説明

食器等とその製造方法

【課題】プラスチック製品に於けるプラスチック使用割合を少なくして、結果としてプラスチックの処理量を減少させることで処理を簡素化し、併せて、原料である石油の消費量を押さえ、埋蔵量の温存を図りながら、温暖化問題等環境対策の一助とすると共に、目立った処理方法のなかった卵の殻や貝殻の有効活用が可能な食器等とその製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチックを可塑化して溶融する工程と、該溶融したプラスチックに複合材料を投入する工程と前記プラスチックと複合材料を混錬する工程と該工程により得た溶融材料を金型に於いて成形する工程と該工程に続く冷却工程からなる成形工程に於いて、前記プラスチックの使用割合に対する前記複合材料の使用割合を比較的大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックを用いた箸等の食器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球の環境問題が取り上げられて久しいものがある。プラスチックは、自動車、家電、通信の各部品はもとより、日用品や包装そして容器等広い分野で使用されており、プラスチックが無ければ一日たりとも生活出来ないと云っても良い。これはけっして言い過ぎではなく、社会への貢献度は計り知れないほど大きなものがある。反面、使用済みプラスチック製品(部品)の処理問題がある、処理システムの技術開発が日々行われ、導入されている一方で、心ない一部の業者や人間達の不法投棄により、公害等いろいろな問題が発生している。
【0003】
又、プラスチックが主として石油を原料としていることは言を待たない。石油は、プラスチックとして形を変え、我々人類に多大な恩恵をもたらせているのと同時に、ガソリンや灯油に姿を変えて、重要なエネルギーとして大きな役目を担っており、その貢献度は、計り知れないほど大きく、誰しも認めるところであるが、温暖化問題等の環境への悪影響が懸念されている。一方、石油の埋蔵量は年々減少しており、後数十年後には枯渇してしまうとも云われ、代替エネルギーの開発が盛んに行われているものの、まだまだ石油に頼らざるを得ないのが現状である。
【0004】
そして、近年になって生ゴミ等の処理が大きくクローズアップされているが、それに関連し、卵の殻や各種貝殻の処理も難しい問題であり、漁業関連施設或いは食品メーカーでは、多額の費用を課して処理しているのが現状である。
【0005】
こうした状況下、プラスチック製品の処理については、リサイクル化が盛んに行われるようになり、ガソリン対応の一つとしては、ハイブリットカーや電気自動車の登場が顕著なものとして取り上げられるが、卵の殻や貝殻の処理については、特に目立った方法は開発されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
然しながら、プラスチック製品のリサイクル化やハイブリットカー及び電気自動車の登場は、緒についたばかりといっても良く、更なる対策、開発が必要であるのは、云うまでもないことである。
【0007】
本発明は、こうした現状の問題に鑑み、プラスチック製品に於けるプラスチック使用割合を少なくして、結果としてプラスチックの処理量を減少させることで処理を簡素化し、併せて、原料である石油の消費量を押さえ、埋蔵量の温存を図りながら、温暖化問題等環境対策の一助とすると共に、目立った処理方法のなかった卵の殻や貝殻の有効活用が可能な食器等とその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、食器等に於いて、プラスチックを可塑化して溶融する工程と、該溶融したプラスチックに複合材料を投入する工程と前記プラスチックと複合材料を混錬する工程と該工程により得た溶融材料を金型に於いて成形する工程と該工程に続く冷却工程からなる成形工程に於いて、前記プラスチックの使用割合に対する前記複合材料の使用割合を比較的大きくして成形したものである。食器等をこのように成形したことにより、プラスチックの使用量が大幅に減少し、原料である石油の使用量が大幅に抑制出来ることになり、石油埋蔵量の減少を抑制すると共に温暖化問題等環境対策に貢献することが可能となるばかりでなく、廃棄に当っては、プラスチックの量が少ないので、その分環境への悪影響が少なくなるのと同時に、処理の簡素化を図ることが出来る。
【0009】
請求項2記載の発明は、複合材料を卵の殻としたものである。このように構成したことにより、卵の殻の有効活用が図れ、更に廃棄量が少なくなり、その分処理が簡素化され、費用も少なくすることが出来る。
【0010】
請求項3記載の発明は、複合材料を貝の殻としたものである。このように構成したことにより、貝殻の有効活用が図れ、更に廃棄量が少なくなり、その分処理が簡素化され、費用も少なくすることが出来る。
【0011】
