説明

顕微鏡制御装置および顕微鏡制御方法

【課題】高速イメージングや、複数波長の蛍光観察の連続撮像において、ターレット駆動方式のユニットの切換え時間を短縮することが可能な顕微鏡制御装置および顕微鏡制御方法を提供すること。
【解決手段】N(Nは3以上の整数)個の光学素子が装着可能な円盤状のターレットと、ターレットを周方向に回転駆動するターレット駆動手段とを備える光学顕微鏡を制御する顕微鏡制御装置であって、光路上に順に設置する3個以上M(MはN以下の整数)個以下の光学素子を、N個の光学素子から選択し、選択された3個以上M個以下の光学素子を、ターレット駆動手段によって回転駆動する合計駆動時間が最短となるように、光路上に設置するための順序を決定し、決定された順序に従って、ターレットを回転駆動するようにターレット駆動手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式顕微鏡に使用され、3種類以上の光学デバイスを電動ターレット駆動方式によって切り替えて、サンプル(試料)を観察または撮像する顕微鏡制御装置および顕微鏡制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡は、工業分野を始めとして、生物分野における研究や検査等において広く利用されている。
一般的な顕微鏡は、固定倍率の異なる複数の対物レンズを切換えて光軸上に配置することによって所望の観察倍率を設定している。通常、対物レンズの切換えにはスライド式やターレット式などが用いられる。ターレット式による対物レンズの切換えの場合、周知の技術として、駆動距離が最短となるようにターレットの回転方向を決めて駆動することで切換え時間を短縮するという技術が公開されている。
【0003】
また、蛍光顕微鏡は、蛍光性をもったサンプルを観察するために、超高圧水銀灯やキセノンランプ・紫外線LED、レーザー光などを用いて、蛍光物質の励起波長での照明を可能としている。蛍光顕微鏡は、例えば、通常の光学顕微鏡(生物顕微鏡)のように、下方から励起光を照射する透過型蛍光顕微鏡は、光源に励起フィルタを取り付け、ターレットを用いて所望の励起光の波長のみをサンプルに照射する。そして、サンプルから発生した蛍光の波長のみを透過する吸収フィルタを用いて、蛍光を観察する。
【0004】
このような蛍光顕微鏡において、ターレットの回転による励起光の切換えに同期して、複数の波長の画像を取得する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、レボルバの切換え時に、レボルバの現在のアドレスから目的のアドレスへの最短経路を検索するためのメモリを参照し、回転経路を決定する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−161032号公報
【特許文献2】特開2010−113039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のようなターレット切換え方式では、以下のような問題があった。
すなわち、3波長以上の蛍光連続撮像においては、ターレットの駆動距離を最短にしただけでは、必ずしも切換え時間を短縮することはできないという問題点があった。
【0007】
例えば、「第1の波長」、「第2の波長」、「第3の波長」、「第4の波長」、および「第5の波長」の各フィルタ(励起フィルタまたは吸収フィルタ)を、円盤状のターレットの右回転方向(時計方向)に、「第1のホイール」、「第2のホイール」、「第3のホイール」、「第4のホイール」、および「第5のホイール」の5つのフィルタホイールに設置することが可能な配置となっているターレットを用いて説明する。このようなターレットを用いて、1番目に「第1のホイール」に配置された「第1の波長」のフィルタで撮像し、2番目に「第4のホイール」に配置された「第4の波長」のフィルタで撮像し、3番目に「第5のホイール」に配置された「第5の波長」のフィルタで撮像するというような連動撮像を実行する場合に、ターレットの回転が最短ルートとなるようにターレットを駆動するためには、次のようにする。
【0008】
