説明

駆動装置

【課題】ケーブルを移動させることによって駆動対象物を駆動する駆動装置において、出力軸を収容するケースとケーブルとをコンパクトにまとめて駆動装置の収納スペースを縮小しながら、ケーブルを正確に位置決めしてスムーズな動きを実現できるようにする。
【解決手段】モーターの回転力が伝達される出力軸12をケース14に収容する。出力軸12の一端側をケース14の側面から突出させる。出力軸12の一端側にピニオンギヤ13を固定する。ケーブル3、4の外周面にピニオンギヤ13に噛み合う歯を形成する。ケース14の側面に、ケーブル3、4をピニオンギヤ13に噛み合うように案内するケーブルガイド面30、31を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動対象物を駆動する駆動用ケーブルをモーターの回転力により中心線方向に移動させる駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の駆動装置として、例えば、特許文献1に開示されているように、自動車のサンルーフ装置を構成するルーフパネルを駆動対象物として、このルーフパネルを駆動用ケーブルのプッシュプル動作によって駆動するように構成されたものが知られている。特許文献1の駆動装置は、モーターの回転速度を減速する歯車機構及び出力軸を収容するケースを備えている。このケースは、サンルーフ装置を構成する支持プレートに取り付けられている。上記出力軸の一端側は、ケースから支持プレート側へ向けて突出している。出力軸の一端側には、ピニオンギヤが固定されている。
【0003】
一方、駆動装置のケーブルの外周面には、ピニオンギヤに噛み合う歯が形成されている。このケーブルは、支持プレートとは別体に構成されて該支持プレートに取り付けられたガイドパイプに挿入された状態で保持されている。ガイドパイプに挿入されたケーブルは、歯がピニオンギヤに噛み合うように配置される。
【0004】
上記駆動装置によれば、モーターの回転力が歯車機構を経て出力軸に伝わってピニオンギヤが回転すると、ケーブルは、ガイドパイプ内を摺動して所定軌道上を案内されながらケーブルの中心線方向に移動する。このケーブルの移動によってルーフパネルが駆動される。
【特許文献1】特開2006−168531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の駆動装置では、ケーブルを案内するためのガイドパイプを設けているため、ケーブルは、ガイドパイプの肉厚分、ケースから離れることになる。これに加えて、ガイドパイプを支持プレートとは別体に構成して、該支持プレートに取り付るようにしている。このようにすると、ガイドパイプ及び支持プレートの両方に生じる製造公差や、車両走行時の振動によるケースとの接触を考慮して、ガイドパイプをケースから離さなければならなくなり、このことによっても、ケーブルがケースから離れてしまう。このようにケーブルをケースから離して配置すると、駆動装置を全体として見たときにその収納スペースが拡大してしまう。
【0006】
また、特許文献1の駆動装置のケーブルは、ケースとは別体の支持プレートにガイドパイプを介して支持されていることから、これら支持プレート及びガイドパイプに生じる製造公差や組付誤差に起因して、ケーブルが正確に位置決めされ難い。ケーブルの位置決めが正確になされていないと、ピニオンギヤとの噛み合い不良が起こり易く、ケーブルの動きがスムーズでなくなってしまう。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ケーブルを中心線方向に移動させるように構成された駆動装置において、出力軸を収容するケースとケーブルとをコンパクトにまとめて駆動装置の収納スペースを縮小しながら、ケーブルを正確に位置決めしてスムーズな動きを実現できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、ケースの一側面に設けたケーブルガイド面により、ケーブルにおけるケース側の部位を案内するようにした。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、駆動対象物に連結される駆動用ケーブルと、モーターとを備え、該モーターの回転力によって上記ケーブルを該ケーブルの中心線方向に移動させるように構成された駆動装置において、上記モーターの回転力が伝達される出力軸と、上記出力軸を、該出力軸の一端側が突出した状態で収容するケースと、上記出力軸の一端側に設けられた駆動側噛み合い部と、上記ケーブルに所定長さに亘って設けられた従動側噛み合い部とを備え、上記ケーブルの従動側噛み合い部は、上記駆動側噛み合い部に噛み合うように上記ケースの一側面に沿って配置され、上記ケースの一側面には、上記ケーブルの従動側噛み合い部におけるケース側の部位を案内する形状のケーブルガイド面が設けられている構成とする。
