説明

顕微鏡用照明制御装置及びこれを有する顕微鏡システム

【課題】顕微鏡用の照明装置の光源を容易に交換して使用できるようにする。
【解決手段】LED照明部11は、LEDチップ41a乃至41cとLEDチップ41a乃至41cの特性を表す特性データが記録されたメモリ42a乃至42cとを備えるLEDモジュール21a乃至21cの着脱が可能である。照明制御装置12のLED駆動回路51a乃至51cは、LEDモジュール21a乃至21cのLEDチップ41a乃至41cをそれぞれ駆動する。LED制御回路52は、LEDモジュール21a乃至21cのメモリ42a乃至42cに記録されている特性データを読み出し、読み出した特性データに基づいて、LED駆動回路51a乃至51cを制御する。本発明は、例えば、顕微鏡用の照明装置を制御する照明制御装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡用照明制御装置及びこれを有する顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED(Light Emitting Diode)の温度特性、電圧特性、経時特性を記憶しておき、LEDの温度、順方向電圧、使用累積時間に応じて、LEDを駆動するDUTY比を変化させ、ホワイトバランスを一定に保つLED光源装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−96113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、顕微鏡を使用する場合、標本の種類や観察方法によって、標本の観察に用いる照明の波長を変更することがある。一方、LEDは製品によって特性が異なり、駆動特性が異なる。そのため、標本の観察に用いる照明の波長を変更するためにLEDを交換するたびに、それに合わせてLEDの駆動回路を交換したり、駆動回路の調整を行ったりする必要が生じ、作業が煩雑になっていた。特許文献1に記載の発明は、予め装置に組み込まれているLEDを特性に応じて駆動するものであり、LEDを交換することについては考慮されていない。
【0005】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、顕微鏡用の照明装置の光源を容易に交換して使用できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面の顕微鏡用照明制御装置は、光源の特性を表す特性データが記録されたメモリを備え、顕微鏡用の照明装置に着脱可能に装着される光源モジュールの光源を駆動する駆動手段と、前記照明装置に前記光源モジュールが装着された状態にあるとき、前記メモリに記録されている前記特性データを読み出し、読み出した前記特性データに基づいて、前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、顕微鏡用の照明装置の光源を容易に交換して使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明を適用した実施の形態について説明する。
【0009】
図1は、本発明を適用した顕微鏡システムの一実施の形態を示すブロック図である。図1の顕微鏡システム1は、落射照明を用いて標本の観察が可能な顕微鏡であり、LED照明部11、照明制御装置12、落射照明ユニット13、顕微鏡装置14、および、外部制御装置15を含むように構成される。
【0010】
LED照明部11は、落射照明光を発する照明装置である。LED照明部11には、LEDをモジュール化した複数のLEDモジュール21a乃至21cが装着されている。LED照明部11は、LEDモジュール21a乃至21cの点灯および消灯を個々に制御することができ、点灯するLEDを選択したり、複数のLEDを同時に点灯し、照明光を合成したりすることが可能である。
【0011】
ここで、さらに図2および図3を参照して、LEDモジュール21aの構成の詳細について説明する。なお、図2は、LEDモジュール21aの外観を模式的に示す側面図であり、図3は、LEDモジュール21aのLED基板31aの外観を模式的に示す正面図である。
【0012】
LEDモジュール21aにおいては、LED基板31aが、ネジ部71aの上に設置され、ネジ部71aは、冷却用の放熱板72a上に設置されている。また、LED基板31aには、LEDをチップ化したLEDチップ41a、メモリ42a、温度センサ43a、および、コネクタ44aが設けられている。
