説明

駆動装置及びこの駆動装置を備えた画像形成装置

【課題】動力源からの回転動力を伝達するギア列において、ギア同士の噛合による回転速度つまり角速度の変動を防止し、回転伝達される側のたとえば感光体ドラムなど被回転駆動体の作動への影響を有効に抑える駆動装置を提供する。
【解決手段】動力源モータ6からの回転動力を入力ギア3、中間ギア2、ドラムギア(出力ギア)1からなるギア列を介して感光体ドラム104などの回転体に回転伝達する。出力ギアと1つ手前のギアである中間ギア2との噛合による位相と、2つ手前のギアである入力ギア3との噛合による位相とが、出力ギアの角速度の変動による周波数振幅が最小となるように設定される。また、出力ギアと入力ギア3とが、それらの回転軸方向に相対する位置を常時一定に維持した状態で移動可能に構成されている。結果、ギア列のギア同士による噛み合いで発生する回転速度すなわち角速度変動を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ装置、プリンタおよび複合機などの電子写真画像形成装置(以下、単に「画像形成装置」という)に関し、その画像形成装置に装着される駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において感光ドラムや中間転写体などの像担持体を作動させる駆動装置は、モータなどの動力源から出力された回転を感光ドラムなどに伝達するギア列を構成したものが一般的である。ところで、ギア列を構成すると、ギア同士の噛み合いによって振動が発生し、その振動成分が影響して感光ドラムなどの回転に速度の変動が生じる場合がある。感光ドラムなどに回転変動が生じると画像が伸縮し、ピッチムラ(バンディング)を生じて画像上に現れてしまう問題がある。
【0003】
ギア列の振動が原因で起こる感光ドラムなどの回転変動の解消にむけて、本出願人をはじめとする次の技術が提案されている。たとえば、ギア列が駆動入力側から順に入力ギアと、中間ギアと、そして出力ギアの3つの歯車からなっている場合、入力ギアと中間ギアとによる入力側の噛合位相と、中間ギアと出力ギアとによる出力側の噛合位相とを1/2位相で180°ずらして配置する。そうすることによってギア回転時の角速度の変動を相殺させ、出力側における回転変動を抑えるというものである(たとえば、特許文献1,2参照)。
【0004】
また、感光ドラムなどを回転駆動させる駆動装置のギア列にあっては特に、ギアに斜歯ギアを用いることで噛み合い長さ(噛み合い率)を大きくし、噛合振動を極力抑えて回転を円滑に伝達する機構を採用する場合が多い。斜歯ギアを用いた場合、噛合位相を1/2位相(角度180°)だけずらして回転変動つまり角速度の変動を低減するために、入力ギアと、中間ギアと、出力ギアの各ギア軸が成す軸角度を、中間ギアを基準にして回転方向に調整する機構が知られている。また、斜歯ギアが噛み合う回転軸方向への幅寸法の大小によってもギアの位相が変化する。その点に着目して、上記の軸角度調整機構に代わる技術として、斜歯ギアが回転軸方向に移動可能とし、噛合周波数による角速度の変動で位相を調整する装置が提案されている。さらに、斜歯ギアの回転軸方向の位置を規制するギア位置規制部材を設けた構造も提案もされている(たとえば、特許文献3参照)。
【0005】
一方、プリンタや複写機の場合は特に、感光ドラムなど像担持体が寿命に達したら取替えできるようになっている。すなわち、感光ドラムなど像担持体を他のプロセス手段と一緒にユニット化し、そのユニットごと画像形成装置に装着または取り外しできるようにしてユニット内の機器や部材を交換可能としている。その場合、一般のユーザでもユニットを簡便に画像形成装置本体に着脱して交換できるような構造が求められる。
【0006】
画像形成装置のさらなる小型化に伴い、画像形成装置本体に対してユニットを感光ドラムの回転軸線に対して直交する方向から着脱させる構造が多くなってきている。その場合、ギア列のギア同士を噛み合わせる連結方式として、ユニット挿入方向から見てギアを重なり合うように配置し、ユニット挿入動作に連動させて半ば自動的にギア同士を噛合させるいわゆるギアカップリング構造が知られている。しかしその場合、ギアの歯面に傷や打痕などが付き易く、また回転精度を低下させるなどといった問題がある。
【0007】
