説明

高粘性塗料の塗布ノズル

【課題】塗装表面を平滑にできる塗布ノズルを提供する。
【解決手段】導入通路17と、内部空間16と、ノズルスリット15と、をそれぞれ連通して備え、前記ノズルスリット15から被塗装体に対して放射方向に高粘性塗料を吹き付ける高粘性塗料の塗布ノズル10であって、前記ノズルスリット15は、平面視において所定角度の略扇形状に構成され、前記ノズルスリット15を略扇形状として見たとき、該略扇形状の円弧を、ノズルスリット出口15Eとし、前記ノズルスリット出口15Eの間隙を、スリット高さDとし、前記ノズルスリット出口15Eを円弧として見たとき、該円弧の弦を、スリット幅Wとし、前記スリット幅Wに対する前記スリット高さDの割合を、扁平率Fとし、前記スリット幅Wを、35mm以上とし、前記扁平率Fを、0.01以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘性塗料を被塗装体に吹き付ける塗布ノズルの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高粘性塗料(アクリル樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、またはメラミン樹脂系塗料等)を被塗装体に吹き付ける塗布ノズルは公知である。例えば、自動車工場では、ロボット等に装着された塗布ノズルを用いて、防錆、防水、制振等を目的とする高粘性塗料を自動車の車体等に吹き付ける。特許文献1は、導入通路より内部空間に塗料を供給し、内部空間にて一時塗料を貯溜し、ノズルスリットから被塗装体に対して放射方向に塗料を吹き付ける塗布ノズルを開示している。
【0003】
しかし、特許文献1に開示される塗布ノズルを用いて塗装した場合には、塗布後の塗装表面に不均一な凹凸(シワ)が形成される問題があった。出願人らは、この原因として、被塗装体の近傍では、塗装膜が一旦高さ方向(塗装膜の塗装表面に対して垂直な方向)に積み重なるように形成され、塗装表面に対して垂直に形成された塗装膜がノズルの進行方向に不均一に倒れ、不均一に倒れた塗装膜が塗装表面に不均一な凹凸を形成することを明らかにした。
【0004】
このような塗装表面の凹凸は、被塗装体の表面と塗料との間に空気溜まりを残留させ、被塗装体と塗料との密着力を低下させる原因となっていた。また、塗装表面の凹凸によって、不必要に塗装膜厚が大きくなるため、塗装された部品が他部品と干渉する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−179243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、塗装表面を平滑にできる高粘性塗料の塗布ノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、互いに連通する導入通路、内部空間、およびノズルスリットを順に備え、前記導入通路より前記内部空間に高粘性塗料を供給し、前記内部空間にて一時高粘性塗料を貯溜し、前記高粘性塗料を、前記ノズルスリットから放射方向に吐出して被塗装体に対して吹き付ける高粘性塗料の塗布ノズルであって、前記ノズルスリットは、その幅方向寸法が内部空間側から高粘性塗料吐出側へ向けて拡大する、所定の大きさの中心角を有した略扇形状に構成され、前記ノズルスリットにおける略扇形状の円弧に相当する部分を、ノズルスリット出口とし、前記ノズルスリット出口の間隙を、ノズルスリット高さとし、円弧形状に形成される前記ノズルスリット出口における、該円弧の弦を、ノズルスリット幅とし、前記ノズルスリット幅に対する前記ノズルスリット高さの割合を、扁平率とし、前記ノズルスリット幅を、35mm以上とし、前記扁平率を、0.01以下とする、ものである。
【0009】
請求項2においては、請求項1記載の高粘性塗料の塗布ノズルであって、前記中心角は、80°以上とするものである。
【0010】
請求項3においては、請求項1又は2記載の高粘性塗料の塗布ノズルであって、前記ノズルスリットを複数具備するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高粘性塗料の塗布ノズルによれば、塗装表面を平滑にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る塗装設備の全体的な構成を示した構成図。
【図2】同じく塗布ノズルの全体的な構成を示した構成図。
【図3】(A)実施形態1に係る塗布ノズルの平面図、(B)同じく正面図、(C)同じく(A)におけるS1−S1断面図。
