPEQ61とCOMP63の間にインサーションが設定され、かつそのインサーションがオンされた場合は、4バンドPEQ61とCOMP63の間にエフェクタ(内部EF or 外部EF)62が挿入されるようスイッチSWが切り換えられた図4に示す結線となる。すなわち、4バンドPEQ61の出力はエフェクタ62によりエフェクト処理が施され、スイッチSWを介してエフェクタ62の出力がCOMP63に入力される。なお、この図におけるコンプレッサ(COMP)63は、コンプレッサとしての動作だけでなく、ゲート、ダッカー、ディエッサーとしての動作も可能な、後述する図6の編集画面における「ダイナミクス」と同じものである。
【0020】
本発明の実施例にかかるデジタルミキサ1においては、パネルに設けられているフェーダ、ノブやスイッチ等の操作子により設定されたch毎の信号処理用のパラメータからなるパラメータセットはRAM12上のカレントメモリに格納される。このカレントメモリ上のパラメータセットを、シーンとしてシーンメモリにストアすることができる。シーンメモリは図示していないハードディスク等の大容量記憶媒体の記憶領域や、その他I/O13を介して接続されているUSBメモリやSDメモリ等のリムーバブルな外部記憶媒体の記憶領域に確保されている。このシーンメモリのデータ構造を図5(a)に示す。この図に示すように、シーンメモリには、シーンの各々にシーン番号が付与されてストアされる。シーンメモリに記憶可能なシーン数は機種により異なるが、例えば100シーンとされた場合は、図5(a)に示すように「シーン1」、「シーン2」、「シーン3」・・・、「シーン100」としてストアされる。そして、デジタルミキサ1のユーザが、シーン番号を指定してリコール操作することにより、指定されたシーン番号のシーンデータが読み出されてカレントメモリ上のパラメータセットが読み出されたシーンデータにより上書きされ、そのシーンに応じた設定状態がデジタルミキサ1で再現されるようになる。これにより、一度設定した会議室、宴会場、ミニシアターや多目的ホールまでの様々なシーンを再現することができるようになる。
【0021】
また、カレントメモリのデータ構造を図5(b)に示す。カレントメモリはRAM12上に記憶領域が確保されており、カレントメモリにはカレントデータが保存されている。カレントデータは、入力パッチ52のパラメータセットである入力パッチPS、入力ch部53のパラメータセットである入力ch部PS、出力ch部55のパラメータセットである出力ch部PS、出力パッチ56のパラメータセットである出力パッチPS、内蔵エフェクタ部57の8機分のエフェクタのパラメータセットであるエフェクタ部PS、その他のパラメータセットであるその他PSから構成されている。また、入力ch部PSは、入力ch1のパラメータセットである入力ch1PSないし入力ch32のパラメータセットである全32入力chの各入力chのパラメータセットから構成されている。図示していないが、出力ch部PSは全16出力chの各出力chのパラメータセットから構成されている。入力chのパラメータセットの構成を入力ch3のパラメータセットである入力ch3PSを例に挙げて説明する。入力ch3PSは、ATT60のパラメータセットであるAtt_PS、4バンドPEQ61のパラメータセットであるEq_PS、COMP63のパラメータセットであるComp_PS、フェーダおよびchオンSW64のパラメータセットであるFader_PS、各バスへのセンド調整部65のパラメータセットであるSend_PS、チャンネル名等のその他のパラメータセットであるOther_PSから構成されている。このように、入力chのパラメータセットは入力chを構成する各処理ブロックのパラメータセットからなり、入力ch3PS以外の各入力chのパラメータセットも同様とされている。さらにまた、出力chのパラメータセットは出力chを構成する各処理ブロックのパラメータセットから構成されている。
【0022】
本発明の実施例にかかるデジタルミキサ1においては、上記した各種パラメータセットの処理ブロック専用のライブラリ(以下、「Indiv.ライブラリ」という)を備えている。例えば、コンプレッサ(COMP)63(すなわち、後述するダイナミクス)の専用ライブラリであるComp Individual.(Comp Indiv.)ライブラリのデータ構造を図5(c)に示す。この図に示すComp Indiv.ライブラリには、20パラメータセット分のCOMPのパラメータセットが各々に番号が付与されてComp_PS1、Comp_PS2、Comp_PS3、・・・Comp_PS20として格納されている。COMP63は、タイプが「コンプレッサ」に設定されたとき、ある一定音量を超えた音を一定の割合で小さくする(圧縮する)、いわゆるコンプレッサの動作を行い、そのパラメータセットには、音を圧縮しはじめる音量を決めるスレッショルド、圧縮する比率を決めるレシオ、音量がスレッショルドに達してから実際に圧縮し始めるまでの時間を決めるアタックタイム、スレッショルドを下回ってから実際に圧縮をやめるまでの時間を決めるリリースタイム、出力する音量を調節するゲイン等のパラメータが含まれている。なお、COMP63のパラメータセットのパラメータ構成は、設定されたタイプに応じて変化する。デジタルミキサ1のユーザが、Comp_PSの番号を指定してリコール操作すると、指定されたComp_PSの番号のパラメータセットが読み出されて、カレントメモリ上の選択されたchのCOMPのパラメータセットが読み出されたパラメータセットにより上書きされ、そのパラメータセットに応じた設定状態が選択されたchのCOMPで再現されるようになる。また、ユーザがストア操作することより、カレントメモリ上のCOMPのパラメータセットを、Comp Indiv.ライブラリに所望の番号のComp_PSとしてストアすることができる。
