養殖真珠
【課題】ICタグ保護材料をICタグが埋め込まれた真珠核に塗布することで、ICタグに海水が接触しICタグが破壊されることを防止すること。
【解決手段】
真珠核2を真珠貝の体内に挿入し海中で養殖を行う養殖真珠1において、真珠核2にICタグ3を埋め込むこと、真珠核2の外周にICタグ保護材料5を塗布することにより、真珠核2に真珠層4が形成されるまでの1年から3年までの間、ICタグ3を海水または淡水から守ることができる。また、真珠核2内にICタグ3を埋め込み、その後真珠核2の外周に真珠層4ができることから、養殖真珠1の完成後ICタグ3を成型する必要がない。
【解決手段】
真珠核2を真珠貝の体内に挿入し海中で養殖を行う養殖真珠1において、真珠核2にICタグ3を埋め込むこと、真珠核2の外周にICタグ保護材料5を塗布することにより、真珠核2に真珠層4が形成されるまでの1年から3年までの間、ICタグ3を海水または淡水から守ることができる。また、真珠核2内にICタグ3を埋め込み、その後真珠核2の外周に真珠層4ができることから、養殖真珠1の完成後ICタグ3を成型する必要がない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真珠核を真珠貝の体内に挿入し海中で養殖を行う養殖真珠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、宝石は高級品として人々に親しまれてきた。宝石は高級品であること、及び美観性、神秘性から、思い出の品として利用がされている。
例えば、宝石は思い出の品となるため、従来から宝石と思い出との結びつきを強くするため、宝石に加工が施されてきた。宝石である琥珀に思い出の品である遺骨を収納した装身具が提案されている。この装身具は、琥珀に円筒孔を形成し円筒孔の内壁に金箔を貼着し、円筒孔に思い出の品である遺骨を入れてシリコーン樹脂を注入して硬化させることにより、遺骨を琥珀に収納している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
一方、宝石の中でも人工的に宝石を製造することができるものとして養殖真珠がある。
天然真珠は、真珠貝の体内に偶然入り込んだ何らかの異物に対して、真珠貝が自己防衛反応を起こし、外とう膜という貝の組織が、その異物を真珠質で包み込む。真珠質で包み込むことにより外周に真珠層を形成し天然真珠が完成する。それに対して、養殖真珠は、貝殻を丸く磨いた真珠核を真珠貝の体内に挿入することで、人工的に真珠貝に真珠層を形成させることができるものである。
養殖真珠の製造方法は、下記の特許文献2乃至特許文献5に記載されているが、広く行われているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−6705号公報
【特許文献2】特開平05−124814号公報
【特許文献3】特開平05−123075号公報
【特許文献4】特開2002−065100号公報
【特許文献5】特開2002−027862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の宝石には以下の2つの問題があった。
すなわち、第1の問題として、特許文献1に係る装飾具に用いる琥珀を含む宝石は、思い出の品を宝石に取り付ける場合には宝石に孔を開け、思い出の品を挿入した後に孔を閉じる必要がある。
しかし、琥珀を含む宝石は、色合いや内包物などが一つ一つ異なる。そのため、琥珀を含む宝石の孔を閉じた場合、孔の部分の色合いが異なるため琥珀を含む宝石の意匠性を害することになる。したがって、宝石に対して思い出の品を後付けで行う場合には、意匠性を害する結果宝石そのものの価値が下がる問題がある。
【0006】
第2の問題として、例えば、養殖真珠の真珠核に思い出の品を埋め込むことで、思い出の品を含んだ養殖真珠を形成することができる。しかし、養殖真珠に挿入する真珠核は、1年〜3年海水にさらされることになる。そのため、真珠核に埋め込む思い出の品が海水に弱いものであると内部に埋め込んだ思い出の品が劣化する。特に、昨今では思い出の品として、写真やメッセージを記録したICタグを入れることが考えられるが、ICタグは機械製品であるため特に海水に弱いため問題となる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ICタグ保護材料をICタグが埋め込まれた真珠核に塗布することで、ICタグに海水が接触しICタグが破壊されることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様における養殖真珠は、以下の構成を有する。
(1)真珠核を真珠貝の体内に挿入し海中で養殖を行う養殖真珠において、前記真珠核にICタグを埋め込むこと、前記真珠核の外周、又は、ICタグの外周にICタグ保護材料が形成されること、が好ましい。
【0009】
(2)(1)に記載する養殖真珠において、前記ICタグ保護材料は、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀であること、が好ましい。
【0010】
(3)(1)又は(2)に記載する養殖真珠において、前記真珠核は、琥珀を熱溶融した穴にICタグを埋め込んで封入した琥珀を使用すること、が好ましい。
【0011】
(4)(3)に記載する養殖真珠において、真珠核内にDNAを乾燥させて粉末化したDNA粉末を挿入すること、が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記養殖真珠の作用及び効果について説明する。
(1)真珠核を真珠貝の体内に挿入し海中で養殖を行う養殖真珠において、前記真珠核にICタグを埋め込むこと、前記真珠核の外周、又は、ICタグの外周にICタグ保護材料が形成されることにより、ICタグが海水に接触するのを防止することができる。ICタグ保護材料が形成された真珠核は海水と接触しないため、真珠核の内部に埋め込まれたICタグも海水と接触することがない。また、ICタグ保護材料が形成されたICタグは海水と接触しない。そのため、ICタグが1年〜3年海水につかっていたとしても、ICタグを海水から守りつつ、養殖真珠を成型することができる。
また、真珠核にICタグを埋め込むことにより、非接触式のICタグのデータ読取装置にICタグ入の養殖真珠をかざせば、ICタグに記憶された思い出の写真や画像、情報等を読み取って確認することができる。
