説明

骨誘導および骨移植片一体化を促進するための骨移植片処理

【課題】本発明は、その表面内での生物活性剤の保持が改善された、骨インプラント、または骨移植片を提供する。
【解決手段】孔、または骨移植片の表面に形成された孔は、それらの中に置かれた、生物活性剤を含む流体を保持するための多孔質詰め物を有する。孔は、また、それら孔の寸法が孔内の流体分子の流体静力学的引力による孔内での流体の保持を促進するように、形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、骨移植片と、移植片材料を調製する方法とに関する。本発明は、また、インプラント、例えば、椎間腔に挿入するのに適したインプラント、および整形外科用途で使用するのに適したインプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
骨移植片は、疾病、外傷、または外科手術によって損傷した骨を修復するために使用される。移植片は、特定の薬物の存在下もしくは糖尿病などの疾病状態で治癒が損なわれるとき、大量の骨もしくは椎間板物質が外科手術の間に除去されるとき、または安定性を生み出すために骨癒合が必要とされるときに使用することができる。一部のタイプの脊椎癒合では、例えば、椎骨間の緩衝作用をする椎間板物質を置き替えるために骨移植片が使用される。
【0003】
骨移植片(オステオグラフト(osteograft))材料には、合成骨および天然骨の両方を含めることができる。天然骨は、移植片のレシピエントから採取することもでき(自家移植片)、または、死体(同種移植片)やウシ(異種移植片)など、他の供給源から採取することもできる。自家移植片には、低い免疫原性や、より大きな骨誘導能などの利点があるが、また、ドナーサイト罹患率および移植に適した骨の供給が限られていることに関する問題もある。他方、同種移植片は、より多くの供給量で利用可能であり、何年もの間保管できるが、骨誘導性に劣る。
【0004】
骨伝導(osteoconduction)および骨誘導(osteoinduction)は、いずれも骨形成に寄与する。移植片材料は、その材料が骨形成に関与する細胞および細胞物質(例えば、破骨細胞、骨芽細胞、血管系、間葉細胞)のための構造的骨組みまたは微視的および巨視的足場を提供する場合、骨伝導性である。他方、骨誘導性材料は、宿主の間葉細胞から軟骨芽細胞および骨芽細胞への分化を刺激する。天然骨同種移植片材料は、皮質骨または海綿骨を含むことができる。海綿骨を特徴付ける特徴は、皮質骨に比べて多孔度のレベルが高いので、より多くの自由表面およびこれらの表面上で保持されるより多くの細胞構成要素を提供することである。海綿骨は、骨誘導性でもあり骨伝導性でもある移植片材料を提供するが、一般に、さほどの荷重支承能力をもたない。しかし、骨形成の最適な増進は、一般に、最小閾値量の海綿骨を必要とすると考えられている。皮質(緻密)骨は、海綿骨よりも大きな強度または荷重支承能力を有するが、骨伝導性に劣る。例えば、ヒトでは、5年後に大きな皮質同種移植片の20パーセントしか完全に一体化しない。一体化の遅延または不完全な一体化は、微動を可能にして、同種移植片の周りで宿主骨吸収をまねく虞がある。より最適な骨移植片材料は、大きな荷重支承能力と、骨誘導性および骨伝導性の両方の特性とを組み合わせることになり、そのような移植片材料の開発に大きな努力が傾けられてきた。
【0005】
一部の同種移植片は、骨髄および血液を含めたすべての軟組織を除去するように処理され、次いで、選択されたサイズ、間隔、および深さの多数の穴を形成するようにテクスチャ加工された、哺乳動物の死体骨を含む。テクスチャ加工された骨切片は、次いで、好ましくは希酸浴中で、浸漬されて脱灰される。骨を脱灰すると、骨誘導因子が顕在化するが、骨の大規模な脱灰は、また、その機械的強度を低下させる。
【0006】
同種移植片は、また、互いに背向する表面間に連続チャネルをもたらすために一方の表面から基質を貫いて他方の表面へと延びる穿孔を備えて、有機骨基質から形成されてきた。有機骨基質は、天然骨の部分的または完全な脱灰によって生み出される。穿孔は、移植片材料の足場の可能性を高め、またさらに骨誘導性材料で満たすことができるが、移植片の直径全体を貫いて有機骨基質に穿孔すると、その荷重支承能力が低下する。
【0007】
部分的に脱灰された皮質骨構造物は、移植片を骨形成タンパク質(BMP:bone morphogenetic protein)などの骨成長促進物質に浸す準備をするために、表面脱灰させることができる。この設計は、周囲組織を成長促進因子により多く曝露することができるが、相当量の成長促進因子を移植片材料に付着させるために必要な表面脱灰は、同種移植片の機械的強度を低下させる。脱灰が、その下に存在するBMPを同種移植片の表面で露出させるので、脱灰された骨同種移植片材料は、市販され、広く使用されているが、これらの材料は、最適な骨移植片材料を提供するために必要な機械的強度に欠けており、処理は、十分なBMPの曝露を、骨誘導を促進する際の大きな利益にすることはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
海綿骨の骨誘導性および骨伝導性特性と、皮質同種移植片材料によってもたらされる荷重支承能力とを結合する、骨移植片材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、荷重支承能力を維持しながら、宿主骨の一体化を促進するために生物活性剤を保持する骨移植片材料(「骨移植片」)であって、該骨移植片の少なくとも1つの表面内の少なくとも1つの孔と、孔に挿入された少なくとも1つの詰め物とを有する骨移植片を提供する。詰め物は、1つもしくは複数の多孔質材料で形成することができる。一実施形態では、詰め物は、海綿骨を含むことができる。他の実施形態では、詰め物は、様々な天然もしくは合成材料、またはそれら両方の組合せで形成することができる。
【0010】
