説明

高効率安定化チャージポンプ

本願においては、高効率の安定化チャージポンプを形成するシステム及び方法が記載されている。例となる実施形態において、ディクソン型チャージポンプは、非常に高い電力効率を達成する高電圧出力を有する実効クラスG増幅器を形成するよう、低電圧増幅器と組み合わされる。チャージポンプキャパシタは、交互にチャージポンプ回路又は定電圧増幅器のいずれか一方によって駆動され、チャージポンプ回路は、閉ループ安定化を与えるよう1又はそれ以上の高電圧出力からの負帰還を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高効率安定化電子チャージポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
チャージポンプは、モバイル電子機器において幅広い応用を見出す必須の電力変換ビルディングブロックである。チャージポンプは、ディスプレイドライバIC、LEDバックライトドライバ及びフラッシュメモリの重要な部分である。多くのリッチメディア向けモバイル機器に関し、ディスプレイ及びバックライトドライバは電力消費量を左右しうる。しばしば、平均電力の半分以上がチャージポンプにより使われる。チャージポンプの効率改善は、モバイル機器のバッテリ寿命に対するその直接の影響を鑑み、何年にもわたって半導体産業の関心の的であった。
【0003】
チャージポンプは、コアエネルギ導体及び記憶媒体としてキャパシタを使用するDC−DCコンバータのクラスの構成要素となる。DC−DC変換の他の一般的なクラスは誘導成分に依存する。誘導成分によりDC−DC変換は、多くの用途にとって理想的であり、高負荷で非常に高い効率に到達することができる。しかし、そのようなコンバータは、低負荷では(効率、費用、サイズ等の面において)あまりうまく動作しない傾向がある。一般的に、軽い負荷は、より大きく、より高価なインダクタを必要とし、対照的に、より軽い負荷は、より小さく、より安価なキャパシタしか必要としない。一部の軽い負荷の用途(例えば、ディスプレイ)のために、チャージポンプは、誘導型DC−DCコンバータよりも費用効果が高く、小型で、設計が容易である。
【0004】
整数値又は小数値をソース電圧に乗じるチャージポンプは、当該技術においてよく知られている。利用可能な技術によれば、非安定化乗算型チャージポンプは、特定の動作形態において、例外的に効率的にされ得る(>99%)。しかし、ソース電圧が安定化されない場合、出力も安定化されない。
【0005】
バッテリの電圧及び実効インピーダンスは、その充電状態に伴って実質的に変化しうる。バッテリから低インピーダンス電源を生成するよう、チャージポンプ及び電圧レギュレータの組み合わせがしばしば使用される。一部の用途において、バッテリ電圧は、最初にレギュレートされ、次いで増大される。他の用途においては、バッテリ電圧は、増大され、次いでレギュレートされる。更なる他の実施において、乗算器は、負荷に供給される有効電荷(又は電流)を制御するよう可変クロックレートで実施される。閉ループ安定化の部分として、チャージポンプは、安定化を達成するようフィードバックループの一部にされ得る(クロックレートに比例する)可変出力インピーダンスを有する乗算器のトポロジによって指示される開回路電圧での理想的な電圧源と見なされ得る。
【0006】
チャージポンプ及びレギュレータの組み合わせの大部分において、設計のどこかに線形レギュレータ機能が存在する。線形安定化は、消散電力(及び降下電圧)の減少傾向を有する。不可避なエネルギ損失は、レギュレータによって供給される電流にレギュレータにおける電圧降下を乗じたものに等しい。線形レギュレータにおける電圧降下による損失を最小限とするために最低限の入力電圧を選択するアプローチをとることは、当業者によく知られている。
【0007】
多くのディスプレイ向けチャージポンプ適用においては、多くの異なった電圧が必要とされる(例えば、TFT LCDのゲート、ソース及びCMOS信号を制御するために6以上)。費用及びボード面積を減らすよう、チャージポンプ及び部品の数は、費用を節約するよう、機能を共有することによって最小限とされる(例えば、複数の出力電圧を供給することができる単一のチャージポンプを作る)。しばしば、電圧に対する精度要件は同じではない(例えば、CMOS電圧は、ゲート信号よりも細かい調整を必要とする。)。
【0008】