また、真珠核内にICタグが埋め込まれていることにより、成型された養殖真珠の外観上には何ら傷がなく真珠としての価値を損なうことがない。ICタグを養殖真珠の成型後に後付けすることも考えられるが、ICタグを後付けすると養殖真珠の外観にはICタグ挿入孔が形成され、真珠としての価値を損なうことになる。したがって、養殖真珠を成型する前の真珠核内にICタグが埋め込まれていることにより、外観を傷つけることなくICタグを養殖真珠の中に入れることができる。
また、ICタグは養殖真珠の中心からずれた部分に成型することにより、養殖真珠の加工がし易くなっている。
【0013】
(2)ICタグ保護材料は、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀であることにより、ICタグを埋め込んだ真珠核を海水から守ることができる。すなわち、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀には、塩類及び水分に対して強いという性質を有する。そのため、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀をICタグ保護材料として使用することにより、海水からICタグを守ることができる。
具体的には、古来の発掘される漆器は大部分が泥水の中に二千年も浸かっているが、発掘される漆器は腐らずに現存している。そのため、漆、又は漆と同じ効果を持つ柿渋、黄檗をICタグ保護材料として使用することにより、それを塗布した内部の真珠核及びその内部のICタグを海水から守ることができる。
柿渋とは、渋柿の青い果実からしぼりとった液のことである。
漆とは、ウルシの樹皮に傷をつけて採取した樹液(生漆(きうるし))に、油・着色剤などを加えて製した塗料のことである。
黄檗とは、キハダ(樹木)の別名であり、キハダの樹皮から作った染料のことである。
琥珀とは、広葉樹や針葉樹などの樹脂により形成されるものである。琥珀にはコパール、アンブロイド、ロジン等を含む。
柿渋、漆、黄檗、琥珀は古来から使用されているが、その効用についての研究及び使用はいまだにほとんどされていない状態にある。にもかかわらず本特許でその成分を理解し使用するにいたったのは、本出願人が樹木に関する深い知識を有する者だからである。
【0014】
(3)真珠核は、琥珀を熱溶融した穴にICタグを埋め込んで封入した琥珀を使用することにより、ICタグを埋め込んだ真珠核を海水から守ることができる。すなわち、琥珀には、塩類及び水分に対して強いという性質を有する。そのため、琥珀をICタグ保護材料として使用することにより、海水からICタグを守ることができる。また、琥珀は熱溶融することにより成型が容易であるため、ICタグを容易に封入することができる。
【0015】
(4)真珠核内にDNAを乾燥させて粉末化したDNA粉末を挿入する。DNA粉末は、乾燥されて水分含有量がすくないため、琥珀に挿入された後に腐敗しにくい。腐敗を防止されたDNA粉末又は個人情報を記憶するICタグを有するので、何年経っても養殖真珠を個人に正確に結びつけることができるため、養殖真珠を大切に扱う。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る図3に示す養殖真珠のGG概念断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る図1に示す養殖真珠のHH概念断面図である。
【図3】本発明の本実施形態に係る養殖真珠の製造工程の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<養殖真珠の構成>
図3に養殖真珠1の製造工程の概念図を示す。図1に、図3に示す養殖真珠1のGG概念断面図を示す。図2に、図1に示す養殖真珠1のHH概念断面図を示す。
図1に示すように、養殖真珠1は、真珠核2の周りに真珠層4が形成されたものである。真珠核2の中心部にはICタグ3が埋め込まれている。図2に示すように、ICタグ3養殖真珠1のGG断面(中心線Xからずれた断面)においては、養殖真珠1の中心線Xからずれた部分に埋め込まれている。
真珠核2は、淡水貝を球状に加工したもので、真珠の素になるものである。真珠核2は、淡水貝を、サイコロ形状とし、その後研磨機で角をとり球状とすることにより完成される。本実施形態における真珠核2の径は10mmである。
真珠層4は、貝殻成分を分泌する外套膜である。外套膜は細胞分裂して袋状になり、真珠を生成する真珠袋を生成する。真珠袋を生成する中でカルシウムの結晶と有機質層が交互に積層した結果真珠層が形成されたものである。本実施形態における真珠層4の厚みは1mmである。
【0018】
<ICタグの構成>
ICタグ3は、電波を受けて働く小型の電子装置である。図1に示すように、ICタグ3は、内部にICチップ31を内包した円板形状をしている。図2に示すように、ICタグ3は円板形状であるため、厚みは少ない。本実施形態においてICタグ3の径は5mmであり、厚さは1mmである。
ICタグ3は、外観は樹脂成型された被覆部32が形成され、被覆部32の中心部にICチップ31が埋め込まれている。ICチップ31の周りには被覆部32により固定されたアンテナ33が形成されている。
ICチップ31は、データの読み取り及び書き換えが可能な集積回路を組み込んだチップである。
【0019】
ICタグ3の外周には、ICタグ保護材料5が薄膜上に塗布されている。ICタグ3は、海水または淡水に1〜3年ほど浸かった状態で過ごす。そのため、ICタグ保護材料5は、防水の性質を有し、かつ防塩の性質を有するものを使用する。本実施形態においては、ICタグ保護材料5として柿渋、漆、黄檗、又は琥珀を用いる。柿渋、漆、黄檗、又は琥珀は防水の性質及び防塩の性質を有する。
なお、本実施形態においてはICタグ保護材料5として、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀を用いることとしたが、防水の性質及び防塩の性質を有するものであれば代替えすることができる。
また、本実施形態においてはICタグ保護材料5をICタグ3の外周に塗布する旨記載したが、ICタグ3を含んだ真珠核2の外周にICタグ保護材料5を塗布することもできる。ICタグ3を含んだ真珠核2の外周にICタグ保護材料5を塗布することにより、真珠核2内のICタグ3を海水から保護することができる。
【0020】
柿渋とは、渋柿の青い果実からしぼりとった液のことである。
柿渋の製造方法は、以下のとおりである。第1に、渋柿の青い果実を潰して果汁を絞り出し容器に収容する。第2に、渋柿の果汁を発酵させ熟成させる。渋柿の果汁が発酵し熟成すると、表面に薄い膜が張り、渋タンニンが強くでた柿渋が製造される。
本実施形態における柿渋は、一般の品質を有するものを使用している。具体的には、柿渋の性状は、赤褐色液体である。柿渋臭気は、独特の有機酸臭を有する。PHは、3.5〜4.5である。ボーメ比重は、4.5以上である。タンニン含有量は、3.0以上である。