まず「第1のホイール」に配置された「第1の波長」で撮像した後、ターレットを左回転方向(反時計方向)に回転させる。次に「第5のホイール」に配置された「第5の波長」のフィルタを通過し、「第4のホイール」に配置された「第4の波長」で撮像する。そして、ターレットを右回転方向(時計方向)に回転させて「第5のホイール」に配置された「第5の波長」で撮像する。
【0009】
すなわち、「第1の波長」で撮像した後に「第5のホイール」を通過する動作が無駄な動作となってしまう。
高速でサンプル画像を撮像する場合においては、この「第5のホイール」の通過が余分に発生するため、「第1のホイール」から「第4のホイール」までの移動時間は、「第4のホイール」から「第5のホイール」までの移動時間の2倍となってしまう。サンプル細胞の成長や刺激後の応答をミリ秒オーダーで追跡する際には、このような余分な移動によって、撮像に支障をきたすことがあった。
【0010】
ここで、ユーザーが「第1のホイール」、「第2のホイール」および「第3のホイール」に、撮像で使用したい光学デバイス、すなわち、「第1の波長」のフィルタ、「第4の波長」のフィルタおよび「第5の波長」のフィルタを配置し、「第1のホイール」、「第2のホイール」、「第3のホイール」の順に撮像するという方法も考えられる。しかしながら、光学デバイスを抜き差しする作業が伴うことと、さらには、挿入後の光学デバイスに光軸などの配置の調整が必要な場合には、撮像までの準備に時間がかかってしまい。効率的ではないという問題点があった。
【0011】
本発明は、上述のような実状に鑑みたものであり、高速イメージングや、複数波長の蛍光観察の連続撮像において、ターレット駆動方式のユニットの切換え時間を短縮することが可能な顕微鏡制御装置および顕微鏡制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するため、下記のような構成を採用した。
すなわち、本発明の一態様によれば、本発明の顕微鏡制御装置は、光学顕微鏡を制御する顕微鏡制御装置である。そして、前記光学顕微鏡は、N(Nは3以上の整数)個の光学素子が装着可能な円盤状のターレットと、前記ターレットを周方向に回転駆動するターレット駆動手段とを備えることを特徴とする。また、前記顕微鏡制御装置は、光路上に順に設置する3個以上M(MはN以下の整数)個以下の光学素子を、前記N個の光学素子から選択する光学素子選択手段と、前記光学素子選択手段によって選択された前記3個以上M個以下の光学素子を、前記ターレット駆動手段によって回転駆動する合計駆動時間が最短となるように、前記光路上に設置するための順序を決定する設置順序決定手段と、前記設置順序決定手段によって決定された順序に従って、前記ターレットを回転駆動するように前記ターレット駆動手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の顕微鏡制御装置は、前記設置順序決定手段が、前記光学素子選択手段によって選択された前記3以上M個以下の光学素子のうち、任意の光学素子を第1の光学素子として指定し、前記第1の光学素子から最短駆動時間となる光学素子を第2の光学素子として指定し、前記第2の光学素子から最短駆動時間となる光学素子を第3の光学素子として指定する処理を、第Mの光学素子が指定されるまで繰り返すことにより、前記順序を決定することが望ましい。
【0014】
また、本発明の顕微鏡制御装置は、前記ターレットが、前記N個の光学素子を装着するための穴部を、同心円上に所定間隔で有し、前記設置順序決定手段が、前記ターレットの任意の2つの穴部間の駆動距離を記録したテーブルを参照することにより、前記最短駆動時間となる光学素子を指定することが望ましい。
【0015】
また、本発明の顕微鏡制御装置は、前記設置順序決定手段が、前記光学素子選択手段によって選択された前記3以上M個以下の光学素子のすべてについて、前記第1の光学素子として指定して前記第Mの光学素子が指定されるまで繰り返し、前記ターレット駆動手段によって回転駆動する合計駆動時間が最短となる場合を、前記順序として決定することが望ましい。
【0016】
また、本発明の顕微鏡制御装置は、前記光学素子が、励起フィルタまたは吸収フィルタであることが望ましい。
