食道及び他の体内管腔を再構築する方法と装置
【課題】患者の体内通路を修正すべく患者に治療を施すための方法とシステムを提供する。
【解決手段】(i)患者内部の体内通路において、同通路の管腔直径を縮小することで、同管腔内の少なくとも1つの方向の流量が減少すれば、患者の病状が少なくとも部分的に緩和されることになるであろう或る病状を呈している体内通路を特定する段階と、(ii)患者の病状にとって効果的な治療となることが期待できる、通路直径の縮小の程度を判定する段階と、(iii)体内通路を画定している壁の内側部分から、治癒反応を発現させるに十分な組織を除去する段階、を含んでいる。
【解決手段】(i)患者内部の体内通路において、同通路の管腔直径を縮小することで、同管腔内の少なくとも1つの方向の流量が減少すれば、患者の病状が少なくとも部分的に緩和されることになるであろう或る病状を呈している体内通路を特定する段階と、(ii)患者の病状にとって効果的な治療となることが期待できる、通路直径の縮小の程度を判定する段階と、(iii)体内通路を画定している壁の内側部分から、治癒反応を発現させるに十分な組織を除去する段階、を含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年5月3日出願の米国仮特許出願第60/797,346号の恩典を主張し、同出願の内容全体を参考文献としてここに援用する。
本発明は、概括的には医学の分野に関し、特定の態様においては食道又は他の体内管腔を再構築するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
胃食道逆流疾患(GERD)は、胃の内容物が食道内に漏れ戻る、即ち逆流するという異常を起こしてしまう、下又は下部食道括約筋(LES)の機能不全と説明されている。逆流した胃酸が食道の内層に触れると、胸又は喉に、胸やけと呼ばれる焼け付くような感覚が起こる。米国人の実に10パーセントもが日常的に胸やけの症状を実感しており、少なくとも月に一度は症候が見られる人は44パーセントに上る、と報告されている。たまに胸やけがするというのはありふれたことで、必ずしも、その人がGERDを患っているということを意味しているわけではないが、慢性的な胸やけはGERDの表れであり、健康上更に重篤な問題を引き起こしかねない。
【0003】
GERDの合併症である食道炎は、再発性の慢性症状になる恐れがある。GERDの他の合併症には、狭窄、潰瘍形成、及びバレット食道(遠位側の潰瘍形成により侵食された扁平粘膜が、進行的に化生腸管上皮に置き換えられていく状態)が含まれる。GERDの治療法には、薬物療法及び/又は外科処置が含まれる。
【0004】
病的肥満(臨床学的には重度肥満)は、個人の体重が、本人の健康と快適な生活に重大な一次的又は切迫した二次的影響を及ぼす状態と説明されている。不運なことに、病的肥満は早期死亡に至る場合が多い。男性336,442名、女性419,060名を12年間に亘り追跡調査した結果、死亡率は、平均体重を50%上回っている男性では約2倍に上昇し、一方、同じ群の糖尿病患者では死亡率は5倍に、また消化管疾患を有する者では4倍に、それぞれ上昇することが判明した。同様の群の女性については、全体の死亡率は同様に2倍に上昇し、一方、糖尿病患者では死亡率は8倍に、また、消化管疾患を有するものでは3倍に、それぞれ上昇した。
【0005】
母集団の平均体重と非インスリン依存型糖尿病患者の有病率との関連も、繰り返し観察した。報告によると、糖尿病を発症するリスクは、低度肥満の人で約2倍、中度肥満の人で5倍、重度肥満の人で10倍に上昇することが示されている。糖尿病発症については、肥満の期間が重大なリスク決定因子であることも知られている。更に、研究によると、重度肥満の女性でがん死亡率が上昇することが示されており、例えば、子宮内膜(5.4倍)、胆嚢(3.6倍)、子宮頸部(2.4倍)、卵巣(1.6倍)、乳房(1.5倍)となっている。更に、研究によると、重度肥満の男性でがん死亡率が上昇することが示されており、例えば、結腸直腸(1.7倍)、前立腺(1.3倍)となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/797,346号
【特許文献2】国際特許出願「組織の内視鏡的治療のためのシステムと方法」(WO2005112797)
【特許文献3】2006年3月31日出願の米国仮特許出願「組織の内視鏡的治療のためのシステムと方法」
【特許文献4】米国特許第6,007,551号
【特許文献5】米国特許第6,730,101号
【特許文献6】米国特許第6,974,466号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
GERD、肥満、及び他の病状の治療に有用な、改良された及び/又は代わりの方法と装置が依然として必要とされている。本発明は、上記の必要性の解決に取り組んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様では、患者を治療するための方法が提供されており、同方法は、治癒すると再構築される結果となる選択的組織除去を含む処置によって、患者の体内管腔又は通路を再構築する段階を含んでいる。特定の各実施形態では、本発明は、体内通路を画定している壁から組織を除去し、治癒過程を引き起こし、その治癒過程で当該通路が再構築される、という管腔内粘膜形成術(ELM)を含んでいる方法と、そのために設計されたシステムと、を提供している。切除される組織は、非病変組織である場合もある。或る特定の発明的処置では、それら方法は、例えば、胃食道逆流疾患(GERD)を患っている患者の治療において、食道を、胃の内容物の逆流に対する抵抗が増した新しい状態に修正するのに使用することができる。他の発明的各処置では、それら方法は、例えば、肥満の治療において、肥満手術で、胃を修正し、患者の食習慣の変化に寄与するために使用することができる。或る特定の形態では、発明的方法は、体内通路を狭めることにつながる。その様な方法は、(i)患者内部の体内通路において、同通路の管腔直径を縮小することで、同管腔内の少なくとも1つの方向の流量が減少すれば、患者の病状が少なくとも部分的に緩和されることになるであろう或る病状を呈している体内通路を特定する段階と、(ii)患者の病状にとって効果的な治療となることが期待できる、通路直径の縮小の程度を判定する段階と、(iii)体内通路を画定している壁の内側部分から、治癒反応を発現させるに十分な組織を除去する段階、を含んでいる。組織が確実に治癒すれば、体内通路内で組織の収縮が生じて、その管腔直径が小さくなる。多くの代表的な治療計画では、患者は、その後、術後査定を受け、体内通路縮小が病状の少なくとも部分的緩和に効果があったか否かが判定される。
【0009】
1つの実施形態では、本発明は、患者を治療するための方法を提供しており、同方法は、体内通路が再構築される結果となる治癒反応を引き出すことを目的として、患者の体内通路の管腔表面から組織を切除する段階を含んでいる。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、体内管腔を再構築するためのシステムを提供している。同システムは、体内管腔と同体内管腔内に位置する少なくとも1つの既知の寸法の基準の画像を生成することができるように構成された内視鏡と、画像内の基準と体内管腔との比較に基づき体内管腔の寸法を計算するためのソフトウェアを備えている。システムは、体内管腔から組織を除去するための管腔内外科装置を含んでいる。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、内視鏡結紮器筒と、結紮筒上に預けられた1つ又は複数の結紮帯と、前記1つ又は複数の結紮帯と協働する1本の牽引糸であって、前記1つ又は複数の結紮帯を前記結紮筒から配備させる働きをすることができる、1本の牽引糸と、を備えている医療装置を提供している。装置は、内視鏡も含んでおり、この内視鏡上に筒が受け入れられる。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、近位端と斜端加工を施した遠位端とを有する内視鏡結紮器筒と、結紮筒上に預けられた1つ又は複数の結紮帯であって、前記斜端加工を施した遠位端から展開配備することができる、1つ又は複数の結紮帯と、を備えている医療装置を提供している。同装置は、更に、内視鏡を含んでおり、この内視鏡上に筒が預けられる。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、体内通路を狭めるための方法を提供しており、同方法は、(a)患者内部の体内通路において、同通路の公称管腔直径を効果的に縮小することで、同管腔内の少なくとも1つの方向の流量が減少すれば、患者の病状が少なくとも部分的に緩和されることになるであろう或る既知の病状を呈している体内通路を特定する段階と、(b)前記患者の病状にとって効果的な治療となることが期待できる、前記通路の直径の縮小の程度を判定する段階と、(c)医療装置を使用し、前記体内通路の管腔表面の一部に、前記体内通路内で組織の収縮を引き起こす治癒反応を発現させるに足る外傷を付け、この収縮によって、前記体内通路の筋層に傷害を負わすこと無しに、その公称管腔直径を小さくする段階と、(d)術後に前記患者を査定し、前記体内通路縮小が前記病状の少なくとも部分的な緩和に効果があったか否かを判定する段階を含んでいる。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、患者を治療するための方法を提供しており、同方法は、非病変組織を除去することを含む内視鏡的処置で、患者の胃食道接合部を再構築する段階を含んでおり、前記再構築は、患者の胃食道逆流の軽減に効果を発揮する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、患者を治療するための方法を提供しており、同方法は、非病変組織を除去することを含む内視鏡的処置で、患者の胃を再構築する段階を含んでおり、前記再構築では、胃に狭い部分が作成され、患者の満腹感が修正される。
【0016】
他の実施形態では、本発明は、患者を治療するための方法を提供しており、同方法は、(i)胃の内容物の食道内への逆流を軽減するために患者の食道を修正することを目的として、又は(ii)肥満を治療するために、患者の噴門を修正することを目的として、内視鏡のチャネルを通して操作を行い、患者の組織を除去する段階を含んでいる。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、患者を治療するための方法を提供しており、同方法は、患者の治療には胃食道逆流又は肥満を軽減することが必要であるという特定された必要性に対し、患者の食道及び/又は噴門の組織を除去することを含む内視鏡的処置を実施することによって応える段階を含んでいる。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、患者を治療するための方法を提供しており、同方法は、(a)患者を、GERDを患っていると診断する段階と、(b)前記診断に基づき、患者の胃食道接合部の形状を修正することを目的として、患者の組織を除去することを含む内視鏡的処置を実施する段階と、を含んでいる。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、患者を治療するための方法を提供しており、同方法は、(a)患者を、肥満の治療が必要であると診断する段階と、(b)前記診断に基づき、患者の噴門の形状を修正することを目的として、患者の組織を除去することを含む内視鏡的処置を実施する段階と、を含んでいる。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、体内通路を狭めるための方法を提供しており、同方法は、(a)その管腔直径を小さくするために修正を加える対象に選択された前記体内通路の一部を内視鏡的に視覚化する段階と、(b)管腔直径を小さくするのに要求される縮小度を判定する段階と、(c)体内通路の管腔表面に位置する第1治療部位を特定する段階と、(d)第1治療部位の第1組織部分を捕縛する段階と、(e)捕縛された第1組織部分の周りに組織固定要素を設置する段階と、(f)捕縛された第1組織部分を摘出する段階と、(g)前記第1部位に円周方向に隣接して位置する第2治療部位を特定する段階と、(h)第2治療部位の第2組織部分を捕縛する段階と、(i)捕縛された第2組織部分の周りに組織固定要素を設置する段階と、(j)捕縛された第2組織部分を摘出する段階と、を含んでいる。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、中を流れる物質の規制に関して少なくとも部分的に機能障害を有する体内通路を狭めるための方法を提供しており、同方法は、(a)前記体内通路の或る長さに沿って伸長する第1治療帯域を選択する段階であって、前記体内通路の内側表面の周りに円周方向に伸長している、第1治療帯域を選択する段階と、(b)治療帯域内の体内通路の公称直径を確定する段階と、(c)機能障害を有する状態が少なくとも部分的に補正されるように、体内通路を前記第1公称直径より小さい所望の第2公称直径まで小さくするのに有効な組織切除量を計算する段階と、(d)画像化装置を使用して治療帯域を視覚化する段階と、(e)前記第1治療帯域内の筋層から、粘膜と粘膜下組織である第1部分を分離する段階と、(f)医療装置を使用して、前記筋層上方の粘膜と粘膜下組織である第1部分を切除する段階と、(g)切除された第1組織部分に隣接する前記体内通路を、前記第1部分から間隔を開けて位置する第2組織部分まで円周方向に動かす段階と、(h)前記第2組織部分を切除し、前記切除された第1組織部分と前記切除された第2組織部分の間に、未治療の組織領域を残す段階と、を含んでいる。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、体内通路を狭めるための方法を提供しており、同方法は、治癒過程中に管腔組織の全体的な縮小が起こり、これにより体内通路の公称管腔直径が小さくなるように、切除領域を管腔組織の治癒を促進させる形状に作成するため、体内通路の管腔組織を摘出する段階を含んでいる。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、患者の体内通路を修正するために患者に治療を施す方法を提供しており、同方法は、体内通路が再構築される結果となるであろう治癒反応を引き出すことを目的として、通路の下層の筋肉組織を実質的に傷付けること無しに、体内通路の管腔表面から組織を除去する段階を含んでいる。
【0024】
又別の実施形態では、本発明は、ここで説明しているように食道又は胃の様な体内通路を再構築するための各キットを提供しており、同キットは、体内通路の管腔から組織を切除し又は別のやり方で除去するための、ここで説明している手段又は装置と、例えば、ここで説明しているGERD又は肥満の治療において体内通路を再構築するための同手段又は装置の使用法に関する資料と、を含んでいる。
【0025】
本発明の更なる各実施形態並びに特性と利点は、ここに記載の説明を更に読んで頂ければ明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1Aは、胃の断面の概略図である。 図1Bは、胃と食道の壁の断面図である。
【図2】発明的処置の或る段階を示している図である。
【図3】発明的処置の別の段階を示している図である。
【図4】発明的処置の別の段階を示している図である。
【図5】発明的処置の別の段階を示している図である。
【図6】治癒反応を示している体内管腔壁の断面図である。
【図7】治癒反応を示している体内管腔壁の断面図である。
【図8】胃と食道の接合部の断面図である。
【図9】処置の或る段階を示している、図8の9−9線に沿って切断した胃食道接合部を矢印方向から見た断面図である。
【図10】肥満治療法の或る段階を示している断面図である。
【図11】肥満治療法の或る段階を示している断面図である。
【図12】内視鏡の端部に装着された、例示的な斜端加工された結紮用筒の部分断面図である。
【図13】実施例1に記載の実証研究の結果を描いたグラフである。
【図14】実施例1に記載の実証研究の結果を描いたグラフである。
【図15】実施例1に記載の実証研究の結果を描いたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の原理の理解を促すために、これより図に示している各実施形態を参照してゆくが、説明に際して特定の言語を使用する。しかしながら、これによって本発明の範囲を限定する意図はないことを理解頂きたく、図示している装置に対するその様な変更や更なる修正、及びここに示す開示の原理のその様な他の応用は、本発明が関連する分野の当業者であれば普通に想起されるものと考えている。