【0021】
漆とは、ウルシの樹皮に傷をつけて採取した樹液(生漆(きうるし))に、油・着色剤などを加えて製した塗料のことである。
漆の製造方法は、以下のとおりである。第1に、ウルシ科の漆の木やブラックツリーから漆の原料となる漆の樹液を採取する。漆の樹液は、樹皮やゴミなどが混ざっているため、加熱後に濾過をする。第2に、濾過した樹液に油・着色材などを加えて漆を製造する。
本実施形態における漆は、一般の品質を有するものを使用している。具体的には、漆の成分は、ウルシオール67.3%、ゴム質5.5%、含窒素物2.1%、水分25.1%等から構成される。
【0022】
黄檗とは、キハダ(樹木)の別名であり、キハダの樹皮から作った染料のことである。黄檗は、黄蘗色(きはだいろ)ともよばれる鮮やかな黄色の染料で、黄色に染め上げる以外に赤や緑色の下染めにも利用される。
【0023】
琥珀とは、広葉樹や針葉樹などの樹脂により形成されるものである。琥珀には、コパール、アンブロイド、ロジン等を含む。
【0024】
<養殖真珠の作用効果>
養殖真珠1の真珠核2内にICタグ3が埋め込まれていることにより、図示しないICタグデータ読取装置に養殖真珠1をかざせば、ICタグ3に記憶された情報を読み取って確認することができる。
上記構成のICタグ3には、思い出の写真、映像やメッセージを記憶させることができる。そのため、例えば、養殖真珠1を用いたジュエリーをプレゼントする際に、あらかじめICタグ3内に写真やメッセージを記憶させておく。それにより、プレゼント後にプレゼントを受け取った受取人は、思い出の写真、映像やメッセージを見ることができるため、プレゼントの他の手紙等としての楽しみが増える。
【0025】
上記構成のICタグ3は、記憶されたメッセージ等はデジタル形式で記憶されるため経年変化による劣化が少ない。そのため、記念日に送るプレゼントとして贈った場合には、プレゼントした時のメッセージ等の劣化が少ない。メッセージ等の劣化が少ないことにより、記念日が来るたびに思い出の品をICタグデータ読取装置にかざしいつまでも記念日を楽しむことができる。
【0026】
上記構成によれば、真珠核2内にICタグ3が埋め込まれていることにより、真珠層4がICタグ3を含んだ真珠核2の外周に形成される。真珠核2内にICタグ3が埋め込まれていることにより、養殖された養殖真珠1の外観上にはICタグ3を後付けした場合にできるような孔を形成する必要がないため傷ができない。したがって、真珠としての価値を損なうことがない。すなわち、従来ICタグ3を養殖真珠に埋め込む場合には、養殖真珠の成型後に孔を開けICタグ3を埋め込む必要があった。ICタグ3を養殖真珠の成型後に孔を開けることにより埋め込むと、養殖真珠の外観上には傷ができ、真珠の美観性が損なわれる結果、真珠の価値が損なわれる。本実施形態によれば、ICタグ3は、後付けではなく養殖真珠1を製造する前の真珠核2内に埋め込むため外観上の傷として表れることはない。したがって、養殖真珠1の価値を損なうことがない。
【0027】
図2に示すように、ICタグ3が養殖真珠1内に埋め込まれていた場合であっても、養殖真珠1の中心部にICタグ3が位置しない。そのため、養殖真珠1を使用して真珠のネックレス等を製造する際に中心部に貫通孔を形成するが、ICタグ3が貫通孔を形成する際の邪魔になることがない。
【0028】
<養殖真珠の製造方法>
図3に、養殖真珠1の製造工程の概念図を示す。
図3(A)に示すように、本実施形態において真珠核2は、淡水貝の貝殻を球状に加工する。具体的には、真珠核2は、始めに淡水貝の貝殻をサイコロ形状とし、その後研磨機で角をとり球状とすることにより完成される。本実施形態においては、球状としたがハート形、星型等とすることもできる。真珠核をハート形、星型とすることにより最終的にできる養殖真珠1の形を決めることができる。
【0029】
図3(B)に示すように、真珠核2にICタグ3を挿入するICタグ挿入孔21を切削により成型する。
図3(C)に示すように、真珠核2に成型されたICタグ挿入孔21にICタグ3を挿入し、図3(D)に示す状態にする。
【0030】
ICタグ3は、図3(C)におけるICタグ挿入孔21に挿入する前に、真珠核2の外周にICタグ保護材料5を塗布する。具体的には、真珠核2に糸用の孔、又は取り付け金具用の孔を空け固定した状態でICタグ保護材料5を塗布する。本実施形態においては、ICタグ保護材料5は、漆を塗布する。漆は塗布をした後に、乾燥を挟みさらに塗布することにより、漆をICタグ3の外周に何層も塗り重ねる。漆の塗り重ねを行うことにより、ICタグ保護材料として海水及び淡水から内部のICチップ31を守ることができる。漆は、防水の性質及び防塩の性質を有するため、海水及び淡水からICチップを守ることができる。
なお、上記したように、ICタグ3を含んだ真珠核2の外周にICタグ保護材料5を塗布した場合であっても、ICタグ3を海水から保護することができる。
【0031】
図3(E)に示すように、ICタグ3をICタグ挿入孔21に挿入後、真珠核2のICタグ挿入孔21を接着剤又は柿渋、漆、黄檗、琥珀を接着剤代わりとして使用して閉じる。接着剤等はICタグ挿入孔21からはみ出るため、研磨等で磨くことにより真珠核2の外周と整える。ICタグ挿入孔21を接着剤等により閉じることにより、ICタグ3が真珠核2から出ることがない。また、ICタグ挿入孔21を接着剤等で閉じることにより、真珠核2の球形状を維持することができる。
【0032】
図3(E)に示すように、上記ICタグ3を真珠核2に埋め込む工程を経た真珠核2を真珠貝に挿入する。真珠貝に真珠核2を挿入することにより、真珠貝が自己防衛反応を起こし、外とう膜という貝の組織が、1年〜3年の時間を掛けて真珠核2を真珠質で包み込む。真珠核2を真珠質で包み込むことにより外周に真珠層4を形成し、図3(F)に示す養殖真珠1が完成する。
【0033】
真珠核2は、真珠貝に挿入された後に、真珠貝とともに1年〜3年海水にさらされた状態となる。ICタグ3にはICタグ保護材料5である漆が塗布してある。そのため、ICタグ3を海水から守ることができる。すなわち、漆には、塩類及び水分に対して強いという性質を有する。そのため、漆をICタグ保護材料5として使用することにより、海水からICタグ3内部のICチップ31を守ることができる。
本出願人は、ICタグ保護材料5を塗らない状態であるICタグ3を真珠核2に埋め込んで養殖真珠の製造を試してみたところ、1年後にできた養殖真珠内のICタグ3は機能しなかった。すなわち、ICタグ保護材料を用いないことによりICタグは海水により機能が破壊されることが認識できた。
