説明

顕微鏡

【課題】 簡単な構成で防塵性を高めることができ、しかも光学的影響を受けることなくメンテナンス作業性改善を可能にした顕微鏡を提供する。
【解決手段】 ステージ3に載置した標本2を観察する対物レンズ26を有するとともに、ランプ701からの光を対物レンズ26に向け反射し、対物レンズ26を介して与えられる標本2からの光を透過するような特性を有するハーフミラー17を配置し、このハーフミラー17の少なくとも上方面を覆うような防塵ガラス19を有する防塵ガラスユニット18を着脱可能に設け、ハーフミラー17を透過した光を標本像として接眼レンズ32で観察する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防塵機能を有する顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来。学校での実習や企業の現場などでは、金属製品の生産過程での結晶確認や完成品の検査などを行なう顕微鏡として、いわゆる金属顕微鏡が用いられている。
【0003】
特許文献1は、このような目的に使用される顕微鏡の一例を示している。図7は、倒立顕微鏡を示すもので、顕微鏡本体100の上方には、標本101を載置するステージ102が配置されている。顕微鏡本体100の後方には、絞り104を有する投光管103が配置されている。投光管103には、ランプ105aを有するランプハウス105が設けられている。ランプ105aからの光束は、投光管103を通って顕微鏡本体100に導かれ、ハーフミラー106により反射され、対物レンズ108を介して標本101に照射される。この場合、対物レンズ108は、レボルバー107に複数個保持され択一的に光軸上に配置される。そして、標本101からの反射光は、対物レンズ108、ハーフミラー106を介して反射ミラー109で反射し、顕微鏡本体100前方に配置される鏡筒110を介して接眼レンズ111に導かれ、拡大標本像として観察可能にしている。
【特許文献1】特開2000−131617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような顕微鏡は、例えば、製品の加工現場など周囲に粉塵などが飛び交うような環境的条件の悪い場所に設置して使用されることも多い。ところが、従来の顕微鏡では、防塵対策がなされたものがなく、特に、ランプ105aからの光束を標本101側に折り返すためのハーフミラー106については、上方にレボルバー107や、レボルバー107を支持する不図示のレボルバー台などが配置されるものの周囲は、開口した状態のままである。このため、顕微鏡本体100内部へ粉塵が侵入した場合、上方からの侵入に対しては、ハーフミラー106上方に位置されるレボルバー107やレボルバー台により、ある程度回避することができる。しかしながら、例えば、顕微鏡本体100内部に巻き込むような空気の流れがある場合は、ハーフミラー106の周囲の隙間から粉塵が入り込み、ハーフミラー106表面に付着することがある。このことは、この状態のままで、長期間観察を続けると、ハーフミラー106表面に付着した粉塵によりランプ105aからの標本101側に照射される光量や、標本101で反射し鏡筒110を介して接眼レンズ111で観察される像の光量が大幅に減少し、観察像が暗く見えにくいものになり、また、ピント合わせの際に、ハーフミラー106に付着した粉塵が目立って見えることで、ピント合わせの邪魔になることがあった。
【0005】
そこで、ハーフミラー106への粉塵の付着を防止するため、例えば、顕微鏡本体100のステージ102の下方を全て覆うような防塵カバーが考えられる。ところが、レボルバー107の回転操作を手動で行なうような安価なタイプの顕微鏡では、操作性が著しく低下してしまう。また、回転操作を行なうレボルバー107を除いて防塵カバーを設けることも考えられるが、この時の防塵カバーの形状自体が複雑になることから、価格的に高価なものになってしまうという問題が考えられる。
【0006】