安定化(レギュレーション)の機能は、増幅と非常に似ている。信号を安定した基準と比較する出力からの負帰還ループは、出力ドライバへの正確な信号を生成する。開ループ型チャージポンプは、しばしば、インピーダンスを適正に保つよう高い出力インピーダンス及び過度のクロック周波数を欠点とする(より高い静止電力(quiescent power)をもたらす)。負帰還ループは、より一層低い出力インピーダンスを達成するよう生来高いインピーダンス出力源(例えば、遅クロックド・チャージポンプ)に加えられてよく、従って、その場合に電荷ポンプのクロック周波数が著しく低減されることを可能にすることによって、省力化のための手段と見なされ得る。演算増幅器によるアナログ増幅は、通常、いくらかの静的電力を消費する。従って、チャージポンプのクロック周波数と増幅器の電力との間には、トレードオフが存在する。チャージポンプのクロック電力の低減が増幅器の追加による増大よりもずっと大きい場合、閉ループ安定化は一般的に開ループ安定化よりも優れていると考えられるので、解決法全体は、安定化のための(より優れているとは言わないまでも)同様の仕様(例えば、出力インピーダンス、安定性、信頼性、製造ばらつきに対する不感受性等)を満足しながら、より低い電力に達することができる。増幅電力コストが十分に低い場合、ループを閉じることによる多くの利益が存在する。
【0009】
高電圧増幅器により高電圧をレギュレートするために、通常、幾らかの静止バイアス電流が、高電圧増幅器の出力段における高電圧電力レールから引き込まれる。高電圧デバイスから構成される増幅器は、大きく、遅く、且つ効率が悪い傾向があり、しばしば、デバイス限界をオフセットするために更なるバイアス電流を必要とする。全体として、デバイス及びコストがずっと安い低電圧増幅器と比較して、良好な特性及び低い電力を有する高電圧増幅器を構成することは困難である。そして、演算増幅器の電圧供給レールが出力電圧とは有意に異なっている場合、そのような増幅器は、効率に悪影響を及ぼす線形レギュレータにおいて見られるのと同じ電力損失(電圧降下に供給電流を乗じたものに等しい)を負う。高電圧の負帰還安定化を含む如何なるアプローチも、そのような問題を考える必要がある。
【0010】
アナログ増幅器は、広くクラスに分類される。例えば、クラスABは、プッシュプル出力構成である。より高い効率を達成するよう、効率的なDC−DC電源の考えが増幅器の設計者によって採られてきた。そのような進歩した高効率増幅器の多くは、線形増幅器(例えば、クラスAB)と比較して時々著しい費用及びサイズの増加を伴って、インダクタを使用する。例として、クラスD(出力部にインダクタ)又はクラスH(概して誘導的なDC−ACコンバータからの連続的に変化する出力供給レール)がある。クラスG増幅器(マルチレール)も可能なアーキテクチャであるが、しばしば、閉ループ及び低周波チャージポンプの電力長所を打ち消すほど法外に複雑である(より多くのピン、部品、ボード面積及びHVソースからの静止電流)。(軽い電力負荷で高効率、低コスト、及び小ボードスペースに達することが困難である)インダクタを回避するよう、当業者が利用可能な一般的アプローチの欠点を招くことなく進歩した増幅器(例えば、可変なレール電圧又はマルチレール)をチャージポンプと一体化する新しいトポロジが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで記載されるチャージポンプ及び安定化(レギュレーション)トポロジは、ディクソン型チャージポンプと一体化される高効率“クラスG”増幅器トポロジを用いて複数の出力電圧について閉ループ低インピーダンスの正確な電圧生成を提供するために単一の低電圧演算増幅器を用いることによって、従来のチャージポンプ及び安定化回路の組み合わせの限界に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
複数の高出力電圧を生成するために単一の低電圧演算増幅器を使用する安定化チャージポンプ回路が開示される。
【0013】
所与の出力インピーダンスを達成するようチャージポンプスイッチング周波数を実質的に低める安定化チャージポンプ回路が開示される。
【0014】
高効率マルチレールクラスG増幅器である安定化チャージポンプ回路が開示される。
【0015】
安定化ループにおいてチャージポンプフライングキャパシタを使用する安定化チャージポンプ回路が開示される。
【0016】
夫々2つの端子を有する1又はそれ以上のポンプキャパシタに接続されるクロックド・チャージポンプと、増幅器と、フィードバックネットワークとを有する安定化チャージポンプの動作方法は、
1又はそれ以上のポンプキャパシタ端子を切り替える又は駆動するチャージポンプ動作を実行するステップと、
チャージポンプ動作間で、前記増幅器が少なくとも1つのポンプキャパシタの端子を駆動し、前記フィードバックネットワークがポンプキャパシタの他の端子に接続して、出力電圧から前記増幅器への負帰還を提供する前記フィードバックネットワークにより所望の出力電圧を生成する電圧安定化動作を実行するステップと
