説明

高性能造核剤及び該造核剤の製造方法

【課題】透明性と結晶化温度とに優れたポリオレフィン樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】数平均粒径(a)が、0.1μm以下である微細な造核剤であって、樹脂に対する造核剤の重量%をCNAとし、該CNAと核生成速度Iを表す式(1)におけるI0との比、I0/CNAが1015(mm-3-1)以上である造核剤。
logI=logI0−(C/ΔT) ・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性樹脂用の高性能造核剤及び該造核剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は、その優れた物理的、化学的特性および低環境負荷特性から容器、建材、自動車部品などに幅広く用いられている。しかし、容器やフィルム・シートなどの高い透明性が必要な用途、高い強度や高い結晶化温度が求められる用途においては、透明性や結晶化温度の向上などが望まれている。
【0003】
従来、ポリオレフィン樹脂の透明性や物性の向上のために、安息香酸金属塩、芳香族リン酸エステル金属塩などの有機酸金属塩を添加したり、ジベンジリデンソルビトールなどを添加することが提案され、ポリオレフィン樹脂の機能向上が図られている。
しかし、ジベンジリデンソルビトール類は透明性の改良には優れるものの強度や熱変形温度の向上には効果が小さく、分解による臭気の問題があった。また、有機酸金属塩は強度や結晶化温度の向上には優れるものの、融点が高く、加工温度では溶融しないために微分散が困難で透明性の改良効果が小さく、フィルムなどに用いた場合、粉砕が不十分だったり、二次凝集して大きな粒子ができると成形不良の原因になったりする問題があった。
有機酸金属塩についてより高性能な造核剤として、特許文献1や特許文献2にはシクロアルカンカルボン酸やシクロアルケンカルボン酸の金属塩などが提案されている。従来は用いる有機酸の構造による造核剤の高性能化が検討されてきた。
有機酸の構造や金属種の選択により性能は向上するものの性能向上効果は限られたものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−530006号公報の特許請求の範囲
【特許文献2】特表2001−507395号公報の特許請求の範囲
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、透明性と結晶化温度とに優れたポリオレフィン樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の現状に鑑み鋭意検討を行った結果、長軸の数平均粒径(a)が0.1mm以下である微細な造核剤、および樹脂に対する造核剤の重量%をCNAとし、該CNAと式(1)におけるI0との比、I0/CNAが1015(mm-3-1)以上である造核剤が、優れた高性能造核剤となることを見出し、アルコール系溶媒を用いた有機酸金属塩溶液に芳香族系溶媒とポリオレフィン樹脂を加え加熱溶解後に冷却して有機酸金属塩を微細結晶として樹脂中に均一に含有させることで該造核剤を製造できることを見出した。
【0007】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、第一の発明は数平均粒径(a)が、0.1mm以下である微細な造核剤を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0008】
第二の発明は、樹脂に対する造核剤の重量%のCNAとし、該CNAと下記式(1)におけるI0との比、I0/CNAが1015(mm-3-1)以上である造核剤を提供することで、上記目的を達成したものである。
logI=logI0−(C/ΔT) ・・・(1)
I:結晶性樹脂の核生成速度
0:プリファクター
C:実験により定まる定数
ΔT:過冷却度[平衡融点Tm0と結晶化温度の差(°K)]
logI0:logIを1/ΔTに対してプロットして得られる直線を(1/ΔT)=0に外挿した時の縦軸logIの切片
I:融液から結晶化するときに、単位体積(1mm3)および単位時間(1秒)当たりの結晶数の増加量。結晶化は、結晶性樹脂100重量部に対して造核剤0.1重量部を配合し、0.1mmの厚さに成形したフィルムを融解した後に冷却し、一定の温度T(°K)で等温結晶化して行う。
【0009】
第三の発明は、ポリオレフィン樹脂と下記一般式(I)で表される有機酸金属塩をアルコール系溶媒と芳香族系溶媒の混合溶媒に加熱溶解した後、冷却してポリオレフィン樹脂を有機酸金属塩を含んで析出させる、ポリオレフィン樹脂結晶化用の上記造核剤の製造方法を提供することで、上記目的を達成したものである。
【化1】