【0028】
上で開示したように、本発明の態様は、食道又は胃の管腔の様な体内管腔を再構築するための方法とシステムに関する。この再構築は、例えば、体内管腔内の物質の流量を修正するのに効果を発揮する。その様な再構築には、体内管腔の静止時直径を減少させること、体内管腔壁内に襞又は凸凹面を作成すること、及び/又は体内管腔壁の内周囲の輪郭を修正することが関与する。上記の修正及び管腔内の物質の流量に影響を与え得る他の各修正は、本発明の一部であると考えている。
【0029】
上で指摘したように、特定の発明的各態様では、患者の食道の或る領域、特に、胃食道接合部又はその付近の領域、を再構築するための方法とシステムが提供されている。潜在的には、GERDと診断されている患者の治療において、例えば、結果的に胃食道逆流を軽減させるために、その様な処置が行われる。これに加え又は代えて、逆流を軽減するための各処置には、非食道組織、例えば、食道の終点の真下に存在する噴門、の治療と再構築も関与する場合がある。
【0030】
通常、人が胸やけを訴えている場合は、GERDと診断されるか少なくともGERDが疑われる。胸やけは、しばしば、食事の後に起こる胸骨下(胸の中央の下層)の焼けつくような感覚と表現されることが多い。GERDが疑われると、多くの場合、治療担当医は、胃による酸の生成を抑制する薬物治療で患者を治療する療法を(少なくとも最初は)試行的に実施するであろう。次に、症状の治療に対する反応を見て、診断が確定される。例えば、薬物療法によって、胸やけが大幅に軽減されたら、GERDの診断は概ね確定されたと見なすことができる。GERDは、例えば、限定するわけではないが、内視鏡的処置及び食道酸検査を含む診断的検査又は他の検査を採用した他の適切な数々のやり方で診断することができる。多くの場合、GERDに関係付けられる異常な逆流は、患者の胃食道接合部が膨張しているか又は過大である(例えば、大きすぎると考えられる直径を有している)ことに起因する。発明的各変型例では、その様な過大胃食道接合部は、その直径を小さくし、それにより食道への胃の逆流量を減らすために、再構築の処置が施される。
【0031】
本発明の追加的実施形態では、例えば、肥満手術で、可能性としては肥満の治療において、患者の胃の管腔を修正するための方法とシステムが提供されている。その様な処置は、例えば、病的肥満であると診断された患者を治療するために行われる。通常、人の体重が、本人の健康と快適な生活に重大な一次的又は切迫した二次的影響を及ぼす場合に、病的肥満と診断される。上記状態に対する通例的な診断上の閾値は、例えば、標準的な身長対体重チャートによって求められた理想的な体重と考えられている体重を100ポンド超過していることである。肥満によって悪化する二次的な健康上の問題の例には、体重を支えている関節の関節炎症状、成人発症の糖尿病、睡眠時無呼吸/重度のいびき、皮膚の皺に関係した衛生上の問題、鬱及び自発性の低下がある。本発明の1つの態様よれば、病的肥満である患者、又は食習慣の修正が有益であると考えられる他の患者、の胃管腔内に、狭窄部又は他の狭い部分又は再構築した部分が作成される。狭窄部分又は他の再構築部分は、食べ物の胃管腔の通過を修正し、患者の食習慣の修正をやり易くする。加えて、当該処置の全て又は一部として、胃底から組織が除去されるので、胃が再構築され(例えば、大きさが小さくなり)、可能性としては、空腹に関係したホルモンや他の信号を分泌するグレリン分泌上皮細胞の様な細胞が除去される結果となる。グレリンは、空腹を表すホルモン信号であることが解明されており、グレリン又は他の空腹信号を分泌する細胞の削減又は除去を、例えば、肥満を治療するための、ここで開示した発明の各実施形態に使用してもよい。
【0032】
ここで開示している発明的再構築方法には、管腔内粘膜形成術の処置を使用することができる。因みに、ここで使用する「管腔内粘膜形成術」とは、治療下の体内管腔を覆っている粘膜組織に変化をもたらす管腔内的に行われる処置を指す。この変化は、例えば、通路の現在そこにある粘膜表面の直径の変化、襞又は畝の有無の変化などである。
【0033】
ここで説明している発明的再構築方法の中には、体内管腔壁から或る量の組織を切除すること及び/又は治療部位の組織を傷害性刺激に曝して、結果的に、組織内の細胞死と確実な組織治癒反応を得ること、を含んでいる方法もある。本発明の幾つかの形態では、除去される組織には、(所望の再構築以外に)除去を必要とする代わり適応症は見られない非病変組織が少なくとも幾らか含まれることになっており、特定の各例では、除去される全組織が、それ以外に除去すべき適応症が見当たらない正常な非病変組織ということになっている。
【0034】
好都合な発明的実施形態では、除去される組織は、基本的には、通路壁の認識可能な筋層の管腔側に存在している組織に限定されることになる。食道と胃の様な体内通路の管腔壁は、一般に、粘膜層と下層の粘膜下結合組織層を含んでおり、普通はその下に筋層が続いている。本発明の態様では、下層の筋層を実質的に傷付けること無しに、或る位置で、各量の粘膜及び/又は粘膜下組織が除去される。因みに、粘膜下組織層の結合組織は、しばしば或る量の筋肉組織と交互に配置されており、排他的にというわけではないが、特に、組織学的に特定可能な粘膜下組織層から下層の筋層に移行している領域にその様な配置の見られることが知られている。而して、下層の筋層には実質的な傷は一切付けていないが、除去組織中に幾らかの筋肉組織が混ざっている場合もあると理解されたい。
【0035】
本発明の幾つかの形態では、下層の筋層を露出させるには、粘膜組織と粘膜下組織の両方を除去すれば十分である。筋層を深刻な傷から護るために、或る量の粘膜組織と粘膜下組織が、下層の筋層から、例えば、室の中への選択的吸引を使用するか又はピンセットの様な物理的把持用装置を使用して引き離され、その後、引き出された組織は切除されるか別のやり方で除去される。例示的には、本明細書の別の箇所で論じているように、内視鏡機材と技法、例えば、限定するわけではないが、不健康な組織を除去する内視鏡的粘膜切除(EMR)処置に従来使用されているものなど、を使用してこの種の組織除去を行うことができる。他の内視鏡的及び非内視鏡的装置と技法も同様に使用することができる。内視鏡的処置及び非内視鏡的処置共に、組織除去に先立ち粘膜組織と粘膜下組織を下層の筋層から切り離すために、流体(例えば、生理食塩水)注入を随意的に使用してもよい。上記及び/又は他の装置、技法、又は材料を、本発明の特定の処置に使用して、例えば、目標組織の除去の際に残りの組織を保護し又は隔離するために、或る量の目標除去組織を残存させるべき組織から分離又は隔離することもできる。そのような選択的組織除去と保護は、不本意にも組織が傷付く危険性及びそれに伴う合併症発症の恐れを低減しながら、同時に、結果的に所望の形状修正を得るための更に制御された外傷パターンを得易くする。
【0036】
本発明の医療処置には、所望の管腔の再構築を実現するのに有用と考えられる、体内管腔壁の少なくとも1つの部位において、より典型的には複数の部位において、或る量の組織を除去することが関与することになる。例えば、或る量の組織が2か所乃至10か所の部位から、又は特定の治療では2か所乃至8か所の部位から除去される。それら各部位は互いに別々であって、即ち、各部位の間には或る量の患者組織が手を入れられないそのままの状態で残されることになってもよいし、又は、各部位が互いに重なり合って、除去組織のより広い連続した領域を作っていてもよい。複数の目標除去部位が採用された場合、それら部位の少なくとも幾つかは、そしてしばしばその全部が、互いに対して円周方向に位置していることになるであろうが、長手方向に互いに間隔を開けて配置された部位を採用してもよい。組織除去部位は、引き続き組織の治癒過程が起きた時に、体内管腔が所望通りに再構築される結果となるように選択される。その様な組織の治癒では、治癒領域の体内管腔が収縮する結果となり、所望の再構築につながる。特定の所望の治療では、組織除去部位又は各部位は、管腔の直径が治療前の直径に比べ減少する結果となる。因みに、直径の減少は適切であればどの様な程度の減少も患者の治療に使用することができ、例えば、直径の減少は少なくとも約10パーセント、多くの場合、少なくとも約10パーセント乃至最大約50パーセント、又は少なくとも約25パーセント乃至最大約50パーセントである。或る場合は、約30パーセントから約35パーセントの範囲の直径減少率が、患者の治療で実現されることになる。
【0037】
本発明の医療処置は、或る量の組織の除去に先立ち、治療される体内通路の特徴、例えば、限定するわけではないが、大きさ、形状、管腔直径、及び/又は組織と細胞の構成などを、慎重に査定した上で行われることが望ましい。このやり方では、組織除去の量とパターンは、直径及び/又は他の再構築特徴の、所望され予想される縮小状態に相関付けられる。この査定は、様々な様式で実施することができ、所望の管腔の再構築を提供するのに有用であると判明している幾つもの適した装置と技法が関与してもよい。例えば、発明的装置の中には、1つ又はそれ以上の管腔壁寸法を直接的又は間接的に測定することができる機器を含んでいる装置もある。好適な態様では、ここで説明している発明的処置を行うように特別に適合させたシステムは、体内管腔の直径を測定する能力と、体内管腔の組織除去を実施し、最終的に所望の直径縮小及び/又は他の再構築を実現するための能力の両方を有する総合的な装置を含んでいる。上記目的のために、映像内視鏡システムは、体内管腔と少なくとも1つの既知の寸法のスケーリング基準との目に見える画像を作成するための画像化手段と、スケーリング基準の参照に基づき体内管腔の直径を計算するための手段と、体内管腔壁から或る量の組織を除去するための装置と、を含んでいる。これにより、体内管腔が視認され、関心位置の管腔直径が測定されると、次に、装置を使用し、或る量の組織が所望のパターンで除去され、管腔の有益な再構築が実現される。なお、その様な画像化手段は、他の点、例えば、発明的処置中に外科医が特定の解剖学的マーカー又は他の案内用ラインを視認できるようにするという点でも有用であり、これは組織除去を確実に所望の場所に起こすのに役立つことに注目頂きたい。
【0038】
体内管腔直径は、様々な様式で計算することができ、幾つかの実施形態では、管腔内手術システムに内蔵されているソフトウェアを使用して行われる。例示的には、発明的各システムは、体内通路の長さに沿った或る位置の管腔直径を、例えば、画像化手段に表示されたベクトルに基づく測定値の様な、ソフトウェアに基づく測定値を、既知の直径の基準項目(例えば、解剖学的特徴、又は内視鏡の結紮筒又は別の視認できる部分の様な機械的物品)と比較することによって、間接的に測定することができるソフトウェアを内蔵していてもよい。次に、この測定値を使用し、限定するわけではないが、所望の管腔直径縮小の様な所望の成果を実現するのに有効な組織除去量とパターンが求められる。
【0039】
再構築処置は、体内管腔壁の長さに沿った1つ又は複数の所望の位置で、同壁の内側表面の周囲の相当な割合分から組織を除去することを含んでいる。例えば、所望の長手方向位置のその様な周囲約30%乃至100%の組織除去を採用してもよく、因みに、体内管腔壁に沿って長手方向の2か所以上の位置の周囲から組織を除去することが関与する発明的処置では、それぞれの長手方向位置で、体内管腔壁周囲のどの様な適した割合分を除去してもよいものと理解頂きたい。例えば、第1領域(例えば、下部食道括約筋上方)と第2領域(例えば、下部食道括約筋下方)の周囲から組織を除去することが関与する発明的処置では、第1領域(当該領域の周囲という意味)から除去される組織の割合は、第2領域の周囲から除去される組織の割合と同じであっても異なっていてもよい。例示的には、幾つかの形態では、それら領域のそれぞれの周囲からほぼ同じ割合の組織が除去されるが、通常、第2領域の周囲は第1領域の周囲よりも大きいことから、実際には第2領域の周囲からはより多くの組織(周囲長という意味)が除去される。他の形態では、第2領域の周囲から除去される組織の割合は、第1領域の周囲から除去される実際の組織除去量より約10%乃至約200%多いこともあるが、本発明の範囲内で他の割合差も考えられる。なお、体内管腔壁の内側表面の周囲から除去される組織の割合を測定する場合、その様な測定は、実際には、例えば、体内管腔壁内側表面の襞、畝、隆起、又は他の表面の凸凹を勘定に入れた平均又は公称周囲長に基づくものと理解頂きたい。
【0040】
胃の内容物の食道への逆流を軽減するための胃食道接合部の再構築において、特定の発明的処置には、通常、接合部の及び/又はその周辺の1つ又は複数の位置で管腔壁の周囲約30%乃至約70%の組織を除去することが関与する。例示的には、組織は、所望の成果、例えば、接合部の直径の縮小及び/又は接合部の延長を実現させるため、接合部及び/又はその付近、即ち接合部の真上及び/又は接合部の真下から直接除去される。例えば、患者の食習慣を修正するため、胃に狭窄を作成する場合、胃、特に胃噴門の1つ又は複数の領域の周囲約60%乃至約100%を組織除去の対象とするのが一般的である。
【0041】
組織除去には、更に、長手方向に広く削ぎ取ることが関与する。例えば、各組織除去領域の長手方向寸法は、通常、少なくとも約0.25センチメートル、より一般的には約0.5センチメートル乃至約3センチメートルの範囲になる。但し、他の長手方向組織除去長さも、本発明の広範な態様内で使用することができるものと理解頂きたい。
【0042】
好都合にも、本発明の実施形態により実現される体内管腔の再構築は、大部分が又は完全に可逆的であり、例えば、治療を受けた領域は、それが部分的又は完全に治癒した後、伸延することで元に戻すことができる。全面的又は部分的な逆行は、数々の理由から望ましいこともあり、例えば、患者が嚥下に支障を来しているか、又は治療前の食習慣を取り戻したいと望んでいる場合がそうである。幾つかの形態では、胃食道接合部の直径が、治療を終え治癒した後に小さすぎると判断された場合、その直径を伸延して、修正され拡張された直径にすることができる。体内管腔区間の伸延は、どの様な適したやり方で行ってもよく、例えば、バルーン又は他の拡張可能な装置を使用して行ってもよい。その様な拡張された直径は、治療前の直径であってもよいし、又は治療前の直径と初期治癒時直径の間の直径であってもよい。同様の原理は、胃に狭窄を作成する場合にも当てはまる。
【0043】
また、初期の組織除去及び治癒段階後の体内管腔の直径又は他の再構築が、結果的に管腔内を流れる物質の所望の修正された流量には不十分な程度であった場合、追加量の組織を除去するために同様に実施されるフォローアップ処置を施し、結果的に更なる再構築が行われるようにしてもよい。
【0044】
本発明による組織除去を実現するのに、様々な装置と技法を使用することができる。適したその様な装置なら、組織、特に基本的には粘膜及び粘膜下組織、を切除し又は別のやり方で除去するのに効果を発揮することができる。幾つかの実施形態では、本発明の組織除去装置は、適した直接又は間接(例えば、画像式)視覚化手段を装備した(又は別のやり方で一緒に使用することができる)管状の外科用アクセス装置を備えている。本発明の広範な態様に必要なわけではないが、内視鏡装置と技法は、内視鏡的粘膜切除技法に従来使用されているものを含め、幾つかの発明的実施形態に有用である。それらには、事前に生理食塩水又は他の流体を注入して、除去すべき組織を下層の筋層から持ち上げることが関与する非結紮式組織捕縛/切除技法と、結紮式組織捕縛/切除技法の両方、並びにそれらに関係付けられた器具類が含まれる。結紮技法では、結紮筒が内視鏡の端に取り付けられる。吸引を使い、粘膜及び粘膜下組織を結紮筒の中に引き込み、その後結紮帯を展開配備して、結果的に結紮された組織の塊を得る。次に、外科用電気スネア又は他の類似装置を使い、結紮された組織を切除する。内視鏡装置は、内視鏡の作業チャネルに挿通させて受け入れることができて、結紮組織の塊の切除に効果を発揮する外科用電気スネアを含んでいるのが望ましいが、内視鏡に別々に及び/又は内視鏡の外部に挿通されるスネアを採用することもできる。本発明の方法に使用することができる1つの適した複式帯結紮装置に、米国ノースカロライナ州ウインストン・セーラムのWilson-Cook Medical, Inc.社、CookTM Endoscopyから市販されている Duette(登録商標)Multi-band Mucosectomy装置がある。
【0045】
