説明

高圧放電ランプ

【課題】ランプの始動時に、コイルに生じた熱が電極本体の先端に伝達されることにより、電極本体の先端からアークが形成されて確実に定常点灯される高圧放電ランプの提供。
【解決手段】発光部の両端に封止部が形成されてなる発光管と、この発光管における発光部内にその軸方向に沿って互いに対向するよう配置された一対の電極とを備えてなり、前記一対の電極のうち一方の電極は、他方の電極に対向する先端から後端に向かって拡径するテーパ部およびこのテーパ部の後端から前記封止部に向かって伸びる電極軸部よりなる電極本体と、この電極本体の外周面に沿って螺旋状に巻き回されたコイルと有してなる高圧放電ランプであって、前記コイルには、前記他方の電極に接近する前端部が前記電極本体の外周面に溶着されることによって前端側溶着部が形成されており、当該前端側溶着部は、少なくともその一部が前記テーパ部に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプロジェクタ装置の光源、半導体素子製造用または液晶表示素子製造用の露光装置の光源、或いは紫外線を利用した検査装置の光源などに用いられる高圧放電ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばプロジェクタ装置の光源、半導体基板、液晶基板およびプリント基板等にパターン形成を行うための露光装置の光源、或いは紫外線を利用した検査装置の光源としては、ショートアーク型の高圧放電ランプが用いられている。この高圧放電ランプは、発光管の発光部内に、一対の電極が互いに対向するよう配置されると共に、水銀、希ガスおよび必要に応じて用いられる他の封入物が封入されて構成されている。このような高圧放電ランプの電極としては、先端から後端に向かって拡径するテーパ部およびこのテーパ部の後端から連続して封止部に向かって伸びる電極軸部よりなる電極本体と、この電極本体における電極軸部の外周面に螺旋状に巻き回されたコイルとよりなるものが知られている(特許文献1乃至特許文献3参照。)。
【0003】
図5は、従来の高圧放電ランプの一例における電極の構成を示す説明図である。この高圧放電ランプにおいては、両端に封止部(図示省略)が形成された発光管80の発光部81内に、陰極として動作する一方の電極90と、陽極として動作する他方の電極95とが、発光管80の軸方向に沿って互いに対向するよう配置されている。
一方の電極90は、他方の電極95に対向する先端から後端に向かって拡径するテーパ部92およびこのテーパ部92の後端から封止部に向かって伸びる電極軸部93よりなる電極本体91と、この電極本体91における電極軸部93に螺旋状に巻き回されたコイル94とにより構成されている。コイル94においては、他方の電極95に接近する前端部が電極本体91における電極軸部93の外周面に溶着され、当該前端部に続く他の部分が、電極軸部93の外周面から離間するよう配置されている。
また、他方の電極95は、一方の電極90に対向するよう配置された電極頭部96と、この電極頭部96の後端から発光管90の封止部に向かって伸びる電極軸部97とにより構成されている。
【0004】
このような高圧放電ランプにおいては、一方の電極90を陰極とし、他方の電極95を陽極として両者の間に直流電圧が印加されると、一方の電極90におけるコイル94に電界が集中して生ずることにより、コイル94が高い温度に加熱され、その結果、コイル94から電子が放出されることにより、コイル94と他方の電極95との間にグロー放電が生じる。そして、このグロー放電によってコイル94が更に加熱され、当該コイル94に生じた熱が、電極本体91における電極軸部93を介してテーパ部92に伝達される結果、テーパ部92の先端が高い温度に加熱され、これにより、テーパ部92の先端すなわち電極本体91の先端と他方の電極95の先端との間にアークが形成される。
【0005】
しかしながら、上記の高圧放電ランプにおいては、以下のような問題があることが判明した。
すなわち、コイル94に生じた熱は、電極本体91における電極軸部93に伝達されるが、電極軸部93における軸方向に垂直な断面積が軸方向にわたって均一であるため、図6の矢印z1,z2で示すように、電極軸部93に伝達された熱は、電極軸部93の前端側および後端側の両方向に向かって分散される。そのため、電極軸部93に伝達された熱が、テーパ部92の先端92aすなわち電極本体91の先端に高い割合で伝達されず、従って、電極本体91の先端が十分に高い温度に加熱されず、その結果、電極本体91の先端からアークが形成されず、確実に定常点灯することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−93364号公報