【0023】
本発明において特徴的な構成は、シーンの各chにおける各処理ブロックのパラメータセットから所望のタイプの処理ブロック用のパラメータセットを抽出してリスト化した仮想的なライブラリ(以下、「Sceneライブラリ」という)を作成してディスプレイ(表示器16)に表示することができる構成とされている。例えば、シーンメモリ上のシーンの各chのパラメータセットからCOMPの処理ブロック用のパラメータセットを抽出して作成された仮想的なライブラリであるComp Sceneライブラリのデータ構造を図5(d)に示す。Comp Sceneライブラリには、シーンメモリ上のシーンから抽出したCOMPの処理ブロック用の各パラメータセットであるComp_PS、Comp_PS、Comp_PS・・・から構成されている。これらのComp_PSのデータの実体はシーンメモリ上にありComp Sceneライブラリには存在していない。そして、Comp_PSのいずれかを指定してリコール操作することにより、指定されたComp_PSのパラメータデータが読み出されて、カレントメモリ上の選択されたchのCOMPのパラメータセットが読み出されたパラメータセットにより上書きされ、そのパラメータセットに応じた設定状態が選択されたchのCOMPで再現されるようになる。
【0024】
本発明の実施例にかかるデジタルミキサ1において、オペレータが所定の編集ボタンを操作して、ダイナミクス(COMP)の編集開始を指示すると、表示器16には、図6に示されるダイナミクスの編集画面2が表示される。
図6に示すダイナミクスの編集画面2において、上段の幅の狭い横長の欄のほぼ中央に"Library"ボタン2aが設けられている。この"Library"ボタン2aをクリックすることにより、後述するダイナミクスのライブラリ画面が表示器16に表示されるようになる。上段の下の大きな領域において、上部左側には、デジタルミキサ1で現在編集対象として選択されているチャンネルを示す選択ch欄2bが設けられている。編集対象のチャンネルは、ユーザが、複数の各chストリップ40のSELスイッチ41aを操作することにより選択することができる。また、この選択ch欄2bをクリック操作することによって表示器16に表示されるch一覧の中から選択することもできる。ここでは、チャンネル名が「Vo. 1」(ボーカル1を示す)の入力ch1(ich01:Vo 1)が、編集対象のチャンネルとしてch欄2に表示されている。編集画面2のほぼ中央の左側にはダイナミクス系エフェクトのタイプを選択するタイプ欄2cが設けられており、図示する例では楽音と共に入力される不要なノイズをカットするためのエフェクトである"Gate"(ノイズゲート)が選択されており、入力ch1のCOMP63はノイズゲートの動作を行っている。ダイナミクスのエフェクトのタイプには、その他に特定のchの音を大きくして、その他のchを小さくするためのエフェクトである"Duck"(ダッキング)、ある一定音量を超えた音を一定の割合で小さくする(圧縮する)エフェクトである"Comp"(コンプレッサー)」、ボーカルの「サ行」の音を小さくするためのエフェクトである"De.Es"(ディエッサー)等がある。
【0025】
タイプ欄2cの右側に設けられているグラフ欄2dには、ch欄2bで選択されているchにおけるタイプ欄2cにおいて選択された"Gate"のパラメータセットの大まかな入出力特性が表示されている。タイプ欄2cおよびグラフ欄2dの下には、タイプ欄2cで選択されたエフェクトのパラメータを編集するための操作子の摘み2fが複数設けられており、各摘み2fの操作に応じて、パラメータセットの対応するパラメータの値が変更され、グラフ欄2dに表示されている入出力特性が変化する。ここで変更される"Gate"のパラメータには、これ以下の音量でゲートを効かせるスレッショルド、アタックタイム、ホールドタイム、ディケイタイム、ゲートする際の減衰量を示すレンジ等が含まれる。また、右上に設けられている"ON"ボタン2eはダイナミクスのオン/オフを切り替えるボタンであり、図示する場合はダイナミクスがオンに切り替えられた状態とされている。このダイナミクスの編集画面2において、"Library"ボタン2aをクリックすることにより、表示器16に表示されるダイナミクスのライブラリ画面(その1)3を図7に示す。
【0026】