【0013】
不揮発性のメモリ42aには、例えば、LEDモジュール21aを生産するメーカにおいて、LEDモジュール21aの特性を表す以下の11種類のデータを含む特性データが記録される。
【0014】
1.LED種別データ
LEDチップ41aの種別を示す。例えば、紫外線LED、赤外線LED、白色LED、可視単光LEDなどを示す。
2.最大電流データ
LEDチップ41aの駆動電流の定格値を示す。
3.順方向電圧データ
LEDチップ41aの順方向電圧の定格値を示す。なお、この値はLEDチップ41aの直列数などにより変動する。
4.モジュール形状データ
LEDモジュール21aの形状、LEDチップ41aの大きさなどを示す。
5.LEDチップ型名データ
LEDチップ41aのメーカ、型名などを示す。
6.発光出力データ
LEDチップ41aのパワー(明るさ)、光度ランクなどを示す。
7.分光波長特性データ
LEDチップ41aに定格電流を流したときに発せられる光の中心波長、LEDチップ41aから発せられる光の分光波長特性(例えば、半値幅など)などを示す。
8.色温度データ
LEDチップ41aの色温度を示す。特に、LEDチップ41aが白色LEDの場合に必要となる。
9.発光波長温度係数データ
LEDチップ41aの温度変化に対する中心発光波長の変化率を表す係数を示す。
10.発光出力温度係数データ
LEDチップ41aの温度変化に対する発光出力の変化率を表す係数を示す。例えば、LEDチップ41aの発光出力温度係数データが、−0.25%/℃である場合、LEDチップ41aの発光出力は、10℃の温度上昇で−2.5%変動する。
11.熱抵抗データ
LEDチップ41aのジャンクションと温度センサ43aとの間の熱抵抗を示す。
【0015】
温度センサ43aは、LEDチップ41aの近傍に設置され、LEDモジュール21aの温度(より詳細には、LEDチップ41aの近傍のLED基板31aの温度)を測定する。
【0016】
LEDチップ41a、メモリ42a、および、温度センサ43aは、コネクタ44aに接続されている。なお、メモリ42aおよび温度センサ43aとコネクタ44aとの間の配線は、配線本数を少なくするためにワンワイヤインターフェースなどのシリアル通信インタフェースを適用することが望ましい。
【0017】
LEDモジュール21aは、LED照明部11の図示せぬネジ部にネジ部71aを嵌合することにより、LED基板31aが設けられている方向からLED照明部11に装着される。そして、LED照明部11のコネクタ22aにコネクタ44aを接続することにより、LED照明部11において、LEDモジュール21aを使用することが可能となる。逆に、コネクタ22aからコネクタ44aを取り外し、ネジ部71aをLED照明部11の図示せぬネジ部から取り外すことにより、LED照明部11からLEDモジュール21aを簡単に取り外すことができる。
【0018】
なお、LEDモジュール21aをLED照明部11に装着する方法は、ネジ嵌合以外の方法を用いてもよく、その場合には、簡単に着脱することができ、かつ、装着した状態がしっかりと安定する方法(例えば、プラグイン構造など)を適用することが望ましい。
【0019】
なお、図1において図示を省略しているが、LEDモジュール21bおよびLEDモジュール21cも、LEDモジュール21aと同様の構成を有している。すなわち、LEDモジュール21bは、LED基板31b、LEDチップ41b、メモリ42b、温度センサ43b、コネクタ44b、ネジ部71b、および、放熱板72bを含むように構成され、LEDモジュール21cは、LED基板31c、LEDチップ41c、メモリ42c、温度センサ43c、コネクタ44c、ネジ部71c、および、放熱板72cを含むように構成される。また、LEDモジュール21bのメモリ42b、および、LEDモジュール21cのメモリ42cには、それぞれ、LEDモジュール21aのメモリ42aに記録されているデータと同様の特性データが記録されている。さらに、LEDモジュール21bおよび21cのコネクタ44bおよび44cは、LED照明部11のコネクタ22bおよび22cにそれぞれ接続される。
【0020】
