高層建物用のサポート柱およびその構築方法
【課題】軸力をより小断面で受けられる高強度で安価な高層建物用のサポート柱およびその構築方法を提供する。
【解決手段】高層建物に用いられるサポート柱20であって、鋼管(ニ)内部にコンクリート(ネ)が充填され、スパイラルフープ(セ)で補強した芯鉄筋(ソ)が配筋された鋼管コンクリート柱(ウ)からなり、この鋼管コンクリート柱(ウ)の上下端に設けられるパネルゾーンブロック(ア)に別の芯鉄筋(マ)を挿通して鋼管コンクリート柱(ウ)とパネルゾーンブロック(ア)とを接続固定し、軸力を小断面で受けられるようにした。
【解決手段】高層建物に用いられるサポート柱20であって、鋼管(ニ)内部にコンクリート(ネ)が充填され、スパイラルフープ(セ)で補強した芯鉄筋(ソ)が配筋された鋼管コンクリート柱(ウ)からなり、この鋼管コンクリート柱(ウ)の上下端に設けられるパネルゾーンブロック(ア)に別の芯鉄筋(マ)を挿通して鋼管コンクリート柱(ウ)とパネルゾーンブロック(ア)とを接続固定し、軸力を小断面で受けられるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高層建物用のサポート柱およびその構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すような高層建物の構造およびサポート柱が知られている。図17および図18に示すように、特許文献1の高層建物の構造は、建物の全高にわたって上下方向に連続的に設けた筒状の構造体であるチューブ架構を、建物の主架構としたものである。この高層建物の構造は、建物の外周に位置する外周チューブ架構Aと、その内側に同軸的に設けた内周チューブ架構Bと、さらにその内側に設けたコアチューブ架構Cとによる三重のチューブ架構(いわゆるトリプルチューブ構造)からなる。内周チューブ架構Bの柱は、高強度で小断面のサポート柱9により構成してある。
【0003】
このサポート柱9は、地上から最上階まで、内周チューブ架構Bの各階の上下の段差梁8の間に設置してある。段差梁8は、各階の床スラブ6、7と剛に接合している。また、高層建物の1階床スラブ3の下に基礎底版2を設置し、基礎底版2の下に杭1を設置する。
【0004】
外周チューブ架構Aは、柱梁4により構成してある。コアチューブ架構Cは、コアウォール5により構成してある。内周床スラブ6は、コアチューブ架構Cと内周チューブ架構Bとの間に設けられ、外周床スラブ7は、内周チューブ架構Bと外周チューブ架構Aとの間に設けられている。
【0005】
また、サポート柱9は、図19および図20に示すように、厚肉鋼管9aの上下端に鋼板9cを溶接し、鋼管9aの内部にセメント系硬化体としてのコンクリート9bを充填して構成され、軸力を小断面で受けられる高強度の柱としたものである。このサポート柱9と、上下の段差梁8との接合は、鋼板9cと段差梁8を上下に貫通する固定用ボルト9dによって強力に接合される。なお、段差梁8の内部には鉄筋9eが配筋してある。
【0006】
上記のように構成される高層建物の構造においては、地震力が作用して高層建物の各階がせん断変形した場合には、サポート柱9の接合部分はピン接合のように挙動し、サポート柱9と鋼板9cはしなやかに変形する。適切に設計すること等によって、結果的には、内周チューブ架構Bの段差梁8に地震力によるモーメントは働かないか、あるいは問題とならないほど寡少とすることができる。
【0007】
一方、建物の鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁との接合構造として、特許文献2に示される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−58241号公報
【特許文献2】特開2001−11944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記の高層建物用のサポート柱において、軸力をより小断面で受けられる高強度で安価な構造の開発が求められていた。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、軸力をより小断面で受けられる高強度で安価な高層建物用のサポート柱およびその構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る高層建物用のサポート柱は、高層建物に用いられるサポート柱であって、鋼管内部にコンクリートが充填され、スパイラル補強した芯鉄筋が配筋された鋼管コンクリート柱からなり、この鋼管コンクリート柱の上下端に設けられるパネルゾーンブロックに別の芯鉄筋を挿通して前記鋼管コンクリート柱と前記パネルゾーンブロックとを接続固定し、軸力を小断面で受けられるようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る高層建物用のサポート柱は、上述した請求項1において、梁鉄筋およびスラブアンカー筋の少なくとも一方を、前記パネルゾーンブロックに機械式継手で接合したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3に係る高層建物用のサポート柱の構築方法は、上述した請求項1または2に記載の高層建物用のサポート柱の構築方法であって、前記鋼管コンクリート柱の下面から突出する芯鉄筋を、前記パネルゾーンブロックの上面に設けたスプライススリーブ内に挿入して、前記鋼管コンクリート柱を前記パネルゾーンブロックに接続固定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項4に係る高層建物用のサポート柱の構築方法は、上述した請求項3において、前記スプライススリーブと前記芯鉄筋との間の隙間にグラウト材を充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る高層建物用のサポート柱によれば、高層建物に用いられるサポート柱であって、鋼管内部にコンクリートが充填され、スパイラル補強した芯鉄筋が配筋された鋼管コンクリート柱からなり、この鋼管コンクリート柱の上下端に設けられるパネルゾーンブロックに別の芯鉄筋を挿通して前記鋼管コンクリート柱と前記パネルゾーンブロックとを接続固定し、軸力を小断面で受けられるようにしたので、従来よりも軸力をより小断面で受けられる高強度で安価なサポート柱を提供することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法によれば、上述した高層建物用のサポート柱の構築方法であって、前記鋼管コンクリート柱の下面から突出する芯鉄筋を、前記パネルゾーンブロックの上面に設けたスプライススリーブ内に挿入して、前記鋼管コンクリート柱を前記パネルゾーンブロックに接続固定するので、従来よりも軸力をより小断面で受けられる高強度で安価なサポート柱を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の実施例を示す側断面図である。
【図2】図2は、図1の詳細平面図である。
【図3】図3は、図1のサポート柱を左右方向から見た側断面図である。
【図4】図4は、図3の詳細平面図である。
【図5】図5は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ1を示す図である。
【図6】図6は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ2を示す図である。
【図7】図7は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ3を示す図である。
【図8】図8は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ4を示す図である。
【図9】図9は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ5を示す図である。
【図10】図10は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ6を示す図である。
【図11】図11は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ7を示す図である。
【図12】図12は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ8を示す図である。
【図13】図13は、本発明に係るサポート柱を用いた高層建物の構造の実施例を示す側断面図である。
【図14】図14は、図13の各階の平面図である。
【図15】図15は、本発明に係るサポート柱を用いた高層建物の構造によるメガストラクチュアの側断面図である。
【図16】図16は、図15のメガストラクチュア階(L、M、N階および最上階)の平面図である。
【図17】図17は、従来のサポート柱を用いた高層建物の構造の実施例を示す側断面図である。
【図18】図18は、図17の各階の平面図である。
【図19】図19は、従来のサポート柱の詳細側断面図である。
【図20】図20は、従来のサポート柱の詳細平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る高層建物用のサポート柱およびその構築方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例では、図17および図18に示すような段差梁8を有する三重のチューブ架構の高層建物に適用する場合について説明するが、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
[高層建物用のサポート柱]
まず、本発明に係る高層建物用のサポート柱について図1〜図4を参照しながら説明する。
【0020】
図1および図2(または図3および図4)に示すように、本発明に係る高層建物用のサポート柱20は、高層建物に用いられるものであって、厚肉の角型鋼管(ニ)内部に高強度コンクリート(ネ)が充填され、スパイラルフープ(セ)で補強した芯鉄筋(ソ)が配筋された鋼管コンクリート柱(ウ)からなる。この鋼管コンクリート柱(ウ)の上下端に設けられるパネルゾーンブロック(ア)に挿入連結芯鉄筋(マ)を挿通して鋼管コンクリート柱(ウ)とパネルゾーンブロック(ア)とを接続固定し、軸力を小断面で受けられるようにしてある。
【0021】
鋼管コンクリート柱(ウ)内部の上部にはスプライススリーブ(サ)が、下部には機械式継手(エ)が設けてある。鋼管(ニ)の上下端面にはベースプレート(ホ)が溶接されている。また、芯鉄筋(ソ)から数箇所出された枝鉄筋(タ)にスパイラルフープ(セ)が固定され、鋼管コンクリート柱(ウ)内部の高強度コンクリート(ネ)と鉄筋とが一体化して一本のサポート柱20を構成している。
【0022】
このため、本発明によれば、従来よりも軸力をより小断面で受けられる高強度で安価なサポート柱20を提供することができる。
【0023】
ここで、サポート柱20の鋼管(ニ)の断面形状は角型に限るものではなく、高強度コンクリートなどのセメント系硬化体を充填することで軸力を小断面で受けられる高強度の柱とし得るものであれば丸型やその他任意の断面形状のものを用いることができ、さらに、H鋼や四角鋼などの厚肉鋼材を複数組み合わせたものを用いてもよい。
【0024】
なお、サポート柱20の芯鉄筋(ソ)やスパイラルフープ(セ)といった補強筋は、高層建物の上層階と下層階で柱の断面の大きさを一定にするために必要な部材であるが、充填される高強度コンクリート(ネ)の強度のみの調整でこの断面を同一の大きさに形成することも可能である。
【0025】
パネルゾーンブロック(ア)は、鉄板を溶接(ス)して外周を構成し、この内部4隅にベースプレート(ホ)を固定するための機械式継手(エ)とネジ鉄筋(キ)を設けるとともに、フープ(カ)を設けて高強度コンクリートを充填したものである。工場生産することで生産性を向上させることができる。このパネルゾーンブロック(ア)内部には、梁(チ)(図1参照)と連続させるための機械式継手(エ)とネジ鉄筋(キ)を設けている。また、床(フ)(図3参照)と一体化するのに用いるスラブアンカー筋(ハ)を固定するための機械式継手(エ)とネジ鉄筋(キ)を設けている。
