説明

飛翔体

【課題】横列して移動している目標物に対して、効果的に対処できるようにする。
【解決手段】本発明は、複数の散布物を配設した索体101を連結した小型ロケット100と、小型ロケット100の射出方向が、自らの速度方向と交差する方向になったか否かを判定する射出方向判定手段と、小型ロケット100の射出方向が、自らの速度方向と交差する方向になったと判定したときには、小型ロケット100を発射するロケット発射手段とを有し、その小型ロケット100に索体を介して連結されている散布物Pを側方に展開させて放出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロケット等の飛翔体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の飛翔体については、非特許文献1に、「MULTIPLE ROCKET LAUNCHERS」(以下、「多連装ロケットランチャ」という。)とした名称において開示されたものがある。
上記非特許文献1に開示されている多連装ロケットランチャは、飛翔体に搭載されている搭載物に散布速度を与え、決められた範囲に散布するようにしたものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Jane's Armour and Artility2010-2011 MULTIPLE ROCKET LAUNCHERS p1088
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に開示されている多連装ロケットランチャでは、飛翔体の飛翔速度に従い、搭載物の散布範囲は、一定の範囲、すなわち飛翔体の飛翔速度方向に広がって散布される。
【0005】
そのため、搭載物の散布範囲内に目標物が密集している場合には有効であるが、例えば目標物が横列して移動している場合には、効果的に対処することができないという欠点がある。
【0006】
そこで本発明は、横列して移動している目標物に対して、効果的に対処できる飛翔体の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、複数の散布物を配設した索体を連結した小型ロケットと、小型ロケットの射出方向が、自らの速度方向と交差する方向になったか否かを判定する射出方向判定手段と、小型ロケットの射出方向が、自らの速度方向と交差する方向になったと判定したときには、小型ロケットを発射するロケット発射手段とを有し、その小型ロケットに索体を介して連結されている散布物を側方に展開させて放出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、横列して移動している目標物に対して、効果的に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る飛翔体と、これを発射した自走発射機を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る飛翔体の側面図である。
【図3】図2に示すI‐I線に沿う断面図である。
【図4】頭部を開頭しているときの説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る飛翔体の一部をなす制御回路を示すブロック図である。
【図6】飛翔体に搭載した小型ロケットを発射する直前の様子を示す説明図である。
【図7】飛翔体に搭載した小型ロケットの発射時において頭部を開頭した様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る飛翔体と、これを発射する自走発射機を示す説明図、図2は、本発明の一実施形態に係る飛翔体の側面図、図3は、図2に示すI‐I線に沿う断面図、図4は、飛翔体の頭部を開頭しているときの説明図、図5は、本発明の一実施形態に係る飛翔体の一部をなす制御回路を示すブロック図、図6は、飛翔体に搭載した小型ロケットを発射する直前の様子を示す説明図、図7は、その飛翔体に搭載した小型ロケットの発射時において頭部を開頭した様子を示す説明図である。
【0011】
本発明の一実施形態に係る飛翔体Aは、図1に示すように、車体5上に複数の発射筒6を搭載した自走発射機10から発射されるようになっている。
飛翔体Aは、ロケットモータ(図示しない)を内蔵した円筒形の基部20と、この基部20との間にボールベアリング等を介して回動自在に連結された尖頭形の頭部30とからなる。
【0012】
基部20には、これの外周壁に二つの操舵翼21を備えているとともに、それら操舵翼21は、これらに連結された後述する翼駆動部D1によって駆動されるようになっており、また、その翼駆動部D1は下記の制御部Cの出力側に接続されている。
【0013】
頭部30は、開頭片31,31、・・によって収容部が区画されているとともに、その収容部内には、軸心Oに一致して軸33が突出形成されているとともに、その軸33を通る直径線上に配設した仕切り壁34によって二分されている。
【0014】
空室34aには、六つのエアバッグ35(図6,7参照)が収容され、これらのエアバッグ35には、エアバッグ作動装置D4が接続されている。
なお、エアバッグ作動装置D4は、下記の制御部Cの出力側に接続されている。
【0015】
開頭片31,31は、これらの先端部31a,31aが、軸33の先端部33aにそれぞれヒンジ等によって軸支され、その軸33を通る直径線上において所要の角度θ(図4参照)だけ開頭するようになっている。
【0016】
仕切り壁34によって仕切られた二つの空室34a,34a(図3参照)には、小型ロケット100を、飛翔体Aの速度方向とは略逆向きにしてそれぞれ収容している。
【0017】
各小型ロケット100には、複数の散布物P(図1参照)を所要の間隔にして配設した所要長さの索体であるワイヤー101の一端部が固定されており、また、そのワイヤー101の他端部は開頭片31,31に固定されている。
また、各小型ロケット100には、図5に示すロケット発射装置D3が接続されている。
【0018】
開頭片31,31は、図4に示すように、軸心Oに一致して突設されている軸33の先端部33aに、ヒンジ等で開頭自在に支持されているとともに、先端部33aには下記の制御部Cが配設されている。
【0019】
上記開頭片31,31の内周壁面31b,31bには、軸心Oを中心とした45度間隔で八つの圧力センサS1〜S8が固定されており、また、それらの圧力センサS1〜S8は、制御部Cの入力側に接続されている。
【0020】
これらの開頭片31,31は、開頭駆動機構D2の一部をなすブーム36,36によって開頭されるようになっている。