図7に示すダイナミクスのライブラリ画面(その1)3は、"Indiv."か"Scene"のシーン番号かを選択するコンボボックス3dにおいて"Indiv."が選択された際の画面とされている。コンボボックス3dにおいて"indiv."がオペレータにより選択されると、デジタルミキサ1に用意されているComp indiv.ライブラリのパラメータセットから、ダイナミクス系エフェクトのパラメータセットのデータ番号と名称のリストが作成されてリスト欄3fに表示される。このリスト欄3fにおいて、図示する例では"07"番の"fon"と云う"Comp"タイプのパラメータセットが選択されており、そのパラメータセットの大まかな入出力特性が第2グラフ欄3eに表示されている。そして、選択ch欄3aには、現在編集対象として選択されている入力ch1(ich01:Vo 1)」が表示され、その入力ch1に設定されている"Gate"タイプのパラメータセットの大まかな入出力特性が第1グラフ欄3bに表示されている。なお、選択ch欄3aに表示されているチャンネルが、リコール先のチャンネルとなる。
【0027】
ここで、ユーザは第1グラフ欄3bに表示されている"Gate"の入出力特性と第2グラフ欄3eに表示されている"Comp"の入出力特性とを対比して、入力ch1のCOMP63の入出力特性を、現在の"Gate"の入出力特性から第2グラフ欄3eに表示されている"Comp"の入出力特性に変更したい場合には、"Recall"ボタン3gをクリックする。"Recall"ボタン3gをクリックすると、選択ch欄3aに表示されている入力ch1のCOMP63を制御するパラメータセットが、"fon"という名称の"Comp"のパラメータセットに変更されるようになる。すなわち、Comp indiv.ライブラリが格納されているライブラリメモリの記憶領域Comp_PS7から"fon"という名称の"Comp"タイプのパラメータセットが読み出されて、カレントメモリにおける入力ch1のパラメータセットに上書きされるようになる。同時に、第1グラフ欄3bに、入力ch1のCOMP63にリコールされたパラメータセットの大まかな現特性が表示されるようになる。
また、ユーザが"Store"ボタン3hをクリックすると、リスト欄3fで選択された"fon"と云う名称の"Gate"のパラメータセットが、選択ch欄3aに表示されている入力ch1のCOMP63のパラメータセットで上書きされるようになる。すなわち、カレントメモリにおける入力ch1のCOMP63のパラメータセットが読み出されて、Comp indiv.ライブラリの記憶領域Comp_PS7の"fon"と云う名称のパラメータセットに上書きされるようになる。同時に、第2グラフ欄3eにComp indiv.ライブラリの記憶領域Comp_PS7にストアされたパラメータセットの大まかな入出力特性が表示されるようになる。なお、indiv.ライブラリへのパラメータセットをストアする際には、ユーザは、そのストアするパラメータセットに任意の名称("fon"や"chou"など)を付与することができる。
【0028】
次に、コンボボックス3dにおいてユーザにより"Scene"のシーン番号が選択された際のダイナミクスのライブラリ画面(その2)4を図8(a)に示す。
図8(a)では、コンボボックス3dにおいてシーン番号26のシーン名"foo"(26:foo)が指定されており、デジタルミキサ1のシーンメモリ上のシーン番号26のシーン名"foo"のパラメータセットから、各chのダイナミクス系エフェクトのパラメータセット(Comp_PS)が抽出される。抽出したパラメータセットにより、当該エフェクトの仮想的なSceneライブラリが作成されて、そのリストがリスト欄3fに表示される。このダイナミクスのライブラリ画面(その2)4では、"Store"ボタン3hが無効化されてダイナミクスのタイプでフィルタリングしたリストを表示するための"Type filter"ボックス3iが有効化されている。"Type filter"ボックス3iにおける右端の「▼」をクリックすると図8(b)に示すダイナミクスのタイプリスト3jが表示される。このタイプリスト3jにおいて、図示する場合は"Gate"が選択されており、リスト欄3fには、全入力chおよび全出力chのCOMP63のパラメータセットのうち、シーン番号26のシーンにおいて"Gate"タイプが設定されているパラメータセットのみがフィルタリングされ、その抽出されたパラメータセットに係るch番号とch名のリストが作成され、作成されたリストが表示される。このリスト欄3fにおいて、図示する例ではch名"Vol 3"の入力ch3(i03)における"Gate"のパラメータセットが選択されている。このように、"Type filter"ボックス3iによりフィルタタイプを指定しているのは、各シーンの全chを対象とすると、選択肢が膨大になるからであり、ダイナミクスのタイプを指定することにより、適宜フィルタリングして選択肢を絞るようにしている。なお、"Type filter"ボックス3iで"any"を選択した場合は、フィルタリングはなく全chのCOMP63のパラメータセットがリスト表示される。