このように、従来では、操作性の低下を見込むか、高価な防塵カバーを用いる以外、ハーフミラー106への粉塵の付着を防止するのが難しく、さらに、薄い形状をしたハーフミラー106に対し無理やり表面の粉塵を拭き取ったりすると、損傷の可能性がある。このため従来では、観察者によるクリーニングは不可能とされ、メーカーサービスに依頼するしかないのが現状であった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成で防塵性を高めることができ、しかも光学的影響を受けることなくメンテナンス作業性改善を可能にした顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、標本を載置するステージと、光源と、前記ステージに載置される標本を観察する対物レンズと、前記光源からの光を前記対物レンズに向け反射し、前記対物レンズを介して得られる前記標本からの光を透過するような特性を有する光路分割手段と、前記光路分割手段の少なくとも上方面を覆うような透明部材を有する防塵手段と、
前記光路分割手段を透過した光を標本像として観察する観察手段と、を具備したことを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記光路分割手段は、光路分割ブロックに設けられ、前記防塵手段は、前記光路分割ブロックに着脱可能に設けられることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、さらに前記光路分割ブロックは、前記光路分割手段の下方面に対向してスライダ挿入部が設けられ、前記スライダ挿入部にダミースライダーを挿入可能としたことを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、さらに前記光路分割ブロックは、前記光路分割手段の下方面に対向してスライダ挿入部が設けられ、前記スライダ挿入部の開口を開閉する開閉手段を有することを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記光路分割ブロックは、さらに前記光路分割手段の下方面を覆うような透明部材を有する防塵手段を着脱可能に設けたことを特徴としている。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記光路分割手段は、光路分割ブロックに設けられ、前記光路分割ブロックは、前記光路分割手段の上方面又は下方面を覆うような透明部材を有する防塵手段を一体的に設けたことを特徴としている。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記防塵手段は、防塵ガラスと、該防塵ガラスが一体に設けられる防塵ガラスユニットからなることを特徴としている。
【0015】
請求項8記載の発明は、標本を載置するステージと、光源と、前記ステージに載置された標本を観察する対物レンズと、前記光源からの光を前記対物レンズに向け反射し、前記対物レンズを介して得られる前記標本からの光を透過するような特性を有する光路分割手段と、前記光源と光路分割手段との間の光路に配置され、少なくとも各種フィルタを収容する防塵カバーを備えたフィルタ保持手段と、前記光路分割手段の上方面および下方面をそれぞれ防塵するように設けられた第1および第2の防塵手段と、前記光路分割手段を透過した光を標本像として観察する観察手段と、を具備したことを特徴としている。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記光路分割手段は、光路分割ブロックに設けられ、前記第1および第2の防塵手段は、透明部材を有するとともに、前記光路分割ブロックに着脱可能に設けられることを特徴としている。
【0017】
請求項10記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記光路分割手段は、光路分割ブロックに設けられ、前記光路分割ブロックは、前記光路分割手段の下方面に対向してスライダ挿入部が設けられ、前記第2の防塵手段は、前記スライダ挿入部にダミースライダーを挿入可能としたことを特徴としている。
【0018】
請求項11記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記光路分割手段は、光路分割ブロックに設けられ、前記光路分割ブロックは、前記光路分割手段の下方面に対向してスライダ挿入部が設けられ、前記第2の防塵手段は、前記スライダ挿入部の開口を開閉する開閉手段を有することを特徴としている。
【0019】
