説明

首用保護装置

首の周りに実質的に剛性の閉構造を備え、および使用者の胴に載置するのに適し、上方の支持具表面とヘルメット(10)の下方の縁との間の自然の間隔を低減させるように装置の形状を一時的に変化させるための手段を含み、それによって装置に及ぼされる圧縮力のための胴に向かう補助伝達路を創出する、首支持具(12)のような首用保護装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
乗車状況の全てではないがかなりの場合において壊滅的な首の損傷を受ける可能性を低減させるように設計された装置が存在することが知られている。
【背景技術】
【0002】
これらの装置は、圧縮力のための代替的な荷重経路を提供するために、乗員の首の周りに着用され、および乗員のヘルメットの下面縁と相互作用する。正しく使用された場合、装置は、これらの力の大きさを低減させることができ、および乗員が他の何よりも恐れる類の損傷:脊髄を損傷することを回避する助けとなる。
【0003】
そのような装置の例は、特許文献1にLeattの名において示されている。ここで、保護物は、分岐され次いで首の周りに配置されてもよい、単に円形で非常に剛性のカラーである。それは着用されると固定構造を有する。
【0004】
乗員がなぜ首の骨を折るかの主な理由は、彼らが上下逆さまに着地するとき、彼らの頭は体の中に押し込まれ、多くの場合、首は圧縮により損傷を受けることであることを、出願人の研究は示している。もし頭の上に直接に着地するなら、首の骨が折れる可能性は非常に高い。しかしながら、もし衝撃が側頭に生じるなら、折れる可能性は低減する。これは、首を通り抜ける力の量が低減される、すなわち、首を経由する力がより少ないからである。
【0005】
損傷の重傷度は、対地速度ではなく、落下の高さによって主に影響される。55cm(1フィート10インチ)よりも高い高さから頭の上に落下することは、もし停止していたとしても、首の骨を折るのに十分である可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/051251号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、首の骨を折ることを回避するための唯一の現実的な方法は、全体的な圧縮を制限することであり、これを行うための1つの方法は、代替的な荷重経路を首の周りに提供することである。しかしながら、今までずっと、この方法の保護における最大の欠点は、頭の多少の動きを可能にするために(単車に乗るときに必須)、ヘルメットの縁と装置の上面との間に間隔が存在しなければならないことであった。残念な事実は、この間隔が最良の荷重伝達を妨げ、したがって有効性を制限することである。実際の利益は、支持具とヘルメットとの間に衝撃時に接触(または非常に小さい間隔)があるときに得られ、これは自動的には発生しないものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、上記の問題を減少させ、および有効性を改善させる首用保護装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、首の周りに実質的に剛性の閉構造を備え、および使用者の胴に載置するのに適しており、装置と胴との間の間隔を低減させるように装置の形状を一時的に変化させるかまたは変更する手段を含み、それによって装置に及ぼされる圧縮力のための胴に向かう補助伝達路を意図的に創出することによって特徴付けられる首用保護装置、好ましくは首支持具によって達成される。
【0010】
最適な保護を受けるために、ヘルメットは衝撃前に支持具と接触すべきである。上述のように、これはたいていの場合−および一般的には乗員がそうするように意図的な努力をすることなしには、起こらない。
【0011】
したがって、本発明は、両方の世界の最善−事故がないときの最も自由な頭の動き−しかし、事故が生じるときの頭と肩との間のわずかな間隔または無間隔−を提供しようと努めるものである。これは、ヘルメットと支持具とが衝撃時に接触するであろうことを保証するよう努めながら、乗車時の乗員に対する最大の快適さと、万が一衝突の場合には最大の保護とを与える。
【0012】
適当な感知手段は、衝撃/危険状態を検出し、および前記一時的に変化させるための手段を発射する。好ましくは、既知のセンサー(加速度計、ジャイロスコープ、地球磁場センサー、等)を備える電子回路が使用される。感知システムのさらなる可能な実施形態は、首が危険であるときのみ、システムを動作させることであることに留意すべきである。これは、システムは区別を行い、危険性が低いと見られる些細な衝突においては配備をしないことを意味する。
【0013】