【特許文献2】特開2006−79986号公報
【特許文献3】特開2008−243792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、ランプの始動時に、電極本体に設けられたコイルに生じた熱が電極本体の先端に伝達されることにより、当該電極本体の先端からアークが形成されて確実に定常点灯することができる高圧放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高圧放電ランプは、発光部の両端に封止部が形成されてなる発光管と、この発光管における発光部内にその軸方向に沿って互いに対向するよう配置された一対の電極とを備えてなり、
前記一対の電極のうち一方の電極は、他方の電極に対向する先端から後端に向かって拡径するテーパ部およびこのテーパ部の後端から前記封止部に向かって伸びる電極軸部よりなる電極本体と、この電極本体の外周面に沿って螺旋状に巻き回されたコイルと有してなる高圧放電ランプであって、
前記コイルには、前記他方の電極に接近する前端部が前記電極本体の外周面に溶着されることによって前端側溶着部が形成されており、
当該前端側溶着部は、少なくともその一部が前記テーパ部に形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の高圧放電ランプにおいては、前記コイルには、その後端部が前記電極軸部の外周面に溶着されることによって後端側溶着部が形成されていることが好ましい。
このような高圧放電ランプにおいては、前記コイルは、2ターン以上3ターン以下の範囲で電極本体に巻き回されていることが好ましい。
また、前記コイルにおける前端側溶着部および後端側溶着部が、前記電極軸部の軸方向に並ぶよう形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高圧放電ランプによれば、電極本体の先端部が先端から後端に向かって拡径するテーパ部とされており、コイルにおける電極本体との前端側溶着部は、少なくともその一部がテーパ部に形成されていることにより、ランプの始動時には、コイルに生じた熱が前端側溶着部を介してテーパ部に伝達され、この熱はテーパ部の先端すなわち電極本体の先端に向かって伝達されるので、当該電極本体の先端からアークが形成されて確実に定常点灯することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の高圧放電ランプの一例における構成を示す説明図である。
【図2】図1に示す高圧放電ランプにおける一方の電極の構成を示す説明図である。
【図3】電極本体における熱伝達の状態を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明の高圧放電ランプの他の例における構成を示す説明図である。
【図5】従来の高圧放電ランプの一例における電極の構成を示す説明図である。
【図6】従来の高圧放電ランプの電極本体における熱伝達の状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の高圧放電ランプの一例における構成を示す説明図である。
この高圧放電ランプは、直流電源によって点灯駆動されるものであって、内部に放電空間を形成する外形が略球状の発光部11と、この発光部11の両端の各々に一体に形成された、それぞれ管軸に沿って外方に伸びるロッド状の一方の封止部12および他方の封止部13とよりなる発光管10を有する。この発光管10における発光部11内には、陰極として動作する一方の電極20および陽極として動作する他方の電極30がそれぞれ発光管10の管軸方向に沿って互いに対向するよう配置されている。
【0013】
発光管10は例えば石英ガラスにより構成され、この発光管10の発光部11内には、例えば0.05mg/mm3 以上の水銀、希ガス、ハロゲンなどが封入されており、メタルハライドランプを構成する場合には、これらの封入物の他に、ガリウム、鉄などの金属が封入される。
発光部11内に封入される希ガスは、点灯始動性を改善するためのものであり、その封入圧は、静圧で例えば13kPaである。また、希ガスとしては、アルゴンガスを好適に用いることができる。