リスト欄3fで選択されたch名"Vol 3"の入力ch3(i03)の"Gate"のパラメータセットの大まかな入出力特性が第2グラフ欄3eに表示されている。そして、選択ch欄3aには、入力ch1(ich01:Vo 1)が表示され、その入力ch1における"Gate"タイプのパラメータセットの大まかな入出力特性が第1グラフ欄3bに表示されている。先ほどと同様、選択ch欄3aに表示されているチャンネルが、リコール先のチャンネルとなる。
【0029】
ここで、ユーザは第1グラフ欄3bに表示されている"Gate"の現特性と第2グラフ欄3eに表示されている"Gate"の入出力特性とを対比して、入力ch1のCOMP63の入出力特性を、現在の"Gate"の入出力特性から第2グラフ欄3eに表示されている入出力特性に変更したい場合は、"Recall"ボタン3gをクリックする。"Recall"ボタン3gをクリックすると、選択ch欄3aにおいて表示されている入力ch1のCOMP63を制御するパラメータセットが、シーン番号26のシーン名"foo"のシーンデータにおけるch名"Vo.3"の入力ch3(i03:Vo.1)のCOMP63のパラメータセットに変更されるようになる。すなわち、シーンメモリのシーン番号26のシーンデータにおける入力ch3のCOMP63のパラメータセットが読み出されて、カレントメモリにおける入力ch1のCOMP63のパラメータセットに上書きされるようになる。同時に、第1グラフ欄3bに入力ch1のCOMP63にリコールされた"Gate"のパラメータセットの大まかな入出力特性が表示されるようになる。なお、リスト欄3fに表示されているSceneライブラリは仮想的なライブラリであって、このSceneライブラリにパラメータセットの実体はなく、パラメータセットの実体は当該シーン番号のシーンデータ中に含まれている。
なお、指定されたSceneライブラリにおけるchの指定では、入力chだけでなく、出力chも指定可能とされている。また、"Scene"が選択された際のダイナミクスのライブラリ画面(その2)4では、"Store"ボタンが無効化されて存在しないことから、間違ってリコール元のシーンに上書きすることを防止することができる。
【0030】
本発明の実施例にかかるデジタルミキサ1において実行される各種処理のフローチャートを以下に説明するが、このフローチャートにおいて使用する変数の表を図9に示す。この表において、変数"SCN"は現在編集対象のchとして選択され、選択ch欄3aに表示されている選択chのch番号を示す変数であり、識別子"dynaID"は処理ブロックの種別としてのダイナミクスを特定する定数であり、変数"SN(dynaID)"と変数"CN(dynaID)"とは、ダイナミクスの仮想的なライブラリからリコールを行う場合の、リコール元のシーン番号とch番号とを示す変数であり、変数"DN(dynaID)"は、ダイナミクスの専用のライブラリ(すなわち、Comp indiv.ライブラリ)からリコールを行う場合の、リコール元のデータ番号を示す変数であり、変数"FT(dynaID)"は"Type filter"ボックス3iで指定するダイナミクスタイプを示す変数である。処理ブロックの種別を示す識別子としては、"dynaID"以外に、イコライザ(4バンドPEQ61)を示す"eqID"、センド調整部(65)を示す"sendID"、内蔵エフェクタ(57)を示す"effID"などがあり、変数"SN()"、変数"CN()"、変数"DN()"、変数"FT()"はそれらの各種別毎、個別に用意されている。以下では、ダイナミクスの処理ブロックのみに注目して、ライブラリに関連する各種処理のフローチャートの説明を行うので、変数"SN(dynaID)"、変数"CN(dynaID)"、変数"DN(dynaID)"、変数"FT(dynaID)"の"(dynaID)"の部分を省略して、単に、変数"SN"、変数"CN"、変数"DN"、変数"FT"と表記することにする。また、この実施例では、変数"SN"が、"Indiv."か"Scene"かの指定と、"Scene"を指定した場合のシーン番号の指定とを兼ねているが、これを、シーン番号を示す変数"SN’"と"Indiv."か"Scene"かを示すフラグ"ISF"とに置き換えても良い。なお、ここでのリコール先は、同時にストア元でもあり、また、リコール元は、同時にストア先でもある。
【0031】