それに対して、ICタグ3にICタグ保護材料5を塗布することにより製造された養殖真珠1のICタグ3は、海水に1年浸かっていても正常に使用することができた。その理由は、漆が古来から使われており塩分や水分に強い性質を有するためであると考える。具体的には、古来の発掘される漆器は大部分が泥水の中に二千年も浸かっているが、発掘される漆器は腐らずに現存している。そのため、漆をICタグ保護材料として使用することにより、それを塗布した内部の真珠核2及びその内部のICタグ3を海水から守ることができる。
【0034】
また、図3(F)に示す養殖真珠1が完成した場合、真珠核2内にICタグ3が埋め込まれているため、養殖された養殖真珠1の外観上にはICタグ3を後付けした場合にできるような傷がない。そのため、真珠核2内にICタグ3が埋め込むことにより、成型された養殖真珠1の外観上には何ら傷がなく真珠としての価値を損なうことがない。
また、ICタグ3は養殖真珠1の中心からずれた部分に成型することにより、養殖真珠1の加工がし易くなっている。
また、養殖真珠1を加工する際には、強い光線をあて真珠を透かして既に真珠核2内に空いている加工孔の位置とICタグ3の位置を見極めて加工することができる。
【0035】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば以下の作用効果を有する。
真珠核2を真珠貝の体内に挿入し海中で養殖を行う養殖真珠1において、真珠核2にICタグ3を埋め込むこと、真珠核2の外周にICタグ保護材料5を塗布することにより、ICタグ3が海水に接触するのを防止することができる。ICタグ保護材料5を塗布された真珠核2の内部のICチップ31は海水と接触しない。そのため、ICタグ3を海水から守りつつ、養殖真珠1を成型することができる。
また、真珠核2にICタグ3を埋め込むことにより、非接触式のICタグ3のデータ読取装置にICタグ3入の養殖真珠をかざせば、ICタグ3に記憶された情報を読み取って確認することができる。
また、真珠核2内にICタグ3が埋め込まれていることにより、成型された養殖真珠1の外観上には何ら傷がなく真珠としての価値を損なうことがない。ICタグ3を養殖真珠1の成型後に後付けすることも考えられるが、ICタグ3を後付けすると養殖真珠1の外観にはICタグ挿入孔が形成され、真珠としての価値を損なうことになる。したがって、養殖真珠1を成型する前の真珠核2内にICタグ3が埋め込まれていることにより、外観を傷つけることなくICタグ3を養殖真珠1の中に入れることができる。
【0036】
ICタグ保護材料5は、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀であることにより、ICタグ3を埋め込んだ真珠核2を海水から守ることができる。すなわち、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀には、塩類及び水分に対して強いという性質を有する。そのため、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀をICタグ保護材料5として使用することにより、海水からICタグ3を守ることができる。
具体的には、古来の発掘される漆器は大部分が泥水の中に二千年も浸かっているが、発掘される漆器は腐らずに現存している。そのため、漆、又は漆と同じ効果を持つ柿渋、黄檗をICタグ保護材料5として使用することにより、それを塗布した内部の真珠核2及びその内部のICタグ3を海水から守ることができる。
【0037】
<変形例>
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、上記実施形態では、養殖真珠1に対して真珠層4を形成することとしたが、真珠層をもたないコンク真珠やメロ真珠等であっても水中で真珠を養殖するものであれば同様の作用効果を有することができる。
【0038】
例えば、本実施形態においては、ICタグ3にICタグ保護材料5である漆等を塗布することとしたが、真珠核2にそのまま塗布することもできる。ICタグ保護材料5を真珠核2に塗布することにより、真珠核2内部に埋め込まれたICタグ3を保護することができるためである。また、内部のICタグ3をより確実に保護するため、ICタグ3の外周及びICタグ3を埋め込んだ真珠核2の外周にICタグ保護材料を塗布することもできる。
真珠核2の外周にICタグ保護材料5を直接塗布することにより、真珠核2の色合いをコントロールすることができる。真珠は真珠核の色合いにより真珠の色合いが決定する。そのため、真珠核2に色合いを有するICタグ保護材料5を塗布することにより、養殖真珠1の色合いを決定することができる。
【0039】
例えば、琥珀を真珠核2とすることができる。すなわち、琥珀を溶融させて作った穴にICタグを埋め込んだ後、固めて封じ込めた琥珀を真珠核2とすることができる。
【0040】
例えば、本実施形態においてICタグ保護材料5に柿渋、漆、黄檗、琥珀を塗布する旨記載したが、ICタグ保護材料5は、柿渋、漆、黄檗、琥珀を複合的に混ぜて塗布することもできる。
【0041】
例えば、真珠核内にDNAを乾燥させて粉末化したDNA粉末を挿入する。DNA粉末は、乾燥されて水分含有量がすくないため、琥珀に挿入された後に腐敗しにくい。腐敗を防止されたDNA粉末又は個人情報を記憶するICタグを有するので、何年経っても養殖真珠を個人に正確に結びつけることができるため、養殖真珠を大切に扱われる。
【符号の説明】
【0042】
1 養殖真珠
2 真珠核
3 ICタグ
31 ICチップ
4 真珠層
5 ICタグ保護材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、真珠核を真珠貝の体内に挿入し海中で養殖を行う養殖真珠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、宝石は高級品として人々に親しまれてきた。宝石は高級品であること、及び美観性、神秘性から、思い出の品として利用がされている。
例えば、宝石は思い出の品となるため、従来から宝石と思い出との結びつきを強くするため、宝石に加工が施されてきた。宝石である琥珀に思い出の品である遺骨を収納した装身具が提案されている。この装身具は、琥珀に円筒孔を形成し円筒孔の内壁に金箔を貼着し、円筒孔に思い出の品である遺骨を入れてシリコーン樹脂を注入して硬化させることにより、遺骨を琥珀に収納している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
一方、宝石の中でも人工的に宝石を製造することができるものとして養殖真珠がある。