請求項4記載の発明は、食器等の製造方法に於いて、プラスチックを可塑化して溶融する工程と、該溶融したプラスチックに複合材料を投入する工程と前記プラスチックと複合材料を混錬する工程と該工程により得た溶融材料を金型に於いて成形する工程と該工程に続く冷却工程からなる成形工程に於いて、前記プラスチックの使用割合に対する前記複合材料の使用割合を比較的大きくしたものである。このような製造方法にしたことにより、プラスチックの使用量が大幅に減少し、原料である石油の使用量が大幅に抑制出来、石油埋蔵量の減少を抑制すると共に温暖化問題等環境対策に貢献することが可能となり、廃棄に当っては、プラスチックの量が少ないので、その分環境への悪影響が少なくなるのと同時に、処理の簡素化が図れる食器等を提供することが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上説明したように構成されているので、下記に説明するような効果を奏する。
【0013】
本発明による食器等は、プラスチックを可塑化して溶融する工程と、該溶融したプラスチックに複合材料を投入する工程と前記プラスチックと複合材料を混錬する工程と該工程により得た溶融材料を金型に於いて成形する工程と該工程に続く冷却工程からなる成形工程に於いて、前記プラスチックの使用割合に対する前記複合材料の使用割合を比較的大きくして成形したので、プラスチックの使用量が大幅に減少し、原料である石油の使用量が大幅に抑制出来ることになり、石油埋蔵量の減少を抑制すると共に温暖化問題等環境対策に貢献することが可能となるばかりでなく、廃棄に当っては、プラスチックの量が少ないので、その分環境への悪影響が少なくなるのと同時に、処理の簡素化を図ることが出来る。
【0014】
更に、本発明による食器等は、複合材料を卵の殻としたので、卵の殻の有効活用が図れ、更に廃棄量が少なくなり、その分処理が簡素化され、費用も少なくすることが出来る。
【0015】
更に、本発明による食器等は、複合材料を貝の殻としたので、貝殻の有効活用が図れ、更に廃棄量が少なくなり、その分処理が簡素化され、費用も少なくすることが出来る。
【0016】
更に、本発明による食器等の製造方法は、プラスチックを可塑化して溶融する工程と、該溶融したプラスチックに複合材料を投入する工程と前記プラスチックと複合材料を混錬する工程と該工程により得た溶融材料を金型に於いて成形する工程と該工程に続く冷却工程からなる成形工程に於いて、前記プラスチックの使用割合に対する前記複合材料の使用割合を比較的大きくしたので、プラスチックの使用量が大幅に減少し、原料である石油の使用量が大幅に抑制出来、石油埋蔵量の減少を抑制すると共に温暖化問題等環境対策に貢献することが可能となり、廃棄に当っては、プラスチックの量が少ないので、その分環境への悪影響が少なくなるのと同時に、処理の簡素化が図れる食器等を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による食器等とその製造方法の一実施形態であって、基本的な成型方法を示す系統図である。
【図2】(a)は本発明による食器等とその製造方法に於ける複合材料の一実施形態である卵の簡略図であり、(b)は同じく複合材料の他の実施形態である貝の簡略図である。
【図3】本発明による製造方法により成形された箸の簡略図である。
【図4】本発明による製造方法により成形されたスプーンの簡略図である。
【図5】本発明による製造方法により成形されたフォークの簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5に基づき詳細に説明する。
【0019】
それでは、図1を参照しながら、本発明による食器等の基本的な製造方法を説明する。プラスチックの成型方法には、押出成形、射出成型、ブロー成型等さまざまな方法があるが、基本的には、材料であるプラスチックを可塑化即ち溶かすことから始まり、所定の形状に成型し、固化(熱可塑性プラスチックの場合は冷却)することで完了する。そして、この基本的な成形方法を基にして、必要に応じ、複合材料や可塑剤或いは添加剤等を混入させることになる。
【0020】
本発明による食器等の基本的な製造方法は、射出成形が有利であって、前述したプラスチックの基本的な成型方法に基づくものであり、その成型工程は図1に示す通りである。即ち、所定のプラスチック材料(ペレット)を溶かし、次いで複合材料を投入して混練する。充分に混練した後金型に流し込み、冷却して固化して完了となる。勿論、成型直後の製品にはバリ等が付いたままとなっているので、バリ取り作業等付随する工程が必要であるのは、云うまでもないことである。尚、本実施形態では、複合材料投入を別工程として説明したが、予め複合材料を混入させたペレットを使用することも可能であり、その場合は、図1に於ける複合材料投入工程は必要でなくなるので、念のため付言して置くことにする。
【0021】
それでは引き続き、本発明による食器等の主要材料であるプラスチックと複合材料について説明する。プラスチックの種類は非常に多く、代表的なものを上げれば、熱可塑性樹脂では、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の汎用性のあるもの、そしてポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックとして適したものがあり、熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等がある。本発明による食器等に於いては、特に使用できないプラスチックはないが、重要なことは、対象となる商品の仕様にマッチさせることであり、汎用性があって、成形性が良く、安全性が高く、価格的にも有利なものとなる。