請求項12記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記光路分割ブロックは、前記第1および第2の防塵手段を一体に設けたことを特徴としている。
【0020】
請求項13記載の発明は、請求項9又は12記載の発明において、前記防塵手段は、防塵ガラスと、該防塵ガラスが一体に設けられる防塵ガラスユニットからなることを特徴としている。
【0021】
請求項14記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記フィルタ保持手段は、前記光路に沿ってスライド移動可能にした蓋部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡単な構成で防塵性を高めることができ、しかも光学的影響を受けることなくメンテナンス作業性改善を可能にした顕微鏡を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
【0024】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる倒立顕微鏡の概略構成を示している。
【0025】
図1において、1は顕微鏡本体で、この顕微鏡本体1の上方には、標本2を載置するステージ3を不図示のネジなどで一体に取付けている。ステージ3には、着脱可能な中座ステージ4が設けられている。
【0026】
顕微鏡本体1の後方には、光源装置5が設けられている。この光源装置5は、落射投光管6と、この落射投光管6に対し着脱可能なランプソケット7から構成されている。落射投光管6は、図2(a)に示すように光軸方向に配置された管状の中空部材601、602、603より構成されている。このうちの中空部材601は、フランジ601aを有し、このフランジ601aにより顕微鏡本体1に直接固定されるようになっている。中空部材601には、光軸上に明るさ絞り8が設けられている。この明るさ絞り8は、レバーを光軸回りに回転操作することで、光量を調整できるようになっている。中空部材602は、中空部材601にネジなどで一体に連結されるもので、中空部材601との連結部の光軸上にフロスト9が設けられている。このフロスト9は、光の明るさを平滑化し照明系の照野の集中を分散させるものである。中空部材603は、光源のランプ701を有するランプソケット7が着脱可能に取付けられるもので、中空部材602に対し円柱形状の断熱部材10を介して固定されている。また、中空部材603には、光軸上にコレクターレンズ11が設けられている。コレクターレンズ11は、ランプ701から発せられた光を集光するものである。
【0027】
中空部材601のフランジ601a側端部には、フィルタ保持手段としてフィルタ筒体12が設けられている。このフィルタ筒体12は、中空部材601と同じ光軸上に沿って配置され、その中空部の光軸には、コレクターレンズ11とともに光をリレーする光学系を構成するレンズ121が配置されるとともに、図2(b)に示すように、光軸に対して所定角度(例えば4度程度)傾けた状態で各種のフィルタ13を収納する溝部12aが設けられている。ここで、フィルタ13を光軸に対して所定角度傾けてあるのは、光路での多重反射によるフレアーを除去するためである(視野外に逃がしている。)。さらに、フィルタ筒体12の中空部には、偏光光学素子のポラライザ14を回転自在に支持する嵌合溝12bも形成されている。ポラライザ14は、簡易偏光観察の際に用いられるものである。
【0028】
フィルタ筒体12には、蓋部として筒状のフィルタカバー15が設けられている。このフィルタカバー15は、フィルタ筒体12外周に光軸方向に沿ってスライド可能に設けられたもので、光軸方向のスライド操作により、フィルタ13、ポラライザ14をフィルタ筒体12内に装着した状態で外部から遮蔽できるようにしている(図2(c)参照)。
【0029】
フィルタ筒体12には、光路分割ブロックとしてのハーフミラーブロック16が設けられている。このハーフミラーブロック16には、光路分割手段としてのハーフミラー17が設けられている。このハーフミラー17は、落射投光管6の光軸と後述する対物レンズ26の光軸との交点に、45度の角度をもって配置されている。
【0030】
ハーフミラーブロック16の上方には、防塵手段として防塵ガラスユニット18が設けられている。この防塵ガラスユニット18には、対物レンズ26の光軸に対して所定角度(例えば9度程度)傾けて防塵ガラス19が一体に設けられている。防塵ガラス19を光軸に対して所定角度傾けてあるのは、光路での多重反射によるフレアーを除去するためである(視野外に逃がしている。)。