かかるギア傷痕などの問題解消にむけて、出力ギアにカップリング接続機構の設けたつぎの構造が知られている。すなわち、画像形成装置本体に設けた動力源からの回転動力をギア列を介して出力ギアに伝達する構造にあって、出力ギア側に設けたカップリングなどの接続機構と一緒に出力ギアを回転軸方向に沿って移動させる。その出力ギアの移動は、装置本体カバーや転写ベルトユニットなどを開閉する操作に連動させることができる。出力ギアを移動させると、感光ドラムなどの回転体の端部に突き当たり、その突き当て位置にて出力ギアを位置決めする。出力ギアが位置決めされた時点で、ギア同士の噛合関係が成立してカップリング結合し、感光ドラムなどの回転を可能な状態にするものである。
【0008】
以上数例の従来技術から明らかなように、感光ドラムなどの像担持体を高精度に回転させるには、斜歯ギアを用いてギア列を構成することが望ましいことがわかる。また同時に望まれるのは、入力ギアと中間ギアとによる入力側の噛合位相と、中間ギアと出力ギアとによる出力側の噛合位相とを1/2位相の角度180°でずらして配置することである。さらに、ユーザの利便性などを考慮すると、感光ドラムやプロセス手段で構成されるユニットを交換する際、その着脱は感光ドラムなどの回転軸線に対して直交する方向から行うのが好適である。
【0009】
【特許文献1】特開平9−26001号公報
【特許文献2】特開2000−352851号公報
【特許文献3】特開2003−240065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ユニットをドラム回転軸線などに対して直交する方向から挿入して着脱する構造を採用すると、次なる新たな問題が提起される。すなわち、ギア列に斜歯ギアを用いた利点が十分に活かされないことである。また、入力ギアと中間ギアと出力ギアによってギア列を構成したような場合、入力側と出力側との噛み合いによる位相を1/2位相だけずらした位置に設定することの効果をあまり期待できない。それは、以下の理由からである。
【0011】
理由の1つは、感光ドラムなどが回転するとき、現像プロセス手段などによる負荷などが影響し、感光ドラムなどに微小な回転軸方向への振動や位置の変化が生じるという問題である。そのため、入力ギアと中間ギアとによる入力側の噛合位相と、中間ギアと出力ギアとによる出力側の噛合位相との間の位相差に振動や位置変化を与えてしまう。結果、噛合位相を1/2位相だけずらして角速度の変動を相殺させても、出力側において角速度の変動を低減させるに十分な効果が得られない。
【0012】
また、他の理由の1つとして、カップリング付き出力ギアを回転軸線方向に沿って移動させ、感光ドラムなどの回転体の端部に突き当てることで位置決めするという上記の構造についてである。この構造によれば、ユニット内の感光ドラムなど各機器には回転軸線方向への精度上のバラツキがあるが、それが影響して噛合位相を正確に1/2位相だけずらすという目標の100%を達成できないという点である。
【0013】
以上から、本発明の目的は、動力源からの回転動力を伝達するギア列において、ギア同士の噛合による回転速度つまり角速度の変動を防止し、回転伝達される側のたとえば感光ドラムなど被回転駆動体の作動への影響を有効に抑える駆動装置を提供することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、かかる駆動装置を具備することで、画像の伸縮によるピッチムラの発生を抑え、安定した高画質画像を形成できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明に係る代表的な駆動装置は、動力源からの回転動力を2つ以上のギアからなるギア列を介して最終ギアである出力ギアに伝達する駆動装置であって、前記出力ギアと1つ手前のギアとの噛合による位相と、2つ手前のギアと前記1つ手前のギアとの噛合による位相とが、前記出力ギアの角速度の変動による周波数振幅が最小となるように設定され、前記出力ギアと前記2つ手前のギアとが、それらの回転軸方向に相対する位置を常時一定に維持した状態で移動可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
また、上記駆動装置を具備する本発明の代表的な画像形成装置は、駆動装置に備わる前記出力ギアが、画像形成装置本体に備わって回転する像担持体に対して、またはその像担持体を回転させる回転駆動体に対して回転軸方向に位置決めされ、係合することによって回転が伝達されるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の駆動装置によれば、感光ドラムや中間転写体などの像担持体に対して回転動力を伝達する機構として最適であり、ギア列のギア同士による噛み合いで発生する回転速度すなわち角速度変動を防止できる。
【0018】
