騒音低減装置
【課題】ジェットエンジンの空力性能を低下させることなくさらなる騒音の低減を図る。
【解決手段】マイクロジェットノズル1の開口端面1aが、当該マイクロジェットノズル1の延在方向L1に直交する直交面Mに対してジェット流に向けて傾斜されている。
【解決手段】マイクロジェットノズル1の開口端面1aが、当該マイクロジェットノズル1の延在方向L1に直交する直交面Mに対してジェット流に向けて傾斜されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットエンジンの主ジェットノズル周りに配置される複数のマイクロジェットノズルを備え、該マイクロジェットノズルからジェット流に向けて流体を噴射することによって騒音を低減する騒音低減装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、非特許文献1には、ジェットエンジンの主ジェットノズル周りに配置される複数のマイクロジェットノズルを備える騒音低減装置が記載されている。
この騒音低減装置は、各マイクロジェットノズルから空気をジェット流に向けて噴射することによって、ジェット流に起因する騒音の低減を図るものである。
【0003】
一方で、非特許文献1には、上述の騒音低減装置において、マイクロジェットノズルを主ジェットノズルの軸に対して傾斜させて配置することによって、さらなる騒音の低減を図る技術が提案されている。
このようにマイクロジェットノズルを主ジェットノズルの軸に対して深く傾斜させて配置することによって、マイクロジェットノズルから噴射された空気とジェット流との混合が促進され、これによってさらに騒音を低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Brenton Greska, Anjaneyulu Krothapalli, John M. Seiner, Bernard Jansen, Lawrence Ukeiley, [The Effects of Microjet Injection on an F404 Jet Engine], 11th AIAA/CEAS Aeroacoustics Conference (26th AIAA Aeroacoustics Conference) 23-25 May 2005, Monterey, California, AIAA 2005-3047
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マイクロジェットノズルを主ジェットノズルの軸に対して深く傾斜させて配置する場合には、マイクロジェットノズルが主ジェットノズルの外側に向けて突出されることとなる。このため、ジェットエンジンにおけるナセル抵抗が増大する。したがって、マイクロジェットノズルを主ジェットノズルの軸に対して深く傾斜させて配置する場合には、騒音の低減が図れるものの、ジェットエンジンの空力性能が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ジェットエンジンの空力性能を低下させることなくさらなる騒音の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、ジェットエンジンの主ジェットノズル周りに配置される複数のマイクロジェットノズルを備え、該マイクロジェットノズルからジェット流に向けて流体を噴射することによって騒音を低減する騒音低減装置であって、上記マイクロジェットノズルの開口端面が、当該マイクロジェットノズルの延在方向に直交する直交面に対して上記ジェット流に向けて傾斜されているという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記マイクロジェットノズルの開口端面が、上記主ジェットノズルの周方向にさらに傾斜されているという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、全ての上記マイクロジェットノズルの開口端面が、上記主ジェットノズルの周方向の一方向に傾斜されているという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第2の発明において、上記開口端面が上記主ジェットノズルの周方向の一方向に傾斜されている上記マイクロジェットノズルと、上記開口端面が上記主ジェットノズルの周方向の他方向に傾斜されている上記マイクロジェットノズルとを備えるという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第1〜第4いずれかの発明において、上記マイクロジェットノズルの延在方向から見た上記開口端面の形状が半円形状であるという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、上記開口端面から噴出された上記流体を上記直交面に対してさらに傾斜させて案内する案内部を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、マイクロジェットノズルの開口端面が、当該マイクロジェットノズルの延在方向に直交する直交面に対してジェット流に向けて傾斜されている。このような開口端面から噴射される流体の噴射方向は、主ジェットノズルの軸に対して、マイクロジェットノズル自体よりも深く傾斜される。したがって、本発明によれば、マイクロジェットノズル自体を主ジェットノズルの軸に対して深く傾斜させることなく、マイクロジェットノズルから噴射される流体のジェット流に対する進入角度を深くすることが可能となる。
よって、本発明によれば、ジェットエンジンの空力性能を低下させることなくさらなる騒音の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態における騒音低減装置を備えるジェットエンジンの概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態における騒音低減装置の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルの軸と直交する方向から見た図である。
