説明

食用粉末を付着させた油脂加工食品

【課題】表面に粉末をたっぷりと付着させた油脂加工食品およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】表面に食用粉末を付着させた油脂加工食品の製造方法であって、該方法は、(a)第1付着用回転釜の中に油脂加工食品と第1付着用食用粉末とを入れて該第1付着用回転釜を回転させることにより、該油脂加工食品に該粉末を付着させる工程;および(b)第2付着用回転釜の中に該食用粉末を付着させた該油脂加工食品を入れ、該第2付着用回転釜を回転させながらエタノール水を噴霧し、次いで該第2付着用回転釜に第2付着用食用粉末を入れて該第2付着用回転釜を回転させることにより、該エタノール水が噴霧された該油脂加工食品に該第2付着用食用粉末を付着させる工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂加工食品に食用粉末を付着させる方法および食用粉末を付着させた油脂加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートのような油脂加工食品の表面にココアパウダー、粉糖などを粉がけした製品は多く存在する。特に、生チョコレートや、ココアバターよりも低融点の成分を多く含む油脂を用いた口溶けの良いチョコレート製品などでは、見栄えおよび嗜好性を改良するために粉末をかけた製品が多い。このような粉末をかけた製品の従来の製法としては、油脂加工食品を製造して冷却固化した後に粉末の上を転がして付着させる方法、回転パンの中で油脂加工食品と粉末とを混在させて回転させて粉末を油脂加工食品に付着させる方法などがある。しかし、このような方法で付着させると、物理的な衝撃、振動などにより油脂加工食品から粉末が容易に剥がれてしまい、その結果、油脂加工食品の表面が見え、見た目が悪く、嗜好性の低下が起こってしまう。粉末の付着を強固にすれば粉末のはがれを防止できるが、表面に凹凸がでて、てかりが生じ、粉末が潰れて固結し、粉がけの価値を著しく損なう。また、これらの方法は通常1回しか行われない。
【0003】
粉末をかけた油脂加工食品の製造方法は従来検討されている。特許文献1は、食品片の周面に油脂性菓子生地を被覆した後、生地が固化しないうちに粉末を流動浮遊させた気体中に移行させて、粉末を付着させ、気体中から取り出して冷却固化させる方法を開示する。特許文献1には、この付着工程を2回以上行うことは記載されていない。この方法では、油脂性菓子生地が融解している表面には1回しか粉末を付着させることができない。そのため、粉末をたっぷり付着させることはできない。粉末を付着させ、油脂性菓子生地を冷却固化させた後に再度油脂を融解させると、粉末が油浸により変色し、外観が著しく低下する。
【0004】
特許文献2は、チョコレート菓子の表面に水分を噴霧して水分を付着させた後、粉末を固着させる方法および、チョコレート菓子の表面に結露を生じさせて水分を付着させた後、粉末を固着させる方法を開示する。特許文献2には、回転釜を用いずに付着させる方法が記載されている。本願明細書の比較例2に記載されるように、特許文献2の方法を繰り返しても粉末の性能を保持したまま多量の粉末を付着させることはできない。
【0005】
特許文献3は、チョコレートの表層のみを熱風による加熱で溶解した後、その表面に粉体をまぶして付着させる製造法を開示する。特許文献3には、この付着工程を2回以上行うことは記載されていない。この方法では、チョコレートの表層が融解している表面には1回しか粉末を付着させることができない。そのため、粉末をたっぷり付着させることはできない。粉末を付着させ、チョコレートの表層を冷却固化させた後に再度表層を融解させると、粉末が油浸により変色し、外観が著しく低下する。
【0006】
特許文献4は、粉末を懸濁した揮発性溶液に油脂加工食品を浸漬し、その後、揮発性溶媒を気散させて粉末を付着させる製造法を開示する。特許文献4には、回転釜を用いずに付着させる方法が記載されている。本願明細書の比較例4に記載されるように、特許文献4の方法を繰り返した場合、少量の粉末を付着させることはできるが、粉末の機能を保持したまま多量の粉末を付着させることはできない。多量に付着させようとすると、油浸によりパウダーがチョコに埋まった状態になりやすい。付着した粉末が浸漬時に懸濁液に戻ってしまうためであると考えられる。
【0007】
このように、油脂加工食品の表面に多量の粉末を付着させる方法および油脂加工食品の表面に多量の付着させた粉末が物理的な振動、衝撃などにより油脂加工食品から容易には剥がれないようにする製法は無かった。さらに、表面に多量の粉末をたっぷりと付着させた安定な油脂加工食品も存在していなかった。従って、多量の粉末を油脂加工食品の表面に付着させる方法およびその表面に多量の粉末が付着した油脂加工食品が所望されている。
【特許文献1】特公昭62−50091号公報
【特許文献2】特許3094209号公報
【特許文献3】特開2002−335863号公報
【特許文献4】特開2007−20453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、表面に食用粉末をたっぷりと付着させた油脂加工食品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、回転釜の中に油脂加工食品と食用粉末とを入れてエタノール水なしで回転させて油脂加工食品に食用粉末を付着させた後、エタノール水の噴霧と食用粉末の付着とを行うことにより、多量の食用粉末を油脂加工食品に付着させることができることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。
【0010】
特に、エタノール水なしで油脂加工食品に食用粉末を付着させた後、エタノール水の噴霧の後に食用粉末を添加し、回転釜(例えば、回転パン)を回転させて食用粉末を油脂加工食品に付着させる作業を複数回(例えば、2回から5回)繰り返すことにより、さらにたっぷりと食用粉末を付着させることができることを見出した。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する:
(項目1)
表面に食用粉末を付着させた油脂加工食品の製造方法であって、該方法は、
(a)第1付着用回転釜の中に油脂加工食品と第1付着用食用粉末とを入れて該第1付着用回転釜を回転させることにより、該油脂加工食品に該粉末を付着させる工程;および
(b)第2付着用回転釜の中に該食用粉末を付着させた該油脂加工食品を入れ、該第2付着用回転釜を回転させながらエタノール水を噴霧し、次いで該第2付着用回転釜に第2付着用食用粉末を入れて該第2付着用回転釜を回転させることにより、該エタノール水が噴霧された該油脂加工食品に該第2付着用食用粉末を付着させる工程
を包含し、ここで、
工程(a)の間およびそれ以前には液体の噴霧は行われず;
工程(a)は工程(b)の前に1回のみ行われ;
該エタノール水中のエタノールの濃度が、エタノール水の総重量を基準として、35重量%以上70重量%以下である、方法。
【0012】
(項目2)
前記エタノール水中のエタノールの濃度が、40重量%以上60重量%以下である、項目1に記載の方法。
【0013】
(項目3)
前記工程(b)が2〜5回行われる、項目1に記載の方法。
【0014】
(項目4)
前記第1付着用食用粉末および前記第2付着用食用粉末において、それぞれ、粒径が75μm以下の粒子が95重量%以上を占める、項目1に記載の方法。
【0015】
(項目5)
前記第1付着用食用粉末および前記第2付着用食用粉末が、それぞれ、ココアパウダー、抹茶粉末、乾燥果実粉末、乾燥堅果粉末、油脂加工食品粉末、チーズ粉末、コーヒー粉末およびミルク粉末からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
【0016】
(項目6)
前記油脂加工食品が、ココアバターまたはココアバター代用脂を含む、項目1に記載の方法。
【0017】
(項目7)
前記油脂加工食品の水分量が3重量%以下である、項目1に記載の方法。
【0018】
(項目8)
前記工程(a)および前記工程(b)が前記油脂加工食品中の油脂性材料の融点より低い温度で行われる、項目1に記載の方法。
【0019】
(項目9)
前記油脂加工食品中の油脂性材料の融点が25℃より高く、かつ前記工程(a)および前記工程(b)が25℃以下の温度で行われる、項目1に記載の方法。
【0020】
(項目10)
前記第1付着用回転釜および前記第2付着用回転釜の内径の直径が、0.50m〜1.5mであり、前記第1付着用回転釜および前記第2付着用回転釜の回転速度が15回転/分〜50回転/分であり、そして前記油脂加工食品の重さが1g〜10gである、項目1に記載の方法。
【0021】
(項目11)
前記第1付着用回転釜および前記第2付着用回転釜の開口部の大きさが、直径30cm〜100cmである、項目10に記載の方法。
【0022】
(項目12)
表面積10cmあたり食用粉末を70mg以上付着させた粉末付着油脂加工食品であって、該油脂加工食品を振動篩い上にセットして30秒間振動を与えても残存する食用粉末の残存割合が、80重量%以上である、粉末付着油脂加工食品。
【0023】
(項目13)
表面積10cmあたりの食用粉末の量が100mg以上である、項目12に記載の粉末付着油脂加工食品。
【0024】
(項目14)
