説明

高周波回路用配線板

【目的】 軽薄短小化の達成が容易であるとともに、伝送線路の対向する両端部間における不要電磁的結合を低減ないし解消した高周波回路用配線板を提供する。
【構成】 絶縁性基板本体1の一主面に形設された非連続部を有するマイクロストリップライン構造伝送線路2a,2b の非連続部の対向する端部間に接地用導体層3に導通する第2の接地用導体層3aの両端を接地し、伝送線路2a,2b の非連続部の対向する端部間にほぼ対応する領域の他主面側の接地用導体層3を選択的に除去する。対向する伝送線路2a,2b 端部間の奇モード的電磁結合が低減する。また第2の接地用導体層3aの両端を接地した場合はこの作用がさらに増進され、さらに裏面側の接地用導体層3を選択的に除去した構成では、偶モード的電磁結合も低減されると同時に、端部間のインピーダンス低下を抑え、さらに導波管モードによる結合をも効果的にカットし得る。

【発明の詳細な説明】
【0001】[発明の目的]
【0002】
【産業上の利用分野】本発明は、高周波回路用配線板に係り、特にマイクロストリップライン構造伝送線路の非連続部の対向する端部間におけるアイソレーション向上を図った高周波回路用配線板に関する。
【0003】
【従来の技術】情報の高度化ないし情報量の増加に伴い、信号周波数も高域化され、たとえば移動電話など移動体通信分野では、高周波(マイクロ波)帯での高周波集積回路装置が使用されつつある。また、高周波集積回路装置の軽薄短小化などを目的として、たとえばセラミックを基材とした回路基板面に、所要の高周波集積回路を複数個配設する構成が採られている。
【0004】ところで、この種の高周波集積回路装置の構成には、一般に次のような構成の配線板が使用されている。すなわち、図6に要部構成を断面的に示すように、絶縁性基板本体1の一主面に非連続部を有するマイクロストリップライン構造伝送線路(以下単に伝送線路と称する)2が形設され、絶縁性基板本体1の他主面に接地用導体層3が形設された構成を成している。しかして、前記伝送線路2の非連続部の一端部、たとえば伝送線路2aの端部に所用の半導体素子4を配設し、この半導体素子4を他方の伝送線路2bの端部にボンディングワイヤ5などによって電気的に接続する形で実用に供されている。
【0005】また、前記高周波回路の構成に当たり、伝送線路2a,2b の対向する両端面部において容量性結合を意図しない結線方式を採用する場合、たとえば誘導性もしくは非容量性素子(受動素子および能動素子)を、伝送線路2aの端部に配設するとき、伝送線路2a,2b の対向する両端部間の不要電磁的結合を低減するため、前記伝送線路2a,2b の対向する両端部間を極力大きく設定している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記のように伝送線路2a,2b の対向する両端部間を極力大きく設定することは、絶縁性基板面における配線密度の低下となって、軽薄短小化が損なわれるばかりでなく、素子4と伝送線路2bとを接続する接続用リード(ボンディングワイヤなど)5の長さも増大するので不要な誘導成分の増加も不可避となる。ここで、前記誘導成分の増加ないし増大は、この種配線板を高周波回路用に用いる場合、構成する高周波回路の特性に大きく影響するので、その効果的な回避策(解消策)が望まれる。つまり、高周波集積回路装置の軽薄短小化を達成するには、前記したような問題の効果的な解決手段に負うところが大きいといえる。本発明は上記事情に対処してなされたもので、軽薄短小化の達成が容易であるとともに、伝送線路の対向する両端部間における不要電磁的結合を低減ないし解消して常にすぐれた機能を呈する高周波回路装置の構成に適する高周波回路用配線板の提供を目的とする。
【0007】[発明の構成]
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係る高周波回路用配線板は、絶縁性基板本体と、前記絶縁性基板本体の一主面に形設された非連続部を有するマイクロストリップライン構造伝送線路と、前記絶縁性基板本体の他主面に形設された接地用導体層とを具備する高周波回路用配線板において、前記マイクロストリップライン構造伝送線路の非連続部の対向する端部間に前記接地用導体層に導通する第2の接地用導体層を形設して成ることを特徴とし、さらに要すれば前記第2の接地用導体層の両端を接地したりあるいは伝送線路の非連続部の対向する端部間にほぼ対応する領域の裏面側の接地用導体層を選択的に除去した構成とするものである。
【0009】
【作用】上記構成においては、伝送線路の非連続部の対向する端部間に裏面の接地用導体層に導通する第2の接地用導体層を形設したことにより、前記対向する伝送線路端部間の直接的な、すなわち奇モード的な電磁結合が低減する。また前記第2の接地用導体層の両端を接地した場合はこの作用がさらに増進され、さらに裏面側の接地用導体層を選択的に除去した構成では偶モード的な電磁結合も低減されるとともに、特に高い周波数ではいわゆる導波管モードによる結合を効果的にカットし得る。
【0010】
【実施例】以下図1〜図4を参照して本発明の実施例を説明する。
【0011】図1は、本発明に係る高周波回路用配線板の要部構成例を断面的に、また図2は同じく要部構成例を平面的に示したもので、1は絶縁性基板たとえばセラミック基板、2(2a,2b) は前記セラミック基板1の一主面に形設された非連続部を有する伝送線路、3は前記セラミック基板1の他主面に形設された接地用導体層である。しかして、この高周波回路用配線板においては、伝送線路2a,2b の非連続部の対向する端部間に、他主面に形設されている接地用導体層3にスルホール3bを介して導通する第2の接地用導体層3aが形設されている。さらに、前記他主面に形設されている接地用導体層3は、伝送線路2a,2b の非連続部の対向する端部間にほぼ対応する領域が選択的に除去(点線内)された構成を成している。