【図3】本発明の第1実施形態における騒音低減装置の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルの軸方向から見た図である。
【図4】本発明の第1実施形態における騒音低減装置の備えるマイクロジェットノズルの開口端面を拡大した模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態における騒音低減装置の原理を説明するための模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態における騒音低減装置の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルの軸方向から見た図である。
【図7】本発明の第2実施形態における騒音低減装置の備えるマイクロジェットノズルの開口端面を拡大した模式図である。
【図8】本発明の第2実施形態における騒音低減装置の備えるマイクロジェットノズルを延在方向から見た図である。
【図9】本発明の第3実施形態における騒音低減装置の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルの軸方向から見た図である。
【図10】本発明の第4実施形態における騒音低減装置の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルの軸方向から見た図である。
【図11】本発明の第4実施形態における騒音低減装置の備えるマイクロジェットノズルを延在方向から見た図である。
【図12】本発明の騒音低減装置の変形例を示す図であり、マイクロジェットノズルを延在方向から見た図である。
【図13】本発明の騒音低減装置の変形例を示す図であり、マイクロジェットノズルを側方から見た図である。
【図14】本発明の騒音低減装置の変形例を示す図であり、マイクロジェットノズルを延在方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る騒音低減装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の騒音低減装置S1を備えるジェットエンジン10の概略構成図である。
この図に示すように、ジェットエンジン10は、ファン20と、圧縮機30と、燃焼器40と、タービン50と、主ジェットノズルNとを備えている。
【0018】
図2及び図3は本実施形態の騒音低減装置S1の概略構成を示す模式図であり、図2が主ジェットノズルの軸Lに直交する方向から見た図であり、図3が主ジェットノズルの軸L方向から見た図である。これらの図に示すように、本実施形態の騒音低減装置S1は、マイクロジェットノズル1と、流量調節弁2とを有している。
【0019】
マイクロジェットノズル1は、ジェット用エンジンの主ジェットノズルN周りに複数配置されており、主ジェットノズルNの外壁面に沿って固定されている。これらのマイクロジェットノズル1は、開口端面1aから主ジェットノズルNから噴射されるジェット流Xに対して空気Y(流体)を噴射するものである。
なお、これらのマイクロジェットノズル1は、ジェットエンジンが備える不図示の圧縮機と接続されており、圧縮機から供給される空気を噴射する。
【0020】
図4は、マイクロジェットノズル1の開口端面1aを拡大した模式図である。この図に示すように、本実施形態の騒音低減装置S1において各マイクロジェットノズル1の開口端面1aは、マイクロジェットノズル1の延在方向L1に直交する直交面Mに対してジェット流Xに向けて傾斜されている。より詳細には、本実施形態の騒音低減装置S1においてマイクロジェットノズル1の開口端面1aは、直交面Mに対して角度α傾斜されている。
ここで、主ジェットノズルNの軸L(図4においては軸Lと平行な軸L2)に対する空気Yの噴射角度θは、マイクロジェットノズル1の軸Lに対する傾斜角度をβとした場合に、下式(1)にて近似することができる。
θ≒0.5・(α+3β)……(1)
【0021】
ここで、マイクロジェットノズル1の開口端面1aを傾斜させたことによる偏向角度をγとすると、偏向角度γは下式(2)で近似することができる。
γ≒0.5・α……(2)
【0022】
また、ジェット流Xに引き込まれる効果を角度ηとすると、角度ηは、下式(3)で近似することができる。
η≒0.5・β……(3)
【0023】
そして、図4から、噴射角度θは、マイクロジェットノズルの傾斜角度βと、開口端面1aの傾斜角度αと、角度ηの総和で近似できることが分かる。このことから、容易に式(1)が導き出せることが理解できる。
【0024】
なお、偏向角度γが生じる理由は、開口端面を傾斜させることによってマイクロジェットノズル内の静圧の分布が発生するためである。流体は、圧力一定面が沿って流れようとする性質があるが、上述のようにマイクロジェットノズル内の静圧分布が発生すると、図5に示すように、圧力一定面が傾斜することとなり、この結果、偏向角度γが生じて空気Yの流れ方向が偏向する。
【0025】
上述のようにマイクロジェットノズル1の開口端面1aを傾斜させることによって空気Yが傾斜されて噴射する原理については、「44th AIAA Aerospace Sciences Meeting, AIAA 2006-485, Further Steps in LES-Based Noise Prediction for Complex Jets」に記載されている。
【0026】
そして、式(1)から分かるように、マイクロジェットノズル1の開口端面1aを直交面Mに対してジェット流X方向に傾斜させた場合には、主ジェットノズルNの軸Lに対する空気Yの噴射角度θは、マイクロジェットノズル1の軸Lに対する傾斜角度βよりも大きくなる。
これはマイクロジェットノズル1から噴射される空気Yの噴射方向が、主ジェットノズルNの軸Lに対して、マイクロジェットノズル1自体よりも深く傾斜されることを意味する。