天然真珠は、真珠貝の体内に偶然入り込んだ何らかの異物に対して、真珠貝が自己防衛反応を起こし、外とう膜という貝の組織が、その異物を真珠質で包み込む。真珠質で包み込むことにより外周に真珠層を形成し天然真珠が完成する。それに対して、養殖真珠は、貝殻を丸く磨いた真珠核を真珠貝の体内に挿入することで、人工的に真珠貝に真珠層を形成させることができるものである。
養殖真珠の製造方法は、下記の特許文献2乃至特許文献5に記載されているが、広く行われているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−6705号公報
【特許文献2】特開平05−124814号公報
【特許文献3】特開平05−123075号公報
【特許文献4】特開2002−065100号公報
【特許文献5】特開2002−027862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の宝石には以下の2つの問題があった。
すなわち、第1の問題として、特許文献1に係る装飾具に用いる琥珀を含む宝石は、思い出の品を宝石に取り付ける場合には宝石に孔を開け、思い出の品を挿入した後に孔を閉じる必要がある。
しかし、琥珀を含む宝石は、色合いや内包物などが一つ一つ異なる。そのため、琥珀を含む宝石の孔を閉じた場合、孔の部分の色合いが異なるため琥珀を含む宝石の意匠性を害することになる。したがって、宝石に対して思い出の品を後付けで行う場合には、意匠性を害する結果宝石そのものの価値が下がる問題がある。
【0006】
第2の問題として、例えば、養殖真珠の真珠核に思い出の品を埋め込むことで、思い出の品を含んだ養殖真珠を形成することができる。しかし、養殖真珠に挿入する真珠核は、1年〜3年海水にさらされることになる。そのため、真珠核に埋め込む思い出の品が海水に弱いものであると内部に埋め込んだ思い出の品が劣化する。特に、昨今では思い出の品として、写真やメッセージを記録したICタグを入れることが考えられるが、ICタグは機械製品であるため特に海水に弱いため問題となる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ICタグ保護材料をICタグが埋め込まれた真珠核に塗布することで、ICタグに海水が接触しICタグが破壊されることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様における養殖真珠は、以下の構成を有する。
(1)真珠核を真珠貝の体内に挿入し海中で養殖を行う養殖真珠において、前記真珠核にICタグを埋め込むこと、前記真珠核の外周、又は、ICタグの外周にICタグ保護材料が形成されること、が好ましい。
【0009】
(2)(1)に記載する養殖真珠において、前記ICタグ保護材料は、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀であること、が好ましい。
【0010】
(3)(1)又は(2)に記載する養殖真珠において、前記真珠核は、琥珀を熱溶融した穴にICタグを埋め込んで封入した琥珀を使用すること、が好ましい。
【0011】
(4)(3)に記載する養殖真珠において、真珠核内にDNAを乾燥させて粉末化したDNA粉末を挿入すること、が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記養殖真珠の作用及び効果について説明する。
(1)真珠核を真珠貝の体内に挿入し海中で養殖を行う養殖真珠において、前記真珠核にICタグを埋め込むこと、前記真珠核の外周、又は、ICタグの外周にICタグ保護材料が形成されることにより、ICタグが海水に接触するのを防止することができる。ICタグ保護材料が形成された真珠核は海水と接触しないため、真珠核の内部に埋め込まれたICタグも海水と接触することがない。また、ICタグ保護材料が形成されたICタグは海水と接触しない。そのため、ICタグが1年〜3年海水につかっていたとしても、ICタグを海水から守りつつ、養殖真珠を成型することができる。
また、真珠核にICタグを埋め込むことにより、非接触式のICタグのデータ読取装置にICタグ入の養殖真珠をかざせば、ICタグに記憶された思い出の写真や画像、情報等を読み取って確認することができる。
また、真珠核内にICタグが埋め込まれていることにより、成型された養殖真珠の外観上には何ら傷がなく真珠としての価値を損なうことがない。ICタグを養殖真珠の成型後に後付けすることも考えられるが、ICタグを後付けすると養殖真珠の外観にはICタグ挿入孔が形成され、真珠としての価値を損なうことになる。したがって、養殖真珠を成型する前の真珠核内にICタグが埋め込まれていることにより、外観を傷つけることなくICタグを養殖真珠の中に入れることができる。
また、ICタグは養殖真珠の中心からずれた部分に成型することにより、養殖真珠の加工がし易くなっている。
【0013】
(2)ICタグ保護材料は、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀であることにより、ICタグを埋め込んだ真珠核を海水から守ることができる。すなわち、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀には、塩類及び水分に対して強いという性質を有する。そのため、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀をICタグ保護材料として使用することにより、海水からICタグを守ることができる。
具体的には、古来の発掘される漆器は大部分が泥水の中に二千年も浸かっているが、発掘される漆器は腐らずに現存している。そのため、漆、又は漆と同じ効果を持つ柿渋、黄檗をICタグ保護材料として使用することにより、それを塗布した内部の真珠核及びその内部のICタグを海水から守ることができる。
柿渋とは、渋柿の青い果実からしぼりとった液のことである。
漆とは、ウルシの樹皮に傷をつけて採取した樹液(生漆(きうるし))に、油・着色剤などを加えて製した塗料のことである。
黄檗とは、キハダ(樹木)の別名であり、キハダの樹皮から作った染料のことである。
琥珀とは、広葉樹や針葉樹などの樹脂により形成されるものである。琥珀にはコパール、アンブロイド、ロジン等を含む。
柿渋、漆、黄檗、琥珀は古来から使用されているが、その効用についての研究及び使用はいまだにほとんどされていない状態にある。にもかかわらず本特許でその成分を理解し使用するにいたったのは、本出願人が樹木に関する深い知識を有する者だからである。
【0014】
