説明

高周波回路用配線板

【目的】 所定の信号用伝送線路を流れる高周波信号について、減衰,ノイズの乗り,波形の乱れなどのトラブルを解消する。
【構成】 ストリップライン構造の高周波信号用伝送線路5b、他の信号用伝送線路5d層およびこれらを互いに電気的に絶縁する絶縁体層5aとを具備し、かつ前記ストリップライン構造の高周波信号用伝送線路5b層に対し、この高周波信号用伝送線路5bを成すストリップライン構造の接地用導体層5cを介して積層的におよび/または高周波信号用伝送線路5b幅の3倍以上離隔させた同一面に他の信号用伝送線路5d層を配置して高周波信号の伝送線路5bをマイクロストリップ配線やコプレーナー線路(平衡形ストリップ線路)の構造とし、この高周波信号の伝送線路5bを他の信号伝送線路5dと静電的に離隔すると共に、表面側などに配置して入出力端子部に対して最短距離の配線とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高周波回路用配線板に係り、特に低周波信号用伝送線路層およびストリップライン構造の高周波信号用伝送線路を備えた高周波回路用配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえばビデオ装置などでは、高周波(マイクロ波)帯での高周波集積回路装置が使用されつつある。また、高周波集積回路装置の軽薄短小化などを目的として、たとえばセラミックを基材とした回路基板面に、所要の高周波集積回路を複数個配設する構成が採られている。
【0003】ところで、この種の高周波集積回路装置の構成には、一般に次のような構成の配線板が使用されている。すなわち、図4および図5に要部構成を断面的に示すごとく、樹脂系もしくはセラミック系の絶縁体層1を介して所要の信号伝送線路(パターン)2を、主面を含めて多層的に配置した構成の多層型の配線板3を用い、この配線板3面に所要の電子部品を搭載・実装して高周波集積回路装置を構成している。なお、これらの図において4はスルホール接続部である。そして、このような構成の多層型配線板においては、たとえばビデオ用の高周波集積回路装置の場合、前記信号伝送線路(パターン)2の一部、たとえば信号伝送線路2aを画像信号などの高周波信号用伝送線路として、また他の一部、たとえば信号伝送線路2bを画像信号制御用の低周波信号用伝送線路としてそれぞれ使用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のごとく、所定の信号伝送線路2の一部を画像信号などの高周波信号用伝送線路2a、他の一部を画像信号制御用の低周波信号用伝送線路2bとする構成の多層型配線板3の場合は、次のような不都合な問題がある。すなわち、この種の多層型配線板3においては、信号伝送線路2を流れる信号の周波数が低い(たとえば数10 MHz以下)と問題ないが、信号伝送線路2を流れる信号の周波数が高くなるほど機能的に問題を生じる。換言すると、多層型配線板3では配線層(信号伝送線路…パターン層)2が多層化するほど、配線層2間,配線層2と接地用導体層(図示せず)との間など、いわゆる導体層間に浮遊容量やリアクタンス成分を生じるが、信号周波数の低い場合は無視し得る。しかし、多層型配線板3に所要の電子部品を実装して、高周波回路装置として機能させた場合、前記浮遊容量やリアクタンス成分の影響により、各配線層2のインピーダンスが不均一化する。そして、この配線層2のインピーダンス不均一化は、流れる高周波信号を減衰したり、高周波信号にノイズを乗せたり、あるいは高周波信号の波形を乱したりするなどのトラブルの原因となっている。
【0005】本発明は上記事情に対処してなされたもので、所定の信号伝送線路を流れる高周波信号について、減衰,ノイズの乗り,波形乱れなどのトラブルを解消して、常にすぐれた機能を呈する高周波回路装置の構成に適する高周波回路用配線板の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る高周波回路用配線板は、ストリップライン構造の高周波信号用伝送線路、他の低周波信号用伝送線路層およびこれらを互いに電気的に絶縁する絶縁体層とを具備し、かつ前記ストリップライン構造の高周波信号用伝送線路層に対し、この高周波信号用伝送線路を成すストリップライン構造の接地用導体層を介して積層的におよび/または高周波信号用伝送線路幅の3倍以上離隔させた同一面に他の低周波信号用伝送線路層を配置して成ることを特徴とする。
【0007】すなわち、本発明に係る高周波回路用配線板は、高周波信号の伝送線路をマイクロストリップ線路やコプレーナー線路(平衡形ストリップ線路)の構造とし、かつこの高周波信号の伝送線路を他の低周波信号用伝送線路と静電的に離隔するとともに、表面側などに配置して入出力端子部に対して最短距離の配線とする構成を採っている。
【0008】
【作用】上記構成においては、高周波信号用の伝送線路がストリップライン構造を成し、またこのストリップライン構造の高周波信号用伝送線路と、他の低周波信号用伝送線路とが互いに静電的な影響を受け難い配置と成っている。したがって、前記高周波信号用伝送線路部に、浮遊容量やリアクタンス成分を極力小さく抑え得る線路構造が採れるため、これら浮遊容量やリアクタンス成分に起因する高周波信号の減衰,ノイズの乗り,波形乱れなどのトラブルを減少させ、信頼性の高い機能を呈することになる。
【0009】
【実施例】以下図1〜図3を参照して本発明の実施例を説明する。