【0027】
図2及び図3に戻り、流量調節弁2は、マイクロジェットノズル1に供給される空気Yの流量を調節するものである。なお、流量調節弁2は、マイクロジェットノズル1への空気Yの供給を停止することも可能に構成されている。また、流量調節弁2は、各マイクロジェットノズル1に対して設けられている必要はなく、図2及び図3に示す全てあるいはいくつかの流量調節弁2がまとめられた構成を採用することも可能である。
【0028】
以上のように構成された本実施形態の騒音低減装置S1においては、流量調節弁2が開口されることによって圧縮機から空気Yが各マイクロジェットノズル1に供給される。そして、各マイクロジェットノズル1に供給された空気Yは、開口端面1aから噴射されてジェット流Xと混合される。そして、開口端面1aからの空気Yがジェット流Xの混合層に噴射されることによって、ジェット流Xに起因する騒音の低減が図られる。
【0029】
ここで、本実施形態の騒音低減装置S1によれば、マイクロジェットノズル1の開口端面1aが、当該マイクロジェットノズル1の延在方向L1に直交する直交面Mに対してジェット流Xに向けて傾斜されている。このため、開口端面1aから噴射される空気Yの噴射方向は、主ジェットノズルNの軸Lに対して、マイクロジェットノズル1自体よりも深く傾斜される。したがって、本実施形態の騒音低減装置S1によれば、マイクロジェットノズル1自体を主ジェットノズルNの軸Lに対して深く傾斜させることなく、マイクロジェットノズル1から噴射される空気Yのジェット流Xに対する進入角度を深くすることが可能となる。
このように、本実施形態の騒音低減装置S1によれば、マイクロジェットノズル1を主ジェットノズルNの外壁に沿って固定することによってナセル抵抗の増大を抑制し、さらには、空気Yのジェット流Xに対する進入角度を深くすることによって大きな騒音低減効果を得ることができる。
したがって、本実施形態の騒音低減装置S1によれば、ジェットエンジンの空力性能を低下させることなくさらなる騒音の低減を図ることが可能となる。
【0030】
なお、空気Yのジェット流Xに対する進入角度は、深すぎる場合及び浅すぎる場合において騒音の低減効果が低く、60°程度が最も騒音の低減効果が高い。したがって、開口端面1aの傾斜角度αは、式(1)に基づいて、空気Yのジェット流Xに対する進入角度が60°となるように設定することが好ましい。
【0031】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0032】
図6は、本実施形態の騒音低減装置S2の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルNの軸L方向から見た図である。また、図7は、本実施形態の騒音低減装置S2が備えるマイクロジェットノズル1の開口端面1aを拡大した模式図である。また、図8は、本実施形態の騒音低減装置S2が備えるマイクロジェットノズル1を延在方向L1から見た図である。
【0033】
そして、図8に示すように、本実施形態の騒音低減装置S2においては、マイクロジェットノズル1の開口端面1aが、上記第1実施形態に加えて、さらに主ジェットノズルNの周方向に角度γ傾斜されている。
また、本実施形態の騒音低減装置S2においては、図6に示すように、全てのマイクロジェットノズル1の開口端面1aが、主ジェットノズルNの周方向の一方向に傾斜されている。
【0034】
なお、本実施形態の騒音低減装置S2における空気Yの噴射方向は、図7に示すように、主ジェットノズルNの軸L(図7においては軸Lと平行な軸L2)に対しての垂直面における傾斜角度θrと、水平面における傾斜角度θtとによって規定される。
また、傾斜角度θrは下式(2)によって近似することができ、傾斜角度θtは下式(3)によって近似することができる。
θr≒atan{tan(θ)・cos(γ)}……(2)
θt≒atan{tan(θ)・sin(γ)}……(3)
【0035】
このような構成を採用する本実施形態の騒音低減装置S2によれば、各マイクロジェットノズル1の開口端面1aから噴射される空気Yのジェット流Xの混合層に対する噴射範囲が広くなる。このため、より効率的にジェット流Xに起因する騒音の低減を図ることが可能となる。したがって、例えば上記第1実施形態の騒音低減装置S2と同程度の騒音の低減を図る場合には、マイクロジェットノズル1の数を減少させることが可能となる。
【0036】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、本第3実施形態の説明において、上記第1実施形態あるいは第2実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0037】
図9は、本実施形態の騒音低減装置S3の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルNの軸L方向から見た図である。
この図に示すように、本実施形態の騒音低減装置S3は、主ジェットノズルNの周方向において、90°の範囲ごとに、マイクロジェットノズル1の周方向での傾斜方向が変更されている。
すなわち、本実施形態の騒音低減装置S3は、開口端面1aが主ジェットノズルNの周方向の一方向に傾斜されているマイクロジェットノズル1と、開口端面1aが主ジェットノズルNの周方向の他方向に傾斜されているマイクロジェットノズル1とを備える。
【0038】
このような構成を採用する本実施形態の騒音低減装置S3によれば、上記第2実施形態の騒音低減装置S2と同様に、各マイクロジェットノズル1の開口端面1aから噴射される空気Yのジェット流Xの混合層に対する噴射範囲が広くなり、効率的な騒音の低減を実現することができる。
これに加えて、本実施形態の騒音低減装置S3によれば、開口端面1aが主ジェットノズルNの周方向の一方向に傾斜されたマイクロジェットノズル1から噴射される空気Yと、開口端面1aが主ジェットノズルNの周方向の他方向に傾斜されたマイクロジェットノズル1から噴射される空気Yとが衝突する方向に噴射されるため、空気Yによってジェット流Xが旋回することを抑制し、ジェットエンジンの推力損失を抑制することが可能となる。