前記食用粉末において、粒径が75μm以下の粒子が95%以上を占める、項目12に記載の粉末付着油脂加工食品。
【0025】
(項目15)
前記食用粉末が、ココアパウダー、抹茶粉末、乾燥果実粉末、乾燥堅果粉末、油脂加工食品粉末、チーズ粉末、コーヒー粉末およびミルク粉末からなる群より選択される、項目12に記載の粉末付着油脂加工食品。
【0026】
(項目16)
前記油脂加工食品が、ココアバターまたはココアバター代用脂を含む、項目12に記載の粉末付着油脂加工食品。
【0027】
(項目17)
前記油脂加工食品の水分量が3重量%以下である、項目12に記載の粉末付着油脂加工食品。
【発明の効果】
【0028】
エタノール水により食用粉末が層状に結着するとともに、油脂加工食品の自重による圧着もあるため、食用粉末が油脂加工食品から容易に剥がれないものを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
(1.材料)
(1.1 油脂加工食品)
本明細書中で「油脂加工食品」とは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」によるチョコレート生地および準チョコレート生地の基準に従う製品を含むがこれらには限定されず、油脂を含む任意の油脂性食品をいう。好ましくは、油脂加工食品は、油脂中にカカオマス、糖類などを分散させたものである。油脂加工食品は、必要に応じて、糖アルコール、オリゴ糖類、多糖類、粉乳、粉末卵、穀粉、ココアパウダー、乾燥果実、ナッツ、パフ、乳化剤、香料などを分散して含み得る。
【0031】
「チョコレート生地」とは、カカオビーンズから調製したカカオマス、ココアバター、ココアケーキまたはココアパウダーを原料とし、必要により糖類、乳製品、他の食用油脂、香料等を加え、通常の工程を経て製造したものであって、カカオ分が全重量の35パーセント以上(ココアバターが全重量の18パーセント以上)であって、水分が全重量の3パーセント以下のものをいう。ただし、カカオ分が全重量の21パーセントを下らず(ココアバターが全重量の18パーセント以上)、かつ、カカオ分と乳固形分の合計が全重量の35パーセントを下らない範囲内(乳脂肪が全重量の3パーセント以上)で、カカオ分の代わりに、乳固形分を使用することができる。
【0032】
「準チョコレート生地」とは、カカオビーンズから調製したカカオマス、ココアバター、ココアケーキまたはココアパウダーを原料とし、必要により糖類、乳製品、他の食用油脂、香料等を加え、通常の工程を経て製造したものであって、カカオ分が全重量の15パーセント以上(ココアバターが全重量の3パーセント以上)、脂肪分が全重量の18パーセント以上のものであって、水分が全重量の3パーセント以下のもの、またはカカオ分が全重量の7パーセント以上(ココアバターが全重量の3パーセント以上)、脂肪分が全重量の18パーセント以上、乳固形分が全重量の12.5パーセント以上(乳脂肪が全重量の2パーセント以上)であって、水分が全重量の3パーセント以下のものをいう。ただし、準チョコレート生地からは、チョコレート生地に該当するものを除く。
【0033】
油脂加工食品は、油脂性組成物の塊であってもよく、または、その中に他の材料を含む複合菓子であってもよい。例えば、油脂加工食品は、チョコレートのような、均一な油脂性組成物からなっていてもよく、アーモンドチョコのような、センターに油脂性組成物をコーティングしたものであってもよい。油脂加工食品の油脂性生地部分を、油脂性組成物ともいう。「油脂性組成物」は、通常、室温で固体であり、加熱すると融解して液体となる。
【0034】
本発明で使用される油脂性組成物に含まれる「油脂」は、任意の食用油脂であり得る。油脂は、好ましくは、融点が10〜45℃にある油脂をいい、より好ましくは融点が15℃〜40℃にある油脂であり、より好ましくは融点が20℃〜35℃にある油脂である。
【0035】
本発明の油脂性組成物に含まれる油脂の融点は、好ましくは約10℃以上であり、より好ましくは約15℃以上であり、さらに好ましくは約20℃以上である。本発明の油脂性組成物に含まれる油脂の融点は、好ましくは約35℃以下であり、より好ましくは約30℃以下であり、さらに好ましくは約28℃以下である。
【0036】
もちろん、当業者に理解され得るように、融点の比較的高い(例えば、45℃)油脂に融点の低い(例えば、5℃)の油脂を混合することによって油脂性組成物全体の融点を下げることが可能である。
【0037】
本発明で使用される油脂性組成物に含まれる油脂としては、ココアバターの他、ココアバター代用脂(テンパー型およびノーテンパー型)、ココアバター分別脂などの当該分野で公知の任意の油脂を用い得る。当業者に公知のように、ココアバターは、カカオマス中に油脂分として約55%含まれるので、ココアバターの少なくとも一部を与えるものとしてカカオマスを本発明で使用される油脂性組成物中に配合してもよい。「ココアバター代用脂」とは、ココアバターと同様の物性(例えばテンパリングにより結晶が単一になるなど)を有する、ココアバター以外の食用油脂または食用油脂混合物をいう。
【0038】
本発明で使用される油脂性組成物に含まれる油脂は、天然の油脂であってもよいし、半合成油脂であってもよいし、合成油脂であってもよい。あるいは、本発明で使用される油脂性組成物に含まれる油脂は、天然の油脂と半合成油脂との混合物、天然の油脂と合成油脂との混合物、半合成油脂と合成油脂との混合物または天然の油脂と半合成油脂と合成油脂との混合物であり得る。天然の油脂と合成油脂との混合物であることが好ましい。
【0039】
本発明で使用される油脂性組成物に含まれる油脂は、物質として純粋な油脂であってもよいし、複数種の油脂の混合物であってもよい。例えば、通常のチョコレートの原料に用いられているカカオバターは、複数種の油脂の混合物である。一般に、天然の油脂は、複数種の油脂の混合物である。純粋な油脂に夾雑物(例えば、種類の異なる油脂)が混ざると純粋な油脂の融点よりも融点が下がる傾向がある。
【0040】
半合成油脂は、例えば、原料の油脂に水素添加することによって合成され得る。天然の油脂であるココアバターの価格および供給が一般に不安定であるのに比べて、半合成油脂は価格も安く供給も安定していることが多いという利点がある。半合成油脂の合成方法は、当業者に公知である。
【0041】
合成油脂の合成方法は、当業者に公知である。天然の油脂および半合成油脂の組成は比較的変動しやすいのに比べて、合成油脂は、組成が均一なものを得ることができるという利点がある。
【0042】
本発明で使用される油脂性組成物に含まれる油脂は、テンパリング型の油脂であっても、ノーテンパリング型の油脂であってもよい。テンパリング型の油脂とは、トリグリセリド組成がココアバターと同様、2−不飽和、1,3−ジ飽和のトリグリセリドからなり、その構成飽和脂肪酸はパルミチン酸およびステアリン酸が主体である油脂をいう。ノーテンパリング型の油脂とは、トランス酸型の脂肪酸、またはラウリン酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドを主に含む油脂である。「主に含む」とは、そのトリグリセリドの重量が、油脂に含まれる全トリグリセリド重量中の好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上を占めることをいう。本発明で使用される油脂加工食品に含まれる油脂は、テンパリング型の油脂とノーテンパリング型の油脂との混合物であってもよい。
【0043】
油脂加工食品は、カカオ分を少量しか、あるいは全く含まない、チョコレートと同様の物性を有する食品を包含する。
【0044】
油脂性組成物中の油脂の含有量は、好ましくは約10重量%以上であり、より好ましくは約20重量%以上であり、さらに好ましくは約25重量%以上である。油脂性組成物中の油脂の含有量の上限は特にないが、約100重量%であってもよく、約99重量%以下であってもよく、約95重量%以下、約90重量%以下、約80重量以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下などであってもよい。
【0045】
本発明で使用される油脂性組成物の例としては、ミルクチョコレート、ブラックチョコレート、ホワイトチョコレート等が例示される。
【0046】
上記のように油脂加工食品は、油脂性組成物の塊であってもよく、その中に他の材料を含む複合菓子であってもよい。例えば、油脂加工食品は、油脂性組成物とパフ、クッキー、乾燥果実などとが混合されることにより形成される、不均一な組織のものであってもよい。このような、油脂性組成物と混合され得る材料の例としては、パフ、クッキー片、コーンフレーク片、ウエハース片、プレッツェル片、キャンディ片、モナカ片、ケーキクラム、乾燥果実(例えば、乾燥イチゴ片、乾燥リンゴ片、乾燥マンゴー片、乾燥パパイア片、乾燥オレンジ片、乾燥イチジク片、乾燥バナナ片、レーズン、乾燥ベリー類(例えば、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、クランベリーなど))、堅果類(例えば、アーモンド片、胡桃片、ピスタチオ片、マカダミアナッツ片、ヘーゼルナッツ片、カシューナッツ片、栗片など)、種子類(ゴマ、パンプキンシード、松の実、粟、など)が挙げられる。なお、本明細書中で、「乾燥イチゴ片」のようにいう場合、この「片」は、1粒1粒が肉眼で区別できる程度に大きなものをいい、粉末とは区別される。油脂性組成物と混合され得る材料の直径は例えば、約2mm以上、約3mm以上、約4mm以上などであり得、そして例えば、10mm以下、8mm以下、6mm以下、4mm以下などであり得る。