【0031】
防塵ガラスユニット18は、着脱自在(例えば、ねじ込み)にハーフミラーブロック16に固定されている。防塵ガラスユニット18のハーフミラーブロック16への固定は、ねじ込み以外にも、防塵ガラスユニット18をハーフミラーブロック16に嵌め込んだ後、ネジで固定する方法や防塵ガラスユニット18を磁石を用いてハーフミラーブロック16に着脱可能に設ける方法などが考えられる。
【0032】
ハーフミラーブロック16の後面には、L形状をした支持板金20の直立面20aがネジ21により固定されている(図2(c)(d)参照)。この支持板金20は、水平面20bもハーフミラーブロック16の下面にネジ21により固定されている。また、支持板金20は、水平面20bに光束を通す孔部20cが形成されるとともに、この水平面20bとハーフミラーブロック16側に設けられた不図示の溝部により、アナライザー22a(又はダミースライダー22b)を挿入するためのスライダ挿入部16aを形成している。ここで、ダミースライダー22bは、スライダ挿入部16aに挿入することで防塵手段を構成するもので、光学素子が無い空穴を有するスライダが用いられている。また、この場合もアナライザー22aは、光軸に対して所定角度(例えば7度程度)傾けて設けられる。アナライザー22aを光軸に対して所定角度傾けてあるのは、光路での多重反射によるフレアーを除去するためである(視野外に逃がしている。)。
【0033】
支持板金20の下側両側には、スカート23が設けられている。このスカート23は、先端部を顕微鏡本体1内部底面に当接して、この部分での隙間を無くし防塵の役目をするものである(図2(d)参照)。
【0034】
なお、24は、ハーフミラーブロック16に一体化されたピンで、アナライザー22a(又はダミースライダー22b)の位置決めを行なうためのストッパの働きをしている。また、25は、ハーフミラー17の特性上僅かであるが、透過する光があることを考慮して、支持板金20に貼り付けたフレアー防止のための遮光布である。
【0035】
図1に戻って、ステージ3の下方には、対物レンズ26が配置されている。対物レンズ26は、倍率の異なる複数本(図面では1本のみを示している。)がレボルバー27に保持されている。レボルバー27は、回転操作可能になっていて、複数本の対物レンズ26を択一的に光軸上に位置させるようになっている。また、レボルバー27は、顕微鏡本体1に図示しない保持部材を介して保持されるとともに、焦準ハンドル28の操作により光軸に沿って上下動され、ステージ3と対物レンズ26との相対距離を変化させ、標本2のピント合わせを可能にしている
レボルバー27の下方の光軸上には、上述した落射投光管6の光軸との交点位置に配置されたハーフミラー17を介して反射ミラー29が配置されている。反射ミラー29は、標本2を反射し対物レンズ26より拡大された観察像を斜め上方向(水平に対し45°の角度)に反射させるようにしている。
【0036】
そして、反射ミラー29で反射された観察像は、リレー光学系30でリレーされ、観察鏡筒31に取り付けられた接眼レンズ32に入射し、観察者により目視観察されるようになっている。
【0037】
なお、図中33は、ランプ701に必要な明るさを確保するための調光用ボリュームである。
【0038】
次に、このように構成した実施の形態の作用を説明する。
【0039】
まず、不図示の電源スイッチをONする。すると、ランプ701から発した光は、落射投光管6の中空部材603のコレクターレンズ11で集光し、フロスト9、明るさ絞り8を介してハーフミラー17に入射し、ハーフミラー17で反射してレボルバー27に装着された対物レンズ26を介してステージ3上の標本2に照射される。そして、標本2からの反射光は、対物レンズ26を介してハーフミラー17に入射し、今度はハーフミラー17を透過し、反射ミラー29で反射し、リレー光学系30を介して接眼レンズ32に入射し、拡大標本像の観察が行われる。
【0040】
この状態から、調光用ボリューム33を操作してランプ701の明るさを調整するとともに、焦準ハンドル28の操作によりレボルバー27を光軸に沿って上下動させ、ステージ3と対物レンズ26との相対距離を変化させて標本2のピント合わせを行なう。また、ステージ3上の標本2を指先で摘まんでXY方向に移動させて、観察したい部位を決定する。その後、目的に応じた各種の観察を行なう。
