説明

魚の分離装置および魚の分離方法

【課題】 複数の稚魚を簡単に1匹ずつに分離することのできる魚の分離装置および魚の分離方法を提供することである。
【解決手段】 魚の分離装置20は、底部が底蓋26によって開閉可能にふさがれる水槽21と、水槽21の下方に設けられる複数の仕切り壁28とを含んで構成され、魚の集合体と魚23を収容する液体24とを水槽21に保持した状態から、底蓋26を開くことによって、魚の集合体と液体24とを鉛直下方に落下させて放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の魚から成る魚の集合体を、1匹ずつの魚に分離する魚の分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
魚の養殖においては、形状に異常が見られる稚魚を判別し、除去する必要がある。養殖において、形状がよく、健康な稚魚の個体数は多ければ多いほどよいことから、取扱う稚魚の個体数も多いことが望まれる。しかし稚魚が多くなれば多くなるほど、稚魚の良否の判定に多くの時間と労力がかかるため、稚魚の良否を判定することにも効率化が求められる。
【0003】
稚魚の良否を判別するときには、この判別の工程に先立って、複数の稚魚を1匹ずつに分離する必要がある。この分離を行う工程は、魚に傷がつくことを防止するために、水中で行うことが望まれる。これまで、稚魚の良否を判別するために、複数の稚魚を1匹ずつに分離する工程は、人の手によって行われてきた。複数の稚魚を収容する水槽の中では、稚魚は水槽の中を泳ぎまわることができ、稚魚の位置が固定されない。したがって、稚魚を1匹ずつ人の手によって捕捉することは困難である。また網を用いて稚魚を捕捉する方法では、稚魚が暴れるときに、稚魚に傷がつきやすいという問題がある。
【0004】
稚魚を水中に泳がせたまま、稚魚を1匹ずつに分離する装置としては、水路の幅寸法が、水流の上流側から下流側に向かうにつれて、狭くなるような水路用の溝を用いる魚の分離装置が考案された。
【0005】
図31は、従来技術に係る魚の分離装置1において、複数の稚魚2を1匹ずつに分離しようとする状態における、魚の分離装置1の平面図である。この魚の分離装置1では、稚魚2を水流の方向に1列に並ばせるために、水路上流から下流に向けて水を流し、稚魚2を水路上流から下流に移動させることによって、水路の幅寸法の狭い下流域において稚魚2の列を一列にしようとする装置である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水路上流側から下流側に向かうにつれて、幅寸法が狭くなるような水路用の溝部3を用いる魚の分離装置1においては、水を流さない場合には、複数の稚魚2全体としは移動しないために、稚魚2を1匹ずつに分離することはできない。幅寸法が広くなっている上流域から、幅寸法が狭くなっている下流域に向かって水を流すと、稚魚は水流に逆らって泳ぐ性質があるため、この場合にも稚魚を全体として下流域に移動させることは難しい。また複数の稚魚2のうち、下流域に向かう稚魚2がいても、幅寸法が狭くなっている下流域において稚魚2は水路の幅方向に複数並んでしまい、稚魚2が水路の下流域を通過しようとすることが妨げられてしまうという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、複数の稚魚を簡単に1匹ずつに分離することのできる魚の分離装置および魚の分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、魚の集合体を液体とともに収容可能で、底部が底蓋によって開閉可能に塞がれる水槽と、
水槽の下方に設けられ、複数の仕切り壁が平行に立てて設けられ、隣り合う仕切り壁の互いに対向する表面間の距離が魚の体幅の1倍以上2倍未満であり、各仕切り壁の下端部間が底部材によって連結される分離体とを含むことを特徴とする魚の分離装置である。
【0009】
また本発明は、隣り合う前記仕切り壁同士の、厚み方向の間隔は、鉛直上方から鉛直下方に向かうにつれて、狭くなっていることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、厚み方向に隣り合う仕切り壁の下端部の、互いに対向する表面間の距離は、分離の対象となる魚の体幅の1.5倍以内であることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記底部材の水槽側に臨む面の少なくとも一部は、水平な仮想平面に対して傾斜する傾斜面として形成され、
傾斜面は、仕切り壁の厚み方向に垂直でかつ水平な方向の一方に向かうにつれて、鉛直上方に向かう平面または曲面であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、底部材は、厚み方向に貫通する複数の孔が形成された複数の板状部材を含み、複数の板状部材は厚み方向に重ねられ、複数の板状部材のうち一方の板状部材に形成された複数の孔と、他方の板状部材に形成された複数の孔とは板状部材の厚み方向に連通可能であることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記分離体よりも、仕切り壁間の空間を通る液体の流れ方向下流側に設けられ、流路の幅寸法を魚の体幅の1倍以上2倍未満として、流路を構成する流路構成体と、
流路内に突出して設けられ、可撓性を有し、魚が通過する通過領域を幅方向から規定する通路幅制限手段とをさらに含み、
通路幅制限手段は、流路を流れる液体の流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かうにつれて、前記通過領域の幅寸法が狭くなるように通過領域を規定することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記通路幅制限手段は、1つの流路内において複数設けられ、複数の通路幅制限手段は流れ方向にそれぞれ互いに離れて位置することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記流路構成体には、流路を規定する溝部が複数設けられ、
複数の溝部は、流れ方向に垂直でかつ水平な方向に並び、
各溝部は、流路を下方から規定する床部と、
床部から上方に突出し、流れ方向に長手方向を有し、流路を流路の幅方向両側から規定する垂直部とを含み、
各溝部において、流路を前記幅方向から規定する2つの垂直部のそれぞれの流れ方向下流側端部は、流れ方向に互いに異なる位置に形成され、
前記下流側端部のうち、流れ方向上流側に位置する下流側端部の下流側の位置を合流点として、前記上流側に位置する下流側端部を挟む両側の2つの流路は、合流点の下流側において、互いに合流した1つの流路として形成され、
互いに合流した1つの流路の幅寸法は、魚の体幅の2倍未満であることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、魚の集合体を液体とともに収容可能で、底部が底蓋によって開閉可能に塞がれる水槽と、
水槽の下方に設けられ、複数の仕切り壁が平行に立てて設けられ、隣り合う仕切り壁の互いに対向する表面間の距離が魚の体幅の1倍以上2倍未満であり、各仕切り壁の下端部間を塞ぐ底部材が設けられる分離体とを用い、
複数の魚から成る魚の集合体を、1匹ずつの魚に分離する魚の分離方法であって、
前記底蓋によって前記水槽の下部を閉鎖する閉鎖工程と、
前記水槽に魚の集合体と液体とを入れる投入工程と、
前記閉じられた底蓋を予め定める時間内に開放する開放工程とを含むことを特徴とする魚の分離方法である。
【0017】
また本発明は、魚が液体とともに通過する流路の下流側に設けられ、魚を、魚の体幅方向両側から捕捉する魚捕捉機をさらに含むことを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記魚捕捉機は、
魚が液体とともに通過する流路の下流側に設けられ、魚および液体の流れ方向に垂直かつ水平な交差方向の両側に離れて形成される2つの平板状部材を含み、流れ方向に垂直かつ水平な方向に変位可能に形成される側壁部と、
通電によって磁石として機能する電磁石を含み、側壁部よりも交差方向内方に側壁部の下端部に連結して設けられ、電磁石が磁石として機能すると、磁石の磁力によって側壁部を交差方向に変位させ、2つの平板状部材を互いに近接させる電磁石部と、
伸縮性材料から形成され、側壁部の交差方向内方に各平板状部材に固着して設けられ、交差方向内方に凹部が形成される2つの伸縮性部材を含んで形成される接触部であって、
側壁部の交差方向の位置に関わらず2つの伸縮性部材の間には常に内部空間が形成され、
この内部空間の交差方向の長さは、捕捉の対象となる魚の体幅よりも大きく設定され、
側壁部が最も交差方向内方に近接したときには、2つの伸縮性部材間の間隔は、前記内部空間の流れ方向下流側において、捕捉の対象となる魚の体幅よりも短い距離となる接触部とを含むことを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記魚捕捉機は、
側壁部よりも流路を流れる液体の流れ方向上流側の、予め定める流路の一部において、魚の有無を検知し、魚の存在を検知すれば信号を出力するセンサと、
側壁部の2つの平板状部材のうち交差方向一方の側壁部を交差方向に変位させる側壁駆動部と、
センサからの信号を受取り、センサからの信号と、センサから信号を受信した時期とに基づいて、電磁石部の電磁石への通電の時期と側壁駆動部の駆動とを制御する制御部とをさらに含むことを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記魚捕捉機は、
流路よりも流れ方向下流側に設けられ、側壁部、接触部および電磁石部よりも低い位置に形成され、側壁部、接触部および電磁石部を下方から支持する床板部と、
床板部に固定され、凹溝を規定し、交差方向に延びて形成され、床板部よりも交差方向一方に延在する凹部を含み、電磁石部の下部に設けられる凸部と交差方向に摺動可能に嵌合する支持誘導部とをさらに含むことを特徴とする。
【0021】
また本発明は、魚が液体とともに通過する流路の下流側に設けられる側壁部であって、魚および液体の流れ方向に垂直かつ水平な交差方向の両側に離れて設けられる2つの平板状部材を含み、交差方向に変位可能に形成される側壁部と、通電によって磁石として機能する電磁石を含む電磁石部であって、側壁部よりも交差方向内方に側壁部の下端部に連結して設けられ、電磁石が磁石として機能すると、磁石の磁力によって側壁部を交差方向に変位させ、2つの平板状部材を互いに近接させる電磁石部と、側壁部よりも流路を流れる液体の流れ方向上流側の、予め定める流路の一部において、魚の有無を検知し、魚の存在を検知すれば信号を出力するセンサと、側壁部の2つの平板状部材のうち交差方向一方の側壁部を交差方向に変位させる側壁駆動部と、流路よりも流れ方向下流側に設けられる床板部であって、側壁部、接触部および電磁石部よりも低い位置に形成され、側壁部、接触部および電磁石部を下方から支持する床板部とを用い、
センサから出力される信号に基づいて電磁石部に通電を行う電磁石通電工程と、
側壁駆動部によって交差方向一方の平板状部材を床板部よりも交差方向一方に変位させる第1側壁部駆動工程と、
電磁石部への通電を停止する電磁石通電停止工程と、
電磁石通電停止工程の後、交差方向一方の平板状部材をさらに交差方向一方に変位させる第2側壁部駆動工程とをさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、魚の分離装置は、底部が底蓋によって開閉可能にふさがれる水槽を含んで構成されるので、魚の集合体と魚を収容する液体とを水槽に保持した状態から、底蓋を開くことによって、魚の集合体と液体とを鉛直下方に落下させて放出することができる。これによって、魚が液体の流れに逆らって泳ぎ、魚が水槽に残ることを防止することができる。
【0023】
また魚の分離装置は水槽の下方に設けられる複数の仕切り壁を含んで構成されるので、底蓋が開くことによって鉛直下方に放出された複数の魚は、複数の仕切り壁間の空間に進入する。複数の仕切り壁間の空間の、仕切り壁の厚み方向の長さは、魚の体幅の1倍以上2倍未満であるので、仕切り壁間の1つの空間に進入する魚が、仕切り壁の厚み方向に複数並ぶことを防止することができる。これによって、複数の稚魚を簡単に1匹ずつに分離することのできる魚分離装置を実現することである。魚の集合体は、魚を収容する液体と共に鉛直下方に放出されるので、魚が複数の仕切り壁の上端部の上に乗った場合にも、水流によって、魚を仕切り壁間の空間に進入させることができる。
【0024】
また本発明によれば、隣り合う仕切り壁同士の、厚み方向の間隔は、鉛直上方から鉛直下方に向かうにつれて、狭くなっているので、隣り合う仕切り壁間の空間に複数の魚が進入した場合に、魚が仕切り壁の下端部に近づくにつれて、互いの魚の鉛直方向の距離の差を大きくすることができる。
【0025】
また隣り合う仕切り壁の上端部同士の間隔は、隣り合う仕切り壁の下端部同士の間隔よりも大きいので、上端部同士の間隔が小さいときに比べて、魚が複数の仕切り壁の上端部の上に乗る可能性を小さくすることができる。また、上方から落下して底部材に近づくにつれて、隣の仕切り壁に臨む仕切り壁の表面に当たる液体を厚み方向に集めることができるので、魚および液体が上方から下方に落下するときの速度を和らげることができ、魚が底部材に衝突するとき衝撃を緩和することができる。
【0026】
また本発明によれば、厚み方向に隣り合う仕切り壁の下端部の、互いに対向する表面間の距離は、分離の対象となる魚の体幅の1.5倍以内であるので、隣り合う仕切り壁間の底部材近傍において、魚が仕切り壁の厚み方向に複数並ぶことを防止することができる。また隣り合う仕切り壁間の底部材近傍において、流れる液体の勢いの大部分は、魚に対して押し流す力として付与されるので、魚が流れに逆らって進行することを抑制することができる。
【0027】
また本発明によれば、底部材の水槽側に臨む面の少なくとも一部は、水平な仮想平面に対して傾斜する傾斜面として形成され、仕切り壁の厚み方向に垂直でかつ水平な方向の一方に向かうにつれて、傾斜面は鉛直上方に向かう。これによって、上方から下方に向けて落下しながら仕切り壁間に進入する魚および液体に対して、仕切り壁の厚み方向に垂直でかつ水平な方向の他方に進ませる動力を与えることができる。
【0028】
また本発明によれば、底部材は、厚み方向に貫通する複数の孔が形成された複数の板状部材を含んで構成される。これによって、落下しながら仕切り壁間に進入する液体の一部を底部材の板状部材に形成される複数の孔を通して底部材よりも下方に落下させることができる。したがって、魚とともに流れて移動する液体の量を減少させることができる。魚は流れる液体の中にあると、液体の中を泳ぎ、液体の流れに逆らって進行する性質があるけれども、魚とともに流れて移動する液体の量を減少させることによって、魚が液体の流れに逆らって進行することを防止することができる。
【0029】
また複数の孔が形成された複数の板状部材を互いに変位させることによって、液体が通過できる孔の大きさを変化させることができる。これによって、魚とともに流れて移動する液体の量を調節することができる。したがって、魚とともに流れて魚を流れ方向下流に向けて押し流す液体の量を確保することと、液体の流れと逆の向きへの魚の進行を防止することとを両立することができる。
【0030】
また本発明によれば、流路を構成する流路構成体をさらに含んで構成され、流路の幅寸法は魚の体幅の1倍以上2倍未満に設定されるので、流路を進行する魚が、1つの流路内において流れ方向に同じ位置を同時に通過することを防止することができる。また魚の分離装置は流路内に突出して設けられ魚が通過する通過領域を幅方向から規定する通路幅制限手段とを含んで構成されるので、流路を進行する魚が、1つの流路内において流れ方向上流側を進行する魚が流れ方向下流側を進行する魚に追いつくことを防止することができる。また流れ方向上流側を進行する魚と流れ方向下流側を進行する魚とが、1つの流路内において、流れ方向に垂直な方向に重なる場合、流れ方向上流側を進行する魚と流れ方向下流側を進行する魚との距離を大きくすることができる。
【0031】
通路幅制限手段は可撓性を有するので、魚が通路幅制限手段に接触しながら流れ方向上流側から流れ方向下流側に通過する場合に、魚が傷つくことを防止することができる。通路制限部材は、流路の流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かうにつれて、魚の通過領域の幅寸法が狭くなるように通過領域を規定するので、魚が流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かって通過することを許容しながら、魚が流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かって通過することを阻止することができる。
【0032】
また本発明によれば、通路幅制限手段は、1つの流路内において複数設けられ、複数の通路幅制限手段は流れ方向にそれぞれ互いに離れて設けられる。これによって、魚が流路内において1つの通路幅制限手段を通過した後に、流れ方向下流側の他の魚に追いつくことを防止することができる。
【0033】
また本発明によれば、流路構成体には、流路が複数形成される。合流点よりも上流側において隣り合う2つの流路は、合流点の下流側において、合流した1つの流路として形成され、合流した1つの流路の幅寸法は、魚の体幅の2倍未満である。この構成によれば、合流点に同時に到達する魚は最大で2匹であるので、流路の幅寸法が魚の体幅の3倍以上である流路を、その下流側において体幅の2倍未満として形成する場合よりも、複数の魚が同時に合流点に到達する可能性を低減することができる。したがって、複数の魚が合流点に同時に到着し、下流側への進行を互いに妨げる可能性を低減することができる。
【0034】