【0026】
スラブアンカー筋(ハ)は、パネルゾーンブロック(ア)の機械式継手(エ)に接合されている。梁鉄筋(ナ)は、中継ボルト(コ)を介してパネルゾーンブロック(ア)の機械式継手(エ)に接合されている。これにより、パネルゾーンブロック(ア)は、サポート柱(ウ)、梁(チ)、床(フ)を一体化する。
【0027】
ここで、図1および図2に示すように、梁(チ)は現場打ちコンクリートで構築してもよいし、PC化(プレキャスト化)して生産性を上げるようにしてもよい。また、梁(チ)内にはスターラップ(オ)が設けることができる。図3および図4に示すように、床(フ)はハーフPCスラブ(テ)のみならず、鉄筋を組み込んだ鉄板型枠で構成してもよい。
【0028】
このパネルゾーンブロック(ア)の構造的特性としては、鉛直方向に大きな軸力がかかるため、外側に膨張変形しようとする大きな力がかかる。そこで本実施例では、これを抑え込み応力のバランスを取るために周囲四面を鉄板(シ)で囲んで溶接(ス)すると同時に、内部のベースプレート(ホ)のネジ鉄筋(キ)にフープ(カ)を設置することで、より強度を増強している。なお、高層建物の上層階で軸力の小さい範囲には、この周囲四面の補強用の鉄板(シ)は必ずしも必要ではない。
【0029】
また、ベースプレート(ホ)は、固定用ボルト(イ)によりパネルゾーンブロック(ア)側の機械式継手(エ)に柱鉛直調整ボルト(ヘ)を介して固定される。また、パネルゾーンブロック(ア)の下部と梁(チ)との間にはスチールアングル(ツ)が設けられている。
【0030】
上側のベースプレート(ホ)とパネルゾーンブロック(ア)との間には、下側の角型鋼管(ニ)に設けたグラウト注入孔(ノ)およびこれと連通するスプライススリーブ(サ)を通じてグラウト材(ク)が充填されている。また、下側のベースプレート(ホ)と鉄板(シ)の間には、鉄板(シ)に設けたグラウト注入孔(ノ)を通じてグラウト材(ク)が充填されている。パネルゾーンブロック(ア)の上側のベースプレート(ホ)の上側には、モルタル(ヒ)が充填されている。
【0031】
[高層建物用のサポート柱の構築方法]
次に、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法について図5〜図12を参照しながら説明する。ここで、図5〜図12の(a)、(b)はそれぞれ平断面図、側断面図である。本発明のサポート柱は、ステップ1〜ステップ8の施工手順により下階から上階に向かって構築されていく。
【0032】
図5に示すように、ステップ1では、既にN−1階に設置してあるサポート柱20の上部に、工場生産したパネルゾーンブロック(ア)を設置する。サポート柱20上部のベースプレート(ホ)に固定用ボルト(イ)を入れる。
【0033】
図6に示すように、ステップ2では、ベースプレート(ホ)をパネルゾーンブロック(ア)内の機械式継手(エ)にボルト(イ)で固定し、鉄板(シ)で下蓋をする。
【0034】
図7に示すように、ステップ3では、このパネルゾーンブロック(ア)内の機械式継手(エ)にスラブアンカー筋(ハ)および梁鉄筋(ナ)を中継ボルト(コ)にて各部に固定する。これにより、図8に示すようなステップ4の状態となる。
【0035】
図9に示すように、ステップ5では、梁の側部に梁型枠(ミ)を設置するとともに、パネルゾーンブロック(ア)内の上側の機械式継手(エ)に中継ボルト(コ)を挿入する。
【0036】
図10に示すように、ステップ6では、パネルゾーンブロック(ア)のスプライススリーブ(サ)に挿し入れた芯鉄筋(ソ)を上階側のサポート柱20の中心の機械式継手(エ)に固定する。この芯鉄筋(ソ)は、挿入連結芯鉄筋(マ)(図1を参照)となるものであり、長さが一定で、階高さを正確に確保するために用いられる。上階側のサポート柱20は、この芯鉄筋(ソ)によって「やじろべい」状態となる。平面視で4本ある柱鉛直調整ボルト(ヘ)で高さを調整して、上階側のサポート柱20を鉛直に立たせ、固定用ボルト(イ)で固定する。
【0037】
図11に示すように、ステップ7では、下階側のサポート柱20のグラウト注入孔(ノ)を通じてスプライススリーブ(サ)にグラウト材(ク)を注入し、芯鉄筋(ソ)とスプライススリーブ(サ)の間の隙間に充填する。また、鉄板(シ)のグラウト注入孔(ノ)を通じてベースプレート(ホ)とパネルゾーンブロック(ア)の隙間にグラウト材(ク)を充填する。
【0038】
図12に示すように、最後のステップ8では、上側のグラウト材(ク)の硬化後にその上部にモルタル(ヒ)を充填し平滑面とする。このようにして、N−1階からN階間のサポート柱20が構築される。
【0039】
[サポート柱を用いた高層建物の構造]
次に、本発明に係るサポート柱を用いた高層建物の構造について図13〜図16を参照しながら説明する。
【0040】
図13および図14に示すように、高層建物の構造100は、建物の全高にわたって上下方向に連続的に設けた筒状の構造体であるチューブ架構を、建物の主架構としたものである。この高層建物の構造100は、建物の外周に位置する外周チューブ架構Aと、その内側に同軸的に設けた内周チューブ架構Bと、さらにその内側に設けたコアチューブ架構Cとによる三重のチューブ架構(いわゆるトリプルチューブ構造)からなる。内周チューブ架構Bの柱は、本発明のサポート柱20により構成してある。
【0041】
サポート柱20は、地上から最上階まで、内周チューブ架構Bの各階の上下の段差梁8の間に設置してある。段差梁8は、各階の床スラブ6、7と剛に接合している。また、高層建物の1階床スラブ3の下に基礎底版2を設置し、基礎底版2の下に杭1を設置する。
【0042】