また、本発明の一態様によれば、本発明の顕微鏡制御方法は、光学顕微鏡を制御する顕微鏡制御方法である。そして、前記顕微鏡制御方法は、光路上に順に設置する3個以上M(MはN以下の整数)個以下の光学素子を、前記N個の光学素子から選択し、前記選択された前記3個以上M個以下の光学素子を、前記ターレット駆動手段によって回転駆動する合計駆動時間が最短となるように、前記光路上に設置する順序を決定し、前記決定された順序に従って、前記ターレットを回転駆動するように前記ターレット駆動手段を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、複数の波長を用いた高速撮像において、励起高速フィルタホイールまたは吸収高速フィルタホイールが回転駆動する合計駆動時間を最短にすることで、連動動作の高速性能の低下を抑えることが出来る、という効果を奏する。
【0018】
また、本発明は、ユーザーが最適な駆動方向を算出し高速ステップを決定するような、GUIの操作性上の煩わしさを解消することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した顕微鏡システムの構成を示す図である。
【図2】制御PC2が備える高速ユニット制御GUIの表示例を示す図である。
【図3】第1の実施の形態における高速連動最適化処理演算部21による高速連動最適化処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】駆動穴数LUT22の例を示す図である。
【図5】第1の実施の形態における励起高速フィルタホイール13または吸収高速フィルタホイール18の動作例を示す図である。
【図6】第2の実施の形態における高速連動最適化処理演算部21による高速連動最適化処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】穴番号の順番の全てのパターンの一覧表の例を示す図である。
【図8】第2の実施の形態における励起高速フィルタホイール13または吸収高速フィルタホイール18の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明を適用した顕微鏡システムの構成を示す図である。
【0021】
図1に示した顕微鏡システムは、顕微鏡装置1と、顕微鏡装置1を制御する制御PC2から構成される。
顕微鏡装置1は、光源ユニット11、高速シャッタ12、3個以上の励起高速フィルタが装着可能な円盤状の励起高速フィルタホイール13、顕微鏡フレーム14に備えられた投影管ユニット15、対物レンズ16、サンプル3を載置するステージ17、3個以上の吸収高速フィルタが装着可能な円盤状の吸収高速フィルタホイール18、CCDカメラ19、および高速ユニット制御部20を備える。
【0022】
制御PC2は、高速連動最適化処理演算部21、駆動穴数LUT22、および穴番号入力部23を備える。これらの機能については、後述する。
このような顕微鏡システムにおいて、顕微鏡装置1が備える高速ユニット制御部20は、制御PC2からの制御信号に基づき、高速シャッタ12を駆動するモーター(M)、励起高速フィルタホイール13および吸収高速フィルタホイール18を周方向に回転駆動するモーター(M)を制御する。また、制御PC2は、高速ユニット制御部20を制御するとともに、CCDカメラ19を制御してサンプル3を撮像する。
【0023】
サンプル3の撮像は、以下に説明する処理について、複数の異なる波長で連続して実行される。
まず、高速ユニット制御部20は、光源ユニット11から射出された蛍光物質に対する励起光を含む光が、光の透過および遮断を切り替える高速シャッタ12を介して、必要とする蛍光の波長のみ励起高速フィルタホイール13が保持する励起フィルタを透過するように制御する。励起高速フィルタホイール13は、複数の励起フィルタを所定間隔に設けられた同心円上の穴部に保持したもので、モーター(M)により摺動機構を介して光路上への切換えを可能にしている。
【0024】
励起フィルタを透過した光は、投光管ユニットが備えるミラーで反射され、対物レンズ16を介してステージ17に載置されたサンプル3に照射される。