(式中、R1は炭素原子数4〜8のアルキル基、R2は水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基、R3は炭素原子数1〜4のアルキリデン基、Aは(n+x)価の金属、nは1〜3の整数、及びxは0〜2の整数を表す。)
【0010】
第四の発明は、上記アルコール系溶媒がブタノールである上記造核剤の製造方法を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0011】
第五の発明は、上記一般式(I)の化合物1重量部に対して、上記アルコール系溶媒10〜500重量部及び上記芳香族系溶媒5〜3000重量部用いる上記造核剤の製造方法を提供することで、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、透明性と結晶化温度とに優れたポリオレフィン樹脂組成物の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は核生成速度Iの常用対数を1/ΔTに対してプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施形態につき詳細に説明する。
本発明における式(1)とは、結晶核生成理論より導かれる。式(1)から、造核剤の性能は、I0とΔG*の二つの要因により決定される。
第一の要因であるI0は、造核剤の効果が造核剤のエピタキシーにより決定されると仮定すると、造核剤の濃度CNAと粒径の逆数a-1の積に比例し、下記式(2’)で表すことができる。
0∝CNA-1 (2’)
よって従来の数百nm〜1mmの数平均粒径aを有する造核剤を、百nm以下の微細な粒径を持つ造核剤にして樹脂へ分散できれば、造核剤の性能を10倍以上にできると予測できる。
一方、第二の要因であるΔG*は、造核剤のエピタキシー効果を入れた界面自由エネルギーであるΔσにより決定される。通常のポリオレフィンの成形条件での結晶化温度は平衡融点から数十度低いので、核生成速度Iは造核剤の上における二次元的な核発生により決定されると考えられる。この場合、ΔG*は下記式(2)で表わされる。
ΔG*=4σσe/(Δg−Δσ) ・・・(2)
σ:側面自由エネルギー、σe:端面自由エネルギー、Δgは融解自由エネルギーで下記式(3)で表される。
Δg=(Δh/Tm0)ΔT ・・・(3)
Δh:融解エンタルピー、Tm0:平衡融点
式(1)から式(4)を導き、logIを1/ΔTに対してプロットする。
logI=logI0−ΔG*/kT=logI0−4σσe/(kT(Δg−Δσ))・・・(4)
実際の成形加工におけるΔTは40〜70Kであり、造核剤のエピタキシー能を表す(Δσ/σ)が約1/10程度と小さい場合には、Δg>>Δσとなるため、式(2)において、(Δg−Δσ)はΔgで近似できる。よって、logIの1/ΔTに対するプロットは、(Δσ/σ)=0の理想的なエピタキシャル能を持つ場合の直線の傾き(−4σσe/kTΔg)に漸近する傾きを持った直線となり、Δσ/σが1/10±30%程度と大きく変化しても、直線の傾きは数%程度しか変わらない。このことから「核生成速度は、造核剤のエピタキシー能(Δσ/σ)が約1/10で小さい場合には、Δσ/σの大小には殆ど依存しない」と予測した。
即ち、高性能造核剤は、造核剤の構造改善によるエピタキシー能向上よりも、造核剤を微細化してI0を大きくすることで実現可能と考えた。しかし、粉砕装置によるようなトップダウン型の従来の粉砕法では、得られる造核剤のI0は発明者らのポリプロピレンにおける実験結果では1012程度である。また、単にナノ粒子化したのでは二次凝集して結果的にI0は大きくならないことが予測された。よって、従来の技術では困難な適切な微細な造核剤の製造技術と微分散技術を確立できれば、従来の数百nm〜1mmの数平均粒径を有する粗大な有機酸金属塩化合物の造核剤を、百ナノメートル以下の微細かつ均一サイズ分布の造核剤にして樹脂へ分散できれば、造核剤の性能を10倍以上に高性能化できると予測できる。
この予測に基づき溶媒などの条件により、溶液系から析出する造核剤の微小結晶をポリオレフィンなどと一緒に析出回収することで、二次凝集することなく従来の造核剤では得られなかった高いI0を示す造核剤が得られることを見出した。該造核剤は高いI0を有することで結晶化温度が高く、透明性にも優れた樹脂組成物が提供できる。
【0015】
logI0は、logIを1/ΔTに対してプロットして得られる直線を(1/ΔT)=0に外挿した時の縦軸logI切片として得られる。
【0016】
本発明に用いられる造核剤としては、適応される樹脂の加工温度で溶融せず、造核効果を示す化合物であれば特に制限されず、例えば、安息香酸ナトリウム、p−第三ブチル安息香酸アルミニウム、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)リン酸リチウム、2ナトリウム−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸、2ナトリウム−ビシクロ[2,2,1]ヘプテン−2,3−ジカルボン酸などが挙げられる。これらの化合物の中でも、上記一般式(I)で表される有機酸金属塩が好ましい。これら化合物からなる造核剤は、数平均粒径(a)が0.1μm以下であることが好ましく、0.05μmがより好ましい。数平均粒径(a)が0.1μmより大きいと同一添加量における造核剤の表面積が小さくなり本発明の造核効果が十分に得られないことから好ましくない。なお、上記数平均粒径(a)は下記式(5)により定義される
【0017】
【数1】