本発明の装置は、背中保護具または膝当てと同様には機能しないことを注意することが大切である。これらの装置は、エネルギーを吸収するように設計された材料を含有し、それらは変形および圧縮によりこれを行う。本発明の装置は、正反対の原理に基づき機能する:それは、最小限の圧縮量で荷重を伝達しなければならず、あらゆるミリメートルが重要である。例えば、18mmの間隔から23mmの間隔になることは、壊滅的な首の損傷であるかそうでないかの違いになり得る。
【0014】
単独でまたは組み合わせて使用されるべき、本発明の好ましい変形は、以下のものから構成される:
・使用時に胴に面する装置の表面に配置され、および配備後に、より具体的には1つまたは複数の膨張可能な室を膨張させることによって、支持具と胴との間の間隔を低減させることが可能な配備可能な手段を含む、一時的に変化させるための手段。本発明は、非常に軽い、小型の、すぐに応答する配置に前記手段を提供するために、既知の信頼できる膨張技術を利用してもよい。もちろん、速度は主要な要因である;
・30N/mmと等しいかまたはそれよりも大きい剛性を有する、装置と胴との間の補助的な接触構造を生み出すのに適した、前記一時的に変化させるための手段。この値は、圧縮荷重を低減させるのに十分であることが証明されている;
・頭に向かって支持具構造の補助的な持ち上げを生み出すように設計されている、一時的に変化させるための手段。これは、使用者の寸法によって調節可能であることができるが、典型的には、高さ40〜80mmの間である。変化した形状に対して首の周りに対称性を維持することはさらなる利益であり、胴に対する最適な荷重伝達を保証することに留意すべきである:したがって、一時的に変化させるための手段は、ヘルメットと支持具との間の間隔が最小化されるかまたは取り除かれるように、支持具の下方の荷重伝達の手段を拡張するように設計される。
・形状変化前に保持される位置に対して少なくとも60mmの差で胴から首支持具を上昇させるように設計された、一時的に変化させるための手段。この上昇の「差分(デルタ)」は、ほとんどのヘルメットに関して良好であることが証明されている;
・一時的に変化させるための手段の表面を凍結、加熱するための手段。再形成の間に、前記変化させるための手段は、選択された実施形態にもよるが、使用者にとって不愉快または危険な高温または低温に達する可能性がある。これは不快感または損傷を防止する。好ましくは、断熱された室材料が使用される;
・一時的に変化させるための手段を使用者の命令に基づいて除去するための手段。これは、乗員が事件後に正確で危険でない姿勢を得るのに役立ち、形状変化した首支持具無しで乗員を再び乗車させる。好ましくは、除去のための手段は、一時的に変化させるための手段が支持具の形状を変化させた後のみに作動するように設計されて、誤った動作を防止する。
【0015】
首支持具は、衝突ヘルメットの下面と相互作用させるのに最適化された上方の連続的な平坦な表面を含む。これは、前記表面が、肩の上を緩やかな(gradual)「n」形状に曲線を描くが、しかし、係合するヘルメットの縁の特徴を防止するように完全に滑らかであることを意味する。圧縮損傷の場合には、圧縮のみが防止され、および頭は他の全ての方向に自由に動くことが重要であり;滑らかな表面は、これを保証するのに役立つ。
【0016】
本発明のこれらおよび他の態様は、1つの例の以下の詳細な説明から明らかであり、その図面はそのように組織されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】アイドル位置における首支持具の側面図を示す図である。
【図2】その形状に変化が生じた後の首支持具の側面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ヘルメット10を身につけた使用者U、例えばオートバイ運転者が、図中に部分的に示されており、胴および腕Aに、背中に隣接する後部B、胸に隣接する前部F、およびそれらの間の首の周りに輪を形成する環状部Mによって構成される首支持具12を着用している。
【0019】
首支持具12は、垂直軸に対して対称的である(その右部は左と同様である)。環状部Mは、2つの曲線状の平坦なセグメント14(1つは図1および図2に見られる)で作られており、ヘルメット10に向かって平坦な実質的に水平な表面Sを提供する。首支持具12がヘルメット10と表面Sとの間に標準的に着用されたとき、およそ55mmの中空の垂直な空間すなわち間隔Δが残る。
【0020】
セグメント14のそれぞれの下に詰め物16が配置され、これは通常、使用者の肩の上に置かれる。各詰め物16の内側または側面上に、膨張可能な室18(一般的なエアバッグのように構造化されている)が存在し、その容積は、電子処理ユニットPUによって制御される。ユニットPUは、構成要素「B」上のユニットの後ろに格納されたセンサーと接続されており、または、車両および/または使用者Uのスーツ上に広がる他のセンサーと無線で連結されていてもよく、総称的にブロックSNSとして表現され、使用者Uに対する突然の事故の重力を検出し、および測定することができる。これに関して、適切な既知のアルゴリズムを使用して、ユニットPUをプログラムすることができる。