すると、光が照射されたサンプル3から蛍光が発生し、対物レンズ16を介して、発生した蛍光の波長のみを透過する吸収フィルタを透過し、CCDカメラ19に入射する。そして、制御PC2の基、CCDカメラ19が蛍光画像を撮像する。なお、吸収フィルタは、励起フィルタと同様、複数の吸収フィルタを保持する吸収高速フィルタホイール18により、光路上への切換えを可能にしている。また、通常は、励起高速フィルタホイール13と吸収高速フィルタホイール18には、対応する励起フィルタと吸収フィルタが同じ穴番号の穴部に装着されている。
【0025】
図2は、制御PC2が備える高速ユニット制御GUIの表示例を示す図である。
ユーザーは、制御PC2の高速ユニット制御GUIにより、高速ユニット制御部20を制御する。
【0026】
ユーザーは、高速連動動作の事前に、単一波長でどのような蛍光画像を撮像できるかどうかを確認するために、高速ユニット制御GUI画面24内の通常切換え時穴番号入力部31に、撮像で使いたい励起フィルタと吸収フィルタが装着されている穴番号を入力する。図2に示した例では「1」が入力されている。そして、ユーザーは、通常切換えボタン32を押す。
【0027】
制御PC2は、通常切換えボタン32が押されると、高速ユニット制御部20に駆動要求コマンドを送信し、励起高速フィルタホイール13および吸収高速フィルタホイール18を指示した位置へ移動させる。
【0028】
次にユーザーは、ワンショットボタン33を押すと、高速ユニット制御部20は、あらかじめ決められた時間で高速シャッタ12を開閉する。
制御PC2は、CCDカメラ19によって得られた画像を高速ユニット制御GUI上に表示する。
【0029】
次に、ユーザーは、高速ステップ1、高速ステップ2、および高速ステップ3の撮像で使いたい、励起フィルタと吸収フィルタが装着されている穴番号を、高速ユニット制御GUIの第1穴番号入力部35、第2穴番号入力部36、および第3穴番号入力部37に入力する。図2に示した例では、それぞれ「1」「7」「8」が入力されている。
【0030】
そして、ユーザーは、高速連動スタートボタン34を押す。なお、第1穴番号入力部35、第2穴番号入力部36、および第3穴番号入力部37は、穴番号入力部23に対応する。
【0031】
すると、制御PC2は、第1穴番号入力部35、第2穴番号入力部36、および第3穴番号入力部37に入力されている穴番号をp1、p2、p3を引数として、図2に示した例では「1」「7」「8」を引数として、高速連動最適化処理演算部21により高速連動最適化処理を実行させ、高速ステップ1撮像画像表示領域38、高速ステップ2撮像画像表示領域39、および高速ステップ3撮像画像表示領域40にそれぞれの画像を表示する。
【0032】
図3は、第1の実施の形態における高速連動最適化処理演算部21による高速連動最適化処理の流れを示すフローチャートであり、図4は、駆動穴数LUT22の例を示す図である。
【0033】
高速連動最適化処理演算部21による高速連動最適化処理は、励起高速フィルタホイール13および吸収高速フィルタホイール18の連動動作の切換え時間を短縮するものである。
【0034】
高速連動最適化処理は、高速連動スタートボタン34が押されると以下のようにして実行される。
まず、ステップS301において、第1穴番号入力部35に入力されたp1と第2穴番号入力部36に入力されたp2をインデックスとして、駆動穴数が記録されている駆動穴数LUT22からp1からp2へ駆動するのに必要な駆動穴数を取得し、変数iに値をセットする。例えば、図2に示した例では、p1が「1」で、p2が「7」であるので、図4に示した駆動穴数LUT22の「現在位置の穴番号」「1」、「目標位置の穴番号」「7」から、駆動するのに必要な駆動穴数として「2」を取得し、変数iにセットする。
【0035】
そして、ステップS302において、上記p1と第3穴番号入力部37に入力されたp3をインデックスとして、駆動穴数LUT22からp1からp3へ駆動するのに必要な駆動穴数を取得し、変数jに値をセットする。例えば、図2に示した例では、p1が「1」で、p3が「8」であるので、図4に示した駆動穴数LUT22の「現在位置の穴番号」「1」、「目標位置の穴番号」「8」から、駆動するのに必要な駆動穴数として「1」を取得し、変数iにセットする。