本発明の実施例にかかるデジタルミキサ1において実行されるダイナミクスのライブラリ画面を開く指示に応じた処理のフローチャートを図10に示す。図6に示すダイナミクスの編集画面2において、ユーザが"Library"ボタン2aをクリックすると、図10に示すダイナミクスのライブラリ画面を開く指示に応じた処理が開始され、ステップS10にてライブラリ画面が用意されて、表示器16に表示される。この時点では、ライブラリ画面のウィンドウと、そのウィンドウ中の各表示要素3a〜3hの枠(フレーム)とが表示されているが、その枠の中は空であり、各情報は未だ表示されていない。次いで、表示されたライブラリ画面の表示要素3a〜3cが、ステップS11にて、リコール先となる現在の選択chのダイナミクス(COMP63)のパラメータセットに関する表示で更新される。ここでは、選択ch欄3aに、現在編集対象として選択されている選択chのch番号が表示され、タイプ欄3cに、その選択chのダイナミクスに設定されているタイプのパラメータが表示され、第1グラフ欄3bに、その選択chのダイナミクスに設定されている当該タイプに固有の複数パラメータ(スレッショルドなど)に基づく入出力特性が表示される。さらに、表示されたライブラリ画面の表示要素3d〜3hが、ステップS12にて、リコール元に関する表示で更新される。ここでは、前回ライブラリ画面をクローズしたときに、変数"SN"に"indiv."("0":indiv.ライブラリ)が設定されていた場合は、表示中のライブラリ画面が図7の表示態様に更新され、変数"SN"に"Scene"("1"以上:シーン番号)が設定されていた場合は、表示中のライブラリ画面が図8の表示態様に更新される。ステップS12の処理が終了すると、ダイナミクスのライブラリ画面を開く指示に応じて処理は終了する。
なお、以下の説明における「ライブラリ画面」とは、ダイナミクスのライブラリ画面(その1)3あるいはダイナミクスのライブラリ画面(その2)4のいずれでもよいが、その一方を指している。
【0032】
次に、上記ステップS12で実行されるリコール元に関する表示更新処理のフローチャートを図13に示す。
上記ステップS12にて図13に示すリコール元に関する表示更新処理が起動されると、ステップS40にて変数"SN"から"Indiv."か"Scene"のいずれが指定されているか判断される。ここで、変数SNが"0"と判断された場合は、コンボボックス3dにおいて"Indiv."が指定されておりステップS41に進む。ステップS41では、"Store"ボタン3hが有効化されて表示され、"Type filter"ボックス3iは無効化されて表示は省略される。次いで、ステップS42にてデジタルミキサ1に用意されているComp indiv.ライブラリのパラメータセットに基づいて、当該ライブラリのパラメータセットのデータ番号と名称のリストが作成され、作成されたリストがリスト欄3fに表示され、リスト欄3fにおける変数"DN"が示すデータ番号のパラメータセットが、リコール元のパラメータセットとして選択表示される。
【0033】
また、変数"SN"が"1"以上と判断された場合は、コンボボックス3dにおいて"Scene"が指定されておりステップS43に分岐する。ステップS43では、"Store"ボタン3hが無効化されて表示は省略され、"Type filter"ボックス3iが有効化されて表示される。次いで、ステップS44にて、シーンメモリの変数"SN"が示すシーン番号のシーンデータ中の、各チャンネルのダイナミクス(COMP63)のパラメータセットが参照され、"Type filter"ボックス3iで指定されたダイナミクスタイプによりフィルタリングされて、その抽出されたパラメータセットのch番号とch名のリストが作成され、作成されたリストがリスト欄3fに表示され、リスト欄3fにおける変数"CN"が示すch番号のパラメータセットが、リコール元のパラメータセットとして選択表示される。
ステップS42の処理あるいはステップS44の処理が終了するとステップS45に進み、リコール元として選択されているパラメータセットの入出力特性が第2グラフ欄3eに表示される。ここで、リコール元として選択されているパラメータセットとは、変数"SN"が"indiv."("0":indiv.ライブラリ)の場合は、Comp indiv.ライブラリの変数"DN"が示すデータ番号のデータセットであり、変数"SN"が"Scene"("1"以上:シーン番号)の場合は、変数"SN"が示すシーン番号のシーンデータ中の、変数"CN"が示すch番号のchのダイナミクス(COMP63)のデータセットである。ステップS45の処理が終了するとリコール元に関する表示更新処理は終了する。
【0034】
次に、本発明の実施例にかかるデジタルミキサ1において実行されるリコール元に関する変数値を変更するユーザ操作に応じた処理のフローチャートを11図に示す。ここでのユーザ操作は、ライブラリ画面3、4のコンボボックス3dでの"Indiv."/"Scene"やシーン番号の選択、ライブラリ画面3のリスト欄3fでのIndiv.ライブラリのパラメータセットのデータ番号の選択、ライブラリ画面4のリスト欄3fでのSceneライブラリのch番号の選択、ライブラリ画面4の"Type filter"ボックス3iでのダイナミクスタイプの選択等である。
