説明

飲料用容器の弁装置

【目的】 飲料用容器内に圧力が残存した状態においてハウジングを取り外した場合においても、このハウジングの飛び出しを防止し得る飲料用容器の弁装置を提供することを目的とする。
【構成】 飲料用容器2に設けられた口金3内に螺着されるとともに、内部に弁機構Vが組み込まれたハウジング11を備え、前記口金の内部に形成されている螺子部3aあるいは前記ハウジングに形成されている螺子部14の内の少なくとも一方の螺子部が、軸方向に隙間Lをおいて2箇所に形成され、他方の螺子部が、前記隙間よりも短く形成されているとともに、この他方の螺子部が、前記ハウジングを取り外す際に、その途中において前記一方の螺子部に形成されている隙間内に入り込む位置に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、飲料用容器の弁装置に係わり、特に、ビール樽や焼酎等の酒類の容器等の飲料用容器に用いて好適な弁装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ビールや焼酎等の飲料の貯蔵に用いられる飲料用容器においては、飲料用容器の保管や搬送中におけるガスや内容物の漏れを防止し、かつ、使用時においては、内容物の抽出を円滑に行なわせるようにした弁装置が取り付けられている。
【0003】そして、このような飲料用容器としてのビール樽に用いられている弁装置として、たとえば、図1および図2に示す構成のものが知られている。
【0004】図1および図2に符号1で示す弁装置は、飲料用容器としてのビール樽2の開口部に一体に設けられた口金3の内部に装着されるもので、前記口金3に螺子部3aを介して螺着されるとともに、内部に弁機構Vが組み込まれたハウジング4を備えている。
【0005】そして、使用状態においては、図1に示すように、前記ハウジング4にアタッチメント(ディスペンサー)5を装着して弁機構Vを開放するとともに、飲料用容器2内に内容物押し出し用の加圧気体(二酸化炭素)を送り込み、その圧力によってビールを押し上げることにより、ビールをジョッキ等の容器に供給するようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような従来の弁装置1においては、ハウジング4の交換やビール樽2の洗浄等に際して、前記ビール樽2から取り外す必要がある。しかしながら、弁装置1を取り外す際にビール樽2内に圧力が残っていると、口金3とハウジング4との螺着が外れると同時に、ハウジング4が前記内圧を受けて口金3から飛び出してしまうことが考えられる。このように、ビール樽2内が加圧状態となされる原因としては、使用後にビール樽2内にビールが残っていると、このビールから炭酸ガスが発生して内部のガス濃度が高まることが挙げられる。特に、その残りの有無を確認するためにビール樽2を振ってビールを撹拌してしまった場合に、内部圧力の上昇が顕著となる。また、内容物自体からガスの発生がない場合においても、押し出し用のガスが残存する場合には、飲料用容器内が加圧状態となされる。さらには、使用後の飲料用容器を屋外に放置しておいた場合にも、飲料用容器が太陽光によって加熱されて、内部圧力が上昇させられる。そして、このような不具合を回避するためには、ハウジング4の取り外しに先立ってビール樽2内の圧抜きを行なう必要があるが、弁機構Vを開放するための特殊な工具を必要とすることから、作業場所が特定されてしまうといった新たな問題点が発生する。
【0007】本発明は、前述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、飲料用容器内に圧力が残存した状態においてハウジングを取り外した場合においても、このハウジングの飛び出しを防止し得る飲料用容器の弁装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に記載の飲料用容器の弁装置は、前述した目的を達成するために、特に、飲料用容器に一体に取り付けられた口金に螺着されるとともに、内部に弁機構が組み込まれたハウジングを備え、前記口金の内部に形成されている螺子部あるいは前記ハウジングに形成されている螺子部の内の少なくとも一方の螺子部が、軸方向に隙間をおいて2箇所に形成され、他方の螺子部が、前記隙間よりも短く形成されているとともに、この他方の螺子部が、前記ハウジングを取り外す際に、その途中において前記一方の螺子部に形成されている隙間内に入り込む位置に形成されていることを特徴とする。
【0009】
【作用】本発明の請求項1に記載の飲料用容器の弁装置によれば、弁装置を取り外すべく回転させると、螺合状態にある螺子部間の螺合状態が解除される。このような両螺子部の離脱により、弁装置は、飲料用容器内の圧力を受けて口金から飛び出す方向に移動させられるが、このような弁装置の移動に伴って、他方の螺子部が、一方の一対の螺子部間に位置させられたのちに、他方の螺子部の内の、螺合が解除された螺子部以外の螺子部に当接させられる。
【0010】これによって、弁装置の飛び出しが防止されるとともに、各螺子部間の隙間から、飲料用容器内の加圧気体が外部へ放出されて圧抜きが行われる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の一実施例について、図3および図4に基づき説明する。なお、以下の説明中、図1および図2と共通する部分については同一符号を用いて説明を簡略化する。