(3)真珠核は、琥珀を熱溶融した穴にICタグを埋め込んで封入した琥珀を使用することにより、ICタグを埋め込んだ真珠核を海水から守ることができる。すなわち、琥珀には、塩類及び水分に対して強いという性質を有する。そのため、琥珀をICタグ保護材料として使用することにより、海水からICタグを守ることができる。また、琥珀は熱溶融することにより成型が容易であるため、ICタグを容易に封入することができる。
【0015】
(4)真珠核内にDNAを乾燥させて粉末化したDNA粉末を挿入する。DNA粉末は、乾燥されて水分含有量がすくないため、琥珀に挿入された後に腐敗しにくい。腐敗を防止されたDNA粉末又は個人情報を記憶するICタグを有するので、何年経っても養殖真珠を個人に正確に結びつけることができるため、養殖真珠を大切に扱う。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る図3に示す養殖真珠のGG概念断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る図1に示す養殖真珠のHH概念断面図である。
【図3】本発明の本実施形態に係る養殖真珠の製造工程の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<養殖真珠の構成>
図3に養殖真珠1の製造工程の概念図を示す。図1に、図3に示す養殖真珠1のGG概念断面図を示す。図2に、図1に示す養殖真珠1のHH概念断面図を示す。
図1に示すように、養殖真珠1は、真珠核2の周りに真珠層4が形成されたものである。真珠核2の中心部にはICタグ3が埋め込まれている。図2に示すように、ICタグ3養殖真珠1のGG断面(中心線Xからずれた断面)においては、養殖真珠1の中心線Xからずれた部分に埋め込まれている。
真珠核2は、淡水貝を球状に加工したもので、真珠の素になるものである。真珠核2は、淡水貝を、サイコロ形状とし、その後研磨機で角をとり球状とすることにより完成される。本実施形態における真珠核2の径は10mmである。
真珠層4は、貝殻成分を分泌する外套膜である。外套膜は細胞分裂して袋状になり、真珠を生成する真珠袋を生成する。真珠袋を生成する中でカルシウムの結晶と有機質層が交互に積層した結果真珠層が形成されたものである。本実施形態における真珠層4の厚みは1mmである。
【0018】
<ICタグの構成>
ICタグ3は、電波を受けて働く小型の電子装置である。図1に示すように、ICタグ3は、内部にICチップ31を内包した円板形状をしている。図2に示すように、ICタグ3は円板形状であるため、厚みは少ない。本実施形態においてICタグ3の径は5mmであり、厚さは1mmである。
ICタグ3は、外観は樹脂成型された被覆部32が形成され、被覆部32の中心部にICチップ31が埋め込まれている。ICチップ31の周りには被覆部32により固定されたアンテナ33が形成されている。
ICチップ31は、データの読み取り及び書き換えが可能な集積回路を組み込んだチップである。
【0019】
ICタグ3の外周には、ICタグ保護材料5が薄膜上に塗布されている。ICタグ3は、海水または淡水に1〜3年ほど浸かった状態で過ごす。そのため、ICタグ保護材料5は、防水の性質を有し、かつ防塩の性質を有するものを使用する。本実施形態においては、ICタグ保護材料5として柿渋、漆、黄檗、又は琥珀を用いる。柿渋、漆、黄檗、又は琥珀は防水の性質及び防塩の性質を有する。
なお、本実施形態においてはICタグ保護材料5として、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀を用いることとしたが、防水の性質及び防塩の性質を有するものであれば代替えすることができる。
また、本実施形態においてはICタグ保護材料5をICタグ3の外周に塗布する旨記載したが、ICタグ3を含んだ真珠核2の外周にICタグ保護材料5を塗布することもできる。ICタグ3を含んだ真珠核2の外周にICタグ保護材料5を塗布することにより、真珠核2内のICタグ3を海水から保護することができる。
【0020】
柿渋とは、渋柿の青い果実からしぼりとった液のことである。
柿渋の製造方法は、以下のとおりである。第1に、渋柿の青い果実を潰して果汁を絞り出し容器に収容する。第2に、渋柿の果汁を発酵させ熟成させる。渋柿の果汁が発酵し熟成すると、表面に薄い膜が張り、渋タンニンが強くでた柿渋が製造される。
本実施形態における柿渋は、一般の品質を有するものを使用している。具体的には、柿渋の性状は、赤褐色液体である。柿渋臭気は、独特の有機酸臭を有する。PHは、3.5〜4.5である。ボーメ比重は、4.5以上である。タンニン含有量は、3.0以上である。
【0021】
漆とは、ウルシの樹皮に傷をつけて採取した樹液(生漆(きうるし))に、油・着色剤などを加えて製した塗料のことである。
漆の製造方法は、以下のとおりである。第1に、ウルシ科の漆の木やブラックツリーから漆の原料となる漆の樹液を採取する。漆の樹液は、樹皮やゴミなどが混ざっているため、加熱後に濾過をする。第2に、濾過した樹液に油・着色材などを加えて漆を製造する。
本実施形態における漆は、一般の品質を有するものを使用している。具体的には、漆の成分は、ウルシオール67.3%、ゴム質5.5%、含窒素物2.1%、水分25.1%等から構成される。
【0022】
黄檗とは、キハダ(樹木)の別名であり、キハダの樹皮から作った染料のことである。黄檗は、黄蘗色(きはだいろ)ともよばれる鮮やかな黄色の染料で、黄色に染め上げる以外に赤や緑色の下染めにも利用される。
【0023】
琥珀とは、広葉樹や針葉樹などの樹脂により形成されるものである。琥珀には、コパール、アンブロイド、ロジン等を含む。
【0024】
<養殖真珠の作用効果>
養殖真珠1の真珠核2内にICタグ3が埋め込まれていることにより、図示しないICタグデータ読取装置に養殖真珠1をかざせば、ICタグ3に記憶された情報を読み取って確認することができる。
上記構成のICタグ3には、思い出の写真、映像やメッセージを記憶させることができる。そのため、例えば、養殖真珠1を用いたジュエリーをプレゼントする際に、あらかじめICタグ3内に写真やメッセージを記憶させておく。それにより、プレゼント後にプレゼントを受け取った受取人は、思い出の写真、映像やメッセージを見ることができるため、プレゼントの他の手紙等としての楽しみが増える。
【0025】
上記構成のICタグ3は、記憶されたメッセージ等はデジタル形式で記憶されるため経年変化による劣化が少ない。そのため、記念日に送るプレゼントとして贈った場合には、プレゼントした時のメッセージ等の劣化が少ない。メッセージ等の劣化が少ないことにより、記念日が来るたびに思い出の品をICタグデータ読取装置にかざしいつまでも記念日を楽しむことができる。