【0047】
例えば、油脂加工食品は、アーモンド、クッキーなどのセンターに油脂性組成物をコーティングすることにより形成されたものであってもよい。センターの例としては、乾燥果実(例えば、乾燥イチゴ、乾燥リンゴ片、乾燥マンゴー片、乾燥パパイア片、乾燥オレンジ片、乾燥イチジク片、乾燥バナナ片、レーズン、乾燥ベリー類(例えば、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、クランベリーなど)、堅果類(例えば、アーモンド、胡桃、ピスタチオ、マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツ、カシューナッツ、栗など)、焼き菓子(例えば、ビスケット、クッキー、パイ、プレッツェル、マカロン、メレンゲ、ウエハース、パフなど)、キャンディ、グミ、求肥、ガナッシュなどの油脂性組成物の塊、果実ジャム、果実ソースなどが挙げられる。
【0048】
本発明で用いられる油脂加工食品はまた、常温で固化しているココアクリーム、ホワイトクリームなどであってもよい。
【0049】
油脂加工食品のうちの油脂性組成物部分の水分量は、好ましくは約3重量%以下であり、より好ましくは約2.5重量%以下であり、特に好ましくは約2重量%以下であり、最も好ましくは約1.5重量%以下である。水分量に特に下限はないが、一般的には約0.0001%以上である。
【0050】
油脂加工食品は、任意の形状であり得る。油脂加工食品の形状の例としては、多面体、球形、回転楕円体、円錐体、多角錐体、錐体の頂部を切り落とした形状、棒状などが挙げられる。油脂加工食品の表面は平滑であっても凹凸があってもよい。上述した各形状においてコーナーの角に当たる部分は必要に応じて丸められた形状とすることができる。すなわち、いわゆる「Rをつけた」形状とすることもできる。この実施形態では、多面体が好ましく、六面体がより好ましい。さらに好ましくは立方体または直方体である。別の実施形態では、球形または回転楕円体、例えば、ラグビーボールのような形状が好ましい。さらに別の実施形態では、棒状(例えば、円柱状、角柱状)であり得る。角柱は、三角柱、四角柱、五角柱、六角柱などが可能である。
【0051】
油脂加工食品は、任意の大きさであり得る。例えば、長径は、約0.5cm以上、約1cm以上、約1.5cm以上、約2cm以上、約2.5cm以上、約3cm以上、約3.5cm以上、約4cm以上、約4.5cm以上、約5cm以上など、適切に設定され得る。例えば、長径は、約10cm以下、約9cm以下、約8cm以下、約7cm以下、約6cm以下、約5cm以下、約4.5cm以下、約4cm以下、約3.5cm以下、約3cm以下、約2.5cm以下、約2cm以下、約1cm以下など、適切に設定され得る。なお、本明細書中で「長径」とは、油脂加工食品においてあらゆる方向で長さを測定したときの最大の長さをいう。
【0052】
油脂加工食品は、当該分野で公知の方法に従って製造される。
【0053】
(1.2 食用粉末)
本発明で使用される食用粉末は、食用であれば任意の粉末であり得る。粉末は、通常、その個々の粒子の形状を肉眼では確認できない程度に細かいものである。食用粉末の平均粒径は、好ましくは約1.0mm以下であり、より好ましくは約700μm以下であり、さらに好ましくは約500μm以下であり、とりわけ好ましくは約400μm以下であり、一層好ましくは約300μm以下であり、なおさらに好ましくは約200μm以下であり、特に好ましくは約100μm以下であり、最も好ましくは約50μm以下である。食用粉末の平均粒径に特に下限はなく、例えば約1μm以上、約5μm以上、約10μm以上、約20μm以上、約30μm以上、約40μm以上、約45μm以上、約50μm以上などであり得る。平均粒径は、チョコレートの粒度を測定するときに簡易的に用いられるマイクロメーター(例えば、品番:MDC−25M(Mitutoyo製))や双溝グラインドメーター(例えば、品番GW 0−100(太佑機材製))、その他にレーザ回折式粒度分布測定装置(例えばSALD−200V ER(島津製作所製))などを用いて測定され得る。平均粒径は、食用粉末を、溶解して液状にしたココアバターなどの食用油脂中に適宜測定可能な濃度に懸濁させ、その液をマイクロメーターでの測定に供することにより簡易的に測定され得る。また、粒子の顕微鏡写真を撮影して得られた画像を解析することによっても粒径の測定を行うことができる。また、光散乱、動的光散乱、ふるいなどの方法によっても粒径の測定を行うことができる。
【0054】
使用する食用粉末においては、レーザ回折式粒度分布測定装置で測定して、粒径が75μm以下の粒子が約95%以上を占めることが好ましく、粒径が70μm以下の粒子が約95%以上を占めることがより好ましく、粒径が65μm以下の粒子が約95%以上を占めることがさらに好ましく、粒径が60μm以下の粒子が約95%以上を占めることが特に好ましく、粒径が55μm以下の粒子が約95%以上を占めることが最も好ましい。
【0055】
食用粉末は、必ずしも粒形(その粉末の形状)および粒度(粉末の大きさの分布)が揃っている必要は無い。
【0056】
食用粉末は、好ましくは室温以上の融点を有する。食用粉末の融点は、より好ましくは約23℃以上であり、さらに好ましくは約25℃以上であり、なおさらに好ましくは約26℃以上であり、とりわけ好ましくは約28以上であり、最も好ましくは約30℃以上である。食用粉末の融点に特に上限はないが、例えば、約80℃以下、約70℃以下、約60℃以下、約50℃以下などのものを使用できる。
【0057】
食用粉末は、1種類の粉末のみを用いてもよく、複数種類の粉末を混合して用いてもよい。
【0058】
使用され得る食用粉末の例としては、ココアパウダー、抹茶粉末、乾燥果実粉末(例えば、凍結乾燥粉末および熱風乾燥粉末)、乾燥堅果粉末、油脂加工食品粉末、乾燥野菜粉末(例えば、凍結乾燥粉末および熱風乾燥粉末)、コーヒー粉末(例えば、抽出液の凍結乾燥粉末)、チーズ粉末、ミルク粉末、糖類(例えば、粉糖、単糖類、オリゴ糖類、デキストリン、多糖類など)などを付着させてもよい。
【0059】
ココアパウダーは、カカオマス中のココアバター以外の成分であり、カカオマスを脱脂することにより得られる。ココアバターは、市販されているものを使用することができる。カカオマスは、原料のカカオ豆を選別し、焙焼し、種皮と胚乳(ニブ)とを分離し、ニブを磨砕機によってすりつぶすことによって得られるものである。
【0060】
抹茶粉末は、飲用に市販されているものを使用することができる。抹茶粉末以外の茶葉の粉末(例えば、緑茶粉末、紅茶粉末、ウーロン茶粉末など)も同様に使用し得る。
【0061】
乾燥果実粉末とは、果実を乾燥させて粉砕して得られる粉末である。乾燥果実は、例えば、乾燥イチゴ、乾燥リンゴ、乾燥マンゴー、乾燥パパイア、乾燥オレンジ、乾燥イチジク、乾燥バナナ、レーズン、乾燥ベリー類(例えば、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、クランベリーなど)の粉末である。乾燥果実粉末は、例えば、凍結乾燥粉末および熱風乾燥粉末である。
【0062】
乾燥堅果粉末とは、堅果を焙焼、乾燥等させて粉砕して得られる粉末である。例えば、アーモンド、胡桃、ピスタチオ、マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツ、カシューナッツ、栗などの粉末であり得る。乾燥堅果粉末は、例えば、焙焼粉砕粉末、凍結乾燥粉末および熱風乾燥粉末である。
【0063】
油脂加工食品粉末は、上述した油脂加工食品を粉末に加工したものである。
【0064】
乾燥野菜粉末は、野菜を乾燥して粉末に加工したものである。乾燥野菜粉末の例としては、例えば、凍結乾燥粉末および熱風乾燥粉末などが挙げられる。
【0065】
コーヒー粉末とは、コーヒー豆を粉砕して得られる粉末、またはコーヒー抽出液を乾燥して得られる固形物を粉砕して得られる粉末などである。例えば、凍結乾燥粉末などである。
【0066】
粉チーズは、チーズを粉末にしたものであり、市販されているものを使用することができる。
【0067】
ミルク粉末とは、粉乳のことであり、粉乳として市販されているものを使用することができる。本明細書中では、「ミルク粉末」および「粉乳」とは、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、クリームチーズパウダー、ホエイパウダー、濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳、はっ酵乳パウダー、練乳パウダーの単品もしくは混合品をいう。
【0068】
粉末としてはまた、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、粉末香料、粉末色素、粉末乳化剤、高甘味度甘味料、茶抽出物などを用いてもよい。
【0069】
これらの食用粉末のうち、ココアパウダー、抹茶粉末、コーヒー、粉チーズ、粉乳、粉糖、乾燥果実粉末および乾燥野菜粉末は、それら粉末のみで風味があるため、単品で油脂加工食品に好適に使用され得る。
【0070】
デキストリン、二酸化ケイ素、炭酸カルシウムは、食用粉末の色調調整および風味調整等の目的で使用され得る。