発光部11内に封入されるハロゲンは、発光部11内においてハロゲンサイクルを形成すると共に、これにより、電極物質が発光部11の内壁に付着することを抑制するためのものであり、水銀その他の金属との化合物の形態で封入される。ハロゲンとしては、沃素、臭素、塩素などを用いることができる。
【0014】
一方の電極20は、図2にも拡大して示すように、他方の電極30に対向する先端22aから後端に向かって拡径するテーパ部22およびこのテーパ部22の後端から発光管10の一方の封止部12に向かって伸びる電極軸部23よりなる電極本体21と、この電極本体21の外周面に沿って螺旋状に巻き回されたコイル25とにより構成されている。
図示の例では、電極軸部23は、テーパ部22に連続する前端部分23aと、この前端部分23aの外径より小さい外径を有する後端部分23bとよりなり、電極軸部23の前端部分23aの外周面にコイル25が巻き回され、一方、電極軸部23の後端部分23bは、一方の封止部12に埋設されて保持されている。
電極本体21およびコイル25の各々は、例えばタングステンによって構成されており、コイル25を構成するタングステンには、当該コイル25からの電子の放出が良好に行われるよう、Y2 3 、ThO2 などのエミッター物質がドープされていてもよい。
【0015】
コイル25には、他方の電極30に接近する前端部が電極本体21の外周面に例えばレーザ溶接により溶着されることによって前端側溶着部26が形成されていると共に、後端部が電極本体21の外周面に例えばレーザ溶接により溶着されることによって後端側溶着部27が形成されている。そして、前端側溶着部26は、少なくともその一部が電極本体21におけるテーパ部22に形成され、一方、後端側溶着部27は、電極本体21における電極軸部23に形成されている。
また、コイル25は、その前端側溶着部26と後端側溶着部27との間の部分が、電極本体21の外周面から離間した状態で設けられていることが好ましい。
【0016】
コイル25の前端側溶着部26は、その全部が電極本体21におけるテーパ部22に形成されていても、その一部のみが電極本体21におけるテーパ部22に形成されている、すなわちテーパ部22および電極軸部23の両方に跨がるよう形成されてもよいが、前端側溶着部26は、テーパ部22の軸方向における中央位置より後端側に形成されていることが好ましい。前端側溶着部26がテーパ部22の軸方向における中央位置より前端側に形成されている場合には、コイル25の前端部がテーパ部22の先端22aに近接して位置されることにより、コイル25に形成されたアークの起点がテーパ部22の先端22aに移動しにくくなるため、良好な点光源を得ることが困難となると共に、コイル25が過熱されることにより、コイル25を構成する物質が蒸散しやすくなる、という問題がある。
また、コイル25の前端部以外の部分が電極本体21のテーパ部22に溶着される場合には、得られる溶着部より前端側の部分が電極本体21に溶着されていない状態でテーパ部22の先端22aに近接することにより、コイル25に形成されたアークの起点がテーパ部26の先端22aに移動しにくくなるため、上記と同様の問題が生じる。
【0017】
また、コイル25は、2ターン以上3ターン以下の範囲で電極本体21に巻き回されていることが好ましい。コイル25の巻回数が2ターン未満である場合には、コイル25のターン数が少ないため電極軸部23を保温させる効果が下がり、電極本体21の先端へアークが移行せず、不点灯を引き起こすおそれが生じる。またコイル25が設けられていないことと同じような現象となるため、グロー放電の状態が長く持続されることからエネルギーが高い状態で電界集中が発生しやすくなり黒化を引き起こすおそれが生じる。一方、コイル25の巻回数が3ターンを超える場合には、当該コイル25の後端部が発光管10の管壁に近接して位置されることにより、加熱によって蒸散したコイル25を構成する物質が発光部11の内面に付着するため、当該発光部11の黒化が生じやすくなる、という問題がある。
【0018】
また、コイル25における前端側溶着部26および後端側溶着部27は、電極軸部23の軸方向に並ぶよう形成されていることが好ましい。このような構成によれば、コイル25の前端部および後端部を例えばレーザ溶接によって溶着する際には、コイル25の前端部および後端部のいずれか一方を溶着した後、電極本体21を軸方向に移動させて他方を溶着すればよく、電極本体21をその軸を中心として回転する必要がないため、前端側溶着部26および後端側溶着部27を高い効率で形成することができる。
【0019】