なお、以下、LEDモジュール21a乃至21c、LED基板31a乃至31c、LEDチップ41a乃至41c、メモリ42a乃至42c、温度センサ43a乃至43c、コネクタ44a乃至44c、ネジ部71a乃至71c、放熱板72a乃至72cを個々に区別する必要がない場合、それぞれ、単にLEDモジュール21、LED基板31、LEDチップ41、メモリ42、温度センサ43、コネクタ44、ネジ部71、および、放熱板72と称する。
【0021】
なお、図1では、LED照明部11に装着可能なLEDモジュール21の個数を3個とする例を示したが、例えば、1個、2個、あるいは、4個以上とすることも可能である。
【0022】
不揮発性のメモリ23は、例えば、LED照明部11を生産するメーカにおいて、LED照明部11の形状などを含むLED照明部11の属性データが記録される。
【0023】
そして、コネクタ22a乃至22cおよびメモリ23と、コネクタ24とは、電気的に接続され、コネクタ24は、照明制御装置12のコネクタ56に接続されている。
【0024】
照明制御装置12のLED駆動回路51a乃至51cは、LED制御回路52の制御の基に、LEDモジュール21a乃至21cのLEDチップ41a乃至41cをそれぞれ駆動する。また、LED駆動回路51a乃至51cは、LEDチップ41a乃至41cに流れている駆動電流およびLEDチップ41a乃至41cに印加されている駆動電圧を測定し、測定結果を示すデータをLED制御回路52に供給する。なお、以下、LED駆動回路51a乃至51cを個々に区別する必要がない場合、単にLED駆動回路51と称する。
【0025】
LED制御回路52は、LEDモジュール21a乃至21cの特性データをメモリ42a乃至42cから読み出し、温度センサ43a乃至43cからLED基板31a乃至31cの温度を示すデータを取得する。また、LED制御回路52は、LED照明部11のメモリ23からLED照明部11の属性データを読み出す。さらに、LED制御回路52は、入力装置53を用いてユーザにより入力される、LEDの光量、ON/OFF、外部トリガによる外部制御設定などを設定するための設定情報を取得する。また、LED制御回路52は、必要に応じて、各LEDモジュール21の特性、温度、状態などを示すデータを顕微鏡装置14および外部制御装置15に供給する。さらに、LED制御回路52は、各LEDチップ41の点灯状態の制御を指令する制御信号を顕微鏡装置14および外部制御装置15から取得する。
【0026】
LED制御回路52は、入力装置53から取得した設定情報、各LEDモジュール21から取得した特性データおよび温度データ、LED駆動回路51から取得した各LEDチップ41の駆動電流および駆動電圧、顕微鏡装置14および外部制御装置15から供給される制御信号に基づいて、各LED駆動回路51を制御する。また、LED制御回路52は、必要に応じて、各LEDモジュール21から取得した特性データ、各LEDチップ41の状態、ユーザにより設定された設定情報などを表示器54に表示させる。
【0027】
落射照明ユニット13は、LED照明部11により発せられる照明光の光路を制御したり、照明光から所定の波長成分を抽出したりして、顕微鏡装置14の図示せぬステージ上に設置された標本に照明光を照射する。落射照明ユニット13は、バリヤフィルタ、エキサイタフィルタなどのフィルタを備えるフィルタキューブを複数装着でき、使用するフィルタキューブを選択することが可能なフィルタターレットを備えている。落射照明ユニット13は、照明光が透過するように設定されているフィルタキューブの特性(例えば、透過波長など)を示すデータを顕微鏡装置14に供給する。
【0028】
顕微鏡装置14は、落射照明ユニット13を介して照射される落射照明光を用いて標本の観察が可能な顕微鏡である。
【0029】
外部制御装置15は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)などにより構成される。外部制御装置15は、顕微鏡装置14およびLED制御回路52の制御を行ったり、顕微鏡装置14により観察される標本の画像および顕微鏡装置14の状態を示すデータを取得し、取得した画像やデータを表示したりする。
【0030】
次に、図4のフローチャートを参照して、顕微鏡システム1により実行される照明制御処理について説明する。なお、この処理は、例えば、照明制御装置12の電源がオンされたとき開始される。
【0031】
ステップS1において、LED制御回路52は、LED照明部11に装着されているLEDモジュール21a乃至21cの特性データをメモリ42a乃至42cから読み込む。
【0032】