また、本発明の画像形成装置によれば、上記駆動装置を画像形成装置に用いることで、画像の伸縮によるピッチムラのない高画質の画像を安定して形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る駆動装置とこれを具備する画像形成装置の好適な実施形態について、電子写真式プリンタを具体例として詳記する。
【0020】
≪プリンタ構造≫
図1は、本実施形態のギア伝達機構を備えた駆動装置を具備するプリンタ本体の構成を示す。ポリゴンスキャナなどによって感光ドラム(像担持体)104の回転軸方向である主走査方向に振られたレーザ発光部100から射出されたレーザ光101はミラー102などで光路を調整される。調整されたレーザ光101は、プロセスカートリッジ103内に像担持体として装着されている感光ドラム104上に到達する。感光ドラム104の転写材であるシート105を挟んで対向する位置には無端状ベルト(図示略)を配置することができる。
【0021】
感光ドラム104は設定された回転速度で回転し、その感光ドラム104の表面に副走査方向(感光ドラム104の回転方向)への画像が形成される。すなわち、図示しないデータ入力装置の信号に基づいてレーザ光のON/OFF、あるいは発光の強弱のコントロールによって任意の画像が潜像として形成される。
【0022】
プリントされる用紙(転写材)などのシート105はカセット106に積載され、プリント信号に合わせて給紙ローラ107によって給紙され、搬送経路108を通って感光ドラム104近傍に導かれる。既に、潜像を有している感光ドラム104は所定の現像プロセスにより感光ドラム104上にトナー像が形成される。このトナー像を転写部109において用紙105上に転写され、定着器110にてトナー像が定着された後、排紙部111へと排紙される。
【0023】
図2は、プロセスカートリッジ103をプリンタ本体に装着する過程を示す。プロセスカートリッジ103は、感光ドラム104と、この感光ドラム104に作用する現像プロセス手段を一体的にカートリッジ化したもので、ユーザ自身がプリンタ本体に簡便に着脱できるようになっている。着脱時、ユーザはプリンタ本体のカートリッジカバー112を開いて、プリンタ本体内部に設けた図示しないガイドレールに案内されてプロセスカートリッジ104を挿入する。
【0024】
≪駆動機構≫
図3(a)〜(c)は、動力源であるモータ6からの回転動力を感光ドラム104に伝達するための駆動機構としてギア伝達機構のギア列を示す。ギア列は、回転動力源であるモータ6と、モータ軸5に固定されたモータギア4と、モータギア4に噛合する入力ギア3と、中間ギア2と、ドラムギア1などで構成されている。ドラムギア1は最終ギアとして感光ドラム104に係合することで回転を伝達する。中間ギア2はそうしたドラムギア1と入力ギア3との間に入って両ギアに噛合している。したがって、本実施形態にあっては、ドラムギア1を「出力ギア」とした場合に、中間ギア2がその出力ギアの1つ手前で噛合するギアとして定義することができる。
【0025】
後述の第1実施形態において説明するが、ドラムギア1は最終ギアとしての出力ギアであり、そのドラムギア1の1つ手前のギアが中間ギア2であり、2つ手前のギアが入力ギア3である場合、それらすべてのギアを斜歯ギアで形成することができる。
【0026】
参考までに、それら斜歯ギアによるギア列の各噛合部では、回転軸方向の位置によって噛み合いによる周波数の速度変動位相が変化することがある。そのため、回転時に発生する回転体の軸方向の振動や位置変化によって出力ギアであるドラムギア1が回転軸方向に振動や位置変化することがある。それが原因して入力ギア3と中間ギア2との入力側の噛合位相と、中間ギア2と出力ギアであるドラムギア1との出力側噛合い位相が同期せず角速度変動が大きくなる場合がある。また、図3(b)は、出力ギアであるドラムギア1が被駆動体である回転体、つまりこの場合は感光ドラム104の端部に突き当たって回転軸方向への位置決めがなされ、同時にカップリング係合される場合を示している。そうした場合、入力ギア3と出力ギアであるドラムギア1との回転軸方向の相対位置を常時一定に合わせておくことが困難となる。
【0027】
そこで、本実施形態にあっては、入力ギア3とドラムギア1(出力ギア)との回転軸方向の相対位置を常時一定な状態を保ちつつ、ドラムギア1と入力ギア3とが回転軸方向に移動できる構成としており、これが骨子の1つとなる。
【0028】