【0071】
(1.3 エタノール)
本発明においては、揮発性溶液としてエタノール水を用いる。エタノールは、常温で激しく揮発する性質を持つ液体であり、油脂加工食品に揮発性溶液を付着させた後、ほぼ完全に蒸散して油脂加工食品に残存することが無いという利点を有する。さらに、エタノールは、油脂加工食品の油脂を溶解してしまうことがなく、表面張力が小さく、油脂加工食品の表面に均一に付着するため、非常に好適に使用される。さらに、エタノールは、食品添加物として認可されており、気散時間が不十分で残存したとしても安全である。
【0072】
本発明で使用されるエタノールとしては、市販されている99%エタノールまたは95%エタノールなどの高純度のものを使用してもよく、あるいは、日本酒、ワイン、リキュールなどのエタノールを含むアルコール飲料を使用してもよい。アルコール飲料の例としては、ビール、発泡酒、日本酒、ワインなどの醸造酒、および焼酎、ウィスキー、ブランディなどの蒸留酒等が挙げられる。アルコール飲料のアルコール度数は任意でよい。
【0073】
本明細書中では、「エタノール水」とは、エタノールと水との混合物をいう。エタノール水は、エタノールと水とを含んでいれば、他の成分を含んでいてもよい。例えば、日本酒、ワイン、リキュールなどのアルコール飲料中のエタノール以外の成分、果汁、香料、低分子有機酸などを含んでいてもよい。
【0074】
本発明で使用されるエタノール水は、実質的にエタノールと水とからなることが好ましい。水およびエタノール以外の成分の量は、エタノール水の総重量を基準として、約30重量%以下であることが好ましく、約25重量%以下であることがより好ましく、約20重量%以下であることがさらに好ましく、約15重量%以下であることがなおさらに好ましく、約10重量%以下であることがいっそう好ましく、約5重量%以下であることが特に好ましく、約1重量%以下であることが最も好ましい。
【0075】
本発明で用いられるエタノール水中のエタノールの量は、約35重量%以上であることが好ましく、約38重量%以上がより好ましく、約40重量%以上が最も好ましい。本発明で用いられるエタノール水中のエタノールの量は、約70重量%以下であることが好ましく、約65重量%以下がより好ましく、約60重量%以下が最も好ましい。エタノール量が少なすぎると、粉末のダマが発生したり、アベックが発生したりする場合がある。エタノールが多すぎると、粉末の付着量が少なくなる場合がある。アベックとは、2個以上の油脂加工食品が付着したものをいう。
【0076】
(1.4 水)
本発明においては、エタノール水を調製するために水が用いられ得る。エタノールと混合するために用いられ得る水の例としては、水道水、天然水、蒸留水、イオン交換水、井戸水、ミネラルウォーターなどが挙げられる。水は、硬水であっても、中間水であっても、軟水であってもよい。
【0077】
(1.5 他の材料)
香料は、食品添加物に適合した液体で呈味を損なうことがなく、エタノールの揮発性を阻害しないものであれば何でもよい。香料の中にはエタノールを成分として多く含むものがある。そのような香料は、エタノールを添加しないもしくはエタノールを少量添加すれば、エタノール濃度40%を超えることがある。
【0078】
(2.粉末を付着させた油脂加工食品の製造方法)
本発明の製造方法は、表面に食用粉末を付着させた油脂加工食品の製造方法である。この方法は、
(a)第1付着用回転釜の中に油脂加工食品と第1付着用食用粉末とを入れて該第1付着用回転釜を回転させることにより、該油脂加工食品に該粉末を付着させる工程;および
(b)第2付着用回転釜の中に該食用粉末を付着させた該油脂加工食品を入れ、該第2付着用回転釜を回転させながらエタノール水を噴霧し、次いで該第2付着用回転釜に第2付着用食用粉末を入れて該第2付着用回転釜を回転させることにより、該エタノール水が噴霧された該油脂加工食品に該第2付着用食用粉末を付着させる工程
を包含する。
【0079】
(2.1 工程a:最初に行われる、第1付着用食用粉末を油脂加工食品に付着させる工程)
本発明の方法においては、まず、油脂加工食品の表面に第1付着用食用粉末を付着させる。第1付着用回転釜としては、当該分野で公知の任意の回転釜が使用され得る。例えば、従来飴がけなどに用いられている回転釜が使用され得る。回転釜の形状は、任意のものであり得る。例えば、球の一部を切り取ったような形状、扁平球の一部を切り取った形状、いわゆるたまねぎ型の球の一部を切り取った形状などであり得る。回転釜は、例えば、「回転ドラム」、「回転パン」などであり得、一般に回転パンと呼ばれるものであることが好ましい。回転釜は、「釜の全体を回転するのではなく、その一部である壁面または底のみを回転させて油脂加工食品を転がして押し付けることのできる装置」であってもよい。
【0080】
回転釜の油脂加工食品および第1付着用食用粉末が回転時に位置する部分の内径の直径は、好ましくは約0.50m以上であり、より好ましくは約0.80m以上であり、最も好ましくは約1m以上である。回転釜の内径の直径は、好ましくは約3m以下であり、より好ましくは約2.5m以下であり、さらに好ましくは約2m以下であり、特に好ましくは約1.7m以下であり、最も好ましくは約1.5m以下である。回転釜の内径が小さすぎると、油脂加工食品への第1付着用食用粉末の付着力が十分でない場合がある。回転釜の内径が大きすぎると、油脂加工食品が変形してしまう場合がある。
【0081】
回転釜は、材料を投入するための開口部を有する。開口部には、必要に応じて、開閉可能な蓋が設けられてもよい。開口部の大きさは、好ましくは直径約15cm以上であり、より好ましくは直径約30cm以上であり、最も好ましくは直径約40cm以上である。開口部の大きさは、好ましくは直径約150cm以下であり、より好ましくは直径約100cm以下であり、最も好ましくは直径約75cm以下である。当然のことながら、開口部の直径は、回転釜の内径の直径よりも小さい。
【0082】
回転釜の回転速度は、回転釜の大きさ(特に内径)に依存する。回転釜が小さいほど、回転速度を速くする必要がある。例えば、回転釜の内径が約1.0〜1.5mの場合、回転速度は約10rpm(回転/分)〜約60rpmであることが好ましく、約15rpm〜約50rpmであることがより好ましく、約20rpm〜約40rpmであることが特に好ましく、約25rpm〜約30rpmであることが最も好ましい。上記範囲以外の内径の場合、油脂加工食品と接触する部分の速度が上述した内径1.0〜1.5mの場合と同様になるように設定される。すなわち、内径に反比例した回転速度が設定される。
【0083】
回転釜の内表面(すなわち、油脂加工食品と接触する面)は、平滑であってもよいが、油脂加工食品が持ち上がりやすいように突起などが設けられているかあるいは凹凸があることが好ましい。当該の油脂加工食品を内表面に塗布して凹凸をつけることもできる。回転釜は、食品に使用し得る任意の材料から製造され得る。例えば、ステンレス製、銅製などであり得る。ステンレス製の場合、内表面がつるつるで油脂加工食品が滑りやすいので、油脂加工食品が持ち上がりやすいように内表面に凹凸が形成されることが好ましい。銅製の場合、内表面は平滑でない(すなわち、油脂加工食品が滑りにくい)ことが多いので、特別に加工を施さなくても好適に使用され得る場合が多い。
【0084】
本発明の第1の工程においては、第1付着用回転釜に投入される油脂加工食品と第1付着用食用粉末との重量比は、任意に設定され得る。食用粉末の量は、油脂加工食品の重量を100重量部として、好ましくは約0.1重量部以上であり、より好ましくは約0.3重量部以上であり、さらに好ましくは約0.5重量部以上であり、特に好ましくは約1重量部以上である。第1付着用食用粉末の量は、油脂加工食品の重量を100重量部として、好ましくは約10重量部以上であり、より好ましくは約7重量部以下であり、さらに好ましくは約5重量部以下であり、特に好ましくは約3重量部以下である。第1付着用食用粉末の量が多すぎると、油脂加工食品に付着せず余る量が増え、経済的でない場合がある。第1付着用食用粉末の量が少ないと、油脂加工食品に付着する量が少なすぎる場合がある。
【0085】
工程(a)は、好ましくは実質的に油脂加工食品と第1付着用食用粉末のみを用いる。
【0086】
油脂加工食品に第1付着用食用粉末を付着させる前に、油脂加工食品のみを回転釜に投入して回転させることにより、油脂加工食品の角を丸めてもよく、このような予備処理を行わずに油脂加工食品と第1付着用食用粉末とを同時に回転釜に投入してもよい。油脂加工食品および第1付着用食用粉末の投入の際には、回転釜は回転していてもよく、止まっていてもよい。回転釜は回転していることが好ましい。このようにして、油脂加工食品と第1付着用食用粉末とが混在した状態でこの回転釜を回転させる。油脂加工食品と第1付着用食用粉末とが混在した状態での回転釜の回転は、任意の時間にわたって行われ得る。回転時間は、好ましくは約1分間以上であり、より好ましくは約1.5分間以上であり、さらに好ましくは約2分間以上であり、最も好ましくは約3分間以上である。回転時間に特に上限はないが、例えば、約30分間以下、約20分間以下、約10分間以下、約5分間以下などであり得る。
【0087】
