説明

高純度カチオン系重合体の製造方法

【課題】機能性材料の原料として好適な高純度カチオン系重合体を提供する。
【解決手段】一般式(I)


(式中、R1およびR2は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示し、それらはたがいに同一であっても異なっていてもよい。)で表されるサクシンイミド誘導体を含むカチオン系重合体溶液に、イオン交換膜電気透析で除去可能な無機塩を加え、この溶液をイオン交換膜電気透析に付してサクシンイミド誘導体を除去することを特徴とする、高純度カチオン系重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高純度カチオン系重合体の製造方法、さらに詳しくは、高純度で保存安定性に優れ、機能性材料の原料として好適なカチオン系重合体を効率よく製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カチオン系重合体は水溶性であって、様々な分野において幅広く用いられており、例えば凝集剤や汚泥脱水剤を始め、接着剤、製紙用薬剤、帯電防止剤、塗料、アンカーコート剤、染料固着剤、インクジェット式印刷用薬剤などの各種の機能性材料の原料に利用されている。
【0003】
カチオン系重合体であるポリアリルアミンやポリジアリルアミンの製造は、例えば以下のようにして行われる。すなわち、通常、水系媒体中においてカチオン系単量体であるモノアリルアミン塩酸塩やジアリルアミン塩酸塩を、重合開始剤である2,2′−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジンの無機酸塩または有機酸塩の存在下に重合させ、得られたカチオン系重合体塩酸塩であるポリアリルアミン塩酸塩やポリジアリルアミン塩酸塩を、アルカリで中和処理し、副生する中和塩を除去するため透析等の精製手段に付することにより、遊離のカチオン系重合体であるポリアリルアミンやポリジアリルアミンを製造することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このように精製した遊離のカチオン系重合体においてさえも、重合開始剤に由来するテトラメチルサクシンイミド(以下、TMSIということがある)が依然として残存しているという問題があった。カチオン系重合体にTMSIが少量のみ含まれている場合は、さらにイオン交換樹脂による精製方法を行うことも有効であるが、多量に残存するTMSIを除去するためにはきわめて大量の樹脂を必要とするため、この方法は不向きである。
【0005】
一方、近年、低分子量のカチオン系重合体の需要が多くなってきているが、低分子量カチオン系重合体の製造には、特に大量の重合開始剤を使用するため、その結果、得られた低分子量カチオン系重合体にTMSIが多量に含まれて、これを除去するのには時間がかかるという問題があった。また、このようにTMSIを含有するカチオン系重合体は、これを各種の機能性材料の原料として用いた場合、機能性材料の性能を低下させる要因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、TMSIなどのサクシンイミド誘導体を含むカチオン系重合体溶液に、イオン交換膜電気透析で除去可能な無機塩を加え、この溶液をイオン交換膜電気透析に付すことにより、TMSIなどのサクシンイミド誘導体を短時間で除去できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) 一般式(I)
【0008】
【化1】

(式中、R1およびR2は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示し、それらはたがいに同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるサクシンイミド誘導体を含むカチオン系重合体溶液に、イオン交換膜電気透析で除去可能な無機塩を加え、この溶液をイオン交換膜電気透析に付してサクシンイミド誘導体を除去することを特徴とする、高純度カチオン系重合体の製造方法、
(2) カチオン系重合体溶液が、水系媒体中においてカチオン系単量体の付加塩をアゾ系ラジカル重合開始剤の存在下に重合させ、得られたカチオン系重合体付加塩溶液をアルカリで中和処理し、副生する中和塩を除去して得られた遊離のカチオン系重合体溶液である、上記(1)に記載の高純度カチオン系重合体の製造方法、
(3) カチオン系単量体がモノまたはジアリルアミン類の付加塩である、上記(2)に記載の高純度カチオン系重合体の製造方法、
(4) 無機塩を加えてイオン交換膜電気透析することを複数回行う、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高純度カチオン系重合体の製造方法、および
(5) 無機塩が塩化ナトリウムである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の高純度カチオン系重合体の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カチオン系重合体溶液中のTMSIなどのサクシンイミド誘導体を短時間で効率的に除去することができ、機能性材料の原料として好適な高純度カチオン系重合体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、
(A)出発原料として、一般式(I)
【化2】

(式中、R1およびR2は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示し、それらはたがいに同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるサクシンイミド誘導体を含むカチオン系重合体溶液を用い、