【0010】図1は本発明に係る高周波回路用配線板の要部構成例を断面的に示したもので、5は、たとえばセラミックを絶縁層5aとして成る多層配線板、5bは前記多層配線板5の一主面に一体的に配置されたストリップライン構造の高周波信号用伝送線路、5cは前記高周波信号用伝送線路5bと離隔して多層配線板5に内層・配置されている接地導体層(ベタの GND層)、5dは他の低周波信号用伝送線路である。そして、前記他の低周波信号用伝送線路5dは、多層配線板5に内層・配置されたり、あるいは多層配線板5一主面に配置されているが、前記高周波信号用伝送線路5bに対して、いずれも静電的に離隔されている。すなわち、高周波信号用伝送線路5bに対して、他の低周波信号用伝送線路5dの配置禁止領域6が選択・設定され、これによって高周波信号用伝送線路5b部における浮遊容量やリアクタンス成分の影響が回避される。さらに具体的に示すと高周波信号用伝送線路5bの配置面においては、その高周波信号用伝送線路5b幅xの3倍以上離隔した位置に、接地導体を挟んで他の低周波信号用伝送線路5dが要すれば多層的に配置され、また、高周波信号用伝送線路5bに対して積層する位置においては、接地導体層5cを介して反対面側に他の信号用伝送線路5dが要すれば多層的に配置された構成を成している。 図2は本発明に係る高周波回路用配線板の他の要部構成例を断面的に示したものであり、基本的には前記図1に図示した場合と同様の構成を成している。すなわちこの構成例では、一主面にストリップライン構造の高周波信号用伝送線路5b、およびこれと所要の距離で離隔して他の信号用伝送線路5dが接地導体を挟んで設けられ、かつ他の主面(裏面)に接地導体層5cが配置されて成るセラミック配線板5′と、樹脂系の絶縁体を絶縁層として他の信号用伝送線路5dが内層・配置されて成る多層配線板5″とを、前記セラミック配線板5′の接地導体層5cを介して一体化した構成を成している。しかし、前記高周波信号用伝送線路5bに対して、他の信号用伝送線路5dは、高周波信号用伝送線路5b幅の3倍以上離隔した位置や接地導体層5cを介した位置に配置領域が選択・設定されており、換言すれば他の信号用伝送線路5dの配置領域については、一定の禁止領域6が設定されている。 図3は本発明に係る高周波回路用配線板のさらに他の要部構成例を斜視的に示したものである。この構成例は、一主面にストリップライン構造の高周波信号用伝送線路5b、およびこれと所要の距離で離隔して他の信号用伝送線路5dが多層的に設けられ、他の主面(裏面)に接地導体層5cが配置され、さらにその接地導体層5c側に他の低周波信号用伝送線路5dが多層的に配置されて成るセラミック配線板5′である。この構成においても、前記高周波信号用伝送線路5bに対して、他の信号用伝送線路5dは、高周波信号用伝送線路5b幅の3倍以上離隔した位置や接地導体層5cを介した位置に配置領域が選択・設定されている。換言すれば他の信号用伝送線路5dの配置領域については、一定の禁止領域6が設定されている。
【0011】本発明に係る高周波回路用配線板を用いて高周波実装回路装置を構成する場合、所要の低周波用電子部品は前記禁止領域6以外の領域、換言すると多層的に配置された他の低周波信号用伝送線路5d領域面に搭載・実装する。
【0012】なお、上記では本発明に係る高周波回路用配線板の構成例について説明したが、本発明は前記例示の構成に限定されるものでないことは勿論である。
【0013】
【発明の効果】上記説明から分かるように、本発明に係る高周波回路用配線板によれば、ストリップライン構造の高周波信号用伝送線路を、他の低周波信号用伝送線路と静電的に離隔して配置した構成を採っている。つまり、画像信号などの高周波信号を伝送する線路と、この画像信号などの高周波信号を制御する他の低周波信号を伝送する線路とを分離した形で配置し、他の低周波信号用伝送線路による電気的な悪影響を排除するとともに、前記電気的な悪影響を排除するための禁止領域を避けて他の信号用伝送線路を多層的に配置し得る。このため、高周波回路用配線板のコンパクト化,さらには高周波実装回路装置のコンバクト化なども容易に達成し得るし、また一方では、機能的な信頼性の向上を図り得るから、高周波回路装置の構成において実用上多くの利点をもたらすものといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高周波回路用配線板の要部構成例を示す断面図。
【図2】本発明に係る高周波回路用配線板の他の要部構成例を示す断面図。
【図3】本発明に係る高周波回路用配線板のさらに他の要部構成例を示す斜視図。
【図4】従来の高周波回路用配線板の要部構成を示す断面図。
【図5】従来の高周波回路用配線板の他の要部構成を示す断面図。
【符号の説明】
1,5′,5″…絶縁体層 2…信号伝送線路 2a…高周波信号伝送線路 2b,5d…他の低周波信号伝送線路 3,5…配線板 4…スルホール接続部 5a…絶縁体層 5b…高周波信号伝送線路 5c…接地導体層 6…他の低周波信号伝送線路配置禁止領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ストリップライン構造の高周波信号用伝送線路、低周波信号用伝送線路層およびこれらを互いに電気的に絶縁する絶縁体層とを具備し、前記ストリップライン構造の高周波信号用伝送線路層に対し、この高周波信号用伝送線路を成すストリップライン構造の接地用導体層を介して積層的におよび/または高周波信号用伝送線路幅の3倍以上離隔させた同一面に低周波信号用伝送線路層を配置して成ることを特徴とする高周波回路用配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平5−275862
【公開日】平成5年(1993)10月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−68411
【出願日】平成4年(1992)3月26日
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)