説明

高圧放電ランプ

【課題】高圧放電ランプの消灯時に液化する水銀が電極先端部や電極軸に巻装されたコイルの表面全体を覆うように付着したり、電極先端部に水銀球が付着生成されてランプの始動性・再始動性が低下することを防止すると共に、対向する電極間に水銀ブリッジが形成されてランプが点灯不能となることを防止する。
【解決手段】高圧放電ランプの電極3の電極軸7に巻装するコイル13が、その素線W間に間隔を空けた疎巻き状態で巻装されると共に、その素線Wと電極軸7との間に、ランプ消灯時に水銀を凝集付着させる細隙15、15…が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水銀が封入された発光管の放電容器内に対向して配設された電極の少なくとも一方の電極軸にコイルが巻装された高圧放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、高輝度で配光制御が容易な点光源に近い光を生じさせるために、発光管の放電容器内に封入する水銀量を0.15mg/mm以上とし、放電容器内に対向して配設する電極間の距離を1.5mm以下としたショートアーク型の超高圧水銀ランプが、液晶プロジェクタ、DLPプロジェクタ等の投影装置や各種照明装置の光源として普遍的に使用されている。
【0003】
この種の高圧放電ランプは、交流点灯型と直流点灯型とがあり、前者は放電容器内に対向して配設される電極の双方が、また、後者は電極の一方(陰極電極)が、細いタングステンロッドで成る電極軸の先端部側にタングステン線で成る放熱用のコイルをその素線間に間隔を空けない密巻き(密着巻き)状態で巻装させた構成となっている。
【0004】
水銀封入量を0.15mg/mm以上とした超高圧水銀ランプは、その消灯時に、放電容器内の水銀蒸気が凝縮して液体となった水銀が、他部より早く温度が低下する電極の表面に多量に付着して、ランプの始動性・再始動性が低下するという問題がある。
【0005】
そのため、従来は、電極間に印加する始動電圧を高めに設定したり、始動用の高周波パルスを印加したり、放電容器の外側に始動補助用のアンテナ線を配設して、ランプの始動性・再始動性を高めるようにしているが、水銀が電極先端部やコイルの表面全体を覆うように付着する場合は、その表面からの電子放射性が阻害されて速やかな始動・再始動が困難となるため、電極間に印加する始動用高周波パルスのパルスエネルギーを大きくするなどしている。
【0006】
しかし、高周波パルスのパルスエネルギーを大きくすれば、ランプ点灯回路に相応の絶縁対策を講じなければならないから、その絶縁コストが嵩み、点灯装置の小型化も制限されるという問題があるのみならず、ランプの始動時に点灯回路から強力なパルス性ノイズが発生して、当該ランプを光源として用いる液晶プロジェクタ等の電子装置に誤動作を生じさせるおそれもある。
【0007】
また、従来のランプは、電極軸に密巻き状態で巻装されたコイルの表面に付着する水銀が電極の先端部側へ移動して、その電極先端部に水銀球が付着生成された状態となり、ランプの始動性・再始動性が著しく低下することがある。特に、直流点灯型のランプは、その消灯時に液化する水銀が、陽極電極よりも小さくて冷めやすい陰極電極に集中的に付着するため、陰極電極の先端部やコイルの表面全体が水銀で覆われたり、電極先端部に水銀球が付着生成されるおそれが大きい。また、放電容器内に対向配設される一対の電極が同一形状、同一サイズに形成された交流点灯型のランプも、これを消灯してから一定時間経過後に稼動を停止する冷却ファンによって供給される冷却用エアが発光管の片端側から送風される場合は、その冷却用エアの上流側に位置する一方の電極が、下流側に位置する他方の電極よりも早く冷却されて、その一方の電極に水銀が集中的に付着するため、直流点灯型のランプと同様の不具合が生ずるおそれがある。
【0008】
また、水銀の封入量を0.15mg/mm以上とし、電極間距離を1.5mm以下としたショートアーク型の超高圧水銀ランプは、電極先端部に付着生成される水銀球が経時と共に成長してその大きさを増し、対向する電極間にその電極間を短絡状態とする水銀ブリッジが形成されて、ランプが点灯不能となり、ランプの点灯回路に過負荷を与えるなどの不具合を生ずるおそれがある。