(B)処理手段として、上記サクシンイミド誘導体含有カチオン系重合体溶液に、イオン交換膜電気透析で除去可能な無機塩を加え、この溶液をイオン交換膜電気透析に付して上記サクシンイミド誘導体を除去するという手段を採用することにより、
(C)目的物質として、高純度カチオン系重合体を製造するというものである。
以下、出発材料(A)、処理手段(B)および目的物質(C)について順次説明する。
【0011】
(A)出発物質
本発明において出発材料として用いられるものは、サクシンイミド誘導体を含むカチオン系重合体溶液であり、サクシンイミド誘導体は、カチオン系単量体を重合させてカチオン系重合体を製造するときに用いられるアゾビス(アミジノアルカン)の付加塩などのアゾ系ラジカル重合開始剤に由来するものであり、カチオン系重合体がサクシンイミド誘導体を含有していると、このカチオン系重合体を上記したような機能性材料の原料として用いたときに機能性材料の性能低下の要因となる。
【0012】
本発明において出発材料として用いる、サクシンイミド誘導体を含むカチオン系重合体溶液は、カチオン系重合体付加塩の溶液および遊離のカチオン系重合体の溶液の両者を意味するものであり、その具体例としては、
(i)水系媒体中においてアゾ系ラジカル重合開始剤の存在下にカチオン系単量体付加塩を重合させて得られたカチオン系重合体付加塩溶液
(ii)上記(i)のカチオン系重合体付加塩溶液をアルカリで中和処理し、副生する中和塩を除去して得られた遊離のカチオン系重合体溶液
(iii)上記(i)のカチオン系重合体付加塩溶液を特開2001−226421号公報に記載のように、酸またはアルカリ等で処理し、この溶液中のアゾ系ラジカル重合開始剤またはその変性物をサクシンイミド誘導体に変換したもの
を例示できる。
上記(i)〜(iii)のカチオン系重合体溶液について以下に詳述する。
【0013】
(i)カチオン系重合体付加塩溶液
(i)のカチオン系重合体付加塩溶液は、上述したように水系媒体中において、アゾ系ラジカル重合開始剤の存在下にカチオン系単量体付加塩を重合させて得られたものであり、ここで用いる水系媒体としては、例えば水を始め、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸などの無機酸またはその水溶液、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸などの有機酸またはその水溶液、さらには塩化亜鉛、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの無機酸塩の水溶液などが挙げられる。またアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒を単独で、または上記水系媒体とともに用いてもよい。これらは1種用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、アゾ系ラジカル重合開始剤としては、例えば、一般式(II)
【0014】
【化3】

(式中、R1およびR2は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示し、それらはたがいに同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるアゾビス(アミジノアルカン)の付加塩が用いられる。
【0015】
上記一般式(II)におけるR1およびR2の具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基が挙げられる。
【0016】
この一般式(II)表されるアゾビス(アミジノアルカン)の具体例としては、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)(別名2,2′−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン)、2,2′−アゾビス(2−アミジノブタン)、2,2′−アゾビス(2−アミジノペンタン)、2,2′−アゾビス(2−アミジノ−3−メチルブタン)、3,3′−アゾビス(3−アミジノペンタン)、3,3′−アゾビス(3−アミジノヘキサン)、3,3′−アゾビス(3−アミジノ−4−メチルペンタン)、4,4′−アゾビス(4−アミジノヘプタン)などが挙げられる。ラジカル重合開始剤として、これらの化合物の付加塩が用いられるが、特に2,2′−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン付加塩が好適である。
【0017】
付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、アルキル硫酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩などの無機酸付加塩または有機酸付加塩を挙げることができる。上記アゾビス(アミジノアルカン)付加塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記(i)のカチオン系重合体付加塩溶液を製造するためのカチオン系単量体付加塩としては、特に制限はなく、水系媒体中において前記一般式(II)で表されるアゾビス(アミジノアルカン)の付加塩からなるラジカル重合開始剤の存在下に重合しうる化合物であればよく、特に制限はない。このようなカチオン系単量体付加塩としては、例えば、モノアリルアミン、N−メチルアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N−シクロヘキシルアリルアミン、N,N−(メチル)シクロヘキシルアリルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアリルアミン、ジアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、N−ベンジルジアリルアミンなどのモノまたはジアリルアミン類の各付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。さらには塩化ジアリルジメチルアンモニウム、臭化ジアリルジメチルアンモニウム、ヨウ化ジアリルジメチルアンモニウム、メチル硫酸ジアリルジメチルアンモニウム、塩化ジアリルメチルベンジルアンモニウム、臭化ジアリルメチルベンジルアンモニウム、ヨウ化ジアリルメチルベンジルアンモニウム、メチル硫酸ジアリルメチルベンジルアンモニウム、塩化ジアリルジベンジルアンモニウム、臭化ジアリルジベンジルアンモニウム、ヨウ化ジアリルジベンジルアンモニウム、メチル硫酸ジアリルジベンジルアンモニウムなどのジアリルアミンの四級アンモニウム塩などが挙げられる。これらのカチオン系単量体付加塩は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