Duette(登録商標)装置は、2005年12月1日公開の国際特許出願「組織の内視鏡的治療のためのシステムと方法」(WO2005112797)、並びに2006年3月31日出願の米国仮特許出願「組織の内視鏡的治療のためのシステムと方法」の主題であり、前記各特許出願の全内容を参考文献としてここに援用する。Duette(登録商標)装置キットは、7FRのSoft AcuSnareTM Mini Hexagonal Headという使い捨て式のポリペクトミースネア(Wilson-Cook Medical, Inc.社)を含んでいる。このスネアは、編組式ステンレス鋼ケーブルで作られている柔軟な六角形のスネアループ(寸法1.5cmx2.5cm)と、寸法7.0FRのカテーテルシースを有している。スネアは、電気焼灼ユニットと修正された複式帯結紮器に接続可能である。編組式ステンレス鋼ケーブルは、破損及び/又は過剰な変形無しに組織の複数の切除を可能にする可撓性と強度と弾性を兼ね備えた六角形の作業ループ(又はスネアヘッド)である。複式帯結紮器は、4、6、又は10個の帯で利用可能であって、スネアを内視鏡装置の作業ルーメンに挿通して前進させ、展開配備した結紮帯で捕縛した組織を輪切りにすることができるように、比較的大きな作業チャネル内径部を有している。複数の結紮と切除は、この装置を使用すれば、好都合にもスネアに実質的な変形を起こすこと無しに行うことができる。
【0046】
これより各図を参照しながら、本発明の実例的且つ非限定的なシステムと処置を説明してゆく。図1Aは、胃、並びに、食道11と十二指腸12を含む解剖学的構造の隣接部分を示している。下部食道括約筋は、全体を15で示している。幾つかの発明的処置の目的の少なくとも1つは、この体内通路の1つ又は複数の部分、例えば、食道11と胃10の間の部分などを再構築し、狭くすることである。例示的には、或る発明的処置は、胃食道接合部を狭くして、胃から酸と食べ物の内容物が食道の中へと逆流するのに抵抗する、より効果的なバリアを提供することによって、GERDを治療するのに使用される。更に別の処置には、肥満患者の減量に寄与することを目的に、胃食道接合部下方の噴門16に治療を施し、胃への通路を狭めて、肥満患者の食物摂取容量を減らすことが関与する。本発明の広範な態様に必要なわけではないが、特定の実施形態では、その様な処置には管腔内粘膜形成術の処置が含まれる。他の適した組織除去及び/又は傷害を負わす技法は、内視鏡的に行われるものもそうでないものも、本発明に基づき、上記及び他の体内管腔を再構築し又は別のやり方で治療するのに使用することができる。他の体内管腔候補には、限定するわけではないが、肛門括約筋の領域が含まれ、この領域に治療を施し組織を再建すると、肛門括約筋のコンプライアンスが改善され、便失禁及び/又は他の内科的疾患が治療される。
【0047】
図1Bには、食道と胃の間の壁の断面が図示されており、粘膜層17、粘膜下層18、筋層20、及び外膜又は漿膜層21が示されている。図2を参照すると、斜端加工を施した筒25を有する複式帯結紮器22が示されている。図2に示している様な斜端加工を施した筒を内視鏡上に装着すると、好適な角度で組織を捕縛し易くなるが、他の様々な斜端加工を施した筒又は斜端加工を施していない筒も使用できるものと理解されたい。結紮器の斜端加工を施した筒25に吸引を掛けると、粘膜層17及び粘膜下層18の組織が筋層20から離れる方向に牽引されて、筒25の中に引き込まれる。次に、複式帯結紮器22を操作し、弾性帯27を、筒25から捕縛された組織26に掛けて展開配備し、図3に示す結果を作り出すが、この図では、弾性帯27はその弾性に基づく図示の縮小された大きさになって組織の塊を捕縛している。図2は、6つの弾性帯を有する複式帯結紮器22を示しているが、上記及び本発明に有用な他の類似の複式帯結紮器には、幾つでも適した個数の弾性帯が含まれていてもよく、幾つかの実施形態では、1個又は10個又はそれ以上の帯が含まれており、より一般的には2個乃至8個の弾性帯が含まれているものと理解されたい。図示の好適な実施形態では、捕縛された組織26は、基本的に粘膜と粘膜下組織しか含んでおらず、捕縛された多量の筋層20は含まれていない。帯で組織を捕縛した後、吸引は解除又は切り離してもよい。
【0048】
図4に示すように、複式帯結紮器22は、更に、電気焼灼ユニットに接続されているスネア30を含んでいる。スネア30は、カテーテル31を通して操作され、図5に概略的に示す様に、捕縛された組織26の根元32の周りにスネア30が締め付けられる。締め付けられたスネアは、帯27の上方に配置しても又は下方に配置してもよく、幾つかの形態では、帯27の周りに又は帯27を横断して(即ち、一部が帯27の上方に、一部が下方になるように)配置される。次に、スネア30を使用し、組織を輪切りにして切り離し、組織を焼灼して、切除縁(図6)を粘膜下組織の中まで広げ、図示のように筋層20の一部を露出させる。その際に、当該部位の或る量の筋肉組織が同様に除去されること、及び/又は除去対象でない筋肉組織が傷つくこともある。
【0049】
幾つかの形態では、粘膜及び粘膜下組織を貫いて筋層まで達する深い切り込み35の切除により、切り込み領域の治癒が、例えば、粘膜の表層切り込みの典型的な潰瘍形成で起こる創傷の底からの治癒に比べ、主に創傷の縁部36から矢印37で示すように起こるようにしている。その様な治癒では、創傷内又はその周りに新しい組織が形成されると、創傷の側部又は縁部36が互いに向けて動かされ、これが、ひいては側部36に隣接する組織をきつく牽引するのに効果を発揮することになるが、因みに、その様な概ね横方向の治癒は、下部食道括約筋内及び/又はその周りの領域(例えば、食道の下部領域及び噴門の上部領域)の通路直径を小さくする上で非常に効果が高い。更に、特定の形態では、その様な治癒では、有益なことに、その様な領域の下層の筋肉組織が厚くなる。
【0050】
一般に、始まった治癒反応は、限定するわけではないが、単数又は複数の傷を付けられた関与する組織、単数又は複数の組織を除去し及び/又は外傷を付けるのに使用された装置と技法、作成された単数又は複数の創傷の大きさと形状を含め、数多くの要因によって異なる。因みに、本発明の処置により得られる創傷は、所望の再構築を実現するのに適したあらゆる大きさ、形状、及び構成を呈することができるものと理解頂きたい。例示的には、図7には、少なくとも部分的には粘膜下組織の中まで広がっている代わりの切り込み35を示している。切り込み35を粘膜下組織の中へ比較的深く広げると、切り取られた領域の治癒の少なくとも一部は、矢印37で示すように、概ね創傷の側部36から起こるようになる。
【0051】
本発明の方法は、GERDを患っている患者の治療に使用することができる。例えば、幾つかの方法には、胃食道接合部の周りの消化管を再構築して、管腔の口が元の又は治療前の直径よりも小さい最終直径(即ち、治癒時直径)になるように、この接合部の大きさを縮小することが関与している。多くの成人では、胃食道接合部の直径を小さくすること、但し、弛緩状態で大凡15mm乃至18mm未満にならないようにすることが望ましいが、適切な直径は、患者によって、上記範囲内、又はそれより上、又はそれより下まで個体差があるものと理解頂きたい。
【0052】
特定の個体では、このレベル未満の直径だと、嚥下障害(飲み込み動作の困難)の可能性が高まる。しかしながら、上記及び他の同様の配慮が、医療提供者によって取られることになり、体内管腔の再構築と最終的な大きさ及び形状は、患者に特定の様々な要因によって異なるものになると理解頂きたい。
図9は、下部食道括約筋に隣接する食道の断面図を示している。胃食道接合部の大きさを小さくするために、図9に示すように、胃食道接合部の上方の食道壁に対して円周方向に複数の切り込み38を入れ、一方で、各切り込みの間には処置されていない組織39が残るようにする。図9は、胃食道接合部の上方に3つの切り込み38が設けられていることを示しているが、この領域には、再構築を目的として、1個乃至10個又はそれ以上の切り込みを含め、幾つでも適した個数の切り込みを形成してもよく、3個乃至4個の切り込みがより一般的である、と理解頂きたい。胃食道接合部の下方の領域は通常は外に広がっているので、接合部の上方と下方の両方から組織を除去する例では、この下側の領域では、相対的に上側の領域に比べ、通常、より多くの切り込み及び/又はより大きい切り込みが(必ずしもというわけではないが)形成される。とはいえ、胃食道接合部上方の組織が同様に或る所与の処置で除去されているか否かに関わりなく、胃食道接合部下方の領域に、再構築を目的として、1個乃至10個又はそれ以上の切り込みを含め、幾つでも適した個数の切り込みを形成してもよく、3個乃至4個の切り込みがより一般的である。図8の領域40と41が示唆している1つの例示的な処置では、胃食道接合部の上方に3個、下方に4個、合計7個の切り込みが入れられる。ここでは、胃食道接合部(GEJ、胃襞に最も近接する部分)に関連して幾つかの治療部位の所在位置を説明してきたが、本発明で有用な治療部位の所在位置は、限定するわけではないが、下部食道括約筋及びZラインとしても知られている扁平円柱上皮接合部(SCJ)の様な他の解剖学的マーカー又は構造に関連して説明することもできるものと理解されたい。SCJ(Zライン)は、青白い扁平上皮と赤みを帯びた円柱上皮の並列配置により形成された内視鏡的に視認できる線である。健康な個体では、この境界線は常にGEJと正確に一致しているわけではなく、GEJに隣接して、例えばGEJの上方などに、存在している場合もある。体内管腔の再構築における上記及び他の同様の解剖学的マーカーの特定と利用法は、ここに含まれる教示が与えられれば、熟練した医師が十分対応できる範囲内にある。
【0053】
特定の実施形態では、結紮器筒25には、筒内部に、内視鏡操作者の医師が視認可能な較正部が設けられており、捕縛された組織26の量が判定できるようになっている。これにより、内視鏡操作者は、管腔の周囲周りの各治療部位に作り出されることになる創傷の大きさを推定することができる。上記及び他の実施形態では、管腔の直径を測定し、可能性としては、管腔寸法の所望の縮小量を提供するのに必要な切り込みの大きさに対処するために、様々な形式のソフトウェアが(発明的装置に直接内蔵されるか又は別のやり方で同装置と共に使用されるかを問わず)利用されている。
【0054】
例示的には、ソフトウェアは、測定される管腔領域と、測定される管腔領域の当該レベルに位置する少なくとも1つの既知の寸法の基準マーカーの両方を含む、1つ又は複数の捕捉された画像に基づいて作動する。1つ又は複数の画像がソフトウェアにインポートされると、ユーザーは、基準マーカーに基づくアウトライン(例えば、円)と、測定すべき管腔領域の周囲のアウトライン(例えば、円)を生成することができる。基準マーカーの既知の寸法を利用し、ソフトウェアは、両アウトライン(例えば、両方の円)の相対寸法を基に管腔領域の周囲を計算する。幾つかの状況では、管腔の形状は生成されたアウトラインの形状(円)に正確に対応しているはずである。上記状況では、複数の測定値を採用し、複数の測定値を基に平均を計算して、その処置での周囲値としてもよい。1つの実施例として、胃食道接合部の周囲を表すサイズを測定する場合、内視鏡を、食道を通して胃の中に送り込み、内視鏡シャフトが胃に進入した地点(「基準点」)でのシャフトの反り返った画像が捕捉される。この画像が、上記のようにソフトウェアのプログラムにインポートされると、基準点のシャフトの外側寸法に対し第1の円が描かれる。次いで、基準点の食道−胃接合部の内側円周囲に対し第2の円が描かれる。第1円の既知の寸法、並びに第2円との比較を利用し、ソフトウェアは、第2円の周囲の値を計算し、これを接合部の周囲の代表値とする。この処理は、必要に応じて何度も繰り返し、平均値を計算して、それを代表値としてもよい。この代表値は、次に、ここで説明している治療計画に関する決定作業の根拠として利用される。
【0055】
治癒過程は、切り取り処置後に起こり、食道の治療を施した部分の初期直径は、期待される最終直径よりも幾分大きくなることから、ソフトウェアのプログラムを有益に活用して、食道壁の何パーセントを治療すべきか、及び/又はどの様な組織除去パターンを使用すべきかについて医師を導くことができる。臨床体験が入手されれば、所望の成果を生み出すのに必要な組織除去量及び/又はパターンについて更なる相関を開発することができる。過去の治療による胃食道接合部直径縮小が治癒後十分でなかった場合、内視鏡操作者は、1つ又はそれ以上のフォローアップ手術を行い、更に切除を加えて目標の直径を実現することもできる。他方、接合領域が小さくなりすぎて嚥下障害が問題になる場合は、標準的な食道伸延技法(例えば、バルーン伸延法)を使用し、但し下方の1つ又は複数の筋層は基本的に無傷の状態で存続する程度に、処置を部分的に又は完全に逆行させることもできる。本発明的治療によって改善された酸逆流バリアが作成されると、測定されるpHは、胃食道接合部上方で改善されるはずである(治療有効性の測度)。
【0056】
本発明の方法は、肥満の治療にも使用することができる。これらの方法は、胃食道(GE)接合部の下方のみに一連の切除部を作成することを伴っている。図10は、GE接合部の真下の(10−10線に沿った)断面図であり、この図に示す例では、切除部45の個数は4個であるが、1個乃至10個又はそれ以上の切り込みを含め、幾つでも適した個数の切り込みを形成してもよく、3個乃至6個の切り込みがより一般的である。図11は食道50と胃51の断面であるが、当該部位には裂孔ヘルニア52が見られる。このような状況では、GE接合部下方の位置55に必要な切り込みの個数は、より少なくなる。GE接合部下方の噴門を狭めることによって、食物摂取を受け入れる通路をより細くすると、その結果、患者はより早く満腹感を覚える。これは、患者に、処置を受けなかった場合よりも早い時期に、食べることを停止させるか、又は停止するのを支援することになる。無論、患者が食べる量を少なくしても食事回数が増えれば処置の有益な成果は台無しになってしまうが、肥満治療を受けている患者に対しては、成果が上がり持続する可能性を高めるために、スクリーニングとカウンセリングを行ってもよい。
【0057】
殆どの場合、体内管腔壁の内側表面の周囲を画定している組織の多くとも約70〜75%が除去され及び/又は外傷を付けられるGERDの治療とは異なり、肥満患者では、体内管腔壁内側表面を画定している組織の約75%乃至100%を除去及び/又は傷を付けた場合に一般に効果が期待でき、時には、所望のように狭くし又は他の再構築を実現するのに、90%乃至100%程のより大きな量が必要となる場合もある。幾つかの実施形態では、組織は、体内管腔壁に沿って長手方向の1つ又はそれ以上の位置(例えば、2か所所又は3か所)で同壁の周囲100%から除去され、壁に沿って1つ又はそれ以上の連続した除去組織「帯」が形成される。多くの成人の肥満手術では、目標管腔直径は約10ミリメートルに設定されるであろう。他の肥満手術に比較して、更に望ましい発明的処置の利点は、手術が、一部又は完全に逆行させることができるように、或いは別のやり方で調節可能となるように、行われるということである。而して、患者が処置を逆行させたいと決心した場合、又は他の理由で逆行が必要になった場合は、例えば、伸延バルーンを使用した、標準的な伸延技法が実施される。
【0058】
本発明の追加の態様では、修正された内視鏡結紮器筒と装置が提供されている。図12に示すように、その様な装置60は、可能性としては斜端加工を施した筒端63を有する結紮筒62上に預けられた複数の結紮帯61を含んでいて、各帯61は、紐64の様な筒内部に挿通させた1本の可撓性を有する牽引糸によって展開配備させることができるようになっている。因みに、牽引紐64は、結紮器の各帯61に押し付けて配置され、紐64を引くと各結紮帯61を容易に動かせるように構成された複数の係合部材65を含んでいる。係合部材65は、例えば、紐上に配置された結び目又はポリマー製のビーズであってもよい。紐64は、筒62の周囲に輪状に巻いてもよい(輪を示している仮想線を参照)し、紐を引くと各帯が制御されたやり方で次々と展開配備されるように、各結紮帯を通して直線形又は他のパターンに配置してもよい。本発明の各態様に使用するための単一紐の構成として適合させた例示的な牽引紐/結紮帯の輪状配置は、例えば、米国特許第6,007,551号、同第6,730,101号、及び同第6,974,466号に開示されており、各特許を参考文献としてここに援用する。
【0059】