【0009】
そこで、電極の表面に付着する水銀の量を極力減少させるために、例えば、ランプが点灯状態から消灯状態に移行する過渡時に、電極に供給するランプ電力を電極間のアーク放電が消滅しない程度(例えば、定格ランプ電力の1/2〜1/20程度)まで低減させて、その低減状態を一定時間(例えば、1〜20秒間)維持することにより、電極の温度を水銀の蒸発温度以上に保持する一方、放電容器の温度を水銀の蒸発温度以下に低下させて、ランプ消灯時に凝縮する水銀の大部分を放電容器の内表面に付着させる点灯装置(特許文献1参照)や、ランプが消灯されてから放電容器内の水銀蒸気が凝縮する温度まで冷却される一定時間経過後に、放電容器の内表面に付着した水銀が蒸発しない極短時間だけランプを再点灯させることにより、電極の表面に付着した水銀だけを蒸発させて、その蒸発した水銀を放電容器の内表面に付着させる点灯装置(特許文献2参照)などが提案されている。
【0010】
しかしながら、ランプ消灯時に上記のような点灯制御を行う点灯装置は、その制御系が煩雑なものとなる。また、上記の如く、放電容器内で液化する水銀を電極の表面に付着させずに、その水銀の大部分を放電容器の内表面に付着させると、ランプの外部から加わる衝撃や振動によって、放電容器の内表面に付着した水銀が凝集一体化して大きな水銀玉が形成され、その水銀玉が放電容器内を転がり動いて電極間に挟まり、電極間を短絡状態とする水銀ブリッジが形成されることがある。特に、持ち運び型あるいは携帯型の投影装置や照明装置等に設けられたランプは、その消灯中に衝撃や振動が加わる頻度が高いから、放電容器内に生じた水銀玉が電極間に挟まって水銀ブリッジを形成する確率も高い。
【0011】
そこで、一方の電極の中心軸と他方の電極の中心軸とを互いにずらして、その電極間に水銀ブリッジが形成されることを防止するランプ(特許文献3参照)が提案されている。当該ランプは、一方の電極の先端部に付着生成する水銀球が成長しても、その水銀球が他方の電極の先端部で成長する水銀球と接触して水銀ブリッジが形成されることを阻止することができ、また、万一、水銀ブリッジが形成されても、双方の電極の中心軸が互いにずれていることによって、その電極間に形成された水銀ブリッジに対して表面張力が対称に加わらないため、水銀ブリッジは、電極間に安定して維持しつづけることができず、電極間から取れやすいとされている。
【0012】
しかしながら、上記の如く、対向する電極が互いの中心軸をずらした軸ずれ状態で配設されていると、その電極間に形成されるアークの形状や輝度分布の均整度が損なわれて、ランプの光学特性が著しく低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−289379号公報
【特許文献2】特開2003−17280号公報
【特許文献3】特許第3330591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、ランプの消灯時に特許文献1及び2に記載されたような煩雑な点灯制御を行って電極の表面に付着する水銀の量を減少させなくとも、その水銀が電極先端部やコイルの表面全体を覆うように付着したり、電極先端部に水銀球が付着生成されることを確実に防止できるようにすると共に、特許文献3に記載された如く、対向する電極を互いの中心軸をずらした軸ずれ状態で配設しなくとも、電極間に水銀ブリッジが形成されることを確実に防止できるようにすることを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、水銀が封入された発光管の放電容器内に対向して配設された電極の双方もしくは一方の電極軸にコイルが巻装された高圧放電ランプにおいて、前記コイルが、その素線間に間隔を空けた疎巻き状態で電極軸に巻装されると共に、その素線と電極軸との間に、ランプ消灯時に水銀を凝集付着させる細隙が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る高圧放電ランプは、電極軸に巻装されたコイルが、その素線間に間隔を空けた疎巻き状態となっており、しかも、電極軸との間に細隙を形成するコイルの素線は、電極軸の表面から離間した状態となっているので、ランプ消灯時にその素線の温度が逸早く低下して、当該素線と電極軸との間に形成された細隙内に水銀が凝集付着する。