重合に際して、前記のカチオン系単量体付加塩は、単離された結晶の形で使用されるのが普通であるが、遊離の単量体またはその水溶液と酸とを混合させて、仕込み系中でその付加塩を生成させてもよい。言うまでもなく、酸の水溶液を重合媒体として使用する場合には、所定量の遊離カチオン系単量体と酸の水溶液とを混合し、そのまま重合させることができる。
【0020】
重合反応における前記ラジカル重合開始剤の添加量は、使用するカチオン系単量体付加塩の種類により異なるが、通常カチオン系単量体付加塩に対して、0.1〜100モル%の範囲で選ばれる。この量が0.1モル%未満では重合体の重合率が低く、実用的でないし、100モル%を超えると所望の分子量の重合体が得られにくい上、経済的に不利となる。好ましい添加量は0.2〜100モル%の範囲であり、より好ましくは0.7〜50モル%、さらに好ましくは1〜40モル%の範囲である。このラジカル重合開始剤は、時間をおいて、複数回に分けて添加してもよい。
【0021】
重合温度は、使用するカチオン系単量体付加塩の種類や水系溶媒の種類などにより異なるが、通常30℃〜還流温度、好ましくは60〜100℃の範囲である。また、重合時間は、使用するカチオン系単量体付加塩の種類、重合温度、ラジカル重合開始剤の量などに左右され、一概に定めることはできないが、通常200時間以内で十分である。カチオン系単量体の濃度は、その溶解度の範囲で高いほうが望ましいが、通常30重量%以上、好ましくは50〜90重量%である。
【0022】
このようにして、(i)のカチオン系重合体付加塩溶液が得られる。このカチオン系重合体溶液は、アゾ系ラジカル重合開始剤またはその変性物に由来するサクシンイミド誘導体を多量に含有している。
【0023】
(ii)の遊離のカチオン系重合体溶液
(ii)の遊離のカチオン系重合体溶液は、上記(i)のカチオン系重合体付加塩溶液をアルカリで中和処理し、副生する中和塩を除去して得られるものである。この場合、中和塩の除去手段としては透析が好ましく、透析としてはイオン交換膜電気透析が最も好適である。このカチオン重合体溶液は、上記処理によってサクシンイミド誘導体はある程度除去されているが、なおサクシンイミド誘導体を含有している。
【0024】
(iii)のカチオン系重合体溶液
(iii)のカチオン系重合体溶液は、上記の(i)のカチオン系重合体付加塩溶液を特開2001−226421号公報に記載のように、酸またはアルカリ等で処理し、この溶液中のアゾ系ラジカル重合開始剤またはその変性物を、さらにサクシンイミド誘導体に変換したものである。このカチオン重合体溶液は多量のサクシンイミド誘導体を含有している。
【0025】
(B)処理手段
本発明においては、上述のサクシンイミド誘導体含有カチオン系重合体溶液に、イオン交換膜電気透析で除去可能な無機塩を加え、その溶液をイオン交換膜電気透析に付してサクシンイミド誘導体を除去する。
【0026】
本発明に用いるカチオン系重合体溶液としては、イオン交換膜電気透析に付することのできる溶液であれば、特に限定しないが、水系溶媒が好ましく、例えば水溶液が最も好ましく、その他として塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸などの無機酸を含む水溶液、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸などの有機酸を含む水溶液、アルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドを含む水系溶媒などが挙げられる。
【0027】
本発明において、イオン交換膜電気透析で除去可能な無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等を例示できる。無機塩の全使用量は、カチオン系重合体溶液に含まれているサクシンイミド誘導体によって異なるが、例えば、原料のカチオン系重合体のカチオンの0.5〜100倍モル数が好ましく、1.5〜30倍モル数が特に好ましい。無機塩をカチオン系重合体の溶液に加えてはイオン交換膜電気透析し、無機塩がほぼなくなったら、例えば添加量の1/100以下になったら、さらに無機塩を加えてイオン交換膜電気透析を繰り返すという複数回の操作をすることが好ましく、例えば3〜30回、無機塩を加えたイオン交換膜電気透析を繰り返すことが好ましい。無機塩添加後のイオン交換膜電気透析の1回の操作時間は、処理スケールや使用する無機塩により異なるので、適宜調製することが好ましい。このような操作をすることにより、サクシンイミド誘導体が除去されるスピードが速くなる。
【0028】
なお、本発明に用いるイオン交換膜電気透析は、例えば、特開昭63−286405号公報に記載されているような、カチオン性重合体の精製に用いることのできる従来公知の一般的なイオン交換膜電気透析の方法をそのまま用いることができる。
【0029】
(C)目的物質
出発材料(A)として、上述のサクシンイミド誘導体含有カチオン系重合体溶液を用い、これに処理手段(B)として、上述の無機塩添加後のイオン交換膜電気透析を行うことにより、サクシンイミド誘導体が効率的に除去されて、目的物質(C)として、高純度のカチオン系重合体を得ることができる。