また本発明によれば、魚の分離方法は、閉じた底蓋を予め定める時間内に開放する開放工程を含んで構成される。これによって、魚の集合体および魚を収容する液体を水槽の底部から鉛直下方に、短時間に落下させ、放出することができる。したがって、魚が液体の流れに逆らって進行して水槽内に残ることを防止することができる。
【0035】
また魚の分離方法は水槽の下方に設けられる複数の仕切り壁を利用するので、底蓋が開くことによって鉛直下方に放出された複数の魚は、複数の仕切り壁間の空間に進入する。複数の仕切り壁によって規定される空間の、仕切り壁の厚み方向の長さは、魚の体幅の1倍以上2倍未満であるので、仕切り壁間の1つの空間に進入する魚が、仕切り壁の厚み方向に複数並ぶことを防止することができる。魚の集合体は、魚を収容する液体と共に鉛直下方に放出されるので、魚が複数の仕切り壁の上端部の上に乗った場合にも、水流によって、魚を仕切り壁間の空間に進入させることができる。
【0036】
また本発明によれば、魚の分離装置は、魚捕捉機をさらに含んで構成される。魚捕捉機は、流路の下流側にあって、魚を魚の体交差方向両側から捕捉する装置である。これによって、流路を下流側に移動した魚を捕捉し、魚体形状判別装置に1匹ずつ投入することができる。
【0037】
また本発明によれば、魚捕捉機は、側壁部と、電磁石部と、接触部を含んで構成される。側壁部は、魚が液体とともに通過する流路の下流側に設けられ、流路の交差方向両側に離れて形成される2つの平板状部材を含み、交差方向に変位可能に形成される。流路を魚が通過したときに、2つの平板状部材を交差方向内方に変位させると、流路を通過して側壁部の交差方向内方に位置した魚を交差方向両側から捕捉することができる。
【0038】
電磁石部は、通電によって磁石として機能する電磁石を含み、側壁部よりも交差方向内方に側壁部の下端部に連結して設けられ、電磁石が磁石として機能すると、磁石の磁力によって側壁部を交差方向内方に変位させる。これによって、魚が側壁部の交差方向内方に位置したときに電磁石を磁石として機能させることによって、2つの平板状部材間の距離を短くし、魚を側壁部の変位によって捕捉することができる。
【0039】
接触部は、2つの伸縮性部材を含んで形成され、側壁部の交差方向内方に各平板状部材に固着して設けられる。2つの伸縮性部材は、交差方向内方に凹部が形成される。側壁部の交差方向の位置に関わらず2つの伸縮性部材の間には常に内部空間が形成され、この内部空間の交差方向の長さは、捕捉の対象となる魚の体幅よりも大きく設定される。側壁部が最も交差方向内方に近接したときには、2つの伸縮性部材間の間隔は、前記内部空間の流れ方向下流側において、捕捉の対象となる魚の体幅よりも短い距離となる。
【0040】
側壁部が交差方向内方に変位したときには、接触部が魚に対して臨むので、魚を捕捉したときに魚を傷つけることを防止することができる。また側壁部が最も交差方向内方に近接したときには、伸縮性部材によって交差方向両側から魚を捕捉することができる。また伸縮性部材間に位置して細くされた魚が、交差方向両側から押圧されることを防止することができる。
【0041】
また本発明によれば、魚捕捉機は、センサと、側壁駆動部と、制御部とをさらに含んで構成される。センサは、側壁部よりも流路を流れる液体の流れ方向上流側の、予め定める流路の一部において、魚の有無を検知し、魚の存在を検知すれば信号を出力する。側壁駆動部は、側壁の2つの平板状部材のうち交差方向一方の平板状部材を交差方向に変位させる。制御部は、センサからの信号を受取り、センサからの信号と、センサから信号を受信した時期とに基づいて、電磁石部の電磁石への通電の時期と側壁駆動部の駆動とを制御する。
【0042】
これによって、センサによって、魚が魚捕捉機に近づいたことを検出することができ、制御部によって、側壁部の交差方向内方に魚が位置する時期を予測することができる。側壁部の交差方向内方に魚が位置する時期に、電磁石部を駆動することによって、魚を捕捉することができる。また魚を捕捉したのちに側壁駆動部を駆動することによって、捕捉した魚と、側壁部と、接触部とを交差方向一方に変位させることができる。
【0043】
また本発明によれば、電磁石部の下部には、下方に向けて突出する凸部が形成され、凸部は交差方向を長手方向として形成される。凸部の下端部の位置は、側壁部下端部よりも低く設定される。魚捕捉機は、床板部と、支持誘導部とをさらに含んで構成される。床板部は、流路よりも流れ方向下流側に設けられ、側壁部、接触部および電磁石部よりも低い位置に設けられ、側壁部、接触部および電磁石部を下方から支持する。支持誘導部は、凹溝を規定し、交差方向に延びて形成され、床板部よりも交差方向一方に延在する凹部を含み、電磁石部の下部に設けられる凸部と交差方向に摺動可能に嵌合する。
【0044】
電磁石の凸部は、支持誘導部に形成され、床板部よりも交差方向一方に延在する凹部に摺動可能に嵌合するので、側壁部、電磁石部および接触部は、支持誘導部に案内されて、床板部よりも交差方向一方に変位することが可能になる。これによって、捕捉した魚を床板部よりも交差方向一方に移動させることができる。したがって、床板部よりも交差方向一方で、魚に対する捕捉を解除することによって、床板部よりも下方に、魚を落下させることができる。これによって、魚を魚体形状判別装置に投入することができる。
【0045】
また本発明によれば、魚捕捉方法は、電磁石通電工程を含んで構成される。電磁石が引き合う力によって側壁部の変位させ、魚を捕捉することができるので、魚が側壁部の交差方向内方に位置してから、魚が側壁部よりも流れ方向下流側に移動するまでの時間よりも短時間のうちに、魚を捕捉することができる。また電磁石が引き合う力の大きさは、電磁石に通電する電流値を調節することによって調節することができるので、電磁石が引き合う力の大きさを調節して、電磁石の交差方向の変位による魚の損傷を防止することが可能になる。
【0046】
また魚捕捉方法は、さらに側壁駆動工程と、電磁石通電停止工程と、第2側壁駆動工程とを含んで構成される。これによって、側壁部に捕捉された魚を、床板部よりも交差方向一方に位置させ、下方に床板部がない状態において側壁部の平板状部材が交差方向に互いに引き合う力を消失させ、平板状部材の交差方向の距離を長くすることによって、魚の捕捉を解除することができる。したがって、床板部よりも交差方向一方において、床板部よりも下方に魚を落下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
図1は、本発明の第1実施形態に係る魚の分離装置20の、水槽21と分離体22との斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る魚の分離装置20の側面図である。第1実施形態に係る魚の分離装置20は、複数の生きている魚23から成る魚の集合体を、1匹ずつの生きた魚23に分離する装置である。生きている魚23のことを「魚」と称する。第1実施形態に係る魚の分離装置20が分離の対象とする魚23は、鯛の稚魚とするけれども、本発明において魚の分離装置20が分離の対象とする魚23は、特に規定しない。たとえば他の実施形態において魚の分離装置20は、スズキ目、フグ目、キンメダイ目、カサゴ目、トビウオ目、マトウダイ目、ダツ目、ボラ目、コイ目、タラ目、サケ目などの魚23およびその稚魚を分離の対象とすることができる。
【0048】
本発明において、魚23を収容する液体24は、水、または塩分を含む水であり、たとえば淡水、海水、汽水のいずれであってもよい。複数の魚23が液体24中を泳いでいる状態から、魚23を1匹ずつ取出すことを「分離」と称する。換言すれば、本発明において分離とは、乱雑に存在する魚23を強制的に整列させ、1匹ずつ並ぶ魚23の列とし、魚23に関する乱雑さを下げることを意味する。位置を固定されることなく泳いでいる状態の複数の魚23を、「魚の集合体」と称する。魚23の吻端から尾柄部の椎骨の末端までの長さを「標準体長」と称する。口ひげは吻端から除く。標準体長と一致する線分に垂直な方向において、最大となる背縁から腹縁までの長さを「体高」と称する。背びれおよび胸鰭は体高から除く。標準体長と一致する線分および体高に一致する線分に垂直な方向において、最大となる魚体の幅の大きさを「体幅」と称する。体幅から胸鰭、尻鰭は除く。
【0049】
第1実施形態に係る魚の分離装置20は、水槽21と分離体22とを含んで構成される。水槽21は、魚の集合体と液体24とを収容する容器であり、底部が底蓋26によって開閉可能に塞がれる。底蓋26は水槽21の底部の少なくとも一部分であり、底蓋26が閉じた状態において水槽21は魚23および液体24を保持し、底蓋26が開くことによって水槽21内の魚23および液体24は鉛直下方に落下することが許容される。
【0050】
分離体22は、魚の集合体を分割することによって、魚の集合体を複数の列として整列させる部材である。分離体22は水槽21の下方に設けられる。分離体22は、底部材27と複数の仕切り壁28とを含んで構成される。仕切り壁28は魚の集合体を複数の列として整列させるときに、魚23の列と列とを隔てる部材である。仕切り壁28は大略的に板状に形成され、平行に立てて設けられる。仕切り壁28の厚み方向は水平であり、複数の仕切り壁28は厚み方向に平行に複数並んで形成される。
【0051】
複数の仕切り壁28は間隙を設けて配置され、隣り合う仕切り壁28の互いに対向する表面間の距離は、分離の対象となる魚23の体幅の1倍以上2倍未満として配置される。隣り合う前記仕切り壁28同士の、厚み方向の間隔は、鉛直上方から鉛直下方に向かうにつれて、狭くなる。厚み方向に隣り合う仕切り壁28の下端部の、互いに対向する表面間の距離は、分離の対象となる魚23の体幅の1.5倍以内である。
【0052】
底部材27は、各仕切り壁28間を連結する部材である。底部材27の水槽21側に臨む面の少なくとも一部は、水平な仮想平面に対して傾斜する傾斜面29として形成される。仕切り壁28の厚み方向に垂直でかつ水平な方向の一方に向かうにつれて、傾斜面29は鉛直上方に向かう。傾斜面29は平面または曲面である。水槽21の底部から落下した魚23および液体24は、仕切り壁28間の空間に進入し、傾斜面29によって流れる向きが決定される。液体24が流れる方向を「流れ方向」と称する。
【0053】
底部材27は、複数の板状部材31を含んで構成され、各板状部材31には、板状部材の厚み方向に貫通する複数の孔32が形成される。複数の板状部材31は、板状部材の厚み方向に互いに接触して重ねられ、複数の板状部材31のうち一方の板状部材31に形成された複数の孔32と、他方の板状部材31に形成された複数の孔32とは板状部材の厚み方向に連通可能である。複数の板状部材31は互いに接触した状態のまま、互いの相対位置を変化させることができる。
【0054】
魚の分離装置20は、流路構成体33と通路幅制限手段34とをさらに含んで構成される。流路構成体33は、分離体22よりも、仕切り壁28間の空間を通る液体24の流れ方向下流側に設けられ、流路36の幅寸法を魚23の体幅の1倍以上2倍未満として、流路36を構成する部材である。流れ方向に垂直でかつ水平な方向の流路36および通過領域41の長さを「幅寸法」と称し、流れ方向に垂直でかつ水平な方向を「幅方向」と称する。また各流路36について、流路36内部から流路36外部に向かう幅方向の向きを「幅方向外方」と称し、流路36外部から流路36内部に向かう幅方向の向きを「幅方向内方」と称する。
【0055】
流路36は、分離体22よりも流れ方向下流側に形成され、魚23および液体24が流れる路である。流路36は、少なくとも下方と、流れ方向に垂直でかつ水平な方向の2つの向きとから、流路構成体33によって規定される。流路構成体33には、流路36が複数形成される。各流路36は流路構成体33の溝部37によって規定される。各溝部37はそれぞれ1つの流路36を規定する部分であり、流路構成体33は複数の溝部37を構成する。複数の溝部37は幅方向に並ぶ。各溝部37は床部38と垂直部39とを含んで構成される。床部38は、流路36を下方から規定し、垂直部39は、流路36を流路36の幅方向両側から規定する。垂直部39は、床部38から上方に突出し、流れ方向に長手方向を有する板状の部材である。流路36は床部38と垂直部39とによって規定される。
【0056】
通路制限部材は、流路36内に突出して設けられ、魚23の通過する通過領域41を幅方向から規定する部材である。通路制限部材は、可撓性を有しており、流路36の流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かうにつれて、魚23の通過領域41の幅寸法が狭くなるように通過領域41を規定する。流路36内において、魚23が通過可能な範囲を「通過領域」と称する。水槽21および分離体22については、仕切り壁28の厚み方向が幅方向である。通路幅制限手段34は1つの流路36内において複数設けられる。複数の通路幅制限手段34は流れ方向にそれぞれ互いに離れて位置する。
【0057】
図3は、本発明の第1実施形態に係る魚の分離方法の工程を表すフローチャートである。魚の分離方法は、閉鎖工程と、投入工程と、開放工程とを含んで構成される。魚の分離方法は、前述の魚の分離装置20を用いて、魚の集合体から、1匹ずつの魚23を取出すことによって、魚の集合体を1匹ずつの魚23に分離する方法である。閉鎖工程は、底蓋26によって水槽21の下部を閉鎖する工程である。投入工程は、水槽21に魚の集合体と液体24とを入れる工程であり、液体24注入段階と魚投入段階とを含む。液体24注入段階は、魚23を収容する液体24を水槽21に入れる段階であり、魚投入工程は、水槽21内の液体24に魚23を入れる段階である。開放工程は、閉じられた底蓋26を予め定める時間内に開放する工程である。予め定める時間とは、水槽21内に保持された魚の集合体および液体24が、落下することによって分離体22に形成される空間に進入する時間と比べて、無視できる程度に短い時間である。底蓋26の開放が行われるのに要する時間は、たとえば数秒以内であり、好ましくは1秒以内である。
【0058】
第1実施形態に係る魚の分離装置20は、底部が底蓋26によって開閉可能にふさがれる水槽21を含んで構成され、魚の集合体と液体24とを水槽21に保持した状態から、底蓋26を開くことによって、魚の集合体と液体24とを鉛直下方に落下させて放出する。これによって、魚23が液体24の流れに逆らって泳ぎ、魚23が水槽21に残ることを防止する。
【0059】
また魚の分離装置20は水槽21の下方に設けられる複数の仕切り壁28を含んで構成され、底蓋26が開くことによって鉛直下方に放出された複数の魚23は、複数の仕切り壁28間の空間に進入する。複数の仕切り壁28は間隙を設けて配置され、隣り合う仕切り壁28の互いに対向する表面間の距離は、分離の対象となる魚23の体幅の1倍以上2倍未満として配置される。仕切り壁28間の1つの空間に進入する魚23は、仕切り壁28の厚み方向に1匹となり、仕切り壁28間の1つの空間内において、仕切り壁28の厚み方向に複数並ぶことはない。魚の集合体は液体24と共に鉛直下方に放出されるので、魚23が複数の仕切り壁28の上端部の上に乗った場合にも、水流によって、魚23は仕切り壁28間の空間に進入する。
【0060】
隣り合う仕切り壁28同士の、厚み方向の間隔は、鉛直上方から鉛直下方に向かうにつれて、狭くなる。これによって隣り合う仕切り壁28間の空間に複数の魚23が進入した場合には、魚23が仕切り壁28の下端部に近づくにつれて、互いの魚23の鉛直方向の距離の差を大きくする。また上端部同士の間隔が小さいときに比べて、魚23が複数の仕切り壁28の上端部の上に乗る可能性を小さくする。また、上方から落下して底部材27に近づくにつれて、隣の仕切り壁28に臨む仕切り壁28の表面に当たる液体24を厚み方向に集めることができる。これによって魚23および液体24が上方から下方に落下するときの速度を和らげ、魚23が底部材27に衝突するとき衝撃を緩和する。隣り合う仕切り壁28間の空間に進入した魚23は、周囲の液体24に一時的に浮遊し、底部材27から離れた状態にある。この状態で魚23は背部を上方へ、腹部を下方へ向けた姿勢となる。
【0061】
厚み方向に隣り合う仕切り壁28の下端部の、互いに対向する表面間の距離は、分離の対象となる魚23の体幅の1.5倍以内である。隣り合う仕切り壁28間の底部材27近傍において魚23は、仕切り壁28の厚み方向に1匹となり、仕切り壁28間の1つの空間内において、仕切り壁28の厚み方向に複数並ぶことはない。また隣り合う仕切り壁28間の底部材27近傍において、流れる液体24の勢いの大部分は、魚23に対して押し流す力として付与され、魚23が流れに逆らって進行することを抑制する。
【0062】
底部材27は、各仕切り壁28間を連結する部材である。底部材27の水槽21側に臨む面の少なくとも一部は、水平な仮想平面に対して傾斜する傾斜面29として形成され、流れ方向一方に向かうにつれて、傾斜面29は鉛直上方に向かう。これによって、上方から下方に向けて落下しながら仕切り壁28間に進入する魚23および液体24に対して、流れ方向他方に進ませる動力を与えることができる。
【0063】
底部材27は、複数の板状部材31を含んで構成され、各板状部材31には、板状部材の厚み方向に貫通する複数の孔32が形成される。複数の板状部材31は、板状部材の厚み方向に互いに接触して重ねられ、複数の板状部材31のうち一方の板状部材31に形成された複数の孔32と、他方の板状部材31に形成された複数の孔32とは板状部材の厚み方向に連通可能である。
【0064】
これによって、落下しながら仕切り壁28間に進入する液体24の一部を底部材27の板状部材31に形成される複数の孔32を通して底部材27よりも下方に落下させ、魚23とともに流れて移動する液体24の量を減少させる。魚23は流れる液体24の中にあると、液体24の中を泳ぎ、液体24の流れに逆らって進行する性質があるけれども、魚23とともに流れて移動する液体24の量を減少させることによって、魚23が液体24の流れに逆らって進行することを防止する。
【0065】