また、コイルが素線間に間隔を空けて疎巻きされていることにより、その素線と電極軸との間に形成される細隙内に水銀が入り込みやすくなっているので、当該細隙の全体にわたって万遍なく水銀が付着することとなる。そして、その付着量が一定以上になると、コイルの素線間に生ずる間隙内に水銀が付着する。したがって、コイルの素線と電極軸との間に形成される細隙の部分と、コイルの素線間に生ずる間隙の部分とに、多量の水銀を付着させることができるから、ランプ消灯時に液化する水銀が電極の先端部やコイルの表面全体を覆うように付着してランプの始動性・再始動性が低下することが防止される。
【0017】
また、コイルの素線と電極軸との間に形成された細隙内に付着する水銀と、コイルの素線間に生じた間隙内に付着する水銀とが、凝集一体化して、一つの水銀塊を形成し、当該水銀塊が、電極軸に疎巻きされたコイルによって電極軸に縛り止められたような状態となるから、その水銀塊が電極の先端部側へ移動して電極先端部に水銀球が生成されたり、当該水銀球が成長して電極間に水銀ブリッジが形成されることが防止され、また、ランプの外部から加わる衝撃や振動によって電極に付着した水銀が脱落することも阻止されるので、電極から脱落した水銀と放電容器の内表面に付着した水銀とが凝集一体化して、電極間に水銀ブリッジを生ずるおそれのある大きな水銀玉を形成することも防止される。
【0018】
したがって、本発明は、ランプの消灯時に特許文献1及び2に記載されたような点灯制御を行って電極の表面に付着する水銀の量を減少させなくとも、電極先端部やコイルの表面全体が水銀で覆われてその表面からの電子放射性が阻害されたり、電極先端部に水銀球が付着生成されるなどして、ランプの始動性・再始動性が損なわれることを確実に防止できるという効果がある。また、特許文献3に記載されたように対向する電極を互いの中心軸をずらした状態で配設しなくとも、電極間に水銀ブリッジが形成されることを確実に防止できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る高圧放電ランプの実施例を示す全体図
【図2】実施例のランプに用いる電極の外観図
【図3】実施例のランプに用いる電極の部分断面図
【図4】実施例のランプに用いる電極の半製品の状態を示す外観図
【図5】実施例のランプに用いる電極に水銀が付着した状態を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る高圧放電ランプの一実施形態は、0.15mg/mm以上の水銀が封入された発光管の放電容器内に1.5mm以下の電極間距離で対向して配設された電極の双方もしくは一方の電極軸に、電極の過熱を防止する放熱用のコイルがその素線間に間隔を空けた疎巻き状態で巻装されると共に、そのコイルの素線と電極軸との間に、ランプ消灯時に水銀を凝集付着させる細隙が形成されている。
【0021】
また、素線間に間隔を空けた疎巻き状態で電極軸に巻装される前記コイルと、その素線と電極軸との間に形成される前記細隙が、素線間に間隔を空けない密巻き状態で電極軸に巻装されたコイルの表面と電極軸の表面を電解研磨処理することによって形成されている。
【実施例】
【0022】
図1に示す実施例の高圧放電ランプは、例えば製品検査の検査対象物の画像をCCDカメラ等で撮像する際にその検査対象物にライトガイドを介して光を照射する照明装置の光源などとして使用される90W直流型の超高圧水銀ランプであって、当該ランプは、石英ガラスで形成される発光管1の中間部を球状乃至楕円球状に膨らませて、最大外径約9mm、最大内径約4mm、内容積約60mmの放電容器2が形成され、当該放電容器2内に、約0.18mg/mmの水銀と、始動補助用ガスとなる約20kPa(常温時)のアルゴンガスと、黒化防止のためのハロゲンサイクルを生じさせる微量のハロゲンが封入されると共に、陰極電極3と陽極電極4が1〜1.5mmの短い電極間距離で互いに対向して配設されている。
【0023】