筒端63が斜端を形成している特定の実施形態では、紐は、筒の長尺側の側部66で又はほぼその位置で筒62を出るように配置され、各帯61の展開配備性を増強している。また、結紮器筒62は、紐を引いた時に紐が筒の円周方向周りに移動するのを防ぐため、内側又は外側改造部を含んでいてもよい。例示的には、内部フープ又はリング67を内側筒壁68に取り付け、その中に紐64を通して、紐の位置が制御できるようにしてもよい。その様な、単一紐装置を、内視鏡の端に接続すれば、筒内部の視認性が高まり、一方で帯を効果的に展開配備することができる。また、斜端加工を施した先端を有する結紮筒の外側表面に押し付けて預けられている各結紮帯は、長手方向に方向付けられた単数又は複数の牽引紐を採用すれば、斜端加工部の存在にもかかわらず、首尾よく且つ効果的に展開配備することができる、ということが判明している。従って、1つの実施形態では、斜端加工を施した先端を有する結紮筒は、外側表面に押し付けて配置されている1つ又は複数の結紮帯と、それら1つ又は複数の結紮帯を展開配備するための1つ又は複数の牽引紐を含んでいる。その様な筒は、内視鏡の端に取り付けられ、ここで説明している発明的再構築方法に、又は他の用途に使用さすることができる。
【0060】
追加の実施形態では、本発明は、ここで説明しているような食道又は胃の様な体内通路を再構築するためのキットを提供しており、同キットは、体内通路の管腔から組織を切除し又は他のやり方で除去するための、ここで説明している手段又は装置と、例えば、ここで説明しているGERD又は肥満の治療で体内通路を再構築するための同手段又は装置の使用法に関する取扱説明を含む書面資料を含んでいる。キットは、例えば、滅菌医用包装で取扱説明書と同梱された、手段又は装置を含んでいる。本発明の関連の実施形態は、その様な手段又は装置を配布し、又は別のやり方で事業を行うための方法を含んでおり、同方法には、体内通路の再構築に使用されるその様な手段又は装置を配布すること、及び、更には、体内通路を再構築するためのその様な手段又は装置の使用法に関する情報を配布することが含まれる。その様な情報は、手段又は装置に同梱して、又は別々に配布することができ、例えば、インターネットの様な世界的なコンピュータ通信ネットワークを含む通信ネットワーク上で、情報又は取扱説明を入手できるようにしているやり方が挙げられる。
【0061】
本発明の特定の態様の更なる理解を促すために、下に実施例を提示する。なお、それら実施例は例示を目的としており、何ら限定を課すものではない。
実施例1
この例では、家畜用ブタに、ブタの胃食道接合部(GEJ)を再構築する様式で、内視鏡的管腔内粘膜形成術(ELM)を行った。1番目のブタ(ブタ#1)は、(GEJ)の管腔の直径を約2分の1小さくするために、噴門のELMを受けた。これを達成すべく、Duette(登録商標)Multi-band Mucosectomy 装置(米国ノースカロライナ州ウインストン・セーラムのWilson-Cook Medical, Inc.社、CookTM Endoscopy)を装備した内視鏡システムを使用し、噴門の周り円周方向に3個所の部位で組織を縛って切除したが、これは噴門の周囲の約70%に相当する。2番目のブタ(ブタ#2)は、5週間後に伸延バルーンを使用して処置を逆行させたことを除き、同様に治療した。それら実験用ブタは、対照群と共に、エサの摂取量を無制限とし、水分は自由に摂取できるようにした。ブタは、研究期間中、健康活発であった。この研究の結果を図13、図14、図15にグラフで示している。見て分かるように、治療を受けた2匹のブタは、対照群のブタに比較し、体重増加が著しく少なかった。更に、ブタ#2は、処置の逆行後は、体重増加が加速した。
実施例2
この実施例では、内視鏡的管腔内粘膜形成術(ELM)を使用し、家畜用ブタに胃底皺襞形成術を行った。実施例1と同様に、Duette(登録商標)Multi-band Mucosectomy 装置を装備した内視鏡システムを使用した。結紮と切除を繰り返して、胃の底部の粘膜及び粘膜下組織を10平方センチメートル除去した。胃の最も拡張する部分である胃底は、切除後の治癒と同時に縮んで再構築されていた。このブタは、対照群共々、5週間に亘り、エサの摂取量を無制限とし、水分は自由に摂取できるようにした。ブタは、研究期間中、健康活発であり、治療を受けたブタは、対照群のブタに比較し、体重増加が著しく少なかった。
【0062】
例示的実施形態を図と上記記述で詳しく説明してきたが、それらは例示を目的とし、何ら制限を課すものではないと見なされるべきであり、好適な実施形態を示し説明したに過ぎず、本発明の精神に含まれる全ての変更及び修正は保護の対象とされることを求める旨理解されたい。英文明細書の冠詞「a」、「an」に当たる「或る」、「said」に当たる「前記」、及び「the」に当たる「当該の」は、単数の要素に限らず、1つ又は複数のそのような要素を包含しているものとする。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年5月3日出願の米国仮特許出願第60/797,346号の恩典を主張し、同出願の内容全体を参考文献としてここに援用する。
本発明は、概括的には医学の分野に関し、特定の態様においては食道又は他の体内管腔を再構築するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
胃食道逆流疾患(GERD)は、胃の内容物が食道内に漏れ戻る、即ち逆流するという異常を起こしてしまう、下又は下部食道括約筋(LES)の機能不全と説明されている。逆流した胃酸が食道の内層に触れると、胸又は喉に、胸やけと呼ばれる焼け付くような感覚が起こる。米国人の実に10パーセントもが日常的に胸やけの症状を実感しており、少なくとも月に一度は症候が見られる人は44パーセントに上る、と報告されている。たまに胸やけがするというのはありふれたことで、必ずしも、その人がGERDを患っているということを意味しているわけではないが、慢性的な胸やけはGERDの表れであり、健康上更に重篤な問題を引き起こしかねない。
【0003】
GERDの合併症である食道炎は、再発性の慢性症状になる恐れがある。GERDの他の合併症には、狭窄、潰瘍形成、及びバレット食道(遠位側の潰瘍形成により侵食された扁平粘膜が、進行的に化生腸管上皮に置き換えられていく状態)が含まれる。GERDの治療法には、薬物療法及び/又は外科処置が含まれる。
【0004】
病的肥満(臨床学的には重度肥満)は、個人の体重が、本人の健康と快適な生活に重大な一次的又は切迫した二次的影響を及ぼす状態と説明されている。不運なことに、病的肥満は早期死亡に至る場合が多い。男性336,442名、女性419,060名を12年間に亘り追跡調査した結果、死亡率は、平均体重を50%上回っている男性では約2倍に上昇し、一方、同じ群の糖尿病患者では死亡率は5倍に、また消化管疾患を有する者では4倍に、それぞれ上昇することが判明した。同様の群の女性については、全体の死亡率は同様に2倍に上昇し、一方、糖尿病患者では死亡率は8倍に、また、消化管疾患を有するものでは3倍に、それぞれ上昇した。
【0005】
母集団の平均体重と非インスリン依存型糖尿病患者の有病率との関連も、繰り返し観察した。報告によると、糖尿病を発症するリスクは、低度肥満の人で約2倍、中度肥満の人で5倍、重度肥満の人で10倍に上昇することが示されている。糖尿病発症については、肥満の期間が重大なリスク決定因子であることも知られている。更に、研究によると、重度肥満の女性でがん死亡率が上昇することが示されており、例えば、子宮内膜(5.4倍)、胆嚢(3.6倍)、子宮頸部(2.4倍)、卵巣(1.6倍)、乳房(1.5倍)となっている。更に、研究によると、重度肥満の男性でがん死亡率が上昇することが示されており、例えば、結腸直腸(1.7倍)、前立腺(1.3倍)となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/797,346号
【特許文献2】国際特許出願「組織の内視鏡的治療のためのシステムと方法」(WO2005112797)
【特許文献3】2006年3月31日出願の米国仮特許出願「組織の内視鏡的治療のためのシステムと方法」
【特許文献4】米国特許第6,007,551号
【特許文献5】米国特許第6,730,101号
【特許文献6】米国特許第6,974,466号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
GERD、肥満、及び他の病状の治療に有用な、改良された及び/又は代わりの方法と装置が依然として必要とされている。本発明は、上記の必要性の解決に取り組んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様では、患者を治療するための方法が提供されており、同方法は、治癒すると再構築される結果となる選択的組織除去を含む処置によって、患者の体内管腔又は通路を再構築する段階を含んでいる。特定の各実施形態では、本発明は、体内通路を画定している壁から組織を除去し、治癒過程を引き起こし、その治癒過程で当該通路が再構築される、という管腔内粘膜形成術(ELM)を含んでいる方法と、そのために設計されたシステムと、を提供している。切除される組織は、非病変組織である場合もある。或る特定の発明的処置では、それら方法は、例えば、胃食道逆流疾患(GERD)を患っている患者の治療において、食道を、胃の内容物の逆流に対する抵抗が増した新しい状態に修正するのに使用することができる。他の発明的各処置では、それら方法は、例えば、肥満の治療において、肥満手術で、胃を修正し、患者の食習慣の変化に寄与するために使用することができる。或る特定の形態では、発明的方法は、体内通路を狭めることにつながる。その様な方法は、(i)患者内部の体内通路において、同通路の管腔直径を縮小することで、同管腔内の少なくとも1つの方向の流量が減少すれば、患者の病状が少なくとも部分的に緩和されることになるであろう或る病状を呈している体内通路を特定する段階と、(ii)患者の病状にとって効果的な治療となることが期待できる、通路直径の縮小の程度を判定する段階と、(iii)体内通路を画定している壁の内側部分から、治癒反応を発現させるに十分な組織を除去する段階、を含んでいる。組織が確実に治癒すれば、体内通路内で組織の収縮が生じて、その管腔直径が小さくなる。多くの代表的な治療計画では、患者は、その後、術後査定を受け、体内通路縮小が病状の少なくとも部分的緩和に効果があったか否かが判定される。
【0009】
1つの実施形態では、本発明は、患者を治療するための方法を提供しており、同方法は、体内通路が再構築される結果となる治癒反応を引き出すことを目的として、患者の体内通路の管腔表面から組織を切除する段階を含んでいる。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、体内管腔を再構築するためのシステムを提供している。同システムは、体内管腔と同体内管腔内に位置する少なくとも1つの既知の寸法の基準の画像を生成することができるように構成された内視鏡と、画像内の基準と体内管腔との比較に基づき体内管腔の寸法を計算するためのソフトウェアを備えている。システムは、体内管腔から組織を除去するための管腔内外科装置を含んでいる。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、内視鏡結紮器筒と、結紮筒上に預けられた1つ又は複数の結紮帯と、前記1つ又は複数の結紮帯と協働する1本の牽引糸であって、前記1つ又は複数の結紮帯を前記結紮筒から配備させる働きをすることができる、1本の牽引糸と、を備えている医療装置を提供している。装置は、内視鏡も含んでおり、この内視鏡上に筒が受け入れられる。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、近位端と斜端加工を施した遠位端とを有する内視鏡結紮器筒と、結紮筒上に預けられた1つ又は複数の結紮帯であって、前記斜端加工を施した遠位端から展開配備することができる、1つ又は複数の結紮帯と、を備えている医療装置を提供している。同装置は、更に、内視鏡を含んでおり、この内視鏡上に筒が預けられる。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、体内通路を狭めるための方法を提供しており、同方法は、(a)患者内部の体内通路において、同通路の公称管腔直径を効果的に縮小することで、同管腔内の少なくとも1つの方向の流量が減少すれば、患者の病状が少なくとも部分的に緩和されることになるであろう或る既知の病状を呈している体内通路を特定する段階と、(b)前記患者の病状にとって効果的な治療となることが期待できる、前記通路の直径の縮小の程度を判定する段階と、(c)医療装置を使用し、前記体内通路の管腔表面の一部に、前記体内通路内で組織の収縮を引き起こす治癒反応を発現させるに足る外傷を付け、この収縮によって、前記体内通路の筋層に傷害を負わすこと無しに、その公称管腔直径を小さくする段階と、(d)術後に前記患者を査定し、前記体内通路縮小が前記病状の少なくとも部分的な緩和に効果があったか否かを判定する段階を含んでいる。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、患者を治療するための方法を提供しており、同方法は、非病変組織を除去することを含む内視鏡的処置で、患者の胃食道接合部を再構築する段階を含んでおり、前記再構築は、患者の胃食道逆流の軽減に効果を発揮する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、患者を治療するための方法を提供しており、同方法は、非病変組織を除去することを含む内視鏡的処置で、患者の胃を再構築する段階を含んでおり、前記再構築では、胃に狭い部分が作成され、患者の満腹感が修正される。
【0016】
他の実施形態では、本発明は、患者を治療するための方法を提供しており、同方法は、(i)胃の内容物の食道内への逆流を軽減するために患者の食道を修正することを目的として、又は(ii)肥満を治療するために、患者の噴門を修正することを目的として、内視鏡のチャネルを通して操作を行い、患者の組織を除去する段階を含んでいる。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、患者を治療するための方法を提供しており、同方法は、患者の治療には胃食道逆流又は肥満を軽減することが必要であるという特定された必要性に対し、患者の食道及び/又は噴門の組織を除去することを含む内視鏡的処置を実施することによって応える段階を含んでいる。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、患者を治療するための方法を提供しており、同方法は、(a)患者を、GERDを患っていると診断する段階と、(b)前記診断に基づき、患者の胃食道接合部の形状を修正することを目的として、患者の組織を除去することを含む内視鏡的処置を実施する段階と、を含んでいる。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、患者を治療するための方法を提供しており、同方法は、(a)患者を、肥満の治療が必要であると診断する段階と、(b)前記診断に基づき、患者の噴門の形状を修正することを目的として、患者の組織を除去することを含む内視鏡的処置を実施する段階と、を含んでいる。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、体内通路を狭めるための方法を提供しており、同方法は、(a)その管腔直径を小さくするために修正を加える対象に選択された前記体内通路の一部を内視鏡的に視覚化する段階と、(b)管腔直径を小さくするのに要求される縮小度を判定する段階と、(c)体内通路の管腔表面に位置する第1治療部位を特定する段階と、(d)第1治療部位の第1組織部分を捕縛する段階と、(e)捕縛された第1組織部分の周りに組織固定要素を設置する段階と、(f)捕縛された第1組織部分を摘出する段階と、(g)前記第1部位に円周方向に隣接して位置する第2治療部位を特定する段階と、(h)第2治療部位の第2組織部分を捕縛する段階と、(i)捕縛された第2組織部分の周りに組織固定要素を設置する段階と、(j)捕縛された第2組織部分を摘出する段階と、を含んでいる。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、中を流れる物質の規制に関して少なくとも部分的に機能障害を有する体内通路を狭めるための方法を提供しており、同方法は、(a)前記体内通路の或る長さに沿って伸長する第1治療帯域を選択する段階であって、前記体内通路の内側表面の周りに円周方向に伸長している、第1治療帯域を選択する段階と、(b)治療帯域内の体内通路の公称直径を確定する段階と、(c)機能障害を有する状態が少なくとも部分的に補正されるように、体内通路を前記第1公称直径より小さい所望の第2公称直径まで小さくするのに有効な組織切除量を計算する段階と、(d)画像化装置を使用して治療帯域を視覚化する段階と、(e)前記第1治療帯域内の筋層から、粘膜と粘膜下組織である第1部分を分離する段階と、(f)医療装置を使用して、前記筋層上方の粘膜と粘膜下組織である第1部分を切除する段階と、(g)切除された第1組織部分に隣接する前記体内通路を、前記第1部分から間隔を開けて位置する第2組織部分まで円周方向に動かす段階と、(h)前記第2組織部分を切除し、前記切除された第1組織部分と前記切除された第2組織部分の間に、未治療の組織領域を残す段階と、を含んでいる。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、体内通路を狭めるための方法を提供しており、同方法は、治癒過程中に管腔組織の全体的な縮小が起こり、これにより体内通路の公称管腔直径が小さくなるように、切除領域を管腔組織の治癒を促進させる形状に作成するため、体内通路の管腔組織を摘出する段階を含んでいる。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、患者の体内通路を修正するために患者に治療を施す方法を提供しており、同方法は、体内通路が再構築される結果となるであろう治癒反応を引き出すことを目的として、通路の下層の筋肉組織を実質的に傷付けること無しに、体内通路の管腔表面から組織を除去する段階を含んでいる。