【0041】
この場合、例えば、明視野観察を行なうには、事前にダミースライダー22bをハーフミラーブロック16下側に設けられたスライダ挿入部16aにピン24に当接するまで挿入する。また、ポラライザ14を、フィルタ筒体12から取り外す(挿入したままでもよいが観察像が若干暗くなる)。さらに、必要ならばフィルタ13をセットする。そして、フィルタ筒体12のフィルタカバー15をスライドさせてフィルタ筒体12内を外部から遮蔽する。
【0042】
また、簡易偏光観察を行なうには、ダミースライダー22bに代えてアナライザー22aをハーフミラーブロック16の下側に設けられたスライダ挿入部16aにピン24に当接するまで挿入する。また、ポラライザ14をフィルタ筒体12内にセットする。さらに、必要ならばフィルタ13をセットする。そして、接眼レンズ32を覗きながら、ポラライザ14を回転させて、視野が最も暗くなるところを探す(クロスニコル状態にする)。その後、フィルタ筒体12のフィルタカバー15をスライドさせてフィルタ筒体12内を外部から遮蔽する。
【0043】
従って、このような構成によれば、周囲に粉塵などが飛散しているような環境的条件の悪い場所で用いられることがあっても、ハーフミラー17の上部に防塵ガラス19を有する防塵ガラスユニット18が設けられるので、簡単な構成で防塵性を高めることができ、ハーフミラー17上方から侵入する粉塵を確実に阻止することができる。また、ハーフミラーブロック16に形成されたスライダ挿入部16aにアナライザー22a(又はダミースライダー22b)を挿入することで、特に、明視野観察の際に、開口したままであったスライダ挿入部16aからハーフミラー17下方に侵入する粉塵も確実に阻止することができる。つまり、明視野観察の際に、ダミースライダー22bが挿入されることで、粉塵の侵入を最低限に抑えることができ、光学的影響を受けることがなく劣化のない明るい観察像を確保することができる。さらに、各種のフィルタ13およびポラライザ14を収容するフィルタ筒体12についても、フィルタカバー15が設けられ、このフィルタカバー15によりフィルタ筒体12内を外部より遮蔽できるようにもしているので、フィルタ筒体12内部への粉塵の侵入を防ぐこともできる。
【0044】
一方、フィルタ筒体12内部の各種のフィルタ13およびポラライザ14や防塵ガラス19表面に粉塵が付着して、観察像に影響が認められるようになった場合には、観察者によって次の手順でクリーニングすることで、簡単に元の状態に復帰させることができる。
【0045】
フィルタ筒体12内部の各種のフィルタ13およびポラライザ14については、フィルタカバー15を開いて、フィルタ13およびポラライザ14をフィルタ筒体12から取外し、それぞれの汚れを拭き取るようにすればよい。
【0046】
次に、防塵ガラス19の場合は、例えば、図3(a)に示すように、まず、ステージ3上の標本2を取り除くとともに、中座ステージ4を取り外す。次に、レボルバー27より対物レンズ26を取り外す。次に、対物レンズ26を取外した後のレボルバー27の穴部(対物レンズ取付穴)27aがほぼ真上を向くようにレボルバー27を調整し、その後、この穴部27aから、クリーニング部材として、例えば綿棒34を挿入し、綿棒34先端の綿部分34aで防塵ガラス19表面に付着した粉塵を拭き取るようにする。また、防塵ガラス19表面の汚れが激しいような場合は、図3(b)に示すように、ステージ3上の標本2を取り除き中座ステージ4を取り外した後、レボルバー27を最も上方位置まで移動させて、レボルバー27とハーフミラーブロック16との間に大きな空間を作り、この空間を利用してハーフミラーブロック16より防塵ガラスユニット18を取外し、外部に取り出して防塵ガラス19表面に付着した粉塵を拭き取るようにする。
【0047】
このようにすれば、フィルタ筒体12内部の各種のフィルタ13およびポラライザ14や防塵ガラス19の汚れを観察者が簡単にクリーニングすることができ、メンテナンス作業性の改善を図ることができることから、常に、最適な状態で観察像の観察を行なうことができる。
【0048】
(変形例)