【0012】換言すると、本発明に係る高周波回路用配線板は、従来の高周波回路用配線板の構成において、先ず伝送線路2a,2b の非連続部の対向する端部間に、他主面に形設されている接地用導体層3に導通する第2の接地用導体層3aを形設したことをもって特徴付けられる。さらに要すれば、前記例示したように本来の接地用導体層3について、所定領域の一部を切除(除去)した構成とする点で特徴付けられるものである。
【0013】前記構成例の高周波回路用配線板においては、伝送線路2a,2b の非連続部の対向する端部間に、たとえばスルホール3bなどにより他主面に形設されている接地用導体層3に導通する第2の接地用導体層3aを形設したことによって、比較的近接して対向する伝送線路2aと2bの端部間の直接的なすなわち奇モード的な電磁結合が容易に低減される。図3はこの状態を模式的に示したもので、近接して対向する伝送線路2a先端面と伝送線路2b先端面とが成す端部間の電磁結合の大部分は、端部間に形設されている第2の接地用導体層3aを介してなされ(実線)、直接の電磁結合(点線)が大幅に低減する。しかして、前者の電磁結合は、第2の接地用導体層3aによる接地が強化されるに従い急速に減少する。なお、前記接地力の強化には、第2の接地用導体層3aの両端側を接地することが有効である。
【0014】さらに、他主面に形設されている接地用導体層3の一部、すなわち伝送線路2a,2b の非連続部の対向する端部間にほぼ対応する領域を選択的に除去(点線内)した構成とした場合は、伝送線路2a,2b 端部間の偶モード的電磁結合も低減する。図4はこの状態を模式的に示したもので、近接して対向する伝送線路2a先端面と伝送線路2b先端面とが成す端部間に対応する領域の裏面(他面)の接地用導体層3が欠損しているため、前記伝送線路2a先端面および伝送線路2b先端面と接地用導体層3との間に発声する電場分布に基づく電磁結合が低減する。なお、このとき、伝送線路2a先端部および伝送線路2b先端部(破線内)のノードインピーダンスは裏面接地用導体層3の欠損の程度に応じて上昇する。
【0015】上記構成の高周波回路用配線板は、たとえば厚膜プロセスによりあるいは薄膜プロセスにより、従来のプロセスを大きく変更することなく容易に製造することができる。
【0016】なお、前記では一主面に形設した第2の接地用導体層3aの長さを伝送線路2a、2bの幅より長くしたが、この長さは伝送線路2a、2bの幅と同等程度でもよく、また伝送線路2a、2bの対向位置関係および第2の接地用導体層3aの形設位置も、たとえば図5に平面的に示すような構成としてもよい。
【0017】
【発明の効果】上記説明から分かるように、本発明に係る高周波回路用配線板によれば、マイクロストリップライン構造の伝送線路端部間を、比較的小さく設定した場合も、伝送線路端部のインピーダンス低下を回避しつつ、伝送線路端部間の偶モード、奇モードおよび導波管モードによる電磁的結合を効果的に低減し得る。しかも、前記伝送線路端部間に形設した第2の接地用導体層が、コプラナー的配置となるため、他面側の接地用導体層の選択的な除去に伴う伝送線路端部インピーダンス上昇を、前記第2の接地用導体層幅の調整および他面側の接地用導体層の除去範囲の調整によって容易に補償することも可能となる。すなわち、伝送線路端部のノードインピーダンスを、伝送線路本体のインピーダンスと独立した形で設定できるいう利点も生じる。
【0018】このように、伝送線路パターンの密度を低減させることなく、回路特性の向上を図り得ることから、本発明に係る高周波回路用配線板は、高周波回路装置の構成において実用上多くの利点をもたらすものといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高周波回路用配線板の要部構成例を示す断面図。
【図2】本発明に係る高周波回路用配線板の要部構成例を示す平面図。
【図3】本発明に係る高周波回路用配線板における伝送線路端部間の奇モード電磁的結合の状態を模式的に示す説明図。
【図4】本発明に係る高周波回路用配線板における伝送線路端部間の他面側に対する偶モード電磁的結合の状態を模式的に示す説明図。
【図5】本発明に係る高周波回路用配線板の他の要部構成例を示す平面図。
【図6】従来の高周波回路用配線板の要部構成を示す断面図。
【符号の説明】
1…絶縁性基板本体 2、2a、2b…マイクロストリップライン構造の伝送線路 3…接地用導体層 3a…第2の接地用導体層 3b…スルホール
4…半導体素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁性基板本体と、前記絶縁性基板本体の一主面に形設された非連続部を有するマイクロストリップライン構造伝送線路と、前記絶縁性基板本体の他主面に形設された接地用導体層とを具備する高周波回路用配線板において、前記マイクロストリップライン構造伝送線路の非連続部の対向する端部間に前記接地用導体層に導通する第2の接地用導体層を形設して成ることを特徴とする高周波回路用配線板。
【請求項2】 請求項1において、前記マイクロストリップライン構造伝送線路の非連続部の対向する端部間に形設された第2の接地用導体層の両端を接地して成る高周波回路用配線板。
【請求項3】 請求項1において、前記マイクロストリップライン構造伝送線路の非連続部の対向する端部間にほぼ対応する他主面側領域に接地用導体層が選択的に除去されて成る高周波回路用配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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