説明

頚部装着具

【課題】構造を複雑にすることなく安価に製造でき、繰り返し使用でき、良好な装着感が得られ、装着者の鎖骨、頚椎、胸椎上部周辺の損傷が防止されて、安全性を十分に確保することができる頚部装着具を提供する。
【解決手段】ヘルメットを被る装着者の頚部に着脱自在に配設される頚部装着具1であって、弾性変形可能な材料からなり、前記頚部を囲繞する環状部2と、前記環状部2における前記装着者の背面側Bから垂設されるパッド部3と、を備え、前記環状部2は、その周方向の一部以上で分割可能とされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばオートバイに乗るオートバイライダーが装着して有効な頚部装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、オートバイ(自動二輪車)ライダーがオートバイに乗る際においては、万一の転倒時に備えて、頚部やその周辺を保護する頚部装着具を装着する。従来の頚部装着具として、例えば下記特許文献1に記載されたものは、樹脂、ガラス繊維又は炭素繊維などからなり、外側の破壊ゾーンが優先的に破壊されるように形成された環状部を有している。この頚部装着具では、環状部にヒンジ及びバネ押しラッチが配設されており、バネ押しラッチを操作して環状部の一部を分割させるように開き、該頚部装着具を装着者の頚部に装着する。次いで、環状部の前記一部における端部同士を連結させるように接近させ、再びバネ押しラッチを操作して、該環状部を閉じる。そして、頚部装着具を装着した装着者が万一転倒した際には、環状部の破壊ゾーンが破壊されて、装着者の頚部やその周辺の損傷を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−526795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した頚部装着具では、構造が複雑であり、製造費用が嵩んで高価になるという問題があった。また、転倒時に環状部の破壊ゾーンが破壊されるので、繰り返し使用することは困難である。
また、この種の頚部装着具に対しては、下記のような要望があった。
すなわち、構造を複雑にすることなく安価に製造でき、良好な装着感が得られ、装着者の鎖骨、頚椎、胸椎上部周辺の損傷を防止でき、安全性を十分に確保することへの要求があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、構造を複雑にすることなく安価に製造でき、繰り返し使用でき、良好な装着感が得られ、装着者の鎖骨、頚椎、胸椎上部周辺の損傷が防止されて、安全性を十分に確保することができる頚部装着具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明は、ヘルメットを被る装着者の頚部に着脱自在に配設される頚部装着具であって、弾性変形可能な材料からなり、前記頚部を囲繞する環状部と、前記環状部における前記装着者の背面側から垂設されるパッド部と、を備え、前記環状部は、その周方向の一部以上で分割可能とされていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る頚部装着具において、少なくとも前記パッド部内には、該パッド部よりも剛性が高い板状の補強部材が配設され、前記補強部材は、前記パッド部に沿うように上下方向に延びる本体部と、前記本体部の上端部に位置して前記ヘルメット側を向く受け面部と、を備えることとしてもよい。
【0008】
また、本発明に係る頚部装着具において、前記パッド部には、該パッド部を厚さ方向に貫通する貫通孔が形成され、前記環状部の内周面のうち前記背面側の部分、及び、前記パッド部の内面には、上下方向に延在して溝が形成され、前記貫通孔は、前記溝内に開口していることとしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る頚部装着具によれば、構造を複雑にすることなく安価に製造でき、繰り返し使用でき、良好な装着感が得られ、装着者の鎖骨、頚椎、胸椎上部周辺の損傷が防止されて、安全性を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る頚部装着具を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る頚部装着具を示す正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る頚部装着具を示す背面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る頚部装着具を示す左側