【0010】
この構成によれば、モーターの回転力が出力軸に伝達されると、駆動側噛み合い部が出力軸周りに回転する。この駆動側噛み合い部の回転力は、ケーブルの従動側噛み合い部に伝達され、該ケーブルが中心線方向に移動する。このとき、ケーブルは、ケースの一側面に設けられたケーブルガイド面によって案内されるので、ケーブルはケースに近接して配置されることになり、ケーブルとケースとがコンパクトにまとまる。また、ケーブルガイド面はケースに設けられているため、従来のようにケースから離れて配置されたガイドパイプや支持プレートを利用してケーブルを位置決めする場合に比べて、ケーブルをケースに対し正確に位置決めすることが可能になる。
【0011】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、ケースには、ケーブルの従動側噛み合い部に対してケーブルガイド面と反対側から当接するように形成された保持部材が固定されている構成とする。
【0012】
この構成によれば、移動中のケーブルが安定する。
【0013】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、一対のケーブルが、互いに間隔をあけて配置され、ケースにおける一対のケーブルの間に対応する部位には、保持部材が固定される固定部が設けられている構成とする。
【0014】
この構成によれば、保持部材は、一対のケーブルの間でケースに固定されることになる。従って、固定部の数を少なくしながら、保持部材を両方のケーブルに対し正確に位置決めした状態で固定することが可能になる。
【0015】
請求項4の発明では、請求項2または3の発明において、ケースと保持部材との少なくとも一方には、他方に当接する当接部が設けられている構成とする。
【0016】
この構成によれば、例えば、ケースに当接部を設けた場合には、この当接部が保持部材に当接することで、ケースを保持部材に位置決めすることが可能になる。これにより、ケーブルガイド面と保持部材との位置関係を容易に正規の状態にすることが可能になる。尚、当接部を保持部材に設けた場合及び当接部をケースと保持部材の両方に設けた場合も同様である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、出力軸を収容するケースの一側面に、ケーブルにおけるケース側の部位を案内するケーブルガイド面を設けたので、ケーブルとケースとをコンパクトにまとめて駆動装置の収納スペースを小さくしながら、ケーブルをケースに対して正確に位置決めでき、ケーブルの動きをスムーズにできる。
【0018】
請求項2の発明によれば、ケースに、ケーブルに対してケーブルガイド面と反対側から当接する保持部材を固定したので、ケーブルを安定して案内することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、ケースにおける一対のケーブルの間の部位に、保持部材を固定する固定部を設けたので、固定部の数を少なくして構造を簡素化しながら、両方のケーブルを保持部材により安定して案内することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、ケースと保持部材との少なくとも一方に、他方に当接する当接部を設けたので、ケーブルガイド面と保持部材との位置関係を容易に正規の状態にすることができ、ケーブルの動きをスムーズにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
(発明の実施形態1)
図1は、サンルーフ装置Aを備えた自動車の屋根を示しており、このサンルーフ装置Aは、屋根に形成された開口部100を開閉するためのルーフパネル101と、ルーフパネル101の左右両端部に連結された一対のリンク部材(図示せず)と、ルーフパネル101の左右両端部を前後方向に案内するスライドレール(図示せず)と、ルーフパネル101を駆動する本発明の駆動装置1と、駆動装置1が取り付けられるフロントフレーム2とを備えている。
【0023】
上記フロントフレーム2は、樹脂材料からなり、車幅方向に延びるように形成され、屋根における開口部100の車両前縁近傍に下方から取り付けられている。このフロントフレーム2の下面に上記駆動装置1が取り付けられている。フロントフレーム2及び駆動装置1は、下方から内装材(図示せず)によって覆われている。
【0024】