【図4】(A)実施形態1に係る塗布ノズルを用いた場合の塗装膜における凹凸状態を示した断面図、(B)従来の塗布ノズルを用いた場合の塗装膜における凹凸状態を示した断面図。
【図5】(A)実施形態2に係る塗布ノズルの平面図、(B)同じく正面図、(C)同じく(A)におけるS2−S2断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を用いて、実施形態に係る塗装設備50について説明する。
塗装設備50は、自動車の塗装工場に設置されるシステムであって、高粘性塗料(以下、塗料P)を定量的に自動車の車体70に吹き付ける塗装設備である。塗装設備50は、材料コンテナ51と、プランジャポンプ52と、フィルタ53と、レギュレータ54と、熱交換器55と、定量ポンプ56と、ロボットアーム57と、塗布ノズル10と、を具備している。なお、塗装設備50により吹き付ける塗料Pは、アクリル樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、およびメラミン樹脂系塗料等の、他の高粘性塗料であっても良い。
【0014】
材料コンテナ51は、塗料Pを貯溜するものである。プランジャポンプ52は、塗料Pを塗装設備50の全体に充填し、圧送するものである。フィルタ53は、塗料Pに混入した異物を取り除くものである。レギュレータ54は、塗装設備50内の塗料Pの圧力を適切に保つものである。熱交換器55は、塗装設備50の塗料Pの温度を一定(本実施形態では25℃)に保つものである。定量ポンプ56は、サーボモータによって駆動され、塗布ノズル10への塗料Pの吐出量を調整するものである。ロボットアーム57は塗布ノズル10を車体70に対し自在に移動させるものである。なお、塗布ノズル10について、詳しくは後述する。
【0015】
図2を用いて、実施形態に係る塗布ノズル10について説明する。
塗布ノズル10は、導入管30より供給される塗料Pを、幅方向では放射状に、かつ、厚さ方向では一定厚さのフィルム状に形成しながら、車体70の表面に向けて吹き付けるものである。塗布ノズル10を用いた塗料Pの塗装方法は、塗布ノズル10を車体70の表面に対し高さ方向へ所定の距離を保ちつつ、塗布ノズル10の厚さ方向にゆっくりと平行移動させながら、塗布ノズル10から塗料Pを吐出し、塗布ノズル10から吐出した塗料Pを車体70の表面上に付着させることで、塗料Pを車体70に塗布するものである。塗布ノズル10を用いた塗装方法では、ロボットアーム57を車体70に対し自在に移動させることによって、塗布ノズル10と車体70の表面との距離、塗布ノズル10の車体70の表面での塗布位置を制御し、塗装幅、塗装膜厚等を変更しながら塗装することができる。
【0016】
図3を用いて、実施形態1である塗布ノズル10について説明する。
図3(A)は塗布ノズル10の平面図を示し、図3(B)は塗布ノズル10の正面図を示し、図3(C)は塗布ノズル10の図3(A)におけるS1−S1の断面図を示している。
塗布ノズル10は、本体11と、蓋12と、を具備している。塗布ノズル10は、平面視において略扇形状に形成される厚板状の部材で構成されている。本体11は、側面視において、要側が厚く、円弧側が薄い略L字形状に形成されている。蓋12は、本体11の円弧側の薄い部分を補う平板として形成されている。つまり、蓋12は本体11における円弧側の薄い部分に取り付けられており、本体11と蓋12とで全体的に厚板状の塗布ノズル10を構成している。なお、本体11と蓋12とは、図示せぬビスで固定されている。
【0017】
塗布ノズル10は、ノズルスリット15と、内部空間16と、導入通路17と、を具備している。ノズルスリット15、内部空間16、および導入通路17は、塗布ノズル10における略扇形状の要側から円弧側に向かって、導入通路17、内部空間16、ノズルスリット15の順に、それぞれが連通するように塗布ノズル10に形成されている。
【0018】
ノズルスリット15は、平面視において略扇形状の塗布ノズル10の円弧側に形成されている。より詳しくは、ノズルスリット15は、塗布ノズル10の蓋12に形成される凹部の開口面を本体11で塞ぐことにより形成されている。ノズルスリット15は、平面視において所定の大きさの中心角を有した略扇形状に形成されている。ノズルスリット15は、塗料Pの吐出側に位置するノズルスリット出口15Eと、内部空間16側に位置するノズルスリット入口15Gとを備えたスリットとして構成されている。つまり、ノズルスリット15は、その幅方向寸法がノズルスリット入口15G側からノズルスリット出口15E側へ向けて拡大する略扇形状に構成されている。ここで、略扇形状に形成されるノズルスリット15の前記中心角を開き角αとして定義する。