を有する。
【0017】
前記クロックド・チャージポンプはディクソン型チャージポンプである。
【0018】
前記増幅器は、前記所望の出力電圧よりも低い出力電圧範囲を有する。
【0019】
当該安定化チャージポンプ回路は、チャージポンプ回路又は負帰還を有する増幅器に交互に接続され得る複数のポンプキャパシタ及び電源を有する。
【0020】
チャージポンプ動作の間に、各チャージポンプ動作は、ポンプキャパシタ及び電源の間で電荷を移動させ、
チャージポンプ動作間で、前記増幅器は、前記ポンプキャパシタに接続され、当該増幅器と直列な少なくとも1つのポンプキャパシタにより出力電圧を駆動する。
【0021】
安定化チャージポンプ回路は、
夫々2つの端子を有する1又はそれ以上のポンプキャパシタと、
チャージポンプ回路と、
増幅器回路と、
フィードバックネットワークと、
出力スイッチと、
安定化キャパシタに接続される出力端子と
を有し、
前記増幅器回路及び前記チャージポンプ回路の両方は、前記ポンプキャパシタの1又はそれ以上の端子を制御することができ、
前記出力スイッチは、前記出力端子及び前記安定化キャパシタをポンプキャパシタの1つの端子に接続し、その間、前記増幅器は、前記ポンプキャパシタの1又はそれ以上の代替の端子を制御し、前記フィードバックネットワークは、前記出力端子から前記増幅器への負帰還を提供するよう接続される。
【0022】
前記チャージポンプ回路はディクソン型チャージポンプである。
【0023】
前記増幅器は、前記出力端子を所望の電圧へと直接駆動するには不十分な出力電圧範囲を有する低電圧増幅器である。
【0024】
前記フィードバックネットワークは、スイッチド・キャパシタを有する。
【0025】
本教示の更なる目的、態様、及び利点は、図面及び添付の特許請求の範囲とともに以下の記載を読んだ後に容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】スイッチを有して実施されるディクソン型チャージポンプの典型的な先行技術回路図を示す。
【図2】チャージポンプの後に線形レギュレータ続く典型的な先行技術回路図を示す。
【図3】マルチレール型チャージポンプ及びクラスG増幅器の典型的な回路図を示す。
【図4】マルチレール型チャージポンプ、クラスG増幅器及び出力部デマルチプレクサの典型的な回路図を示す。
【図5】出力部デマルチプレクサを備えたクラスG増幅器と一体化されるディクソン型チャージポンプの典型的な回路図を示す。
【図6】図5に示される安定化チャージポンプの典型的なタイミング波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[用語の解説]
次の略称が以下の記載において用いられる。これらの略称は、以下に与えられる意味を有するよう意図される。
【0028】
AC(alternating current):交流、
CMOS(complementary MOS):相補型MOS(P及びNの両タイプのFETが利用可能)、
COM(common electrode):LCDデバイスにおけるコモン電極、
DC(direct current):直流、
FET(field effect transistor):電界効果トランジスタ、
フライングキャパシタ:チャージポンプにおいて、安定キャパシタと対照的に、両端子が切り替えられるキャパシタ、
IC(integrated circuit):集積回路、
LCD(liquid crystal display):液晶ディスプレイ、
MOS(metal oxide semiconductor):金属酸化膜半導体、
NMOS:NチャネルMOS、
PMOS:PチャネルMOS、
安定キャパシタ:チャージポンプにおいて、接地又はDCレベルに接続される少なくとも1つの端子を有して名目上安定な電圧を保持するために使用されるキャパシタ、
TFT(thin film transistor):薄膜トランジスタ。
【0029】
[詳細な説明]
後述される更なる特徴及び教示の夫々は、別々に、又は他の特徴及び教示とともに、改善されたチャージポンプ及びレギュレータ並びにそれらの設計及び使用の方法を提供するために用いられてよい。ここでは、そのような更なる特徴及び教示の多くを別々に又は組み合わせて用いる典型的な例が、添付の図面を参照してより詳細に記載される。この詳細な記載は、単に、本教示の好ましい態様を実施するための更なる詳細を当業者に教示することを目的としており、特許請求の範囲の適用範囲を限定することを目的としていない。従って、以下の詳細な説明において開示される特徴及びステップの組み合わせは、ここで記載される概念を最も広い意味で実施するために必須ではなく、代わりに、単に本教示の典型的な例を詳しく記載するために教示されている。