【0021】
作動中に、ユニットPUは、センサーSNSによって、使用者Uの状態(位置および動き)および/または乗車条件を絶えず制御する。衝突、衝撃、または車両からの乗員Uの可能性のある激しい飛び出しを検出するとき、ユニットPUは、室18の発射(膨張)を命令し、これはセグメント14の下で拡張する(図2参照)。この増大された容積は、首支持具12の形状を変化させることと因果関係を有し、図1中のその(アイドル)位置に対してそれを上昇させ、それによって距離Δを低減させる。膨張は、およそ40〜80ms内に生じ、したがって、我々は、ヘルメット10は、使用者の首に実害が生じる前に、表面Sとより早く衝突すると考えることができる。低減されたΔ(ほぼ60〜80mm)は、ヘルメット10が首支持具12とより短時間に接触することを可能にし、およびこの予期される接触を経て、ヘルメット10は、その上に与えられた外部の衝撃力(もしあれば)を、伝達路、ヘルメット10→表面S→室18→胴(図2中の矢印F参照)を通して放出することができる。
【0022】
室18は衝撃の間にわずかに変形してもよいが、しかし力の伝達の間に崩壊してはならず、すなわち、適当な剛性のものでなければならない(適切な内部空気圧は十分である)可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
首の周りに実質的に剛性の閉構造を備え、および使用者の胴に載置するのに適した首支持具(12)のような首用保護装置であって、上方の支持具表面とヘルメット(10)の下方の縁との間の自然の間隔を低減させるように、装置の形状を一時的に変化させるための手段を含み、それによって装置に及ぼされる圧縮力のための胴に向かう補助伝達路を創出することを特徴とする首用保護装置。
【請求項2】
一時的に変化させるための手段は、使用時に胴に面する装置の表面に設置され、および配備後に支持具を上方に上昇させることが可能な、配備可能な手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の保護装置。
【請求項3】
前記配備可能な手段は1つまたは複数の膨張可能な室を含むことを特徴とする請求項2に記載の保護装置。
【請求項4】
前記一時的に変化させるための手段は、装置と胴との間に、30N/mmと等しいかまたはそれよりも大きい剛性を有する補助的な接触構造を生み出すのに適していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の保護装置。
【請求項5】
一時的に変化させるための手段は、首支持具(12)を、形状が変化する前に保持されるその位置に対して少なくとも60mmの差で胴から上昇させるように設計されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の保護装置。
【請求項6】
一時的に変化させるための手段の表面を凍結または加熱するための手段を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の保護装置。
【請求項7】
凍結または加熱するための手段は断熱された室材料を含むことを特徴とする請求項2または6に記載に記載の保護装置。
【請求項8】
使用された後に使用済みの室を使用者が容易に除去することを可能にすることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の保護装置。
【請求項9】
除去のための手段は、一時的に変化させるための手段が支持具の形状を変化させた後のみに作動するように設計されていることを特徴とする請求項8に記載の保護装置。
【請求項10】
一時的に変化させるための手段は、首の周りに対称的に配置される、圧縮力のための2以上の補助伝達路を創出するように設計されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の保護装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2011−520043(P2011−520043A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506836(P2011−506836)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/IT2008/000300
【国際公開番号】WO2009/133579
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(502016471)アルパインスターズ リサーチ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (9)
【Fターム(参考)】