【0024】
又別の実施形態では、本発明は、ここで説明しているように食道又は胃の様な体内通路を再構築するための各キットを提供しており、同キットは、体内通路の管腔から組織を切除し又は別のやり方で除去するための、ここで説明している手段又は装置と、例えば、ここで説明しているGERD又は肥満の治療において体内通路を再構築するための同手段又は装置の使用法に関する資料と、を含んでいる。
【0025】
本発明の更なる各実施形態並びに特性と利点は、ここに記載の説明を更に読んで頂ければ明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1Aは、胃の断面の概略図である。 図1Bは、胃と食道の壁の断面図である。
【図2】発明的処置の或る段階を示している図である。
【図3】発明的処置の別の段階を示している図である。
【図4】発明的処置の別の段階を示している図である。
【図5】発明的処置の別の段階を示している図である。
【図6】治癒反応を示している体内管腔壁の断面図である。
【図7】治癒反応を示している体内管腔壁の断面図である。
【図8】胃と食道の接合部の断面図である。
【図9】処置の或る段階を示している、図8の9−9線に沿って切断した胃食道接合部を矢印方向から見た断面図である。
【図10】肥満治療法の或る段階を示している断面図である。
【図11】肥満治療法の或る段階を示している断面図である。
【図12】内視鏡の端部に装着された、例示的な斜端加工された結紮用筒の部分断面図である。
【図13】実施例1に記載の実証研究の結果を描いたグラフである。
【図14】実施例1に記載の実証研究の結果を描いたグラフである。
【図15】実施例1に記載の実証研究の結果を描いたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の原理の理解を促すために、これより図に示している各実施形態を参照してゆくが、説明に際して特定の言語を使用する。しかしながら、これによって本発明の範囲を限定する意図はないことを理解頂きたく、図示している装置に対するその様な変更や更なる修正、及びここに示す開示の原理のその様な他の応用は、本発明が関連する分野の当業者であれば普通に想起されるものと考えている。
【0028】
上で開示したように、本発明の態様は、食道又は胃の管腔の様な体内管腔を再構築するための方法とシステムに関する。この再構築は、例えば、体内管腔内の物質の流量を修正するのに効果を発揮する。その様な再構築には、体内管腔の静止時直径を減少させること、体内管腔壁内に襞又は凸凹面を作成すること、及び/又は体内管腔壁の内周囲の輪郭を修正することが関与する。上記の修正及び管腔内の物質の流量に影響を与え得る他の各修正は、本発明の一部であると考えている。
【0029】
上で指摘したように、特定の発明的各態様では、患者の食道の或る領域、特に、胃食道接合部又はその付近の領域、を再構築するための方法とシステムが提供されている。潜在的には、GERDと診断されている患者の治療において、例えば、結果的に胃食道逆流を軽減させるために、その様な処置が行われる。これに加え又は代えて、逆流を軽減するための各処置には、非食道組織、例えば、食道の終点の真下に存在する噴門、の治療と再構築も関与する場合がある。
【0030】
通常、人が胸やけを訴えている場合は、GERDと診断されるか少なくともGERDが疑われる。胸やけは、しばしば、食事の後に起こる胸骨下(胸の中央の下層)の焼けつくような感覚と表現されることが多い。GERDが疑われると、多くの場合、治療担当医は、胃による酸の生成を抑制する薬物治療で患者を治療する療法を(少なくとも最初は)試行的に実施するであろう。次に、症状の治療に対する反応を見て、診断が確定される。例えば、薬物療法によって、胸やけが大幅に軽減されたら、GERDの診断は概ね確定されたと見なすことができる。GERDは、例えば、限定するわけではないが、内視鏡的処置及び食道酸検査を含む診断的検査又は他の検査を採用した他の適切な数々のやり方で診断することができる。多くの場合、GERDに関係付けられる異常な逆流は、患者の胃食道接合部が膨張しているか又は過大である(例えば、大きすぎると考えられる直径を有している)ことに起因する。発明的各変型例では、その様な過大胃食道接合部は、その直径を小さくし、それにより食道への胃の逆流量を減らすために、再構築の処置が施される。
【0031】
本発明の追加的実施形態では、例えば、肥満手術で、可能性としては肥満の治療において、患者の胃の管腔を修正するための方法とシステムが提供されている。その様な処置は、例えば、病的肥満であると診断された患者を治療するために行われる。通常、人の体重が、本人の健康と快適な生活に重大な一次的又は切迫した二次的影響を及ぼす場合に、病的肥満と診断される。上記状態に対する通例的な診断上の閾値は、例えば、標準的な身長対体重チャートによって求められた理想的な体重と考えられている体重を100ポンド超過していることである。肥満によって悪化する二次的な健康上の問題の例には、体重を支えている関節の関節炎症状、成人発症の糖尿病、睡眠時無呼吸/重度のいびき、皮膚の皺に関係した衛生上の問題、鬱及び自発性の低下がある。本発明の1つの態様よれば、病的肥満である患者、又は食習慣の修正が有益であると考えられる他の患者、の胃管腔内に、狭窄部又は他の狭い部分又は再構築した部分が作成される。狭窄部分又は他の再構築部分は、食べ物の胃管腔の通過を修正し、患者の食習慣の修正をやり易くする。加えて、当該処置の全て又は一部として、胃底から組織が除去されるので、胃が再構築され(例えば、大きさが小さくなり)、可能性としては、空腹に関係したホルモンや他の信号を分泌するグレリン分泌上皮細胞の様な細胞が除去される結果となる。グレリンは、空腹を表すホルモン信号であることが解明されており、グレリン又は他の空腹信号を分泌する細胞の削減又は除去を、例えば、肥満を治療するための、ここで開示した発明の各実施形態に使用してもよい。
【0032】
ここで開示している発明的再構築方法には、管腔内粘膜形成術の処置を使用することができる。因みに、ここで使用する「管腔内粘膜形成術」とは、治療下の体内管腔を覆っている粘膜組織に変化をもたらす管腔内的に行われる処置を指す。この変化は、例えば、通路の現在そこにある粘膜表面の直径の変化、襞又は畝の有無の変化などである。
【0033】
ここで説明している発明的再構築方法の中には、体内管腔壁から或る量の組織を切除すること及び/又は治療部位の組織を傷害性刺激に曝して、結果的に、組織内の細胞死と確実な組織治癒反応を得ること、を含んでいる方法もある。本発明の幾つかの形態では、除去される組織には、(所望の再構築以外に)除去を必要とする代わり適応症は見られない非病変組織が少なくとも幾らか含まれることになっており、特定の各例では、除去される全組織が、それ以外に除去すべき適応症が見当たらない正常な非病変組織ということになっている。
【0034】
好都合な発明的実施形態では、除去される組織は、基本的には、通路壁の認識可能な筋層の管腔側に存在している組織に限定されることになる。食道と胃の様な体内通路の管腔壁は、一般に、粘膜層と下層の粘膜下結合組織層を含んでおり、普通はその下に筋層が続いている。本発明の態様では、下層の筋層を実質的に傷付けること無しに、或る位置で、各量の粘膜及び/又は粘膜下組織が除去される。因みに、粘膜下組織層の結合組織は、しばしば或る量の筋肉組織と交互に配置されており、排他的にというわけではないが、特に、組織学的に特定可能な粘膜下組織層から下層の筋層に移行している領域にその様な配置の見られることが知られている。而して、下層の筋層には実質的な傷は一切付けていないが、除去組織中に幾らかの筋肉組織が混ざっている場合もあると理解されたい。
【0035】
本発明の幾つかの形態では、下層の筋層を露出させるには、粘膜組織と粘膜下組織の両方を除去すれば十分である。筋層を深刻な傷から護るために、或る量の粘膜組織と粘膜下組織が、下層の筋層から、例えば、室の中への選択的吸引を使用するか又はピンセットの様な物理的把持用装置を使用して引き離され、その後、引き出された組織は切除されるか別のやり方で除去される。例示的には、本明細書の別の箇所で論じているように、内視鏡機材と技法、例えば、限定するわけではないが、不健康な組織を除去する内視鏡的粘膜切除(EMR)処置に従来使用されているものなど、を使用してこの種の組織除去を行うことができる。他の内視鏡的及び非内視鏡的装置と技法も同様に使用することができる。内視鏡的処置及び非内視鏡的処置共に、組織除去に先立ち粘膜組織と粘膜下組織を下層の筋層から切り離すために、流体(例えば、生理食塩水)注入を随意的に使用してもよい。上記及び/又は他の装置、技法、又は材料を、本発明の特定の処置に使用して、例えば、目標組織の除去の際に残りの組織を保護し又は隔離するために、或る量の目標除去組織を残存させるべき組織から分離又は隔離することもできる。そのような選択的組織除去と保護は、不本意にも組織が傷付く危険性及びそれに伴う合併症発症の恐れを低減しながら、同時に、結果的に所望の形状修正を得るための更に制御された外傷パターンを得易くする。
【0036】
本発明の医療処置には、所望の管腔の再構築を実現するのに有用と考えられる、体内管腔壁の少なくとも1つの部位において、より典型的には複数の部位において、或る量の組織を除去することが関与することになる。例えば、或る量の組織が2か所乃至10か所の部位から、又は特定の治療では2か所乃至8か所の部位から除去される。それら各部位は互いに別々であって、即ち、各部位の間には或る量の患者組織が手を入れられないそのままの状態で残されることになってもよいし、又は、各部位が互いに重なり合って、除去組織のより広い連続した領域を作っていてもよい。複数の目標除去部位が採用された場合、それら部位の少なくとも幾つかは、そしてしばしばその全部が、互いに対して円周方向に位置していることになるであろうが、長手方向に互いに間隔を開けて配置された部位を採用してもよい。組織除去部位は、引き続き組織の治癒過程が起きた時に、体内管腔が所望通りに再構築される結果となるように選択される。その様な組織の治癒では、治癒領域の体内管腔が収縮する結果となり、所望の再構築につながる。特定の所望の治療では、組織除去部位又は各部位は、管腔の直径が治療前の直径に比べ減少する結果となる。因みに、直径の減少は適切であればどの様な程度の減少も患者の治療に使用することができ、例えば、直径の減少は少なくとも約10パーセント、多くの場合、少なくとも約10パーセント乃至最大約50パーセント、又は少なくとも約25パーセント乃至最大約50パーセントである。或る場合は、約30パーセントから約35パーセントの範囲の直径減少率が、患者の治療で実現されることになる。
【0037】
本発明の医療処置は、或る量の組織の除去に先立ち、治療される体内通路の特徴、例えば、限定するわけではないが、大きさ、形状、管腔直径、及び/又は組織と細胞の構成などを、慎重に査定した上で行われることが望ましい。このやり方では、組織除去の量とパターンは、直径及び/又は他の再構築特徴の、所望され予想される縮小状態に相関付けられる。この査定は、様々な様式で実施することができ、所望の管腔の再構築を提供するのに有用であると判明している幾つもの適した装置と技法が関与してもよい。例えば、発明的装置の中には、1つ又はそれ以上の管腔壁寸法を直接的又は間接的に測定することができる機器を含んでいる装置もある。好適な態様では、ここで説明している発明的処置を行うように特別に適合させたシステムは、体内管腔の直径を測定する能力と、体内管腔の組織除去を実施し、最終的に所望の直径縮小及び/又は他の再構築を実現するための能力の両方を有する総合的な装置を含んでいる。上記目的のために、映像内視鏡システムは、体内管腔と少なくとも1つの既知の寸法のスケーリング基準との目に見える画像を作成するための画像化手段と、スケーリング基準の参照に基づき体内管腔の直径を計算するための手段と、体内管腔壁から或る量の組織を除去するための装置と、を含んでいる。これにより、体内管腔が視認され、関心位置の管腔直径が測定されると、次に、装置を使用し、或る量の組織が所望のパターンで除去され、管腔の有益な再構築が実現される。なお、その様な画像化手段は、他の点、例えば、発明的処置中に外科医が特定の解剖学的マーカー又は他の案内用ラインを視認できるようにするという点でも有用であり、これは組織除去を確実に所望の場所に起こすのに役立つことに注目頂きたい。
【0038】
体内管腔直径は、様々な様式で計算することができ、幾つかの実施形態では、管腔内手術システムに内蔵されているソフトウェアを使用して行われる。例示的には、発明的各システムは、体内通路の長さに沿った或る位置の管腔直径を、例えば、画像化手段に表示されたベクトルに基づく測定値の様な、ソフトウェアに基づく測定値を、既知の直径の基準項目(例えば、解剖学的特徴、又は内視鏡の結紮筒又は別の視認できる部分の様な機械的物品)と比較することによって、間接的に測定することができるソフトウェアを内蔵していてもよい。次に、この測定値を使用し、限定するわけではないが、所望の管腔直径縮小の様な所望の成果を実現するのに有効な組織除去量とパターンが求められる。
【0039】
再構築処置は、体内管腔壁の長さに沿った1つ又は複数の所望の位置で、同壁の内側表面の周囲の相当な割合分から組織を除去することを含んでいる。例えば、所望の長手方向位置のその様な周囲約30%乃至100%の組織除去を採用してもよく、因みに、体内管腔壁に沿って長手方向の2か所以上の位置の周囲から組織を除去することが関与する発明的処置では、それぞれの長手方向位置で、体内管腔壁周囲のどの様な適した割合分を除去してもよいものと理解頂きたい。例えば、第1領域(例えば、下部食道括約筋上方)と第2領域(例えば、下部食道括約筋下方)の周囲から組織を除去することが関与する発明的処置では、第1領域(当該領域の周囲という意味)から除去される組織の割合は、第2領域の周囲から除去される組織の割合と同じであっても異なっていてもよい。例示的には、幾つかの形態では、それら領域のそれぞれの周囲からほぼ同じ割合の組織が除去されるが、通常、第2領域の周囲は第1領域の周囲よりも大きいことから、実際には第2領域の周囲からはより多くの組織(周囲長という意味)が除去される。他の形態では、第2領域の周囲から除去される組織の割合は、第1領域の周囲から除去される実際の組織除去量より約10%乃至約200%多いこともあるが、本発明の範囲内で他の割合差も考えられる。なお、体内管腔壁の内側表面の周囲から除去される組織の割合を測定する場合、その様な測定は、実際には、例えば、体内管腔壁内側表面の襞、畝、隆起、又は他の表面の凸凹を勘定に入れた平均又は公称周囲長に基づくものと理解頂きたい。
【0040】
胃の内容物の食道への逆流を軽減するための胃食道接合部の再構築において、特定の発明的処置には、通常、接合部の及び/又はその周辺の1つ又は複数の位置で管腔壁の周囲約30%乃至約70%の組織を除去することが関与する。例示的には、組織は、所望の成果、例えば、接合部の直径の縮小及び/又は接合部の延長を実現させるため、接合部及び/又はその付近、即ち接合部の真上及び/又は接合部の真下から直接除去される。例えば、患者の食習慣を修正するため、胃に狭窄を作成する場合、胃、特に胃噴門の1つ又は複数の領域の周囲約60%乃至約100%を組織除去の対象とするのが一般的である。
【0041】