発光管1の両端側には、放電容器2の両端を気密に封止する一対の封止部5、6が形成され、その一方の封止部5に、陰極電極3の電極軸7の後端部側と、当該後端部に片端が溶接された金属箔8と、当該金属箔8の他端に溶接された電極リード9の片端側とが封着され、他方の封止部6に、陽極電極4の電極軸10の後端部側と、当該後端部に片端が溶接された金属箔11と、当該金属箔11の他端に溶接された電極リード12の片端側とが封着され、双方の封止部5、6の端末から突出した電極リード9、12を介してランプ電力が供給されるようになっている。
【0024】
図2(a)は陰極電極3の外観を拡大して示す図、図2(b)はその陰極電極3を先端部側から見た図、図3は陰極電極3の部分断面図であって、当該陰極電極3の電極軸7は、先端部側7aが細くて後端部7bが太い段付きロッドに形成され、その先端部側7aに、電極先端部3aの過熱を防止するためのコイル13が、線径約0.1〜0.17mmの素線W間に約0.05〜0.1mm程度の間隔を空けた疎巻き状態で巻装されると共に、その素線Wと電極軸7の先端部側7aとの間に、ランプ消灯時に水銀を凝集付着させる細隙15、15…が形成されている。なお、細隙15の最大幅は、約0.1mm程度となっている。また、電極軸7とコイル13の素線Wは、純度99.99%以上の高純度タングステンで形成されている。
【0025】
また、電極軸7のサイズは、全長が約7mm、先端部側7aが、長さ約1.7mm、外径約0.2mmに形成され、後端部側7bが、外径約0.4mmに形成されている。また、コイル13は、電極先端部3aとなる電極軸7の先端から約0.7mm後退した位置からその先端部側7aと後端部側7bとの境界位置にかけて約1mmの長さにわたって巻装される共に、電極軸7の先端部側7aを挟んで対峙する左右側部が、電極軸7の軸方向に沿ってその先端部側7aにスポット溶接法により加圧溶接されており、図中16R、16Lは、その溶接箇所である。
【0026】
なお、陰極電極3は、図4に示す陰極電極の半製品に後述のような電界研磨処理を施して作製されている。つまり、図4(a)は陰極電極3の半製品の状態を示す外観図、同図(b)はその半製品を電極の先端部側から見た図であって、当該半製品は、素線WXが線径約0.2mmのタングステン線で成るコイル13Xをその素線WX間に間隔を空けない密巻き状態で電極軸7Xの先端部側7aに巻装させて、16R及び16Lの2箇所を電極軸7Xの先端部側7aに溶接した構成となっている。
【0027】
図4の半製品に施す電界研磨処理は、電解研磨装置の陽極側と陰極側に夫々半製品と銅板を取り付けて、半製品のコイル13Xの部分と銅板とを電解液となる水酸化ナトリウム(NaOH)溶液に浸漬し、電解研磨装置の両極間に電圧を印加する。これにより、半製品のコイル13Xの部分に電界が集中して、当該コイル13Xと電極軸7Xとの溶接箇所16R、16Lを除くコイル13Xの素線WXの表面と当該素線WXが巻かれた電極軸7Xの先端部側7aの表面とが電気化学反応によりエッチングされて、コイル13Xの素線WX間に約0.05〜0.1mm程度の間隙が形成されると同時に、素線WXと電極軸7Xの先端部側7aとの間に最大幅約0.1mm程度の細隙が形成された状態となって、図2及び図3に示すような陰極電極3が完成する。
【0028】
なお、陰極電極3は、図4の半製品を電界研磨処理して作製せずとも、例えば、短径約0.2mm、長径約0.4mmの楕円形断面を有するコイル形成用の治具ロッドに、線径約0.1mmのタングステン線を約0.05〜0.1mm程度の線間ピッチで巻き付けて疎巻きコイルを形成し、当該疎巻きコイルを治具ロッドから抜き取って電極軸の先端部側に嵌め付け、その疎巻きコイルの左右側部を電極軸に溶接することによって作製することもできるが、図4の如く構成された半製品を電界研磨処理して作製する方が量産性に優れているという利点がある。
【0029】