【0036】
次に、ステップS303において、ステップS301でp1からp2へ駆動するのに必要な駆動穴数がセットされた変数iの値と、ステップS302でp1からp3へ駆動するのに必要な駆動穴数がセットされた変数jの値とを比較する。
【0037】
そして、変数jの値よりも変数iの値の方が大きい場合(ステップ303:N)は、ステップ304に進み、変数jの値が変数iの値以上の場合(ステップ303:Y)は、ステップ307に進む。上述の例では、変数iの値が「2」で変数jの値が「1」であるので、ステップS304に進む。
【0038】
ステップS304乃至ステップS306においては、p2の値を一時的に変数tempにセットし(ステップS304)、p3の値をp2にセットし(ステップS305)、ステップS304で一時的にセットした変数tempの値をp3にセットする(ステップS306)。上述の例では、ステップS304で「7」が変数tempにセットされ、ステップS305で、「8」がp2にセットされ、「7」がp3にセットされる。上述の例では、p2に「8」がセットされ、p3に「7」がセットされた。これにより、p2とp3の値が入れ替わる。
【0039】
そして、ステップS307において、連動動作要求コマンド(SEQSTART p1,p2,p3)を高速ユニット制御部20へ送信する。
次に、高速ユニット制御部20が連動動作要求コマンドを受信したときの励起高速フィルタホイール13または吸収高速フィルタホイール18の動作について説明する。
【0040】
図5は、第1の実施の形態における励起高速フィルタホイール13または吸収高速フィルタホイール18の動作例を示す図である。
図5において、(A)は、従来の動作例を示し、(B)は、本発明を適用した場合の動作例を示している。
【0041】
上述の例では、ユーザーは、第1穴番号入力部35、第2穴番号入力部36、および第3穴番号入力部37にそれぞれ「1」「7」「8」を入力しているが、上述の高速連動最適化処理によって、励起高速フィルタホイール13または吸収高速フィルタホイール18が光路上へ置く励起高速フィルタまたは吸収高速フィルタは、その穴番号が「1」、「8」、「7」の順番となる。そして、高速ユニット制御部20は、穴番号「1」、「8」、「7」の順に各モーターを駆動し、それぞれの励起高速フィルタまたは吸収高速フィルタを用いてあらかじめ決められた時間で高速シャッタ12を開閉し、サンプル3から発生した蛍光をCCDカメラ19で受光させる。
【0042】
これにより、制御PC2は、CCDカメラ19により得られたサンプル画像を、高速ステップ1撮像画像表示領域38、高速ステップ2撮像画像表示領域39、および高速ステップ3撮像画像表示領域40のそれぞれに表示する。
【0043】
以上、本発明の第1の実施の形態を説明したが、上述したように、高速連動最適化処理演算部21は、穴番号入力部23により入力された3個以上の穴番号に基づいて、光路上に順に設置する光学素子としての励起高速フィルタまたは吸収高速フィルタを、励起高速フィルタホイール13または吸収高速フィルタホイール18に保持されている全ての励起高速フィルタまたは吸収高速フィルタから選択する機能を有する。
【0044】
また、高速連動最適化処理演算部21は、上述のようにして選択された励起高速フィルタまたは吸収高速フィルタを、回転駆動する合計駆動時間が最短となるように、前記光路上に設置するための順序を決定する機能を有する。例えば、高速連動最適化処理演算部21は、上述のようにして選択された励起高速フィルタまたは吸収高速フィルタのうち、任意の励起高速フィルタまたは吸収高速フィルタを第1のフィルタとして指定し、その第1のフィルタから最短駆動時間となる励起高速フィルタまたは吸収高速フィルタを第2のフィルタとして指定し、その第2のフィルタから最短駆動時間となる励起高速フィルタまたは吸収高速フィルタを第3のフィルタとして指定する処理を、入力された穴番号の個数の分だけ繰り返すことにより、その順序を決定する。なお、最短駆動時間となるフィルタを指定する際には、任意の2つの穴部間の駆動距離を記録した駆動穴数LUT22を参照する。
【0045】