コイル25は、金属細線を所要の長さに切断し、一方の電極20における電極本体21に巻き回すことによって形成される。金属細線を切断する際には、当該金属細線の切断面にバリなどが生じるが、このようなバリが存在すると、ランプの始動時において、バリが形成された箇所に電界が集中して生じやすく、そのため、バリが高い温度に加熱されることにより溶融して発光部10の内面に付着する結果、発光管11の黒化が生じるおそれがある。従って、コイル25の前端部および後端部を電極本体21の外周面に溶着する際には、バリを十分に溶融させて前端側溶着部26および後端側溶着27を形成することが好ましい。
【0020】
コイル25の線径は、当該コイル25が巻き回される電極軸部23の前端部分23aの外径などを考慮して適宜設定されるが、例えば電極軸部23の前端部分23aの外径が0.8〜7.2mmである場合には、コイル25の線径は、0.25〜0.3mmであることが好ましい。
【0021】
他方の電極30は、発光管10の管軸に沿って一方の電極20に対向するよう配置された略円柱状の電極頭部31と、この電極頭部31の後端から発光管10の他方の封止部13に向かって伸びる電極軸部32とにより構成されている。電極軸部32は、電極頭部31に連続する前端部分32aと、この前端部分32aの外径より小さい外径を有する後端部分32bとよりなり、電極軸部32の後端部分32bは、他方の封止部13に埋設されて保持されている。
また、図示の例では、他方の電極30における電極軸部32の前端部分32aには、その外周面に沿って螺旋状に巻き回された、例えばタングステンよりなる溶着制御用コイル35が設けられている。このような溶着制御用コイル35が設けられることにより、以下のような効果が得られる。すなわち、高圧放電ランプにおける他方の封止部13を形成する際には、発光管材における他方の封止部となる部分およびその周辺部分をバーナーなどによって加熱するが、その際に、他方の電極30における電極軸部32の前端部分32aの外径が大きい場合には、他方の電極30における電極軸部32の前端部分32aが発光管材における発光部となる部分の内壁面に溶着しやすい。そして、発光管材における発光部となる部分の内壁面に電極軸部32が溶着した状態で発光管材が冷却されると、発光管材を構成する材料と電極軸部32を構成する材料との熱膨張の差によって、得られる発光管10における電極軸部32の溶着部分に大きな応力が生じる結果、発光管10における電極軸部32の溶着部分が破損するおそれが生じる。而して、電極軸部32の前端部分32aに溶着制御用コイル35が設けられることにより、その外周面に凹凸が形成される結果、高圧放電ランプにおける他方の封止部13を形成する際には、発光管10の内壁面に溶着することが抑制されるため、発光管10に破損が生じることが防止される。
【0022】
発光管10における一方の封止部12の内部には、モリブデンよりなる金属箔14が気密に埋設されており、この金属箔14の内端には、一方の電極20における電極軸部23の後端が溶接されて電気的に接続され、一方、金属箔14の外端には、一方の封止部12の外端から外方に突出する外部リード15が溶接されて電気的に接続されている。
発光管10における他方の封止部13の内部には、モリブデンよりなる金属箔16が気密に埋設されており、この金属箔16の内端には、他方の電極30における電極軸部32の後端が溶接されて電気的に接続され、一方、金属箔16の外端には、他方の封止部13の外端から外方に突出する外部リード17が溶接されて電気的に接続されている。
【0023】
上記の高圧放電ランプにおいては、一方の電極20を陰極とし、他方の電極30を陽極として両者の間に直流電圧が印加されると、一方の電極20におけるコイル25に電界が集中して生ずることにより、コイル25が高い温度に加熱され、その結果、コイル25から電子が放出されることにより、コイル25と他方の電極30との間にグロー放電が生じる。そして、このグロー放電によってコイル25が更に加熱され、図3の矢印xに示すように、コイル25に生じた熱が電極本体21におけるテーパ部22に伝達される。
ここで、テーパ部22をその軸方向に垂直な面に沿って軸方向に等間隔で多数の部分に分割したと仮定すると、当該テーパ部22は先端22aから後端に向かって拡径するものであるため、互いに隣接する2つの分割部分において、先端側に位置する分割部分は、その体積が後端側に位置する分割部分の体積より小さいものであり、従って、先端側に位置する分割部分は、後端側に位置する分割部分より小さい熱容量を有する。而して、熱は熱容量の小さい部分に向かって高い割合で伝達されやすい性質を有することから、或る分割部分が有する熱は、この分割部分の先端側に隣接する分割部分に高い割合で伝達され、更に、先端側に隣接する分割部分に高い割合で伝達される。