回転釜の中では、油脂加工食品は、回転釜の壁に沿ってある程度の高さまで持ち上げられ、そして落下する。落下の際には、油脂加工食品自体の重さにより、衝突面に力がかかる。そのため、油脂加工食品とともに第1付着用食用粉末が存在すると、程度の差はあれ、第1付着用食用粉末が油脂加工食品の表面にめり込む。この状態で後述する工程(b)を行うことにより強い付着力と高い粉末としての各種性能が達成される。
【0088】
油脂加工食品が落下する高さは、例えば好ましくは約30cmより高く、より好ましくは約40cmより高く、さらに好ましくは約50cmよりも高く、特に好ましくは約60cmよりも高い。油脂加工食品の約80重量%以上がこのような高さから落下することが好ましく、約90重量%以上がこのような高さから落下することが好ましく、約95重量%以上がこのような高さから落下することが好ましい。
【0089】
このときの回転釜の温度は、特に限定されないが、好ましくは、油脂加工食品中の主成分の油脂材料が融解しない温度である。回転釜の温度は、好ましくは約10℃以上であり、より好ましくは約15℃以上であり、さらに好ましくは約20℃以上である。回転釜の温度は、好ましくは約27℃以下であり、より好ましくは約26℃以下であり、さらに好ましくは約25℃以下であり、特に好ましくは約24℃以下であり、最も好ましくは約23℃以下である。回転釜の温度とは、回転釜の内側の、油脂加工食品と接する部分の温度をいう。
【0090】
このようにして、油脂加工食品と第1付着用食用粉末とを混在させた状態で回転釜を回転させることにより、油脂加工食品の表面に第1付着用食用粉末が付着する。なお、好ましくはこの工程は、エタノールを噴霧する工程の前に1回のみ行われる。ただし、工程(a)は、必要に応じて中断をしてもよい。すなわち、何回かに分けて工程(a)を行ってもよい。中断しながら行った場合には、その最初から完了するまでの全体が、1回の工程(a)を意味する。
【0091】
油脂加工食品の表面に最初に第1付着用食用粉末を付着させる工程においては、その工程において、およびそれ以前の工程において、油脂加工食品にエタノール水を噴霧しないことが重要である。エタノール水を噴霧すると、アベックなどの油脂加工食品同士の付着が生じやすくなるからである。すなわち、本発明の第1工程においては、エタノール水を噴霧せずに、油脂加工食品の表面に第1付着用食用粉末を付着させることが重要である。
【0092】
所定の時間の回転が終わった後、次の工程が行われる前に、必要に応じて回転釜から油脂加工食品と第1付着用食用粉末とが取り出され、ふるいにかけられ得る。ふるいにかけることにより、油脂加工食品の表面に付着しなかった第1付着用食用粉末および過度の第1付着用食用粉末が除去される。ふるいにかける際には、例えば、目開き4.76mmのメッシュ、目開き4.00mmのメッシュ、目開き3.56mmのメッシュ、目開き2.36mmのメッシュ、目開き2.00mmのメッシュなどが用いられ得る。ふるいにかけることにより、次の工程で付着する第1付着用食用粉末がむらなく均一に付着しやすくなる。なお、最初の工程で付着する第1付着用食用粉末の量を予め測定しておき、その量だけを回転釜に投入すれば、このようなふるう工程を行う必要はない。
【0093】
(2.2) (工程b)
第1付着用食用粉末付着工程を行ったら、その後、工程(a)の後の油脂加工食品にエタノール水を噴霧してから第2付着用食用粉末を付着させる、次の工程が行われる。
【0094】
この工程は、第2付着用回転釜の中に該食用粉末を付着させた該油脂加工食品を投入する。該第2付着用回転釜を回転させながらエタノール水を噴霧し、次いで該第2付着用回転釜に第2付着用食用粉末を入れて該第2付着用回転釜を回転させることにより、該エタノール水が噴霧された該油脂加工食品に該第2付着用食用粉末を付着させる工程である。
【0095】
第2付着用回転釜は、第1付着用回転釜と同じ回転釜であっても、異なる回転釜であってもよい。すなわち、第1付着用回転釜が第2付着用回転釜を兼ねてもよい。第1付着用回転釜と第2付着用回転釜とが同じ場合、上記投入作業は省略される。
【0096】
第2付着用食用粉末は、第1付着用食用粉末と同じ種類およびサイズの食用粉末であっても、異なる種類およびサイズの食用粉末であってもよい。同じ種類の食用粉末であることが好ましい。好ましくは、工程(b)においては実質的に油脂加工食品と第2付着用食用粉末とエタノール水のみを材料として用いる。また、工程(b)を複数回行う場合、工程(b)1回毎に第2付着用食用粉末の種類およびサイズを変えてもよく、全て同じ種類およびサイズの食用粉末を用いてもよく、任意に設定され得る。複数回の工程(b)において同じ種類およびサイズの食用粉末を用いることが好ましい。
【0097】
この工程においては、まず、第2付着用回転釜の中に、第1付着用食用粉末を付着させた油脂加工食品を入れ、該第2付着用回転釜を回転させながらエタノール水を噴霧する。第1付着用回転釜から油脂加工食品を取り出さなかった場合も、便宜的に、「第2付着用回転釜に入れる」という。
【0098】
第2付着用回転釜については、第1付着用回転釜と同じ種類のものを用い得る。第2付着用回転釜としては、当該分野で公知の任意の回転釜が使用され得る。例えば、従来飴がけなどに用いられている回転釜が使用され得る。回転釜の形状は、任意のものであり得る。例えば、球の一部を切り取ったような形状、扁平球の一部を切り取った形状、いわゆるたまねぎ型の球の一部を切り取った形状などであり得る。回転釜は、例えば、「回転ドラム」、「回転パン」などであり得、一般に回転パン、レボリングパンなどと呼ばれるものであることが好ましい。回転釜は、「釜の全体を回転するのではなく、その一部である壁面または底のみを回転させて油脂加工食品を転がして押し付けることのできる装置」であってもよい。
【0099】
第2付着用回転釜の内径の直径は、好ましくは約0.50m以上であり、より好ましくは約0.80m以上であり、最も好ましくは約1m以上である。回転釜の内径の直径は、好ましくは約3m以下であり、より好ましくは約2.5m以下であり、さらに好ましくは約2m以下であり、特に好ましくは約1.7m以下であり、最も好ましくは約1.5m以下である。回転釜の内径が小さすぎると、油脂加工食品への食用粉末の付着力が十分でない場合がある。回転釜の内径が大きすぎると、油脂加工食品が変形してしまう場合がある。
【0100】
第2付着用回転釜は、材料を投入するための開口部を有する。開口部には、必要に応じて、開閉可能な蓋が設けられてもよい。開口部の大きさは、好ましくは直径約15cm以上であり、より好ましくは直径約30cm以上であり、最も好ましくは直径約50cm以上である。開口部の大きさは、好ましくは直径約150cm以下であり、より好ましくは直径約100cm以下であり、最も好ましくは直径約75cm以下である。当然のことながら、開口部の直径は、回転釜の内径の直径よりも小さい。
【0101】
第2付着用回転釜の回転速度は、回転釜の大きさに依存する。回転釜が小さいほど、回転速度を速くする必要がある。例えば、回転釜の内径が約1.0〜1.5mの場合、回転速度は約10rpm(回転/分)〜約60rpmであることが好ましく、約15rpm〜約50rpmであることがより好ましく、約20rpm〜約40rpmであることが特に好ましく、約25rpm〜約30rpmであることが最も好ましい。上記範囲以外の内径の場合、油脂加工食品と接触する部分の速度が上述した内径1.0〜1.5mの場合と同様になるように設定される。すなわち、内径に反比例した回転速度が設定される。
【0102】
第2付着用回転釜の内表面(すなわち、油脂加工食品と接触する面)は、平滑であってもよいが、油脂加工食品が持ち上がりやすいように突起などが設けられているかあるいは凹凸があることが好ましい。当該の油脂加工食品を内表面に塗布して凹凸をつけることもできる。回転釜は、食品に使用し得る任意の材料から製造され得る。例えば、ステンレス製、銅製などであり得る。ステンレス製の場合、内表面が滑りやすいので、油脂加工食品が持ち上がりやすいように内表面に凹凸が形成されることが好ましい。銅製の場合、内表面は平滑でないことが多いので、特別に加工を施さなくても好適に使用され得る場合が多い。
【0103】
第2付着用回転釜の中では、油脂加工食品は、回転釜の壁に沿ってある程度の高さまで持ち上げられ、そして落下する。落下の際には、油脂加工食品自体の重さにより、衝突面に力がかかる。そのため、油脂加工食品とともに食用粉末が存在すると、食用粉末が油脂加工食品の表面に程度の差はあれ、めり込む。
【0104】
工程(b)において、油脂加工食品が落下する高さは、例えば好ましくは約30cmより高く、より好ましくは約40cmより高く、さらに好ましくは約50cmよりも高く、特に好ましくは約60cmよりも高い。油脂加工食品の約80重量%以上がこのような高さから落下することが好ましく、約90重量%以上がこのような高さから落下することが好ましく、約95重量%以上がこのような高さから落下することが好ましい。
【0105】
工程(b)において、第2付着用回転釜に投入されるエタノール水の量は、油脂加工食品の重量を100重量部として、好ましくは約0.1重量部以上であり、より好ましくは約0.3重量部以上であり、さらに好ましくは約0.5重量部以上であり、特に好ましくは約0.6重量部以上である。食用粉末の量は、油脂加工食品の重量を100重量部として、好ましくは約4重量部以下であり、より好ましくは約3重量部以下であり、さらに好ましくは約2重量部以下であり、特に好ましくは約1重量部以下である。エタノール水の量及び食用粉末の量は、油脂加工食品の表面積に拠っている。エタノール水の量が多すぎると、エタノールの蒸発に時間がかかりすぎる場合がある。エタノール水の量が少なすぎると、油脂加工食品に付着する食用粉末の量が少なすぎる場合がある。