【0012】図3および図4において符号20は、本実施例に係わる弁装置を示し、この弁装置10は、弁機構Vが装着されたハウジング11を備え、ビール樽2の口金3の内部にねじ込まれることによって取り付けられるようになっている。
【0013】詳述すれば、前記口金3は、図3に示すように、外方開口端部内周面近傍に雌螺子部3aが形成されているとともに、内方下端内周縁に、内側へ向かって突出する内方フランジ12が全周に亙って突設されており、また、前記ハウジング11は、その外面形状が、前記口金3の内径よりも若干小さな外径となされた大径部11aと、前記内方フランジ12の内径よりも若干小さな外径となされた小径部11bとなされている。
【0014】また、これらの大径部11aと小径部11bとの連続部分に形成されている段部にはシールリング13が装着されており、前記ハウジング11を口金3内に螺着した状態において、ハウジング11の大径部11aと内方フランジ12とによって前記シールリング13が弾性変形させられることにより、ハウジング11と口金3との間の気密性が保持されるようになっている。
【0015】さらに、前記ハウジング11の大径部11aの外周面には、前記口金3の雌螺子部3aと同一呼び径の雄螺子部14が形成されている。そして、本実施例においては、前記雄螺子部14が、ハウジング11の軸線方向に所定距離L離間させられて2箇所に形成されており、かつ、これらの両雄螺子部14a・14bの間の隙間Lが、前記口金3に形成されている雌螺子部3aの長さMよりも長く形成されている。
【0016】前記弁機構Vは、前記ハウジング11の内周面に形成された弁座11cと、前記ハウジング11内に、その軸線方向に沿って移動可能に装着された環状のガスバルブ本体15と、このガスバルブ本体15と前記ハウジング11との間に介装されて、前記ガスバルブ本体15を前記弁座11cへ圧接させるガスバルブスプリング16と、前記ガスバルブ本体15に一体に取り付けられるとともに、前記ハウジング11の下方へ突出して設けられたダウンチューブ17と、このダウンチューブ17内にその軸線方向に移動可能に装着されたビールバルブ本体18と、このビールバルブ本体18と前記ダウンチューブ7との間に介装されて、前記ビールバルブ本体18を前記ガスバルブ本体15の内周面に形成された弁座15aに圧接させるビールバルブスプリング19とによって構成されている。
【0017】前記ガスバルブスプリング16は、その一端が前記ガスバルブ本体15の着座面と反対側の面に当接させられ、また、他端が前記ハウジング11の内方下端に形成されている内方フランジ20によって係止されている環状のバネ座21へ当接されることにより、これらのガスバルブ本体15とバネ座21との間に圧縮状態で介装支持されている。
【0018】また、前記ビールバルブスプリング19は、ビールバルブ本体18と、前記ダウンチューブ17の途中に形成された絞り部17aとの間に圧縮状態で介装されている。
【0019】このように構成された本実施例に係わる弁装置10においては、保管中ないしは搬送中では、ガスバルブ本体15とビールバルブ本体18とが、ガスバルブスプリング16やビールバルブスプリング19の弾発力およびビール樽2内の圧力を受けて、それぞれ、弁座11c・15aへ着座させられている。これによって、弁機構Vが密閉状態に保持されて、内容物であるビールや炭酸ガスの漏れが防止されている。
【0020】一方、何等かの原因で、前記弁装置10と口金3との螺着が緩んだ場合や、洗浄等の目的のために弁装置10を回転させた場合等において、口金3の雌螺子部3aとハウジング10の外側の雄螺子部14aとの螺合が外れた時点で、弁装置10が、ビール樽2内の圧力を受けて口金3からビール樽2の外方へ向けて移動させられる。
【0021】そして、本実施例においては、ハウジング11の外側の雄螺子部14aと口金3の雌螺子部3aとの螺合が外れたのちに、前記弁装置10の移動に伴って、前記雌螺子部3aがハウジング11の両雄螺子部14a・14b間に位置させられたのちに、図4に示すように、内側の雄螺子部14bに当接させられる。この結果、弁装置10が口金3へ係合させられることとなって、口金3からの飛び出しが防止される。
【0022】また、前述したように口金3の雌螺子部3aと弁装置11の内側の雄螺子部14bとの当接が行なわれて、弁装置11の飛び出しが阻止された状態において、弁装置11に取り付けられているシールリング13が口金3から離間させられることにより、口金3とハウジング11との間の密閉機能が失われて、両者間の隙間から、ビール樽2内の気体が外部へ放出されて、ビール樽2内部の圧力が減少させられる。
【0023】そして、このようにビール樽2内の圧力が十分に減少させられたのちに、口金3の雌螺子部3aとハウジング11の内側の雄螺子部14bとを噛み合わせ、さらにハウジング11を回転させてこれらの螺合状態を解除することにより、ハウジング11、すなわち、弁装置10が口金3から取り外される。したがって、ビール樽2内に圧力が残存している状態で弁装置10を取り外す場合や、何等かの原因で弁装置10と口金3との螺着が緩んで両者の螺合が外れてしまった場合においても、弁装置10の不用意な飛び出しが防止される。
【0024】また、意図的に弁装置10を取り外す場合においても、残存する圧力を除去するための特殊な工具を用いる必要がなくなり、その作業が簡便なものとなる。