外周チューブ架構Aは、柱梁4により構成してある。コアチューブ架構Cは、コアウォール5により構成してある。このコアウォールは、開口部分を有する耐震壁としてもよい。また、コアチューブ架構を柱梁で構成してもよい。内周床スラブ6は、コアチューブ架構Cと内周チューブ架構Bとの間に設けられ、外周床スラブ7は、内周チューブ架構Bと外周チューブ架構Aとの間に設けられている。
【0043】
上記のように構成した本発明の高層建物の構造100において、地震力が作用して高層建物の各階がせん断変形した場合には、サポート柱20の接合部分はピン接合のように挙動し、サポート柱20とベースプレート(ホ)はしなやかに変形する。適切に設計すること等によって、結果的には、内周チューブ架構Bの段差梁8に地震力によるモーメントは働かないか、あるいは問題とならないほど寡少とすることができる。
【0044】
上記の実施の形態において、最上階と所定の中間階にメガストラクチュア梁を設けた構成としてもよい。この場合、図15および図16に示すように、最上階と中間の特定の階(L、M、N階)に設けたメガストラクチュア梁12でコアチューブ架構C、メガストラクチュア内周チューブ架構10およびメガストラクチュア外周チューブ架構11を格子状に剛に接合して一体の巨大構造体を構築する。そして、メガストラクチュア内周チューブ架構10に設けたサポート柱20を、L、M、N階に設けたメガストラクチュア梁12で支持する。このようにしても、上記の実施の形態と同一の作用効果を得ることができる。
【0045】
次に、本発明の効果について説明する。
高層建物の内周チューブ架構Bに高強度で小断面のサポート柱を設けることにより、下記の(1)〜(5)の効果を得られる。
【0046】
(1)内周チューブ架構Bをサポート柱20で受けることにより、サポート柱20なしの場合(床厚t=300mm程度)と比較して床スラブ6、7部分が短スパンとなり、床厚tをt=200mm程度に薄くしても重量衝撃音レベルの性能を確保することができる。
【0047】
(2)超高層集合住宅など1棟で数万m2の床面積がある高層建物の場合、t=約300mmの床厚が約200mm程度に低減でき、床自体の荷重の大幅な低減と床躯体数量の大幅低減とが可能となり、より安価な建物を提供することができる。
【0048】
(3)短スパンの床を実現できるので工法も多様になり、鉄板に先組み鉄筋を組み込んだ鉄板型枠等の安価な床も採用可能となり、よりコスト削減効果が図れる。
【0049】
(4)サポート柱20は鋼管にコンクリートを充填することにより細くできることから(400角程度)、プランに及ぼす影響もきわめて小さい。
【0050】
(5)以上の効果は、高層建物の構造が耐震、制震、中間階免震、免制震構造いずれの構造でも効果は変わらない。
【0051】
以上説明したように、本発明に係る高層建物用のサポート柱によれば、高層建物に用いられるサポート柱であって、鋼管内部にコンクリートが充填され、スパイラル補強した芯鉄筋が配筋された鋼管コンクリート柱からなり、この鋼管コンクリート柱の上下端に設けられるパネルゾーンブロックに別の芯鉄筋を挿通して前記鋼管コンクリート柱と前記パネルゾーンブロックとを接続固定し、軸力を小断面で受けられるようにしたので、従来よりも軸力をより小断面で受けられる高強度で安価なサポート柱を提供することができる。
【0052】
また、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法によれば、上述した高層建物用のサポート柱の構築方法であって、前記鋼管コンクリート柱の下面から突出する芯鉄筋を、前記パネルゾーンブロックの上面に設けたスプライススリーブ内に挿入して、前記鋼管コンクリート柱を前記パネルゾーンブロックに接続固定するので、従来よりも軸力をより小断面で受けられる高強度で安価なサポート柱を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明に係る高層建物用のサポート柱およびその構築方法は、チューブ架構を主架構とする高層建物に有用であり、特に、高層集合住宅などの床面積が比較的大きい高層建物に適している。
【符号の説明】
【0054】
ア パネルゾーンブロック
イ 固定用ボルト
ウ,20 サポート柱
エ 機械式継手
オ スターラップ
カ フープ
キ ネジ鉄筋
ク グラウト材
コ 中継ボルト
サ スプライススリーブ
シ 鉄板
ス 溶接部
セ スパイラルフープ
ソ 芯鉄筋
タ 枝鉄筋
チ 梁(現場打ちコンクリート梁)
ツ スチールアングル
テ 床ハーフPCスラブ
ナ 梁鉄筋
ニ 角型鋼管
ネ 高強度コンクリート
ノ グラウト注入孔
ハ スラブアンカー筋
ヒ モルタル
フ 床(現場打ちコンクリート床)
ヘ 柱鉛直調整ボルト
ホ ベースプレート
マ 挿入連結芯鉄筋
ミ 梁型枠
A 外周チューブ架構
B 内周チューブ架構
C コアチューブ架構
1 杭
2 基礎底版
3 1階床スラブ
4 外周チューブ架構の柱梁
5 コアチューブ架構のコアウォール
6 内周床スラブ
7 外周床スラブ
8 段差梁(内周チューブ架構)
9 従来のサポート柱
10 メガストラクチュア内周チューブ架構
11 メガストラクチュア外周チューブ架構
12 メガストラクチュア梁
9a 厚肉鋼管
9b コンクリート
9c 鋼板
9d 固定用ボルト
9e 鉄筋
100 高層建物の構造
【技術分野】
【0001】
本発明は、高層建物用のサポート柱およびその構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すような高層建物の構造およびサポート柱が知られている。図17および図18に示すように、特許文献1の高層建物の構造は、建物の全高にわたって上下方向に連続的に設けた筒状の構造体であるチューブ架構を、建物の主架構としたものである。この高層建物の構造は、建物の外周に位置する外周チューブ架構Aと、その内側に同軸的に設けた内周チューブ架構Bと、さらにその内側に設けたコアチューブ架構Cとによる三重のチューブ架構(いわゆるトリプルチューブ構造)からなる。内周チューブ架構Bの柱は、高強度で小断面のサポート柱9により構成してある。
【0003】