第1の実施の形態では、明視野観察時に、ハーフミラー17の下方にダミースライダー22bを挿入して、粉塵が入り込まないようにしているが、ダミースライダー22bに代えてシャッタ部材で覆うという方法も考えられる。
【0049】
この場合、図4(a)〜(d)は、図2と同一部分には、同符号を付して示している。スライダ挿入部16aには、防塵手段を構成する開閉手段としての可動シャッタ35が設けられている。この可動シャッタ35は、一端が回動可能にハーフミラーブロック16に支持されている。可動シャッタ35の回動支持部には、ツマミ36が一体に設けられている。ツマミ36は、ハーフミラーブロック16にねじ込まれたネジ361により可動シャッタ35と一体に回動可能になっていて、ツマミ36を回転操作することで可動シャッタ35によりスライダ挿入部16aの開口部を開閉できるようになっている。この場合、可動シャッタ35は、回動方向にトルク設定が成されており、自重により動かないようにもなっている。また、可動シャッタ35の回動方向には、ストッパピン37が設けられている。このストッパピン37は、可動シャッタ35の回動位置を規制するものである。一方、ハーフミラーブロック16は、スライダ挿入部16aと反対側の側面には、隠し板38が設けられている。この隠し板38は、スライダ挿入部16aと反対側の側面からの粉塵の侵入を阻止するためのものである。
【0050】
その他は、図2と同様である。
【0051】
このような構成において、明視野観察を行なうときは、ツマミ36を回して可動シャッタ35によりスライダ挿入部16aの開口部を閉じるようにする。こうすれば、第1の実施の形態で述べたダミースライダー22bを用いること無く、スライダ挿入部16aからの粉塵の侵入を阻止することができる。また、簡易偏光観察を行なうときは、ツマミ36を操作して可動シャッタ35をストッパピン37に当接するまで回動させ、スライダ挿入部16aからアナライザー22aを挿入する。
【0052】
従って、このようにすれば明視野観察の際に、可動シャッタ35によりスライダ挿入部16aの開口部を閉じることができるので、ダミースライダー22bを用いること無く、粉塵の侵入を最低限に抑えることができ、劣化のない明るい観察像が確保することができる。また、ダミースライダー22bは、別部品であり、紛失する可能性があったが、可動シャッタ35であれば、このような心配はなく、操作性もアップさせることができる。
【0053】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0054】
図5は、本発明の第2の実施の形態にかかる倒立顕微鏡の概略構成、図6は、倒立顕微鏡の落射投光管の概略構成を示すもので、図1および図2と同一部分には同符号を付している。
【0055】
この場合、ハーフミラーブロック16の下側に設けられたアナライザー22a(又はダミースライダー22b)を挿入するスライダ挿入部16aに代えて、防塵手段としての防塵ガラスユニット51が設けられている。この防塵ガラスユニット51には、対物レンズ26の光軸に対して所定角度(例えば9度程度)傾けて防塵ガラス52が一体に設けられている。防塵ガラス52を光軸に対して所定角度傾けてあるのは、光路での多重反射によるフレアーを除去するためである(視野外に逃がしている。)。
【0056】
防塵ガラスユニット51は、着脱自在(例えば、ねじ込み)にハーフミラーブロック16に固定されている。防塵ガラスユニット51のハーフミラーブロック16への固定は、ねじ込み以外にも、防塵ガラスユニット51をハーフミラーブロック16に嵌め込んだ後、ネジで固定する方法や防塵ガラスユニット18を磁石を用いてハーフミラーブロック16に着脱可能に設ける方法が考えられる。
【0057】
また、落射投光管6の中空部材601に取付けられるフィルタ筒体12は、ポラライザ14を回転自由に支持する嵌合溝12bを省略したものが用いられる。
【0058】
その他は、図1および図2と同様である。
【0059】
このようにすれば、ハーフミラーブロック16は、上下方向に防塵ガラスユニット18、51が設けられ、さらに落射投光管6側も光源側レンズなどによって覆われているので、ハーフミラー17の上面および下面に粉塵が付着するのを、ほほ完全に防止することができる。また、上下方向の防塵ガラスユニット18、51に粉塵が付着したような場合も、これら防塵ガラスユニット18、51は、ユーザーによりハーフミラーブロック16から取外すことができるので、簡単にクリーニングすることができる。