【0039】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、本第4実施形態の説明において、上記第1〜第3いずれかの実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0040】
図10は、本実施形態の騒音低減装置S4の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルNの軸L方向から見た図である。また、図11は、本実施形態の騒音低減装置S4が備えるマイクロジェットノズル1を延在方向L1から見た模式図である。
これらの図に示すように、本実施形態の騒音低減装置S4は、主ジェットノズルNの周方向において、交互にマイクロジェットノズル1の周方向での傾斜方向が変更されている。
すなわち、本実施形態の騒音低減装置S4も、上記第3実施形態の騒音低減装置S3と同様に、開口端面1aが主ジェットノズルNの周方向の一方向に傾斜されているマイクロジェットノズル1と、開口端面1aが主ジェットノズルNの周方向の他方向に傾斜されているマイクロジェットノズル1とを備える。
【0041】
そして、このような構成を採用する本実施形態の騒音低減装置S4によれば、上記第2実施形態の騒音低減装置S3と同様に、効率的な騒音の低減を図ると共に、ジェットエンジンの推力損失を抑制することが可能となる。
【0042】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態においては、マイクロジェットノズル1の延在方向L1から見た開口端面1aの形状が円形状であるある構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、図12に示すように、マイクロジェットノズル1の延在方向L1から見た開口端面1aの形状が半円形状である構成を採用することもできる。
このような構成を採用することによって、マイクロジェットノズル1を主ジェットノズルNに対してより密着した形状とすることができ、開口端面1aを傾斜させることによる空気Yの噴射角度の変化を大きくすることが可能となる。
【0044】
また、図11に示す構成に加えて、図13及び図14に示すように、開口端面1aから主ジェットノズルNに向かう円弧形状の案内部3を設置し、開口端面1aから噴射された空気Yを、直交面Mに対してさらに傾斜させて案内するようにしても良い。
このような案内部3を騒音低減装置に備えさせることによって、案内部3によるコアンダ効果によって、空気Yの噴射角度を軸Lに対してより深くすることが可能となる。
【0045】
また、上記実施形態においては、図2等に示すように、合計で16本のマイクロジェットノズル1が設置された構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、マイクロジェットノズル1の本数は、要求される騒音の低減効果に応じて任意に変更可能である。
【0046】
また、上記実施形態においては、開口端面1aが平面である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、開口端面が曲面や屈曲面であっても良い。
【0047】
また、上記実施形態においては、本発明の流体として空気Yを用いる構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、流体として水蒸気等の他の流体を用いることも可能である。
【0048】
また、上記実施形態においては、ジェットエンジンの圧縮機によって生成された圧縮空気をマイクロジェットノズル1に供給し、騒音低減装置が流体の供給装置を備える必要のない構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、騒音低減装置が別途流体の供給装置を備える構成を採用することもできる。この場合には、必ずしも流量調節弁2を設置する必要はない。
【符号の説明】
【0049】
S1〜S4……騒音低減装置、1……マイクロジェットノズル、1a……開口端面、2……流量調節弁、3……案内部、X……ジェット流、Y……空気(流体)、M……直交面、N……主ジェットノズル、L……軸、L1……延在方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットエンジンの主ジェットノズル周りに配置される複数のマイクロジェットノズルを備え、該マイクロジェットノズルからジェット流に向けて流体を噴射することによって騒音を低減する騒音低減装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、非特許文献1には、ジェットエンジンの主ジェットノズル周りに配置される複数のマイクロジェットノズルを備える騒音低減装置が記載されている。
この騒音低減装置は、各マイクロジェットノズルから空気をジェット流に向けて噴射することによって、ジェット流に起因する騒音の低減を図るものである。
【0003】
一方で、非特許文献1には、上述の騒音低減装置において、マイクロジェットノズルを主ジェットノズルの軸に対して傾斜させて配置することによって、さらなる騒音の低減を図る技術が提案されている。
このようにマイクロジェットノズルを主ジェットノズルの軸に対して深く傾斜させて配置することによって、マイクロジェットノズルから噴射された空気とジェット流との混合が促進され、これによってさらに騒音を低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Brenton Greska, Anjaneyulu Krothapalli, John M. Seiner, Bernard Jansen, Lawrence Ukeiley, [The Effects of Microjet Injection on an F404 Jet Engine], 11th AIAA/CEAS Aeroacoustics Conference (26th AIAA Aeroacoustics Conference) 23-25 May 2005, Monterey, California, AIAA 2005-3047