【0019】
ノズルスリット出口15Eは、ノズルスリット15において略扇形状の円弧に相当する部分である。ノズルスリット出口15Eは、ノズルスリット高さとしてのスリット高さD、およびノズルスリット幅としてのスリット幅Wを有している。スリット高さDは、塗布ノズル10の厚み方向におけるノズルスリット出口15Eの寸法(ノズルスリット出口15Eの隙間)であり、スリット幅Wは、塗布ノズル10の幅方向におけるノズルスリット出口15Eの寸法である。また、スリット幅Wは、平面視にて円弧形状に形成されるノズルスリット出口15Eにおいて、この円弧の弦となる部分の寸法である。ここで、スリット幅Wに対するスリット高さDの割合を扁平率Fとして定義する。
【0020】
ノズルスリット入口15Gは、平面視において略扇形状に形成される内部空間16とノズルスリット15との境界部に位置しており、内部空間16の略扇形状における円弧に相当する部分である。ノズルスリット入口15Gにおける塗布ノズル10の厚み方向の寸法は、ノズルスリット出口15Eと同様のスリット高さDに構成されている。
【0021】
内部空間16は、平面視において略扇形状の塗布ノズル10の略中央に形成されている。より詳しくは、内部空間16は、塗布ノズル10の本体に形成される凹部および蓋12に形成される凹部により構成されている。内部空間16は、平面視において所定の中心角(開き角α)を有した略扇形状に形成されている。略扇形状に形成される内部空間16におけるノズルスリット15側の端部は、略扇形状の円弧に相当する部分であって、内部空間16における塗布ノズル10の厚み方向の寸法は、スリット高さDよりも十分に大きい高さに構成されている。
【0022】
導入通路17は、平面視において略扇形状の塗布ノズル10の要側に形成されている。より詳しくは、導入通路17は、塗布ノズル10の本体および蓋12に形成される凹部により構成されている。導入通路17は、略円柱状に形成されている。
【0023】
ここで、特記すべき事項として、実施形態1の塗布ノズル10のノズルスリット15は、開き角αが80°とされ、スリット幅Wが39mmとされ、スリット高さDが0.4mmとされている。このとき、扁平率Fは0.01となる。なお、従来の塗布ノズルにおいては、例えば開き角が90°とされ、スリット幅が43mmとされ、スリット高さが0.6mmとされており、ノズルスリット出口の開口面積が、本実施形態1における塗布ノズル10のノズルスリット出口15Eの開口面積よりも大きく形成されていたものとする。
【0024】
本実施形態1の塗布ノズル10によれば、スリット幅Wを39mmとし、スリット高さDを0.4mmとし、扁平率Fを0.01としたことで、ノズルスリット出口15Eの開口面積が従来の塗布ノズルと比較して小さくなる。そのため、上述したフィルタ53のメッシュサイズは、スリット高さDの0.4mmと同等以上のサイズを選定するものとし、プランジャポンプ52および定量ポンプ56の選定については、開口面積が狭くなることやフィルタの選定による圧力損失分が考慮されるものとする。
【0025】
実施形態1の塗布ノズル10および従来の塗布ノズルに共通の作用について説明する。以下、厚さ方向、幅方向および高さ方向については、図2に示した方向を参照して説明する。
塗装設備50の定量ポンプ56から、塗布ノズル10の導入通路17へ塗料Pが所定圧力で送り込まれ、導入通路17へ送り込まれた塗料Pは内部空間16へ供給され、供給された塗料Pは内部空間16で一時的に貯溜される。このとき、導入通路17と比較して広い空間の内部空間16へ塗料Pが一度放出され、塗料Pに生じている内部圧力の偏りが均一化される。
【0026】
そして、内部空間16からノズルスリット入口15Gへ塗料Pが押し出され、ノズルスリット入口15Gに押し込まれた塗料Pは、ノズルスリット15を経て、ノズルスリット出口15Eから吐出され、車体70に向かって吹き付けられる。車体70に吹き付けられる塗料Pは、ノズルスリット出口15Eから幅方向では放射状に広がりながら、かつ、厚さ方向では一定厚さのフィルム状に形成されながら吐出されて、車体70の表面に付着する。
【0027】
実施形態1の塗布ノズル10に特有の作用および効果について説明する。
従来、塗布ノズルによって塗料Pを車体70の表面に吹き付ける場合には、車体70の近傍では塗装膜が一旦高さ方向(塗装膜の塗装表面に対して垂直な方向)に積み重なるように形成され、塗装表面に対して垂直に形成された塗装膜が塗布ノズルの移動方向(塗布ノズルの厚さ方向)に不均一に倒れ、不均一に倒れた塗装膜が車体70の表面に不均一な凹凸を形成する不具合が生じていた。
【0028】