本発明は、また、生物活性剤を保持する骨移植片を構築する方法であって、骨移植片の少なくとも1つの表面に少なくとも1つの孔を形成するステップと、孔に挿入すべき詰め物を形成するステップとを含む方法も提供する。
【0011】
本発明は、また、骨移植片の少なくとも1つの表面に少なくとも1つの孔を形成し、孔内で生物活性剤を吸収して保持するために生物学的もしくは非生物学的詰め物を孔に挿入することによって、または流体静力学的引力による生物活性剤の保持を高める形状をもつように孔を形成することによって、あるいはそれら両方の組合せによって、植え込まれた骨移植片の一体化時間を短縮する方法も提供する。
【0012】
生物活性剤は、また、1つもしくは複数の孔が該孔内で保持された流体の流体静力学的引力の増大をもたらす形状に形成されるときには、本発明に記載の骨移植片によって保持することもできる。詰め物が存在するか否かにかかわらず孔の形状が流体保持を促進するので、そのような孔には詰め物を挿入してもしなくてもよい。
【0013】
また、本発明によって、骨移植片の1つもしくは複数の表面に形成された孔と、孔に挿入するための詰め物または1つもしくは複数の孔にすでに挿入された詰め物とを有する骨移植片を含む、骨移植片システムまたはキットも提供される。このようなキットは、また、骨移植片孔に適用するのに適した生物活性剤のアリコート(部分)を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明に記載の骨移植片に設けることのできる相補的な幾何学形状の孔4と対応する詰め物2との横方向断面図である。
【図1B】本発明に記載の骨移植片に設けることのできる相補的な幾何学形状の孔4と対応する詰め物2との横方向断面図である。
【図1C】本発明に記載の骨移植片に設けることのできる相補的な幾何学形状の孔4と対応する詰め物2との横方向断面図である。
【図1D】本発明に記載の骨移植片に設けることのできる相補的な幾何学形状の孔4と対応する詰め物2との横方向断面図である。
【図2A】孔内の流体の流体静力学的引力によって流体を保持する孔形状の側面図である。このような孔は、通常、必ずしもそうとは限らないが、孔の基部直径8よりも小さい開口部直径6を有する。
【図2B】孔内の流体の流体静力学的引力によって流体を保持する孔形状の側面図である。このような孔は、通常、必ずしもそうとは限らないが、孔の基部直径8よりも小さい開口部直径6を有する。
【図2C】孔内の流体の流体静力学的引力によって流体を保持する孔形状の側面図である。このような孔は、通常、必ずしもそうとは限らないが、孔の基部直径8よりも小さい開口部直径6を有する。
【図3】本発明による骨移植片12における孔2と詰め物4との組合せの代替的な諸実施形態の断面図であり、図3aでは、孔4が詰め物2によってほぼ満たされる。図3bでは、詰め物2が孔4の開口部内に嵌まるが孔を満たさないように孔内に置かれるときに、詰め物2と孔4との間にリザーバ10が作り出される。もっと正確に言えば、開口部に詰め物を入れると、詰め物と孔の底面および(1つもしくは複数の)側面との間に流体のための空間が残されて、リザーバを形成する。図3cでは、リザーバが形成されるように、詰め物2が類似した幾何学構造の孔4内に置かれる。
【図4】孔4の少なくとも1つの内部表面が脱灰区域14を形成するように脱灰された、本発明に記載の骨移植片12の一実施形態の断面図である。
【図5】孔の高さと、孔開口部の直径と、孔内の選択された流体(生理的食塩水、水、骨髄穿刺液(BMA:bone marrow aspirate)、骨形成タンパク質(BMP−2))の表面張力との関係を示すグラフである。所与の流体について、孔の直径/高さ比が曲線よりも下にある場合、下方に向けられたときに表面張力が孔内で流体を保持することになる。
【図6】生理的食塩水、水、BMA、およびBMP−2についての直径とキャビティ高さとの関係を示すグラフである。
【図7A】ボールエンドミル16などの道具を用いて穴あけ加工または研削することによって、骨移植片12内に孔4を形成する方法を示す図である。矢印が示すように、道具を横方向に回転させながら長手方向下向きに押し付けることができる。このような道具および方法を使用して様々な形状を達成することができる。
【図7B】図7Aの形状の1つを示す図である。
【図8A】孔4が2つの表面に形成された、本発明の骨移植片12の断面図である。
【図8B】本発明の骨移植片12で見られる孔4の上下逆さまにされた断面図であり、孔2内の流体が孔の開口部6の真上にカラム18を形成している図である。
【図9】未処理の同種移植片と、未処理の同種移植片およびrhBMP−2と、真っ直ぐな孔を備えた同種移植片と、真っ直ぐな孔を備えrhBMP−2を用いた同種移植片との剪断強度(N/mm)を比較評価する棒グラフである。
【図10】未処理の同種移植片と比較した、真っ直ぐな孔を備えた同種移植片と、真っ直ぐな孔を備えrhBMP−2を用いた同種移植片との剪断強度のパーセント変化を示す棒グラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者らは、皮質同種移植片または合成骨材料を使用して、骨誘導性および骨伝導性特性と荷重支承能力とを結合する骨移植片材料(「骨移植片(オステオグラフト)」)を形成できることを見出した。本発明の骨移植片は、海綿骨の有益な特性を取り入れるが、皮質骨の優れた荷重支承能力を保持する。本明細書で使用する「骨移植片」は、皮質骨などの天然骨同種移植片、骨移植片代替物を形成するために使用される合成材料、および天然材料と合成材料との組合せを包含する。同種移植片形成に適した合成材料としては、例えば、サンゴのハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムおよびハイドロキシアパタイト、硫酸カルシウム、Bioglass(商標)顆粒(Novabone Products、米国フロリダ州アラチュア(Alachua))、α−リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、ならびに様々なセラミック材料が含まれる。本発明は、現在整形外科用途で同種移植片または合成移植片材料によってもたらされるよりも、より速くより一様な癒合、より一様な結果、およびより少ない痛みの可能性をもたらす骨移植片を提供する。本発明の骨移植片は、同種移植片または異種移植片材料を含むことができる。