また、高速連動最適化処理演算部21は、上述のようにして決定された順序に従って、励起高速フィルタホイール13または吸収高速フィルタホイール18を回転駆動するように各モーターを制御する機能を有する。
【0046】
これにより、複数の波長を用いた高速撮像において、励起高速フィルタホイール13または吸収高速フィルタホイール18が回転駆動する合計駆動時間を最短にすることで、連動動作の高速性能の低下を抑えることが出来る。また、ユーザーが最適な駆動方向を算出し高速ステップを決定するような、GUIの操作性上の煩わしさを解消することができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
次に、本発明を第2の実施の形態を説明する。
第2の実施の形態は、図1を用いて説明した顕微鏡システムと共通した構成の顕微鏡システムを用いる。そこで、第1の実施の形態と異なる部分、特に、高速連動最適化処理演算部21による高速連動最適化処理を中心に説明する。
【0048】
図6は、第2の実施の形態における高速連動最適化処理演算部21による高速連動最適化処理の流れを示すフローチャートであり、図7は、穴番号の順番の全てのパターンの一覧表の例を示す図である。
【0049】
第2の実施の形態における高速連動最適化処理も、第1の実施の形態における高速連動最適化処理と同様、高速連動スタートボタン34が押されると、第1穴番号入力部35、第2穴番号入力部36、および第3穴番号入力部37に入力されている穴番号をp1、p2、p3を引数として実行される。また、第2の実施の形態における高速連動最適化処理も、励起高速フィルタホイール13および吸収高速フィルタホイール18の連動動作の切換え時間を短縮するものである。
【0050】
まず、ステップS601において、第1穴番号入力部35に入力されたp1、第2穴番号入力部36に入力されたp2、および第3穴番号入力部37に入力されたp3を、配列SeqStep[1]、配列SeqStep[2]、配列SeqStep[3]にそれぞれセットし、ステップS602において、駆動穴数のデフォルト値「7」をDrvNumにセットする。駆動穴数DrvNumのデフォルト値を「7」としたのは、励起高速フィルタホイール13および吸収高速フィルタホイール18が8個の穴部を有しているからである。すなわち、高速連動最適化処理を実行することで、少なくとも励起高速フィルタホイール13および吸収高速フィルタホイール18が高速連動中に一回転以上することはなく、駆動穴数が8以上にはならないことに由来する。これらステップS601およびS602の処理によって、高速連動最適化処理に必要なデフォルト値がセットされる。
【0051】
そして、ステップS603乃至S611を穴番号の順番の全てのパターンの数だけ繰り返す。図7に示した例を用いた場合は、パターン1からパターン3までを1ずつインクリメントすることにより、ステップS603乃至S611を3回繰り返す。
【0052】
まず、1回目のステップS603において、1回目の繰り返しでパターン1を取得するために、パターンptrnに「1」をセットする。これにより、制御PC2は、穴番号の順番の全てのパターンを図7に示すパターンテーブルPTRN_LUTより取得することができる。ptrnには「1」がセットされているので、ステップS604において、図7のパターン1から「1」「2」「3」を得て、iに「1」、jに「2」、kに「3」をセットする。
【0053】
次に、ステップS605において、SeqStep[i]、SeqStep[j]をインデックスとして、駆動穴数LUT22から駆動穴数mを取得する。また、ステップS606において、SeqStep[j]、SeqStep[k]をインデックスとして、駆動穴数LUT22から駆動穴数nを取得する。
【0054】
そして、ステップS607において、ステップS605で取得した駆動穴数mとステップS606で取得した駆動穴数nを加算し、駆動穴数の合計Iを算出する。
次に、ステップS608において、駆動穴数DrvNumとステップS607で算出した駆動穴数の合計Iの値を比較し、駆動穴数DrvNumが合計Iより小さければ(ステップS608:N)、ステップS609へ進み、駆動穴数DrvNumが合計I以下であれば(ステップS608:Y)、ステップS611に進む。