従って、コイル25からテーパ部22に伝達された熱は、図3の矢印yで示すように、当該テーパ部22においてその先端22aに向かって高い割合で伝達され、これにより、テーパ部22の先端22aが高い温度に加熱され、その結果、テーパ部22の先端22aすなわち電極本体21の先端と他方の電極30の先端との間にアークが形成される。
【0024】
このように、本発明の高圧放電ランプによれば、一方の電極20における電極本体21の先端部が先端22aから後端に向かって拡径するテーパ部22とされており、コイル25における電極本体21との前端側溶着部26は、少なくともその一部がテーパ部22に形成されていることにより、ランプの始動時には、コイル25に生じた熱が前端側溶着部26を介してテーパ部22に伝達され、この熱はテーパ部22の先端22aすなわち電極本体21の先端に向かって伝達されるので、当該電極本体21の先端からアークが形成されて確実に定常点灯することができる。
【0025】
また、コイル25に、その後端部が電極本体21における電極軸部23の外周面に溶着されることによって後端側溶着部27が形成されていることにより、金属細線を切断する際に生じるバリなどが無くなるので、バリが存在することによって生じる電界集中が回避されるため、発光部11に黒化が生じることを防止または抑制することができる。
【0026】
以上、本発明の高圧放電ランプの実施の一形態について説明したが、本発明は、上記の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば図1に示す高圧放電ランプは、直流電源によって点灯駆動されるものであるが、交流電源によって駆動される構成であってもよい。
このような高圧放電ランプにおいては、一方の電極および他方の電極の両方が陰極または陽極として動作するため、図4に示すように、他方の電極40が一方の電極20と同様の構成のもの、具体的には、他方の電極40が、一方の電極20に対向する先端から後端に向かって拡径するテーパ部42およびこのテーパ部42の後端から他方の封止部13に向かって伸びる電極軸部43よりなる電極本体41と、この電極本体41の外周面に沿って螺旋状に巻き回されたコイル45と有してなり、コイル45には、一方の電極20に接近する前端部が電極本体41の外周面に溶着されることによって前端側溶着部46が形成され、前端側溶着部46は、少なくともその一部がテーパ部42に形成されているものであることが好ましく、コイル45には、その後端部が電極軸部43の外周面に溶着されることによって後端側溶着部47が形成されていることが更に好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の高圧放電ランプの具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
〈実施例1〉
図1および図2に示す構成に従い、下記の仕様の高圧放電ランプを合計で50本作製した。
発光管(10)は、石英ガラスよりなり、発光部(11)の最大外径が9.4mm、発光部(11)の内容積が53.8mm3 のものである。
発光管(10)の発光部(11)内には、水銀、臭素ガスおよびアルゴンガスが封入され、水銀の封入量が0.05mg/mm3 、臭素ガスの封入量が3×10-3μmol/mm3 、アルゴンガスの封入圧が静圧で13Paである。
一方の電極(20)の電極本体(21)は、テーパ部(22)の先端径が0.1mm、テーパ部(22)における軸方向の長さが0.962mm、テーパ部(22)のテーパ角度(テーパ部の中心軸と外周面とのなす角)が約40°、電極軸部(23)における前端部分(23a)の外径が0.8mm、後端部分(23b)の外径が0.43mm、電極軸部(23)の全長が9.2mmのものである。
一方の電極(20)のコイル(25)は、その線径が0.25mm、巻回数が2ターンで、コイル(25)のコイル長(前端位置から後端位置までの巻回軸方向の長さ)が3.3mmのものであり、前端側溶着部26が、テーパ部(22)および電極軸部(23)の両方に跨がるよう形成されている。
他方の電極(30)は、電極頭部(31)の外径が1.8mm、電極頭部(31)の長さが3.0mm、電極軸部(32)における前端部分(32a)の外径が1.45mm、後端部分(32b)の外径が0.53mm、電極軸部(32)の長さが10.0mmのものである。
また、一方の電極(20)と他方の電極(30)との間の電極間距離が1.05mmである。