【0026】
上記構成によれば、真珠核2内にICタグ3が埋め込まれていることにより、真珠層4がICタグ3を含んだ真珠核2の外周に形成される。真珠核2内にICタグ3が埋め込まれていることにより、養殖された養殖真珠1の外観上にはICタグ3を後付けした場合にできるような孔を形成する必要がないため傷ができない。したがって、真珠としての価値を損なうことがない。すなわち、従来ICタグ3を養殖真珠に埋め込む場合には、養殖真珠の成型後に孔を開けICタグ3を埋め込む必要があった。ICタグ3を養殖真珠の成型後に孔を開けることにより埋め込むと、養殖真珠の外観上には傷ができ、真珠の美観性が損なわれる結果、真珠の価値が損なわれる。本実施形態によれば、ICタグ3は、後付けではなく養殖真珠1を製造する前の真珠核2内に埋め込むため外観上の傷として表れることはない。したがって、養殖真珠1の価値を損なうことがない。
【0027】
図2に示すように、ICタグ3が養殖真珠1内に埋め込まれていた場合であっても、養殖真珠1の中心部にICタグ3が位置しない。そのため、養殖真珠1を使用して真珠のネックレス等を製造する際に中心部に貫通孔を形成するが、ICタグ3が貫通孔を形成する際の邪魔になることがない。
【0028】
<養殖真珠の製造方法>
図3に、養殖真珠1の製造工程の概念図を示す。
図3(A)に示すように、本実施形態において真珠核2は、淡水貝の貝殻を球状に加工する。具体的には、真珠核2は、始めに淡水貝の貝殻をサイコロ形状とし、その後研磨機で角をとり球状とすることにより完成される。本実施形態においては、球状としたがハート形、星型等とすることもできる。真珠核をハート形、星型とすることにより最終的にできる養殖真珠1の形を決めることができる。
【0029】
図3(B)に示すように、真珠核2にICタグ3を挿入するICタグ挿入孔21を切削により成型する。
図3(C)に示すように、真珠核2に成型されたICタグ挿入孔21にICタグ3を挿入し、図3(D)に示す状態にする。
【0030】
ICタグ3は、図3(C)におけるICタグ挿入孔21に挿入する前に、真珠核2の外周にICタグ保護材料5を塗布する。具体的には、真珠核2に糸用の孔、又は取り付け金具用の孔を空け固定した状態でICタグ保護材料5を塗布する。本実施形態においては、ICタグ保護材料5は、漆を塗布する。漆は塗布をした後に、乾燥を挟みさらに塗布することにより、漆をICタグ3の外周に何層も塗り重ねる。漆の塗り重ねを行うことにより、ICタグ保護材料として海水及び淡水から内部のICチップ31を守ることができる。漆は、防水の性質及び防塩の性質を有するため、海水及び淡水からICチップを守ることができる。
なお、上記したように、ICタグ3を含んだ真珠核2の外周にICタグ保護材料5を塗布した場合であっても、ICタグ3を海水から保護することができる。
【0031】
図3(E)に示すように、ICタグ3をICタグ挿入孔21に挿入後、真珠核2のICタグ挿入孔21を接着剤又は柿渋、漆、黄檗、琥珀を接着剤代わりとして使用して閉じる。接着剤等はICタグ挿入孔21からはみ出るため、研磨等で磨くことにより真珠核2の外周と整える。ICタグ挿入孔21を接着剤等により閉じることにより、ICタグ3が真珠核2から出ることがない。また、ICタグ挿入孔21を接着剤等で閉じることにより、真珠核2の球形状を維持することができる。
【0032】
図3(E)に示すように、上記ICタグ3を真珠核2に埋め込む工程を経た真珠核2を真珠貝に挿入する。真珠貝に真珠核2を挿入することにより、真珠貝が自己防衛反応を起こし、外とう膜という貝の組織が、1年〜3年の時間を掛けて真珠核2を真珠質で包み込む。真珠核2を真珠質で包み込むことにより外周に真珠層4を形成し、図3(F)に示す養殖真珠1が完成する。
【0033】
真珠核2は、真珠貝に挿入された後に、真珠貝とともに1年〜3年海水にさらされた状態となる。ICタグ3にはICタグ保護材料5である漆が塗布してある。そのため、ICタグ3を海水から守ることができる。すなわち、漆には、塩類及び水分に対して強いという性質を有する。そのため、漆をICタグ保護材料5として使用することにより、海水からICタグ3内部のICチップ31を守ることができる。
本出願人は、ICタグ保護材料5を塗らない状態であるICタグ3を真珠核2に埋め込んで養殖真珠の製造を試してみたところ、1年後にできた養殖真珠内のICタグ3は機能しなかった。すなわち、ICタグ保護材料を用いないことによりICタグは海水により機能が破壊されることが認識できた。
それに対して、ICタグ3にICタグ保護材料5を塗布することにより製造された養殖真珠1のICタグ3は、海水に1年浸かっていても正常に使用することができた。その理由は、漆が古来から使われており塩分や水分に強い性質を有するためであると考える。具体的には、古来の発掘される漆器は大部分が泥水の中に二千年も浸かっているが、発掘される漆器は腐らずに現存している。そのため、漆をICタグ保護材料として使用することにより、それを塗布した内部の真珠核2及びその内部のICタグ3を海水から守ることができる。
【0034】
また、図3(F)に示す養殖真珠1が完成した場合、真珠核2内にICタグ3が埋め込まれているため、養殖された養殖真珠1の外観上にはICタグ3を後付けした場合にできるような傷がない。そのため、真珠核2内にICタグ3が埋め込むことにより、成型された養殖真珠1の外観上には何ら傷がなく真珠としての価値を損なうことがない。
また、ICタグ3は養殖真珠1の中心からずれた部分に成型することにより、養殖真珠1の加工がし易くなっている。
また、養殖真珠1を加工する際には、強い光線をあて真珠を透かして既に真珠核2内に空いている加工孔の位置とICタグ3の位置を見極めて加工することができる。
【0035】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば以下の作用効果を有する。
真珠核2を真珠貝の体内に挿入し海中で養殖を行う養殖真珠1において、真珠核2にICタグ3を埋め込むこと、真珠核2の外周にICタグ保護材料5を塗布することにより、ICタグ3が海水に接触するのを防止することができる。ICタグ保護材料5を塗布された真珠核2の内部のICチップ31は海水と接触しない。そのため、ICタグ3を海水から守りつつ、養殖真珠1を成型することができる。
また、真珠核2にICタグ3を埋め込むことにより、非接触式のICタグ3のデータ読取装置にICタグ3入の養殖真珠をかざせば、ICタグ3に記憶された情報を読み取って確認することができる。