複数の板状部材31は互いに接触した状態のまま、互いの相対位置を変化させることができる。複数の板状部材31を互いに変位させることによって、液体24が通過できる孔32の大きさを変化させる。これによって、魚23とともに流れて移動する液体24の量を調節する。液体24が通過できる孔32の大きさを変化させることによって、魚23とともに流れて魚23を流れ方向下流に向けて押し流す液体24の量を確保することと、液体24の流れと逆の向きへの魚23の進行を防止することとを両立する。
【0066】
魚の分離装置20は、流路36を構成する流路構成体33をさらに含んで構成され、流路36の幅寸法は魚23の体幅の1倍以上2倍未満に設定される。これによって、流路36を進行する魚23が、1つの流路36内において流れ方向に同じ位置を同時に通過することを防止する。また魚の分離装置20は流路36内に突出して設けられ魚23が通過する通過領域41を幅方向から規定する通路幅制限手段34とを含んで構成される。これによって、流路36を進行する魚23が、1つの流路36内において流れ方向上流側を進行する魚23が流れ方向下流側を進行する魚23に追いつくことを防止する。また流れ方向上流側を進行する魚23と流れ方向下流側を進行する魚23とが、1つの流路36内において、流れ方向に垂直な方向に重なる場合、流れ方向上流側を進行する魚23と流れ方向下流側を進行する魚23との距離を大きくする。
【0067】
通路幅制限手段34は可撓性を有するので、魚23が通路幅制限手段34に接触しながら流れ方向上流側から流れ方向下流側に通過する場合に、魚23が傷つくことを防止する。通路制限部材は、流路36の流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かうにつれて、魚23の通過領域41の幅寸法が狭くなるように通過領域41を規定する。これによって、魚23が流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かって通過することを許容しながら、魚23が流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かって通過することを阻止する。
【0068】
通路幅制限手段34は、1つの流路36内において複数設けられ、複数の通路幅制限手段34は流れ方向にそれぞれ互いに離れて設けられる。これによって、魚23が流路36内において1つの通路幅制限手段34を通過した後に、流れ方向下流側の他の魚23に追いつくことを防止する。
【0069】
魚の分離装置20を用いた魚の分離方法は、閉じた底蓋26を予め定める時間内に開放する開放工程を含んで構成される。予め定める時間とは、水槽21内に保持された魚の集合体および液体24が、落下することによって分離体22に形成される空間に進入する時間と比べて、無視できる程度に短い時間である。これによって、魚の集合体および魚23を収容する液体24を水槽21の底部から鉛直下方に、短時間に落下させ、放出し、魚23が液体24の流れに逆らって進行して水槽21内に残ることを防止する。
【0070】
また魚の分離方法は水槽21の下方に設けられる複数の仕切り壁28を利用するので、底蓋26が開くことによって鉛直下方に放出された複数の魚23は、複数の仕切り壁28間の空間に進入する。複数の仕切り壁28によって規定される空間の、仕切り壁28の厚み方向の長さは、魚23の体幅の1倍以上2倍未満であるので、仕切り壁28間の1つの空間に進入する魚23は、仕切り壁28の厚み方向に1匹となり、仕切り壁28間の1つの空間内において、仕切り壁28の厚み方向に複数並ぶことはない。魚の集合体は、魚23を収容する液体24と共に鉛直下方に放出されるので、魚23が複数の仕切り壁28の上端部の上に乗った場合にも、水流によって、魚23を仕切り壁28間の空間に進入させる。
【0071】
第1実施形態に係る魚の分離装置20が分離の対象とする魚23は、鯛の稚魚とするけれども、たとえば他の実施形態において魚の分離装置20は、シマアジ、カンパチ、トラフグ、ハマチ、ブリ、コイなどを分離の対象とすることができる。第1実施形態において、分離の対象とする魚23は、標準体長が6cm以上11cm以下、体高は2〜4cm、体幅は1〜1.5cmの大きさの稚魚である。
【0072】
図4は、本発明の第1実施形態に係る魚の分離装置20の、水槽21と分離体22との正面図である。第1実施形態において水槽21は、幅方向に25cm、流れ方向に12cm、高さ12cmの大きさの直方体とし、底蓋26を除いて、透明な部材によって形成され、高さ方向を鉛直方向とし、底部を水平に配置される。具体的にはアクリル樹脂の板で構成され、それぞれのアクリル樹脂の板の厚みは1cmである。水槽21の底部には開閉可能に塞がれた開口42が形成される。開口42は、幅方向に20cmの大きさとして、流れ方向に8cmの大きさとして、水槽21の底部の中央部に形成される。開口42は、高さ方向に貫通する水槽21底部の長方形の孔32である。
【0073】
水槽21内の空間を幅方向および流れ方向から規定する部材を「周壁」と称する。周壁43の下端部から開口42を規定する部分までは底板が形成される。水槽21の底部にある底板に垂直で、開口42の開口42の中心を通る仮想直線を「水槽中心線」と称する。周壁43の高さ方向の中間の位置から、開口42を規定する部分までは、水槽21を形成する部材と同じ、アクリル樹脂の平板状部材31によって、斜面を有する傾斜部46が形成される。傾斜部46は、水槽21の幅方向の周壁43の、高さ方向の中間位置から、開口42を幅方向から規定する部分までを平面的に連結する第1傾斜部47と、水槽21の流れ方向の周壁43の、高さ方向の中間位置から、開口42を流れ方向から規定する部分までを平面的に連結する第2傾斜部48とを含んで形成される。
【0074】
第1傾斜部47の上端部と第2傾斜部48の上端部とは高さ方向に同じ位置に設けられ、互いに固着している。第1傾斜部47の下端部と第2傾斜部48の下端部とは、高さ方向に同じ位置に設けられ、互いに固着しており、第1および第2傾斜部47,48ともに開口42を規定する部分に固着している。水槽21内の空間は、第1および第2傾斜部47,48と底蓋26によって下方から規定される。換言すれば、第1および第2傾斜部47,48は、水槽21内の内部空間を、上方から下方に向かうにつれて先細状に規定する。
【0075】
底蓋26は、開口42を規定する部分に下方から接し開口42を塞ぐ。水槽21の高さ方向に見て底蓋26は、開口42よりも大きい。底蓋26は、平板状部材31であり、幅方向の大きさは、水槽21の幅方向の大きさよりも小さい。水槽21は、幅方向の両端部の下部で支持され、変位しないように固定される。底蓋26は流れ方向一方に変位可能であり、底蓋26が人手または機械によって流れ方向一方に変位することによって、開口42が開かれ、水槽21内の空間と、水槽21よりも下方の空間とは連通する。
【0076】
水槽21の下方に配設される分離体22は、複数の仕切り壁28と底部材27とを含んで構成される。各仕切り壁28の流れ方向に垂直な断面の形状は、高さ方向が長手方向となる形状であり、下方から上方へ向かうにつれて、幅寸法が小さくなる、テーパ状である。断面の上端部の形状は、先丸となっている。複数の仕切り壁28のうち、幅方向両端に位置する仕切り壁28は、互いに同じ高さに形成され、幅方向中間に位置する仕切り壁28よりも高く形成される。幅方向両端に位置する仕切り壁28の上端部は水槽21の底板に接しており、接する位置は、開口42および底蓋26よりも幅方向外方に位置する。
【0077】
幅方向中間に位置する仕切り壁28はいずれも同じ高さに形成され、幅方向中間に位置する仕切り壁28の上端部は、水槽21の底部および底蓋26から離れて、開口42よりも下方に位置する。複数の仕切り壁28のうち幅方向中間に位置する仕切り壁28の高さは、魚の分離装置20が分離の対象とする魚23の標準体長よりも高く形成される。複数の仕切り壁28の流れ方向下流側の端部は、水槽21の流れ方向下流側端部よりも流れ方向下流側に位置する。複数の仕切り壁28の流れ方向上流側の端部は、水槽21の流れ方向上流側端部に対して、流れ方向に同じ位置に位置する。
【0078】
複数の仕切り壁28の、水槽中心線L1よりも流れ方向上流側は、幅方向に見て曲線的に形成される。仕切り壁28の流れ方向上流側端部から、水槽中心線L1と流れ方向に同じ位置の仕切り壁28の底部までの仕切り壁28の端部は、幅方向に見て微分可能な曲線として形成される。この曲線を円の一部として近似すると、円の曲率半径は、水槽中心線L1と水槽21の流れ方向上流側端部との距離に、およそ等しい。
【0079】
仕切り壁28は発泡スチロールで形成される。仕切り壁28は幅方向両端に位置する仕切り壁28も含めて7つの仕切り壁28とし、複数の仕切り壁28間に6つの空間を設ける。幅方向に隣り合う仕切り壁28間の空間は、下方において幅方向に狭く、上方に置いて幅方向に広く形成される。幅方向に隣り合う仕切り壁28の下端部同士の間隔は、6ついずれについても幅方向に同じ間隔として形成される。厚み方向に隣り合う仕切り壁28の下端部の、互いに対向する表面間の距離s1は、厚み方向に隣り合う仕切り壁28の上端部の、幅方向に互いに離れる表面間の距離s2よりも短く設定される。7つの仕切り壁28は、分離体22の底部材27に固着している。これによって、仕切り壁28間の6つの空間は、底部材27によって下方から規定される。
【0080】
図5は、本発明の第1実施形態に係る底部材27の一部分を、第1板状部材51と第2板状部材52とに分離して示した分離図である。分離体22の底部材27のうち、水槽中心線L1より流れ方向上流側は曲面として形成され、流れ方向上流側に向かうにつれて、上方に向かう傾斜面29として形成される。底部材27の流れ方向上流側端部は、水槽21の上流側端部の下端部に接する。底部材27は2枚の板状部材31から形成される。各板状部材31は、可撓性を有する、厚さの均一な樹脂から成り、水槽中心線L1から水槽21の流れ方向上流側端部までの距離を曲率半径として、曲げることのできる材料である。
【0081】
各板状部材31には複数の孔32が形成される。複数の孔32は、いずれも各板状部材の厚み方向に貫通する孔32であり、それぞれの孔32の直径は、魚の分離装置20が分離の対象とする魚23の体高よりも小さい。水槽21に近い方の板状部材31に形成された複数の孔32と、水槽21から遠い方の板状部材31に形成された複数の孔32とは、板状部材の厚み方向に見て一致する位置に形成される。板状部材31の各部分について、その部分の厚み方向を「板状部材の厚み方向」と称する。したがって板状部材の厚み方向は、一定の方向を意味せず、板状部材31の各部分に応じて変化するものとする。水槽21に近い方の板状部材31を「第1板状部材」と称し、水槽21から遠い方の板状部材31を「第2板状部材」と称する。
【0082】
第1板状部材51は、仕切り壁28に固着して設けられ、第2板状部材52は、第1板状部材51に対して変位可能に設けられる。第2板状部材52の、第1板状部材51に対する変位は、第2板状部材52の水槽21に臨む面と、第1板状部材51の第2板状部材52に臨む面とが常に接触するように変位される。第1板状部材51の流れ方向上流側端部は、水槽21の上流側端部の下端部に接し、第2板状部材52の流れ方向上流側端部は、水槽21の上流側端部の下端部から下方に離れて位置する。第1板状部材51と第2板状部材52との相対位置を変化させると、第1板状部材51に設けられた複数の孔32と、第2板状部材52に設けられた複数の孔32との相対位置も変化する。この相対位置の変化によって、板状部材の厚み方向に見て、第1板状部材51に形成された孔32と第2板状部材52とに形成された孔32とが互いに連通する領域の面積は、変化する。
【0083】
第1板状部材51に形成された孔32と第2板状部材52とに形成された孔32とが、板状部材の厚み方向に見て重なれば重なるほど、水槽21の開口42から落下した液体24のうち、板状部材31の孔32を通過して、さらに下方に落下する液体24の割合は増大する。第1板状部材51に形成された孔32と第2板状部材52とに形成された孔32とが互いに連通する領域の面積が、小さくなれば小さくなるほど、水槽21の開口42から落下した液体24のうち、板状部材31の孔32を通過して、さらに下方に落下する液体24の割合は減少する。第1板状部材51に形成された孔32と第2板状部材52とに形成された孔32とを互いにずらすことによって、複数の孔32全てを塞ぐことも可能である。
【0084】
図6は、本発明の第1実施形態における流路構成体33および通路幅制限手段34の斜視図である。図7は、本発明の第1実施形態における分離体22、流路構成体33、通路幅制限手段34および魚捕捉機54の平面図である。流路構成体33は、床部38と複数の垂直部39とを含んで構成される。複数の垂直部39は幅方向に間隔をあけて7つ並び、幅方向に隣り合う垂直部39の間隔は、幅方向に隣り合う仕切り壁28の下端部の、互いに対向する表面間の距離に等しく設定される。7つの垂直部39の下端部は、板状部材31の床部38によって連結される。これによって、幅方向に隣り合う垂直部39の間に溝が形成される。隣り合う垂直部39間の溝の上部は、開放されており、外部空間に連通している。1つの溝を幅方向および下方から規定する部分を「溝部」と称する。溝部37は、魚23と液体24とが流れる流路36を規定する。
【0085】
溝部37は、6つ設けられ、6つそれぞれは分離体22の仕切り壁28間の6つの空間の流れ方向下流側に位置する。6つの溝部37はそれぞれ直線状に形成される。垂直部39の高さは、魚の分離装置20が分離の対象とする魚23の体高よりも大きく設定される。垂直部39の流れ方向上流側端部は、垂直部39のうちの上流側端部を除く部分よりも高く形成される。この高く形成される上流側端部は、垂直部39の上流側端面から流れ方向に魚23の標準体長以上の長さを有する部分であるものとする。第1実施形態において、垂直部39の流れ方向上流側端部の高さは、複数の仕切り壁28のうちのいずれの仕切り壁28の高さよりも低く設定される。隣り合う溝部37の、流れ方向の長さは、互いに異なる。幅方向両端に位置する溝部37は最も短く、幅方向中央に近づくにつれて、溝部37は長く設定される。溝部37の流れ方向下流側には、魚捕捉機54が設置される。各溝部37の流れ方向中間には、流れ方向に離れて複数の通過制限部材が設けられる。
【0086】
6つの流路36のうち、幅方向両側に位置する流路36の、流れ方向の長さは幅方向中間に位置する流路36よりも短く、幅方向中央に近い流路36ほど、流れ方向の長さは長く設定する。幅方向中央に位置する流路36の2つの、流れ方向の長さは同じであるものとするけれども、これ以外の隣り合う流路36の、流れ方向の長さには、15cm程の差が設けられる。この差が隣り合う流路36の流れ方向の長さの差として設定されることによって、人が各流路36の流れ方向下流側端部の近傍に位置し、流路36を通過した魚23を、手によって捕捉し、魚体形状判別装置53に投入することが可能になる。
【0087】
6つの流路36のうち、幅方向一方側の3つの流路36の下流側には、魚23を幅方向一方に取出す魚捕捉機54が設置され、6つの流路36のうち、幅方向他方側の3つの流路36の下流側には、魚23を幅方向他方に取出す魚捕捉機54が設置される。魚捕捉機54については、後に説明する。
【0088】
通路幅制限手段34は、可撓性を有する部材で形成される。通路幅制限手段34は隣り合う垂直部39の両方から、流路36内に突出して設けられる2つの部分を含む。この2つの部分は流れ方向に同じ位置に設けられ、流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かうにつれて、魚23の通過する通過領域41の幅寸法が短くなるように形成される。2つの部分の各部分は、大略的に板状の部材で形成され、流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かうにつれて、薄くなるように形成される。通路幅制限手段34の各部分を、流れ方向と幅方向とが含まれる仮想平面で切断した断面は、各流路36の幅方向外方から幅方向内方に向けて、曲線状に延び、流路36の幅方向外方の基端部は幅方向内方に向けて突出し、幅方向内方の先端部は流れ方向上流側から流れ方向下流側に伸びる形状である。
【0089】
通路幅制限手段34は、流路36の流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かうにつれて、魚23の通過領域41の幅寸法が狭くなるように通過領域41を幅方向両側から規定するけれども、通路幅制限手段34を成す各部分は可撓性を有しており、魚23は通路幅制限手段34によって規定される通過領域41の幅方向中央部を、流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かって通過することができる。魚23は通路幅制限手段34に接触しながら通過してもよい。通路幅制限手段34は、魚23と接触することによって魚23を傷つけることのないように、魚23によって押圧されると変形する。
【0090】
通路幅制限手段34によって規定される通過領域41を、魚23が流れ方向下流側から流れ方向上流側に向かって通過しようとすると、魚23が通路幅制限手段34に対して流れ方向下流側から接触し、通路幅制限手段34は通過領域41をさらに狭めるように変形する。これによって、魚23が流れ方向下流側から流れ方向上流側に向かって通過することは不可能となる。このように、通路幅制限手段34は、通過領域41を規定することによって、魚23が流れ方向に逆らって進行することを防止する。魚23が流れ方向上流側から流れ方向下流側に向けて進行すると、通路幅制限手段34を成す材料の幅方向内方の先端部分は、魚23によって流れ方向上流側から押圧され、通路幅制限手段34によって狭く規定される通過領域41の幅寸法は、大きくなる。
【0091】
各流路36を通過した魚23は、1匹ずつに分離されているので、魚捕捉機54によって、あるいは人の手によって、魚体形状判別装置53に投入され、魚23の良不良の判定および分別が行われる。