【0016】
本発明に記載の骨移植片は、表面積を増大させるためだけでなく生物活性剤を移植片/宿主接合部のところで利用可能にするために骨移植片に形成された孔によってもたらされる骨誘導性特性とともに、天然同種移植片または合成骨によってもたらされる荷重支承特性を有する。生物活性剤を骨誘導性因子とすることができる。これらの剤は、孔に挿入された詰め物(栓、プラグ)によって、もしくは孔内の流体静力学的な力による流体保持を高めるように孔を形成することによって、またはそれら両方の組合せによって、骨移植片孔内で保持される。
【0017】
本発明は、また、植え込まれた骨移植片内で生物活性剤を保持する方法を提供する。本明細書で使用する「生物活性剤」は、例えば、骨形成タンパク質(BMP)、LIM石灰化タンパク質(LMP:LIM mineralization protein)、粒子状骨、CHRYSALIN(商標)、骨髄穿刺液、濃縮骨髄穿刺液、脱灰骨基質(DBM:demineralized bone matrix)などの骨成長促進細胞性因子、GDF−5などの成長分化因子、TNF阻害剤などの抗炎症因子、抗感染剤、間葉細胞、造血細胞、骨形成前駆細胞、もしくは様々なタイプの幹細胞、鎮痛剤、またはそれらの組合せなど、1つの生物活性因子、または2つ以上の生物活性因子の組合せを包含する。例えば、Pascherらの米国特許出願第10/457000号(公開番号20040037819)に記載のものなど、非高分子(non−polymeric)造血細胞塊は、本発明の骨移植片で、生物活性剤として、また生物活性剤の送達に、有用な可能性がある。当業者に公知の様々な生物活性剤が、本発明の骨移植片および方法で使用するのに適している。
【0018】
生物活性剤は、例えば、剤の溶解もしくは拡散の速度を制御するために1つもしくは複数の生物活性剤を含む配合のポリマー、生物活性剤の溶解もしくは放出を遅らせるための機能的コーティング、当業者に公知の放出調節ミクロスフェアなどの他の類似組成物など、放出調節された形態で提供することができる。医薬品放出制御技術ハンドブック(Handbook on Pharmaceutical Controlled Release Technology)、D.L.Wise(編)、Marcel Dekker社(ニューヨーク)(2000年)などの参考文献は、本発明で使用するのに適した放出調節組成物を配合する例および指示を提供する。
【0019】
本発明は、骨移植片/宿主骨接合部で利用可能なBMPなどの少なくとも1つの生物活性剤の量を増加させ、それによって骨移植片一体化に必要な時間を短縮する、骨移植片および方法を提供する。BMPの添加なしに挿入される同種移植片は、一般に、一体化に12〜18ヶ月を要する。同種移植片と宿主骨終板との間の接合部でBMPが利用可能であるときには、一体化の時間を3分の1〜2分の1短縮することができる。脊椎癒合におけるより速い一体化および骨癒合は、同種移植片/宿主終板の境界面に沿った望ましくない動きを低減することができる。
【0020】
本明細書で使用する「孔(ピット(pit))」は、骨移植片の少なくとも1つの表面下に形成された画定された空間、または隣接した骨移植片表面よりも下方に下がったもしくは陥凹した領域であり、その用語は、用語「陥凹部(depression)」、「腔(キャビティ(cavity))」、「窪み(indentation)」、「空洞(hollow)」、または「穴(hole)」と同義で使用することができる。孔は、直径約2mmで深さ約3mm、もしくは直径約1mmで深さ約1mmなど、様々な寸法および形状に形成することができる。一般に、孔内での流体の保持を促進するために、深さ対直径比が少なくとも約2〜1となるように孔を形成することが有益な可能性がある。孔は、また、より容易に詰め物を挿入できるように開口部が基部よりも幅広となるように、または流体静力学的な力による孔内での詰め物の保持もしくは流体の保持を高めるために基部が開口部よりも幅広となるように形成することもできる。孔の深さおよび直径について選択される寸法は、同種移植片の構造健全性および荷重支承能力を維持しながら、同種移植片の表面での骨誘導性因子への曝露を増加させるべきである。
【0021】
孔は、骨移植片が合成材料から形成されるときに該骨移植片内に形成することができる。また、孔の所望のパターンおよび形状を、天然同種移植片または合成材料で形成された骨移植片「ブランク」内に形成することができる。孔は、例えば、レーザドリル加工、機械式ドリル加工、コンピュータ数値制御(CNC:computer−numerically−controlled)フライス削り、プレス成型など、当業者に公知の手段によって形成することができる。孔は、一様または非一様断面形状に形成することができ、例えば、円形、半円形、円錐形、長方形、または円錐部分(特に基部のところに)を備えた円筒状とすることができる。孔は、軸対称であっても非対称であってもよい。
【0022】
特定の骨移植片の孔に適切な(1つもしくは複数の)形状は、当業者が決定することができる。孔の密度および直径、ならびに孔の深さは、同種移植片の望ましい場所および必要な荷重支承能力に応じて選択すべきである。本発明者らは、例えば、より重い荷重支承用途に必要とされる骨移植片では個々の孔の直径を最小限に抑えることを推奨する。より大きな孔(深さおよび直径の点で)は、宿主骨と相互作用することになる表面で使用することができ、より小さな孔は、骨移植片のどこか他の場所に配置することができる。孔の深さを決定するときには、骨移植片の構造健全性および荷重支承能力を考慮すべきである。一般に、骨移植片の直径全体を横切る(すなわち、「通り抜ける」)孔を使用することも、骨移植片の荷重支承能力を大幅に低下させる虞のある深さにすることも、望ましくない。
【0023】