組織除去には、更に、長手方向に広く削ぎ取ることが関与する。例えば、各組織除去領域の長手方向寸法は、通常、少なくとも約0.25センチメートル、より一般的には約0.5センチメートル乃至約3センチメートルの範囲になる。但し、他の長手方向組織除去長さも、本発明の広範な態様内で使用することができるものと理解頂きたい。
【0042】
好都合にも、本発明の実施形態により実現される体内管腔の再構築は、大部分が又は完全に可逆的であり、例えば、治療を受けた領域は、それが部分的又は完全に治癒した後、伸延することで元に戻すことができる。全面的又は部分的な逆行は、数々の理由から望ましいこともあり、例えば、患者が嚥下に支障を来しているか、又は治療前の食習慣を取り戻したいと望んでいる場合がそうである。幾つかの形態では、胃食道接合部の直径が、治療を終え治癒した後に小さすぎると判断された場合、その直径を伸延して、修正され拡張された直径にすることができる。体内管腔区間の伸延は、どの様な適したやり方で行ってもよく、例えば、バルーン又は他の拡張可能な装置を使用して行ってもよい。その様な拡張された直径は、治療前の直径であってもよいし、又は治療前の直径と初期治癒時直径の間の直径であってもよい。同様の原理は、胃に狭窄を作成する場合にも当てはまる。
【0043】
また、初期の組織除去及び治癒段階後の体内管腔の直径又は他の再構築が、結果的に管腔内を流れる物質の所望の修正された流量には不十分な程度であった場合、追加量の組織を除去するために同様に実施されるフォローアップ処置を施し、結果的に更なる再構築が行われるようにしてもよい。
【0044】
本発明による組織除去を実現するのに、様々な装置と技法を使用することができる。適したその様な装置なら、組織、特に基本的には粘膜及び粘膜下組織、を切除し又は別のやり方で除去するのに効果を発揮することができる。幾つかの実施形態では、本発明の組織除去装置は、適した直接又は間接(例えば、画像式)視覚化手段を装備した(又は別のやり方で一緒に使用することができる)管状の外科用アクセス装置を備えている。本発明の広範な態様に必要なわけではないが、内視鏡装置と技法は、内視鏡的粘膜切除技法に従来使用されているものを含め、幾つかの発明的実施形態に有用である。それらには、事前に生理食塩水又は他の流体を注入して、除去すべき組織を下層の筋層から持ち上げることが関与する非結紮式組織捕縛/切除技法と、結紮式組織捕縛/切除技法の両方、並びにそれらに関係付けられた器具類が含まれる。結紮技法では、結紮筒が内視鏡の端に取り付けられる。吸引を使い、粘膜及び粘膜下組織を結紮筒の中に引き込み、その後結紮帯を展開配備して、結果的に結紮された組織の塊を得る。次に、外科用電気スネア又は他の類似装置を使い、結紮された組織を切除する。内視鏡装置は、内視鏡の作業チャネルに挿通させて受け入れることができて、結紮組織の塊の切除に効果を発揮する外科用電気スネアを含んでいるのが望ましいが、内視鏡に別々に及び/又は内視鏡の外部に挿通されるスネアを採用することもできる。本発明の方法に使用することができる1つの適した複式帯結紮装置に、米国ノースカロライナ州ウインストン・セーラムのWilson-Cook Medical, Inc.社、CookTM Endoscopyから市販されている Duette(登録商標)Multi-band Mucosectomy装置がある。
【0045】
Duette(登録商標)装置は、2005年12月1日公開の国際特許出願「組織の内視鏡的治療のためのシステムと方法」(WO2005112797)、並びに2006年3月31日出願の米国仮特許出願「組織の内視鏡的治療のためのシステムと方法」の主題であり、前記各特許出願の全内容を参考文献としてここに援用する。Duette(登録商標)装置キットは、7FRのSoft AcuSnareTM Mini Hexagonal Headという使い捨て式のポリペクトミースネア(Wilson-Cook Medical, Inc.社)を含んでいる。このスネアは、編組式ステンレス鋼ケーブルで作られている柔軟な六角形のスネアループ(寸法1.5cmx2.5cm)と、寸法7.0FRのカテーテルシースを有している。スネアは、電気焼灼ユニットと修正された複式帯結紮器に接続可能である。編組式ステンレス鋼ケーブルは、破損及び/又は過剰な変形無しに組織の複数の切除を可能にする可撓性と強度と弾性を兼ね備えた六角形の作業ループ(又はスネアヘッド)である。複式帯結紮器は、4、6、又は10個の帯で利用可能であって、スネアを内視鏡装置の作業ルーメンに挿通して前進させ、展開配備した結紮帯で捕縛した組織を輪切りにすることができるように、比較的大きな作業チャネル内径部を有している。複数の結紮と切除は、この装置を使用すれば、好都合にもスネアに実質的な変形を起こすこと無しに行うことができる。
【0046】
これより各図を参照しながら、本発明の実例的且つ非限定的なシステムと処置を説明してゆく。図1Aは、胃、並びに、食道11と十二指腸12を含む解剖学的構造の隣接部分を示している。下部食道括約筋は、全体を15で示している。幾つかの発明的処置の目的の少なくとも1つは、この体内通路の1つ又は複数の部分、例えば、食道11と胃10の間の部分などを再構築し、狭くすることである。例示的には、或る発明的処置は、胃食道接合部を狭くして、胃から酸と食べ物の内容物が食道の中へと逆流するのに抵抗する、より効果的なバリアを提供することによって、GERDを治療するのに使用される。更に別の処置には、肥満患者の減量に寄与することを目的に、胃食道接合部下方の噴門16に治療を施し、胃への通路を狭めて、肥満患者の食物摂取容量を減らすことが関与する。本発明の広範な態様に必要なわけではないが、特定の実施形態では、その様な処置には管腔内粘膜形成術の処置が含まれる。他の適した組織除去及び/又は傷害を負わす技法は、内視鏡的に行われるものもそうでないものも、本発明に基づき、上記及び他の体内管腔を再構築し又は別のやり方で治療するのに使用することができる。他の体内管腔候補には、限定するわけではないが、肛門括約筋の領域が含まれ、この領域に治療を施し組織を再建すると、肛門括約筋のコンプライアンスが改善され、便失禁及び/又は他の内科的疾患が治療される。
【0047】
図1Bには、食道と胃の間の壁の断面が図示されており、粘膜層17、粘膜下層18、筋層20、及び外膜又は漿膜層21が示されている。図2を参照すると、斜端加工を施した筒25を有する複式帯結紮器22が示されている。図2に示している様な斜端加工を施した筒を内視鏡上に装着すると、好適な角度で組織を捕縛し易くなるが、他の様々な斜端加工を施した筒又は斜端加工を施していない筒も使用できるものと理解されたい。結紮器の斜端加工を施した筒25に吸引を掛けると、粘膜層17及び粘膜下層18の組織が筋層20から離れる方向に牽引されて、筒25の中に引き込まれる。次に、複式帯結紮器22を操作し、弾性帯27を、筒25から捕縛された組織26に掛けて展開配備し、図3に示す結果を作り出すが、この図では、弾性帯27はその弾性に基づく図示の縮小された大きさになって組織の塊を捕縛している。図2は、6つの弾性帯を有する複式帯結紮器22を示しているが、上記及び本発明に有用な他の類似の複式帯結紮器には、幾つでも適した個数の弾性帯が含まれていてもよく、幾つかの実施形態では、1個又は10個又はそれ以上の帯が含まれており、より一般的には2個乃至8個の弾性帯が含まれているものと理解されたい。図示の好適な実施形態では、捕縛された組織26は、基本的に粘膜と粘膜下組織しか含んでおらず、捕縛された多量の筋層20は含まれていない。帯で組織を捕縛した後、吸引は解除又は切り離してもよい。
【0048】
図4に示すように、複式帯結紮器22は、更に、電気焼灼ユニットに接続されているスネア30を含んでいる。スネア30は、カテーテル31を通して操作され、図5に概略的に示す様に、捕縛された組織26の根元32の周りにスネア30が締め付けられる。締め付けられたスネアは、帯27の上方に配置しても又は下方に配置してもよく、幾つかの形態では、帯27の周りに又は帯27を横断して(即ち、一部が帯27の上方に、一部が下方になるように)配置される。次に、スネア30を使用し、組織を輪切りにして切り離し、組織を焼灼して、切除縁(図6)を粘膜下組織の中まで広げ、図示のように筋層20の一部を露出させる。その際に、当該部位の或る量の筋肉組織が同様に除去されること、及び/又は除去対象でない筋肉組織が傷つくこともある。
【0049】
幾つかの形態では、粘膜及び粘膜下組織を貫いて筋層まで達する深い切り込み35の切除により、切り込み領域の治癒が、例えば、粘膜の表層切り込みの典型的な潰瘍形成で起こる創傷の底からの治癒に比べ、主に創傷の縁部36から矢印37で示すように起こるようにしている。その様な治癒では、創傷内又はその周りに新しい組織が形成されると、創傷の側部又は縁部36が互いに向けて動かされ、これが、ひいては側部36に隣接する組織をきつく牽引するのに効果を発揮することになるが、因みに、その様な概ね横方向の治癒は、下部食道括約筋内及び/又はその周りの領域(例えば、食道の下部領域及び噴門の上部領域)の通路直径を小さくする上で非常に効果が高い。更に、特定の形態では、その様な治癒では、有益なことに、その様な領域の下層の筋肉組織が厚くなる。
【0050】
一般に、始まった治癒反応は、限定するわけではないが、単数又は複数の傷を付けられた関与する組織、単数又は複数の組織を除去し及び/又は外傷を付けるのに使用された装置と技法、作成された単数又は複数の創傷の大きさと形状を含め、数多くの要因によって異なる。因みに、本発明の処置により得られる創傷は、所望の再構築を実現するのに適したあらゆる大きさ、形状、及び構成を呈することができるものと理解頂きたい。例示的には、図7には、少なくとも部分的には粘膜下組織の中まで広がっている代わりの切り込み35を示している。切り込み35を粘膜下組織の中へ比較的深く広げると、切り取られた領域の治癒の少なくとも一部は、矢印37で示すように、概ね創傷の側部36から起こるようになる。
【0051】
本発明の方法は、GERDを患っている患者の治療に使用することができる。例えば、幾つかの方法には、胃食道接合部の周りの消化管を再構築して、管腔の口が元の又は治療前の直径よりも小さい最終直径(即ち、治癒時直径)になるように、この接合部の大きさを縮小することが関与している。多くの成人では、胃食道接合部の直径を小さくすること、但し、弛緩状態で大凡15mm乃至18mm未満にならないようにすることが望ましいが、適切な直径は、患者によって、上記範囲内、又はそれより上、又はそれより下まで個体差があるものと理解頂きたい。
【0052】
特定の個体では、このレベル未満の直径だと、嚥下障害(飲み込み動作の困難)の可能性が高まる。しかしながら、上記及び他の同様の配慮が、医療提供者によって取られることになり、体内管腔の再構築と最終的な大きさ及び形状は、患者に特定の様々な要因によって異なるものになると理解頂きたい。
図9は、下部食道括約筋に隣接する食道の断面図を示している。胃食道接合部の大きさを小さくするために、図9に示すように、胃食道接合部の上方の食道壁に対して円周方向に複数の切り込み38を入れ、一方で、各切り込みの間には処置されていない組織39が残るようにする。図9は、胃食道接合部の上方に3つの切り込み38が設けられていることを示しているが、この領域には、再構築を目的として、1個乃至10個又はそれ以上の切り込みを含め、幾つでも適した個数の切り込みを形成してもよく、3個乃至4個の切り込みがより一般的である、と理解頂きたい。胃食道接合部の下方の領域は通常は外に広がっているので、接合部の上方と下方の両方から組織を除去する例では、この下側の領域では、相対的に上側の領域に比べ、通常、より多くの切り込み及び/又はより大きい切り込みが(必ずしもというわけではないが)形成される。とはいえ、胃食道接合部上方の組織が同様に或る所与の処置で除去されているか否かに関わりなく、胃食道接合部下方の領域に、再構築を目的として、1個乃至10個又はそれ以上の切り込みを含め、幾つでも適した個数の切り込みを形成してもよく、3個乃至4個の切り込みがより一般的である。図8の領域40と41が示唆している1つの例示的な処置では、胃食道接合部の上方に3個、下方に4個、合計7個の切り込みが入れられる。ここでは、胃食道接合部(GEJ、胃襞に最も近接する部分)に関連して幾つかの治療部位の所在位置を説明してきたが、本発明で有用な治療部位の所在位置は、限定するわけではないが、下部食道括約筋及びZラインとしても知られている扁平円柱上皮接合部(SCJ)の様な他の解剖学的マーカー又は構造に関連して説明することもできるものと理解されたい。SCJ(Zライン)は、青白い扁平上皮と赤みを帯びた円柱上皮の並列配置により形成された内視鏡的に視認できる線である。健康な個体では、この境界線は常にGEJと正確に一致しているわけではなく、GEJに隣接して、例えばGEJの上方などに、存在している場合もある。体内管腔の再構築における上記及び他の同様の解剖学的マーカーの特定と利用法は、ここに含まれる教示が与えられれば、熟練した医師が十分対応できる範囲内にある。
【0053】
特定の実施形態では、結紮器筒25には、筒内部に、内視鏡操作者の医師が視認可能な較正部が設けられており、捕縛された組織26の量が判定できるようになっている。これにより、内視鏡操作者は、管腔の周囲周りの各治療部位に作り出されることになる創傷の大きさを推定することができる。上記及び他の実施形態では、管腔の直径を測定し、可能性としては、管腔寸法の所望の縮小量を提供するのに必要な切り込みの大きさに対処するために、様々な形式のソフトウェアが(発明的装置に直接内蔵されるか又は別のやり方で同装置と共に使用されるかを問わず)利用されている。
【0054】
例示的には、ソフトウェアは、測定される管腔領域と、測定される管腔領域の当該レベルに位置する少なくとも1つの既知の寸法の基準マーカーの両方を含む、1つ又は複数の捕捉された画像に基づいて作動する。1つ又は複数の画像がソフトウェアにインポートされると、ユーザーは、基準マーカーに基づくアウトライン(例えば、円)と、測定すべき管腔領域の周囲のアウトライン(例えば、円)を生成することができる。基準マーカーの既知の寸法を利用し、ソフトウェアは、両アウトライン(例えば、両方の円)の相対寸法を基に管腔領域の周囲を計算する。幾つかの状況では、管腔の形状は生成されたアウトラインの形状(円)に正確に対応しているはずである。上記状況では、複数の測定値を採用し、複数の測定値を基に平均を計算して、その処置での周囲値としてもよい。1つの実施例として、胃食道接合部の周囲を表すサイズを測定する場合、内視鏡を、食道を通して胃の中に送り込み、内視鏡シャフトが胃に進入した地点(「基準点」)でのシャフトの反り返った画像が捕捉される。この画像が、上記のようにソフトウェアのプログラムにインポートされると、基準点のシャフトの外側寸法に対し第1の円が描かれる。次いで、基準点の食道−胃接合部の内側円周囲に対し第2の円が描かれる。第1円の既知の寸法、並びに第2円との比較を利用し、ソフトウェアは、第2円の周囲の値を計算し、これを接合部の周囲の代表値とする。この処理は、必要に応じて何度も繰り返し、平均値を計算して、それを代表値としてもよい。この代表値は、次に、ここで説明している治療計画に関する決定作業の根拠として利用される。
【0055】
治癒過程は、切り取り処置後に起こり、食道の治療を施した部分の初期直径は、期待される最終直径よりも幾分大きくなることから、ソフトウェアのプログラムを有益に活用して、食道壁の何パーセントを治療すべきか、及び/又はどの様な組織除去パターンを使用すべきかについて医師を導くことができる。臨床体験が入手されれば、所望の成果を生み出すのに必要な組織除去量及び/又はパターンについて更なる相関を開発することができる。過去の治療による胃食道接合部直径縮小が治癒後十分でなかった場合、内視鏡操作者は、1つ又はそれ以上のフォローアップ手術を行い、更に切除を加えて目標の直径を実現することもできる。他方、接合領域が小さくなりすぎて嚥下障害が問題になる場合は、標準的な食道伸延技法(例えば、バルーン伸延法)を使用し、但し下方の1つ又は複数の筋層は基本的に無傷の状態で存続する程度に、処置を部分的に又は完全に逆行させることもできる。本発明的治療によって改善された酸逆流バリアが作成されると、測定されるpHは、胃食道接合部上方で改善されるはずである(治療有効性の測度)。
【0056】
本発明の方法は、肥満の治療にも使用することができる。これらの方法は、胃食道(GE)接合部の下方のみに一連の切除部を作成することを伴っている。図10は、GE接合部の真下の(10−10線に沿った)断面図であり、この図に示す例では、切除部45の個数は4個であるが、1個乃至10個又はそれ以上の切り込みを含め、幾つでも適した個数の切り込みを形成してもよく、3個乃至6個の切り込みがより一般的である。図11は食道50と胃51の断面であるが、当該部位には裂孔ヘルニア52が見られる。このような状況では、GE接合部下方の位置55に必要な切り込みの個数は、より少なくなる。GE接合部下方の噴門を狭めることによって、食物摂取を受け入れる通路をより細くすると、その結果、患者はより早く満腹感を覚える。これは、患者に、処置を受けなかった場合よりも早い時期に、食べることを停止させるか、又は停止するのを支援することになる。無論、患者が食べる量を少なくしても食事回数が増えれば処置の有益な成果は台無しになってしまうが、肥満治療を受けている患者に対しては、成果が上がり持続する可能性を高めるために、スクリーニングとカウンセリングを行ってもよい。