(式中、xは粒径、f(x)は粒径の数分布関数である。)
【0018】
本発明の造核剤が適用される樹脂としては、結晶性樹脂であれば特に制限されず、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ヘミアイソタクチックポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ステレオブロックポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン重合体、エチレン/プロピレンブロック又はランダム共重合体等のα−オレフィン共重合体などのポリオレフィン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等の熱可塑性直鎖ポリエステル系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド等のポリスルフィド系ポリマー;ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリマー;ポリヘキサメチレンアジパミド等の直鎖ポリアミド系ポリマー;シンジオタクチックポリスチレン等の結晶性のポリスチレン系ポリマー;ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル酸、メタクリル酸、ナイロン等の縮合系ポリマー等が挙げられる。
【0019】
上記結晶性樹脂の中では、本発明の造核剤の使用効果が顕著であるポリオレフィン系樹脂が好適であり、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンブロック又はランダム共重合体、エチレン以外のα−オレフィン/プロピレンブロック又はランダム共重合体及びこれらのプロピレン系重合体と他のα−オレフィン重合体との混合物等のポリプロピレン系樹脂、およびポリエチレンが特に好適である。
【0020】
上記ポリオレフィン樹脂は、立体規則性、比重、重合触媒の種類、重合触媒の除去の有無や程度、結晶化の度合い、温度や圧力などの重合条件、結晶の種類、X線小角散乱で測定したラメラ晶のサイズ、結晶のアスペクト比、芳香族系または脂肪族系溶媒への溶解度、溶液粘度、溶融粘度、平均分子量、分子量分布の程度、分子量分布におけるピークがいくつあるか、共重合体にあってはブロックであるかランダムであるか、各モノマーの配合比率などにより発明の効果の発現に差異が生じることはあるものの、いかなる樹脂を選択した場合においても適用可能である。
【0021】
上記結晶性樹脂の使用量は、本発明の造核剤1重量部に対して、0.01〜5000重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜1000重量部である。
また、上記アルコール系溶媒の使用量は、本発明の造核剤1重量部に対して、上記アルコール系溶媒10〜500重量部が好ましく、より好ましくは20〜200重量部である。また、上記芳香族系溶媒の使用量は、本発明の造核剤1重量部に対して、5〜3000重量部が好ましく、より好ましくは50〜2000重量部である。
【0022】
上記一般式(I)におけるR1で表されるアルキル基としては、例えば、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチル、第三ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、へプチル、オクチル、イソオクチル、第三オクチルなどが挙げられる。
【0023】
2で表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチル、第三ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、へプチル、オクチル、イソオクチル、第三オクチルなどが挙げられる。
【0024】
3で表されるアルキリデン基としては、例えば、メチレン、エチリデン、プロピリデン、ブチリデンなどが挙げられる。
【0025】
Aで表される金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウムなどが挙げられる。ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属がアルコール溶媒と芳香族系溶媒の混合溶媒への溶解性が本発明の実施に適しているので好ましい。
【0026】
上記一般式(I)で表わされる化合物としては、より具体的には以下のNo.1〜6の化合物などが挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物によりなんら制限を受けるものではない。
【0027】
【化2】