骨移植片植込みの1つの目標が、宿主骨が孔内へと成長することであるので、孔は、宿主骨と骨移植片とが接触する表面で特に有益である。宿主骨が孔内へと拡張するとき、骨芽細胞が新しい骨を追加し、破骨細胞が骨移植片骨材料を除去する。「漸次置換(creeping substitution)」を通じて、骨移植片は、一体化し、いずれは宿主骨組織によって置き替えられる。
【0024】
その(1つもしくは複数の)内部表面に沿って脱灰区域14を有する孔4を示す図4に示されるように、1つもしくは複数の孔の内部を、該孔の内部表面を脱灰するように処理することができる。孔は、例えば、それらの孔内に塩酸(例えば、0.6MのHCl)を適用し、次いで該孔から酸を洗い流すことによって、脱灰することができる。孔の脱灰の程度は、同種移植片の構造健全性および荷重支承能力に影響を与えるほど大きくないように制限すべきである。
【0025】
本発明の一実施形態では、多孔質材料で形成された詰め物を、骨移植片に形成された1つもしくは複数の孔内に置くことができる。「多孔質」詰め物は、少なくとも1つの生物活性物質を含む流体、ペースト、もしくはパテを少なくとも最小量吸収または吸着するのに十分な透過性または多孔性を有する詰め物である。図1A〜図1Dに示されるように、様々な幾何学構造の孔4を本発明の骨移植片に形成することができ、それらの孔には、図に示されるように、相補的な幾何学構造の詰め物2を挿入することができる。本発明の一実施形態では、詰め物2は、本質的に孔4を満たす(図3A)。他の実施形態では、図3Bおよび図3Cに示されるように、詰め物と孔の底面および(1つもしくは複数の)側面との間に、リザーバ(容器、貯留部)10を作り出すために、詰め物の底面と孔の底面との間に空間が形成されるように詰め物を孔内に置くことができる。詰め物は、対応する孔に相補的な形状とすることができ、不規則形状とすることができ、例えば、くさび、円筒、または楕円形状に形成することができ、湾曲表面、直線的表面、または詰め物の個々のタイプの設計に適した他の表面を有することができる。いずれの孔内にも、1つの詰め物または1つよりも多くの詰め物を置くことができる。
【0026】
詰め物は、多孔質合成材料、海綿骨、多孔質コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、セルロース、デンプン、リン酸カルシウム、もしくはそれらの組合せを含め、生物学的材料または非生物学的材料で作製することができる。詰め物は、自家移植片、同種移植片、または異種移植片材料から形成することができる。
【0027】
詰め物が骨移植片孔内に置かれる前に生物活性剤を吸収するように、そのような生物活性剤を含む液体中に詰め物を置くこともでき、または1つもしくは複数の詰め物が孔内に置かれた後で骨移植片を1つもしくは複数の生物活性剤中に置くこともできる。孔は、骨移植片の最終組立て前に生物活性剤で満たすこともでき、または骨移植片の外科的植込み前に手術室で満たしてもよい。詰め物は、孔によってもたらされるリザーバのための多孔質シールを提供するために使用することもでき(図3Bおよび図3C)、または生物活性剤を保持するために孔を満たすこともできる(図3A)。生物活性剤を初めに適用することなく詰め物を孔に挿入してもよく、または詰め物を孔に挿入する前に生物活性剤を適用することもできる。(1つもしくは複数の)詰め物が孔内に置かれる前もしくは置かれた後で生物活性剤をそれらの詰め物によって吸収もしくは吸着できるように、シリンジもしくは他のアプリケータを使用して、または当業者に公知の他の手段を使用して、詰め物を生物活性剤に浸すことによって、該生物活性剤を詰め物に適用することができる。また、ペースト、パテ、もしくは他の組成物を、それらが1つもしくは複数の詰め物の挿入前または挿入後に孔を満たすように、同種移植片に沿って広げることができる。
【0028】
詰め物は、該詰め物の最上部が同種移植片の表面と同一平面にくるように、または同種移植片表面よりも下に陥凹するように挿入することができる。
本発明の一実施形態では、孔は、該孔の形状が孔開口部に加わる流体の力を低減させ、かつ孔内に置かれた流体の保持を高めるように形成される。このような孔は、詰め物の有無にかかわらず、それらの孔内で生物活性剤を保持する。図2は、流体保持を高める形状を有する孔を示す。このような孔は、例えば、適切なサイズのボールエンドミルなど、様々な手段を使用して当業者が作り出すことができる。これらの孔は、一般に、孔12の基部の直径よりも小さい直径10をもつ開口部を有する。重力によってカラム内の流体が孔開口部を押すように上下逆さまにされるときには、加わる力は、孔内の流体の質量全体ではなく、開口部の真上にある流体のカラムの直径に基づく。
【0029】
孔内の流体静力学的圧力および表面張力を増大させるための孔形状および寸法は、孔の入口の上方の流体の正味重量が孔入口に作用する流体張力よりも小さい場合、孔が上下逆さまにされたときに一般に流体が孔の内側で保持されることに留意して、当業者が決定することができる。未知の表面張力および密度を有する流体の表面張力および密度は、過度の実験をすることなく当業者が実験的に決定することができる。これらが決定された後には、次式を使用して孔寸法を計算することができる:
【0030】
【数1】



【0031】
式中:
W=孔の入口の上方の流体カラムの重量(ダイン)
d=孔入口の上方の突き出た流体カラムの直径(cm)
A=孔入口での直径に基づいた孔の断面積(cm
ρ=孔内に含まれる流体の密度(g/cm
γ=孔内に含まれる流体の表面張力(ダイン/cm)
g=重力定数(cm/秒
h=流体カラムの高さ(cm)
これらの因子を使用すると、孔直径と孔高さとの関係を図5のようにグラフ化することができ、その際、所与の流体について孔の直径/高さ比が曲線よりも下の領域に位置する場合、孔開口部が下方に向けられたときに表面張力が孔内で流体を保持することになる。
【0032】
本発明は、以下の非限定的な諸実施例を参照することによってさらに説明することができる。
【実施例1】
【0033】