【0055】
ステップS609においては、駆動穴数DrvNumに合計Iをセットして更新する。
そして、ステップS610において、上述の処理で最も合計Iが少ないと判断した駆動パターンを、p1、p2、p3にセットする。すなわち、ステップS603乃至S611の処理が、ひとつのパターンでの駆動穴数の合計を算出し、最も少なかった駆動穴数と比較し、少ない合計が算出された場合には、p1、p2、p3をそのときの穴番号の並び替えに更新する処理となり、ステップS603乃至S611の処理の繰り返しを終了する(ステップS611)。
【0056】
そして、ステップS612において、最適化された穴番号p1、p2、p3を引数として、SEQSTRTコマンドを高速ユニット制御部20に送信する。
図8は、第2の実施の形態における励起高速フィルタホイール13または吸収高速フィルタホイール18の動作例を示す図である。
【0057】
図8において、(A)は、従来の動作例を示し、(B)は、本発明を適用した場合の動作例を示している。
この場合、ユーザーは、第1穴番号入力部35、第2穴番号入力部36、および第3穴番号入力部37にそれぞれ「8」「7」「2」を入力しており、上述の高速連動最適化処理によって、励起高速フィルタホイール13または吸収高速フィルタホイール18が光路上へ置く励起高速フィルタまたは吸収高速フィルタは、その穴番号が「7」、「8」、「2」の順番となる。そして、高速ユニット制御部20は、穴番号「7」、「8」、「2」の順に各モーターを駆動し、それぞれの励起高速フィルタまたは吸収高速フィルタを用いてあらかじめ決められた時間で高速シャッタ12を開閉し、サンプル3から発生した蛍光をCCDカメラ19で受光させる。
【0058】
以上、本発明の第2の実施の形態を説明したが、上述したように、高速連動最適化処理演算部21は、穴番号入力部23により入力された3個以上の穴番号の励起高速フィルタまたは吸収高速フィルタのすべてについて、上述のようにして選択された励起高速フィルタまたは吸収高速フィルタのうち、任意の励起高速フィルタまたは吸収高速フィルタを第1のフィルタとして指定し、第3のフィルタが指定されるまで繰り返し、回転駆動する合計駆動時間が最短となる場合を、前記順序として決定する機能を有する。
【0059】
これにより、複数の波長を用いた高速撮像において、励起高速フィルタホイール13または吸収高速フィルタホイール18が回転駆動する合計駆動時間を最短にすることで、連動動作の高速性能の低下を抑えることが出来る。また、ユーザーが最適な駆動方向を算出し高速ステップを決定するような、GUIの操作性上の煩わしさを解消することができる。
【0060】
さらに、高速連動中に駆動方向が変わることなく、例えば、右回転方向(時計方向)から左回転方向(反時計方向)に変わるというようなことなく、励起高速フィルタホイール13または吸収高速フィルタホイール18を制御することで、高速ユニット制御部20の高速性能を失うことがない。
【0061】
以上本発明を適用した各実施の形態を説明してきたが、本発明は、以上に述べた各実施の形態等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または形状を取ることができる。
【0062】
例えば、第2の実施の形態において、励起高速フィルタホイール13または吸収高速フィルタホイール18の1回の連動動作に対して、駆動回数が少ない穴番号の順番に並び替えるものであるが、タイムラプスのように一定時間の経過後に連動動作を開始するのであれば、例えば、穴番号「8」、「7」、「2」の順で連動動作したとき、次の連動動作では、穴番号「2」、「7」、「8」のように駆動することで、タイムラプスのインターバルを短くすることも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 顕微鏡装置
2 制御PC
11 光源ユニット
12 高速シャッタ
13 励起高速フィルタホイール
14 顕微鏡フレーム
15 投影管ユニット
16 対物レンズ
17 ステージ
18 吸収高速フィルタホイール
19 CCDカメラ
20 高速ユニット制御部