上記の如く構成された実施例の高圧放電ランプは、これを消灯すると、陽極電極4よりも小さくて冷めやすい陰極電極3に水銀が集中的に付着することとなるが、当該陰極電極3は、電極軸7に巻装されたコイル13が素線W間に間隔を空けて疎巻きされた状態となっていることに加え、電極軸7との間に細隙15、15…を形成する素線Wの部分が電極軸7の表面から離間した状態となっているから、その素線Wの温度が他部よりも早く低下する。したがって、コイル13の素線Wと電極軸7との間に形成された細隙15、15…内に水銀が逸早く凝集付着することとなる。しかも、電極軸7に巻装されたコイル13は、その素線W間に約0.05〜0.1mm程度の間隙17、17…が生じているため、その素線Wと電極軸7との間に形成された何れの細隙15、15…内にも水銀が入り込みやすい状態となっているから、それら細隙15、15…のほぼ全体にわたって万遍なく水銀が付着する。
【0030】
そして、細隙15、15…に凝集付着する水銀が一定量を超えると、コイル13の素線W間に生ずる間隙17、17…に水銀が付着することとなる。つまり、コイル13の素線Wと電極軸7との間に形成される細隙15、15…の部分と、コイル13の素線W間に生ずる間隙17、17…の部分とに、多量の水銀を付着させることができるから、ランプ消灯時に凝縮して液化する水銀が陰極電極3の電極先端部3aやコイル13の表面全体を覆うように付着してランプの始動性・再始動性が低下することが防止される。
【0031】
また、コイル13の素線Wと電極軸7との間に形成された細隙15、15…に付着する水銀と、コイル13の素線W間に生じた間隙17、17…に付着する水銀とが、互いに凝集一体化して、図5の如き水銀塊Hgが形成され、当該水銀塊Hgは、電極軸7に巻かれたコイル13の素線Wによって電極軸7に縛り止められたような状態となって保持されるから、その水銀塊Hgが陰極電極3の先端部側へ移動することが阻止されて、電極先端部3aに水銀球が付着生成されることが防止されると同時に、その水銀塊Hgがランプの外部から加わる衝撃や振動により陰極電極3から脱落することが阻止されて、当該陰極電極3から脱落した水銀と放電容器2の内表面に付着する水銀とが凝集一体化して電極3、4間に水銀ブリッジを生ずるおそれのある大きな水銀玉が形成されることも防止される。
【0032】
したがって、ランプの消灯時に、電極3の表面に水銀を付着させないようにしたり、電極3の表面に付着した水銀を蒸発させて放電容器2の内表面に付着させるようにするランプの点灯制御を行わなくとも、電極先端部3aやコイル13の表面全体が水銀で覆われてその表面からの電子放射性が阻害されたり、電極先端部3aに水銀球が付着生成されるなどして、ランプの始動性・再始動性が損なわれることを確実に防止できる。また、対向する電極3、4を互いの中心軸をずらした軸ずれ状態で配設しなくとも、電極3、4間に水銀ブリッジが形成されることを確実に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、ショートアーク型超高圧水銀ランプの品質性能や信頼性の向上に資するものである。
【符号の説明】
【0034】
1・・・発光管
2・・・放電容器
3・・・陰極電極
7・・・電極軸
13・・・コイル
W・・・コイルの素線
15・・・細隙
16R・・溶接箇所
16L・・溶接箇所
17・・・間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水銀が封入された発光管の放電容器内に対向して配設された電極の双方もしくは一方の電極軸にコイルが巻装された高圧放電ランプにおいて、前記コイルが、その素線間に間隔を空けた疎巻き状態で電極軸に巻装されると共に、その素線と電極軸との間に、ランプ消灯時に水銀を凝集付着させる細隙が形成されていることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
素線間に間隔を空けた疎巻き状態で電極軸に巻装される前記コイルと、その素線と電極軸との間に形成される前記細隙が、素線間に間隔を空けない密巻き状態で電極軸に巻装されたコイルの表面と電極軸の表面を電解研磨処理して形成されている請求項1記載の高圧放電ランプ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−40284(P2011−40284A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186825(P2009−186825)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】