【0029】
上記の50本の高圧放電ランプについて、直流電源によって130Wの電力を600秒間供給した後、電力の供給を600秒間停止する操作を合計で500回行う点灯消灯試験を行い、500回の電力供給のうち1回以上点灯しなかった高圧放電ランプの数を調べた。
また、供給電力を160W、200Wおよび310Wに変更したこと以外は上記と同様にして点灯消灯試験を行い、500回の電力供給のうち1回以上定常点灯しなかった高圧放電ランプの数を調べた。
以上、結果を表1に示す。
【0030】
〈比較例1〉
一方の電極のコイルの巻回数を4ターン(コイル長6.6mm)とし、コイルの前端側溶着部を、電極軸部の外周面におけるテーパ部との境界線から後端に向かって0.2mm離間した位置に形成したこと以外は実施例1と同様にして、高圧放電ランプを合計で50本作製し、これらの高圧放電ランプについて点灯消灯試験を行った。
以上、結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1の結果から明らかなように、実施例1に係る高圧放電ランプにおいては、供給電力が130W、160W、200Wおよび310Wのいずれであっても、確実に定常点灯されることが確認された。
これに対して、比較例1に係る高圧放電ランプにおいては、供給電力が130W、160W、200Wおよび310Wのいずれにおいても、定常点灯しないものがあった。これは、コイルの前端側溶着部が電極軸部の外周面に形成されているため、ランプの始動時において、電極軸部に伝達された熱が当該電極軸部の前端側および後端側の両方向に分散されて、テーパ部の先端に高い割合で伝達されなかったためであると推測される。
【符号の説明】
【0033】
10 発光管
11 発光部
12 一方の封止部
13 他方の封止部
14 金属箔
15 外部リード
16 金属箔
17 外部リード
20 一方の電極
21 電極本体
22 テーパ部
22a 先端
23 電極軸部
23a 前端部分
23b 後端部分
25 コイル
26 前端側溶着部
27 後端側溶着部
30 他方の電極
31 電極頭部
32 電極軸部
32a 前端部分
32b 後端部分
35 溶着制御用コイル
40 他方の電極
41 電極本体
42 テーパ部
43 電極軸部
45 コイル
46 前端側溶着部
47 後端側溶着部
80 発光管
81 発光部
90 一方の電極
91 電極本体
92 テーパ部
92a 先端
93 電極軸部
94 コイル
95 他方の電極
96 電極頭部
97 電極軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部の両端に封止部が形成されてなる発光管と、この発光管における発光部内にその軸方向に沿って互いに対向するよう配置された一対の電極とを備えてなり、
前記一対の電極のうち一方の電極は、他方の電極に対向する先端から後端に向かって拡径するテーパ部およびこのテーパ部の後端から前記封止部に向かって伸びる電極軸部よりなる電極本体と、この電極本体の外周面に沿って螺旋状に巻き回されたコイルと有してなる高圧放電ランプであって、
前記コイルには、前記他方の電極に接近する前端部が前記電極本体の外周面に溶着されることによって前端側溶着部が形成されており、
当該前端側溶着部は、少なくともその一部が前記テーパ部に形成されていることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
前記コイルには、その後端部が前記電極軸部の外周面に溶着されることによって後端側溶着部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
前記コイルは、2ターン以上3ターン以下の範囲で電極本体に巻き回されていることを特徴とする請求項2に記載の高圧放電ランプ。
【請求項4】
前記コイルにおける前端側溶着部および後端側溶着部が、前記電極軸部の軸方向に並ぶよう形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の高圧放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−22780(P2012−22780A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157534(P2010−157534)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】