21 高速連動最適化処理演算部
22 駆動穴数LUT
23 穴番号入力部
24 高速ユニット制御GUI画面
31 通常切換え時穴番号入力部
32 通常切換えボタン
33 ワンショットボタン
34 高速連動スタートボタン
35 第1穴番号入力部
36 第2穴番号入力部
37 第3穴番号入力部
38 高速ステップ1撮像画像表示領域
39 高速ステップ2撮像画像表示領域
40 高速ステップ3撮像画像表示領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学顕微鏡を制御する顕微鏡制御装置であって、
前記光学顕微鏡は、
N(Nは3以上の整数)個の光学素子が装着可能な円盤状のターレットと、
前記ターレットを周方向に回転駆動するターレット駆動手段と、
を備え、
前記顕微鏡制御装置は、
光路上に順に設置する3個以上M(MはN以下の整数)個以下の光学素子を、前記N個の光学素子から選択する光学素子選択手段と、
前記光学素子選択手段によって選択された前記3個以上M個以下の光学素子を、前記ターレット駆動手段によって回転駆動する合計駆動時間が最短となるように、前記光路上に設置するための順序を決定する設置順序決定手段と、
前記設置順序決定手段によって決定された順序に従って、前記ターレットを回転駆動するように前記ターレット駆動手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする顕微鏡制御装置。
【請求項2】
前記設置順序決定手段は、前記光学素子選択手段によって選択された前記3以上M個以下の光学素子のうち、任意の光学素子を第1の光学素子として指定し、前記第1の光学素子から最短駆動時間となる光学素子を第2の光学素子として指定し、前記第2の光学素子から最短駆動時間となる光学素子を第3の光学素子として指定する処理を、第Mの光学素子が指定されるまで繰り返すことにより、前記順序を決定することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡制御装置。
【請求項3】
前記ターレットは、前記N個の光学素子を装着するための穴部を、同心円上に所定間隔で有し、
前記設置順序決定手段は、前記ターレットの任意の2つの穴部間の駆動距離を記録したテーブルを参照することにより、前記最短駆動時間となる光学素子を指定することを特徴とする請求項2に記載の顕微鏡制御装置。
【請求項4】
前記設置順序決定手段は、前記光学素子選択手段によって選択された前記3以上M個以下の光学素子のすべてについて、前記第1の光学素子として指定して前記第Mの光学素子が指定されるまで繰り返し、前記ターレット駆動手段によって回転駆動する合計駆動時間が最短となる場合を、前記順序として決定することを特徴とする請求項2または3に記載の顕微鏡制御装置。
【請求項5】
前記光学素子は、励起フィルタまたは吸収フィルタであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の顕微鏡制御装置。
【請求項6】
光学顕微鏡を制御する顕微鏡制御方法であって、
前記光学顕微鏡は、
N(Nは3以上の整数)個の光学素子が装着可能な円盤状のターレットと、
前記ターレットを周方向に回転駆動するターレット駆動手段と、
を備え、
前記顕微鏡制御方法は、
光路上に順に設置する3個以上M(MはN以下の整数)個以下の光学素子を、前記N個の光学素子から選択し、
前記選択された前記3個以上M個以下の光学素子を、前記ターレット駆動手段によって回転駆動する合計駆動時間が最短となるように、前記光路上に設置する順序を決定し、
前記決定された順序に従って、前記ターレットを回転駆動するように前記ターレット駆動手段を制御する、
ことを特徴とする顕微鏡制御方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−150141(P2012−150141A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6609(P2011−6609)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】