得られた高純度カチオン系重合体は、サクシンイミド誘導体等の不純物が除去されて、保存安定性に優れているので、機能性材料の原料として好適に用いられる。
【0030】
実施例
参考例1 TMSIの測定
本発明の方法を実施した後の処理液のTMSI(テトラメチルサクシンイミド)含有量の測定は、東ソー(株)L−8020型高速液体クロマトグラフを使用して行った。検出器はUV−8020型紫外可視検出器(波長210nm)、カラムは東ソー(株)TSKgel α−2500とTSKgel αガードカラムとを直列に接続したものを用いた。溶離液には50Mm−リン酸ナトリウム水溶液、カラム温度は40℃、流速は1.0ml/分の条件で実施した。サンプルは溶離液で処理液を10倍に希釈調製したものを20μl注入した。
【0031】
実施例1.ポリアリルアミン水溶液中のTMSIの除去
モノアリルアミン塩酸塩を2,2′−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩の存在下に重合させ、得られたポリアリルアミン塩酸塩を水酸化ナトリウムで中和し、副生する中和塩をイオン交換膜電気透析により除去して得られた遊離のポリアリルアミン(分子量8,000)の15%水溶液3000g(7.88mol、純体量450g、無機塩濃度0.1%以下、TMSI1000ppm含有)をガラスビーカーに秤量し、次いで塩化ナトリウム230g(3.94mol)を加えて均一溶解させた。
【0032】
得られたその溶液をイオン交換膜電気透析装置(旭硝子製CH−ゼロ型、セレミオン陽イオン交換膜CMV11枚、陰イオン交換膜AMV11枚)に付してTMSIの除去を行った。1回の処理時間は8時間とし、その都度同量の塩化ナトリウムを添加して、同処理を継続させた。塩化ナトリウムの添加は8回、処理は合計64時間行った。また比較例1として、塩化ナトリウムを添加しないで同様に処理した場合についても実験を行った。その結果を図1に示す。図1より、実施例1では、比較例1に比べて、TMSI濃度の低下が著しいことが明らかである。
【0033】
最終的に得られた処理液について高速液体クロマトグラフィー法にてTMSI含有量を測定したところ、実施例1のTMSI除去率は95.6%、比較例1のTMSI除去率は59.0%であった。
【0034】
実施例2.ポリジアリルアミン水溶液中のTMSIの除去
ジアリルアミン塩酸塩を2,2′−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩の存在下に重合させ、得られたポリジアリルアミン塩酸塩を水酸化ナトリウムで中和し、副生する中和塩をイオン交換膜電気透析で除去して得られた遊離のポリジアリルアミン(分子量4,000)の15%水溶液3000g(4.63mol、純体量450g、無機塩濃度0.1%以下、TMSIを5000ppm含有)をガラスビーカーに秤量し、次いで塩化ナトリウム135g(2.32mol)を加えて均一溶解させた。その後は実施例1と同様な方法にて処理を行った。また比較例2として、塩化ナトリウムを添加しないで同様に処理した場合についても実験を行った。その結果を図2に示す。図2より、実施例2では、比較例2に比べて、TMSI濃度の低下が著しいことが明らかである。
最終的に得られた処理液について高速液体クロマトグラフィー法にてTMSI含有量を測定したところ、実施例1のTMSI除去率は96.0%、比較例2のTMSI除去率は27.3%であった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、高純度で保存安定性に優れ、機能性材料の原料として好適なカチオン系重合体が提供された。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1および比較例1における処理時間(回数)とTMSIの濃度との関係を示すグラフである。
【図2】実施例2および比較例2における処理時間(回数)とTMSIの濃度との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、R1およびR2は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示し、それらはたがいに同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるサクシンイミド誘導体を含むカチオン系重合体溶液に、イオン交換膜電気透析で除去可能な無機塩を加え、この溶液をイオン交換膜電気透析に付してサクシンイミド誘導体を除去することを特徴とする、高純度カチオン系重合体の製造方法。
【請求項2】
カチオン系重合体溶液が、水系媒体中においてカチオン系単量体の付加塩をアゾ系ラジカル重合開始剤の存在下に重合させ、得られたカチオン系重合体付加塩溶液をアルカリで中和処理し、副生する中和塩を除去して得られた遊離のカチオン系重合体溶液である、請求項1に記載の高純度カチオン系重合体の製造方法。
【請求項3】
カチオン系単量体がモノまたはジアリルアミン類の付加塩である、請求項2に記載の高純度カチオン系重合体の製造方法。
【請求項4】
無機塩を加えてイオン交換膜電気透析することを複数回行う、請求項1〜3のいずれかに記載の高純度カチオン系重合体の製造方法。
【請求項5】
無機塩が塩化ナトリウムである、請求項1〜4のいずれかに記載の高純度カチオン系重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−43174(P2010−43174A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207606(P2008−207606)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】