ブーム36,36は、これらの基端36a,36aを開頭駆動機構D2に、また、開放端36b,36bを開頭片31,31にそれぞれ軸支しており、また、開頭駆動機構D2は、制御部Cの出力側に接続されている。
【0021】
圧力センサS1〜S8は、それぞれ頭部30の外面の圧力を測定するためのものであり、制御部Cの入力側に接続されている。
なお、本実施形態においては、45度間隔で八つの圧力センサS1〜S8を配設した例を示しているが、適宜増減することができるものである。
【0022】
次に、制御回路について説明する。
制御部Cは、CPU(Central Processing Unit)やインターフェース回路等からなるものであり、所要のプログラムの実行により、次の各機能を発揮する。
【0023】
(1)圧力センサS1〜S8により測定した圧力に基づいて、飛翔体Aの速度方向を取得する機能。この機能を「速度方向取得手段C1」という。
飛翔体Aが終末軌道に入る際、円筒形の形をした飛翔体Aが弾道飛翔している状態において、頭部周方向の圧力分布は、飛翔体Aの頭部に働く揚力を中心に変化している。このため、圧力分布を計測することにより、飛翔体Aの速度ベクトルを検出することが可能である。すなわち、頭部の揚力方向検知により、速度方向を取得することができる。
【0024】
(2)取得した飛翔体Aの速度方向に基づいて、小型ロケット100をほぼ水平に射出するようにロール回転させる機能。この機能を「ロール手段C2」という。
ロール回転は、翼駆動部D1によって操舵翼21を駆動することによって行なっている。
【0025】
(3)小型ロケット100の射出方向が、飛翔体Aの速度方向と交差する方向になったか否かを判定する機能。この機能を「射出方向判定手段C3」という。
この機能は、圧力センサS1〜S8により測定した圧力に基づいたデータ、又はジャイロなどを使用して、飛翔体Aの機軸と速度ベクトルを算出し、その機軸と速度ベクトルで形成される平面に直行する軸を算定する。この軸方向に最も近くなる開頭片を判定する、等の方法によるものである。
換言すると、開頭片31,31の開頭方向が、飛翔体Aの速度方向と交差する方向になったか否かを判定している。この機能を「開頭方向判定手段C6」ともいう。
【0026】
(4)開頭片31,31の開頭方向が、飛翔体Aの速度方向と交差する方向になったと判定したときには、開頭片31,31を開頭駆動する機能。この機能を「開頭手段C4」という。
本実施形態においては、上記したブーム36,36を伸長駆動させることにより、開頭片31,31を開頭する。
【0027】
(5)小型ロケット100を発射させる機能。この機能を「ロケット発射手段C5」という。
ロケット発射装置D3によって、小型ロケット100を発射する。
【0028】
上記構成からなる飛翔体Aの動作について、説明する。
自走発射機10から飛翔体Aが発射されると、飛翔している間に、その飛翔体Aの速度方向が検出されるとともに、開頭片31,31の開頭方向が、飛翔体Aの速度方向と交差する方向となるようにロールさせる。
【0029】
開頭方向が、飛翔体Aの速度方向と交差する方向になったと判定したときに、ブーム36,36を伸長させて、開頭片31,31を開頭する。
開頭片31,31の開頭とともに、エアバッグ35を膨出させて、小型ロケット100を発射する。
開頭される開頭片以外の位置に相当するエリアのエアバッグ35が膨出することにより、小型ロケット100を開頭される開頭片の位置に誘導する。
この状態で、ブーム36が伸張すると同時に、小型ロケット100を開頭片に押し出すことにより、開頭片に小型ロケット100が設置される形となる。そして、開頭片31は小型ロケットの発射レールとして機能し、小型ロケット100の発射方向をガイドする。
すなわち、開頭片31,31の内周壁面31b,31bが小型ロケット100の発射時のガイドとしての機能を果たす。
【0030】
発射された小型ロケット100,100は、飛翔体Aの速度方向と直交する水平方向に射出され、ワイヤー101とともに散布物Pが側方に展開される。
これにより、横列して移動している目標物等に対して、効果的に対処することができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、次のような変形実施が可能である。
・飛翔体を自走発射機から発射する例について説明したが、この形態に限るものではない。
・上述した実施形態においては、同じ二つの小型ロケットを搭載した例について説明したが、大小異なるロケットを採用してもよく、その数も二つに限るものではない。
・六つのエアバッグを飛翔体に収容した形態としているが、その数も六つに限るものではなく、エアバッグ以外の方法を採用してもよい。
【0032】
・開頭する開頭片を一箇所のみとし、操舵翼により飛翔体の回転姿勢を制御して、小型ロケットの射出方向を飛翔体の速度方向と交差する方向にし、そこで開頭片を開いて小型ロケットを射出するようにしてもよい。
すなわち、制御部Cに次の機能を有するものとしてもよい。
取得した飛翔体Aの速度方向に、開頭しようとする開頭片が一致するように自らの回転姿勢を翼駆動部及び操舵翼を介して制御する姿勢制御手段と、取得した飛翔体Aの速度方向に、開頭しようとする開頭片が一致したと判定したときに開頭手段が頭部を開頭する。
この構成によれば、小型ロケットを開頭片に移動するためのエアバッグを必要としない。
【符号の説明】
【0033】
31 開頭片
100 小型ロケット
101 索体(ワイヤー)
A 飛翔体
P 散布物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の散布物を配設した索体を連結した小型ロケットと、
小型ロケットの射出方向が、自らの速度方向と交差する方向になったか否かを判定する射出方向判定手段と、
小型ロケットの射出方向が、自らの速度方向と交差する方向になったと判定したときには、小型ロケットを発射するロケット発射手段とを有し、
その小型ロケットに索体を介して連結されている散布物を側方に展開させて放出することを特徴とする飛翔体。
【請求項2】
開頭片を小型ロケットの射出ガイドとしていることを特徴とする請求項1に記載の飛翔体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−100954(P2013−100954A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245177(P2011−245177)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)