本実施形態1の塗布ノズル10によれば、スリット幅Wを39mmとし、スリット高さDを0.4mmとし、扁平率Fを0.01としたことで、ノズルスリット出口15Eの開口面積が従来の塗布ノズルと比較して小さくなる。そのため、単位時間あたりの塗料Pの吹き付け量(吐出量)を同一とした場合には、本実施形態1の塗布ノズル10を用いた場合の塗料Pの車体70近傍での流速は、従来の塗布ノズルを用いた場合の塗料Pの流速と比較して速いものとなる。そして、塗料Pの車体70近傍での流速が速いことで、車体70の表面に塗布された塗装膜が塗布ノズル10から吐出されてくる塗料により押し潰され、塗装膜が高さ方向(塗装膜の塗装表面に対して垂直な方向)に成長することが抑制される。したがって、従来形成されていた不均一な凹凸の振幅と波長を小さくすることができ、不均一な凹凸を抑制でき、車体70の塗装表面を平滑にできる。
【0029】
例えば、図4に示すように、従来の塗布ノズルを用いた場合の車体70に吹き付けた塗料Pの塗装膜における凹凸の振幅Rmax2および波長λ2(図4(b)参照)に対して、本実施形態1の塗布ノズル10を用いた場合の塗装膜凹凸の振幅Rmax1および波長λ1(図4(a)参照)を小さくすることができる。つまり、Rmax1<Rmax2、λ1<λ2とすることができる。
【0030】
また、一般に高粘性塗料では、粘度と剪断速度との間に相関関係があり、剪断速度が遅いほど粘度が高くなり、剪断速度が速いほど粘度が低くなる。ここで、流速と剪断速度とを近似して考えた場合には、流速が速いほど粘度が低くなるといえる。すなわち、本実施形態1の塗布ノズル10を用いた場合の塗料Pの車体70近傍での流速は、従来の塗布ノズルを用いた場合の塗料Pの流速と比較して速いため、粘度は低いものとなる。そのため、塗料Pは、粘度が低い状態で車体70に吹き付けられることになり、車体70の表面での流動性が向上するため、車体70の塗装表面をさらに平滑にすることができる。
【0031】
従来、塗布ノズルによって吹き付ける場合には、塗装幅(幅方向の寸法)を広くしたいため、塗布ノズルにおける略扇形形状の開き角αが90°とされていた。本実施形態1の塗布ノズル10を用いた場合の塗料Pの車体70近傍での流速は、従来の塗布ノズルを用いた場合の塗料Pの流速と比較して速いものとなる。そのため、塗布ノズル10から吹き出される際の塗料Pは、幅方向の速度成分も速くなり、塗布ノズル10の開き角αを従来の塗布ノズルと同じ角度に設定すると、必要以上に塗装幅が広くなる。そこで、実施形態1の塗布ノズル10によれば、ノズルスリット15の開き角αを80°とすることで、塗布ノズル10によって吹き出された状態では、必要以上に塗装幅が広くなることを抑制できる。
【0032】
同時に、塗料Pを塗布ノズル10から吹き出す際の高さ方向の速度成分を速くすることができ、車体70の表面では塗布された塗装膜が塗布ノズル10から吹き出されてくる塗料Pにより押し潰され、塗装膜の高さ方向への形成の成長が抑制される。したがって、不必要に塗装膜表面に凹凸が形成されることを抑制でき、車体70の塗装表面を平滑にできる。
【0033】
このようにして、実施形態1の塗布ノズル10によれば、車体70の塗装表面を平滑にできる。
【0034】
なお、実施形態1の塗布ノズル10におけるノズルスリット15は、開き角αを80°とし、スリット幅Wを39mmとし、スリット高さDを0.4mmとし、扁平率Fを0.01としているものの、開き角αを80°以上とし、スリット幅Wを35mm以上とし、扁平率Fを0.01以下とすれば、同様の作用効果が得られる。
【0035】
図5を用いて、実施形態2である塗布ノズル20について説明する。
図5(A)は塗布ノズル20の平面図を示し、図5(B)は塗布ノズル20の正面図を示し、図5(C)は塗布ノズル20の図5(A)におけるS2−S2の断面図を示している。
塗布ノズル20は、本体21と、蓋22と、蓋23と、を具備している。塗布ノズル10は、平面視において略扇形状に形成される厚板状の部材で構成されている。本体21は、側面視において要側が厚く、円弧側の表側および裏側が薄い略T字形状に形成されている。蓋12および蓋23は、本体21の円弧側の薄い部分を補う平板として形成されている。つまり、蓋22・23は本体11における円弧側の薄い部分の表側および裏側にそれぞれ取り付けられており、本体11と蓋22・23とで全体的に厚板状の塗布ノズル20を構成している。なお、本体21と蓋22と蓋23とは、図示せぬビスで固定されている。
【0036】