【0092】
図3に示すように、魚の分離方法は、閉鎖工程と、投入工程と、開放工程とを含んで構成される。本処理開始後、ステップa1の閉鎖工程に移行し、底蓋26を閉鎖する。次に、ステップa2の液体24注入段階に移行し、水槽21に液体24を注入する。この液体24は、分離の対象となる魚23を収容する液体24として適した成分を選択する。第1実施形態において分離の対象となる魚23は鯛の稚魚であるので、海水とする。またこれに魚23を養殖するときに魚23の健康状態を保ち、養殖を容易にするような成分を含んでいてもよい。
【0093】
次にステップa3の魚投入段階に移行し、魚23を水槽21内の液体24に投入する。液体24に魚23を入れることを「投入」と称するけれども、必ずしも魚23を投げ入れる必要はない。次にステップa4の開放工程に移行し、水槽21の底蓋26の開く。水槽21の底蓋26を開いた状態を、図2において26aで示しているけれども、底蓋26は、水槽21の底部から取り除かれるならば、どこに移動されてもよい。
【0094】
水槽21の底蓋26は予め定める時間内に開放する。予め定める時間とは、水槽21内に保持された魚の集合体および液体24が、落下することによって分離体22に形成される空間に進入する時間と比較して、無視できる程度に短い時間である。その後、魚の分離方法は終了し、魚23の停止工程に移行する。
【0095】
魚の分離方法において、ステップa2の液体24注入段階と、魚投入段階とは、同時に行うことも可能である。本処理に先立って、図5に示した底部材27の2枚の板状部材31の相対位置を変化させ、板状部材31に形成される複数の孔32を通過して落下する液体24の量を調整する工程を含んでいてもよい。この工程は、板状部材31の孔32を通過する液体24の量を変更する必要がない場合には、省略することができる。
【0096】
第1実施形態において、魚23が流路36を通過する速度と、液体24が通路を通過する速度との間に、大きな差があり、魚23の周囲に存在する液体24が少なくなる場合には、魚の分離方法は、流路36に魚の分離装置20の外部から液体24を注入する液体補充工程を、さらに含んで構成されてもよい。
【0097】
第1実施形態によれば、魚の分離装置20は、底部が底蓋26によって開閉可能にふさがれる水槽21を含んで構成されるので、魚の集合体と魚23を収容する液体24とを水槽21に保持した状態から、底蓋26を開くことによって、魚の集合体と液体24とを鉛直下方に落下させて放出することができる。これによって、魚23が液体24の流れに逆らって泳ぎ、魚23が水槽21に残ることを防止することができる。
【0098】
また魚の分離装置20は水槽21の下方に設けられる複数の仕切り壁28を含んで構成されるので、底蓋26が開くことによって鉛直下方に放出された複数の魚23は、複数の仕切り壁28間の空間に進入する。複数の仕切り壁28間の空間の、仕切り壁28の厚み方向の長さは、魚23の体幅の1倍以上2倍未満であるので、仕切り壁28間の1つの空間に進入する魚23が、仕切り壁28の厚み方向に複数並ぶことを防止することができる。これによって、複数の稚魚を簡単に1匹ずつに分離することのできる魚23分離装置を実現することである。魚の集合体は、魚23を収容する液体24と共に鉛直下方に放出されるので、魚23が複数の仕切り壁28の上端部の上に乗った場合にも、水流によって、魚23を仕切り壁28間の空間に進入させることができる。
【0099】
また第1実施形態によれば、隣り合う仕切り壁28同士の、厚み方向の間隔は、鉛直上方から鉛直下方に向かうにつれて、狭くなっているので、隣り合う仕切り壁28間の空間に複数の魚23が進入した場合に、魚23が仕切り壁28の下端部に近づくにつれて、互いの魚23の鉛直方向の距離の差を大きくすることができる。
【0100】
また隣り合う仕切り壁28の上端部同士の間隔は、隣り合う仕切り壁28の下端部同士の間隔よりも大きいので、上端部同士の間隔が小さいときに比べて、魚23が複数の仕切り壁28の上端部の上に乗る可能性を小さくすることができる。また、上方から落下して底部材27に近づくにつれて、隣の仕切り壁28に臨む仕切り壁28の表面に当たる液体24を厚み方向に集めることができるので、魚23および液体24が上方から下方に落下するときの速度を和らげることができ、魚23が底部材27に衝突するとき衝撃を緩和することができる。
【0101】
また第1実施形態によれば、厚み方向に隣り合う仕切り壁28の下端部の、互いに対向する表面間の距離は、分離の対象となる魚23の体幅の1.5倍以内であるので、隣り合う仕切り壁28間の底部材27近傍において、魚23が仕切り壁28の厚み方向に複数並ぶことを防止することができる。また隣り合う仕切り壁28間の底部材27近傍において、流れる液体24の勢いの大部分は、魚23に対して押し流す力として付与されるので、魚23が流れに逆らって進行することを抑制することができる。
【0102】
また第1実施形態によれば、底部材27の水槽21側に臨む面の少なくとも一部は、水平な仮想平面に対して傾斜する傾斜面29として形成され、仕切り壁28の厚み方向に垂直でかつ水平な方向の一方に向かうにつれて、傾斜面29は鉛直上方に向かう。これによって、上方から下方に向けて落下しながら仕切り壁28間に進入する魚23および液体24に対して、仕切り壁28の厚み方向に垂直でかつ水平な方向の他方に進ませる動力を与えることができる。
【0103】
また第1実施形態によれば、底部材27は、厚み方向に貫通する複数の孔32が形成された複数の板状部材31を含んで構成される。これによって、落下しながら仕切り壁28間に進入する液体24の一部を底部材27の板状部材31に形成される複数の孔32を通して底部材27よりも下方に落下させることができる。したがって、魚23とともに流れて移動する液体24の量を減少させることができる。魚23は流れる液体24の中にあると、液体24の中を泳ぎ、液体24の流れに逆らって進行する性質があるけれども、魚23とともに流れて移動する液体24の量を減少させることによって、魚23が液体24の流れに逆らって進行することを防止することができる。
【0104】
また複数の孔32が形成された複数の板状部材31を互いに変位させることによって、液体24が通過できる孔32の大きさを変化させることができる。これによって、魚23とともに流れて移動する液体24の量を調節することができる。したがって、魚23とともに流れて魚23を流れ方向下流に向けて押し流す液体24の量を確保することと、液体24の流れと逆の向きへの魚23の進行を防止することとを両立することができる。
【0105】
また第1実施形態によれば、流路36を構成する流路構成体33をさらに含んで構成され、流路36の幅寸法は魚23の体幅の1倍以上2倍未満に設定されるので、流路36を進行する魚23が、1つの流路36内において流れ方向に同じ位置を同時に通過することを防止することができる。また魚の分離装置20は流路36内に突出して設けられ魚23が通過する通過領域41を幅方向から規定する通路幅制限手段34とを含んで構成されるので、流路36を進行する魚23が、1つの流路36内において流れ方向上流側を進行する魚23が流れ方向下流側を進行する魚23に追いつくことを防止することができる。また流れ方向上流側を進行する魚23と流れ方向下流側を進行する魚23とが、1つの流路36内において、流れ方向に垂直な方向に重なる場合、流れ方向上流側を進行する魚23と流れ方向下流側を進行する魚23との距離を大きくすることができる。
【0106】
通路幅制限手段34は可撓性を有するので、魚23が通路幅制限手段34に接触しながら流れ方向上流側から流れ方向下流側に通過する場合に、魚23が傷つくことを防止することができる。通路制限部材は、流路36の流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かうにつれて、魚23の通過領域41の幅寸法が狭くなるように通過領域41を規定するので、魚23が流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かって通過することを許容しながら、魚23が流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かって通過することを阻止することができる。
【0107】
また第1実施形態によれば、通路幅制限手段34は、1つの流路36内において複数設けられ、複数の通路幅制限手段34は流れ方向にそれぞれ互いに離れて設けられる。これによって、魚23が流路36内において1つの通路幅制限手段34を通過した後に、流れ方向下流側の他の魚23に追いつくことを防止することができる。
【0108】
また第1実施形態によれば、魚の分離方法は、閉じた底蓋26を予め定める時間内に開放する開放工程を含んで構成される。これによって、魚の集合体および魚23を収容する液体24を水槽21の底部から鉛直下方に、短時間に落下させ、放出することができる。したがって、魚23が液体24の流れに逆らって進行して水槽21内に残ることを防止することができる。
【0109】
また魚の分離方法は水槽21の下方に設けられる複数の仕切り壁28を利用するので、底蓋26が開くことによって鉛直下方に放出された複数の魚23は、複数の仕切り壁28間の空間に進入する。複数の仕切り壁28によって規定される空間の、仕切り壁28の厚み方向の長さは、魚23の体幅の1倍以上2倍未満であるので、仕切り壁28間の1つの空間に進入する魚23が、仕切り壁28の厚み方向に複数並ぶことを防止することができる。魚の集合体は、魚23を収容する液体24と共に鉛直下方に放出されるので、魚23が複数の仕切り壁28の上端部の上に乗った場合にも、水流によって、魚23を仕切り壁28間の空間に進入させることができる。
【0110】
実験を行った結果、流路36を流れる魚23は、例外なく背部を上方へ、腹部を下方へ向けた姿勢となるけれども、仮に流路36を流れる魚23が背部を下方へ、腹部を上方へ向けた姿勢となった場合にも、第1実施形態に係る魚の分離装置20によって、魚23を分離することはできる。
【0111】
流路36を通過する魚23は、流れ方向一方を向いている魚23も流れ方向他方を向いている魚23も存在するけれども、そのどちらであっても、魚の分離装置20が魚23を分離することに支障はない。
【0112】
第1実施形態において水槽21は透明な部材によって形成されるので、水槽21内の魚23および液体24の様子を、水槽中心線L1から垂直に離れた水槽21の外方からも、観察することが容易になる。これによって、魚の集合体に、不健康な魚23が存在した場合に、不健康な魚23を発見することが容易になる。したがって、魚の分離装置20の使用者が、良否を判定する機会を多くすることができる。
【0113】
水槽21内には、上方から下方に向かうにつれて、水槽21内の内部空間を先細状に規定する第1および第2傾斜部47,48が設けられる。水槽21内の底部を塞ぐ底蓋26の面積は、小さければ小さいほど、底蓋26を開放することにかかる時間を短くすることができる。しかし、水槽21の内部に傾斜部46が設けられない場合、底蓋26によって塞がれる水槽21底部の開口42を小さくすると、底蓋26を開放したときに、水槽21の底部であって、底蓋26によって塞がれる部分とは異なる部分に、魚23が残存する可能性がある。第1実施形態では、水槽21内部に第1および第2傾斜部47,48を設けたので、第1および第2傾斜部47,48を設けない場合に比べて、底蓋26を開放したときに、水槽21内に魚23が残存する可能性を低減することができる。
【0114】
複数の仕切り壁28のうち、幅方向両端に位置する2つの仕切り壁28の上下方向の高さは、幅方向中間に位置する仕切り壁28に比べて高く設定される。これによって、底蓋26を開放したときに、仕切り壁28間の空間に向けて落下する魚23および液体24が、仕切り壁28よりも幅方向外方に放出されることを防止することができる。
【0115】
各仕切り壁28の、流れ方向に垂直な断面の、水槽21に臨む上端部は先丸状に形成される。これによって、仕切り壁28の上端部に魚23が当接したときに、魚23が傷つくことを防止することができる。また仕切り壁28の上に魚23が乗ることを防止し、仕切り壁28間の空間に魚23を侵入させることができる。また複数の仕切り壁28の流れ方向下流側の端部は、水槽21の流れ方向下流側端部よりも流れ方向下流側に位置する。これによって、水槽21から落下した魚23が仕切り壁28よりも流れ方向下流側に飛び跳ねる可能性を低減することができる。
【0116】
第1実施形態において仕切り壁28は、樹脂から成る材料である。樹脂はガラスおよび金属に比べて硬度が低いので、仕切り壁28によって魚23が傷つく可能性を低減することができる。さらに具体的には、仕切り壁28は発泡プラスチックによって形成される。発泡プラスチックは、ゴム弾性を有する樹脂に比べて弾性が小さいので、仕切り壁28全体の形状を保つことが容易になる。またガラス−ゴム転移温度以下の、気泡を含まないプラスチックに比べて、弾性が大きいので、魚23が傷つく可能性を低減することができる。
【0117】
底部材27は、複数の孔32が形成された板状部材31を2つ含んで構成される。これによって、水槽21から落下した液体24のうちの一部を、鉛直下方に通過させることができる。また、複数の孔32を通過して鉛直下方に落下する液体24の量を、2つの板状部材31の相対位置を変化させることによって、調節することができる。これによって、魚23とともに流れ方向下流側に向かう液体24の量を調節することができる。魚23とともに流れ方向上流側から下流側へ流れる液体24の量が多ければ多いほど、魚23は液体24の流れに逆らって泳ぐことが容易になり、魚23は下流側から上流側へ向かって泳ぐことが容易になる。また魚23とともに下流側へ流れる液体24の量が少なければ少ないほど、魚23を浮力によって支えることができなくなり、魚23が傷つくおそれがある。底部材27に含まれる2つの板状部材31によって流れ方向下流側に流れる液体24の量を調節できるので、魚23の遡上を防止し、魚23の分離を容易にすることができる。
【0118】
6つの流路36のうち、幅方向中央に位置する流路362つの、流れ方向の長さは同じであるものとするけれども、これ以外の隣り合う流路36の、流れ方向の長さには、1.5cm程の差が設けられる。この差が隣り合う流路36の流れ方向の長さの差として設定されることによって、人が各流路36の流れ方向下流側端部の近傍に位置し、流路36を通過した魚23を、手によって捕捉し、魚体形状判別装置53に投入することが可能になる。
【0119】
隣り合う仕切り壁28間の空間に進入した魚23は、周囲の液体24に一時的に浮遊し、底部材27から離れた状態にある。この状態で魚23は背部を上方へ、腹部を下方へ向けた姿勢となる。仕切り部材間の空間内で液体24に浮遊した状態で魚23と液体24とが流路36に進入すると、流路36を幅方向から規定する垂直部39の高さが低ければ低いほど、魚23が垂直部39よりも上に跳ね上がる可能性が高くなる。第1実施形態において垂直部39の流れ方向上流側端部の高さは、垂直部39のうち流れ方向上流側端部を除く部分の高さよりも高い。魚23が流路36に進入し、垂直部39の流れ方向上流側端部よりも下流側に進行すると、魚23の近傍に位置していた液体24は流れ方向に拡散するので、魚23が垂直部39よりも高く位置する可能性は低くなる。したがって、垂直部39のうちの流れ方向上流側端部を、高く形成することによって、魚23が垂直部39を越えて隣の流路36に移動する可能性および魚23が上に跳ね上がって垂直部39の上端部の上に乗る可能性を低減することができる。
【0120】
第1実施形態に係る魚の分離方法において、液体24注入段階を魚投入段階に先立って行うことによって、魚23が傷つく可能性を低減させることができる。
【0121】
第1実施形態において、水槽21は、底板部を除いて透明な部材で形成され、具体的にはアクリル樹脂で形成されるものとしたけれども、本発明において、水槽21の材質については規定しない。たとえば他の実施形態において水槽21は、金属であってもよい。また水槽21の絶対的な大きさについても規定しない。
【0122】
第1実施形態において、水槽21は、底板部が水平となるように設置されるものとしたけれども、水槽21は、底板部が水平な仮想平面に対して傾くように設置されてもよい。たとえば他の実施形態において、水槽21は、厚み方向に垂直な底板部の表面が、流れ方向に垂直で水平な直線を含み、流れ方向下流に向かうにつれて、下方に向かうように、傾いた状態で設置されてもよい。
【0123】
第1実施形態において、仕切り壁28の材質は、発泡プラスチックから形成されるものとしたけれども、仕切り壁28の材質は、発泡プラスチックでなくてもよい。たとえば他の実施形態において、仕切り壁28は、気泡を内包しない樹脂製であってもよく、また幅方向を厚み方向とする金属板の幅方向両側に樹脂が接着された複合材料であってもよい。
【0124】
第1実施形態において、分離体22の底部材27のうち水槽中心線L1より流れ方向上流側は、曲面として形成され、流れ方向上流側に向かうにつれて、上方に向かう傾斜面29として形成される。ただし他の実施形態において底部材27は、平板状の部材として形成されてもよい。
【0125】
第1実施形態において、流路構成体33の、幅方向に隣り合う垂直部39の間には、溝が形成され、隣り合う垂直部39間の溝の上部は、開放されており、外部空間に連通している。ただし他の実施形態において流路構成体33は、流れ方向に長手方向を有する複数の筒状部材を含んで構成されてもよい。
【0126】
第1実施形態において、流路構成体33の、幅方向に隣り合う垂直部39の間隔は、幅方向に隣り合う仕切り壁28の下端部の、互いに対向する表面間の距離に等しいけれども、幅方向に隣り合う垂直部39の間隔は、分離の対象となる魚23の体幅の1倍以上2倍未満に設定されれば、足りる。たとえば他の実施形態において、幅方向に隣り合う垂直部39の間隔は、幅方向に隣り合う仕切り壁28の下端部の、互いに対向する表面間の距離よりも短くてもよく、長くてもよい。