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マイクロジェットノズルを主ジェットノズルの軸に対して深く傾斜させて配置する場合には、マイクロジェットノズルが主ジェットノズルの外側に向けて突出されることとなる。このため、ジェットエンジンにおけるナセル抵抗が増大する。したがって、マイクロジェットノズルを主ジェットノズルの軸に対して深く傾斜させて配置する場合には、騒音の低減が図れるものの、ジェットエンジンの空力性能が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ジェットエンジンの空力性能を低下させることなくさらなる騒音の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、ジェットエンジンの主ジェットノズル周りに配置される複数のマイクロジェットノズルを備え、該マイクロジェットノズルからジェット流に向けて流体を噴射することによって騒音を低減する騒音低減装置であって、上記マイクロジェットノズルの開口端面が、当該マイクロジェットノズルの延在方向に直交する直交面に対して上記ジェット流に向けて傾斜されているという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記マイクロジェットノズルの開口端面が、上記主ジェットノズルの周方向にさらに傾斜されているという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、全ての上記マイクロジェットノズルの開口端面が、上記主ジェットノズルの周方向の一方向に傾斜されているという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第2の発明において、上記開口端面が上記主ジェットノズルの周方向の一方向に傾斜されている上記マイクロジェットノズルと、上記開口端面が上記主ジェットノズルの周方向の他方向に傾斜されている上記マイクロジェットノズルとを備えるという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第1〜第4いずれかの発明において、上記マイクロジェットノズルの延在方向から見た上記開口端面の形状が半円形状であるという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、上記開口端面から噴出された上記流体を上記直交面に対してさらに傾斜させて案内する案内部を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、マイクロジェットノズルの開口端面が、当該マイクロジェットノズルの延在方向に直交する直交面に対してジェット流に向けて傾斜されている。このような開口端面から噴射される流体の噴射方向は、主ジェットノズルの軸に対して、マイクロジェットノズル自体よりも深く傾斜される。したがって、本発明によれば、マイクロジェットノズル自体を主ジェットノズルの軸に対して深く傾斜させることなく、マイクロジェットノズルから噴射される流体のジェット流に対する進入角度を深くすることが可能となる。
よって、本発明によれば、ジェットエンジンの空力性能を低下させることなくさらなる騒音の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態における騒音低減装置を備えるジェットエンジンの概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態における騒音低減装置の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルの軸と直交する方向から見た図である。
【図3】本発明の第1実施形態における騒音低減装置の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルの軸方向から見た図である。
【図4】本発明の第1実施形態における騒音低減装置の備えるマイクロジェットノズルの開口端面を拡大した模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態における騒音低減装置の原理を説明するための模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態における騒音低減装置の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルの軸方向から見た図である。
【図7】本発明の第2実施形態における騒音低減装置の備えるマイクロジェットノズルの開口端面を拡大した模式図である。
【図8】本発明の第2実施形態における騒音低減装置の備えるマイクロジェットノズルを延在方向から見た図である。
【図9】本発明の第3実施形態における騒音低減装置の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルの軸方向から見た図である。
【図10】本発明の第4実施形態における騒音低減装置の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルの軸方向から見た図である。
【図11】本発明の第4実施形態における騒音低減装置の備えるマイクロジェットノズルを延在方向から見た図である。
【図12】本発明の騒音低減装置の変形例を示す図であり、マイクロジェットノズルを延在方向から見た図である。
【図13】本発明の騒音低減装置の変形例を示す図であり、マイクロジェットノズルを側方から見た図である。