表示されているライブラリ画面において、リコール元に関する変数値が変更されるユーザ操作があると図11に示す変数値を変更するユーザ操作に応じた処理が起動され、ステップS20にて対象となる変数がユーザ操作に応じた値に変更される。すなわち、コンボボックス3dでの"Indiv."/"Scene"やシーン番号の選択に応じて変数"SN"の値を変更し、ライブラリ画面3のリスト欄3fでのデータ番号の選択に応じて変数"DN"の値を変更し、ライブラリ画面4のリスト欄3fでのch番号の選択に応じて変数"CN"の値を変更し、また、ライブラリ画面4の"Type filter"ボックス3iでのダイナミクスタイプの選択に応じて変数"FT"の値を変更する。そして、ステップS21にて、先述した図10のステップS12における処理(図13)と同様の処理を行い、表示されているライブラリ画面の表示要素3d〜3hの表示を更新する。ステップS21の処理が終了すると、リコール元に関する変数値を変更するユーザ操作に応じた処理は終了する。なお、ライブラリ画面4のリスト欄3fでは、表示されているリスト中のch番号のみが選択対象であり、表示されていないch番号を選択することはできない。
【0035】
次に、"Recall"ボタンの操作に応じた処理のフローチャートを図12に示す。
図12に示す"Recall"ボタンの操作に応じた処理は、ライブラリ画面においてユーザが"Recall"ボタン3gをクリックした際に起動され、ステップS30にて変数SNから"Indiv."か"Scene"のいずれが指定されているか判断される。この場合、コンボボックス3dにおいて"Indiv."が指定されている場合は、シーン番号は指定されないことから変数"SN"は"0"であり、"Scene"が指定された場合はシーン番号が指定されることから変数"SN"は"1"以上の値となる。ここで、変数"SN"が"0"と判断された場合は、コンボボックス3dにおいて"Indiv."が指定されておりステップS31に進む。ステップS31では、デジタルミキサ1に用意されている Indiv.ライブラリから、変数"DN"で特定されるパラメータセットが読み出される。変数"DN"は、リスト欄3fに表示されているダイナミクス系エフェクトの Indiv.ライブラリにおけるパラメータセットの内のリコール元として選択されたパラメータセットのデータ番号である。
【0036】
また、変数"SN"が"1"以上と判断された場合は、コンボボックス3dにおいて"Scene"が指定されておりステップS32に分岐する。ステップS32では、シーンメモリから変数"SN"が示すシーン番号のシーンデータ中の、変数"CN"が示すch番号のchのダイナミクス(COMP63)のパラメータセットが読み出される。ステップS31の処理あるいはステップS32の処理が終了するとステップS33にて、ステップS31あるいはステップS32の処理により読み出されたパラメータが、カレントメモリの変数"SCN"が示すch番号のchのダイナミクス(COMP63)のパラメータセットに上書きされる。変数"SCN"は現在編集対象として選択されている選択chのch番号を示し、そのch番号は選択ch欄3aに表示されている。次いで、カレントメモリの該ダイナミクス(COMP63)の、上書き後のパラメータセットの入出力特性が表示されるよう、第1グラフ欄3bの表示がステップS34にて更新される。ステップS34の処理が終了すると"Recall"ボタンの操作に応じた処理は終了する。
【0037】
次に、Storeボタンの操作に応じた処理のフローチャートを図14に示す。
ダイナミクスのライブラリ画面(その1)3においてユーザにより"Store"ボタン3hがクリックされると、図14に示すStoreボタンの操作に応じた処理が起動され、ステップS50にてカレントメモリから変数"SCN"が示すch番号のchのダイナミクス(COMP63)のパラメータセットが読み出される。変数"SCN"は選択chのch番号を示し、そのch番号は選択ch欄3aに表示されている。次いで、ステップS50で読み出された該パラメータセットが、Indiv.ライブラリにおける変数"DN"が示すデータ番号のパラメータセットにステップS51にて上書きされる。次いで、ステップS50で読み出された該パラメータセットに応じて、第1グラフ欄3bに表示されているリコール元の現特性の表示がステップS52にて更新される。ステップS52の処理が終了するとStoreボタンの操作に応じた処理は終了する。なお、"Store"ボタンが操作されてからステップS50の処理が行われるまでの間に一時的に開かれるダイアログボックス(図示せず)にて、Comp Indiv.ライブラリにストアするデータセットに対し、ユーザが任意の名称を付与することができるようになっている。
【0038】
次に、他の例とされるダイナミクスのライブラリ画面(その3)5を図15に示す。