ヒツジ皮質欠損モデルを使用して、同種移植片構造物をスクリーニングするための研究を実施した。様々な同種移植片構成を、組織形態学的、組織病理学的、および生体力学的方法を使用して比較した。組織病理学的かつ組織形態学的に、BMPと同種移植片表面陥凹部(ASD:allograft surface depressions)との組合せは、骨再建および宿主と移植片組織との間の統合を増進する相乗効果を示した。研究範囲は、ヒツジ脛骨および中足骨に作り出された、同種移植片構造物で満たされた直径4mmの欠損の非脱灰組織学的処理および生体力学的試験を伴うものとした。異なる6つの同種移植片処理を、表1に詳細に記載されるように評価した。
【0034】
【表1】

【0035】
(注)「SDM」は「表面脱灰された同種移植片」(Surface Demineralized Allograft)であり、「ASD」は「表面陥凹部を備えた同種移植片」であり、「SDM+BMP」は「表面脱灰されたすべての移植片+rhBMP−2」であり、「ASD+BMP」は「表面陥凹部を備えた同種移植片+rhBMP−2」であり、「ASD+DBM」は「表面陥凹部を備えた同種移植片+脱灰骨基質」である。
【0036】
簡潔に言えば、ヒツジの脛骨および中足骨に直径4mmの8つの片側欠損を作り出した。皮質骨内の欠損位置についての表示は、次のスキームにしたがって略記した:非常に近位の脛骨(t−vp)、近位の脛骨(t−p)、遠位の脛骨(t−d)、非常に遠位の脛骨(t−vd)、非常に近位の中足骨(m−vp)、近位の中足骨(m−p)、遠位の中足骨(m−d)、および非常に遠位の中足骨(m−vd)。8頭のヒツジそれぞれに8つの欠損を与えた。表1は、生体力学的または組織学的評価に対する各欠損の割り当てを示す。
【0037】
・サンプルの調製
安楽死させたヒツジからの脛骨および中足骨を、ラベル付けし、解剖からOrthopaedic Bioengineering Research Lab(コロラド州立大学(Colorado State University)、米国コロラド州フォートコリンズ(Fort Collins))に輸送した。術中外科用マーカと綿密な調査とによって、欠損を視覚的に識別した。欠損およびその周囲の骨を、Exakt Bone Saw(Exakt Technologies、米国オクラホマ州オクラホマシティ(Oklahoma City))を使用して慎重に切断した。生体力学的試験を受ける欠損については、試験固定具における据付けおよび方向付けの目的で、4〜5cmの宿主骨を保持するようにできる限り努めた。組織学的標本については、欠損を取り囲む1cm以下の骨を保持したにすぎない。生体力学的および組織学的な各標本を、矢状方向および冠状方向の両方で放射線撮影した。
【0038】
・非脱灰組織学
トリミングしたサンプルを、70%エチルアルコール(ETOH)に1週間浸すことによって固定した。Technovit7000(包埋樹脂)の濃度を増加させながら、標本を段階的なETOH溶液(70%、95%、および100%)中で約3週間にわたって脱水した。最終溶液は、100%の包埋樹脂を含んでおり、光活性化を用いて重合させた。Exaktダイヤモンド刃骨鋸(Exakt Technologies、米国オクラホマ州オクラホマ)を使用して、標本ブロックから欠損の長手軸に沿って2つの切片を切り取った。Exaktマイクログラインダを使用して、切片を厚さ10〜20μmに研削し、骨基質への移植片一体化の質的評価、骨再生、および生体材料に対する組織反応の病理学的評価のために、変法Van Gieson骨染色液を使用して染色した。切片を変法Van Gieson染色液で染色して、骨(赤)、インプラント(不透明)、類骨(緑)、および繊維性組織(青)[データは示さず]の間に鮮明な色の対比をもたらした。
【0039】
・組織形態学的分析
Image Pro Imagingシステム(Media Cybernetics、米国メリーランド州シルバースプリング(Silver Spring))、およびNikonE800顕微鏡(AG Heinze、米国カリフォルニア州レイクフォレスト(Lake Forest))、SpotRTデジタルカメラ(Diagnostic Instruments、米国ミシガン州スターリングハイツ(Sterling Heights))を使用して、組織学的画像を取得した。移植片と宿主組織とは、非常に似ていて、自動セグメンテーションを信頼できないものにしていたので、移植片組織の手作業による選択が必要であった。測定された組織形態学的パラメータには、移植片で満たされた欠損パーセント、骨で満たされた欠損パーセント、移植片で満たされた骨膜仮骨パーセント、骨で満たされた骨膜仮骨パーセント、移植片で満たされた骨内膜仮骨パーセント、移植片で満たされた骨内膜仮骨パーセント、骨膜仮骨の高さ(mm)、および骨内膜仮骨の高さ(mm)が含まれた。
【0040】
・組織病理学的分析
次の指標を使用し、55個のスライドに基づいて、再生組織を正常性および移植片材料に対する細胞反応について評価した:同種移植片詰め物の存在(YまたはN);炎症細胞(0=なし、1=若干、2=多い);同種移植片吸収の程度(0=なし、1=0〜25%、2=25〜50%、3=50〜75%、4=75〜100%);同種移植片の一体化が優勢な表面(E=骨内膜、P=骨膜、B=E&P両方、H=宿主骨、A=すべての表面);同種移植片の活性な破骨細胞吸収(0=なし、1=若干、2=広範囲);活性な骨芽細胞の骨形成(0=なし、1=若干、2=広範囲);同種移植片内の新生骨の再建(0=100%繊維性骨、1=若干、主に繊維性、2=主に層状、いくらか繊維性、3=完全に層状骨へと再建されている);欠損内の繊維性または軟骨性組織の存在(YまたはN);同種移植片と宿主骨との統合(0=骨統合、1=繊維性の被膜形成、2=骨および繊維性統合の混合状態);同種移植片詰め物拡張(E=髄管内への拡張、P=骨膜表面からの拡張、C=皮質内に含まれる);仮骨の記述(0=仮骨なし、B=骨膜および骨内膜両方の仮骨、E=骨内膜仮骨、P=骨膜、X=評価できず);該当する場合、より大きな仮骨(E=骨内膜、P=骨膜;骨内膜仮骨のサイズ(0=なしまたは最小、1=皮質厚の0〜25%、2=皮質厚の25〜50%、3=皮質厚の50〜75%、4=皮質厚の75〜100%);骨膜仮骨のサイズ(0=なしまたは最小、1=皮質厚の0〜25%、2=皮質厚の25〜50%、3=皮質厚の50〜75%、4=皮質厚の75〜100%);仮骨の再建(0=100%繊維性骨、1=若干、主に繊維性、2=主に層状、いくらか繊維性、3=完全に層状骨へと再建されている)。