【0057】
殆どの場合、体内管腔壁の内側表面の周囲を画定している組織の多くとも約70〜75%が除去され及び/又は外傷を付けられるGERDの治療とは異なり、肥満患者では、体内管腔壁内側表面を画定している組織の約75%乃至100%を除去及び/又は傷を付けた場合に一般に効果が期待でき、時には、所望のように狭くし又は他の再構築を実現するのに、90%乃至100%程のより大きな量が必要となる場合もある。幾つかの実施形態では、組織は、体内管腔壁に沿って長手方向の1つ又はそれ以上の位置(例えば、2か所所又は3か所)で同壁の周囲100%から除去され、壁に沿って1つ又はそれ以上の連続した除去組織「帯」が形成される。多くの成人の肥満手術では、目標管腔直径は約10ミリメートルに設定されるであろう。他の肥満手術に比較して、更に望ましい発明的処置の利点は、手術が、一部又は完全に逆行させることができるように、或いは別のやり方で調節可能となるように、行われるということである。而して、患者が処置を逆行させたいと決心した場合、又は他の理由で逆行が必要になった場合は、例えば、伸延バルーンを使用した、標準的な伸延技法が実施される。
【0058】
本発明の追加の態様では、修正された内視鏡結紮器筒と装置が提供されている。図12に示すように、その様な装置60は、可能性としては斜端加工を施した筒端63を有する結紮筒62上に預けられた複数の結紮帯61を含んでいて、各帯61は、紐64の様な筒内部に挿通させた1本の可撓性を有する牽引糸によって展開配備させることができるようになっている。因みに、牽引紐64は、結紮器の各帯61に押し付けて配置され、紐64を引くと各結紮帯61を容易に動かせるように構成された複数の係合部材65を含んでいる。係合部材65は、例えば、紐上に配置された結び目又はポリマー製のビーズであってもよい。紐64は、筒62の周囲に輪状に巻いてもよい(輪を示している仮想線を参照)し、紐を引くと各帯が制御されたやり方で次々と展開配備されるように、各結紮帯を通して直線形又は他のパターンに配置してもよい。本発明の各態様に使用するための単一紐の構成として適合させた例示的な牽引紐/結紮帯の輪状配置は、例えば、米国特許第6,007,551号、同第6,730,101号、及び同第6,974,466号に開示されており、各特許を参考文献としてここに援用する。
【0059】
筒端63が斜端を形成している特定の実施形態では、紐は、筒の長尺側の側部66で又はほぼその位置で筒62を出るように配置され、各帯61の展開配備性を増強している。また、結紮器筒62は、紐を引いた時に紐が筒の円周方向周りに移動するのを防ぐため、内側又は外側改造部を含んでいてもよい。例示的には、内部フープ又はリング67を内側筒壁68に取り付け、その中に紐64を通して、紐の位置が制御できるようにしてもよい。その様な、単一紐装置を、内視鏡の端に接続すれば、筒内部の視認性が高まり、一方で帯を効果的に展開配備することができる。また、斜端加工を施した先端を有する結紮筒の外側表面に押し付けて預けられている各結紮帯は、長手方向に方向付けられた単数又は複数の牽引紐を採用すれば、斜端加工部の存在にもかかわらず、首尾よく且つ効果的に展開配備することができる、ということが判明している。従って、1つの実施形態では、斜端加工を施した先端を有する結紮筒は、外側表面に押し付けて配置されている1つ又は複数の結紮帯と、それら1つ又は複数の結紮帯を展開配備するための1つ又は複数の牽引紐を含んでいる。その様な筒は、内視鏡の端に取り付けられ、ここで説明している発明的再構築方法に、又は他の用途に使用さすることができる。
【0060】
追加の実施形態では、本発明は、ここで説明しているような食道又は胃の様な体内通路を再構築するためのキットを提供しており、同キットは、体内通路の管腔から組織を切除し又は他のやり方で除去するための、ここで説明している手段又は装置と、例えば、ここで説明しているGERD又は肥満の治療で体内通路を再構築するための同手段又は装置の使用法に関する取扱説明を含む書面資料を含んでいる。キットは、例えば、滅菌医用包装で取扱説明書と同梱された、手段又は装置を含んでいる。本発明の関連の実施形態は、その様な手段又は装置を配布し、又は別のやり方で事業を行うための方法を含んでおり、同方法には、体内通路の再構築に使用されるその様な手段又は装置を配布すること、及び、更には、体内通路を再構築するためのその様な手段又は装置の使用法に関する情報を配布することが含まれる。その様な情報は、手段又は装置に同梱して、又は別々に配布することができ、例えば、インターネットの様な世界的なコンピュータ通信ネットワークを含む通信ネットワーク上で、情報又は取扱説明を入手できるようにしているやり方が挙げられる。
【0061】
本発明の特定の態様の更なる理解を促すために、下に実施例を提示する。なお、それら実施例は例示を目的としており、何ら限定を課すものではない。
実施例1
この例では、家畜用ブタに、ブタの胃食道接合部(GEJ)を再構築する様式で、内視鏡的管腔内粘膜形成術(ELM)を行った。1番目のブタ(ブタ#1)は、(GEJ)の管腔の直径を約2分の1小さくするために、噴門のELMを受けた。これを達成すべく、Duette(登録商標)Multi-band Mucosectomy 装置(米国ノースカロライナ州ウインストン・セーラムのWilson-Cook Medical, Inc.社、CookTM Endoscopy)を装備した内視鏡システムを使用し、噴門の周り円周方向に3個所の部位で組織を縛って切除したが、これは噴門の周囲の約70%に相当する。2番目のブタ(ブタ#2)は、5週間後に伸延バルーンを使用して処置を逆行させたことを除き、同様に治療した。それら実験用ブタは、対照群と共に、エサの摂取量を無制限とし、水分は自由に摂取できるようにした。ブタは、研究期間中、健康活発であった。この研究の結果を図13、図14、図15にグラフで示している。見て分かるように、治療を受けた2匹のブタは、対照群のブタに比較し、体重増加が著しく少なかった。更に、ブタ#2は、処置の逆行後は、体重増加が加速した。
実施例2
この実施例では、内視鏡的管腔内粘膜形成術(ELM)を使用し、家畜用ブタに胃底皺襞形成術を行った。実施例1と同様に、Duette(登録商標)Multi-band Mucosectomy 装置を装備した内視鏡システムを使用した。結紮と切除を繰り返して、胃の底部の粘膜及び粘膜下組織を10平方センチメートル除去した。胃の最も拡張する部分である胃底は、切除後の治癒と同時に縮んで再構築されていた。このブタは、対照群共々、5週間に亘り、エサの摂取量を無制限とし、水分は自由に摂取できるようにした。ブタは、研究期間中、健康活発であり、治療を受けたブタは、対照群のブタに比較し、体重増加が著しく少なかった。
【0062】
例示的実施形態を図と上記記述で詳しく説明してきたが、それらは例示を目的とし、何ら制限を課すものではないと見なされるべきであり、好適な実施形態を示し説明したに過ぎず、本発明の精神に含まれる全ての変更及び修正は保護の対象とされることを求める旨理解されたい。英文明細書の冠詞「a」、「an」に当たる「或る」、「said」に当たる「前記」、及び「the」に当たる「当該の」は、単数の要素に限らず、1つ又は複数のそのような要素を包含しているものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を治療するための方法において、
前記患者の体内通路が再構築される結果となる治癒反応を引き起こすことを目的として、前記体内通路の管腔表面から組織を切除する段階から成る、方法。
【請求項2】
前記切除する段階は、粘膜組織及び粘膜下組織の1つ又はそれ以上の切除を施す段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記切除する段階は、前記体内通路の目標領域内で円周方向に分散した複数の切除を施す段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記体内通路は食道である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記再構築は、前記患者の胃食道逆流を軽減するのに効果的である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記体内通路は胃である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記再構築は、前記胃に狭い部分を作成し、前記患者の満腹感を修正するのに効果的である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記切除中に、内視鏡で前記体内通路を視覚化する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記内視鏡は、作業チャネルを有しており、前記切除する段階は、前記チャネルを通して実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記切除する段階は、電気焼灼スネアのループを前記作業チャネルに通す段階と、組織を前記ループ内に捕縛する段階と、前記捕縛した組織を前記ループで切断する段階と、を含んでいる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組織を前記ループ内に捕縛する前に、前記組織を帯で縛る段階を更に含んでいる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記縛る段階は、真空によって容器内に組織の疑似ポリープを作成する段階と、前記疑似ポリープの周りに帯を展開配備する段階を含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記患者を、胃食道逆流障害を患っていると診断する段階と、
前記診断に基づき、前記切除作業を実施する段階と、を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記患者を、肥満の治療が必要であると診断する段階と、
前記診断に基づき、前記切除作業を実施する段階と、を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記切除する段階は、前記体内通路の下層の筋肉組織を実質的に傷付けること無く、前記体内通路から管腔組織を切除する段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記体内通路は、食道である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記体内通路は胃である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記組織は、非病変組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記組織は、粘膜と粘膜下組織を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記切除する段階の前に、前記体内通路の直径を測定する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
体内管腔を再構築するためのシステムにおいて、
前記体内管腔と前記体内管腔内に位置する少なくとも1つの既知の寸法の基準の画像を生成することができるように構成されている内視鏡と、
前記画像内での前記基準と前記体内管腔との比較に基づき、前記体内管腔の寸法を計算するためのソフトウェアと、
前記体内管腔から組織を除去するための管腔内外科装置と、を備えているシステム。
【請求項22】
前記内視鏡外科装置はスネアを備えている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記スネアは、スネア本体部分とスネアループを有しており、前記内視鏡は作業チャネルを有しており、前記スネア本体部分と前記スネアループは、前記作業チャネルを通して受け入れることができ、その状態で、前記体内管腔から組織を除去するように操作することができる、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記内視鏡の遠位端上に装着され、前記作業チャネルに掛けた真空によって引き出された組織をその中に受け入れる働きをすることができる、筒を更に備えている、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記筒は、前記筒上に預けられた1つ又は複数の結紮帯を備えている、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
医療装置において、
内視鏡結紮器筒と、
前記結紮筒上に預けられた1つ又は複数の結紮帯と、
前記1つ又は複数の結紮帯と作動的に関係付けられた1本の牽引糸であって、前記1つ又は複数の結紮帯を前記結紮筒から展開配備させるように操作することができる牽引糸と、
を備えている医療装置。
【請求項27】
更に、内視鏡を備えており、前記内視鏡結紮器筒は前記内視鏡上に取り付けられている、請求項26に記載の医療装置。
【請求項28】
前記結紮器筒は、近位端と遠位端を有しており、前記遠位端には斜端加工が施されている、請求項26に記載の医療装置。
【請求項29】
医療装置において、
近位端と斜端加工を施した遠位端を有する内視鏡結紮器筒と、
前記結紮筒上に預けられている1つ又は複数の結紮帯であって、前記斜端加工を施した遠位端から展開配備させることができる結紮帯と、を備えている医療装置。
【請求項30】
前記1つ又は複数の結紮帯と作動的に関係付けられた1つ又は複数の牽引糸であって、前記1つ又は複数の結紮帯を前記結紮筒から展開配備させるように操作することができる牽引糸を更に備えている、請求項29に記載の医療装置。
【請求項31】
患者を治療するための方法において、
前記患者の体内通路が再構築される結果となる治癒反応を引き起こすことを目的として、前記体内通路の管腔表面から組織を除去する段階から成り、前記除去する段階では、下層の筋肉組織の層を実質的に傷付けること無く粘膜組織及び粘膜下組織が除去される、方法。
【請求項32】
前記除去する段階は、粘膜組織及び粘膜下組織を前記筋肉組織から分離し、その後、前記粘膜組織と前記粘膜下組織を除去する段階を含んでいる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記分離する段階は、前記粘膜組織と前記粘膜下組織を筒の中に引き込む段階を含んでいる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
医療装置において、
近位端と斜端加工を施した遠位端を有する内視鏡結紮器筒と、
前記結紮筒上に預けられている1つ又は複数の結紮帯であって、前記斜端加工を施した遠位端から展開配備させることができる結紮帯と、を備え、
前記1つ又は複数の結紮帯と作動的に関係付けられた1つ又は複数の牽引糸であって、前記1つ又は複数の結紮帯を前記結紮筒の前記斜端加工を施した遠位端から展開配備させるように操作することができる牽引糸を更に備えている、医療装置。
【請求項35】
前記1つ又は複数の結紮帯は、前記1つ又は複数の結紮帯と作動的に関係付けられた1本の牽引糸であって、前記1つ又は複数の牽引糸を前記結紮筒の前記斜端加工を施した遠位端から展開配備させるように操作することができる牽引糸を備えている、請求項34に記載の医療装置。
【請求項36】
前記1つ又は複数の結紮帯は多数の結紮帯を含む、請求項35に記載の医療装置。
【請求項37】
前記牽引糸は、前記結紮帯に押し付けて配置され前記牽引糸が引かれると前記結紮帯を容易に動かせるように構成された複数の係合部材を含む、請求項36に記載の医療装置。
【請求項38】
前記係合部材は結び目である、請求項37に記載の医療装置。
【請求項39】
前記係合部材はポリマー製のビーズである、請求項37に記載の医療装置。
【請求項40】