このサポート柱9は、地上から最上階まで、内周チューブ架構Bの各階の上下の段差梁8の間に設置してある。段差梁8は、各階の床スラブ6、7と剛に接合している。また、高層建物の1階床スラブ3の下に基礎底版2を設置し、基礎底版2の下に杭1を設置する。
【0004】
外周チューブ架構Aは、柱梁4により構成してある。コアチューブ架構Cは、コアウォール5により構成してある。内周床スラブ6は、コアチューブ架構Cと内周チューブ架構Bとの間に設けられ、外周床スラブ7は、内周チューブ架構Bと外周チューブ架構Aとの間に設けられている。
【0005】
また、サポート柱9は、図19および図20に示すように、厚肉鋼管9aの上下端に鋼板9cを溶接し、鋼管9aの内部にセメント系硬化体としてのコンクリート9bを充填して構成され、軸力を小断面で受けられる高強度の柱としたものである。このサポート柱9と、上下の段差梁8との接合は、鋼板9cと段差梁8を上下に貫通する固定用ボルト9dによって強力に接合される。なお、段差梁8の内部には鉄筋9eが配筋してある。
【0006】
上記のように構成される高層建物の構造においては、地震力が作用して高層建物の各階がせん断変形した場合には、サポート柱9の接合部分はピン接合のように挙動し、サポート柱9と鋼板9cはしなやかに変形する。適切に設計すること等によって、結果的には、内周チューブ架構Bの段差梁8に地震力によるモーメントは働かないか、あるいは問題とならないほど寡少とすることができる。
【0007】
一方、建物の鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁との接合構造として、特許文献2に示される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−58241号公報
【特許文献2】特開2001−11944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記の高層建物用のサポート柱において、軸力をより小断面で受けられる高強度で安価な構造の開発が求められていた。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、軸力をより小断面で受けられる高強度で安価な高層建物用のサポート柱およびその構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る高層建物用のサポート柱は、高層建物に用いられるサポート柱であって、鋼管内部にコンクリートが充填され、スパイラル補強した芯鉄筋が配筋された鋼管コンクリート柱からなり、この鋼管コンクリート柱の上下端に設けられるパネルゾーンブロックに別の芯鉄筋を挿通して前記鋼管コンクリート柱と前記パネルゾーンブロックとを接続固定し、軸力を小断面で受けられるようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る高層建物用のサポート柱は、上述した請求項1において、梁鉄筋およびスラブアンカー筋の少なくとも一方を、前記パネルゾーンブロックに機械式継手で接合したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3に係る高層建物用のサポート柱の構築方法は、上述した請求項1または2に記載の高層建物用のサポート柱の構築方法であって、前記鋼管コンクリート柱の下面から突出する芯鉄筋を、前記パネルゾーンブロックの上面に設けたスプライススリーブ内に挿入して、前記鋼管コンクリート柱を前記パネルゾーンブロックに接続固定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項4に係る高層建物用のサポート柱の構築方法は、上述した請求項3において、前記スプライススリーブと前記芯鉄筋との間の隙間にグラウト材を充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る高層建物用のサポート柱によれば、高層建物に用いられるサポート柱であって、鋼管内部にコンクリートが充填され、スパイラル補強した芯鉄筋が配筋された鋼管コンクリート柱からなり、この鋼管コンクリート柱の上下端に設けられるパネルゾーンブロックに別の芯鉄筋を挿通して前記鋼管コンクリート柱と前記パネルゾーンブロックとを接続固定し、軸力を小断面で受けられるようにしたので、従来よりも軸力をより小断面で受けられる高強度で安価なサポート柱を提供することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法によれば、上述した高層建物用のサポート柱の構築方法であって、前記鋼管コンクリート柱の下面から突出する芯鉄筋を、前記パネルゾーンブロックの上面に設けたスプライススリーブ内に挿入して、前記鋼管コンクリート柱を前記パネルゾーンブロックに接続固定するので、従来よりも軸力をより小断面で受けられる高強度で安価なサポート柱を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の実施例を示す側断面図である。
【図2】図2は、図1の詳細平面図である。
【図3】図3は、図1のサポート柱を左右方向から見た側断面図である。
【図4】図4は、図3の詳細平面図である。
【図5】図5は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ1を示す図である。
【図6】図6は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ2を示す図である。
【図7】図7は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ3を示す図である。
【図8】図8は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ4を示す図である。
【図9】図9は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ5を示す図である。