【0127】
第1実施形態において、幅方向に並ぶ仕切り壁28および溝部37の個数は6つとしたけれども、幅方向に並ぶ仕切り壁28および溝部37の個数は、規定しない。たとえば他の実施形態において幅方向に並ぶ仕切り壁28および溝部37の個数は、5つ以下であってもよく、または7つ以上であってもよい。
【0128】
第1実施形態において各溝部37は、それぞれ直線状に形成されるとしたけれども、水槽21に近い側の床部38の一端部の上端面が、水槽21から遠ざかった位置の床部38の他端部の状端面よりも高く、床部38の一端部から床部38の他端部に向けて、高さが単調に変化していればよい。他の実施形態において溝部37は、溝部37に関する軸線が曲線状になるように形成されてもよい。溝部37を曲げて設ける場合には、「流れ方向」の名称は一定の方向を表さず、溝部37の各部分において形成される液体24の流れの方向であるものとする。
【0129】
第1実施形態において、通路幅制限手段34は、隣り合う垂直部39の両方から、流路36内に突出して設けられる2つの部分を含むとしたけれども、本発明において通路幅制限手段34は、魚23の通過する通過領域41の幅寸法を幅方向両側から制限するように形成されれば、足りる。たとえば他の実施形態において通路幅制限手段34は、流路36内の幅方向一方または他方の垂直部39から、流路36内に突出して設けられる1つの部材によって形成されてもよい。
【0130】
図8は、本発明の第2実施形態における分離体22、流路構成体33、通路幅制限手段34および魚捕捉機54の平面図である。第2実施形態において、複数の溝部37は、流れ方向に垂直でかつ水平な方向に並ぶ。各溝部37は、床部38と垂直部39とを含む。床部38は、流路36を下方から規定し、垂直部39は、床部38から上方に突出し、流れ方向に長手方向を有し、流路36を流路36の幅方向両側から規定する。各溝部37において、流路36を前記幅方向から規定する2つの垂直部39のそれぞれ流れ方向下流側端部は、流れ方向に互いに異なる位置に形成される。前記上流側に位置する下流側端部を挟む両側の2つの流路36は、前記下流側端部のうち、流れ方向上流側に位置する下流側端部の下流側の位置を合流点56として、合流点56の下流側において、互いに合流した1つの流路36として形成される。互いに合流した1つの流路36の幅寸法は、魚23の体幅の2倍未満である。
【0131】
第2実施形態において、流路36は6つ形成され、隣り合う溝部37の、流れ方向の長さは、互いに異なる。最も幅方向外方に位置する溝部37は最も短く、幅方向中央に近づくにつれて、溝部37は長く設定される。最も幅方向一方に位置する流路36から、幅方向他方に向かうにつれて、「第1流路」、「第2流路」と称し、最も幅方向他方に位置する流路36を「第6流路」と称する。第1流路57と第2流路58とは、合流して1つの流路36となり、第5流路62と第6流路63とは、合流して1つの流路36となる。合流する2本の流路36の間に位置する垂直部39の、下流側端部を「合流点近傍端部」と称する。第1流路57および第2流路58間に位置する合流点近傍端部64と、第5流路62および第6流路63間に位置する合流点近傍端部64は、他の合流点近傍端部64に比べて最も上流側にある。
【0132】
合流した流路36は、合流点56の下流側において、幅寸法が魚23の体幅の2倍未満の流路36として形成される。合流点56から幅寸法が魚23の体幅の2倍未満の流路36となる流れ方向の長さは、短ければ短いほど好ましい。第1流路57と第2流路58とが合流した流路36は、第3流路59と隣り合う。第5流路62と第6流路63とが合流した流路36は、第4流路61と隣り合う。第1および第2流路57,58間の合流点近傍端部64の下流側において、第1と第2流路58とが合流した流路36と、第3流路59とが、合流する。第5および第6流路62,63間の合流点近傍端部64の下流側において、第5と第6流路63とが合流した流路36と、第4流路61とが、合流する。第1〜第3流路59の下流側の1つの流路36と、第4〜第6流路63の下流側の1つの流路36とは隣り合い、これらは合流する。幅方向に隣り合う2つの流路36が合流して1つの流路36となり、その合流点56よりも下流側において、合流して形成された1つの流路36が、これと隣り合う流路36と合流する。下流側に向かうにつれて幅方向に並ぶ流路36の個数は減少し、最終的に1つの流路36となる。流路36を通過する魚23は、流路36の下流側に配置される魚捕捉機54によって捕捉され、魚体形状判別装置53に投入される。
【0133】
第2実施形態によれば、流路構成体33には、流路36が複数形成される。合流点56よりも上流側において隣り合う2つの流路36は、合流点56の下流側において、合流した1つの流路36として形成され、合流した1つの流路36の幅寸法は、魚23の体幅の2倍未満である。この構成によれば、合流点56に同時に到達する魚23は最大で2匹であるので、流路36の幅寸法が魚23の体幅の3倍以上である流路36を、その下流側において体幅の2倍未満として形成する場合よりも、複数の魚23が同時に合流点56に到達する可能性を低減することができる。したがって、複数の魚23が合流点56に同時に到着し、下流側への進行を互いに妨げる可能性を低減することができる。
【0134】
図9は、本発明の第1実施形態における魚捕捉機54の平面図である。図10は、本発明の第1実施形態における魚捕捉機54を幅方向内方から見た側面図である。第1実施形態に係る魚の分離装置20は、魚捕捉機54をさらに含んで構成される。魚捕捉機54は、流路の下流側にあって、魚23を魚23の体幅方向両側から捕捉する装置である。第1実施形態において魚捕捉機54は、側壁部66と、電磁石部67と、接触部68を含んで構成される。側壁部66は、魚23が液体24とともに通過する流路36の下流側に設けられ、魚および液体の流れ方向に垂直かつ水平な交差方向の両側に離れて形成される2つの平板状部材31を含み、幅方向に変位可能に形成される。流路の下流側端部における幅方向を「交差方向」と称する。交差方向は、流路から魚捕捉機に移動する魚および液体の進行方向に垂直かつ水平な方向である。
【0135】
電磁石部67は、通電によって磁石として機能する電磁石を含み、側壁部66よりも幅方向内方に側壁部66の下端部に連結して設けられる。電磁石が磁石として機能すると、磁石の磁力によって側壁部66を幅方向に変位させ、2つの平板状部材31を互いに近接させる。
【0136】
接触部68は、幅方向内方に凹部78が形成される2つの伸縮性部材を含む。2つの伸縮性部材は、フェルト、スポンジ、またはゴム製の網から形成され、側壁部66の幅方向内方に各平板状部材31に固着して設けられる。第1実施形態において伸縮性部材は、フェルトから形成される。側壁部66の幅方向の位置に関わらず2つの伸縮性部材の間には常に内部空間が形成され、この内部空間の幅方向の長さは、捕捉の対象となる魚23の体幅よりも大きく設定される。側壁部66が最も幅方向内方に近接したときには、2つの伸縮性部材間の間隔は、前記内部空間の流れ方向下流側において、捕捉の対象となる魚23の体幅よりも短い距離となる。
【0137】
第1実施形態において魚捕捉機54は、センサ69と、側壁駆動部71と、制御部72とをさらに含んで構成される。センサ69は、側壁部66よりも流路36を流れる液体24の流れ方向上流側の、予め定める流路36の一部において、魚23の有無を検知し、魚23の存在を検知すれば信号を出力する。側壁駆動部71は、側壁部66の2つの平板状部材31のうち幅方向一方の平板状部材31を幅方向に変位させる。制御部72は、センサ69からの信号を受取り、センサ69からの信号と、センサ69から信号を受信した時期とに基づいて、電磁石部67の電磁石への通電の時期と側壁駆動部71の駆動とを制御する。
【0138】
第1実施形態において電磁石部67の下部には下方に向けて突出する凸部73が形成され、凸部73は幅方向を長手方向として形成される。凸部73の下端部の位置は側壁部66下端部よりも低く設定される。魚捕捉機54は、床板部74と、支持誘導部76とをさらに含んで構成される。床板部74は、流路36よりも流れ方向下流側に設けられ、側壁部66、接触部68および電磁石部67よりも低い位置に設けられ、側壁部66、接触部68および電磁石部67を下方から支持する。支持誘導部76は、床板部74に固定され、凹溝77を規定し、幅方向に延びて形成され、床板部74よりも幅方向一方に延在する凹部78を含み、電磁石部67の下部に設けられる凸部73と幅方向に摺動可能に嵌合する。
【0139】
第1実施形態において各流路36の流れ方向下流側には、魚捕捉機54および魚体形状判別装置53が取付けられる。魚捕捉機54は、第1実施形態に係る魚の分離装置20に含まれ、流路36を通過して流れ方向下流側に来た魚23を捕捉し、捕捉した魚23を、魚体形状判別装置53に投入する装置である。魚捕捉機54は、側壁部66と、接触部68と、床板部74と、支持誘導部76と、電磁石部67と、センサ69と、制御部72と、側壁駆動部71とを含んで構成される。
【0140】
側壁部66は、2枚の平板状の金属の材料からなり、幅方向に離れる2枚の平板状の材料によって1対を成す。各平板状の材料は、流れ方向に延びる直線と上下方向に延びる直線とに平行に配置される。側壁部66は、溝部37に対して幅方向に変位可能である。各金属材料は、流れ方向には魚23の標準体長と尾びれの長さを合計した長さよりも長く、高さ方向には魚23の体高よりも長い。
【0141】
図11は、本発明の第1実施形態における魚捕捉機54を、図9に示す切断面線A−Aで切断して見た断面図である。図12は、本発明の第1実施形態において、閉じた状態における魚捕捉機54の断面図である。接触部68は、フェルトから形成され、側壁部66の幅方向内方に、金属材料に固着して設けられる2つの伸縮性部材を含んで構成される。伸縮性部材は2つで1対を成し、これによって魚23を幅方向両側から捕捉する。
【0142】
接触部68の幅方向内方には、凹部78が設けられ、側壁部66と接触部68と電磁石部67とが幅方向に収縮しても、魚捕捉機54の内部には、幅方向両側の凹部78によって、フェルト間の空間が形成される。この空間の幅方向の幅寸法は、上下方向中央部においては、魚の分離装置20が分離の対象とする魚23の体幅よりも大きい。接触部68によって捕捉された魚23は、幅方向両側の凹部78によって形成されるフェルト間の空間に位置する。接触部68は、幅方向両側から同時に魚23を押圧することはない。
【0143】
魚捕捉機54が閉じた状態において、接触部68によって規定される内部空間は、上方に向けて開放される。また閉じた状態において、下方に向けて開放される開口42も形成されるけれども、閉じた状態において下方に向けて開放される開口42は、魚23が通過できないような、小さな開口42である。
【0144】
床板部74は、流路36の下流側に設けられ、側壁部66、接触部68および電磁石部67よりも下方にあって、流路36を流れてくる魚23と液体24とを下方から支持する。床板部74には、幅方向に伸びる支持誘導部76が嵌合し、床板部74と支持誘導部76とは、互いに固定されている。床板部74の上方の表面と、流路36の底部の上方の表面と、支持誘導部76の上方の端部の表面とは、面一状に形成される。
【0145】
支持誘導部76は、側壁部66、接触部68および電磁石部67よりも下方にあって、底板部に嵌合している。本実施形態において支持誘導部76は、2つの凹溝77を規定する2つの凹部78を含む。各凹部78は、それぞれ幅方向に長手方向を有し、6つの流路36のうち幅方向一方側に位置する3つの流路36の下流においては、底板部よりも幅方向一方に長く延びる。6つの流路36のうち幅方向他方側に位置する3つの流路36の下流においては、底板部よりも幅方向他方に長く延びる。底板部よりも幅方向一方に延びる凹部78の幅方向一方の端面と、底板部の幅方向一方の端面とは、幅方向に離れ、この距離は分離の対象となる魚23の体幅よりも長い。
【0146】
図13は、本発明の第1実施形態における支持誘導部76を表す斜視図である。凹部78に形成される開口42および内部空間を合わせて「凹溝」と称する。凹溝77を規定する各凹部78の上端部には、流れ方向に離れ、上端部が離れた部分に開口42が形成され、凹部78の内部に形成される内部空間は上方において外部空間と連通する。凹部78の内部に形成される内部空間の流れ方向の長さは、開口42の流れ方向の長さよりも長い。凹部78の、幅方向に垂直な平面で切断した断面は、Tの字を上下逆にしたような形状の内部空間を規定する。
【0147】
凹溝77を上方から見ると、内部空間を下方から規定する部分のうちの、流れ方向中央部が直接見えて、流れ方向両側において内部空間を規定する部分は、開口42近傍の凹部78上端部に重なり、情報からでは直接見えない。凹溝77の幅方向両端部において、内部空間および開口42は、外部空間に連通しており、凹溝77に嵌合される凸部73は、凹溝77に対して、幅方向いずれかの側から、挿入される。
【0148】
各凹溝77には、電磁石部67の下部に設けられる凸部73が嵌合し、側壁部66、接触部68および電磁石部67を支持する。凹溝77を規定する凹部78表面は、平滑な表面である。2つの凹部78は、流れ方向に互いに離れて位置し、側壁部66の流れ方向両端部付近に位置する。
【0149】
電磁石部67は、電磁石構成体を含んで構成される。電磁石構成体は、側壁部66を成す平板状の2枚の材料それぞれに4つずつ固定して設けられ、1対の平板状の材料を含む1つの側壁部66に対して計8つ設けられる。電磁石構成体は、側壁部66の流れ方向上流側と流れ方向下流側との、高さ方向上端部と下端部とから、それぞれ幅方向内方に突出して設けられる。各電磁石構成体の内部には、コイルと芯とが内包されており、コイルに電流が生じることによって、各電磁石構成体は磁石として働き、コイルの電流が消滅することによって、各電磁石構成体は電磁石としての機能を消失する。
【0150】
各平板状の材料に固定して設けられる電磁構成体のうち、各平板状の材料の下端部付近に位置する電磁石構成の下部には、下方に突出する凸部73が形成される。凸部73は、側壁部66よりも下方に突出して形成され、支持誘導体に形成される凹溝77に嵌合する。前記凸部73が前記凹溝77に嵌合することによって、側壁部66、接触部68および電磁石部67は、流れ方向に変位することが防止され、かつ幅方向には変位可能である。凸部73が凹溝77の中で幅方向に変位することによって、側壁部66、接触部68および電磁石部67は、幅方向に変位できる。凸部73は、各側壁部66に2つずつ配置され、各凸部73は、幅方向に長い形状をしている。これによって、側壁部66、接触部68および電磁石部67が上下方向の直線を軸線方向として角変位することを防止する。
【0151】
各凸部73のうち、前記凹部78の上方の開口42に嵌合する部分は、流れ方向の長さが短く、前記凹部78の内部空間に嵌合する部分は、流れ方向の長さが長く形成される。各凸部73の幅方向に垂直な断面は、Tの字を上下逆にしたような形状であり、凸部73が凹部78に嵌合した状態で、凸部73を凹部78に対して上方に変位させようとしても、凸部73と凹部78とが係合して互いに変位することを防止する。凸部73を凹部78に嵌合させるときには、凸部73を凹部78の幅方向のいずれかの側から凹溝77に挿入する。
【0152】
センサ69は、側壁部66、接触部68および電磁石部67の流れ方向上流に設けられ、流路36を進行する魚23の存在を検知する。センサ69は、発光ダイオードとフォトトランジスタとを有するフォトインタラプタであり、魚23が予め定める位置に到達したことを検知すると、制御部72に対して電気信号を出力する。センサ69が魚23の存在を検知する位置において、流路36に液体24が存在しても、制御部72に対して電気信号を出力することはない。センサ69は、流路36の個数に合わせて、6つ設けられる。
【0153】
センサ69が魚23の存在を検知する、予め定める位置は、側壁部66、電磁石部67および接触部68よりも流れ方向上流側の流路36である。センサ69は、この流路36の流れ方向のいずれの場所を観測し、魚23の存在の有無を検知してもよいけれども、流路36の流れ方向下流域において観測することが好ましい。
【0154】
制御部72は、センサ69からの電気信号を受取り、側壁駆動部71および電磁石が駆動する時期を決定して、電磁石と側壁駆動部71とを駆動させる。電磁石部67は、センサ69からの制御によって電気が流される。これによって電磁石部67は磁力を有し、磁石として機能する。電磁石部67が磁石として機能すると、幅方向に離れていた側壁部66には、電磁石による外力が付与される。電磁石による外力は、一対を成して幅方向に離れる電磁石を、幅方向に変位させて引付ける。電磁石同士の引力によって幅方向に変位した電磁石同士は、互いに接触する。
【0155】
側壁駆動部71は、側壁部66と、接触部68と、電磁石部67とを移動させる。本実施形態において側壁駆動部71は、6つの流路36のうち幅方向一方側に位置する3つの流路36の下流においては、一対の平板状の材料のうち、幅方向一方の平板状の材料と、これに固着している接触部68および電磁石を幅方向一方に移動させる。6つの流路36のうち幅方向他方側に位置する3つの流路36の下流においては、一対の平板状の材料のうち、幅方向他方の平板状の材料と、これに固着している接触部68および電磁石を、幅方向他方に移動させる。側壁駆動部71は、複動式エアシリンダまたはラックアンドピニオン機構を有する。
【0156】
側壁駆動部71は、幅方向一方の平板状の材料よりも幅方向一方に設けられ、幅方向に長手方向を有し、幅方向に変位するロッドを含んで構成され、ロッドの幅方向他方の端部は、幅方向一方の平板状の材料の、幅方向一方の表面部に接続される。魚捕捉機54を構成する材料のうち、側壁部66と、接触部68と、床板部74と、支持誘導部76と、電磁石部67と、センサ69と、側壁駆動部71とは、各流路36の下流側に1つずつ設けられる。制御部72は、流路36の個数に合わせて6つ設けてもよいけれども、本実施形態では、1つであってもよい。