【0041】
・生体力学的試験
すべての生体力学的標本を安楽死の日に試験した。Exakt鋸上に配置して切断した後で、標本をタグ付けし、生理的食塩水を浸み込ませたガーゼで包んだ。荷重と垂直に交わる同種移植片構造物の向きを可能にするように、各標本を切断した。簡潔に言えば、脛骨または中足骨の矢状切片を、それぞれが2つの欠損をもつ遠位端および近位端へと横方向に切り分けた。皮質表面に対する詰め物移植片の垂直な載置を可能にするように、標本を位置合わせジグの上に据え付けた。骨膜表面(視覚化しやすい)上で詰め物移植片を方向付けることによって位置合わせを達成し、位置合わせした後には、試験標本を、骨内膜表面からの押出しのために180度反転させた。位置合わせジグは(依然として標本に取り付けられているが)、もはや実際の試験中には標本に支持も方向付けももたらさなかった。押出しのための同種移植片詰め物の位置合わせに関わる手順の詳細について、以下で論じる。
【0042】
宿主骨切片を、中央から8cm×5.5cmの四角形切片が除去された、約19.5cm×13.5cmの、厚さ1cmの合板支持プレート上に据え付けた。同種移植片詰め物を、支持プレート穴のほぼ中央で方向付けし、宿主骨切片を、乾式壁ねじ(drywall screw)および熱接着剤(hot glue)によって支持プレートに取り付けた。
【0043】
ねじジャッキが保持する2つのブラケットを備えたスイベルプレートを、乾式壁ねじによって支持プレートに取り付けた。次いで、組立体をボール盤テーブル上に置いた。反応プレートおよび反応プレート保持組立体を、ボール盤チャックに挿入した。同種移植片詰め物の視覚的位置合わせを単純化するために、予備試験の実施後に、反応プレートの穴のクリアランスを1.5mmに調節した。直径3.5mmのパイロットロッドを使用して、反応プレート穴を同種移植片詰め物に位置合わせした。4つのねじジャッキを使用して下側のものを持ち上げ、スイベルプレートを傾けて、パイロットロッドを同種移植片詰め物と位置合わせした。次いで、パイロットロッドを除去し、反応プレートを宿主骨まで下げた。反応プレート穴を見下ろし、同種移植片詰め物を一直線に並べるために、鏡を使用して、さらなる目視検査および微調整を行った。支持プレートを、2つの押下げクランプ組立体によってボール盤テーブルに安定化させた。
【0044】
4つのアングルブラケットを反応プレートに取付け、4つの無頭ねじ(headless screws)を合板支持プレートに挿入した。反応プレートを持ち上げ、熱接着剤の円が描かれた紙片を同種移植片詰め物の周りに置いた。反応プレートを接着剤の上に下ろして支承表面を作り出した。同種移植片詰め物にも反応プレート穴にも接着剤を付けないように注意した。無頭ねじをアングルブラケットに熱接着することによって、反応プレートを支持プレートに取り付けた。接着剤が乾いたら、支持プレートをスイベルプレートから除去した。反応プレート組立体をひっくり返し、別のカスタム固定治具を使用してOBRLサーボ油圧試験システム(MTS858、米国ミネソタ州エデンプレイリー(Eden Prairie))に取り付けた。
【0045】
標本が方向付けられた後、直径3.5mmの平面ピンによって変位速度2mm/分で同種移植片詰め物に荷重を加え、荷重および変位データを100Hzで収集した。破壊荷重に達したら、試験を終了した。
【0046】
同種移植片詰め物が押し出された後、宿主骨標本を支持プレートから除去した。第2の同種移植片詰め物を、支持プレート穴の中央で方向付けし、宿主骨を支持プレートに再び取り付けた。前述の手順を繰り返した。詰め物が押し出された後、標本の写真を撮り、その標本を、生理的食塩水を浸み込ませたガーゼで包んで冷凍庫に入れた。後で標本を冷凍庫から取り出し、同種移植片詰め物穴をExakt Sawで2等分した。穴のところの皮質骨厚をデジタルキャリパで測定した。
【0047】
同種移植片処理が、生体力学的(極限荷重、剪断強度、および剪断弾性係数)、ならびに組織形態学的(欠損内の骨パーセント、欠損内の移植片パーセント、骨膜仮骨内の骨パーセント、骨膜仮骨内の移植片パーセント、骨内膜仮骨内の骨パーセント、および骨内膜仮骨内の移植片パーセント)分析に及ぼす効果を、一方向ANOVAを使用して判定した。処理の有意な効果が見られた場合、Duncan多重比較を使用して処理間の差を判定した。統計分析は、すべて、有意水準a=0.05でSAS統計ソフトウェア(Cary、米国ノースカロライナ州)を使用して実施した。
【0048】
生体力学的特性のいずれについても、処理間で有意差は検出されなかった(極限力、剪断強度、および剪断弾性係数;すべてp>0.05)。BMP処理された同種移植片詰め物には、押出しの間に極限荷重および剪断強度のわずかな増大傾向が見られたが、これらは、有意ではなかった。ただし、BMPの組合せについての生体力学的結果には差がなかったが、組織形態学的および組織病理学的研究では前述のような相乗効果があった。
【0049】
同種移植片および異種移植片処理では欠損内に有意に多くの移植片が残っており(p<0.005)、ASD+BMP処理群では欠損内に有意に高いパーセントの骨が測定されたが、同種移植片(未処理)群は、他の処理群よりも欠損内の骨が有意に少なかった(p<0.001)。同種移植片群は、他の処理群に比べて骨膜仮骨中の骨パーセントが有意に低かった(p<0.05)。骨膜仮骨内の移植片パーセント(p=0.88)ならびに骨内膜仮骨内の移植片および骨パーセント(それぞれ、p=0.18およびp=0.57)については、処理間で有意差は見られなかった。
【0050】