【0030】
さらに、本明細書において開示されている全ての特徴は、原文の開示のために、そして、実施例及び特許請求の範囲における特徴の構成と無関係に対象を減縮するために、互いから独立して別々に開示されるよう意図される。また、エンティティのグループの全ての指示又は値範囲は、原文の開示のために、そして、請求される対象を減縮するために、全てのとり得る中間値又は中間エンティティを開示することが、明示的に知られる。
【0031】
図1は、理想的なスイッチを有して実施される従来のバイポーラ型ディクソン・チャージポンプを示す。動作において、2つのクロック相ph1及びph2は、GNDとVDDとの間で交互に駆動される。これにより、ポンプキャパシタ102、103、104、105の夫々は、正側のチャージポンプ部100のためのソース電圧VDDの整数倍に充電される。負側のチャージポンプ部101のポンプキャパシタ107、108、109、110は、同様に、ソース電圧VDDの負の倍数に充電される。2つの安定キャパシタ106及び111が示されており、夫々、バイポーラ型チャージポンプの最終的な最大電圧出力及び最小電圧出力を保持する。良好な効率を達成するよう、ディスクリート・キャパシタ(例えば、多層セラミックキャパシタ)は、(例えば、接地に対して)より低い浮遊キャパシタンスを有するより一層高いキャパシタンス値が標準的なオンチップ・キャパシタと比較して利用される場合に、しばしば使用される。
【0032】
負荷なしで、ディクソン型チャージポンプのポンプキャパシタ102、103、104、105、107、108、109、110は、連続的なディクソン・ポンプキャパシタにおけるクロック信号電圧レールの整数倍に落ち着く。すなわち、正側のディクソン・チェーンにおける第1のキャパシタ102はその両端にVDDを有し、第2のキャパシタ103は2×VDDを有し、第3のキャパシタ104は3×VDDを有する、等。負のディクソン・チェーンにおける第1のキャパシタ107はその両端に負のVDDを有し、第2のキャパシタ108は負の2×VDDを有する、等。正及び負両方のレールを有することは、本発明の限定ではない点に留意すべきである。単一サイドのチャージポンプ及びレギュレーションは、本教示の適用範囲内で考えられる。
【0033】
図2は、線形レギュレータ202と組み合わされるチャージポンプ200の典型的な先行技術実施を示す。チャージポンプ200は、線形レギュレータ202のソース電圧であるようにキャパシタ201によって安定化された外側レールVHVPを生成し、次いで、線形レギュレータ202は、この外側レールVHVPから電力を直接引き込む出力VOUTを駆動する。負荷なしでクロック供給される場合に、ディクソン型チャージポンプは、名目上、入力VDDの5倍に等しい出力電圧VOUTを達成する。所望のVOUTが外側電源レールVHVPに近い場合、効率損失は大したことはない。しかし、より低い出力電圧に関しては、線形レギュレータの出力段での電圧降下(VHVP−VOUT)は、有意な効率問題を生み出す。さらに、増幅器の出力段は、通常、高電圧レールVHVPから引き込まれるべき幾らかの静的バイアス電流(増幅器の静止電流)を必要とする。これは、図2に示される例えば5×VDDの外側レールから引っ張られる電流が、同じ電流がVDDから直接引き込まれる場合よりも5倍多い電力を消散させるという意味で、非常に“高価な”電力である。
【0034】
図3は、より高い効率を達成するための、クラスG増幅器303とマルチレール型チャージポンプ301との可能な組み合わせを示す。動作において、ポンプキャパシタ300を用いるマルチレール型チャージポンプ301は、外付けキャパシタ305において安定化される複数のDC出力電圧(VDDの倍数)を生成する。N入力2出力マルチプレクサ302は、出力段増幅器303のための出力レールVAP及びVAMを選択し、それにより、増幅器303は、安定化出力VOUTに近い電源レールから電流をシンク(sink)し、ソース(source)する。フィードバックネットワーク304は安定化ループを閉じる。フィードバックネットワーク304及びアンプレール選択用マルチプレクサ302は、VAP及びVANの選択が増幅器303のヘッドルーム要件を順守するように、信号306によって制御される。
【0035】
一部のマイナス面は、クラスG増幅器のこのような実施からの利益を制限する。増幅器303の出力段は、(例えば、バイアスネットワークからの)過渡電流における実質的な電力損失を負うことなく容易に切り替えられ得るべきである。利用可能なDC電圧レールの夫々についてピン305ごとに1つの安定キャパシタを有することで、ピン及び部品の数は、他のアーキテクチャと比較して実質的に増える。さらに、増幅器303は、必然的に、高電圧トランジスタから構成される。高電圧トランジスタは、低電圧トランジスタよりも性能が低く(例えば、整定時間、ゲイン)且つ遅い傾向がある。