【図14】本発明の騒音低減装置の変形例を示す図であり、マイクロジェットノズルを延在方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る騒音低減装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の騒音低減装置S1を備えるジェットエンジン10の概略構成図である。
この図に示すように、ジェットエンジン10は、ファン20と、圧縮機30と、燃焼器40と、タービン50と、主ジェットノズルNとを備えている。
【0018】
図2及び図3は本実施形態の騒音低減装置S1の概略構成を示す模式図であり、図2が主ジェットノズルの軸Lに直交する方向から見た図であり、図3が主ジェットノズルの軸L方向から見た図である。これらの図に示すように、本実施形態の騒音低減装置S1は、マイクロジェットノズル1と、流量調節弁2とを有している。
【0019】
マイクロジェットノズル1は、ジェット用エンジンの主ジェットノズルN周りに複数配置されており、主ジェットノズルNの外壁面に沿って固定されている。これらのマイクロジェットノズル1は、開口端面1aから主ジェットノズルNから噴射されるジェット流Xに対して空気Y(流体)を噴射するものである。
なお、これらのマイクロジェットノズル1は、ジェットエンジンが備える不図示の圧縮機と接続されており、圧縮機から供給される空気を噴射する。
【0020】
図4は、マイクロジェットノズル1の開口端面1aを拡大した模式図である。この図に示すように、本実施形態の騒音低減装置S1において各マイクロジェットノズル1の開口端面1aは、マイクロジェットノズル1の延在方向L1に直交する直交面Mに対してジェット流Xに向けて傾斜されている。より詳細には、本実施形態の騒音低減装置S1においてマイクロジェットノズル1の開口端面1aは、直交面Mに対して角度α傾斜されている。
ここで、主ジェットノズルNの軸L(図4においては軸Lと平行な軸L2)に対する空気Yの噴射角度θは、マイクロジェットノズル1の軸Lに対する傾斜角度をβとした場合に、下式(1)にて近似することができる。
θ≒0.5・(α+3β)……(1)
【0021】
ここで、マイクロジェットノズル1の開口端面1aを傾斜させたことによる偏向角度をγとすると、偏向角度γは下式(2)で近似することができる。
γ≒0.5・α……(2)
【0022】
また、ジェット流Xに引き込まれる効果を角度ηとすると、角度ηは、下式(3)で近似することができる。
η≒0.5・β……(3)
【0023】
そして、図4から、噴射角度θは、マイクロジェットノズルの傾斜角度βと、開口端面1aの傾斜角度αと、角度ηの総和で近似できることが分かる。このことから、容易に式(1)が導き出せることが理解できる。
【0024】
なお、偏向角度γが生じる理由は、開口端面を傾斜させることによってマイクロジェットノズル内の静圧の分布が発生するためである。流体は、圧力一定面が沿って流れようとする性質があるが、上述のようにマイクロジェットノズル内の静圧分布が発生すると、図5に示すように、圧力一定面が傾斜することとなり、この結果、偏向角度γが生じて空気Yの流れ方向が偏向する。
【0025】
上述のようにマイクロジェットノズル1の開口端面1aを傾斜させることによって空気Yが傾斜されて噴射する原理については、「44th AIAA Aerospace Sciences Meeting, AIAA 2006-485, Further Steps in LES-Based Noise Prediction for Complex Jets」に記載されている。
【0026】
そして、式(1)から分かるように、マイクロジェットノズル1の開口端面1aを直交面Mに対してジェット流X方向に傾斜させた場合には、主ジェットノズルNの軸Lに対する空気Yの噴射角度θは、マイクロジェットノズル1の軸Lに対する傾斜角度βよりも大きくなる。
これはマイクロジェットノズル1から噴射される空気Yの噴射方向が、主ジェットノズルNの軸Lに対して、マイクロジェットノズル1自体よりも深く傾斜されることを意味する。
【0027】
図2及び図3に戻り、流量調節弁2は、マイクロジェットノズル1に供給される空気Yの流量を調節するものである。なお、流量調節弁2は、マイクロジェットノズル1への空気Yの供給を停止することも可能に構成されている。また、流量調節弁2は、各マイクロジェットノズル1に対して設けられている必要はなく、図2及び図3に示す全てあるいはいくつかの流量調節弁2がまとめられた構成を採用することも可能である。
【0028】
以上のように構成された本実施形態の騒音低減装置S1においては、流量調節弁2が開口されることによって圧縮機から空気Yが各マイクロジェットノズル1に供給される。そして、各マイクロジェットノズル1に供給された空気Yは、開口端面1aから噴射されてジェット流Xと混合される。そして、開口端面1aからの空気Yがジェット流Xの混合層に噴射されることによって、ジェット流Xに起因する騒音の低減が図られる。
【0029】
ここで、本実施形態の騒音低減装置S1によれば、マイクロジェットノズル1の開口端面1aが、当該マイクロジェットノズル1の延在方向L1に直交する直交面Mに対してジェット流Xに向けて傾斜されている。このため、開口端面1aから噴射される空気Yの噴射方向は、主ジェットノズルNの軸Lに対して、マイクロジェットノズル1自体よりも深く傾斜される。したがって、本実施形態の騒音低減装置S1によれば、マイクロジェットノズル1自体を主ジェットノズルNの軸Lに対して深く傾斜させることなく、マイクロジェットノズル1から噴射される空気Yのジェット流Xに対する進入角度を深くすることが可能となる。
このように、本実施形態の騒音低減装置S1によれば、マイクロジェットノズル1を主ジェットノズルNの外壁に沿って固定することによってナセル抵抗の増大を抑制し、さらには、空気Yのジェット流Xに対する進入角度を深くすることによって大きな騒音低減効果を得ることができる。
したがって、本実施形態の騒音低減装置S1によれば、ジェットエンジンの空力性能を低下させることなくさらなる騒音の低減を図ることが可能となる。
【0030】