【0106】
エタノール水の噴霧は、任意の手段を用いて行われ得る。例えば、スプレー、ノズル、などを用いて行われ得る。
【0107】
表面に食用粉末が付着した油脂加工食品にエタノール水を噴霧することにより、油脂加工食品の表面に付着した食用粉末同士が固着する。これは、エタノール水に含まれる水によって発揮される作用であると考えられる。この水の作用により、食用粉末同士が固着して強固な層が形成されると考えられる。
【0108】
エタノール水を噴霧したら、エタノールが完全に蒸発するまでに、油脂加工食品に付着した食用粉末にまんべんなく行き渡るように回転釜の回転を行うことが好ましい。この場合の回転時間は、好ましくは約15秒間以上であり、より好ましくは約30秒間以上であり、さらに好ましくは約45秒間以上であり、最も好ましくは約1分間以上である。回転時間に特に上限はないが、例えば、約3分間以下、約2分間以下、約1分間以下、約30秒間以下などであり得る。
【0109】
エタノール水を噴霧した後の回転釜の温度は、特に限定されないが、好ましくは、油脂加工食品中の主成分の油脂材料が融解しない温度である。回転釜の温度は、好ましくは約10℃以上であり、より好ましくは約15℃以上であり、さらに好ましくは約20℃以上である。回転釜の温度は、好ましくは約27℃以下であり、より好ましくは約26℃以下であり、さらに好ましくは約25℃以下であり、特に好ましくは約24℃以下であり、最も好ましくは約23℃以下である。回転釜の温度は、回転釜の温度とは、回転釜の内側の、油脂加工食品と接する部分の温度をいう。
【0110】
次いで、食用粉末が第2付着用回転釜に投入される。食用粉末の投入の際には、回転釜は回転していてもよく、止まっていてもよい。回転釜は回転していることが好ましい。
【0111】
本発明の2回目以降の食用粉末付着工程においては、第2付着用回転釜に投入される油脂加工食品と食用粉末との重量比は、任意に設定され得る。食用粉末の量は、油脂加工食品の重量を100重量部として、好ましくは約0.1重量部以上であり、より好ましくは約0.3重量部以上であり、さらに好ましくは約0.50重量部以上であり、特に好ましくは約0.6重量部以上である。食用粉末の量は、油脂加工食品の重量を100重量部として、好ましくは約5重量部以下であり、より好ましくは約4重量部以下であり、さらに好ましくは約3重量部以下であり、特に好ましくは約2重量部以下である。食用粉末の量が多すぎると、油脂加工食品に付着せず余る量が増え、経済的でない場合がある。食用粉末の量が多すぎると、油脂加工食品に付着する量が少なすぎる場合がある。
【0112】
このようにして、油脂加工食品と食用粉末とが混在した状態でこの回転釜を回転させる。油脂加工食品と食用粉末とが混在した状態での回転釜の回転は、任意の時間にわたって行われ得る。回転時間は、好ましくは約15秒間以上であり、より好ましくは約30秒間以上であり、さらに好ましくは約45秒間以上であり、最も好ましくは約1分間以上である。回転時間に特に上限はないが、例えば、約3分間以下、約2分間以下、約1分間以下、約30秒間以下などであり得る。
【0113】
回転釜の中では、油脂加工食品は、回転釜の壁に沿ってある程度の高さまで持ち上げられ、そして落下する。落下の際には、油脂加工食品自体の重さにより、衝突面に力がかかる。そのため、油脂加工食品とともに食用粉末が存在すると、食用粉末が油脂加工食品の表面に程度の差はあれ、めり込む。
【0114】
第2付着用回転釜に食用粉末を投入してから油脂加工食品に付着させるまでのときの回転釜の温度は、特に限定されないが、好ましくは、油脂加工食品中の主成分の油脂材料が融解しない温度である。回転釜の温度は、好ましくは約10℃以上であり、より好ましくは約15℃以上であり、さらに好ましくは約20℃以上である。回転釜の温度は、好ましくは約27℃以下であり、より好ましくは約26℃以下であり、さらに好ましくは約25℃以下であり、特に好ましくは約24℃以下であり、最も好ましくは約23℃以下である。回転釜の温度とは、回転釜の内側の、油脂加工食品と接する部分の温度をいう。
【0115】
このようにして、さらに多くの食用粉末が油脂加工食品に付着する。
【0116】
所定の時間の回転が終わった後、次の工程が行われる前に、回転釜から油脂加工食品と食用粉末とが取り出され、ふるいにかけられ得る。ふるいにかけることにより、油脂加工食品の表面に付着しなかった食用粉末および過度の食用粉末が除去される。ふるいにかける際には、例えば、目開き4.760mmのメッシュ、目開き4.00mmのメッシュ、目開き3.56mmのメッシュ、目開き2.36mmのメッシュ、目開き2.00mmのメッシュなどが用いられ得る。ふるいにかけることにより、次の工程で付着する食用粉末がむらなく均一に付着しやすくなる。なお、最初の工程で付着する食用粉末の量を予め測定しておき、その量だけを回転釜に投入すれば、このようなふるう工程を行う必要はない。
【0117】
このエタノール水の噴霧から食用粉末を付着させるまでの工程は、2回以上繰り返されえる。2回以上繰り返すことが好ましい。工程数は好ましくは2回以上であり、より好ましくは3回以上であり、最も好ましくは3回である。工程数は好ましくは10回以下であり、より好ましくは9回以下であり、さらに好ましくは8回以下であり、なおさらに好ましくは7回以下であり、特に好ましくは6回以下であり、最も好ましくは5回以下である。
【0118】
このようにして、表面に食用粉末をたっぷりと付着させた油脂加工食品が製造される。
【0119】
例えば、1つの実施形態では、本発明の方法は、まず工程(a)を行い、次に工程(b)を行って製品を得る。別の実施形態では、まず工程(a)を行い、次に工程(b)を行い、さらに一度工程(b)を行う。別の実施形態では、まず工程(a)を行い、次に工程(b)を行い、さらに工程(b)を行い、さらにもう一度工程(b)を行う。別の実施形態では、まず工程(a)を行い、次に工程(b)を行い、さらに工程(b)を行い、さらに工程(b)を行い、さらにもう一度工程(b)を行う。
【0120】
(3.食用粉末を付着させた油脂加工食品)
本発明の方法によって製造された油脂加工食品は、表面に食用粉末が大量に付着している。本発明の方法では、まずエタノール水のスプレーなしで食用粉末を油脂加工食品の表面に付着させることにより、油脂加工食品と食用粉末との強固な結合が達成される。また、食用粉末を付着させた油脂加工食品にエタノール水を噴霧することにより、食用粉末同士が強固に結合する。そして、エタノール水の噴霧から食用粉末を付着させるまでの工程を複数回繰り返すことにより、食用粉末同士が強固に結合した層が何層も形成される。食用粉末同士が強固に結合しているとはいっても、食用粉末同士は完全に融合はしておらず、食用粉末の粉末としての形態は維持されていて、粉末としての状態を充分に保持している。そのため、本明細書中では、食用粉末同士が結合して層を形成している場合であっても、外観が粉を固めたような状態を保っている限り、「粉末が結合している」という。また、粉末は溶けていない状態で油脂加工食品に付着している。従って、粉末どうしが融合してしまって、もはや粉末としての外観を示さない場合には、本発明の粉末付着油脂加工食品に含まれない。
【0121】
本発明の方法によって製造された粉末付着油脂加工食品においては、食用粉末が油脂加工食品に強固に結合しているため、ある程度の衝撃を与えても、食用粉末のはがれが実質的に生じない。
【0122】
本発明の粉末付着油脂加工食品は、好ましくは、振動ふるい(好ましくは、Retsch社製;品番 AS200 digit)のトレイ上に4メッシュ(目開き4.760mm)のメッシュを重ねて置き、そのメッシュの上に粉末付着油脂加工食品をおいて振幅度目盛50で60Hzで30秒間振動させ、その後、粉末をふるい落としたときに、粉末付着油脂加工食品に残存する食用粉末の割合が、振動をかける前の付着した食用粉末の重量を基準として、好ましくは約70重量%以上であり、より好ましくは約80重量%以上であり、最も好ましくは約85重量%以上である。
【0123】
本発明の粉末付着油脂加工食品においては、表面に付着している食用粉末の量は、表面積10cmあたり、好ましくは約70mg以上であり、より好ましくは約75mg以上であり、さらに好ましくは約80mg以上であり、なおさらに好ましくは約90mg以上であり、特に好ましくは約100mg以上である。粉末付着油脂加工食品に付着している食用粉末の量に特に上限はないが、例えば、表面積10cmあたり、約300mg以下、約250mg以下、約200mg以下、約190mg以下、約180mg以下、約170mg以下、約160mg以下などであり得る。
【0124】
本発明の方法によれば、油脂加工食品の全面にわたってほぼ均一に粉末が付着する。例えば、多面体の場合、最も付着量の多い面の付着量が最も少ない面の付着量の1.01〜2倍とすることができ、また、工程(a)および工程(b)の時間を長めに設定することにより、1.01〜1.5倍にすることができる。
【0125】