ASD+BMPは、同種移植片詰め物の大部分が再建された、最も一貫した再建および詰め物一体化を示した。表面陥凹部は、ASD処理の場合に活性な骨形成および再建を促進するように思われる。BMP−2は、骨芽細胞の活動を助けるように思われる。表面陥凹部とともにBMPを用いた結果は、相乗効果を示す。予想されるように、異種移植片は、免疫反応(すなわち、炎症反応)を示した。
【実施例2】
【0051】
実施例1で概説された手順にしたがって、本出願人は、本発明による骨移植片の写真を撮影した。写真(図示せず)は、骨、インプラント、類骨、および繊維性組織間に対比をもたらすために変法Van Gieson染色液で染色された非脱灰組織構造を示した。1枚の写真は、インプラントとして使用された滑らかな未処理の皮質同種移植片骨を示した。他の写真は、直径1mm×深さ1mmの表面孔を備えた同種移植片骨から形成された骨移植片の一体化を示した。写真:(1)孔を備えた同種移植片と、(2)組み換えヒト骨形成タンパク質(rhBMP−2)を使用した、孔を備えた同種移植片と、(3)孔を備えた同種移植片および脱灰骨基質(DBM)とを撮影した。組織形態学的に、BMPと同種移植片表面陥凹部(ASD)との組合せは、骨再建および宿主と移植片組織との間の統合を増進させる相乗効果を示した。
【実施例3】
【0052】
実施例1の手順にしたがって、ヒツジ皮質欠損モデルを使用して同種移植片構造物をスクリーニングした。組織病理学的、組織形態学的、および生体力学的方法を使用して、様々な同種移植片表面処理を比較した。データを蓄積することによって、サンプルサイズを増大させ、ばらつきを低減することが可能となった。組織病理学的かつ組織形態学的に、BMPと真っ直ぐな孔を備えた同種移植片との組合せは、骨再建および宿主と移植片組織との間の統合を増進させる相乗効果を示した。処理が測定された生体力学的反応に及ぼす統計的に有意な効果は、なかった。結果を図9および図10に表す。
【0053】
図9の棒グラフは、剪断強度(N/mm)を示しており、剪断強度=F/(πDH);F=極限力(N);D=円筒状インプラントの外径(すべての場合に4mm);H=平均皮質間骨界面厚(mm)である。未処理の同種移植片、rhBMP−2を用いた未処理の同種移植片、真っ直ぐな孔を備えた同種移植片、および真っ直ぐな孔を備えrhBMP−2を用いた同種移植片を試験し、比較した。
【0054】
図10の棒グラフは、未処理の同種移植片と比較した、真っ直ぐな孔を備えた同種移植片と、真っ直ぐな孔を備えrhBMP−2を用いた同種移植片との、剪断強度のパーセント変化を示す。真っ直ぐな孔を備えrhBMP−2を用いた同種移植片は、他の2つのサンプルよりも良好な剪断強度のパーセント増加を示した。
【0055】
本明細書で参照される特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書で引用されるすべての米国特許および公開または未公開米国特許出願を、参照により本願に援用する。本明細書で引用されるすべての公開外国特許および特許出願を、参照により本願に援用する。本明細書で引用される他のすべての公開された参考文献、文書、原稿、および科学文献を、参照により本願に援用する。
【0056】
本発明について、その好ましい諸実施形態に即して詳細に示し記載したが、冒頭の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、それらの諸実施形態で形態および細部に様々な変更を加えることができることが、当業者には理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨移植片において、
a)前記骨移植片の少なくとも1つの表面に形成された少なくとも1つの孔と、
b)前記孔内に置くための詰め物とを含む、骨移植片。
【請求項2】
天然骨、合成材料、またはそれら両方の組合せから形成される、請求項1に記載の骨移植片。
【請求項3】
前記詰め物が、海綿骨、多孔質コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、セルロース、デンプン、リン酸カルシウム、多孔質合成物質、またはそれらの組合せから構成される群から選択される少なくとも1つの材料から形成される、請求項1に記載の骨移植片。
【請求項4】
前記孔が生物活性剤を含む、請求項1に記載の骨移植片。
【請求項5】
前記詰め物の挿入前に、生物活性剤が前記孔内に適用される、請求項1に記載の骨移植片。
【請求項6】
前記詰め物が生物活性剤を含む、請求項1に記載の骨移植片。
【請求項7】
前記詰め物が前記孔に挿入される前に、生物活性剤が前記詰め物に適用される、請求項1に記載の骨移植片。
【請求項8】
前記詰め物が、前記孔に挿入される前に、少なくとも1つの生物活性剤を含む溶液に浸される、請求項7に記載の骨移植片。
【請求項9】
前記詰め物が前記孔に挿入された後で、生物活性剤が前記詰め物に適用される、請求項1に記載の骨移植片。
【請求項10】
前記詰め物の形状が、前記孔の形状に相補的である、請求項1に記載の骨移植片。
【請求項11】
前記孔の内部表面が脱灰される、請求項1に記載の骨移植片。
【請求項12】
前記孔が、前記孔の基部の直径よりも小さい開口部直径を有する、請求項1に記載の骨移植片。
【請求項13】
外科的植込みの間に、少なくとも1つの生物活性剤を保持する骨移植片であって、骨移植片は、当該骨移植片の少なくとも1つの表面に形成された少なくとも1つの孔を含み、前記孔は、直径に対する深さの比が約2乃至1である、骨移植片。
【請求項14】
骨移植片の表面で少なくとも1つの生物活性剤を保持するリザーバにおいて、
a)骨移植片の少なくとも1つの表面に形成された孔と、
b)詰め物と前記孔の底面との間に空間を形成するように、前記孔内に置かれた前記詰め物とを含む、リザーバ。
【請求項15】
前記孔が、前記孔の基部の直径よりも小さい開口部直径を有する、請求項14に記載のリザーバ。
【請求項16】
前記詰め物が多孔質である、請求項14に記載のリザーバ。
【請求項17】