上記駆動装置1は、図2に示すように、駆動用ケーブルとしての第1及び第2ケーブル3、4と、これらケーブル3、4をその中心線方向に移動させる駆動力発生部5とを備えている。第1及び第2ケーブル3、4の端部は、車両左側のリンク部材及び右側のリンク部材にそれぞれ固定され、左側及び右側リンク部材を介してルーフパネル101に連結されている。第1及び第2ケーブル3、4を移動させることで、ルーフパネル101が所定の軌跡を描きながらチルト動作及びスライド動作するようになっている。
【0025】
上記駆動装置1の駆動力発生部5は、電動モーター10と、図3に示すように、モーター10の回転速度を減速する歯車機構11と、歯車機構11からの出力が伝達される出力軸12と、出力軸12に固定されたピニオンギヤ13と、歯車機構11及び出力軸12を収容するケース14とを備えている。
【0026】
上記モーター10は、図2に示すように、回転軸15の延びる方向に長いハウジング16を備えており、このハウジング16の長手方向一端部から回転軸15が突出している。モーター10のハウジング16は、ケース14の幅方向一側に固定されて一体化しており、この状態で、回転軸15の先端側がケース14内に位置している。回転軸15の突出方向先端側には、図3に示すように、歯車機構11の駆動側歯車となるウォーム18が設けられている。尚、上記ケース14内には、図示しないが、モーター10の制御回路が配設されており、この制御回路によってモーター10の起動、停止及び正逆回転の切替が行われるようになっている。この制御回路は、ケース14外に配設してもよい。
【0027】
上記ケース14は、樹脂材を箱状に形成してなるものである。ケース14内には、上記回転軸15のウォーム18に噛み合うようにウォーム歯車19が配置されている。このウォーム歯車19が歯車機構11の従動側歯車である。ウォーム歯車19の中心部には、中心孔19aが貫通形成されている。この中心孔19aには出力軸12が嵌入され、これらウォーム歯車19及び出力軸12は相対回転しないように一体化されている。尚、歯車機構11は、ウォーム以外の歯車で構成することも可能である。
【0028】
上記出力軸12は、ケース14に対し回転可能に支持されており、従って、ウォーム歯車19は出力軸12を介してケース14に支持された状態となっている。ケース14の一側(図3の上側)の面には、貫通孔22が開口しており、出力軸12の一端側は、貫通孔22を通って該ケース14の外方へ突出している。この出力軸12の一端側には、他端側に比べて小径の小径部12aが形成されている。この小径部12aは、上記ピニオンギヤ13の中心部に形成された中心孔13aに嵌入され、これらピニオンギヤ13及び出力軸12は相対回転しないように一体化されている。このピニオンギヤ13は、本発明の駆動側噛み合い部を構成しており、側面視で歯がギヤ13の中心線に対し斜めになっている、いわゆるヘリカルギヤである。
【0029】
上記第1及び第2ケーブル3、4は、周知のサンルーフ装置Aで通常利用される歯付ケーブルである。これらケーブル3、4の歯3a、4a(図4に示す)は、両端部を除いた長手方向中間部に所定長さに亘って連続して形成されている。歯3a、4aの形状は、ピニオンギヤ13に噛み合うように形成されている。歯3a、4aが形成されている長さは、第1及び第2ケーブル3、4の移動量に対応した長さである。ケーブル3、4の歯3a、4aが、本発明の従動側噛み合い部を構成している。
【0030】
上記第1及び第2ケーブル3、4の長手方向中間部は、図3にも示すように、ピニオンギヤ13を径方向両側から挟むように、かつ、ケース14の一側面に沿うように配置され、ピニオンギヤ13の外径に対応する間隔をあけて互いに略平行に延びている。この状態で、ピニオンギヤ13の歯と、第1及び第2ケーブル3、4の歯3a、4aとは、噛み合っている。
【0031】
上記ケース14の一側面には、該ケース14の一部を構成するプレート部材25が設けられている。このプレート部材25は、金属材からなり、ケース14の貫通孔22に対応する箇所に位置付けられ、該貫通孔22と一致する貫通孔26を有している。つまり、プレート部材25は、図2にも示すように、ケース14の貫通孔22の周りを囲む形状とされている。
【0032】
上記プレート部材25は、図3に示すように、ケース14の一側面に形成された嵌合凹部27に嵌合してケース14の本体部分と一体化している。この状態で、プレート部材25の表面は、ケース14の本体部分から露出している。
【0033】
上記ケース14の一側面には、第1及び第2ケーブル3、4におけるケース14側の部位をそれぞれ案内する第1及び第2ケーブルガイド面30、31が形成されている。第1及び第2ケーブルガイド面30、31は、ピニオンギヤ13の中心線に対し略直交し、かつ、上述のように配置された第1及び第2ケーブル3、4の中心線方向に延びる平坦面で構成されている。図2にも示すように、第1及び第2ケーブルガイド面30、31におけるピニオンギヤ13近傍の部位は、上記プレート部材25の表面で構成されている。尚、ケーブルガイド面30、31の形状は、上記した形状に限られるものではなく、ケース14の形状や、第1及び第2ケーブル3、4の軌跡に対応するように、様々な形状に変更することが可能である。