【0060】
なお、このような構成では、第1の実施の形態で述べたポラライザ14とアナライザー22aを除去しているので、観察方法としては、明視野観察のみとなる。
【0061】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。例えば、上述した実施の形態では、ハーフミラー17と称して説明したが、ここでのハーフミラー17は、通常言われているハーフミラーやダイクロイックミラー、ビームスプリッタなどの他の光学素子も含まれる。
【0062】
また、上述した実施の形態では、ダミースライダー22bとして空穴のものを用いたが、ハーフミラー17の下方からの粉塵の侵入を防止するため、ガラス板を嵌め込んだものを用いるようにしても良い。こうすれば、アナライザー22aを挿入した時と同じレベルまで、防塵性能を高めることができる。
【0063】
さらに、上述した実施の形態では、ハーフミラーブロック16の上方には、別に用意された防塵ガラスユニット18を装着するようにしたが、これらは別体にする必要もなく、ハーフミラー17を有するハーフミラーブロック16に直接防塵ガラス19を取付けるようにしても良い。こうすると、レボルバー27とハーフミラー17の間の小さな隙間に別体の防塵ガラスユニット18を配置するより、スペースの使い方としては好ましい。ハーフミラーブロック16の下方に設けられる防塵ガラスユニット51についても同様である。
【0064】
さらに、上述した実施の形態では、フィルタ筒体12外周に光軸方向に沿ってスライドする筒状のフィルタカバー15を設けるようにしたが、フィルタ筒体12内部に粉塵が入るのを防止することを目的としたものであるなら、単なる蓋状のものや、フィルタ筒体12外周の円周方向に沿って移動するようなスライドカバーであっても良い。
【0065】
さらに、上述した実施の形態では、光路分割手段として、ハーフミラー17について述べたが、ハーフミラー17以外でも光路を分割できるものであれば、ダイクロイックミラーや偏光ビームスプリッタであっても良い。また、観察手段は、目視手段以外に、カメラによるものであっても良い。
【0066】
その他、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示されている複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出できる。例えば、実施の形態に示されている全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題を解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる倒立顕微鏡の概略構成を示す図。
【図2】第1の実施の形態の倒立顕微鏡に用いられる落射投光管の概略構成を示す図。
【図3】第1の実施の形態の倒立顕微鏡に用いられる防塵ユニットのリーニング方法明するための図。
【図4】第1の実施の形態の倒立顕微鏡の変形例の要部の概略構成を示す図。
【図5】本発明の第2の実施の形態にかかる倒立顕微鏡の概略構成を示す図。
【図6】第2の実施の形態の倒立顕微鏡に用いられる落射投光管の概略構成を示す図。
【図7】従来の顕微鏡の概略構成を示す図。
【符号の説明】
【0068】
1…顕微鏡本体、2…標本
3…ステージ、4…中座ステージ
5…光源装置、6…落射投光管
601〜603…中空部材、601a…フランジ
7…ランプソケット、701…ランプ
8…明るさ絞り、9…フロスト、10…断熱部材
11…コレクターレンズ、12…フィルタ筒体
12a…溝部、12b…嵌合溝
121…レンズ、13…フィルタ
14…ポラライザ、15…フィルタカバー
16…ハーフミラーブロック、16a…スライダ挿入部
17…ハーフミラー、18…防塵ガラスユニット
18…防塵ガラスユニット、19…防塵ガラス
20…支持板金、20a…直立面、20b…水平面
20c…孔部、21…ネジ
22a…アナライザー、22b…ダミースライダー
23…スカート、24…ピン
25…遮光布、26…対物レンズ
27…レボルバー、28…焦準ハンドル
29…反射ミラー、30…リレー光学系
31…観察鏡筒、32…接眼レンズ
33…調光用ボリューム、34…綿棒
34a…綿部分、35…可動シャッタ
36…ツマミ、361…ネジ
37…ストッパピン、38…隠し板