前記詰め物が、海綿骨、多孔質コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、セルロース、デンプン、リン酸カルシウム、またはそれらの組合せから構成される群から選択される少なくとも1つの材料で形成される、請求項14に記載のリザーバ。
【請求項18】
前記生物活性剤が、LIM石灰化タンパク質(LMP)、骨形成タンパク質(BMP)、成長分化因子(GDF)、CHRYSALIN(登録商標)、骨髄穿刺液、濃縮骨髄穿刺液、間葉細胞、脱灰骨基質(DBM)、粒子状骨、抗生物質、抗感染組成物、鎮痛剤、またはそれらの組合せから構成される群の中から選択される、請求項15に記載の骨移植片リザーバ。
【請求項19】
骨移植片において、当該骨移植片の少なくとも1つの表面に形成された少なくとも1つの孔を含んでおり、前記孔内に流体が入れられて詰め物が挿入されたときに、前記孔が、前記孔開口部の上に孔開口部に加わる流体張力よりも小さい流体の正味重量をもたらす、骨移植片。
【請求項20】
骨移植片孔内で少なくとも1つの生物活性剤を保持する、詰め物。
【請求項21】
前記詰め物が多孔質である、請求項44に記載の詰め物。
【請求項22】
前記詰め物が、海綿骨、多孔質コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、セルロース、デンプン、リン酸カルシウム、多孔質合成物質、またはそれらの組合せから構成される群から選択される少なくとも1つの材料から形成される、請求項21に記載の詰め物。
【請求項23】
送達システムにおいて、
a)少なくとも1つの孔を有する骨移植片であって、前記孔が、前記骨移植片の少なくとも1つの表面に形成される、骨移植片と、
b)前記孔に挿入するための少なくとも1つの詰め物とを含む、システム。
【請求項24】
生物活性剤をさらに含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記骨移植片が前記表面上に複数の孔を有する、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記複数の孔が、前記骨移植片の表面上で均等に離隔される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記複数の孔が、隣接骨表面との接触を最大にするような構成で離隔される、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記複数の変形すべてが詰め物を有する、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
前記複数の変形の一部分が詰め物を有する、請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
前記詰め物が、前記少なくとも1つの孔内で生物活性剤を吸収もしくは吸着して保持する、請求項25に記載のシステム。
【請求項31】
前記少なくとも1つの孔が、生物活性剤を収容可能な形状を有する、請求項25に記載のシステム。
【請求項32】
前記少なくとも1つの孔が、流体保持を促進する形状を有する、請求項25に記載のシステム。
【請求項33】
前記形状が、流体静力学的引力による生物活性剤の保持を高める、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記少なくとも1つの孔の前記形状が、不規則形状、規則形状、くさび形、円筒形、楕円形、湾曲形、直線形、四角形、ピラミッド形、およびそれらの組合せから構成される群から選択される、請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
前記詰め物が、前記少なくとも1つの孔の前記形状に対応する形状を有する、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記少なくとも1つの孔が、脱灰された内部表面を有する、請求項25に記載のシステム。
【請求項37】
前記内部表面が、塩酸を適用することによって脱灰される、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記骨移植片が椎体間癒合装置である、請求項23に記載のシステム。
【請求項39】
骨移植片において、
a)少なくとも1つの孔を有する少なくとも1つの表面であって、前記少なくとも1つの孔は、少なくとも1つの生物活性剤を受けるように適合される、少なくとも1つの表面と、
b)任意で、前記孔のための詰め物と、
c)前記少なくとも1つの孔内に含まれる少なくとも1つの生物活性剤と
を含む、骨移植片。
【請求項40】
骨移植片において、
a)少なくとも1つの孔を有する少なくとも1つの表面であって、前記孔の形状が、前記孔内での少なくとも1つの生物活性剤の保持を高めるように適合される、少なくとも1つの表面と、
b)前記少なくとも1つの孔内に含まれる少なくとも1つの生物活性剤と
を含む、骨移植片。
【請求項41】
送達システムにおいて、
a)少なくとも1つの孔を有する少なくとも1つの表面を含む骨移植片であって、前記孔の形状が、前記孔内での少なくとも1つの生物活性剤の保持を高めるように適合される、骨移植片と、
b)前記孔内に配置された少なくとも1つの生物活性剤とを含む、送達システム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−139539(P2012−139539A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−74330(P2012−74330)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【分割の表示】特願2008−518409(P2008−518409)の分割
【原出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(506298792)ウォーソー・オーソペディック・インコーポレーテッド (366)
【Fターム(参考)】