そのように入出力ギアを相対に移動可能な構成とすることで、入力ギア3と中間ギア2との入力側の噛合位相と、中間ギア2とドラムギア1(出力ギア)との出力側の噛合位相を同期させる。それによって、噛合位相を互いに打ち消しあった状態で回転を継続できるので、ギアの噛合周波数における角速度の変動振幅つまり周波数振幅を最小の状態で維持できるのである。
【0029】
したがって、図3(a)に示すように、カートリッジカバー112を開く動作に連動して図示しないレバーが動作する。その結果、プロセスカートリッジ103内の感光ドラム104に回転を伝達するドラムギア1が回転軸方向の退避位置に所在しているので、プロセスカートリッジ103の挿入が可能な状態となる。
【0030】
続いて、図3(b)に示すように、カートリッジカバー112を閉じる動作に連動して上記図示しないレバーが動作する。それによって、ドラムギア1が回転軸方向の矢印で示す感光ドラム側に向かって移動する。ドラムギア1の移動によってこのドラムギア1に設けられている爪部(突起)7と、プロセスカートリッジ103内の感光ドラム104の回転軸方向の端部に設けられている爪部(突起)8とが係合する。その状態で感光ドラム104に回転を伝達できる状態になる。
【0031】
図4(a),(b)は、入力ギア3と中間ギア2との入口側の噛合状態、また中間ギア2とドラムギア1との出力側の噛合状態を示す。すなわち、入力ギア3と中間ギア2との噛合状態がギア回転とともに変化していく様子を示し、図中符号pで示す部分が噛合点である。
【0032】
ギアの歯部は歯に受ける負荷荷重によって微小な変形を生じるが、噛み合いの状態によって荷重を受ける状態が連続的に変化するため、回転方向に角速度の変動が生じる。このことは中間ギア2とドラムギア1との噛合状態についても同様である。
【0033】
また、図5(a)は、図3(c)に示す入力ギア3と中間ギア2との噛合部Bと、中間ギア2とドラムギア1との噛合部Aとの位相が同位相になった状態を模式的に表しているグラフである。また、図5(b)は図3(c)に示す入力ギア3と中間ギア2との噛合部Bと、中間ギア2とドラムギア1との噛合部Aの位相を略1/2位相(180°)だけずらして配置し、噛合部A,Bの二つの位相が互いに打ち消し合う相殺状態を模式的にあらわしている。図5(a),(b)に示す符号eは、入力ギア3と中間ギア2との噛合部Bでの角速度の変化を表し、符号fは中間ギア2とドラムギア1との噛合部Aでの角速度の変化を表す。また、符号gはそれらを合成したとき、すなわち入力ギア3に対するドラムギア1の角速度の変化を表している。図5(a)に示すように、同位相状態にあっては角速度の振幅が増幅されてドラムギア1の回転ムラが増大される。これに対して、図5(b)に示すように、位相が打ち消し合う状態にあっては角速度の振幅が相殺されて、ドラムギア1のギアの噛合周波数における角速度変化をほぼ一定にすることができる。
【0034】
以上に着目し、本実施形態においては、(1)ドラムギア1を高精度に回転させるためにギア列を斜歯ギアで構成する。(2)図5(b)に示すように、入力ギア3と中間ギア2との入力側の噛合位相と、中間ギア2とドラムギア1との出力側の噛合位相とをほぼ1/2位相だけずらして配置する。それによって角速度の変動を相互に打ち消し合いさせて、出力側であるドラムギア1のギアの噛合周波数における角速度の変動振幅が最小となるように設定する。本実施形態の場合、出力ギアであるドラムギア1が回転軸方向に移動する構成の場合においても、上記入力側の噛合位相と出力側の噛合位相とをほぼ1/2位相の180°でずらして配置する。それによって角速度の変動を相互に打ち消し合わせている状態を保持できるようにする。
【0035】
≪第1実施形態≫
図6および図7は、第1実施形態による駆動装置を示す。
【0036】
図6において、駆動装置は、モータ取付板21に動力源であるモータ6が配置され、モータ軸5に固定されたモータギア4と、モータ取付板21と駆動側板25に両端を固定された中間ギア12の回転軸となる中間ギア軸22とドラムギアユニット30を備えている。 上記ドラムギアユニット30は、2枚の側板31,32に入力ギア軸33がこの両端部を固定されている。また、入力ギア軸33上には入力ギア13が回転可能に設けられ、2枚の側板31,32に軸支されてドラムギア11の両端からボス11a,11bが突出しており、それらボス11a,11bを軸受34a,34bで支持している。
【0037】
以上のモータギア4、入力ギア13、中間ギア12、ドラムギア11はすべて斜歯ギアで形成されてギア列を構成している。
【0038】