【0157】
図14は、本発明の第1実施形態において魚捕捉機54が駆動する様子を表す平面図である。図14では、凹部78が、底板部よりも幅方向一方に長く延び、側壁駆動部71が、一対の平板状の材料のうち、幅方向一方の平板状の材料と、これに固着している接触部68および電磁石を幅方向一方に移動させる場合についての形態を示した。6つの流路36のうち、幅方向他方側の3つの流路36の下流側に位置する魚捕捉機54については、幅方向一方と幅方向他方とを逆にした構成となる。流路36を通過して魚23が流路36の流れ方向下流にくると、センサ69が予め定める位置に魚23がきたことを検出する。センサ69は、電気信号を制御部72に出力することによって、予め定める位置に魚23が来たという情報を制御部72に伝達する。
【0158】
図14(a)に示すように、魚23が幅方向に離れる接触部68の間に位置すると、図14(b)に示すように、電磁石部67が磁石として機能することによって、魚が捕捉される。次に図14(c)に示すように、側壁駆動部71が幅方向一方の側壁を幅方向一方に変位させ、幅方向両方の側壁部66、電磁石部67および接触部68は、幅方向一方に変位し、接触部68内の内部空間が床板部74よりも幅方向一方に位置する。次に電磁石部67への通電を停止し、電磁石部67の磁石としての機能を停止してから、側壁駆動部71によって幅方向一方の側壁部66をさらに幅方向一方に変位させると、幅方向両側の接触部68間の間隔が広がり、魚は床板部74よりも下方に落下する。
【0159】
図15は、魚捕捉機54に含まれる電気的接続関係を表すブロック図である。魚捕捉機54内の制御部72は、センサ69と電磁石部67と、側壁駆動部71とに電気的に接続される。制御部72は、センサ69から出力される信号に基づいて、電磁石部67と側壁駆動部71との制御を行う。
【0160】
制御部72は、センサ69から出力された信号と、センサ69から信号が出力された時刻とに基づいて、魚23が側壁部66および接触部68の幅方向内方に魚23が到着する時期を予測する。制御部72は電磁石部67および側壁駆動部71を制御し、魚23が側壁部66および接触部68の幅方向内方に到着する時期に合わせて、電磁石部67および側壁部66を駆動させる。電磁石部67の8つの電磁石が磁力を有し磁石として機能すると、1対の側壁部66および1対の接触部68は互いが近づけられる向きに力が付与される。これによって、1対の魚23が側壁部66および1対の接触部68の間に位置する状態で、側壁部66および接触部68は幅方向内方に移動し、魚23が捕捉される。1対の側壁部66に固着して設けられる8つの電磁石部67の電磁石は、全て磁石として機能し、幅方向一方の平板状部材31に固着して設けられる4つの電磁石部67と幅方向他方の側壁部66に設けられる4つの電磁石部67とがそれぞれ対になって、引き合い、側壁部66および接触部68が閉じた状態となる。
【0161】
魚23が捕捉された状態で、側壁駆動部71が駆動される。側壁駆動部71は、幅方向一方の平板状部材31を幅方向一方に変位させ、幅方向両側の側壁部66はいずれも支持誘導部76に案内されて、幅方向一方に変位する。接触部68に幅方向両側から規定される内部空間が、底板部よりも幅方向一方に位置し、内部空間の下方に底板部がない状態で、制御部72は、電磁石部67への通電を停止し、電磁石の磁石としての機能を停止する。その後、側壁駆動部71は幅方向一方の平板状部材31をさらに幅方向一方に変位させる。これによって、接触部68同士の間に形成された内部空間は拡大し、内部空間の下方の開口42の幅方向の長さは、魚23の体幅よりも長くなり、魚23の補足が解除される。これによって、魚23は、自重に基づく駆動力よって下方に落下し、魚体形状判別装置53に投入される。自重に基づく駆動力とは、質量に対して働く地球の重力である。
【0162】
側壁部66、電磁石部67および接触部68が床板部74よりも幅方向一方に変位した状態においても、床板部74は、床板部74に固定される支持誘導部76によって、側壁部66、電磁石部67および接触部68を支持するので、側壁部66電磁石部67および接触部68は床板部74によって、間接的に支持される。
【0163】
魚捕捉機54の制御部72は、魚体形状判別装置53が、魚23を受容できる状態にあるか否かを判定する魚体形状判別装置53内のセンサ69とも電気的に接続され、電磁石および側壁駆動部71の駆動の時期を決定する。魚体形状判別装置53内のセンサ69が、魚捕捉機54の制御部72に対して電気信号を出力し、魚23を受容できるとの情報を制御部72に伝達すると、魚捕捉機54の制御部72は、電磁石部67および側壁駆動部71の制御を行い、流路36を通過する魚23を魚体形状判別装置53に投入する時期を決定する。これによって、魚23を1匹ずつ、魚体形状判別装置53に投入する。
【0164】
図16は、本発明の第1実施形態における魚捕捉方法の工程を表したフローチャートである。魚捕捉方法は、魚23が液体24とともに流れる流路36の、魚23とともに流れる液体24の流れ方向下流側において、流路36を流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かって通過した魚23を捕捉する方法である。
【0165】
第1実施形態における魚捕捉方法では、側壁部66と、電磁石部67と、センサ69と、側壁駆動部71と、床板部74を用いる。側壁部66は、魚23が液体24とともに通過する流路36の下流側に設けられ、流路36の幅方向両側に離れて形成される2つの平板状部材31を含む。また側壁部66は、幅方向に変位可能に形成される。電磁石部67は、通電によって磁石として機能する電磁石を含み、側壁部66よりも幅方向内方に側壁部66の下端部に連結して設けられる。電磁石が磁石として機能すると、電磁石部67は、磁石の磁力によって側壁部66を幅方向に変位させ、2つの平板状部材31を互いに近接させる。
【0166】
センサ69は、側壁部66よりも流路36を流れる液体24の流れ方向上流側の、予め定める流路36の一部において、魚23の有無を検知し、魚23の存在を検知すれば信号を出力する。側壁駆動部71は、側壁部66の2つの平板状部材31のうち幅方向一方の平板状部材31を幅方向に変位させる。床板部74は、流路36よりも流れ方向下流側に設けられ、側壁部66、接触部68および電磁石部67よりも低い位置に形成され、側壁部66、接触部68および電磁石部67を下方から支持する。
【0167】
第1実施形態における魚捕捉方法は、センサ69から出力される信号に基づいて電磁石部67に通電を行う電磁石通電工程と、側壁駆動部71によって幅方向一方の平板状部材31を床板部74よりも幅方向一方に変位させる第1側壁部駆動工程と、電磁石部67への通電を停止する電磁石通電停止工程と、電磁石通電停止工程の後、幅方向一方の平板状部材31をさらに幅方向一方に変位させる第2側壁部66駆動とを含んで構成される。
【0168】
さらに具体的には、前述の接触部68、制御部72および支持誘導部76をも用いる。本処理に先立って、センサ69は稼動し続けており、予め定める流路36の一部において、魚23の有無を観測し、魚23の存在を検知すれば、本処理を開始する。本処理開始後、ステップb1の時期算出工程に移行し、制御部72によって、センサ69からの信号と、センサ69から信号を受信した時期とに基づいて、センサ69によって検知された魚23が側壁部66の幅方向内方に到着する時期を算出する。
【0169】
次にステップb2の電磁石通電工程に移行し、電磁石部67内の電磁石に通電を行い、電磁石に磁力を発生させる。電磁石部67の電磁石への通電の時期は、制御部72が算出した、魚23が側壁部66の幅方向内方に到着する位置である。これによって、電磁石部67の8つの電磁石が磁力を有し磁石として機能すると、1対の側壁部66および1対の接触部68は互いが近づけられる向きに力が付与される。これによって、1対の魚23が側壁部66および1対の接触部68の間に位置する状態で、側壁部66および接触部68は幅方向内方に移動し、魚23が捕捉される。
【0170】
次にステップb3の第1側壁部駆動工程に移行し、幅方向一方の平板状部材31を床板部74よりも幅方向一方に変位させる。幅方向両側の側壁部66は、いずれも支持誘導部76に案内されて幅方向一方に変位する。これによって、側壁部66に捕捉された魚23を、床板部74よりも幅方向一方に位置させる。次にステップb4の電磁石通電停止工程に移行し、制御部72は、電磁石部67への通電を停止し、電磁石の磁石としての機能を停止する。次いでステップb5の第2側壁部駆動工程に移行し、側壁駆動部71によって、幅方向一方の平板状部材31を、さらに幅方向一方に変位させる。これによって、側壁部66は、捕捉した魚23を開放し、魚23は床板部74よりも低い位置に落下する。その後、本処理は終了する。
【0171】
第1実施形態における魚捕捉方法において、センサ69が魚23の有無を観測する、予め定める位置は、側壁部66、電磁石部67および接触部68よりも流れ方向上流側の流路36のうち、流路36の流れ方向下流域である。
【0172】
第1実施形態に係る魚の分離装置20は、魚捕捉機54をさらに含んで構成される。魚捕捉機54は、流路の下流側にあって、魚23を魚23の体幅方向両側から捕捉する装置である。これによって、流路36を下流側に移動した魚23を捕捉し、魚体形状判別装置53に1匹ずつ投入することができる。
【0173】
第1実施形態において魚捕捉機54は、側壁部66と、電磁石部67と、接触部68を含んで構成される。側壁部66は、魚23が液体24とともに通過する流路36の下流側に設けられ、流路36の幅方向両側に離れて形成される2つの平板状部材31を含み、幅方向に変位可能に形成される。流路36を魚23が通過したときに、2つの平板状部材31を幅方向内方に変位させると、流路36を通過して側壁部66の幅方向内方に位置した魚23を幅方向両側から捕捉することができる。
【0174】
電磁石部67は、通電によって磁石として機能する電磁石を含み、側壁部66よりも幅方向内方に側壁部66の下端部に連結して設けられ、電磁石が磁石として機能すると、磁石の磁力によって側壁部66を幅方向内方に変位させる。これによって、魚23が側壁部66の幅方向内方に位置したときに電磁石を磁石として機能させることによって、2つの平板状部材31間の距離を短くし、魚23を側壁部66の変位によって捕捉することができる。
【0175】
接触部68は、フェルトから形成され、側壁部66の幅方向内方に各平板状部材31に固着して設けられる。幅方向内方に凹部78が形成される2つの伸縮性部材を含む。側壁部66の幅方向の位置に関わらず2つの伸縮性部材の間には常に内部空間が形成され、この内部空間の幅方向の長さは、捕捉の対象となる魚23の体幅よりも大きく設定される。側壁部66が最も幅方向内方に近接したときには、2つの伸縮性部材間の間隔は、前記内部空間の流れ方向下流側において、捕捉の対象となる魚23の体幅よりも短い距離となる。
【0176】
側壁部66が幅方向内方に変位したときには、接触部68が魚23に対して臨むので、魚23を捕捉したときに魚23を傷つけることを防止することができる。また側壁部66が最も幅方向内方に近接したときには、伸縮性部材によって幅方向両側から魚23を捕捉することができる。また伸縮性部材間に位置して細くされた魚23が、幅方向両側から押圧されることを防止することができる。
【0177】
また第1実施形態において魚捕捉機54は、センサ69と、側壁駆動部71と、制御部72とをさらに含んで構成される。センサ69は、側壁部66よりも流路36を流れる液体24の流れ方向上流側の、予め定める流路36の一部において、魚23の有無を検知し、魚23の存在を検知すれば信号を出力する。側壁駆動部71は、側壁の2つの平板状部材31のうち幅方向一方の平板状部材31を幅方向に変位させる。制御部72は、センサ69からの信号を受取り、センサ69からの信号と、センサ69から信号を受信した時期とに基づいて、電磁石部67の電磁石への通電の時期と側壁駆動部71の駆動とを制御する。
【0178】
これによって、センサ69によって、魚23が魚捕捉機54に近づいたことを検出することができ、制御部72によって、側壁部66の幅方向内方に魚23が位置する時期を予測することができる。側壁部66の幅方向内方に魚23が位置する時期に、電磁石部67を駆動することによって、魚23を捕捉することができる。また魚23を捕捉したのちに側壁駆動部71を駆動することによって、捕捉した魚23と、側壁部66と、接触部68とを幅方向一方に変位させることができる。
【0179】
また第1実施形態において電磁石部67の下部には、下方に向けて突出する凸部73が形成され、凸部73は幅方向を長手方向として形成される。凸部73の下端部の位置は、側壁部66下端部よりも低く設定される。魚捕捉機54は、床板部74と、支持誘導部76とをさらに含んで構成される。床板部74は、流路36よりも流れ方向下流側に設けられ、側壁部66、接触部68および電磁石部67よりも低い位置に設けられ、側壁部66、接触部68および電磁石部67を下方から支持する。支持誘導部76は、凹溝77を規定し、幅方向に延びて形成され、床板部74よりも幅方向一方に延在する凹部78を含み、電磁石部67の下部に設けられる凸部73と幅方向に摺動可能に嵌合する。
【0180】
電磁石の凸部73は、支持誘導部76に形成され、床板部74よりも幅方向一方に延在する凹部78に摺動可能に嵌合するので、側壁部66、電磁石部67および接触部68は、支持誘導部76に案内されて、床板部74よりも幅方向一方に変位することが可能になる。これによって、捕捉した魚23を床板部74よりも幅方向一方に移動させることができる。したがって、床板部74よりも幅方向一方で、魚23に対する捕捉を解除することによって、床板部74よりも下方に、魚23を落下させることができる。これによって、魚23を魚体形状判別装置53に投入することができる。
【0181】
また第1実施形態において、魚捕捉機54の制御部72は、魚体形状判別装置53が、魚23を受容できる状態にあるか否かを判定する魚体形状判別装置53内のセンサ69とも電気的に接続されるので、電磁石および側壁駆動部71の駆動の時期を電磁石部67および側壁駆動部71を制御することによって、捕捉した魚23を魚体形状判別装置53に投入する時期を決定することができる。これによって、魚23を1匹ずつ、魚体形状判別装置53に投入することが可能になる。
【0182】
また第1実施形態において、支持誘導部76の上方の端部の表面は、床板部74の上方端部と面一であり、床板部74の上方端部よりも上方に突出する部分を含んでいない。これによって、魚23が魚捕捉機54に進入したときに、魚23の下部を傷つけることを防止することができる。
【0183】
電磁石部67に設けられる凸部73は、各側壁部66に2つずつ配置され、各凸部73は、幅方向に長い形状をしている。これによって、側壁部66、接触部68および電磁石部67が上下方向の直線を軸線として角変位することを防止することができる。
【0184】
各凸部73の幅方向に垂直な断面は、Tの字を上下逆にしたような形状であり、凹部78の、幅方向に垂直な平面で切断した断面は、Tの字を上下逆にしたような形状の内部空間を規定する。これによって、凸部73が凹部78に嵌合した状態で、凸部73を凹部78に対して上方に変位させようとしても、凸部73と凹部78とが係合して互いに変位することを防止することができる。また側壁部66、接触部68および電磁石部67が水平方向の直線を軸線として角変位することを防止することができる。
【0185】
側壁部66、電磁石部67および接触部68が幅方向に閉じた状態において、接触部68間に形成される内部空間は、上方には、接触部68よりも上方の外部空間と連通する開口42が形成される。これによって、側壁部66および接触部68が幅方向に閉じると同時に、魚23周囲の液体24は、接触部68よりも上方に移動することができる。魚23周囲の液体24を密閉しないので、魚23周囲の液体24を通じて、魚23に圧力がかかることを防止することができる。
【0186】
第1実施形態における魚捕捉方法は、電磁石通電工程を含んで構成される。電磁石が引き合う力によって側壁部66の変位させ、魚23を捕捉することができるので、魚23が側壁部66の幅方向内方に位置してから、魚23が側壁部66よりも流れ方向下流側に移動するまでの時間よりも短時間のうちに、魚23を捕捉することができる。また電磁石に通電する電流値を調節することによって、電磁石が引き合う力の大きさを調節することができるので、電磁石の幅方向の変位によって魚23が傷つくことを防止することができる。
【0187】
第1実施形態における魚捕捉方法は、さらに第1側壁部駆動工程と、電磁石通電停止工程と、第2側壁部駆動工程とを含んで構成される。これによって、側壁部66に捕捉された魚23を、床板部74よりも幅方向一方に位置させ、下方に床板部74がない状態において側壁部66の平板状部材31が幅方向に互いに引き合う力を消失させ、平板状部材31の幅方向の距離を長くすることによって、魚23の捕捉を解除することができる。したがって、床板部74よりも幅方向一方において、床板部74よりも下方に魚23を落下させることができる。
【0188】
他の実施形態における電磁石通電工程では、電磁石に通電を行うと同時に、側壁駆動部71によって、幅方向一方の平板状部材31を、幅方向他方に変位させてもよい。これによって、幅方向に離れる電磁石同士が互いに引き合う力が増大し、魚23が側壁部66の幅方向内方に位置してから、魚23が側壁部66よりも流れ方向下流側に移動するまでの時間よりも短時間のうちに、魚23を捕捉することができる。
【0189】
第1実施形態では、魚捕捉機54は、魚23を魚体形状判別装置53の投入口に直接投入するものとしたけれども、魚捕捉機54は、魚23が魚体形状判別装置53の投入口に向かうことができるような目的位置で、かつ魚体形状判別装置53が投入口において魚23を受け入れることが可能な状態にある時期に、魚23の捕捉を開放する構成であれば、足りる。たとえば他の実施形態において魚捕捉機54は、魚体形状判別装置53の投入口に一端部がつながるホースの他端部付近において、魚23の捕捉を解除してもよい。