【図10】図10は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ6を示す図である。
【図11】図11は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ7を示す図である。
【図12】図12は、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法のステップ8を示す図である。
【図13】図13は、本発明に係るサポート柱を用いた高層建物の構造の実施例を示す側断面図である。
【図14】図14は、図13の各階の平面図である。
【図15】図15は、本発明に係るサポート柱を用いた高層建物の構造によるメガストラクチュアの側断面図である。
【図16】図16は、図15のメガストラクチュア階(L、M、N階および最上階)の平面図である。
【図17】図17は、従来のサポート柱を用いた高層建物の構造の実施例を示す側断面図である。
【図18】図18は、図17の各階の平面図である。
【図19】図19は、従来のサポート柱の詳細側断面図である。
【図20】図20は、従来のサポート柱の詳細平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る高層建物用のサポート柱およびその構築方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例では、図17および図18に示すような段差梁8を有する三重のチューブ架構の高層建物に適用する場合について説明するが、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
[高層建物用のサポート柱]
まず、本発明に係る高層建物用のサポート柱について図1〜図4を参照しながら説明する。
【0020】
図1および図2(または図3および図4)に示すように、本発明に係る高層建物用のサポート柱20は、高層建物に用いられるものであって、厚肉の角型鋼管(ニ)内部に高強度コンクリート(ネ)が充填され、スパイラルフープ(セ)で補強した芯鉄筋(ソ)が配筋された鋼管コンクリート柱(ウ)からなる。この鋼管コンクリート柱(ウ)の上下端に設けられるパネルゾーンブロック(ア)に挿入連結芯鉄筋(マ)を挿通して鋼管コンクリート柱(ウ)とパネルゾーンブロック(ア)とを接続固定し、軸力を小断面で受けられるようにしてある。
【0021】
鋼管コンクリート柱(ウ)内部の上部にはスプライススリーブ(サ)が、下部には機械式継手(エ)が設けてある。鋼管(ニ)の上下端面にはベースプレート(ホ)が溶接されている。また、芯鉄筋(ソ)から数箇所出された枝鉄筋(タ)にスパイラルフープ(セ)が固定され、鋼管コンクリート柱(ウ)内部の高強度コンクリート(ネ)と鉄筋とが一体化して一本のサポート柱20を構成している。
【0022】
このため、本発明によれば、従来よりも軸力をより小断面で受けられる高強度で安価なサポート柱20を提供することができる。
【0023】
ここで、サポート柱20の鋼管(ニ)の断面形状は角型に限るものではなく、高強度コンクリートなどのセメント系硬化体を充填することで軸力を小断面で受けられる高強度の柱とし得るものであれば丸型やその他任意の断面形状のものを用いることができ、さらに、H鋼や四角鋼などの厚肉鋼材を複数組み合わせたものを用いてもよい。
【0024】
なお、サポート柱20の芯鉄筋(ソ)やスパイラルフープ(セ)といった補強筋は、高層建物の上層階と下層階で柱の断面の大きさを一定にするために必要な部材であるが、充填される高強度コンクリート(ネ)の強度のみの調整でこの断面を同一の大きさに形成することも可能である。
【0025】
パネルゾーンブロック(ア)は、鉄板を溶接(ス)して外周を構成し、この内部4隅にベースプレート(ホ)を固定するための機械式継手(エ)とネジ鉄筋(キ)を設けるとともに、フープ(カ)を設けて高強度コンクリートを充填したものである。工場生産することで生産性を向上させることができる。このパネルゾーンブロック(ア)内部には、梁(チ)(図1参照)と連続させるための機械式継手(エ)とネジ鉄筋(キ)を設けている。また、床(フ)(図3参照)と一体化するのに用いるスラブアンカー筋(ハ)を固定するための機械式継手(エ)とネジ鉄筋(キ)を設けている。
【0026】
スラブアンカー筋(ハ)は、パネルゾーンブロック(ア)の機械式継手(エ)に接合されている。梁鉄筋(ナ)は、中継ボルト(コ)を介してパネルゾーンブロック(ア)の機械式継手(エ)に接合されている。これにより、パネルゾーンブロック(ア)は、サポート柱(ウ)、梁(チ)、床(フ)を一体化する。
【0027】
ここで、図1および図2に示すように、梁(チ)は現場打ちコンクリートで構築してもよいし、PC化(プレキャスト化)して生産性を上げるようにしてもよい。また、梁(チ)内にはスターラップ(オ)が設けることができる。図3および図4に示すように、床(フ)はハーフPCスラブ(テ)のみならず、鉄筋を組み込んだ鉄板型枠で構成してもよい。
【0028】
このパネルゾーンブロック(ア)の構造的特性としては、鉛直方向に大きな軸力がかかるため、外側に膨張変形しようとする大きな力がかかる。そこで本実施例では、これを抑え込み応力のバランスを取るために周囲四面を鉄板(シ)で囲んで溶接(ス)すると同時に、内部のベースプレート(ホ)のネジ鉄筋(キ)にフープ(カ)を設置することで、より強度を増強している。なお、高層建物の上層階で軸力の小さい範囲には、この周囲四面の補強用の鉄板(シ)は必ずしも必要ではない。
【0029】
また、ベースプレート(ホ)は、固定用ボルト(イ)によりパネルゾーンブロック(ア)側の機械式継手(エ)に柱鉛直調整ボルト(ヘ)を介して固定される。また、パネルゾーンブロック(ア)の下部と梁(チ)との間にはスチールアングル(ツ)が設けられている。
【0030】