前記牽引糸は、前記結紮器筒の周囲に輪状に巻かれ、前記牽引糸を引いたときに前記結紮帯が制御されたやり方で次々と展開配備されるように前記結紮帯を通して配置される、請求項36から39のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項41】
前記牽引糸は、前記牽引糸を引いたときに前記結紮帯が制御されたやり方で次々と展開配備されるように、前記結紮帯を通して直線形のパターンに配置される、請求項36から39のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項42】
前記斜端加工を施した遠位端は前記結紮器筒の長尺側の側部を提供する、請求項35から41のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項43】
前記1本の牽引糸が、前記結紮器筒の前記長尺側の側部でまたはほぼその位置で前記結紮器筒を出る、請求項42に記載の医療装置。
【請求項44】
前記結紮器筒は、前記牽引糸を引いたときに該牽引糸が前記結紮器筒の円周方向周りに移動するのを防ぐために、内側または外側の改造部を含む、請求項43に記載の医療装置。
【請求項45】
前記改造部は内側改造部である、請求項44に記載の医療装置。
【請求項46】
前記内側改造部はフープまたはリングである、請求項45に記載の医療装置。
【請求項47】
前記斜端加工を施した遠位端は、前記結紮器筒が組織に対して角度をつけて配置されたときに前記結紮器筒により組織の捕縛を容易にするように操作可能である、請求項34から46のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項48】
前記結紮器筒は、該結紮器筒内に捕縛された組織の量を判定するための視認可能な構成部を備えている、請求項34から47のいすれか1項に記載の医療装置。
【請求項49】
内視鏡を更に有し、前記結紮器筒が前記内視鏡上に受けられる、請求項34から38のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項50】
前記内視鏡は前記結紮器筒内へ吸引を送るように動作可能である、請求項49に記載の医療装置。
【請求項51】
滅菌医用包装内に上記請求項34から50のいずれか1項に記載の医療装置を含むキット。
【請求項52】
外科用電子スネアを更に有する、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
前記スネアは編組式ステンレス鋼ケーブルで作られているスネアループを有している、請求項52に記載のキット。
【請求項54】
体内通路を再構築するための、キットの装置の使用法に関する書面を更に含む、請求項51から53のいずれかに記載のキット。
【請求項55】
前記書面は、胃食道逆流症(GERD)の治療で体内通路を再構築するためのキットの装置の使用法に関するものである、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
前記書面は、肥満の治療で体内通路を再構築するためのキットの装置の使用法に関するものである、請求項54に記載のキット。
【請求項1】
患者を治療するための方法において、
前記患者の体内通路が再構築される結果となる治癒反応を引き起こすことを目的として、前記体内通路の管腔表面から組織を切除する段階から成る、方法。
【請求項2】
前記切除する段階は、粘膜組織及び粘膜下組織の1つ又はそれ以上の切除を施す段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記切除する段階は、前記体内通路の目標領域内で円周方向に分散した複数の切除を施す段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記体内通路は食道である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記再構築は、前記患者の胃食道逆流を軽減するのに効果的である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記体内通路は胃である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記再構築は、前記胃に狭い部分を作成し、前記患者の満腹感を修正するのに効果的である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記切除中に、内視鏡で前記体内通路を視覚化する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記内視鏡は、作業チャネルを有しており、前記切除する段階は、前記チャネルを通して実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記切除する段階は、電気焼灼スネアのループを前記作業チャネルに通す段階と、組織を前記ループ内に捕縛する段階と、前記捕縛した組織を前記ループで切断する段階と、を含んでいる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組織を前記ループ内に捕縛する前に、前記組織を帯で縛る段階を更に含んでいる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記縛る段階は、真空によって容器内に組織の疑似ポリープを作成する段階と、前記疑似ポリープの周りに帯を展開配備する段階を含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記患者を、胃食道逆流障害を患っていると診断する段階と、
前記診断に基づき、前記切除作業を実施する段階と、を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記患者を、肥満の治療が必要であると診断する段階と、
前記診断に基づき、前記切除作業を実施する段階と、を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記切除する段階は、前記体内通路の下層の筋肉組織を実質的に傷付けること無く、前記体内通路から管腔組織を切除する段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記体内通路は、食道である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記体内通路は胃である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記組織は、非病変組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記組織は、粘膜と粘膜下組織を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記切除する段階の前に、前記体内通路の直径を測定する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
体内管腔を再構築するためのシステムにおいて、
前記体内管腔と前記体内管腔内に位置する少なくとも1つの既知の寸法の基準の画像を生成することができるように構成されている内視鏡と、
前記画像内での前記基準と前記体内管腔との比較に基づき、前記体内管腔の寸法を計算するためのソフトウェアと、
前記体内管腔から組織を除去するための管腔内外科装置と、を備えているシステム。
【請求項22】
前記内視鏡外科装置はスネアを備えている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記スネアは、スネア本体部分とスネアループを有しており、前記内視鏡は作業チャネルを有しており、前記スネア本体部分と前記スネアループは、前記作業チャネルを通して受け入れることができ、その状態で、前記体内管腔から組織を除去するように操作することができる、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記内視鏡の遠位端上に装着され、前記作業チャネルに掛けた真空によって引き出された組織をその中に受け入れる働きをすることができる、筒を更に備えている、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記筒は、前記筒上に預けられた1つ又は複数の結紮帯を備えている、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
医療装置において、
内視鏡結紮器筒と、
前記結紮筒上に預けられた1つ又は複数の結紮帯と、
前記1つ又は複数の結紮帯と作動的に関係付けられた1本の牽引糸であって、前記1つ又は複数の結紮帯を前記結紮筒から展開配備させるように操作することができる牽引糸と、
を備えている医療装置。
【請求項27】
更に、内視鏡を備えており、前記内視鏡結紮器筒は前記内視鏡上に取り付けられている、請求項26に記載の医療装置。
【請求項28】
前記結紮器筒は、近位端と遠位端を有しており、前記遠位端には斜端加工が施されている、請求項26に記載の医療装置。
【請求項29】
医療装置において、
近位端と斜端加工を施した遠位端を有する内視鏡結紮器筒と、
前記結紮筒上に預けられている1つ又は複数の結紮帯であって、前記斜端加工を施した遠位端から展開配備させることができる結紮帯と、を備えている医療装置。
【請求項30】
前記1つ又は複数の結紮帯と作動的に関係付けられた1つ又は複数の牽引糸であって、前記1つ又は複数の結紮帯を前記結紮筒から展開配備させるように操作することができる牽引糸を更に備えている、請求項29に記載の医療装置。
【請求項31】
患者を治療するための方法において、
前記患者の体内通路が再構築される結果となる治癒反応を引き起こすことを目的として、前記体内通路の管腔表面から組織を除去する段階から成り、前記除去する段階では、下層の筋肉組織の層を実質的に傷付けること無く粘膜組織及び粘膜下組織が除去される、方法。
【請求項32】
前記除去する段階は、粘膜組織及び粘膜下組織を前記筋肉組織から分離し、その後、前記粘膜組織と前記粘膜下組織を除去する段階を含んでいる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記分離する段階は、前記粘膜組織と前記粘膜下組織を筒の中に引き込む段階を含んでいる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
医療装置において、
近位端と斜端加工を施した遠位端を有する内視鏡結紮器筒と、
前記結紮筒上に預けられている1つ又は複数の結紮帯であって、前記斜端加工を施した遠位端から展開配備させることができる結紮帯と、を備え、
前記1つ又は複数の結紮帯と作動的に関係付けられた1つ又は複数の牽引糸であって、前記1つ又は複数の結紮帯を前記結紮筒の前記斜端加工を施した遠位端から展開配備させるように操作することができる牽引糸を更に備えている、医療装置。
【請求項35】
前記1つ又は複数の結紮帯は、前記1つ又は複数の結紮帯と作動的に関係付けられた1本の牽引糸であって、前記1つ又は複数の牽引糸を前記結紮筒の前記斜端加工を施した遠位端から展開配備させるように操作することができる牽引糸を備えている、請求項34に記載の医療装置。
【請求項36】
前記1つ又は複数の結紮帯は多数の結紮帯を含む、請求項35に記載の医療装置。
【請求項37】
前記牽引糸は、前記結紮帯に押し付けて配置され前記牽引糸が引かれると前記結紮帯を容易に動かせるように構成された複数の係合部材を含む、請求項36に記載の医療装置。
【請求項38】
前記係合部材は結び目である、請求項37に記載の医療装置。
【請求項39】
前記係合部材はポリマー製のビーズである、請求項37に記載の医療装置。
【請求項40】
前記牽引糸は、前記結紮器筒の周囲に輪状に巻かれ、前記牽引糸を引いたときに前記結紮帯が制御されたやり方で次々と展開配備されるように前記結紮帯を通して配置される、請求項36から39のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項41】
前記牽引糸は、前記牽引糸を引いたときに前記結紮帯が制御されたやり方で次々と展開配備されるように、前記結紮帯を通して直線形のパターンに配置される、請求項36から39のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項42】
前記斜端加工を施した遠位端は前記結紮器筒の長尺側の側部を提供する、請求項35から41のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項43】
前記1本の牽引糸が、前記結紮器筒の前記長尺側の側部でまたはほぼその位置で前記結紮器筒を出る、請求項42に記載の医療装置。
【請求項44】
前記結紮器筒は、前記牽引糸を引いたときに該牽引糸が前記結紮器筒の円周方向周りに移動するのを防ぐために、内側または外側の改造部を含む、請求項43に記載の医療装置。
【請求項45】
前記改造部は内側改造部である、請求項44に記載の医療装置。
【請求項46】
前記内側改造部はフープまたはリングである、請求項45に記載の医療装置。
【請求項47】
前記斜端加工を施した遠位端は、前記結紮器筒が組織に対して角度をつけて配置されたときに前記結紮器筒により組織の捕縛を容易にするように操作可能である、請求項34から46のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項48】
前記結紮器筒は、該結紮器筒内に捕縛された組織の量を判定するための視認可能な構成部を備えている、請求項34から47のいすれか1項に記載の医療装置。
【請求項49】
内視鏡を更に有し、前記結紮器筒が前記内視鏡上に受けられる、請求項34から38のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項50】
前記内視鏡は前記結紮器筒内へ吸引を送るように動作可能である、請求項49に記載の医療装置。
【請求項51】
滅菌医用包装内に上記請求項34から50のいずれか1項に記載の医療装置を含むキット。
【請求項52】
外科用電子スネアを更に有する、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
前記スネアは編組式ステンレス鋼ケーブルで作られているスネアループを有している、請求項52に記載のキット。
【請求項54】
体内通路を再構築するための、キットの装置の使用法に関する書面を更に含む、請求項51から53のいずれかに記載のキット。
【請求項55】
前記書面は、胃食道逆流症(GERD)の治療で体内通路を再構築するためのキットの装置の使用法に関するものである、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
前記書面は、肥満の治療で体内通路を再構築するためのキットの装置の使用法に関するものである、請求項54に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−228536(P2012−228536A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−155700(P2012−155700)
【出願日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【分割の表示】特願2009−510076(P2009−510076)の分割
【原出願日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(301046787)インディアナ・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・テクノロジー・コーポレーション (24)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−155700(P2012−155700)
【出願日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【分割の表示】特願2009−510076(P2009−510076)の分割
【原出願日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(301046787)インディアナ・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・テクノロジー・コーポレーション (24)
【Fターム(参考)】
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