ステップS2において、LED制御回路52は、LED照明部11の属性データをメモリ23から読み出す。
【0033】
ステップS3において、LED制御回路52は、LEDモジュール21a乃至21cのモジュール形状データ、および、LED照明部11の属性データに基づいて、LEDモジュール21a乃至21cの形状がLED照明部11に適合するか否かを判定する。LEDモジュール21a乃至21cの形状がLED照明部11に適合すると判定された場合、処理はステップS4に進む。
【0034】
ステップS4において、LED制御回路52は、インターロック制御が必要であるか否かを判定する。具体的には、LED制御回路52は、LED種別データに基づいて、LEDモジュール21a乃至21cのうち少なくとも1つから紫外線などの人体に悪影響を及ぼす危険性のある光が照射されることを検出した場合、インターロック制御が必要であると判定し、処理はステップS5に進む。
【0035】
ステップS5において、顕微鏡システム1は、インターロック制御を行う。具体的には、顕微鏡装置14から照明制御装置12のLED制御回路52には、LED照明部11から照射される照明光が顕微鏡装置14の接眼部に到達する光路設定になっているか否かを示す信号が入力されている。LED制御回路52は、その信号に基づいて、顕微鏡装置14の接眼部に照明光が到達する光路設定になっていることを検出した場合、LEDチップ41a乃至41cのうち人体に悪影響を及ぼす危険性のある光を発するLEDチップを点灯しないように、LED駆動回路51a乃至51cを制御する。これにより、人体に悪影響を及ぼす危険性のある光が誤ってユーザの目などに照射されることが防止される。その後、処理はステップS6に進む。
【0036】
一方、ステップS4において、インターロック制御が必要ないと判定された場合、ステップS5の処理はスキップされ、処理はステップS6に進む。
【0037】
ステップS6において、LED制御回路52は、最大電流値を設定する。具体的には、LED制御回路52は、各LEDモジュール21を駆動する駆動電流の最大値が、各LEDモジュール21の最大電流データにより示される定格値以下になるように、各LED駆動回路51を設定する。これにより、手動により駆動電流の定格値を設定することなく、各LEDモジュール21に流れる駆動電流の可変範囲が自動的に設定される。そして、各LEDチップ41a乃至41cの駆動電流の大小に関わらず、定格値を超える駆動電流が流れてLEDチップ41a乃至41cが故障することが防止される。
【0038】
ステップS7において、LED制御回路52は、最大駆動電圧を設定する。具体的には、LED制御回路52は、各LEDモジュール21の順方向電圧データに基づいて、各LEDモジュール21に印加される電圧が、各LEDモジュール21を駆動するために最適な電圧になるように、各LED駆動回路51を制御する。これにより、例えば、照明光のフリッカノイズを低減するために、各LEDモジュール21に対してリニアな定電流制御を行う場合に、各LEDモジュール21の駆動電圧を最適化することができ、各LED駆動回路51の図示せぬ定電流回路の発熱を抑えることができる。
【0039】
ステップS8において、LED制御回路52は、特性データが要求されたか否かを判定する。LED制御回路52が、外部制御装置15から特性データが要求されたと判定した場合、処理はステップS9に進む。
【0040】
ステップS9において、LED制御回路52は、各LEDモジュール21の特性データを外部制御装置15に送信する。
【0041】
ステップS10において、外部制御装置15は、特性データに基づく処理を行う。例えば、外部制御装置15は、現在設定されている落射照明光のフィルタキューブの特性を示すデータを顕微鏡装置14から読み出す。外部制御装置15は、フィルタキューブの透過特性と、各LEDチップ41の波長特性(例えば、中心波長、半値幅など)を表示する。これにより、LEDチップ41a乃至41cとフィルタキューブの組み合わせが適切であるか否かを容易に確認することができ、誤った組み合わせで使用されることを防止することができる。
【0042】
また、例えば、外部制御装置15は、LEDチップ41a乃至41cに白色LEDが含まれる場合、そのLEDチップ41の色温度を表示する。白色LEDは色温度のばらつきが大きいため、例えば、複数の顕微鏡で照明光の色調を合わせたい場合に、色温度を表示することにより、各顕微鏡において色温度が同様のLEDモジュール21を選択することが容易になる。