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る頚部装着具を示す右側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る頚部装着具を示す上面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る頚部装着具を示す下面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る頚部装着具の前方部を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る頚部装着具の後方部を示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る頚部装着具の補強部材を示す斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る頚部装着具において、補強部材の配置状態を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る頚部装着具について説明する。
本実施形態の頚部装着具1は、例えば、オートバイライダー(装着者)がオートバイに乗る際に用いるものである。この頚部装着具1は、図示する状態以外に、例えば装着者が着用するジャケットの首回りに形成された収納ポケットに収容されたり、外面にデザインの施された布素材に収容されたりして、装着者の頚部に装着される。
【0012】
頚部装着具1は、フルフェイスタイプのヘルメットを被る装着者の頚部に着脱自在に配設されるものであって、弾性変形可能な材料からなり、図1〜図7に示すように、前記頚部を囲繞する環状部2と、環状部2における装着者の背面側(図中に矢印Bで示す方向)から垂設されるパッド部3と、を備えている。尚、図中に矢印Fで示す方向は装着者の前面側を示しており、矢印Sで示す方向は装着者の側方側(左右方向)を示している。
【0013】
ここで、特に図示しないが、環状部2の中心軸は装着者の頚椎及び胸椎(脊柱)の延在方向に沿うように上下方向に延びており、以下の説明においては、この中心軸方向に沿う頚部装着具1の環状部2側(装着者の頭部側)を上側、パッド部3側(装着者の胴体側)を下側といい、中心軸に直交する方向を径方向といい、中心軸を中心に周回する方向を周方向という。尚、頚部装着具1を装着者が装着した状態において、該装着者がオートバイ上で前傾姿勢をとる際などには、前記中心軸は、鉛直方向の上方から下方へ向かうに従い漸次前面側Fから背面側Bへ向かうように傾斜して延在することとなる。
【0014】
また、環状部2及びパッド部3は、多孔質状の弾性材料からなり、本実施形態では合成ゴムの発泡体が用いられている。環状部2及びパッド部3は、金型等を用いて一体に成形されている。
【0015】
環状部2は、装着者の前面側Fに配置される前方部2Aと、装着者の背面側Bに配置されるとともに、パッド部3が垂設された後方部2Bと、を備えている。図6において、前方部2A及び後方部2Bは、ともに上面視C字状をなしており、互いの両端部同士を当接させるように向かい合って組み合わされることにより、環状部2全体として上面視円環状とされている。尚、図示の例では、環状部2は、左右方向Sに沿う外形寸法よりも前面側F・背面側Bを含む前後方向(図6の上下方向)に沿う外形寸法が大きく設定された長円形状とされている。
【0016】
また、前方部2Aと後方部2Bとは、互いに向かい合う両端部同士のうち、一方が接着等により互いに固定されており、他方が互いに分離可能とされている。詳しくは、環状部2は、前記一方である連結部4(図6における環状部2の右側部分)において前方部2Aの端部と後方部2Bの端部とが連結され、前記他方である開閉部5(図6における環状部2の左側部分)において前方部2Aの端部と後方部2Bの端部とが分離可能に当接されている。このように、環状部2は、その周方向の一部(開閉部5)以上で分割可能とされているとともに、弾性変形により装着者の頚部に着脱できる程度に開閉可能とされている。尚、このように開閉可能な開閉部5とするには、例えば面ファスナー等(不図示)を用いることができる。
【0017】
図4及び図5に示すように、前方部2Aは、背面側Bから前面側Fに向かうに従い漸次上側から下側へ向かうように傾斜して形成されている。また、前方部2Aにおいて下側を向く面は、側面視で凹曲線状に形成されている。また、図1において、前方部2Aの径方向に沿う縦断面は、略多角形状又は略長円形状とされている。前方部2Aの前記縦断面のうち、前面側Fに位置する部位は、前記前後方向に長く上下方向に短い扁平した形状とされ、背面側Bに位置する部位(すなわち周方向の両端部近傍)は、上下方向に長く左右方向Sに短い形状若しくは上下方向の長さ及び左右方向Sの長さが互いに略同一に設定された形状となっている。詳しくは、前方部2Aの前記縦断面は、背面側Bから前面側Fに向かうに従い漸次上下方向の高さが減少するとともに、径方向に沿う長さが増大するように形成されている。