なお、空気Yのジェット流Xに対する進入角度は、深すぎる場合及び浅すぎる場合において騒音の低減効果が低く、60°程度が最も騒音の低減効果が高い。したがって、開口端面1aの傾斜角度αは、式(1)に基づいて、空気Yのジェット流Xに対する進入角度が60°となるように設定することが好ましい。
【0031】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0032】
図6は、本実施形態の騒音低減装置S2の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルNの軸L方向から見た図である。また、図7は、本実施形態の騒音低減装置S2が備えるマイクロジェットノズル1の開口端面1aを拡大した模式図である。また、図8は、本実施形態の騒音低減装置S2が備えるマイクロジェットノズル1を延在方向L1から見た図である。
【0033】
そして、図8に示すように、本実施形態の騒音低減装置S2においては、マイクロジェットノズル1の開口端面1aが、上記第1実施形態に加えて、さらに主ジェットノズルNの周方向に角度γ傾斜されている。
また、本実施形態の騒音低減装置S2においては、図6に示すように、全てのマイクロジェットノズル1の開口端面1aが、主ジェットノズルNの周方向の一方向に傾斜されている。
【0034】
なお、本実施形態の騒音低減装置S2における空気Yの噴射方向は、図7に示すように、主ジェットノズルNの軸L(図7においては軸Lと平行な軸L2)に対しての垂直面における傾斜角度θrと、水平面における傾斜角度θtとによって規定される。
また、傾斜角度θrは下式(2)によって近似することができ、傾斜角度θtは下式(3)によって近似することができる。
θr≒atan{tan(θ)・cos(γ)}……(2)
θt≒atan{tan(θ)・sin(γ)}……(3)
【0035】
このような構成を採用する本実施形態の騒音低減装置S2によれば、各マイクロジェットノズル1の開口端面1aから噴射される空気Yのジェット流Xの混合層に対する噴射範囲が広くなる。このため、より効率的にジェット流Xに起因する騒音の低減を図ることが可能となる。したがって、例えば上記第1実施形態の騒音低減装置S2と同程度の騒音の低減を図る場合には、マイクロジェットノズル1の数を減少させることが可能となる。
【0036】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、本第3実施形態の説明において、上記第1実施形態あるいは第2実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0037】
図9は、本実施形態の騒音低減装置S3の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルNの軸L方向から見た図である。
この図に示すように、本実施形態の騒音低減装置S3は、主ジェットノズルNの周方向において、90°の範囲ごとに、マイクロジェットノズル1の周方向での傾斜方向が変更されている。
すなわち、本実施形態の騒音低減装置S3は、開口端面1aが主ジェットノズルNの周方向の一方向に傾斜されているマイクロジェットノズル1と、開口端面1aが主ジェットノズルNの周方向の他方向に傾斜されているマイクロジェットノズル1とを備える。
【0038】
このような構成を採用する本実施形態の騒音低減装置S3によれば、上記第2実施形態の騒音低減装置S2と同様に、各マイクロジェットノズル1の開口端面1aから噴射される空気Yのジェット流Xの混合層に対する噴射範囲が広くなり、効率的な騒音の低減を実現することができる。
これに加えて、本実施形態の騒音低減装置S3によれば、開口端面1aが主ジェットノズルNの周方向の一方向に傾斜されたマイクロジェットノズル1から噴射される空気Yと、開口端面1aが主ジェットノズルNの周方向の他方向に傾斜されたマイクロジェットノズル1から噴射される空気Yとが衝突する方向に噴射されるため、空気Yによってジェット流Xが旋回することを抑制し、ジェットエンジンの推力損失を抑制することが可能となる。
【0039】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、本第4実施形態の説明において、上記第1〜第3いずれかの実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0040】
図10は、本実施形態の騒音低減装置S4の概略構成を示す模式図であり、主ジェットノズルNの軸L方向から見た図である。また、図11は、本実施形態の騒音低減装置S4が備えるマイクロジェットノズル1を延在方向L1から見た模式図である。
これらの図に示すように、本実施形態の騒音低減装置S4は、主ジェットノズルNの周方向において、交互にマイクロジェットノズル1の周方向での傾斜方向が変更されている。
すなわち、本実施形態の騒音低減装置S4も、上記第3実施形態の騒音低減装置S3と同様に、開口端面1aが主ジェットノズルNの周方向の一方向に傾斜されているマイクロジェットノズル1と、開口端面1aが主ジェットノズルNの周方向の他方向に傾斜されているマイクロジェットノズル1とを備える。
【0041】
そして、このような構成を採用する本実施形態の騒音低減装置S4によれば、上記第2実施形態の騒音低減装置S3と同様に、効率的な騒音の低減を図ると共に、ジェットエンジンの推力損失を抑制することが可能となる。
【0042】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態においては、マイクロジェットノズル1の延在方向L1から見た開口端面1aの形状が円形状であるある構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、図12に示すように、マイクロジェットノズル1の延在方向L1から見た開口端面1aの形状が半円形状である構成を採用することもできる。