【0028】
【化3】



【0029】
【化4】


【0030】
【化5】


【0031】
【化6】




【0032】
【化7】

【0033】
本発明に用いられるアルコール系溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、第三ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどが挙げられる。ポリオレフィン樹脂を芳香族系溶媒に溶解するためにより高温に加熱できて、有機酸金属塩の溶解性にも優れるブタノールが好ましい。
【0034】
本発明に用いられる芳香族系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンや工業用の混合溶媒などが用いられる。ポリオレフィン樹脂の溶解性、脱溶媒の容易性、安全性からキシレンが好ましい。
【0035】
本発明の具体的な実施方法としては、アルコール系溶媒に有機酸金属塩を溶解し、芳香族系溶媒を加えて加熱し、ポリオレフィン樹脂を加えて溶解した後、冷却してポリオレフィン樹脂を析出させる。有機酸金属塩はアルコール系溶媒に対し、低温でより高い溶解性を示すのでポリオレフィン樹脂を加熱溶解する温度で飽和濃度に近い濃度であることが好ましい。飽和濃度より濃度があまり高いと有機酸金属塩が多量に析出して大きな結晶となり、下記の機構により効果的な結晶化効果を示すと考える微小な有機酸金属塩の結晶を含有するポリオレフィン樹脂組成物が得られず、濃度が低すぎると析出するポリオレフィン樹脂中に有機酸金属塩が取込まれず、造核剤としての効果を示さない。
【0036】
本発明の造核剤を結晶性樹脂に用いる場合は、他の樹脂添加剤を配合してもよく、他の樹脂添加剤としては、特に制限されず、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤などの酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系安定剤;ステアリン酸カルシウムなどの酸補足剤;ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコン系難燃剤、難燃助剤などの難燃化剤;重金属不活性化剤;滑剤;染料;帯電防止剤;防曇剤;ベンジリデンソルビトールなどの金属塩以外の造核剤;抗菌剤、防黴剤などが挙げられる。
【0037】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4'−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2'−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、ビタミンEなどがあげられ、結晶性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは、0.05〜5重量部が用いられる。
【0038】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフィト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2'−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイトなどがあげられる。
【0039】
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類があげられる。
【0040】
上記紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5'−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−第三ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−第三ブチル−5'−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2−(2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2'−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4'−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類があげられる。
【0041】
上記ヒンダ−ドアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物があげられる。
【0042】
上記難燃剤としては、デカブロモジフェニルエーテルやテトラブロモビスフェノールAなどのハロゲン系難燃剤、トリフェニルホスフェイト、レゾルシノールやビスフェノールAなどの多価フェノールとフェノールや2,6−キシレノールなどの1価フェノールの縮合リン酸エステル;赤燐、リン酸メラミンなどの無機リン化合物;メラミンシアヌレートなどの含窒素難燃剤;水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの無機系難燃剤;酸化アンチモンや酸化ジルコニウムなどの難燃助剤;ポリテトラフルオロエチレンなどのドリップ防止剤などが用いられる。
【0043】
上記重金属不活性化剤としては、例えば、2−ヒドロキシベンズアミド−N−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イルやドデカンジオイックアシッドビス[2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]などが挙げられる。
【0044】
上記滑剤としては、エチレンビスステアリルアミドやエルカ酸アミドなどのアミド類、ワックス、ステアリン酸ナトリウムなどの脂肪酸金属塩などが挙げられる。
【0045】
他の添加剤の添加方法は、その溶解性に応じてポリオレフィン樹脂溶液又は有機酸金属塩溶液に予め溶解させてもよく、別途溶媒に溶解して3種類以上の溶液としたのち混合して脱溶媒してもよい。
【0046】
本発明の造核剤を用いたポリオレフィン樹脂組成物は、建築資材、農業用資材、自動車部品、包装用資材、雑貨、玩具、家電製品、医療器具など種々の用途に用いることができる。特に高度の透明性を有するので、広範な用途のフィルム、シート、容器、および輸液バッグ、シリンジ、薬液充填シリンジなどの医療用途やフィルムなどに好適に用いられる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
【0048】
(実施例1−1、比較例1−1)