【0018】
また、図8に示すように、前方部2Aの周方向の端面6における上側部分6Aは、上側から下側に向かうに従い漸次背面側Bから前面側Fに向かって傾斜して形成されている。また、端面6における下側部分6Bは、上下方向に延びるように形成されている。また、端面6における上側部分6Aと下側部分6Bとの連結部位は、凹曲面状に形成されている。
【0019】
図4及び図5において、後方部2Bは、背面側Bから前面側Fに向かうに従い漸次上側から下側へ向かうように傾斜して形成されている。また、図9に示すように、パッド部3は板状をなしており、後方部2Bから下側へ向けて突出して形成されている。パッド部3の周方向に沿う両端部は、下側から上側へ向かうに従い漸次背面側Bから前方側Fに向かうように傾斜して形成されている。また、図4、図5に示すように、パッド部3は、上側から下側に向かうに従い漸次前面側Fから背面側Bに向かうように僅かに傾斜して形成されている。また、図示の側面視において、パッド部3の下端部は、上側から下側に向かうに従い漸次その厚さを低減させるように形成されているとともに、その下端縁が先鋭となっている。
【0020】
また、図4、図5において、後方部2Bの前面側Fに位置する部位(すなわち周方向の両端部近傍)のうち下側を向く面、及び、その背面側Bに連なるパッド部3の内面(前方側Fを向く面)は、側面視で凹曲線状に形成されている。後方部2Bにおいて前記下側を向く面は、前方部2Aにおいて下側を向く面に滑らかに連なっており、このような形状によって、頚部装着具1は装着者の頚部周辺に密着するように安定して装着可能とされている。
【0021】
また、図9に示すように、後方部2Bの周方向の端面7における上側部分7Aは、上側から下側に向かうに従い漸次背面側Bから前面側Fに向かって傾斜して形成されている。また、端面7における下側部分7Bは、上下方向に延びるように形成されている。また、端面7における上側部分7Aと下側部分7Bとの連結部位は、凸曲面状に形成されている。
【0022】
また、パッド部3には、該パッド部3を厚さ方向(すなわち前記前後方向)に貫通する貫通孔3Aが形成されている。図示の例では、貫通孔3Aは円孔とされており、パッド部3の下端部に1つ形成されている。また、環状部2の内周面のうち背面側Bの部分(すなわち後方部2Bの部分)、及び、パッド部3の内面には、上下方向に延在して溝8が形成されている。図示の例では、U字状の溝8が上下に延びて形成されており、該溝8の上端部は、上側に向けて開口されている。また、貫通孔3Aは、溝8内に開口して形成されている。図示の例では、溝8内における下端部に、貫通孔3Aが配置されている。
【0023】
また、図10及び図11に示すように、この頚部装着具1における少なくともパッド部3内には、該パッド部3よりも剛性が高い板状の補強部材9が配設されている。図示の例では、補強部材9は上下方向に延在しており、その上端部が後方部2B内に配置され、前記上端部よりも下側に位置する部分がパッド部3内に配置されている。補強部材9は、例えば剛性のある樹脂材料や金属材料等からなり、本実施形態ではポリカーボネートが用いられている。
【0024】
補強部材9は、側面視L字状をなしており、パッド部3に沿うように上下方向に延びる本体部9Aと、本体部9Aの上端部に位置して装着者のヘルメット側(上側)を向く受け面部9Bと、を備えている。本体部9Aは略矩形板状をなしており、その下端部には孔10が形成されている。図11において、補強部材9の孔10は、パッド部3の貫通孔3Aと同軸に配置されている。また、受け面部9Bは、本体部9Aの上端部から背面側Bへ向かって延びる板状をなしている。詳しくは、受け面部9Bは、前記前後方向よりも左右方向Sに長い矩形板状をなしており、その上面が受け面とされている。
【0025】
補強部材9の左右方向Sの中央部には、リブ部11が形成されており、該リブ部11の下側部分は上下方向に延び、上側部分は前記前後方向に延びている。リブ部11の下側部分は、下側から上側に向かうに従い漸次本体部9Aから背面側Bへ向けて離間するように傾斜して形成されている。また、リブ部11の上側部分は、背面側Bから前面側Fへ向かうに従い漸次受け面部9Bから下側へ向けて離間するように傾斜して形成されている。リブ部11において前記下側部分と前記上側部分とを繋ぐ中間部分は、曲面状とされている。