上側のベースプレート(ホ)とパネルゾーンブロック(ア)との間には、下側の角型鋼管(ニ)に設けたグラウト注入孔(ノ)およびこれと連通するスプライススリーブ(サ)を通じてグラウト材(ク)が充填されている。また、下側のベースプレート(ホ)と鉄板(シ)の間には、鉄板(シ)に設けたグラウト注入孔(ノ)を通じてグラウト材(ク)が充填されている。パネルゾーンブロック(ア)の上側のベースプレート(ホ)の上側には、モルタル(ヒ)が充填されている。
【0031】
[高層建物用のサポート柱の構築方法]
次に、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法について図5〜図12を参照しながら説明する。ここで、図5〜図12の(a)、(b)はそれぞれ平断面図、側断面図である。本発明のサポート柱は、ステップ1〜ステップ8の施工手順により下階から上階に向かって構築されていく。
【0032】
図5に示すように、ステップ1では、既にN−1階に設置してあるサポート柱20の上部に、工場生産したパネルゾーンブロック(ア)を設置する。サポート柱20上部のベースプレート(ホ)に固定用ボルト(イ)を入れる。
【0033】
図6に示すように、ステップ2では、ベースプレート(ホ)をパネルゾーンブロック(ア)内の機械式継手(エ)にボルト(イ)で固定し、鉄板(シ)で下蓋をする。
【0034】
図7に示すように、ステップ3では、このパネルゾーンブロック(ア)内の機械式継手(エ)にスラブアンカー筋(ハ)および梁鉄筋(ナ)を中継ボルト(コ)にて各部に固定する。これにより、図8に示すようなステップ4の状態となる。
【0035】
図9に示すように、ステップ5では、梁の側部に梁型枠(ミ)を設置するとともに、パネルゾーンブロック(ア)内の上側の機械式継手(エ)に中継ボルト(コ)を挿入する。
【0036】
図10に示すように、ステップ6では、パネルゾーンブロック(ア)のスプライススリーブ(サ)に挿し入れた芯鉄筋(ソ)を上階側のサポート柱20の中心の機械式継手(エ)に固定する。この芯鉄筋(ソ)は、挿入連結芯鉄筋(マ)(図1を参照)となるものであり、長さが一定で、階高さを正確に確保するために用いられる。上階側のサポート柱20は、この芯鉄筋(ソ)によって「やじろべい」状態となる。平面視で4本ある柱鉛直調整ボルト(ヘ)で高さを調整して、上階側のサポート柱20を鉛直に立たせ、固定用ボルト(イ)で固定する。
【0037】
図11に示すように、ステップ7では、下階側のサポート柱20のグラウト注入孔(ノ)を通じてスプライススリーブ(サ)にグラウト材(ク)を注入し、芯鉄筋(ソ)とスプライススリーブ(サ)の間の隙間に充填する。また、鉄板(シ)のグラウト注入孔(ノ)を通じてベースプレート(ホ)とパネルゾーンブロック(ア)の隙間にグラウト材(ク)を充填する。
【0038】
図12に示すように、最後のステップ8では、上側のグラウト材(ク)の硬化後にその上部にモルタル(ヒ)を充填し平滑面とする。このようにして、N−1階からN階間のサポート柱20が構築される。
【0039】
[サポート柱を用いた高層建物の構造]
次に、本発明に係るサポート柱を用いた高層建物の構造について図13〜図16を参照しながら説明する。
【0040】
図13および図14に示すように、高層建物の構造100は、建物の全高にわたって上下方向に連続的に設けた筒状の構造体であるチューブ架構を、建物の主架構としたものである。この高層建物の構造100は、建物の外周に位置する外周チューブ架構Aと、その内側に同軸的に設けた内周チューブ架構Bと、さらにその内側に設けたコアチューブ架構Cとによる三重のチューブ架構(いわゆるトリプルチューブ構造)からなる。内周チューブ架構Bの柱は、本発明のサポート柱20により構成してある。
【0041】
サポート柱20は、地上から最上階まで、内周チューブ架構Bの各階の上下の段差梁8の間に設置してある。段差梁8は、各階の床スラブ6、7と剛に接合している。また、高層建物の1階床スラブ3の下に基礎底版2を設置し、基礎底版2の下に杭1を設置する。
【0042】
外周チューブ架構Aは、柱梁4により構成してある。コアチューブ架構Cは、コアウォール5により構成してある。このコアウォールは、開口部分を有する耐震壁としてもよい。また、コアチューブ架構を柱梁で構成してもよい。内周床スラブ6は、コアチューブ架構Cと内周チューブ架構Bとの間に設けられ、外周床スラブ7は、内周チューブ架構Bと外周チューブ架構Aとの間に設けられている。
【0043】
上記のように構成した本発明の高層建物の構造100において、地震力が作用して高層建物の各階がせん断変形した場合には、サポート柱20の接合部分はピン接合のように挙動し、サポート柱20とベースプレート(ホ)はしなやかに変形する。適切に設計すること等によって、結果的には、内周チューブ架構Bの段差梁8に地震力によるモーメントは働かないか、あるいは問題とならないほど寡少とすることができる。
【0044】
上記の実施の形態において、最上階と所定の中間階にメガストラクチュア梁を設けた構成としてもよい。この場合、図15および図16に示すように、最上階と中間の特定の階(L、M、N階)に設けたメガストラクチュア梁12でコアチューブ架構C、メガストラクチュア内周チューブ架構10およびメガストラクチュア外周チューブ架構11を格子状に剛に接合して一体の巨大構造体を構築する。そして、メガストラクチュア内周チューブ架構10に設けたサポート柱20を、L、M、N階に設けたメガストラクチュア梁12で支持する。このようにしても、上記の実施の形態と同一の作用効果を得ることができる。
【0045】
次に、本発明の効果について説明する。
高層建物の内周チューブ架構Bに高強度で小断面のサポート柱を設けることにより、下記の(1)〜(5)の効果を得られる。
【0046】
(1)内周チューブ架構Bをサポート柱20で受けることにより、サポート柱20なしの場合(床厚t=300mm程度)と比較して床スラブ6、7部分が短スパンとなり、床厚tをt=200mm程度に薄くしても重量衝撃音レベルの性能を確保することができる。
【0047】