【0190】
第1実施形態において魚の分離装置20を流れ方向下流側に出た魚23は、魚捕捉機54によって捕捉される構成としたけれども、他の実施形態において、魚の分離装置20を流れ方向下流側に出た魚23は、人の手によって、魚体形状判別装置53に投入されてもよい。この場合には、魚の分離装置20の流れ方向下流側に、魚捕捉機54が設置される必要はない。この場合においても、魚の分離装置20は、魚の集合体を、流路36を流れる1匹ずつの魚23に分離することができるので、水槽21内を泳ぎまわる魚の集合体から魚23を1匹ずつ人の手によって捕捉する場合に比べて、魚23を分離し、捕捉することが容易になる。
【0191】
図17は、本発明の第1実施形態に係る魚体形状判別装置の内部を示す断面図である。図18は、本発明の第1実施形態に係る魚体形状判別装置の平面図である。図19は、本発明の第1実施形態において、撮像容器79が撮像域81にあるときの、魚体形状判別装置を、図18に示す切断面線C−Cで切断して見た断面図である。図19では、複数の撮像容器79のうち、撮像域81および排出域82に位置する撮像容器79以外の撮像容器79を除いて図示する。図18に示す切断面線B−Bで、本発明の第1実施形態に係る魚体形状判別装置を切断して見ると、図17の断面図となる。
【0192】
本実施形態に係る魚体形状判別装置は、生きている魚23の形状を判別するである。本発明において、魚23が背部を上方に向け、腹部を下方に向けている状態を「正立状態」と称する。魚23の形状について、良不良を判断することを「判定」と称し、判定した判定結果に基づいて魚23を分別することを「判別」と称する。魚体形状判別装置は、撮像容器79と、撮像手段83と、判定手段84とを含んで構成される。撮像容器79は、透光性を有し、液体24とともに魚23を正立状態で収容し、撮像手段83は、撮像容器79に収容される魚23を撮像する。判定手段84は撮像手段83によって得られる魚23の画像を解析して魚23の形状を判定する。可視光の波長領域のうち、少なくとも一部の波長領域の光を透過する性質を、「透光性」と称する。
【0193】
魚体形状判別装置は、撮像容器79に収容される魚23に刺激を与える刺激付与手段86を含んで構成される。本実施形態において刺激付与手段86は、押圧片87を含んで構成される。押圧片87は、魚23の側方から魚23を押圧して、魚23に刺激を与える。また魚体形状判別装置は、魚放出手段88をさらに含んでおり、魚放出手段88は、魚23が泳ぐことができる状態で魚23と液体24とを収容し、撮像容器79が下方に配置される状態で、液体24とともに魚23を下方に放出する。本実施形態において魚放出手段88は、放出容器89と底蓋体91とを有する。放出容器89は、魚23が泳ぐことができる状態で、液体24とともに魚23を下方に放出すし、底部に放出口92が形成される。底蓋体91は、放出容器89の放出口92を開閉する。
【0194】
魚体形状判別装置は、さらに搬送手段93を含む。搬送手段93は、撮像容器79を保持し、撮像容器79を投入域94から撮像域81および排出域82に、この順で移動させ、再び投入域94に戻す。投入域94は、魚放出手段88の下方に配置され、撮像域81は、撮像手段83によって撮像手段83によって魚23を撮像するときに撮像容器79が位置する領域である。排出域82は、撮像容器79から魚23が排出されるときに撮像容器79が位置する領域である。本実施形態において搬送手段93は、ターンテーブル96とテーブル駆動部97とを含んで構成される。ターンテーブル96は撮像容器79を保持し、テーブル駆動部97は、ターンテーブル96を回転駆動する。
【0195】
撮像容器79は、収容姿勢98と排出姿勢99とにわたって、姿勢変化可能に搬送手段93によって保持される。収容姿勢98において撮像容器79の姿勢は、開口を上方に向けた姿勢であり、排出姿勢99において撮像容器79の姿勢は開口を側方または下方に向けた姿勢である。魚体形状判別装置は、さらに姿勢調整手段102を含む。姿勢調整手段102は、撮像容器79が排出域82に配置される状態において、撮像手段83を収容姿勢98から排出姿勢99に変化させる。
【0196】
図20は、本発明の第1実施形態に係る魚体形状判別装置の平面図である。図21は、本発明の第1実施形態に係る魚体形状判別装置の断面図である。図21では、撮像容器79のうち、投入域94、排出域82および姿勢復帰域103に位置する撮像容器79以外の撮像容器79を除いて図示する。
【0197】
排出域82には、複数の排出領域部分101が設けられ、姿勢調整手段102は、判定手段84による判定結果に基づいて、判定結果に対応する排出領域部分101で、撮像容器79を横転させる。撮像容器79の搬送経路における排出域82と投入域94との間には、姿勢復帰域103が設けられる。姿勢調整手段102は、姿勢復帰域103で、撮像容器79を起立させて排出姿勢99から収容姿勢98に姿勢を変化させる。
【0198】
搬送手段93に保持される撮像容器79には、自重に基づく駆動力が働き、撮像容器79の自重に基づく駆動力によって、撮像容器79は、収容姿勢98から排出姿勢99に変化する。姿勢調整手段102は、容器支持体104と、複数の支持片106と、支持片駆動部と、案内体108とを含んで構成される。容器支持体104は、撮像容器79が、搬送経路における姿勢復帰域103から排出域82までの経路部分に配置されるとき、撮像容器79を支持して撮像容器79の姿勢を収容姿勢98に維持する。また撮像容器79が、収容姿勢98に維持される状態で、排出域82における各排出領域部分101を除く領域部分に配置されたとき、撮像容器79を支持して撮像容器79の姿勢を収容姿勢98に維持する。
【0199】
複数の支持片106は、支持位置109と許容位置111とにわたって変位可能である。支持位置109にある状態において支持片106は、撮像容器79が、収容姿勢98に維持される状態で、排出領域部分101に配置されるとき、撮像容器79を支持して撮像容器79の姿勢を収容姿勢98に維持する。許容位置111にある状態において支持片106は、撮像容器79が、収容姿勢98に維持される状態で、排出領域部分101に配置されるとき、撮像容器79の排出姿勢99への姿勢変化を許容する。
【0200】
支持駆動部は、各支持片106を個別に、支持位置109と許容位置111とにわたって変位駆動する。案内体108は、案内面110を有し、案内面110は、撮像容器79が姿勢復帰域103を通過するときに撮像容器79を案内する。これによって、案内体108は、撮像容器79を排出姿勢99から収容姿勢98に姿勢を変化させながら支持片106まで案内する。
【0201】
魚体形状判別装置は、放出魚検出手段112と、撮像魚検出手段113と、容器位置検出手段114と、制御手段116とを含んで構成される。放出魚検出手段112は、魚放出手段88に魚23が収容されているか否かを検出する。撮像魚検出手段113は、撮像容器79に魚23が収容されているか否かを検出する。容器位置検出手段114は、魚放出手段88の下方に撮像容器79が配置されているか否かを検出する。制御手段116は、放出魚検出手段112、撮像魚検出手段113および容器位置検出手段114の検出結果に基づいて、魚23が収容されていない撮像容器79が魚放出手段88の下方に配置され、かつ撮像容器79に魚23が収容されていないとき、魚放出手段88に魚23および液体24を放出させる。
【0202】
制御手段116は、搬送手段93に撮像容器79を撮像域81まで搬送させて撮像手段83に魚23を撮像させる。また制御手段116は、判定手段84に撮像で得られた画像を解析させて魚23の形状を判定させる。また制御手段116は、判定結果に基づいて、搬送手段93に撮像容器79を判定結果に対応する排出領域部分101まで搬送させる。また制御手段116は、支持片駆動部に各支持片106を駆動させて判定結果に対応する排出領域部分101で撮像容器79を横転させて魚23を排出させる。
【0203】
魚23は、正立状態で撮像容器79に収容され、撮像手段83は魚23を正立状態で撮像する。これによって、魚23の背部と腹部とを逆に判断することによる判別の誤りを防止する。また魚23は、液体24とともに撮像容器79に収容され、魚23は液体24の中で撮像される。仮に魚23が液体24から取出されて取扱われると、魚23が液体24中で取扱われる場合に比べて、魚23には傷がつきやすく魚23の健康状態が悪化し、また傷からの感染が起こる可能性が増大する。これに対し、魚体形状判別装置は、魚23を液体24の中で撮像することで、魚23が傷つくことを防止する。魚23の判別は、魚23の画像を解析することによって行う。これによって、人間による判断に伴う判断結果の誤りを防止する。
【0204】
刺激付与手段86は魚23に刺激を与え、魚23に鰭を開かせる。魚23の撮像に先立って刺激付与手段86によって魚23に刺激を与えることによって、魚23の鰭を魚体の輪郭から除外して魚体を撮像する。したがって、魚23の鰭が魚体の輪郭に含まれることによる輪郭の変化を防止する。これによって、魚23の鰭を除く輪郭を鮮明に撮像する。
【0205】
押圧片87は魚23を押圧して刺激を与え、魚23に刺激を与えると同時に、魚23の動きを停止させる。魚23の撮像に先立って、押圧片87で魚23の側方から魚23を押圧して刺激することによって、魚23の鰭を魚体の輪郭から除外して魚体を撮像することと、魚23を停止させて撮像することとを両立する。また押圧片87は、魚23が頭尾方向を軸線として傾いている場合に、傾きを低減する。
【0206】
魚放出手段88は、魚23を泳ぐことができる状態で、魚23を液体24とともに収容する。これによって、魚23が自分で正立状態になる。魚23には液体24中で自ら正立状態になる性質があるので、この性質を利用して、魚23を正立状態にすることができる。これによって、魚23を落下させた後の状態においても、撮像容器79内で正立状態とする。また魚放出手段88は、魚23を液体24とともに下方に放出し、魚23および液体24を自重に基づく駆動力によって下方に放出させる。これによって魚放出手段88は、魚23を移動させるための外力を魚23に付与する場合よりも、魚23を傷つける可能性を低減させる。
【0207】
また魚放出手段88は、放出容器89と底蓋体91とを含んでおり、底蓋体91は放出容器89の底部に形成された放出口92を開閉する。底蓋体91を開くことによって、魚23および液体24に対する支持を解除し、魚23および液体24を、自重に基づく駆動力によって下方に移動させる。これによって、魚23が液体24の流れに逆らって上方に進行することを防止する。また魚23を放出するために、魚23に外力を付与する場合よりも、魚23を傷つける可能性を低減させる。
【0208】
搬送手段93は、撮像容器79を投入域94から撮像域81へ、また撮像域81から排出域82に搬送し、再び投入域94に戻すように搬送する。搬送手段93は魚23を、液体24とともに撮像容器79に収容したまま搬送し、撮像し、また排出する。魚23を液体24から取出して取扱うことはなく、魚23が傷つくことを防止する。搬送手段93は、撮像容器79が排出域82で魚23を排出した後、再び撮像容器79を投入域94に戻し、撮像容器79を繰返し使用する。搬送手段93は、駆動部を含んでおり、駆動部は、撮像容器79の搬送を回転駆動によって行い、1つの駆動部によって撮像容器79を移動させる。
【0209】
収容姿勢98における撮像容器79は、開口を上方に向けた姿勢であり、撮像容器79は、収容姿勢98で、魚23および液体24を収容する。排出姿勢99における撮像容器79は、収容姿勢98から横転した状態の姿勢であり、開口を側方または下方に向けた姿勢である。撮像容器79は、収容姿勢98から排出姿勢99に変化することによって、収容姿勢98において収容していた魚23および液体24を、排出する。撮像容器79は、魚23および液体24の自重に基づく駆動力を利用して、魚23および液体24を排出する。これによって、魚23が液体24の流れに逆らって上方に進行することを防止する。
【0210】
排出域82には複数の排出領域部分101が設けられ、判定結果に対応する排出領域部分101で撮像容器79を横転させ、魚23の分別を位置の違いによって行う。姿勢調整手段102は、排出域82と投入域94との間で排出姿勢99から収容姿勢98に撮像容器79の姿勢を変化させ、排出が終了した後に、撮像容器79を開口を上方に向けた収容姿勢98に戻す。
【0211】
撮像容器79の、収容姿勢98から排出姿勢99への変化には、撮像容器79の自重に基づく駆動力を利用し、魚23を排出するための駆動にかかるエネルギーを低減する。姿勢調整手段102は、容器支持体104を含む。姿勢調整手段102は、姿勢復帰域103から排出域82までの経路部分と、排出域82における各排出領域部分101を除く領域部分とにおいて、撮像容器79が排出姿勢99に変化することを防止し、撮像容器79内に収容された魚23および液体24が排出されることを防止する。
【0212】
複数の支持片106は個別に、支持位置109と許容位置111とにわたって、支持片駆動部によって変位駆動される。これによって、撮像容器79が収容姿勢98から排出姿勢99に変化する位置を、変位駆動する支持片106を選択することによって決定する。案内体108は、撮像容器79を排出姿勢99から収容姿勢98に変化させることと、撮像容器79が支持片106によって支持される位置にまで撮像容器79を案内することの両方を行い、魚23および液体24を排出した後の撮像容器79を、魚23および液体24の収容可能な状態にする。
【0213】
放出魚検出手段112が、魚放出手段88に魚23が収容されていることを検出し、撮像魚検出手段113が、撮像容器79に魚23が収容されていないことを検出し、容器位置検出手段114が、魚放出手段88の下方に撮像容器79が配置されていることを検出したときに、制御手段116は、魚放出手段88に魚23および液体24を放出させる。
【0214】
魚体形状判別装置は、制御手段116を含んでおり、制御手段116は、魚23に対する判定手段84による判定結果に基づいて、搬送手段93と、撮像手段83と、支持片駆動部とを制御する。これによって、魚体形状判別装置は、魚23を撮像することと、魚23の形状を判定することと、魚23を搬送することと、魚23を排出することとを行う。
【0215】
図20は、前述のように、本発明の第1実施形態に係る魚体形状判別装置の平面図である。図21は、前述のように、本発明の第1実施形態に係る魚体形状判別装置の断面図である。図21では、撮像容器79のうち、投入域94、排出域82および姿勢復帰域103に位置する撮像容器79以外の撮像容器79を除いて図示する。本実施形態に係る魚体形状判別装置は、筐体117と、ターンテーブル96と、容器支持体104とを含んで構成される。
【0216】
ターンテーブル96は、大略的に平板状部材であり、その厚み方向を鉛直方向として配置される。ターンテーブル96は、ターンテーブル96の厚み方向に垂直な平面の中心を通り、厚み方向に延びる直線を軸線として回転する。この軸線を「回転軸線」と称し、ターンテーブル96の周方向を、単に「周方向」と称する。回転軸線L2に垂直で、回転軸線L2から離れる向きを「半径方向外方」と称し、回転軸線L2に垂直で、回転軸線L2に近づく向きを「半径方向内方」と称する。ターンテーブル96は、回転軸線L2方向にみて、大略的に円形である。
【0217】
ターンテーブル96の下方には、容器支持体104が配置される。容器支持体104は、平板状部材であり、その厚み方向を鉛直方向として配置される。容器支持体104は、回転軸線L2方向にみて、大略的に円形である。容器支持体104を回転方向に見たときの容器支持体104の直径は、ターンテーブル96を回転方向に見たときのターンテーブル96の直径よりも小さい。ターンテーブル96は回転軸線L2を中心に、上方から見て時計回りR1に回転する。容器支持体104は、筐体117に対して固定され、回転しない。
【0218】
ターンテーブル96の半径方向外方の外縁部には、8つの撮像容器79が取付けられる。8つの撮像容器79は、ターンテーブル96の外縁部に均等に間隔を設けて並ぶ。ターンテーブル96が停止した状態において、1つの撮像容器79を撮像域81に配置し、容器支持体104に対するこの撮像容器79の位置を第1位置118とし、第1位置118から時計回りR1に進んだ位置を第2位置119とし、同様に時計回りR1に順に進むと、第8位置127は、第1位置118から反時計回りに進んだ位置となる。第1位置118は、撮像域81であり、第2〜第4位置122は排出位置である。第5位置123と第6位置124との間には、姿勢復帰域103が設けられる。第6〜第8位置127は、投入域94である。投入域94に位置した撮像容器79の上方には、魚放出手段88が設けられる。
【0219】
筐体117は、撮像容器79と、撮像手段83と、刺激付与手段86と、ターンテーブル96と、テーブル駆動部97と、姿勢調整手段102と、撮像魚検出手段113と、容器位置検出手段114とを内包する。放出容器89および底蓋体91は、筐体117よりも上方に設けられる。
【0220】
図17は、前述のように、本発明の第1実施形態に係る魚体形状判別装置の内部を示す断面図である。魚放出手段88は、第6〜第8位置127に位置する各撮像容器79の上に配置され、魚放出手段88は3つ設けられる。魚放出手段88は、放出容器89と底蓋体91とを含んで形成される。本実施形態において放出容器89は、透明な部材によって形成され、放出容器89の側壁は、角筒状に形成される。放出容器89は、角筒の軸線方向を鉛直方向とし、底部を水平に配置される。放出容器89の内部空間の、半径方向に垂直かつ水平な方向の長さは、判別の対象となる魚23の吻端から尾の先端までの長さよりも長い。魚23の吻端から尾の先端までの長さを、「体長」と称する。放出容器89の上部は、外部空間に対して開放されている。
【0221】