補強部材9は、パッド部3及び後方部2B内に埋設されており、孔10の内周面以外の周囲全てが前記合成ゴムの発泡体で覆われている。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係る頚部装着具1によれば、下記の作用効果を奏する。
ヘルメットを被る装着者がオートバイに乗っているときに、万一転倒した際には、地面等との衝突の衝撃やこれによるヘルメットの傾倒などによって、装着者が鎖骨、頚椎、胸椎上部等に損傷を受けるおそれがある。本実施形態の頚部装着具1によれば、弾性変形可能な環状部2及びパッド部3を備えているので、このような損傷が防止される。
【0027】
詳しくは、転倒時の衝撃により、装着者のヘルメットが前方に傾倒した際には、該ヘルメットの下端前方部が、環状部2における装着者の前面側Fの部分(前方部2A)に上側から当接するとともに該前面側Fの部分が弾性変形して、衝突の衝撃を吸収する。これにより、装着者の鎖骨周辺に対するヘルメットからの衝撃が緩和される。また、転倒時に地面等から受ける装着者の鎖骨周辺への衝撃が、前記前面側Fの部分の弾性変形により緩和される。従って、装着者の鎖骨周辺の損傷が防止される。
【0028】
また、転倒時の衝撃により、装着者のヘルメットが後方に傾倒した際には、該ヘルメットの下端後方部が、環状部2における装着者の背面側Bの部分(後方部2B)に上側から当接するとともに該背面側Bの部分が弾性変形して、衝突の衝撃を吸収する。また、ヘルメットが側方に傾倒した際には、該ヘルメットの下端側方部が、環状部2における装着者の側方側Sの部分(連結部4近傍及び開閉部5近傍のいずれか)に上側から当接するとともに該側方側Sの部分が弾性変形して、衝突の衝撃を吸収する。またこれにより、装着者の頚椎(頚部)が後方又は側方へ向けて大きく曲げられるようなことが防止される。また、転倒時に地面等から受ける装着者の頚椎周辺への衝撃が、前記背面側Bの部分及び前記側方側Sの部分の弾性変形により緩和される。従って、装着者の頚椎周辺の損傷が防止される。
【0029】
また、環状部2における装着者の背面側Bからパッド部3が垂設されており、このパッド部3は、装着者の頚椎の下側に位置する胸椎上部を覆うように配設されることとなる。従って、転倒時に地面等から受ける装着者の胸椎上部周辺への衝撃が、パッド部3の弾性変形により緩和され、装着者の胸椎上部周辺の損傷が防止される。
そして、この頚部装着具1によれば、衝撃を受け弾性変形した後に、弾性復元力により復元変形して元の形状に復帰するので、繰り返し前述の優れた効果を得ることができる(繰り返し使用することができる)のである。
【0030】
また、この頚部装着具1は、環状部2における周方向の一部以上で分割可能とされているので、環状部2の前記一部において分割された向かい合う端部同士(向かい合う端面6、7同士)を大きく開く(離間させる)ように、該環状部2を弾性変形させることにより、装着者の頚部に簡便に着脱することができる。すなわち、従来のように、環状部にヒンジやバネ押しラッチを用いるような複雑な構造を用いることなく、簡単な構造により前述の着脱が行える。また、このように簡単な構造を用いていることから、安価に製造することができる。
【0031】
また、簡単な構造のため清掃(洗浄)が容易に行えるとともに、衛生的である。
さらに、頚部装着具1は弾性変形可能な材料であることから柔軟性を有しており、頚部へ装着した際に良好な装着感が得られる。
また、頚部装着具1の環状部2が環状とされていることにより、該頚部装着具1を頚部に装着した際の安定性が確保されて、風等の外力により頚部装着具1が頚部から容易に外れてしまうようなことがない。
【0032】
また、補強部材9によりパッド部3の剛性が確保されることから、転倒時に比較的強い衝撃を受けた場合であっても、装着者の頚椎及び胸椎上部周辺の損傷が防止される。
詳しくは、転倒時における地面等との衝突により、パッド部3の背面側Bから大きな外力が加えられた際、補強部材9の本体部9Aが、この外力を受けて分散させるように作用することから、胸椎上部周辺への衝撃が緩和される。また、転倒時にヘルメットが後方に傾倒した際に、該ヘルメットの下端後方部に上側から押された環状部2の背面側Bの部分(後方部2B)を介してパッド部3に力が加えられ、該パッド部3が撓まされる(湾曲させられる)ようなことが抑制される。すなわち、パッド部3の剛性が高められることによって、ヘルメットが後方に大きく傾倒することが抑制されるので、装着者の頚椎周辺の損傷がより確実に防止される。
【0033】