【0043】
その後、処理はステップS11に進む。
【0044】
一方、ステップS8において、特性データが要求されていないと判定された場合、ステップS9およびS10の処理はスキップされ、処理はステップS11に進む。
【0045】
ステップS11において、LED制御回路52は、各LEDモジュール21の測定データを取得する。具体的には、LED制御回路52は、LEDモジュール21a乃至21cの温度データを温度センサ33a乃至33cから取得する。また、LED制御回路52は、LEDチップ41a乃至41cの駆動電流および駆動電圧の値を示すデータを、LED駆動回路51a乃至51cから取得する。
【0046】
LED制御回路52は、温度センサ33aにより検出されたLED基板31aの温度、LEDチップ41aのジャンクションと温度センサ43aとの間の熱抵抗、並びに、LEDチップ41aの駆動電圧および駆動電流に基づいて、LEDチップ41aの温度を算出する。LED制御回路52は、LEDチップ41b,41cの温度も同様にして算出する。
【0047】
ステップS12において、LED制御回路52は、測定データが要求されたか否かを判定する。LED制御回路52が、外部制御装置15から測定データが要求されたと判定した場合、処理はステップS13に進む。
【0048】
ステップS13において、LED制御回路52は、測定データ、すなわち、LEDチップ41a乃至41cの駆動電流、駆動電圧および温度を示すデータを外部制御装置15に送信する。
【0049】
ステップS14において、外部制御装置15は、測定データを記録する。具体的には、外部制御装置15は、各LEDチップ41の温度と発光波長の温度係数データに基づいて、各LEDチップ41の発光波長を算出する。また、外部制御装置15は、各LEDチップ41の温度と発光出力の温度係数データに基づいて、各LEDチップ41の発光出力を算出する。外部制御装置15は、各LEDチップ41の駆動電流、駆動電圧、温度、発光波長および発光出力を、現在の時刻とともに記録する。
【0050】
このようにして、LEDチップ41a乃至41cに関する測定データを時系列に記録することにより、例えば、異なる顕微鏡システム1あるいは同じ顕微鏡システム1において、後で同じ観察条件(照明強度)を再現して、標本の観察を行うことが容易になる。
【0051】
LEDの発光出力は、ハロゲンランプなどの光源と比べて個体差が大きく、同一型番であってもバラツキが大きい。また、顕微鏡の照明装置にLEDを組み込んだときの観察時の照明の明るさは、LEDの発光出力およびLEDの駆動電流にほぼ比例し、以下の式(1)により表される。
【0052】
照明の明るさ∝LEDの発光出力×LEDの駆動電流 ・・・(1)
【0053】
例えば、同一の構成の顕微鏡が複数台ある環境では、そのうちの1台で実施した観察条件を、他の顕微鏡において再現して、標本を観察したい場合がある。この場合、基準となる顕微鏡AにおけるLEDの発光出力Aおよび駆動電流Aの情報を基に、顕微鏡Aと同じ構成の顕微鏡BのLEDの駆動電流Bを算出して、LEDを駆動することにより、顕微鏡Aとほぼ同じ観察条件で標本を観察することができる。このときの顕微鏡Bの駆動電流Bは、以下の式(2)により算出することができる。
【0054】
駆動電流B=駆動電流A×発光出力A/発光出力B ・・・(2)
【0055】
ここで、より具体的に、基準となる1台の顕微鏡システム1(以下、顕微鏡システム1Aと称する)で観察した場合と同じ観察条件で、別の顕微鏡システム1(以下、顕微鏡システム1B)において標本を観察する場合について考える。
【0056】
この場合、顕微鏡システム1Aの外部制御装置15Aに記録されている測定データAを顕微鏡システム1Bに与えることにより、顕微鏡システム1BのLED制御回路52は、顕微鏡システム1AのLEDチップ41の発光出力Aおよび駆動電流Aの時系列データを得ることができる。また、顕微鏡システム1BのLED制御回路52は、上述したように、自身のLEDチップ41の温度データを得ることができ、取得した温度データに基づいて、自身のLEDチップ41の発光出力Bを算出することができる。そして、顕微鏡システム1BのLED制御回路52は、上述した式(2)を用いて、算出した発光出力Bに基づいて、自身のLEDチップ41を駆動する駆動電流Bを算出し、算出した駆動電流BをLEDチップ41に流すようにLED駆動回路51を制御する。