食用粉末がココアパウダーである場合、本発明の粉末付着油脂加工食品においては、表面に付着している食用粉末の量は、表面積10cmあたり、好ましくは約70mg以上であり、より好ましくは約75mg以上であり、さらに好ましくは約80mg以上であり、なおさらに好ましくは約90mg以上であり、特に好ましくは約100mg以上である。粉末付着油脂加工食品に付着している食用粉末の量に特に上限はないが、例えば、表面積10cmあたり、約300mg以下、約250mg以下、約200mg以下、約190mg以下、約180mg以下、約170mg以下、約160mg以下などであり得る。
【0126】
食用粉末が抹茶粉末である場合、本発明の粉末付着油脂加工食品においては、表面に付着している食用粉末の量は、表面積10cmあたり、好ましくは約70mg以上であり、より好ましくは約75mg以上であり、さらに好ましくは約80mg以上であり、なおさらに好ましくは約90mg以上であり、特に好ましくは約100mg以上である。粉末付着油脂加工食品に付着している食用粉末の量に特に上限はないが、例えば、表面積10cmあたり、約300mg以下、約250mg以下、約200mg以下、約190mg以下、約180mg以下、約170mg以下、約160mg以下などであり得る。
【0127】
食用粉末が乾燥いちご粉末である場合、本発明の粉末付着油脂加工食品においては、表面に付着している食用粉末の量は、表面積10cmあたり、好ましくは約75mg以上であり、より好ましくは約80mg以上であり、さらに好ましくは約90mg以上であり、なおさらに好ましくは約100mg以上であり、一層好ましくは約110mg以上であり、なおさらに一層好ましくは約120mg以上であり、特に好ましくは約130mg以上であり、とりわけ好ましくは約140mg以上であり、最も好ましくは約150mg以上である。粉末付着油脂加工食品に付着している食用粉末の量に特に上限はないが、例えば、表面積10cmあたり、約300mg以下、約250mg以下、約240mg以下、約230mg以下、約220mg以下、約210mg以下、約200mg以下などであり得る。
【実施例】
【0128】
(実施例1:パウダーがけチョコの製造)
本実施例においては、本願発明の方法および先行技術の方法で繰り返しパウダーがけを行ない、その付着量を調査した。以下に詳細を説明する。
【0129】
上面11mm×11mm、下面13mm×13mm、高さ12mmの6面体のチョコレート(チョコレート類の表示に関する公正競争規約の基準に従うチョコレート生地(組成:カカオマス18重量部、ココアバター12重量部、ココアバター代用脂10重量部、全粉乳20重量部、砂糖40重量部、レシチン0.4重量部)からなるミルクチョコレート;水分量0.5%;重量2.35g/粒、表面積8.66cm/粒)を成型し、冷却固化した。
【0130】
この6面体のチョコレート20kgを回転パン(内径68cm;奥行60cm;開口部の直径43cm;内壁の温度20℃)の中に入れ、回転速度35rpmで2分間回転させて角を丸めた後、ココアパウダー(粒径28μm;レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-200V ER(島津製作所製)で測定して、粒径75μm以下の粒子の割合 95重量%)をこの回転パンに200g投入し、チョコレートとココアパウダーとを回転パン内に混在させて回転速度27rpmで1分間回転させることにより、チョコレートにココアパウダーを付着させた。その後、回転パンから、ココアパウダーの付着したチョコレートを全て取出して、4メッシュ(目開き4.760mm)のメッシュで10秒間篩い、付着しなかった余分なココアパウダーをチョコレートから落とした(パウダーがけ1回目)。これにより得られたココアパウダーが付着したチョコレートの重量を測定した。
【0131】
次に、このココアパウダーが付着したチョコレートを再び上記と同じ回転パンの中に投入し、この回転パンを回転速度27rpmで回転させながら濃度50重量%のエタノール水をスプレーで125g噴霧し、ココアパウダーの表面を湿らせて固結させた。エタノール噴霧が終了してから30秒間回転を続けることにより、エタノール水がココアパウダーに均一に湿らせるようにした。その後、ココアパウダー(粒径28μm、;粒径75μm以下の粒子の割合95重量%)を400g投入し、回転パン内で混在させて1分間回転させココアパウダーをチョコレートに付着させた。その後、ココアパウダーの付着したチョコレートを回転パンから取出し、4メッシュ(目開き4.760mm)のメッシュで10秒間篩い、付着しなかった余分なココアパウダーを落とした(パウダーがけ2回目)。これにより得られたココアパウダーが付着したチョコレートの重量を測定した。
【0132】
エタノール水の噴霧とココアパウダーの付着とを何回も繰り返し行ない、それぞれの粉末付着工程(パウダーがけともいう)が終わる毎に上記と同じ方法でココアパウダーの付着量を測定した。
【0133】
また、比較例1として、実施例1と同じ回転パン、チョコレートおよびココアパウダーを用い、パウダーがけ1回につき、27rpmで1分間回転させることにより、ココアパウダーを付着させたチョコレートを製造した。比較例1においても、実施例1と同様に、粉末付着工程が終わる毎にココアパウダーの付着量を測定した。
【0134】
比較例2として、実施例1と同じチョコレートおよびココアパウダーを使用し、特許第3094209号の実施例1に記載の方法と同様にしてパウダーがけを行った。このパウダーがけを何回も繰り返した。比較例2においても、実施例1と同様に、粉末付着工程が終わる毎にココアパウダーの付着量を測定した。
【0135】
比較例3として、実施例1と同じチョコレートおよびココアパウダーを使用し、特開2007−20453号公報に記載の表2の配合のエタノール懸濁液で特開2007−20453号公報に記載の実施例1に記載の方法と同様にしてパウダーがけを行った。このパウダーがけを何回も繰り返した。比較例3においても、実施例1と同様に、粉末付着工程が終わる毎にココアパウダーの付着量を測定した。
【0136】
比較例4として、実施例1と同じチョコレートおよびココアパウダーを使用し、特開2002−335863号公報の0037段落と同様の条件でパウダーがけを行った。このパウダーがけを何回も繰り返した。比較例4においても、実施例1と同様に、粉末付着工程が終わる毎にココアパウダーの付着量を測定した。
【0137】
結果を以下の表1に示す。
【0138】
【表1】

従来より一般的に用いられている方法として、回転パンの中で油脂加工食品と粉末を混在させて圧着させる方法(比較例1)では、ココアパウダーの添加とパンを回転させる作業を10回繰り返しても34mg/10cmしかココアパウダーを付着させることができなかった。
【0139】
水分を結露させる方法(比較例2)では、水分の噴霧もしくは結露とココアパウダーの固着を5回繰り返しても59mg/10cmしかココアパウダーを付着させることができなかった。
【0140】
アルコールに懸濁する方法(比較例3)では、浸漬を繰り返してもココアパウダーをたっぷり付着させることはできなかった。付着したココアパウダーが浸漬時に懸濁液に戻ってしまうためと考えられる。また、ココアパウダーを懸濁させて時間をおくと溶液粘度を高くなり、たっぷりココアパウダーを付着させることができたが、高粘度の悪影響で懸濁液を切るのが難しく、溶媒の揮発時間が著しく増加し、また、軽い衝撃でもココアパウダーが油脂加工食品から部分的に剥がれ落ちてしまった。
【0141】
熱風で表面を溶解させて結合させる方法(比較例4)では、油脂加工食品が溶解している表面に1回しか粉末を付着させることができないので粉末をたっぷり付着させることはできない。また、粉末付着し冷却固化した後、再度、油脂を溶解させると粉末が油浸により変色し、好ましい見た目にならない。
【0142】
(評価例1:粉末付着力の評価)
上記実施例1と同様にパウダーがけを3回行って実施例1Aの製品を製造した。比較例1〜3と同様にして、パウダーがけをそれぞれ1回行って比較例1A〜3Aの製品を製造した。実施例1と同様の方法で行った実施例を実施例1Aと呼び、比較例1と同様の方法で行った比較例を比較例1Aと呼び、比較例2と同様の方法で行った比較例を比較例2Aと呼び、そして比較例3と同様の方法で行った比較例を比較例3Aと呼ぶ。これらの方法において製造された製品からの粉末のはがれやすさを検討した。
【0143】
振動ふるい(Retsch社製;品番 AS200 digit)のトレイ上に4メッシュ(目開き4.760mm)のメッシュを重ねて置き、最上部のメッシュにそれぞれの製品100gを置いて、振幅度目盛50で60Hzで30秒間振動を与えた。振動により、粉末を篩い落とした後のチョコレートの重量を測定した。
【0144】
結果を以下の表2に示す。
【0145】
【表2】

この結果、本発明の方法によれば、ココアパウダーがたっぷりと付着した状態でしかも強い付着力でチョコレートに付着していることが確認できた。
【0146】
(実施例2:アルコール濃度の検討)
エタノール濃度を変更して、実施例1の3回目の粉がけまでと同じ手順でココアパウダーがけ(すなわち、アルコールなし1回+2回アルコール水溶液噴霧)を行ない、ココアパウダーの付着量を測定した。ダマおよびアベックの発生についても観察を行った。エタノール30%の場合、約1%程度の製品にアベックが発生した。
【0147】
結果を以下の表3に示す。
【0148】
【表3】

この結果、エタノール濃度が30重量%以上の場合、ダマが発生しないこと、エタノール濃度が40重量%以上の場合、アベックが発生しないこと、およびエタノール濃度が低いほど粉末付着量が増加し、70重量%以下の場合に良好な粉末付着量となることがわかった。この結果、エタノール濃度は30重量%よりも高いことがよく、70重量%以下であることがよいことがわかった。