【0034】
上記ケース14には、フロントフレーム2へ固定される第1及び第2固定部32、33が設けられている。これら第1及び第2固定部32、33は、ケース14における第1及び第2ケーブル3、4の間に対応する部位、即ち、第1ケーブルガイド面30と第2ケーブルガイド面31との間に位置付けられている。上記第1及び第2固定部32、33は、それぞれ、締結孔32a、33aを有しており、図5に示すように、これら締結孔32a、33aには、ネジ35が挿入されるようになっている。
【0035】
また、上記ケース14の一側面には、フロントフレーム2に当接する当接部34が設けられている。この当接部34は、第1及び第2固定部32、33から離れて配置された突起形状をなし、フロントフレーム2に当接した状態で、ケース14の一側面とフロントフレーム2との間に所定の隙間を形成して保持しておくためのものである。尚、当接部34の位置や形状は、任意に設定することができ、また、当接部34の数は、2つ以上としてもよい。
【0036】
上記フロントフレーム2には、図3及び図5に示すように、第1及び第2ケーブル3、4の中間部にそれぞれ対応して延びる第1及び第2凹条部40、41が形成されている。第1凹条部40は、第1ケーブル3の中間部に対して第1ケーブルガイド面30と反対側から当接する形状とされている。第1凹条部40の幅方向両縁部には、図3や図6に示すように、ケース14側へ向けて突出する一対の第1突条部42、42が形成されている。第2凹条部41も第1凹条部40と同様に第2ケーブル4に第2ケーブルガイド面31と反対側から当接する形状とされ、第2凹条部41の幅方向両縁部にも一対の第2突条部43、43が形成されている。
【0037】
上記フロントフレーム2のピニオンギヤ13に対応する部位には、該ピニオンギヤ13が露出するように開口部46が形成されている。また、フロントフレーム2には、ケース14の第1及び第2固定部32、33に対応して2つの締結孔47が形成されている。締結孔47、47は、第1凹条部40と第2凹条部41との間に位置している。図4及び図5に示すように、フロントフレーム2におけるケース14の取付面と反対側の面には、締結孔47、47に一致するようにナット49、49が配設されている。
【0038】
上記ケース14をフロントフレーム2に取り付ける際には、まず、第1及び第2ケーブル3、4をフロントフレーム2の第1及び第2凹条部40、41に挿入しておく。そして、ケース14の締結孔32a、33aとフロントフレーム2の締結孔47、47とを一致させるとともに、当接部34をフロントフレーム2に当接させておく。その後、ケース14側から両締結孔32a、33a、47、47にネジ35を挿入し、ナット49に螺合させて締め付ける。
【0039】
上記ケース14がフロントフレーム2に取り付けられた状態では、図3及び図5に示すように、第1ケーブルガイド面30が第1ケーブル3のケース14側の部位に当接するとともに、第1凹条部40の内周面が第1ケーブル3のケース14と反対側に当接し、さらに、一対の第1突条部42も第1ケーブル3に当接する。このようにして、第1ケーブル3が、ケース14とフロントフレーム2によって、位置決めされた状態で保持される。第2ケーブル4も同様に位置決めされた状態で保持される。このとき、フロントフレーム2の第1及び第2凹条部40、41の間の部位が、第1及び第2ケーブル3、4の間でケース14に締結固定されているので、締結孔32、33の数を増やすことなく、第1及び第2凹条部40、41を両方のケーブル3、4に対し正確に位置決めした状態で固定することが可能になる。上記フロントフレーム2が本発明の保持部材である。
【0040】
また、第1及び第2ケーブル3、4は、上記の如くケース14の一側面に設けられた第1及び第2ケーブルガイド面30、31に当接して位置決めされているので、ケーブル3、4はケース14に近接して配置されることになる。また、第1及び第2ケーブルガイド面30、31はケース14に形成されているため、従来のようにケース14から離れて配置されたガイドパイプや支持プレートを利用してケーブルを位置決めする場合に比べて、第1及び第2ケーブル3、4とケース14とが近接するとともに、両ケーブル3、4をケース14に対し正確に位置決めすることが可能になる。
【0041】