【0057】
これにより、顕微鏡システム1Aにおける観察条件を顕微鏡システム1Bにおいてほぼ正確に再現することができる。すなわち、時間的な隔たりと顕微鏡個体の違いがあっても、同一の像の明るさで、標本を観察することが可能となる。また、ほぼ同一の照明光量で標本を照明することにより、例えば、LED照明による蛍光観察において、励起光による標本の退色などの影響を同等レベルにコントロールすることが可能となる。
【0058】
なお、1台の顕微鏡システム1において、時間をおいて同じ観察条件を再現する場合も同様にして、ほぼ正確に観察条件を再現することができる。
【0059】
なお、各LEDチップ41の発光波長および発光出力は、各LEDチップ41の温度、並びに、発光波長および発光出力の温度係数データがあれば、後で算出することができる。従って、各LEDチップ41の発光波長および発光出力の代わりに、各LEDチップ41の発光波長および発光出力の温度係数データを他の測定データとともに記録するようにしてもよい。
【0060】
また、外部制御装置15が、必要に応じて、測定データを表示するようにしてもよい。さらに、外部制御装置15の代わりに、LED制御回路52が全ての測定データを算出し、記録するようにしてもよい。
【0061】
その後、処理はステップS15に進む。
【0062】
一方、ステップS12において、測定データが要求されなかったと判定された場合、ステップS13およびS14の処理はスキップされ、処理はステップS15に進む。
【0063】
ステップS15において、照明制御装置12は、各LEDチップ41を駆動する。具体的には、LED制御回路52は、入力装置53を用いてユーザにより入力された設定情報を取得する。LED制御回路52は、取得した設定情報に基づいて、LED駆動回路51a乃至51cに指令を送り、LED駆動回路51a乃至51cは、その指令に基づいて、LEDチップ41a乃至41cの点灯を制御する。また、LED駆動回路51a乃至51cは、LED制御回路52により算出されたLEDチップ41a乃至41cの温度が高い場合、駆動電流を小さくし、LEDチップ41a乃至41cの発熱を抑える。
【0064】
ステップS16において、照明制御装置12は、現在の状態を表示する。具体的には、LED制御回路52は、各LEDモジュール21の特性データ、測定データ、および、点灯状態などを示すデータを表示器54に供給し、表示器54は、取得したデータを表示する。このとき表示されるデータの種類は、例えば、事前にユーザが選択し設定する。
【0065】
その後、処理はステップS1に戻り、照明制御装置12の電源がオフされるまで、ステップS1乃至S16の処理が繰り返し実行される。
【0066】
一方、ステップS3において、LEDモジュール21a乃至21cのうち少なくとも1つの形状がLED照明部11に適合しないと判定された場合、処理はステップS17に進む。
【0067】
ステップS17において、表示器54は、形状不適合の表示を行う。すなわち、表示器54は、LED制御回路52の制御の基に、LEDモジュール21a乃至21cのうち少なくとも1つの形状がLED照明部11に適合していないことを通知するメッセージを表示する。その後、LEDチップ41a乃至41cの駆動は行われずに、照明制御処理は終了する。
【0068】
以上のようにして、顕微鏡システム1の照明光の光源であるLEDを容易に交換して使用することができる。すなわち、LEDモジュール21を装着するだけで、特別な設定を行うことなく、新たに装着したLEDモジュール21を適切に駆動して使用することができる。
【0069】
また、LEDをモジュール化することにより、LEDの交換が容易になり、使用する照明光の波長を容易に変更することができる。さらに、例えば、高輝度、高出力のLEDチップが新たに発売された場合に、LEDモジュール21と同様にモジュール化することにより、LEDチップの仕様や形状の違いに関わらず、新たなLEDチップをLED照明部11に装着して、使用することが可能になる。
【0070】
なお、LEDモジュール21の特性データの読み出しに、RFID(Radio Frequency IDentification)などの無線通信を用いるようにしてもよい。
【0071】
また、以上の説明では、落射照明の制御を行う場合の例を示したが、本発明は、落射照明以外の照明(例えば、透過照明)の制御に用いることも可能である。
【0072】