また、真珠核2内にICタグ3が埋め込まれていることにより、成型された養殖真珠1の外観上には何ら傷がなく真珠としての価値を損なうことがない。ICタグ3を養殖真珠1の成型後に後付けすることも考えられるが、ICタグ3を後付けすると養殖真珠1の外観にはICタグ挿入孔が形成され、真珠としての価値を損なうことになる。したがって、養殖真珠1を成型する前の真珠核2内にICタグ3が埋め込まれていることにより、外観を傷つけることなくICタグ3を養殖真珠1の中に入れることができる。
【0036】
ICタグ保護材料5は、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀であることにより、ICタグ3を埋め込んだ真珠核2を海水から守ることができる。すなわち、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀には、塩類及び水分に対して強いという性質を有する。そのため、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀をICタグ保護材料5として使用することにより、海水からICタグ3を守ることができる。
具体的には、古来の発掘される漆器は大部分が泥水の中に二千年も浸かっているが、発掘される漆器は腐らずに現存している。そのため、漆、又は漆と同じ効果を持つ柿渋、黄檗をICタグ保護材料5として使用することにより、それを塗布した内部の真珠核2及びその内部のICタグ3を海水から守ることができる。
【0037】
<変形例>
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、上記実施形態では、養殖真珠1に対して真珠層4を形成することとしたが、真珠層をもたないコンク真珠やメロ真珠等であっても水中で真珠を養殖するものであれば同様の作用効果を有することができる。
【0038】
例えば、本実施形態においては、ICタグ3にICタグ保護材料5である漆等を塗布することとしたが、真珠核2にそのまま塗布することもできる。ICタグ保護材料5を真珠核2に塗布することにより、真珠核2内部に埋め込まれたICタグ3を保護することができるためである。また、内部のICタグ3をより確実に保護するため、ICタグ3の外周及びICタグ3を埋め込んだ真珠核2の外周にICタグ保護材料を塗布することもできる。
真珠核2の外周にICタグ保護材料5を直接塗布することにより、真珠核2の色合いをコントロールすることができる。真珠は真珠核の色合いにより真珠の色合いが決定する。そのため、真珠核2に色合いを有するICタグ保護材料5を塗布することにより、養殖真珠1の色合いを決定することができる。
【0039】
例えば、琥珀を真珠核2とすることができる。すなわち、琥珀を溶融させて作った穴にICタグを埋め込んだ後、固めて封じ込めた琥珀を真珠核2とすることができる。
【0040】
例えば、本実施形態においてICタグ保護材料5に柿渋、漆、黄檗、琥珀を塗布する旨記載したが、ICタグ保護材料5は、柿渋、漆、黄檗、琥珀を複合的に混ぜて塗布することもできる。
【0041】
例えば、真珠核内にDNAを乾燥させて粉末化したDNA粉末を挿入する。DNA粉末は、乾燥されて水分含有量がすくないため、琥珀に挿入された後に腐敗しにくい。腐敗を防止されたDNA粉末又は個人情報を記憶するICタグを有するので、何年経っても養殖真珠を個人に正確に結びつけることができるため、養殖真珠を大切に扱われる。
【符号の説明】
【0042】
1 養殖真珠
2 真珠核
3 ICタグ
31 ICチップ
4 真珠層
5 ICタグ保護材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真珠核を真珠貝の体内に挿入し海中で養殖を行う養殖真珠において、
前記真珠核にICタグを埋め込むこと、
前記真珠核の外周、又は、ICタグの外周にICタグ保護材料が形成されること、
を特徴とする養殖真珠。
【請求項2】
請求項1に記載する養殖真珠において、
前記ICタグ保護材料は、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀であること、
を特徴とする養殖真珠。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する養殖真珠において、
前記真珠核は、琥珀を熱溶融した穴にICタグを埋め込んで封入した琥珀を使用すること、
を特徴とする養殖真珠。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載するいずれか一つの養殖真珠において、
前記真珠核内にDNAを乾燥させて粉末化したDNA粉末を挿入すること、
を特徴とする養殖真珠。
【請求項1】
真珠核を真珠貝の体内に挿入し海中で養殖を行う養殖真珠において、
前記真珠核にICタグを埋め込むこと、
前記真珠核の外周、又は、ICタグの外周にICタグ保護材料が形成されること、
を特徴とする養殖真珠。
【請求項2】
請求項1に記載する養殖真珠において、
前記ICタグ保護材料は、柿渋、漆、黄檗、又は琥珀であること、
を特徴とする養殖真珠。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する養殖真珠において、
前記真珠核は、琥珀を熱溶融した穴にICタグを埋め込んで封入した琥珀を使用すること、
を特徴とする養殖真珠。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載するいずれか一つの養殖真珠において、
前記真珠核内にDNAを乾燥させて粉末化したDNA粉末を挿入すること、
を特徴とする養殖真珠。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2012−120465(P2012−120465A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272530(P2010−272530)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(509338879)
【出願人】(505359872)
【出願人】(509338891)
【出願人】(505359883)
【出願人】(505045388)
【出願人】(509338880)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(509338879)
【出願人】(505359872)
【出願人】(509338891)
【出願人】(505359883)
【出願人】(505045388)
【出願人】(509338880)
【Fターム(参考)】
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