【0149】
(実施例3および4:種々の粉末を用いた粉末付着チョコの製造)
実施例3においては、チョコレートとして組成:カカオマス18重量部、ココアバター12重量部、ココアバター代用脂10重量部、全粉乳20重量部、砂糖40重量部、レシチン0.4重量部)、水分量0.5%のミルクチョコレートを用い、ココアパウダーの代わりに抹茶粉末(粒径12μm;レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-200V ER(島津製作所製)で測定して、粒径55μm以下の粒子の割合 98重量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例1の3回目の粉がけ(すなわち、アルコールなし1回+2回アルコール水溶液噴霧)までと同じ手順で粉末付着チョコレートを製造した。
【0150】
実施例4においては、チョコレートとして組成:カカオマス18重量部、ココアバター12重量部、ココアバター代用脂10重量部、全粉乳20重量部、砂糖40重量部、レシチン0.4重量部)、水分量0.5%のミルクチョコレートを用い、ココアパウダーの代わりに乾燥イチゴ粉末(粒径189μm;目開き710μmの篩いを通して重量を測定し、粒径710μm以下の粒子の割合 99重量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例1の3回目の粉がけ(すなわち、アルコールなし1回+2回アルコール水溶液噴霧)までと同じ手順で粉末付着チョコレートを製造した。
【0151】
結果を以下の表4に示す。
【0152】
【表4】

この結果、抹茶粉末および乾燥いちご粉末のいずれにおいても良好な結果が得られた。
【0153】
(比較例5:粉がけ1回目からエタノール水を噴霧する製造方法)
粉がけ1回目のときにエタノール水を噴霧すること以外は、実施例1の粉がけ1回目と同じ方法でココアパウダーを付着させたチョコレートを製造した。
【0154】
詳細には、上面11mm×11mm、下面13mm×13mm、高さ12mmの6面体のチョコレート(重量2.35g/粒、表面積8.66cm/粒)(チョコレート類の表示に関する公正競争規約の基準に従うチョコレート生地(組成:カカオマス18重量部、ココアバター12重量部、ココアバター代用脂10重量部、全粉乳20重量部、砂糖40重量部、レシチン0.4重量部)からなるミルクチョコレート;水分量0.5%;重量2.35g/粒、表面積8.66cm/粒)を成型し、冷却固化した。
【0155】
この6面体のチョコレート20kgを回転パン(内径68cm;奥行60cm;開口部の直径43cm;内壁の温度20℃)の中に入れ、回転速度35rpmで2分間回転させて角を丸めた後、この回転パンを回転速度27rpmで回転させながらまず、濃度50重量%のエタノール水をスプレーで125g噴霧し、その後ココアパウダー(粒径28μm;レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-200V ER(島津製作所製)で測定して、粒径75μm以下の粒子の割合95重量%)を400g投入し、回転パン内に混在させて1分間回転させ圧着させた。その後、回転パンから取出し、4メッシュ(目開き4.760mm)のメッシュで10秒間篩い、付着しなかった余分なココアパウダーを落とした。これにより得られたココアパウダーが付着したチョコレートの重量を測定した。
【0156】
この結果、パウダーがけ1回目で34.9mg/10cmのココアパウダーを付着させることができた。しかし、回転パンの中でチョコレート同士の結合が多く発生し、アベック(図1)が多数でき、3つの固まり(図3)の発生もあり、ひとつひとつにパウダーを付着させることができなかった。このことから、パウダー1回目は、アルコール噴霧をせずにパウダーがけを行なう必要があることがわかった。
【0157】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明により、従来よりも多量の粉末が安定的に付着し、かつ、外観等の性能に優れた油脂加工食品を得ることができる。従来、特許文献4に記載されるように、回転パンを用いる場合には粉末が剥がれやすいと考えられていたが、本発明においては、エタノール水を噴霧しない工程(a)とエタノール水を噴霧する工程(b)とを組み合わせることにより、思いがけず、多量の粉末が付着しかつその付着した製品の外観等の性能も良好になることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】図1は、比較例5において発生したアベックを示す写真である。
【図2】図2は、比較例5において発生した3つの固まりを示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に食用粉末を付着させた油脂加工食品の製造方法であって、該方法は、
(a)第1付着用回転釜の中に油脂加工食品と第1付着用食用粉末とを入れて該第1付着用回転釜を回転させることにより、該油脂加工食品に該粉末を付着させる工程;および
(b)第2付着用回転釜の中に該食用粉末を付着させた該油脂加工食品を入れ、該第2付着用回転釜を回転させながらエタノール水を噴霧し、次いで該第2付着用回転釜に第2付着用食用粉末を入れて該第2付着用回転釜を回転させることにより、該エタノール水が噴霧された該油脂加工食品に該第2付着用食用粉末を付着させる工程
を包含し、ここで、
工程(a)の間およびそれ以前には液体の噴霧は行われず;
工程(a)は工程(b)の前に1回のみ行われ;
該エタノール水中のエタノールの濃度が、エタノール水の総重量を基準として、35重量%以上70重量%以下である、方法。
【請求項2】
前記エタノール水中のエタノールの濃度が、40重量%以上60重量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(b)が2〜5回行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1付着用食用粉末および前記第2付着用食用粉末において、それぞれ、粒径が75μm以下の粒子が95重量%以上を占める、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1付着用食用粉末および前記第2付着用食用粉末が、それぞれ、ココアパウダー、抹茶粉末、乾燥果実粉末、乾燥堅果粉末、油脂加工食品粉末、チーズ粉末、コーヒー粉末およびミルク粉末からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記油脂加工食品が、ココアバターまたはココアバター代用脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記油脂加工食品の水分量が3重量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(a)および前記工程(b)が前記油脂加工食品中の油脂性材料の融点より低い温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記油脂加工食品中の油脂性材料の融点が25℃より高く、かつ前記工程(a)および前記工程(b)が25℃以下の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1付着用回転釜および前記第2付着用回転釜の内径の直径が、0.50m〜1.5mであり、前記第1付着用回転釜および前記第2付着用回転釜の回転速度が15回転/分〜50回転/分であり、そして前記油脂加工食品の重さが1g〜10gである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1付着用回転釜および前記第2付着用回転釜の開口部の大きさが、直径30cm〜100cmである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
表面積10cmあたり食用粉末を70mg以上付着させた粉末付着油脂加工食品であって、該油脂加工食品を振動篩い上にセットして30秒間振動を与えても残存する食用粉末の残存割合が、80重量%以上である、粉末付着油脂加工食品。
【請求項13】
表面積10cmあたりの食用粉末の量が100mg以上である、請求項12に記載の粉末付着油脂加工食品。
【請求項14】
前記食用粉末において、粒径が75μm以下の粒子が95%以上を占める、請求項12に記載の粉末付着油脂加工食品。
【請求項15】
前記食用粉末が、ココアパウダー、抹茶粉末、乾燥果実粉末、乾燥堅果粉末、油脂加工食品粉末、チーズ粉末、コーヒー粉末およびミルク粉末からなる群より選択される、請求項12に記載の粉末付着油脂加工食品。
【請求項16】
前記油脂加工食品が、ココアバターまたはココアバター代用脂を含む、請求項12に記載の粉末付着油脂加工食品。
【請求項17】
前記油脂加工食品の水分量が3重量%以下である、請求項12に記載の粉末付着油脂加工食品。

【図1】
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【図2】
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