図15に示すダイナミクスのライブラリ画面(その3)5では、リスト欄3fにシーン番号別にパラメータセットのリストを表示するのをやめて、リスト欄5fにシーン番号とチャンネル番号とを表示させてリスト欄5fで同時に選択できるようにしている。この場合、コンボボックス5dでは"Indiv."か"Scene"かを択一して選択するようにしており、ダイナミクスのライブラリ画面(その3)5は"Scene"が選択された際のダイナミクスのライブラリ画面とされている。図示するリスト欄5fには、シーン番号"26"のチャンネル名"Vo 1"の入力ch1(26_i01: Vo 1)、シーン番号"26"のチャンネル名"Vo 3"の入力ch3(26_i03: Vo 3)、シーン番号"26"のチャンネル名"MC"の入力ch9(26_i09: MC)、シーン番号"26"のチャンネル名"Choir 1"の入力ch12(26_i12: Choir 1)・・・からなるリストが表示されており、入力ch3(26_i03: Vo 3)が選択表示されている。ch欄5aないしタイプ欄5c、第2グラフ欄5e、"Recall"ボタン5g、"Type filter"ボックス5hは、ダイナミクスのライブラリ画面(その2)4のch欄3aないしタイプ欄3c、第2グラフ欄3e、"Recall"ボタン3g、"Type filter"ボックス3iと同様とされているのでその説明は省略する。このライブラリ画面(その3)5のリスト欄5fにおいて、ユーザが、複数のシーンの複数のchのダイナミクスのパラメータセットの中から、リコールしたい1つのパラメータセットを選択することができる。
なお、ダイナミクスのライブラリ画面(その3)5において"Indiv."が選択された場合は、図7に示すダイナミクスのライブラリ画面(その1)3と同様の画面とされるので、その説明は省略するが、"Type filter"ボックス5hが無効化されて表示が省略され、それに替えて"Store"ボタンが有効化されて表示されるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明した本発明の実施例にかかる対象となる音響機器は、デジタルミキサに限らず、マルチトラックレコーダ、複数chエフェクタ、複数chアンプ、スピーカプロセッサ、等であってもよい。また、 Indiv.ライブラリやSceneライブラリを開く処理ブロックは、上記で説明したダイナミクスに限らず、各チャンネル内のイコライザ、ディレイや、各チャンネルに挿入することができるエフェクタ、グラフィックイコライザ等の何れでもよい。何れの処理ブロックであっても、同様に、複数の各シーンデータの中に含まれている当該処理ブロックと同種の複数のパラメータセットをリスト化し、ユーザに1つのライブラリとして見せることができる。各チャンネルに挿入できる処理ブロックの場合、リコール元となる各処理ブロックを、その処理ブロックを挿入したチャンネルにより特定するのではなく、同種の処理ブロックに識別子となる通し番号をつけて、その通し番号で特定するのがよい。なお、処理ブロックの挿入場所を示すパラメータは、その処理ブロックのIndiv.ライブラリの記憶対象外であり、それと同様に、Sceneライブラリにも当該パラメータは記憶されない。
【0040】
以上説明した本発明の実施例では入力チャンネル53のダイナミクス(COMP63)のライブラリについて説明したが、仮想的なライブラリを用意する処理ブロックはダイナミクスに限らない。入力チャンネルのイコライザ(PEQ61)、センド調整部(65)、出力チャンネルのダイナミクス63、イコライザ61、8機の各エフェクタ等の何れの1の処理ブロックであってもよい。その場合、各仮想的なライブラリのフィルタリング条件としては、各処理ブロックに応じて異なる。実施例のダイナミクスの場合は、ダイナミクスタイプ(Gate、Duck、Comp、De_Esなど)であったが、イコライザの場合は、最高バンド(又は最低バンド)のタイプ(シェルビング又はバンドパス)、センド調整部の場合は、入力chに付与されたch名称に含まれる文字列("Vo.","MC"など)、エフェクタの場合は、エフェクトのタイプ(リバーブ、エコー、コーラス、フランジャーなど)でフィルタリングするのが好適である。
また、仮想的なライブラリのフィルタリングを1つの条件(ダイナミクスタイプ)で行うようになっていたが、2以上の条件でフィルタリングを行うようにしてもよい。2つ目のフィルタリング条件としては、例えば、各chの名称に含まれる文字列でのフィルタリングや、ch番号の範囲でのフィルタリングなどが考えられる。特に、図15の例では、リスト欄5fに表示されるパラメータセット数が多くなりがちなので、2つ目のフィルタリングを行えるようにすることが望ましい。
【符号の説明】
【0041】
1 デジタルミキサ、2 ダイナミクスの編集画面、2a "Library"ボタン、2b ch欄、2c タイプ欄、2d グラフ欄、2e "ON"ボタン、2f 摘み、3 ダイナミクスのライブラリ画面(その1)、3a ch欄、3b 第1グラフ欄、3c タイプ欄、3d コンボボックス、3e 第2グラフ欄、3f リスト欄、3g "Recall"ボタン、3h "Store"ボタン、3i "Type filter"ボックス、3j タイプリスト、4 ダイナミクスのライブラリ画面(その2)、5 ダイナミクスのライブラリ画面(その3)、5a ch欄、5b 第1グラフ欄、5c タイプ欄、5d コンボボックス、5e 第2グラフ欄、5f リスト欄、5g "Recall"ボタン、5h "Type filter"ボックス、10 CPU、11 フラッシュメモリ、12 RAM、13 その他I/O、14 波形I/O、15 信号処理部、16 表示器、17 電動フェーダ、18 