【0036】
図4は、図3に示されるようなマルチレール型チャージポンプ400及びレギュレータ401の従来の組み合わせに出力側デマルチプレクサ402を結合した構成を示す。デマルチプレクサ402は、出力安定キャパシタ403の組から1つのキャパシタを順次接続する(1度に1つ)。出力403を順次ソースすることによって、単一のレギュレータ401は、複数の出力電圧を駆動するために使用され得る。制御信号404は、レギュレーションを構成するようマルチプレクサ及びフィードバックネットワークを制御する。
【0037】
図5は、本発明の典型的な回路図を示す。ディクソン型チャージポンプ500は、単一の低電圧増幅器501と組み合わされている。増幅器501の動作は、スイッチ502、503によりチャージポンプ500の動作とインターリーブされる。チャージポンプとして動作する場合(スイッチ502は閉じられる)、クロック信号(A、B)は、交番する2レベル信号(例えば、0及びVDDの2つのレベル)により駆動される。スイッチ503が閉じられ、スイッチ502が開く増幅モードの間、クロック信号の1つ(A又はB)は、低電圧増幅器501の出力によって駆動され、一方、出力側マルチプレクサ504は、選択された電圧出力安定キャパシタ505へディクソン型チャージポンプ500の1つを接続する。フィードバックネットワーク506は、同様に切り替えられ、低電圧増幅器506がVOUTを所望の高電圧で安定化させることを可能にする。夫々の安定化出力電圧は、複数の出力電圧の順次の更新を可能にするよう、安定キャパシタ505とともにピンを有する。
【0038】
図6は、チャージポンプサイクル間に単一の出力VOUTをリフレッシュする図5の回路のタイミング波形の典型例を図示する。チャージポンプクロック信号A、Bは、チャージポンプ相の間、最初に、2レベル駆動信号により駆動される。図5においてph1及びph2によって制御されるスイッチは、この時点で開閉される。次いで、レギュレーション相の間、スイッチ503の1つが閉じられ(本例では、下側のスイッチ)、それにより、ノードAが増幅器によって駆動される。よって、ノードCの電圧は、ノードA、C間のポンプキャパシタの両端電圧(〜2×VDD)と低電圧増幅器501の出力電圧との和である。この選択されたキャパシタノードCは、レギュレーション相の間、マルチプレクサ504により出力電圧VOUTに接続される。さらに、VOUTノードは、安定化ループを閉じるよう、レギュレーション相の間、フィードバックネットワーク506に接続される。増幅器501が安定すると、チャージポンプはチャージポンプモードに戻り、ポンプキャパシタ500の充電状態を補充することができる。
【0039】
当業者は、線形が利用可能な多数のインターリービング置換を認識するであろう。チャージポンプのクロック相は、ph1又はph2がアクティブにされる短レベルと同じくらい小さくてよい。代替的に、多数の完全なph1及びph2のサイクルは、レギュレーション相に入る前に完了されてよい。多数の出力は、同様に、チャージポンプ相に戻る前に、順次レギュレートされてよい。そのような置換、組み合わせ、グルーピングは、様々なエンジニアリング目的に対処することができる(例えば、1又はそれ以上の出力のインピーダンスを改善する、クロック推移カウントを減らす、等)。特定のチャージポンプ相及び安定化出力をインターリーブするそのような設計選択は、本発明の適用範囲内で考えられる。
【0040】
図3及び4に示されるマルチレール型チャージポンプ並びに従来のクラスG電力レールマルチプレクサ及び高電圧増幅器の組み合わせに関する本教示の重要な利点は、本教示の増幅器が、一般的な混合電圧CMOS ICプロセスにおいて利用可能な高電圧トランジスタよりも概してずっと電力が低く、高速且つ小型である低電圧トランジスタにより構成され得ることである。低電圧増幅器の整定性能の(高電圧増幅器に対する)改善は、増幅器が容易に出力を安定させることができることを意味する。言い換えると、これは、高電圧出力を複数の安定キャパシタに時分割して、単一の増幅器から多くの電圧を生成する可能性を開く。また、増幅器はより高速であるから、それは、非常に軽い負荷においては、出力リフレッシュサイクル間にシャットダウンすることができ、それにより、さらに一層電力を節約する。さらに、低電圧増幅器の静止電力損失は、実質的に、従来のクラスG増幅器に必要とされる等しい性能の高電圧増幅器よりも小さい。最後に、低電圧増幅器のレールは安定に保たれ得るので、従来のクラスG増幅器において見られるような増幅器レールのスイッチングに伴うバイアシング及びバイアス過渡電流は解消される。これらの要因の全ては、高インピーダンスの(しかし非常に低い電力の)チャージポンプの周りのループを閉じるよう増幅器を組み込む困難性及び電力を低減する。本教示は、閉ループ回収が、総電力に対する増幅器の影響を最小限とすることによって、実現されることを可能にする。