51…防塵ガラスユニット、52…防塵ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本を載置するステージと、
光源と、
前記ステージに載置された標本を観察する対物レンズと、
前記光源からの光を前記対物レンズに向け反射し、前記対物レンズを介して得られる前記標本からの光を透過するような特性を有する光路分割手段と、
前記光路分割手段の少なくとも上方面を覆うような透明部材を有する防塵手段と、
前記光路分割手段を透過した光を標本像として観察する観察手段と、
を具備したことを特徴とする顕微鏡。
【請求項2】
前記光路分割手段は、光路分割ブロックに設けられ、
前記防塵手段は、前記光路分割ブロックに着脱可能に設けられることを特徴とする請求項1記載の顕微鏡。
【請求項3】
さらに前記光路分割ブロックは、前記光路分割手段の下方面に対向してスライダ挿入部が設けられ、前記スライダ挿入部にダミースライダーを挿入可能としたことを特徴とする請求項2記載の顕微鏡。
【請求項4】
さらに前記光路分割ブロックは、前記光路分割手段の下方面に対向してスライダ挿入部が設けられ、前記スライダ挿入部の開口を開閉する開閉手段を有することを特徴とする請求項2記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記光路分割ブロックは、さらに前記光路分割手段の下方面を覆うような透明部材を有する防塵手段を着脱可能に設けたことを特徴とする請求項2記載の顕微鏡。
【請求項6】
前記光路分割手段は、光路分割ブロックに設けられ、
前記光路分割ブロックは、前記光路分割手段の上方面又は下方面を覆うような透明部材を有する防塵手段を一体的に設けたことを特徴とする請求項1記載の顕微鏡。
【請求項7】
前記防塵手段は、防塵ガラスと、該防塵ガラスが一体に設けられる防塵ガラスユニットからなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の顕微鏡。
【請求項8】
標本を載置するステージと、
光源と、
前記ステージに載置される標本を観察する対物レンズと、
前記光源からの光を前記対物レンズに向け反射し、前記対物レンズを介して得られる前記標本からの光を透過するような特性を有する光路分割手段と、
前記光源と光路分割手段との間の光路に配置され、少なくとも各種フィルタを収容する防塵カバーを備えたフィルタ保持手段と、
前記光路分割手段の上方面および下方面をそれぞれ防塵するように設けられた第1および第2の防塵手段と、
前記光路分割手段を透過した光を標本像として観察する観察手段と、
を具備したことを特徴とする顕微鏡。
【請求項9】
前記光路分割手段は、光路分割ブロックに設けられ、
前記第1および第2の防塵手段は、透明部材を有するとともに、前記光路分割ブロックに着脱可能に設けられることを特徴とする請求項8記載の顕微鏡。
【請求項10】
前記光路分割手段は、光路分割ブロックに設けられ、
前記光路分割ブロックは、前記光路分割手段の下方面に対向してスライダ挿入部が設けられ、前記第2の防塵手段は、前記スライダ挿入部にダミースライダーを挿入可能としたことを特徴とする請求項8記載の顕微鏡。
【請求項11】
前記光路分割手段は、光路分割ブロックに設けられ、
前記光路分割ブロックは、前記光路分割手段の下方面に対向してスライダ挿入部が設けられ、前記第2の防塵手段は、前記スライダ挿入部の開口を開閉する開閉手段を有することを特徴とする請求項8記載の顕微鏡。
【請求項12】
前記光路分割ブロックは、前記第1および第2の防塵手段を一体に設けたことを特徴とする請求項8記載の顕微鏡。
【請求項13】
前記防塵手段は、防塵ガラスと、該防塵ガラスが一体に設けられる防塵ガラスユニットからなることを特徴とする請求項9又は12記載の顕微鏡。
【請求項14】
前記フィルタ保持手段は、前記光路に沿ってスライド移動可能にした蓋部を有することを特徴とする請求項8記載の顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−98549(P2006−98549A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282627(P2004−282627)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】