次に、上記のように構成された駆動装置1の動作を説明する。モーター10に電圧が印加されて回転軸15が回転すると、ウォーム18が回転してウォーム歯車19に回転力が伝達される。ウォーム歯車19の回転により出力軸12が回転し、ピニオンギヤ13が回転する。ピニオンギヤ13が回転すると、第1及び第2ケーブ3、4ルの歯3a、4aがピニオンギヤ13に噛み合っているので、両ケーブル3、4が同期して中心線方向に移動する。このとき、第1及び第2ケーブル3、4は、ケース14の第1及び第2ケーブルガイド面30、31と、フロントフレーム2の第1及び第2凹条部40、41と、第1及び第2突条部42、43とによって案内されることになる。尚、第1ケーブル3の移動方向と第2ケーブル4の移動方向とは逆になる。
【0042】
以上説明したように、この実施形態に係る駆動装置1によれば、ケース14の一側面に第1及び第2ケーブルガイド面30、31を設けたので、第1及び第2ケーブル3、4とケース14とをコンパクトにまとめて駆動装置1の収納スペースを小さくしながら、第1及び第2ケーブル3、4をケース14に対して正確に位置決めでき、両ケーブル3、4の動きをスムーズにできる。上記駆動装置1の収納スペースが小さくなることで、車室内における乗員用空間を上下方向に広くできる。
【0043】
また、第1及び第2ケーブル3、4は、第1及び第2ケーブルガイド面30、31と、フロントフレーム2の第1凹条部40及び第2凹条部41とによって、ケーブル3、4の径方向両側から案内され、また、一対の第1及び第2突条部42、43によっても案内される。これにより、移動中の第1及び第2ケーブル3、4を安定させることができ、ピニオンギヤ13との噛み合い不良を防止できる。
【0044】
また、第1及び第2ケーブルガイド面30、31のピニオンギヤ13近傍を金属製のプレート部材25で構成したので、ケーブル3、4の移動によるケース14の摩耗を抑制できる。
【0045】
また、ケース14に当接部34を設けたので、当接部34をフロントフレーム2に当接させることによってケース14をフロントフレーム2に位置決めすることができる。これにより、ケーブルガイド面30、31とフロントフレーム2との位置関係を容易に正規の状態にでき、ケーブルの動きをスムーズにすることができる。
【0046】
(発明の実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2に係る駆動装置1を示しており、この駆動装置1は、実施形態1のものに対し、第1及び第2ケーブル3、4をケース14に位置決めする構造が異なるだけで、他の部分は同じであるため、以下、実施形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0047】
駆動装置1のケース14の一側面には、ピニオンギヤ13の外周面から離れた部位に第1及び第2突出部60、61が形成されている。これら突出部60、61は、ピニオンギヤ13を径方向に挟むように配置されており、ピニオンギヤ13からの離間距離は等しく設定されている。
【0048】
ケース14の一側面に配設されたプレート部材25は、ケース14の一側面に沿って延びるベース板部25aと、ベース板部25aから第1及び第2突出部60、61の側面に沿って延びる第1及び第2縦板部25b、25cと、縦板部25b、25cから第1及び第2突出部60、61の突出方向先端面に沿って延びる第1及び第2先端板部25d、25eとを備えている。第1縦板部25bとピニオンギヤ13との間に第1ケーブル3が配置され、第2縦板部25cとピニオンギヤ13との間に第2ケーブル4が配置されている。また、第1及び第2ケーブルガイド面30、31におけるピニオンギヤ13近傍の部位は、ベース板部25aで構成されている。
【0049】
一方、フロントフレーム2には、第1及び第2ケーブル3、4に対しケース14と反対側から当接するように形成された第1及び第2ガイド部65、66が設けられている。
【0050】
上記ケース14がフロントフレーム2に取り付けられた状態では、第1ケーブルガイド面30が第1ケーブル3のケース14側の部位に当接するとともに、第1ガイド部65が第1ケーブル3のケース14と反対側に当接し、さらに、第1縦板部25bが第1ケーブル3に当接する。このようにして、第1ケーブル3が、ケース14とフロントフレーム2とによって位置決めされた状態で保持される。第2ケーブル4も同様に位置決めされた状態で保持される。
【0051】
したがって、この実施形態に係る駆動装置1によれば、実施形態1と同様に、ケース14の一側面に第1及び第2ケーブルガイド面30、31を設けているので、第1及び第2ケーブル3、4とケース14とをコンパクトにまとめて駆動装置1の収納スペースを小さくしながら、第1及び第2ケーブル3、4をケース14に対して正確に位置決めでき、両ケーブル3、4の動きをスムーズにできる。
【0052】