ドラムギアユニット30の2枚の側板31,32には、中間ギア軸22が嵌合する貫通孔31a、32aが設けられている。また、ドラムギア11の中心には片端をモータ取付板21に固定のドラムギア軸24が嵌合しており、回転軸方向への移動が可能に軸支されている。そのため、ドラムギアユニット30は中間ギア軸22とドラムギア軸24に規制されつつ、回転軸方向への移動が可能となっている。このドラムギアユニット30の回転軸方向への移動は、中間ギア12に対する入力ギア13の噛合状態と中間ギア12に対するドラムギア11の噛合状態との関係を保持したまま歯筋方向に移動することになる。
【0039】
この第1実施形態において、駆動装置が回転駆動するとき、入力ギア13とドラムギア11は各々斜歯ギアの回転軸方向に働く力によって側板の方向へと付勢される。第1実施形態の場合、図3(c)に示す回転方向に回転すると、感光ドラム方向に寄せられる。この入力ギア13とドラムギア11とが回転時に回転軸方向に寄せられた状態では、前述のように入力ギア13と中間ギア12との入力側の噛合位相と、中間ギア12とドラムギア11との出力側の噛合位相とを互いの角速度の変動を打ち消させるようにする。そのためほぼ1/2位相(角度180°)ずらした最良の状態に配置してある。
【0040】
すなわち、図6および図7に示す状態において、入力ギア13と中間ギア12との噛合部Bの位相と、中間ギア12とドラムギア11との噛合部Aの位相との関係を、ほぼ1/2位相である角度180°だけずらして配置する。その際、図5(b)に示すように、互いの角速度の振幅を相殺させてドラムギア11のギアの噛合周波数における角速度変化をほぼ一定になるようにしてある。
【0041】
ドラムギア11の両端から突き出ているボス11a、11bのうち、感光ドラム104側のボス11bの端部には感光ドラム44に係合して回転を伝達するために複数の爪形状に形成された突起35が設けられている。また、ドラムギア11の回転中心と感光ドラム44の回転中心の軸心を芯合わせをするための半球状の突起36が設けられている。
【0042】
≪ドラムギアユニットの移動≫
そこで、図7に示すように、ユーザがカートリッジカバーなどを閉じる操作などすると、その動作に連動してドラムギアユニット30が回転軸方向に沿って感光体ドラム44側に移動する。そのドラムギアユニット30の移動により、半球状の突起36が感光ドラムの円筒部46に嵌合することで自動的に軸心が芯出しされ、同時に半球状の突起36の先端が円筒部の底面47に突き当たることで回転軸方向に位置決めされる。そのようにしてドラムギア11の複数の爪形状による突起35と感光ドラム44の軸方向端部に設けられた爪形状による部分45とがカップリング係合される。
【0043】
なお、ドラムギアユニット30は、入力ギア13と中間ギア12との噛合部Bの位相と、中間ギア12とドラムギア11との噛合部Aの位相とを互いの角速度の変動を打ち消し合わせた状態を保持したまま軸方向に移動し位置決めされる。その結果、ドラムギア11は角速度の変動がほぼ一定になるように回転することができる。なお、ドラムギア11の位置決めを感光ドラム端部への突き当てに限ることなく、無端状ベルトを駆動する回転体に対して位置決めする構造も可能である。
【0044】
なお、この第1実施形態においては、図8に示すように、ギア列の各斜歯ギアの寄り方向に予圧を与えるようにバネ37,38を装着して構成でき、それによってギア寄せの効果をより高めることができる。
【0045】
また、第1実施形態によれば、感光ドラム44を内蔵したプロセスカートリッジをプリンタ本体に装着し、感光ドラム44とドラムギア11とを爪形状部分に係合させた状態でモータ6からの回転動力を伝達する。すると、感光ドラム44が回転して現像プロセス手段などによる負荷などの影響で、感光ドラム44が微小ながら回転軸方向に振動を生じる。しかし、前述の本実施形態の構成と作用によって、ドラムギア11のギアの噛合周波数における角速度の変動振幅が最小となるような最良の状態を維持した回転が可能となる。
【0046】
加えて、第1実施形態によれば、プロセスカートリッジをプリンタ本体に装着時、感光ドラム44の位置精度が回転軸方向にバラツキがあったとしても、それに影響も受けることはない。
【0047】
≪第2実施形態≫
つぎに、図9〜図11は、本発明の駆動装置に係る第2実施形態を示す。
【0048】