有機酸金属塩(表1記載)100mgをn−ブタノール20gに室温で溶解し、キシレン95gを加え、超音波照射して均一とした。窒素雰囲気下、撹拌しながら116℃まで加熱し、アイソタクチックポリプロピレン(重量平均分子量300,000、Mw/Mn=4.7、立体規則性[mmmm]=97%)10mgを加え溶解した。激しく撹拌しながら氷浴で冷却し、析出した樹脂をろ別して40℃で減圧乾燥して樹脂粉末9.9mgを得た。得られた樹脂粉末はリン分の分析結果から有機酸金属塩を0.1重量%含有していることを確認した。また、得られた樹脂粉末中の造核剤の粒子径をX線回折により求めた。さらに、得られた粉末を230℃で1分間プレスして厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムを各種温度で等温結晶化し、光学顕微鏡(オリンパス製)を用いて観察し、単位体積(1mm3)当たりの結晶数の単位時間(1秒)当たりの増加率により核生成速度Iを決定した。図1に示すようにlogIを1/ΔTに対してプロットしたときの直線の、1/ΔT=0における縦軸切片をlogI0として、造核剤濃度CNAとI0との比率I0/CNAを造核性能として評価した。また、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製:Diamond DSC)を用いて50℃/分で室温から230℃まで昇温し、5分保持した後、10℃/分で冷却したときの発熱ピークを樹脂組成物の結晶化温度Tcとして測定した。結晶化温度は高いほど成形サイクルに優れる。結果を表1に示す。
【0049】
(比較例1-2)
有機酸金属塩(表1記載)0.3mgをキシレン100gに超音波照射して分散し、120℃でアイソタクチックポリプロピレン(重量平均分子量300,000、Mw/Mn=4.7、立体規則性[mmmm]=97%)300mgを加え溶解した。激しく撹拌しながら氷浴で冷却し、析出した樹脂をろ別して40℃で減圧乾燥して樹脂粉末299mgを得た。得られた樹脂粉末はリン分の分析結果から有機酸金属塩を0.1重量%含有していることを確認した。得られた粉末を230℃で1分間プレスして厚さ100μmのフィルムを得た。粒子径はキシレン中で超音波照射した有機酸金属塩の粒子径を測定し、他の項目は実施例1-1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0050】
(比較例1-3)
アイソタクチックポリプロピレン(重量平均分子量300,000、Mw/Mn=4.7、立体規則性[mmmm]=97%)100重量部にカルシウムステアレート0.05重量部、テトラキス[3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン0.1重量部、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト0.1重量部及び有機酸金属塩(化合物No.1)0.1重量部(実施例1−1と同じ配合量)を配合し、240℃で押出し混練してペレットを得た。得られたペレット13mgを230℃で1分間プレスして厚さ100μmのフィルムを得た。実施例1-1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例1−1及び比較例1−2についてヘイズにより透明性を比較した。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
表1の実施例1−1と比較例1−2から本発明の造核剤は従来の造核剤に比較して同一添加量で10倍以上の核生成効果を有し、結果として高い結晶化温度をポリマーに付与し、表2の実施例2−1と比較例2−2から本発明の高いI0を有する造核剤はポリオレフィン樹脂組成物において有機酸金属塩の粉末を分散させた従来のポリオレフィン樹脂組成物に比較して透明性においても優れ、本発明の造核剤が優れた造核剤であることは明らかである。また、表1において比較例1−3から溶融混練による分散では比較例1−2と同程度の効果しか示さないことが明らかであり、本発明の方法が造核剤の効果を顕著に発現させる優れた手法であることが明らかである。なお、造核剤無添加でのI0のばらつきは、触媒残渣などの微量の不純物による造核効果の影響が大きくでたものと推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均粒径(a)が、0.1μm以下である微細な造核剤。
【請求項2】
樹脂に対する造核剤の重量%をCNAとし、該CNAと核生成速度Iを表す式(1)におけるI0との比、I0/CNAが1015(mm-3-1)以上である請求項1記載の造核剤。
logI=logI0−(C/ΔT) ・・・(1)
I:結晶性樹脂の核生成速度
0:プリファクター
C:実験により定まる定数
ΔT:過冷却度[平衡融点Tm0と結晶化温度の差(°K)]
logI0:logIを1/ΔTに対してプロットして得られる直線を(1/ΔT)=0に外挿した時の縦軸logIの切片
I:融液から結晶化するときに、単位体積(1mm3)および単位時間(1秒)当たりの結晶数の増加量。結晶化は、結晶性樹脂100重量部に対して造核剤0.1重量部を配合し、0.1mmの厚さに成形したフィルムを融解した後に冷却し、一定の温度T(°K)で等温結晶化して行う。
【請求項3】
ポリオレフィン樹脂と、下記一般式(I)で表される有機酸金属塩を、アルコール系溶媒と芳香族系溶媒の混合溶媒に加熱溶解した後、冷却してポリオレフィン樹脂を有機酸金属塩を含んで析出させる、ポリオレフィン樹脂結晶化用の請求項1または2記載の造核剤の製造方法。
【化1】

(式中、R1は炭素原子数4〜8のアルキル基、R2は水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基、R3は炭素原子数1〜4のアルキリデン基、Aは(n+x)価の金属、nは1〜3の整数、及びxは0〜2の整数を表す。)
【請求項4】
上記アルコール系溶媒がブタノールである請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
上記有機酸金属塩1重量部に対して、上記アルコール系溶媒10〜500重量部及び上記芳香族系溶媒5〜3000重量部用いる請求項3又は4記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−91804(P2013−91804A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−2783(P2013−2783)
【出願日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【分割の表示】特願2006−125274(P2006−125274)の分割
【原出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】