また、ケース14の第1及び第2突出部60、61に沿うように、プレート部材25の第1及び第2縦板部25b、25cを形成しているので、両縦板部25b、25cがピニオンギヤ13から離れる方向に変形するのが抑制される。このことによっても、ケーブル3、4の位置決め精度を高めることができる。
【0053】
尚、上記実施形態1、2では、駆動装置1のケーブル3、4を2本設けているが、これに限らず1本にしてもよい。
【0054】
また、上記各実施形態では、当接部34を駆動装置1に設けているが、これに限らず、フロントフレーム2に設けてもよいし、駆動装置1及びフロントフレーム2の両方に設けてもよい。
【0055】
また、上記各実施形態では、フロントフレーム2の下側に駆動装置1を取り付けるようにしているが、これに限らず、駆動装置1をフロントフレーム2の上側に取り付けるようにしてもよい。また、駆動装置1の配設位置は、フロントフレーム2の形状や、車体側の構造によって任意に変更することができる。
【0056】
また、上記各実施形態では、本発明をサンルーフ装置Aに適用した場合について説明したが、本発明は、サンルーフ装置A以外にも、駆動対象物をケーブル3、4のプッシュプル動作で駆動するものに適用することができ、駆動対象物としては、例えば、自動車のウインドガラス、スライドドア、開閉可能に構成されたルーフ等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明は、例えば、自動車のサンルーフ装置のルーフパネル等を駆動する駆動装置として適している。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動装置が取り付けられた車両の屋根の平面図である。
【図2】駆動装置の平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】駆動装置が取り付けられたフロントフレームの一部を示す平面図である。
【図5】図2におけるV−V線断面図である。
【図6】フロントフレームを駆動装置の取付面側から見た図である。
【図7】実施形態2に係る図3相当図である。
【符号の説明】
【0059】
1 駆動装置
2 フロントフレーム(保持部材)
3 第1ケーブル
4 第2ケーブル
3a、4a 歯(従動側噛み合い部)
10 モーター
12 出力軸
13 ピニオンギヤ(駆動側噛み合い部)
14 ケース
25 プレート部材
30 第1ケーブルガイド面
31 第2ケーブルガイド面
32 第1固定部
33 第2固定部
34 当接部
101 ルーフパネル(駆動対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象物に連結される駆動用ケーブルと、モーターとを備え、該モーターの回転力によって上記ケーブルを該ケーブルの中心線方向に移動させるように構成された駆動装置において、
上記モーターの回転力が伝達される出力軸と、
上記出力軸を、該出力軸の一端側が突出した状態で収容するケースと、
上記出力軸の一端側に設けられた駆動側噛み合い部と、
上記ケーブルに所定長さに亘って設けられた従動側噛み合い部とを備え、
上記ケーブルの従動側噛み合い部は、上記駆動側噛み合い部に噛み合うように上記ケースの一側面に沿って配置され、
上記ケースの一側面には、上記ケーブルの従動側噛み合い部におけるケース側の部位を案内する形状のケーブルガイド面が設けられていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
ケースには、ケーブルの従動側噛み合い部に対してケーブルガイド面と反対側から当接するように形成された保持部材が固定されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動装置において、
一対のケーブルが、互いに間隔をあけて配置され、
ケースにおける一対のケーブルの間に対応する部位には、保持部材が固定される固定部が設けられていることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の駆動装置において、
ケースと保持部材との少なくとも一方には、他方に当接する当接部が設けられていることを特徴とする駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−126732(P2008−126732A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311341(P2006−311341)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000108889)ベバスト ジャパン株式会社 (36)