【0025】なお、前記実施例において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、適用する飲料用容器の種類や設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0026】たとえば、前記実施例においては、口金3に設けられる螺子部を前述した雌螺子部3a一箇所とし、ハウジング11に設けられる螺子部を一対の離間した雄螺子部14a・14bとした例について示したが、これに代えて、口金3に設けられる雌螺子部も前記雄螺子部と同一条件のもとに、2箇所に形成することも可能であり、また、口金3の内周の間隔をおいた2箇所に雌螺子部を設けておき、ハウジング11の、シールリング13の近傍にのみ雄螺子部を設けることによっても同様の機能が達成される。
【0027】また、口金3やハウジング11に設けられる螺子部が、周方向に連続した形態を示したが、周方向の適宜位置において軸方向に延びる溝を設けて不連続部を形成するようにしてもよいものである。このような構成とすることにより、ハウジング11の移動に伴ってシールリング13による密閉作用が失われた時点における、ハウジング11と口金3との隙間での気体の流路面積が確保され、円滑な圧抜き機能が得られる。
【0028】さらに、前記実施例においては、飲料用容器としてビール樽を示したが、これに限られるものではなく、内容物自体からガスが発生する飲料を収納する容器や、加圧状態で貯蔵される液体を収納する容器、また、内容物を取り出す際に、容器内に加圧空気を送り込むようにした容器(たとえば、焼酎用の容器)等への適用も勿論可能である。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係わる飲料用容器の弁装置は、飲料用容器に一体に取り付けられた口金に螺着されるとともに、内部に弁機構が組み込まれたハウジングを備え、前記口金の内部に形成されている螺子部あるいは前記ハウジングに形成されている螺子部の内の少なくとも一方の螺子部が、軸方向に隙間をおいて2箇所に形成され、他方の螺子部が、前記隙間よりも短く形成されているとともに、この他方の螺子部が、前記ハウジングを取り外す際に、その途中において前記一方の螺子部に形成されている隙間内に入り込む位置に形成されていることを特徴とするもので、つぎのような優れた効果を奏する。
【0030】飲料用容器内に圧力が残存している状態に、弁装置と口金との螺着が緩んだ場合や、洗浄等の目的のために弁装置を回転させた場合等において、螺合状態にある他方の螺子部と一方の螺子部との螺合が外れた時点で、弁装置が飲料用容器内の圧力を受けて口金から飲料用容器の外方へ向けて移動させられるが、前記他方の螺子部が、前記螺着状態にあった一方の螺子部と間隔をおいて設けられている螺子部に当接させられる。この結果、弁装置を両螺子部を介して口金へ係合させることにより、弁装置の口金からの飛び出しを防止することができる。
【0031】そして、口金と弁装置とを係止状態に保持した状態において、口金とハウジングとの間に形成される隙間から、飲料用容器内のガスを外部へ放出することにより、飲料用容器内の圧力を減少させることができる。したがって、飲料用容器内の圧力が十分低下したのちにおいて、前記当接させられている螺子部どうしを噛み合わせ、さらに弁装置を回転させることにより、弁装置を口金すなわち飲料用容器から取り外すことができる。
【0032】しかも、このような飲料用容器内の圧抜き操作に際して、特別な工具を用いる必要がなく、作業位置が限定されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の飲料用容器の弁装置の一例を示すもので、飲料用容器に装着され、かつ、アタッチメントが装着された状態を示す要部の縦断面図である。
【図2】従来の飲料用容器の弁装置の一例を示す縦断面図である。
【図3】本発明の飲料用容器の弁装置の一実施例を示すもので、弁装置を口金に装着した状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の飲料用容器の弁装置の一実施例を示すもので、弁装置と口金との螺合状態が解除された状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
2 ビール樽(飲料用容器)
3 口金
3a 雌螺子部(他方の螺子部)
10 弁装置
11 ハウジング
14 雄螺子部(一方の螺子部)
V 弁機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】 飲料用容器に一体に取り付けられた口金の内部に螺着されて、前記飲料用容器からのガスあるいは内容物の漏れを防止するようにした飲料用容器の弁装置であって、前記口金内に螺着されるとともに、内部に弁機構が組み込まれたハウジングを備え、前記口金の内部に形成されている螺子部あるいは前記ハウジングに形成されている螺子部の内の少なくとも一方の螺子部が、軸方向に隙間をおいて2箇所に形成され、他方の螺子部が、前記隙間よりも短く形成されているとともに、この他方の螺子部が、前記ハウジングを取り外す際に、その途中において前記一方の螺子部に形成されている隙間内に入り込む位置に形成されていることを特徴とする飲料用容器の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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