この第2実施形態においては、より効果的にギアを配置することで部品点数を削減することを目標とするものである。すなわち、図9および図10に示すように、モータ取付板68に片持ち固定されて入力ギア53の回転軸となる入力ギア軸67を有し、中間ギア52の回転軸である中間ギア軸67がモータ取付板68と側板69とを支持するように固定されている。また、モータ取付板68と側板69には軸受64a,64bによってドラムギア51の両端から突出しているボス51a,51bが回転可能に軸支されている。ドラムギア51の両端から突出しているボス51a、51bのうち、感光ドラム104側のボス11bの端部には感光ドラム44に係合して回転を伝達するために複数の爪形状による突起35が設けられている。また、ドラムギア51の回転軸心と感光ドラム44の回転軸心の芯合わせをするための半球状の突起36が設けられている。
【0049】
以上の構成によって、ユーザがカートリッジカバーなどを閉じる操作を行うと、それに連動して、図11に示すように、ドラムギア51が回転軸方向に沿って感光ドラム44側に移動する。そのドラムギア51の移動で、半球状の突起36が感光ドラム44の円筒部46に嵌合して芯合わせが行われると同時に、半球状の突起36の先端が円筒部の底面47に突き当たることで回転軸方向に位置決めされる。ドラムギア51の複数の爪形状による突起35と感光ドラム44の軸方向端部に設けられた爪形状部分45とがカップリング係合される。
【0050】
また、ユーザによるカートリッジカバーなどを開ける操作に連動して、ドラムギア51が回転軸方向に沿ってモータ6側に移動し、爪形状部分によるカップリング係合が離間する。それによりユーザは容易にプリンタ本体からプロセスカートリッジを取り外すことができる。
【0051】
本実施形態にあっても、一連のギア列を構成するモータギア4と、入力ギア53と、中間ギア52と、ドラムギア51の各ギアには斜歯ギアが用いられている。入力ギア53とドラムギア51の斜歯の捩れ方向は、ドラムギア51に負荷を与えてモータ軸5を図10中の矢印で示す方向に回転させたとき、入力ギア53の回転軸方向に働く軸力とドラムギア51の回転軸方向に働く軸力とが互いに向き合う方向に設定してある。また、入力ギア53の斜歯の捩れ方向は右方向、ドラムギア51の斜歯の捩れ方向は左方向になっている。また、中間ギア52の斜歯の捩れ方向は入力ギア53に噛合する左方向の領域52aと、ドラムギア51に噛合する右方向の領域52bとが一体となるよう構成されている。
【0052】
また、入力ギア53とドラムギア51の各々には、互いに向き合う対向面に回転軸と同軸上の同心円で円環状による円滑な表面を有する突起71,73が設けられ、回転軸方向から見たとき、その円環形状が交差するように軸中心が配置されている。
【0053】
それら入力ギア53とドラムギア51とが回転駆動時に回転軸方向に互いに寄った状態において、前述のように、入力ギア53と中間ギア52との入力側の噛合位相と、中間ギア52とドラムギア51との出力側の噛合位相とを互いの角速度の変動を相殺させる。すなわち、互いに打ち消し合わせるようにほぼ1/2位相で角度180°だけずらした最良の状態に配置してある。すなわち、図10に示す状態において、入力ギア53と中間ギア52との噛合部Bの位相と、中間ギア52とドラムギア51との噛合部Aの位相との関係を、ほぼ1/2位相ずらして配置する。図5(b)に示すように、互いの角速度の振幅を相殺してドラムギア51のギアの噛合周波数における角速度の変動をほぼ一定になるように維持する。
【0054】
図10において、ギア列が回転動作をすると斜歯ギアの受ける軸方向に働く力の作用によって、入力ギア53とドラムギア51とが回転軸方向に互いに寄り合い、互いの円環状の突起71,73どうしが接触し合いながら回転する。そして、ドラムギア51が軸方向に移動した場合でも、入力ギア53が軸方向に互いの円環状の突起71,73どうしが接触を保ちながら移動する。
【0055】
結果、この第2実施形態によれば、入力ギア53と中間ギア52との噛合部Bの位相と、中間ギア52とドラムギア51との噛合部Aの位相とを互いの角速度の変動を打ち消させた状態を維持できる。そのため、ドラムギア51はギアの噛合周波数における角速度の変動をほぼ一定になるように回転することができる。
【0056】
このとき、入力ギア軸5にモータ取付板68と入力ギア53との間に弾性部材として圧縮ばね(図示略)などを装着し、予圧を付与して付勢することで入力ギア53とドラムギア51とを確実に接触させることができる。
【0057】
また、円環状の突起71,73どうしが摺接する面にグリスなどの潤滑油材を塗布すると、磨耗や接触を通して伝わる振動に対する影響を小さく抑えるのに効果がある。
【0058】
感光ドラム44などを内蔵したプロセスカートリッジをプリンタ本体に装着し、感光ドラム44とドラムギア51とを爪形状部分を係合させた状態でモータ6からの回転動力を伝達する。それによって感光ドラム44が回転し、感光ドラム44に作用する現像プロセス手段などによる負荷などの影響で感光ドラム44が僅かながらも回転軸方向に沿って振動が生じる。その場合でも、ドラムギア51の角速度の変動振幅が最小となるような最良の状態を維持した回転が可能となる。