操作子、19 バス、30 タッチパネル、31 ユーザ定義キー、32a ボタン、32b ボタン、33a ボタン、33b ボタン、33c ボタン、33d ボタン、34 カーソル移動キー、35 増減キー、36 ロータリエンコーダ、37 エンターキー、40−1〜40−3 chストリップ、40−9 STchストリップ、41a SELスイッチ、41b オンSW、41c フェーダつまみ、41d CUEスイッチ、50 A入力、51 D入力、52 入力パッチ、53 入力ch部、54 MIXバス、55 MIX出力ch部、56 出力パッチ、57 内蔵エフェクタ部、58 A出力、59 D出力、60 ATT、61 4バンドPEQ、62 エフェクタ、63 COMP、64 フェーダchオンSW、65 センド調整部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力する複数の音響信号に対して、複数の処理ブロックからなる信号処理を施し、信号処理の施された複数の音響信号を出力する音響機器であって、
ディスプレイと、
前記複数の処理ブロックに対応する複数のパラメータセットからなるカレントデータを記憶したカレントメモリと、
該カレントメモリの前記カレントデータに基づいて、前記複数の処理ブロックからなる信号処理を実行する信号処理部と、
前記カレントデータと同じデータ構成のシーンデータが複数記憶されているシーンメモリと、
1のシーンデータを指定してストアの実行が指示されたとき、前記カレントメモリからカレントデータを読み出し、前記シーンメモリの該指定された1のシーンデータに上書きするシーンストア部と、
1のシーンデータを指定してリコールの実行が指示されたとき、前記シーンメモリから該指定された1のシーンデータを読み出し、前記カレントメモリのカレントデータに上書きするシーンリコール部と、
1の処理ブロックを指定してライブラリの表示が指示されたとき、前記ディスプレイに、前記シーンメモリに記憶された1ないし複数のシーンデータに含まれる、該指定された処理ブロックに対応するパラメータセットのリストを含むライブラリ画面を表示するライブラリ表示部と、
該リストの1のパラメータセットを指定してリコールの指示がされたとき、前記シーンメモリから該指定された1のパラメータセットを読み出し、前記カレントメモリのカレントデータの中の、前記指定された処理ブロックに対応するパラメータセットに上書きするシーンライブラリリコール部と、
を備えることを特徴とする音響機器。
【請求項2】
前記ライブラリ表示部に表示されるリストが、ユーザにより設定された条件によって、フィルタリングされたパラメータセットのリストであることを特徴とする請求項1記載の音響機器。
【請求項1】
入力する複数の音響信号に対して、複数の処理ブロックからなる信号処理を施し、信号処理の施された複数の音響信号を出力する音響機器であって、
ディスプレイと、
前記複数の処理ブロックに対応する複数のパラメータセットからなるカレントデータを記憶したカレントメモリと、
該カレントメモリの前記カレントデータに基づいて、前記複数の処理ブロックからなる信号処理を実行する信号処理部と、
前記カレントデータと同じデータ構成のシーンデータが複数記憶されているシーンメモリと、
1のシーンデータを指定してストアの実行が指示されたとき、前記カレントメモリからカレントデータを読み出し、前記シーンメモリの該指定された1のシーンデータに上書きするシーンストア部と、
1のシーンデータを指定してリコールの実行が指示されたとき、前記シーンメモリから該指定された1のシーンデータを読み出し、前記カレントメモリのカレントデータに上書きするシーンリコール部と、
1の処理ブロックを指定してライブラリの表示が指示されたとき、前記ディスプレイに、前記シーンメモリに記憶された1ないし複数のシーンデータに含まれる、該指定された処理ブロックに対応するパラメータセットのリストを含むライブラリ画面を表示するライブラリ表示部と、
該リストの1のパラメータセットを指定してリコールの指示がされたとき、前記シーンメモリから該指定された1のパラメータセットを読み出し、前記カレントメモリのカレントデータの中の、前記指定された処理ブロックに対応するパラメータセットに上書きするシーンライブラリリコール部と、
を備えることを特徴とする音響機器。
【請求項2】
前記ライブラリ表示部に表示されるリストが、ユーザにより設定された条件によって、フィルタリングされたパラメータセットのリストであることを特徴とする請求項1記載の音響機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−110585(P2013−110585A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254029(P2011−254029)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
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