さらに、以上の説明では、LEDを光源に用いた照明を制御する場合の例を示したが、本発明は、LED以外の光源を用いた照明を制御する場合にも適用することが可能である。
【0073】
また、上述した外部制御装置15によるLED制御回路52の制御に関わる処理を、LED制御回路52自身で行うようにしてもよい。
【0074】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明を適用した顕微鏡システムの一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】LEDモジュールの外観を模式的に示す側面図である。
【図3】LED基板の外観を模式的に示す正面図である。
【図4】顕微鏡システムにより実行される照明制御処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1 顕微鏡システム, 11 LED照明部, 12 照明制御装置, 13 落射照明ユニット, 14 顕微鏡装置, 15 外部制御装置, 21a乃至21c LEDモジュール, 23 メモリ, 41a乃至41c LEDチップ, 42a乃至42c メモリ, 43a乃至43c 温度センサ, 51a乃至51c LED駆動回路, 52 LED制御回路, 54 表示器, 71a乃至71c ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源の特性を表す特性データが記録されたメモリを備え、顕微鏡用の照明装置に着脱可能に装着される光源モジュールの光源を駆動する駆動手段と、
前記照明装置に前記光源モジュールが装着された状態にあるとき、前記メモリに記録されている前記特性データを読み出し、読み出した前記特性データに基づいて、前記駆動手段を制御する駆動制御手段と
を含むことを特徴とする顕微鏡用照明制御装置。
【請求項2】
前記特性データは、前記光源の定格電流を含み、
前記駆動制御手段は、前記光源の駆動電流が前記定格電流以下になるように前記駆動手段を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用照明制御装置。
【請求項3】
前記特性データは、前記光源の種別を示すデータを含み、
前記駆動制御手段は、前記照明装置が接続されている顕微鏡において前記光源から発せられる照明光が接眼部に到達する光路設定になっている場合、前記照明光の種類により、前記光源を点灯しないように前記駆動手段を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用照明制御装置。
【請求項4】
前記特性データは、前記光源の波長特性を示すデータを含み、
前記駆動制御手段は、前記照明装置が接続されている顕微鏡において前記光源から発せられる照明光を透過するフィルタの透過特性を示すデータを取得し、前記光源の波長特性と前記フィルタの透過特性を表示手段に表示させる
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用照明制御装置。
【請求項5】
前記照明モジュールは、前記照明モジュールの温度を測定する測定手段をさらに備え、
前記駆動制御手段は、前記測定手段により測定された前記照明モジュールの温度を時系列に記録する
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用照明制御装置。
【請求項6】
前記特性データは、前記光源の発光出力の温度係数を示すデータを含み、
前記駆動制御手段は、測定された前記照明モジュールの温度、および、前記光源の発光出力の温度係数に基づいて、前記光源の発光出力を算出し、算出した前記光源の発光出力に基づいて、前記駆動手段が前記光源を駆動する駆動電流を制御する
ことを特徴とする請求項5に記載の顕微鏡用照明制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項の顕微鏡用照明制御装置を有する
ことを特徴とする顕微鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−72503(P2010−72503A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242014(P2008−242014)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】