このような構成を採用することによって、マイクロジェットノズル1を主ジェットノズルNに対してより密着した形状とすることができ、開口端面1aを傾斜させることによる空気Yの噴射角度の変化を大きくすることが可能となる。
【0044】
また、図11に示す構成に加えて、図13及び図14に示すように、開口端面1aから主ジェットノズルNに向かう円弧形状の案内部3を設置し、開口端面1aから噴射された空気Yを、直交面Mに対してさらに傾斜させて案内するようにしても良い。
このような案内部3を騒音低減装置に備えさせることによって、案内部3によるコアンダ効果によって、空気Yの噴射角度を軸Lに対してより深くすることが可能となる。
【0045】
また、上記実施形態においては、図2等に示すように、合計で16本のマイクロジェットノズル1が設置された構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、マイクロジェットノズル1の本数は、要求される騒音の低減効果に応じて任意に変更可能である。
【0046】
また、上記実施形態においては、開口端面1aが平面である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、開口端面が曲面や屈曲面であっても良い。
【0047】
また、上記実施形態においては、本発明の流体として空気Yを用いる構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、流体として水蒸気等の他の流体を用いることも可能である。
【0048】
また、上記実施形態においては、ジェットエンジンの圧縮機によって生成された圧縮空気をマイクロジェットノズル1に供給し、騒音低減装置が流体の供給装置を備える必要のない構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、騒音低減装置が別途流体の供給装置を備える構成を採用することもできる。この場合には、必ずしも流量調節弁2を設置する必要はない。
【符号の説明】
【0049】
S1〜S4……騒音低減装置、1……マイクロジェットノズル、1a……開口端面、2……流量調節弁、3……案内部、X……ジェット流、Y……空気(流体)、M……直交面、N……主ジェットノズル、L……軸、L1……延在方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェットエンジンの主ジェットノズル周りに配置される複数のマイクロジェットノズルを備え、該マイクロジェットノズルからジェット流に向けて流体を噴射することによって騒音を低減する騒音低減装置であって、
前記マイクロジェットノズルの開口端面が、当該マイクロジェットノズルの延在方向に直交する直交面に対して前記ジェット流に向けて傾斜されていることを特徴とする騒音低減装置。
【請求項2】
前記マイクロジェットノズルの開口端面が、前記主ジェットノズルの周方向にさらに傾斜されていることを特徴とする請求項1記載の騒音低減装置。
【請求項3】
全ての前記マイクロジェットノズルの開口端面が、前記主ジェットノズルの周方向の一方向に傾斜されていることを特徴とする請求項2記載の騒音低減装置。
【請求項4】
前記開口端面が前記主ジェットノズルの周方向の一方向に傾斜されている前記マイクロジェットノズルと、前記開口端面が前記主ジェットノズルの周方向の他方向に傾斜されている前記マイクロジェットノズルとを備えることを特徴とする請求項2記載の騒音低減装置。
【請求項5】
前記マイクロジェットノズルの延在方向から見た前記開口端面の形状が半円形状であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の騒音低減装置。
【請求項6】
前記開口端面から噴出された前記流体を前記直交面に対してさらに傾斜させて案内する案内部を備えることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の騒音低減装置。
【請求項1】
ジェットエンジンの主ジェットノズル周りに配置される複数のマイクロジェットノズルを備え、該マイクロジェットノズルからジェット流に向けて流体を噴射することによって騒音を低減する騒音低減装置であって、
前記マイクロジェットノズルの開口端面が、当該マイクロジェットノズルの延在方向に直交する直交面に対して前記ジェット流に向けて傾斜されていることを特徴とする騒音低減装置。
【請求項2】
前記マイクロジェットノズルの開口端面が、前記主ジェットノズルの周方向にさらに傾斜されていることを特徴とする請求項1記載の騒音低減装置。
【請求項3】
全ての前記マイクロジェットノズルの開口端面が、前記主ジェットノズルの周方向の一方向に傾斜されていることを特徴とする請求項2記載の騒音低減装置。
【請求項4】
前記開口端面が前記主ジェットノズルの周方向の一方向に傾斜されている前記マイクロジェットノズルと、前記開口端面が前記主ジェットノズルの周方向の他方向に傾斜されている前記マイクロジェットノズルとを備えることを特徴とする請求項2記載の騒音低減装置。
【請求項5】
前記マイクロジェットノズルの延在方向から見た前記開口端面の形状が半円形状であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の騒音低減装置。
【請求項6】
前記開口端面から噴出された前記流体を前記直交面に対してさらに傾斜させて案内する案内部を備えることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の騒音低減装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−281285(P2010−281285A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136327(P2009−136327)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
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