【0022】
次に、複合材料であるが、本発明の実施形態に於いては、図2に示したように、卵と貝の殻を取り上げている。これらの殻を取り上げたのは、貝殻ではお土産用工芸品として利用されているものの、極一部であり、総じて目立った効果的な処理方法がないこと、そして衛生的に支障がなく、安全性が高いものであるからである。然し、複合材料として使用する場合は、衛生及び安全面に更なる配慮を施した上で適切な手段でもって粉砕し、粉末状或いは微粉末状とすることが必要となる。尚、念のため付言すれば、卵や貝の殻の主成分が炭酸カルシュームであることから、同じ炭酸カルシュームを主成分とし、廃棄処理等に悩んでいる他の素材をも卵や貝の殻と同様に複合材料として使用出来るのは勿論である。
【0023】
粉末状となった卵或いは貝の殻即ち複合材料は、製品成型に当って、既に述べたように、可塑化したプラスチックの中に投入される。そして後、混練して金型に流し込まれ成形されることになる。勿論、成形は、複合材料の混合割合や商品仕様に則した条件でもって行われるのは云うまでもない。
【0024】
ここで、プラスチック材料と複合材料の使用比率について説明する。熱可塑性樹脂に於いては、冷却することで固化する性質を有している。本発明の狙いは、プラスチックの使用を極力少なくし、卵や貝の殻の使用を可能な限り多くして、原料である石油の消費量を押さえることで、石油埋蔵量の減少対策を図りながら、地球環境の清浄化と温暖化防止に貢献すると共に、目立った処理方法のなかった卵の殻や貝殻の有効活用を図るものである。従って、冷却することで固化するというプラスチックの性質の許容範囲内で複合材料を多く使用するのが良いということになる。然し、商品仕様にマッチさせることが重要であり、本発明による食器等の実施形態として取り上げ、後述する箸やスプーンそしてフォークの場合では、複合材料として、卵或いは貝の殻を使用すると、プラスチック(ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂)70%前後に対し、複合材料30%前後とするのが良好であるが、それぞれを略50%としても品質的には特別低下することはない。要は、プラスチック材料の使用を極力少なくすることが狙いであり、場合によっては、プラスチック材料の使用割合を複合材料より少なくする(例えば、複合材料に対するプラスチック材料の使用割合を50%以下とする。)こともあながち不可能ではない。然し、この割合は、対象となる商品或いはその商品の仕様、更には使用するプラスチック材料の種類によって異なるのは当然であり、特に限定されるものではないので、付言して置くことにする。又、複合材料としての卵と貝の殻は、単独で使用するばかりでなく、両者を適切な割合で共用することも可能である。
【0025】
図3、図4及び図5は、本発明による製造方法で成形された箸、スプーン及びフォークであり、必要に応じて着色(成形時では着色剤使用し、成形後では塗布等)することも可能であるが、安全性を考慮することが重要であるのは云うまでもない。
【0026】
尚、本発明による製造方法の対象製品として、特に食器を取り上げ、その実施形態として、箸、スプーン及びフォークについて説明したが、発明の主旨を逸脱しない範囲で応用することは勿論可能であり、食器であれば、皿、コップ等も成形可能であり、更には食器以外でも自動車のバンパー等或いはあらゆる分野のプラスチック製品も成形可能である。
【符号の説明】
【0027】
1卵
2貝
3箸
4スプーン
5フォーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを可塑化して溶融する工程と、該溶融したプラスチックに複合材料を投入する工程と前記プラスチックと複合材料を混錬する工程と該工程により得た溶融材料を金型に於いて成形する工程と該工程に続く冷却工程からなる成形工程に於いて、前記プラスチックの使用割合に対する前記複合材料の使用割合を比較的大きくして成形したことを特徴とする食器等。
【請求項2】
複合材料が卵の殻であることを特徴とする請求項1記載の食器等。
【請求項3】
複合材料が貝の殻であることを特徴とする請求項1記載の食器等。
【請求項4】
プラスチックを可塑化して溶融する工程と、該溶融したプラスチックに複合材料を投入する工程と前記プラスチックと複合材料を混錬する工程と該工程により得た溶融材料を金型に於いて成形する工程と該工程に続く冷却工程からなる成形工程に於いて、前記プラスチックの使用割合に対する前記複合材料の使用割合を比較的大きくして成形するようにしたことを特徴とする食器等の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−83559(P2011−83559A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252382(P2009−252382)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(509304184)有限会社ワイエムティー (1)
【出願人】(506181955)株式会社エヌ・ジェーユニオンジャパン (1)
【Fターム(参考)】