【0059】
なお、上記第1,第2実施形態のいずれにあっても中間ギアを多段ギアで構成することが可能である。図12に示すように、第2実施形態の場合は中間ギアを多段ギア54で構成すると、減速または増速するためのギア列が不要となり、装置小型化により一層寄与して、しかもコスト低減に有効である。その際、噛合部A,Bにおける位相を歯形モジュールと歯数に応じてギアの噛合周波数における角速度の変動振幅が最小となるように設定すればよい。
【0060】
ここで、図13(a),(b)は、図12で示した中間ギアを多段ギアとした場合において噛合状態を模式的に表すグラフである。ここでは、中間ギア54の大ギアの歯数を小ギアの2倍にしたものを例にしてある。この図中の符号e、e´は、入力ギア53と中間54ギアの大ギア部分との噛合部Bでの角速度の変化を表し、符号f、f´は中間ギア54の小ギア部分とドラムギア51との噛合い部Aでの角速度の変化を表している。また、符号g、g´はそれらを合成したとき、すなわち入力ギア53に対するドラムギア51の角速度の変化を表している。図13(a)は、入力ギア53に対するドラムギア51の角速度の変動振幅Lが、この駆動系においてのギアの噛合周波数における角速度の変動振幅が最大となる状態である。図13(b)は、入力ギア53に対するドラムギア51の角速度の変動振幅L´が、この駆動系においてのギアの噛合い周波数における角速度変動振幅が最小なる状態である。すなわち、この図13(b)に示す噛合位相の状態となるように噛合部の位相を設定することで好適な結果を実現することができる。
【0061】
以上説明したように、上記各実施形態にあっては、回転伝達時に出力ギアの軸方向に加わる力の方向と出力ギアの2つ前に連なるギアの軸方向に加わる力の方向とを向かい合わせる。また、出力ギアの歯幅方向に設けた円環状の突起と出力ギアの2つ前に連なるギア歯幅方向に設けた円環状の突起とを互いに向き合わせ、接触しながら摺動回転するように構成する。それによって、部品点数を削減でき、累積誤差によって目標とすべき効果が半減するのを防ぎ、また、コスト低減も可能となる。また、出力ギアであるドラムギア1に噛合する1つ手前の中間ギア2を多段ギアにすることで、減速あるいは増速するためのギア列が不要となり装置を小型化するために有効であり、さらにはコストの低減となる。
【0062】
以上、本発明について数例の実施形態を説明したが、本発明はそれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内でその他の実施態様、応用例、変形例、そしてそれらの組み合わせも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る画像形成装置本体の実施形態の構成を示す縦断面図。
【図2】同画像形成装置にプロセスカートリッジを装着する様子を示す縦断面図。
【図3】同図(a)〜(c)はモータから感光ドラムへの示した歯車伝動機構を上面から見た図、モータから感光ドラムへの示した歯車伝動機構を上面から見た図、モータから感光ドラムへの示した歯車伝動機構を回転軸方向から見た図。
【図4】同図1(a),(b)は入力ギアと中間ギアとのギアの噛合状態がギアの回転とともに変化する様子を示す図。
【図5】同図(a),(b)は上記図3(c)に示す噛合部Bと噛合部Aとの位相が同位相の場合を示すグラフと、噛合部Bと噛合部Aとの位相が同位相の場合と1/2位相をずらして位相を互いに打ち消しあった状態の場合とを対比して示すグラフ。
【図6】第1実施形態による駆動装置を上面から見て示す図。
【図7】同第1実施形態による駆動装置においてドラムギアと感光ドラムとが係合した状態を上面から見て示す図。
【図8】同第1実施形態による駆動装置において入力ギアとドラムギアとの寄り方向に予圧を与えるバネを設けた状態を示す図。
【図9】第2実施形態による駆動装置において上面から見て示す図。
【図10】同第2実施形態による駆動装置を回転軸方向から見て示す図。
【図11】同第2実施形態による駆動装置においてドラムギアと感光体ドラムとが係合した状態を上面から見て示す図。
【図12】上記第2実施形態の駆動装置において中間ギアを多段ギアで構成した場合を示す図。
【図13】同図(a),(b)は、上記図12に示す中間ギアが多段ギアである場合の噛合部Bと噛合部Aとの位相の状態において角速度の変動振幅が最大となる場合を示すグラフと、同角速度の変動振幅が最小と成る場合を対比して示すグラフ。