そして、この補強部材9には、本体部9Aの上端部に位置してヘルメット側を向く受け面部9Bが備えられているので、この受け面部9Bが、環状部2の背面側Bの部分を介してヘルメットから加えられる力を確実に受けとめることとなる。詳しくは、受け面部9Bの受け面がヘルメット側を向いているので、ヘルメットから加えられる力を受ける面積が十分に確保されている。また、このような受け面部9Bが形成されていることによって、補強部材9とパッド部3との接触面積が増大するとともに互いの上下方向への相対移動に大きな抵抗となるように作用して、パッド部3内における補強部材9の位置が安定することとなる。さらに、補強部材9の受け面部9Bにおける下面が、パッド部3に下側から支持されるように当接されている。従って、補強部材9が上側から前記力を受けた際に、パッド部3内を下方向にスライド移動してしまうようなことが防止される。
【0034】
また、環状部2の内周面のうち装着者の背面側Bの部分(後方部2B)、及び、パッド部3の内面には、上下方向に延びて溝8が形成されている。また、パッド部3には、その厚さ方向に貫通して貫通孔3Aが形成されており、この貫通孔3Aは、溝8内に開口している。そして、装着者がオートバイに乗っている際に外部から相対的に受ける風によって、この溝8には、空気が上側(ヘルメット側)から流入するとともに下側へ向けて流れ、貫通孔3Aを通って外部(パッド部3の背面側B)へ流出することになる。これにより、装着者の頚部における背面側Bの通気性が確保されるので、この頚部装着具1を長時間装用する場合であっても、装着による不快感が低減される。
【0035】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、前述の実施形態では、頚部装着具1は、オートバイライダーがオートバイに乗る際に用いるものであることとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、装着者がフルフェイスタイプのヘルメットを被るスポーツや競技等が対象となり、例えば、オートバイ以外の自動車、自転車、ボート、そり等に乗る装着者がこの頚部装着具1を装着してもよい。
【0036】
また、環状部2及びパッド部3が、多孔質状の弾性材料からなることとしたが、これに限定されるものではなく、内部に気孔を有しない弾性材料であってもよい。
また、環状部2は、周方向のうち開閉部5で分割可能とされていることとしたが、周方向の一部以上で分割可能とされていればよく、例えば、開閉部5及び連結部4において分割可能とされていても構わない。
【0037】
また、パッド部3には、円孔からなる貫通孔3Aが該パッド部3の下端部に1つ形成されていることとしたが、貫通孔3Aの形状、数、配置等は前述の実施形態に限定されない。
また、溝8が上下に延びるU字状をなしていることとしたが、該溝8は上下方向に延在して形成されていればよく、前述したU字状以外の例えばI字状等であってもよい。
【0038】
また、この頚部装着具1は、前方部2Aを後方部2Bから分離させた状態で、該後方部2Bのみを使用することができる。この場合、装着時の安定性を確保するため、装着者が着用するジャケットの首回りのうち背面側Bの部分に、後方部2Bを収容する収納ポケット等を形成することが好ましい。
【符号の説明】
【0039】
1 頚部装着具
2 環状部
2B 後方部(環状部のうち背面側の部分)
3 パッド部
3A 貫通孔
8 溝
9 補強部材
9A 本体部
9B 受け面部
B 背面側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットを被る装着者の頚部に着脱自在に配設される頚部装着具であって、
弾性変形可能な材料からなり、
前記頚部を囲繞する環状部と、
前記環状部における前記装着者の背面側から垂設されるパッド部と、を備え、
前記環状部は、その周方向の一部以上で分割可能とされていることを特徴とする頚部装着具。
【請求項2】
請求項1に記載の頚部装着具であって、
少なくとも前記パッド部内には、該パッド部よりも剛性が高い板状の補強部材が配設され、
前記補強部材は、前記パッド部に沿うように上下方向に延びる本体部と、前記本体部の上端部に位置して前記ヘルメット側を向く受け面部と、を備えることを特徴とする頚部装着具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の頚部装着具であって、
前記パッド部には、該パッド部を厚さ方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記環状部の内周面のうち前記背面側の部分、及び、前記パッド部の内面には、上下方向に延在して溝が形成され、
前記貫通孔は、前記溝内に開口していることを特徴とする頚部装着具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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