(2)超高層集合住宅など1棟で数万m2の床面積がある高層建物の場合、t=約300mmの床厚が約200mm程度に低減でき、床自体の荷重の大幅な低減と床躯体数量の大幅低減とが可能となり、より安価な建物を提供することができる。
【0048】
(3)短スパンの床を実現できるので工法も多様になり、鉄板に先組み鉄筋を組み込んだ鉄板型枠等の安価な床も採用可能となり、よりコスト削減効果が図れる。
【0049】
(4)サポート柱20は鋼管にコンクリートを充填することにより細くできることから(400角程度)、プランに及ぼす影響もきわめて小さい。
【0050】
(5)以上の効果は、高層建物の構造が耐震、制震、中間階免震、免制震構造いずれの構造でも効果は変わらない。
【0051】
以上説明したように、本発明に係る高層建物用のサポート柱によれば、高層建物に用いられるサポート柱であって、鋼管内部にコンクリートが充填され、スパイラル補強した芯鉄筋が配筋された鋼管コンクリート柱からなり、この鋼管コンクリート柱の上下端に設けられるパネルゾーンブロックに別の芯鉄筋を挿通して前記鋼管コンクリート柱と前記パネルゾーンブロックとを接続固定し、軸力を小断面で受けられるようにしたので、従来よりも軸力をより小断面で受けられる高強度で安価なサポート柱を提供することができる。
【0052】
また、本発明に係る高層建物用のサポート柱の構築方法によれば、上述した高層建物用のサポート柱の構築方法であって、前記鋼管コンクリート柱の下面から突出する芯鉄筋を、前記パネルゾーンブロックの上面に設けたスプライススリーブ内に挿入して、前記鋼管コンクリート柱を前記パネルゾーンブロックに接続固定するので、従来よりも軸力をより小断面で受けられる高強度で安価なサポート柱を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明に係る高層建物用のサポート柱およびその構築方法は、チューブ架構を主架構とする高層建物に有用であり、特に、高層集合住宅などの床面積が比較的大きい高層建物に適している。
【符号の説明】
【0054】
ア パネルゾーンブロック
イ 固定用ボルト
ウ,20 サポート柱
エ 機械式継手
オ スターラップ
カ フープ
キ ネジ鉄筋
ク グラウト材
コ 中継ボルト
サ スプライススリーブ
シ 鉄板
ス 溶接部
セ スパイラルフープ
ソ 芯鉄筋
タ 枝鉄筋
チ 梁(現場打ちコンクリート梁)
ツ スチールアングル
テ 床ハーフPCスラブ
ナ 梁鉄筋
ニ 角型鋼管
ネ 高強度コンクリート
ノ グラウト注入孔
ハ スラブアンカー筋
ヒ モルタル
フ 床(現場打ちコンクリート床)
ヘ 柱鉛直調整ボルト
ホ ベースプレート
マ 挿入連結芯鉄筋
ミ 梁型枠
A 外周チューブ架構
B 内周チューブ架構
C コアチューブ架構
1 杭
2 基礎底版
3 1階床スラブ
4 外周チューブ架構の柱梁
5 コアチューブ架構のコアウォール
6 内周床スラブ
7 外周床スラブ
8 段差梁(内周チューブ架構)
9 従来のサポート柱
10 メガストラクチュア内周チューブ架構
11 メガストラクチュア外周チューブ架構
12 メガストラクチュア梁
9a 厚肉鋼管
9b コンクリート
9c 鋼板
9d 固定用ボルト
9e 鉄筋
100 高層建物の構造
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高層建物に用いられるサポート柱であって、
鋼管内部にコンクリートが充填され、スパイラル補強した芯鉄筋が配筋された鋼管コンクリート柱からなり、この鋼管コンクリート柱の上下端に設けられるパネルゾーンブロックに別の芯鉄筋を挿通して前記鋼管コンクリート柱と前記パネルゾーンブロックとを接続固定し、軸力を小断面で受けられるようにしたことを特徴とする高層建物用のサポート柱。
【請求項2】
梁鉄筋およびスラブアンカー筋の少なくとも一方を、前記パネルゾーンブロックに機械式継手で接合したことを特徴とする請求項1に記載の高層建物用のサポート柱。
【請求項3】
請求項1または2に記載の高層建物用のサポート柱の構築方法であって、
前記鋼管コンクリート柱の下面から突出する芯鉄筋を、前記パネルゾーンブロックの上面に設けたスプライススリーブ内に挿入して、前記鋼管コンクリート柱を前記パネルゾーンブロックに接続固定することを特徴とする高層建物用のサポート柱の構築方法。
【請求項4】
前記スプライススリーブと前記芯鉄筋との間の隙間にグラウト材を充填することを特徴とする請求項3に記載の高層建物用のサポート柱の構築方法。
【請求項1】
高層建物に用いられるサポート柱であって、
鋼管内部にコンクリートが充填され、スパイラル補強した芯鉄筋が配筋された鋼管コンクリート柱からなり、この鋼管コンクリート柱の上下端に設けられるパネルゾーンブロックに別の芯鉄筋を挿通して前記鋼管コンクリート柱と前記パネルゾーンブロックとを接続固定し、軸力を小断面で受けられるようにしたことを特徴とする高層建物用のサポート柱。
【請求項2】
梁鉄筋およびスラブアンカー筋の少なくとも一方を、前記パネルゾーンブロックに機械式継手で接合したことを特徴とする請求項1に記載の高層建物用のサポート柱。
【請求項3】
請求項1または2に記載の高層建物用のサポート柱の構築方法であって、
前記鋼管コンクリート柱の下面から突出する芯鉄筋を、前記パネルゾーンブロックの上面に設けたスプライススリーブ内に挿入して、前記鋼管コンクリート柱を前記パネルゾーンブロックに接続固定することを特徴とする高層建物用のサポート柱の構築方法。
【請求項4】
前記スプライススリーブと前記芯鉄筋との間の隙間にグラウト材を充填することを特徴とする請求項3に記載の高層建物用のサポート柱の構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−11103(P2013−11103A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144317(P2011−144317)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
[ Back to top ]