【符号の説明】
【0064】
1、11、51 ドラムギア
2、12、52 中間ギア
3、13、53 入力ギア
4 モータギア
5 モータ軸
6 モータ
7、35 ドラムギア爪部(突起)
8、45 感光ドラム爪部(突起)
11a、11b、51a、51b ドラムギアボス
21、68 モータ取付板
22、67 中間ギア軸
24 ドラムギア軸
25、69 駆動側板
30 ドラムギアユニット
31、32 側板
31a、32a 貫通孔
33、66 入力ギア軸
34a、34b、64a、64b 軸受
36 半球状突起
37、38 バネ
44 感光体ドラム
46 円筒部
47 円筒部の底面
52a 中間ギアのハス歯の捩れ左方向領域
52b 中間ギアのハス歯の捩れ右方向領域
54 多段ギア
71 ドラムギアの円環状突起
73 入力ギアの円環状突起
100 レーザ発光部
101 レーザ光
102 ミラー
103 プロセスカートリッジ
104 感光ドラム
105 シート(転写材)
106 カセット
107 給紙ローラ
108 搬送経路
109 転写部
110 定着器
111 排紙部
112 カートリッジカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源からの回転動力を2つ以上のギアからなるギア列を介して最終ギアである出力ギアに伝達する駆動装置であって、
前記出力ギアと1つ手前のギアとの噛合による位相と、2つ手前のギアと前記1つ手前のギアとの噛合による位相とが、前記出力ギアの角速度の変動による周波数振幅が最小となるように設定され、
前記出力ギアと前記2つ手前のギアとが、それらの回転軸方向に相対する位置を常時一定に維持した状態で移動可能に構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記出力ギアと前記2つ手前のギアとが互いに作用しつつ回転軸方向への相対位置を常時一定に維持できるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
回転伝達時に前記出力ギアの回転軸に働く力の方向と、前記2つ手前のギアの回転軸方向に働く力の方向とが対向しており、前記出力ギアの歯幅方向に設けた円環状の突起と前記2つ手前のギアの歯幅方向に設けた円環状の突起とが向き合って摺接して回転可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記出力ギアと、前記1つ手前のギアと、前記2つ手前のギアとが斜歯ギアでなっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記2つ手前のギアが、前記動力源から回転動力を受ける入力ギアであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記1つ手前のギアは、中間ギアとして多段ギアでなっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の駆動装置。
【請求項7】
前記請求項1乃至6のいずれか1項に記載の駆動装置が装着され、該駆動装置に備わる前記出力ギアが、画像形成装置本体に備わって回転する像担持体に対して、またはその像担持体を回転させる駆動体に対して回転軸方向に位置決めされ、係合することによって回転が伝達されるように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記駆動体が転写材を挟んで前記像担持体に対向する無端状ベルトを駆動させる回転体である場合に、その回転体に対して前記出力ギアが回転軸方向に位置決めされかつ係合して回転伝達されることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。

【図4】
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【図7】
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【図11】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−69476(P2009−69476A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237796(P2007−237796)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】