塗布ノズル20は、2つのノズルスリット25・26と、内部空間16と、導入通路17と、を具備している。ノズルスリット25・26、内部空間16、および導入通路17は、塗布ノズル20における略扇形状の要側から円弧側に向かって、導入通路17、内部空間16、ノズルスリット25・26の順に、それぞれが連通するように塗布ノズル20に形成されている。また、ノズルスリット25・26は、塗布ノズル20の厚み方向に積層した状態で配置されている。
【0037】
ノズルスリット25・26は、平面視において略扇形状の塗布ノズル20の円弧側に形成されている。より詳しくは、ノズルスリット25は、蓋22に形成される凹部の開口面を本体21で塞ぐことにより形成され、ノズルスリット26は、蓋23に形成される凹部の開口面を本体21で塞ぐことにより形成されている。ノズルスリット25・26は、それぞれ同形状に形成され、側面視では互いに平行になるように塗布ノズル20に形成されている。
【0038】
内部空間16および導入通路17について、ならびにノズルスリット25・26に関するノズルスリット出口25E・26E、ノズルスリット入口25G・26G、開き角α、スリット高さD、スリット幅W、および扁平率Fについては、実施形態1の塗布ノズル10と同様であるため説明を省略する。また、ノズルスリット25・26は、開き角αが80°とされ、スリット幅Wが39mmとされ、スリット高さDが0.4とされ、扁平率Fは0.01となる点についても実施形態1のノズルスリット15と同様である。
【0039】
実施形態2の塗布ノズル20の作用について説明する。
実施形態2の塗布ノズル20によれば、ノズルスリット出口25E・26Eの開口面積を従来と比較して小さくしているため、塗料Pの車体70近傍での流速が従来と比較して速いものとなり、車体70の表面の塗装膜が押し潰され、塗装膜が一旦高さ方向に形成されることが抑制される点については実施形態1の塗布ノズル10と同様である。
【0040】
この点に加え、実施形態2の塗布ノズル20によれば、塗装表面に発生する凹凸を複数箇所のノズルスリット出口25E・26Eから吹き出される塗料Pが互いに打ち消しあうことで、塗装表面を平滑にできる。また、仮にノズルスリット25が先行する(塗布ノズル20の移動方向における前方に位置する)とした場合には、ノズルスリット25から吹き出され塗布された塗料を、後行するノズルスリット26から吹き出された塗料が塗布ノズル20の移動方向へ押し潰すため、塗料Pの車体70に対する密着力を向上させることができる。
【0041】
このようにして、実施形態2の塗布ノズル20によれば、車体70の塗装表面を平滑にできる。また、塗料Pの車体70に対する密着力を向上させることができる。
【符号の説明】
【0042】
10 塗布ノズル(実施形態1)
20 塗布ノズル(実施形態2)
15G ノズルスリット入口
15 ノズルスリット
15E ノズルスリット出口
16 内部空間
17 導入通路
P 高粘性塗料
D スリット高さ
W スリット幅
α 開き角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連通する導入通路、内部空間、およびノズルスリットを順に備え、
前記導入通路より前記内部空間に高粘性塗料を供給し、
前記内部空間にて一時高粘性塗料を貯溜し、
前記高粘性塗料を、前記ノズルスリットから放射方向に吐出して被塗装体に対して吹き付ける高粘性塗料の塗布ノズルであって、
前記ノズルスリットは、その幅方向寸法が内部空間側から高粘性塗料吐出側へ向けて拡大する、所定の大きさの中心角を有した略扇形状に構成され、
前記ノズルスリットにおける略扇形状の円弧に相当する部分を、ノズルスリット出口とし、
前記ノズルスリット出口の間隙を、ノズルスリット高さとし、
円弧形状に形成される前記ノズルスリット出口における、該円弧の弦を、ノズルスリット幅とし、
前記ノズルスリット幅に対する前記ノズルスリット高さの割合を、扁平率とし、
前記ノズルスリット幅を、35mm以上とし、
前記扁平率を、0.01以下とする、
高粘性塗料の塗布ノズル。
【請求項2】
請求項1記載の高粘性塗料の塗布ノズルであって、
前記中心角は、80°以上とする、
高粘性塗料の塗布ノズル。
【請求項3】
請求項1又は2記載の高粘性塗料の塗布ノズルであって、
前記ノズルスリットを複数具備する、
高粘性塗料の塗布ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−11284(P2012−11284A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148293(P2010−148293)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【Fターム(参考)】