【0041】
当業者は、ディクソン型チャージポンプが、利用可能なフライングキャパシタを有する何らかの乗算又は分数チャージポンプによって置換され得ることを認識するであろう。例えば、一連の倍加回路が容易に設けられ、これは、高出力電圧の増幅器及び1又はそれ以上の直列なポンプキャパシタの周りのフィードバックループを閉じながら、低電圧増幅器出力により一連の1又はそれ以上のポンプ/フライングキャパシタの一方の側を駆動するために、本願で提示される考えを用いる。増幅器の電圧範囲を低く保つことによって、より速く且つより低い電力部品が線形増幅器に使用されてよく、バイアス電流による電力損失は最小限に留められ得る。チャージポンプの具体的なトポロジは、本教示の限定と見なされない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々2つの端子を有する1又はそれ以上のポンプキャパシタに接続されるクロックド・チャージポンプと、増幅器と、フィードバックネットワークとを有する安定化チャージポンプ回路の動作方法であって、
1又はそれ以上のポンプキャパシタ端子を切り替える又は駆動するチャージポンプ動作を実行するステップと、
チャージポンプ動作間で、前記増幅器が少なくとも1つのポンプキャパシタの端子を駆動し、前記フィードバックネットワークがポンプキャパシタの他の端子に接続して、出力電圧から前記増幅器への負帰還を提供する前記フィードバックネットワークにより所望の出力電圧を生成する電圧安定化動作を実行するステップと
を有する安定化チャージポンプ回路の動作方法。
【請求項2】
前記クロックド・チャージポンプはディクソン型チャージポンプである、
請求項1に記載の安定化チャージポンプ回路の動作方法。
【請求項3】
前記増幅器は、前記所望の出力電圧よりも低い出力電圧範囲を有する、
請求項1に記載の安定化チャージポンプ回路の動作方法。
【請求項4】
チャージポンプ動作の間に、各チャージポンプ動作は、ポンプキャパシタ及び電源の間で電荷を移動させ、
チャージポンプ動作間で、前記増幅器は、前記ポンプキャパシタに接続され、当該増幅器と直列な少なくとも1つのポンプキャパシタにより出力電圧を駆動する、
請求項1に記載の安定化チャージポンプ回路の動作方法。
【請求項5】
夫々2つの端子を有する1又はそれ以上のポンプキャパシタと、
チャージポンプ回路と、
増幅器回路と、
フィードバックネットワークと、
出力スイッチと、
安定化キャパシタに接続される出力端子と
を有し、
前記増幅器回路及び前記チャージポンプ回路の両方は、前記ポンプキャパシタの1又はそれ以上の端子を制御することができ、
前記出力スイッチは、前記出力端子及び前記安定化キャパシタをポンプキャパシタの1つの端子に接続し、その間、前記増幅器は、前記ポンプキャパシタの1又はそれ以上の代替の端子を制御し、前記フィードバックネットワークは、前記出力端子から前記増幅器への負帰還を提供するよう接続される、
安定化チャージポンプ回路。
【請求項6】
前記チャージポンプ回路はディクソン型チャージポンプである、
請求項5に記載の安定化チャージポンプ回路。
【請求項7】
前記増幅器は、前記出力端子を所望の電圧へと直接駆動するには不十分な出力電圧範囲を有する低電圧増幅器である、
請求項5に記載の安定化チャージポンプ回路。
【請求項8】
前記フィードバックネットワークは、スイッチド・キャパシタを有する、
請求項6に記載の安定化チャージポンプ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−503597(P2013−503597A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526029(P2012−526029)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062289
【国際公開番号】WO2011/023672
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(509297808)ストア、エレクトロニック、システムズ (3)
【氏名又は名称原語表記】STORE ELECTRONIC SYSTEMS
【Fターム(参考)】