放出容器89は、透光性を有するアクリル樹脂の板で構成される。放出容器89の底部には、放出口92が形成される。放出口92は、放出容器89の底部に形成された孔であり、放出口92は、放出容器89の底部を、鉛直方向に貫通して形成される。放出口92によって、放出容器89の内部空間と放出容器89よりも下方の外部空間とは、連通する。放出口92は、底蓋体91によって、開閉可能に塞がれる。放出口92を貫通する空間は、鉛直方向に見て長方形に形成され、長方形の長手方向の長さは判別の対象となる魚23の体長よりも長い。長方形の短辺方向の長さは判別の対象となる魚23の体幅よりも長く、体長よりも短い。放出口92は、鉛直方向に見て、放出容器89の底部の中央部に形成される。
【0222】
放出容器89は、放出口92の長方形の長手方向が、半径方向に垂直となるように配置される。放出口92を半径方向両側から規定する部分から、放出容器89の半径方向両端部の上端部2箇所に向けて、2つの傾斜面128が形成される。2つの傾斜面128のうち、半径方向内方の傾斜面128は、放出口92の半径方向内方を規定する部分を通り、放出容器89の上端部のうち半径方向内方に位置する端部を通る平面として形成される。2つの傾斜面128のうち、半径方向外方の傾斜面128は、放出口92の半径方向外方を規定する部分を通り、放出容器89の上端部のうち半径方向外方に位置する端部を通る平面として形成される。傾斜面128を有する傾斜部材は、平板状部材である。傾斜部材をその厚み方向に見た形状は、放出容器89の側壁と、放出容器89の底部によって規定される。傾斜部材は透光性を有する平板状部材で形成される。
【0223】
放出容器89よりも半径方向内方および外方には、放出魚検出手段112が設けられる。放出魚検出手段112は、発光素子129と受光素子131とからなるフォトインタラプタである。放出容器89よりも半径方向内方には、発光素子129を配置し、半径方向外方には受光素子131を配置する。発光素子129は半径方向外方に向けて光線を照射し、光線は放出容器89を通過する。受光素子131は、放出容器89を通過した発光素子129からの光線を受光できる位置に配置され、受光素子131の受光面で発光素子129からの光線を受光する。発光素子129および受光素子131間に、魚23がいれば、発光素子129からの光線は魚23によって、反射または吸収され、受光素子131の受光面に光線が届かない。これによって、放出容器89内に魚23が放出容器89内に存在するか否かを検出する。
【0224】
放出容器89の放出口92は、放出容器89よりも下方から、底蓋体91によって閉じられる。底蓋体91は、長方形に形成され、底蓋体91の長方形は、放出口92の長方形よりも、長辺、短辺ともに長い。底蓋体91は放出口92を下方から塞ぎ、底蓋体91によって放出口92が塞がれた状態において放出容器89は、魚23と液体24とを収容する。底蓋体91の、半径方向外方の端部は放出容器89の底部に接続され、底蓋体91と放出容器89との接続部分を中心に、底蓋体91は角変位可能である。底蓋体91が角変位することによって、放出口92が開く。底蓋体91が閉じた状態から開いた状態に移行する間の時間は、放出容器89に収容された魚23および液体24が、自重に基づく駆動力によって落下し、放出口92を通過し始めてから通過し終えるまでにかかる時間に比べて、無視できるほど短い。底蓋体91の開閉は、底蓋体駆動部132によって行われ、底蓋体駆動部132は、ロータリソレノイドを駆動源とする。ロータリソレノイドの駆動力はリンク部材によって底蓋体91に伝達され、底蓋体91の開閉が実現される。
【0225】
筐体117の、放出容器89の下方に位置する部分には、貫通孔が形成され、筐体117に形成された貫通孔は、筐体117の内部空間と筐体117の外部空間とを鉛直方向に連通させる。貫通孔は、鉛直方向に見て放出口92と同じ大きさの孔であってもよいけれども、本実施形態において、半径方向に垂直かつ水平な方向の貫通孔は、分類の対象となる魚23の体長よりも2cm程度短く設定される。これによって、底蓋体91を開いたときに鉛直下方に落下する魚23が、吻端から落下して背部と腹部とが逆になって撮像容器79に進入することを防止する。吻端から先に落下する魚23の吻端は、筐体117の貫通孔を規定する部分に接触し、吻端の落下速度が低下し、腹部から撮像容器79内に進入する。尾びれは筐体117の貫通孔を規定する部分に接触しても、吻端に比べて柔軟に曲がり易いので、落下速度は低下せず、筐体117の貫通孔を通過した魚23は、腹部を下方に向けて落下する。
【0226】
放出容器89が魚23および液体24を収容した状態で、放出容器89の下方に液体24を収容した撮像容器79が位置し、撮像容器79内部に魚23が存在しないときには、底蓋体91が開かれ、放出口92を通過して魚23および液体24が撮像容器79内部に入る。撮像容器79は、透光性を有するアクリル樹脂の平板状部材によって形成される。撮像容器79の内部空間は直方体として形成される。撮像容器79の内部空間には、押圧片87の一部が挿入される。撮像容器79の内部空間のうち、魚23が位置できる範囲の空間は、押圧片87の一部が占める体積だけ、減少する。撮像容器79の内部空間の半径方向に垂直かつ水平な方向の長さは、魚23の体長よりも長い。撮像容器79の鉛直方向の長さは、魚23の体高よりも長い。各放出容器89は1匹の魚23を収容し、各撮像容器79も1匹の魚23を収容する。
【0227】
図19は、前述のように、本発明の第1実施形態において、撮像容器79が撮像域81にあるときの、魚体形状判別装置の断面図である。図19では、複数の撮像容器79のうち、撮像域81および排出域82に位置する撮像容器79以外の撮像容器79を除いて図示している。第1位置118は、撮像域81であり、撮像域81に位置した撮像容器79は、第5位置123に配置されたカメラによって撮像される。撮像手段83は、カメラを含んで構成される。
【0228】
第1位置118の撮像容器79の半径方向外方には、面光源136が配置される。面光源136は、複数のフォトダイオードアレイを含んで形成される。フォトダイオードは面光源136の半径方向に垂直な面全体に配置され、面光源136の半径方向内方に面する面は、全体にわたって発光する。面光源136から発せられた光は、放出容器89を通過し、カメラに達する。撮像域81に位置した撮像容器79内に魚23が存在すると、面光源136からの光は撮像容器79内の魚23に遮蔽される。カメラが撮像した結果として、魚23が遮蔽した部分は暗く、魚23が遮蔽しなかった部分は明るい画像が撮像画像として得られる。
【0229】
図22は、本発明の第1実施形態に係る押圧片87の斜視図である。撮像容器79には、押圧片87が配置される。押圧片87は、押圧位置87aと押圧解除位置87bとに、変位可能に撮像容器79に取り付けられる。押圧片87は、2つの平板状部材と、ヒンジ部139を含んで構成される。2つの平板状部材のうち、一方は撮像容器79の内部空間に挿入される。押圧片87に含まれる2つの平板状部材のうち、撮像容器79の内部空間に挿入される一方の平板状部材を「押圧片第1部」と称し、他方の平板状部材を「押圧片第1部」と称する。
【0230】
押圧片第1部141は、押圧解除位置87bにおいて、半径方向を厚み方向として配置される平板状部材であり、押圧片第1部141の厚み方向に垂直な面は、矩形に形成される。押圧片87第一部の矩形の、対向する一対の辺は、半径方向に垂直かつ水平に配置される。押圧片第1部141の矩形の、対向する他の一対の辺は、鉛直方向に配置される。押圧片第1部141は、撮像容器79の内部空間のうち、最も半径方向内方に配置される。押圧片第1部141の高さ方向の長さは、撮像容器79の内部空間の鉛直方向の長さよりも長く、上端部は撮像容器79から上方に突出して配置される。押圧片第1部141の半径方向に垂直かつ水平な方向の長さは、撮像容器79内に収容される魚23の体長よりも長い。押圧片第1部141の上端部は、押圧片第1部142の半径方向外方の端部と固着している。
【0231】
押圧片第1部142は、押圧解除位置87bにおいて、鉛直方向を厚み方向として配置される平板状部材であり、押圧片第1部142の厚み方向に垂直な面は、矩形に形成される。押圧片第1部142の矩形の対向する一対の辺は、半径方向に垂直かつ水平に配置される。押圧片第1部142の矩形の、対向するたの一辺は、半径方向に配置される。押圧片第1部141の上端部と押圧片第1部142の半径方向外方の端部とは、互いに固着される。押圧片第1部142の半径方向に垂直かつ水平な方向の長さは、押圧片第1部141の半径方向に垂直かつ水平な方向の長さと同じである。
【0232】
ヒンジ部139は、押圧片第1部142に取り付けられる。ヒンジ部139は、押圧片第1部142と撮像容器79の半径方向内方の上端部とに取り付けられる。ヒンジ部139は、弾性変形および弾性復帰するねじりコイルばねを含んでおり、自然状態において押圧片第1部141および押圧片第1部142を押圧解除位置87bに配置する。ヒンジ部139は半径方向に垂直かつ水平な方向に延びて形成される。押圧片第1部141および押圧片第1部142が押圧解除位置87bに配置されるとき、撮像容器79の内部空間のうち、撮像容器79に挿入された押圧片87の一部が占める体積を差引いた残余の内部空間を「内空間」と称する。内空間の半径方向の長さは魚23の体幅よりも長く、魚23の体高よりも短い。内空間の半径方向に垂直かつ水平な方向の長さは、魚23の体長よりも長い。
【0233】
撮像容器79が第1位置118の撮像域81にあるときの撮像容器79近傍の筐体117内壁には、凸部160が設けられる。ターンテーブル96が上方から見て時計回りR1に回転し、撮像容器79が撮像域81に配置されると、撮像容器79に取付けられた押圧片87も、ターンテーブル96の回転駆動に伴って第1位置118に配置される。筐体117内壁に設けられた凸部160は、第1位置118に配置された押圧片第1部142の半径方向内方の端部を上方から押し下げ、押圧片87を押圧位置87aに変位させる。この変位は、ヒンジ部139を中心とする変位である。押圧位置87aから押圧解除位置87bに、また押圧解除位置87bから押圧位置87aに変位するとき、押圧片第1部141および押圧片第1部142は、半径方向に垂直かつ水平な方向に延びるヒンジ部139の軸線を中心として、角変位する。
【0234】
押圧位置87aにおいて押圧片第1部141は、撮像容器79内に収容された魚23の腹部を側方から半径方向外方に押圧する。これによって、押圧片87は魚23に刺激を与えるとともに、魚23を撮像容器79の半径方向外方の側壁に押圧し、魚23の動きを制限する。魚23には、刺激を受けることによって、鰭を開く性質があるので、魚23を側方から押圧すると、魚23は鰭を開く。これによって、開かれた鰭は、透光性を有し、カメラによって魚23を撮像し、撮像して得られた撮像画像から魚23の輪郭を抽出したときに、魚23の輪郭への鰭の影響を除去することができる。
【0235】
撮像容器79には、姿勢支持体143が連結される。姿勢支持体143は、撮像容器79に対して、撮像容器79の開口と反対側に位置して撮像容器79に連結され、撮像容器79が収容姿勢98にあるとき、容器支持体104に接触し、容器支持体104と撮像容器79との相対位置を維持する。姿勢支持体143は、支持部材144と回転体146とを含む。支持部材144は、一端部が撮像容器79に固定して連結され、支持部材144の一端部から遠ざかった位置の支持部材144の他端部には、回転体146が連結される。撮像容器79が収容姿勢98にあるとき、支持部材144の一端部から他端部への向きは鉛直方向の向きとなる。回転体146は、支持部材144の他端部に回転可能に接続される。回転体146は支持部材144を軸として回転可能である。
【0236】
撮像容器79の、開口とは反対側の端部は、ターンテーブル96の半径方向外方の外縁部に、ヒンジ147によって連結される。ヒンジ147は、撮像容器79が、ターンテーブル96に対して収容姿勢98と排出姿勢99とに変位可能に連結する。撮像容器79は、半径方向に垂直かつ水平な方向の軸線を中心に角変位することによって、収容姿勢98と排出姿勢99とに変位する。
【0237】
撮像容器79が、第6〜第8位置127の投入域94から第1位置118の撮像域81までの範囲に位置するときには、撮像容器79は、収容姿勢98に保持される。撮像容器79が収容姿勢98にあるとき、撮像容器79の下方に鉛直方向に延びて形成される姿勢支持体143は容器支持体104に接触する。具体的には、回転体146が容器支持体104に接触する。容器支持体104は、ターンテーブル96の回転軸と回転体146との距離を一定に保つ。これによって、姿勢支持体143は、撮像容器79がヒンジ147を中心に角変位して排出姿勢99になることを防止し、撮像容器79を収容姿勢98に保つ。容器支持体104は、ターンテーブル96よりも下方にあって、ターンテーブル96と回転体146との相対位置を制御する。
【0238】
図23は、本発明の第1実施形態において、鰭を開かせた魚23の撮像画像を、鰭を開かせなかった魚23の撮像画像に対して比較した図である。図23(a)は、鰭を開ききっていない魚23で、これを撮像すると、撮像画像は図23(b)のようになり、鰭が魚23のシルエットの中に含まれる。しかし図23(c)のように魚23に鰭を開かせると、図23(d)のように鰭を魚23のシルエットから除外することができる。これによって、鰭を除く部分の形状を判定の対象とすることができ、再現性の高い判定を行うことができる。
【0239】
図24は、本発明の第1実施形態に係る魚体形状判別装置を、図19に示す切断面線D−Dで切断して見た断面図である。第1位置118よりも搬送方向下流側に隣接して配置される第2〜第4位置122は、排出域82である。排出位置では、第2〜第4位置122に、3つの撮像容器79が配置される。第2〜第4位置122のそれぞれを、「排出領域部分」という。撮像容器79が排出領域部分101に配置されるとき、姿勢支持体143の回転体146は、容器支持体104を離れる。
【0240】
排出域82に位置する3つの撮像容器79の下方には、支持片106が配置される。支持片106は、第2〜第4位置122の各撮像容器79の下方に1つずつ設けられ、3つ設けられる。各支持片106の半径方向外方の外縁部と、容器支持体104の半径方向外方の外縁部とは、面一状に形成される。
【0241】
各支持片106が存在する領域において、容器支持体104には、3つの切り欠きが形成される。各支持片106は容器支持体104の切り欠かれた領域に配置される。それぞれの切り欠きが形成される領域のうち、それぞれの切り欠きを半径方向内方から規定する容器支持体104の一部分近傍には、半径方向に垂直でかつ水平な方向の軸が設けられる。この軸を「支持片係止軸」と称する。各支持片106の半径方向内方端部は、この支持片係止軸148を包囲する。支持片106は、支持片係止軸148まわりに角変位可能である。
【0242】
図25は、本発明の第1実施形態における支持片106が、支持位置109にある状態と許容位置111にある状態とを表した側面図である。支持片106は、支持片係止軸148を中心に角変位し、半径方向外方の端部が下方に変位する。支持片106の半径方向外方の端面が、容器支持体104の半径方向外方の端面と面一状であるときの支持片106の位置を「支持位置」と称し、支持片106の半径方向外方の端面が、容器支持体104の半径方向外方の外縁部よりも下方に変位したときの支持片106の位置を「排出位置」と称する。
【0243】
支持片106が、図25(a)に示すような支持位置109にある状態から、図25(b)に示すような排出位置に変位することによって、それぞれの排出領域部分101に位置する撮像容器79は、撮像容器79の自重にかかる重力によって、ヒンジ147を中心に角変位し、半径方向外方に倒れ、排出姿勢99となる。これによって、撮像容器79の開口は、収容姿勢98にあるときに比べて、半径方向外方に位置し、魚23および液体24を半径方向外方に排出する。
【0244】
3つの排出領域部分101のうち、1つの排出領域部分101では良品と判断された魚23が排出され、他の1つの排出領域部分101では不良品と判断された魚23が排出され、残余の1つの排出領域部分101では、再度の判定が必要と判断された魚23が排出される。仮に撮像容器79内に魚23が存在しない場合には、残余の1つの排出領域部分101で撮像容器79は排出姿勢99をとる。3つのうちのいずれか1つの排出領域部分101で排出された魚23および液体24は、平滑な表面によって規定されるそれぞれの排出流路150を通過してそれぞれの容器に移動する。
【0245】
支持位置109において支持片106は、厚み方向が鉛直方向となる支持片平板状部材149と、支持片平板状部材149よりも半径方向外方にあって、容器支持体104の外縁部と面一状に形成される面を有する支持片外方部材151と、支持片平板状部材149から下方に突出して形成される突出部152とを含んで形成される。排出位置において支持片106は、支持片平板状部材149と、支持片外方部材151と、突出部152とが、支持片係止軸148を中心に角変位した状態となる。
【0246】
支持片106が支持位置109にあるとき、姿勢支持体143の回転体146は支持片外方部材151に半径方向外方から接触し、半径方向内方に押圧する。支持片平板状部材149は、支持片外方部材151を通じて付与される半径方向外方からの力を支え、これによって、撮像容器79を収容姿勢98に維持する。突出部152には、2つの係止孔が形成され、支持片106が支持位置109にあるとき、係止孔は鉛直方向に並ぶ。2つのうち上方の孔を「第1係止孔」、下方を「第2係止孔」と称する。第1係止孔153を規定する部分は、容器支持体104よりも下方、支持片106よりも半径方向内方に位置する電磁プランジャに連結される。第2係止孔154を規定する部分は、引張りコイルばね162によって常に半径方向外方に引張られる。
【0247】
容器支持体104よりも下方には、ターンテーブル96を駆動するテーブル駆動部97が形成される。テーブル駆動部97は、モータ158と、軸受159と、モータの回転駆動力をターンテーブルに伝達する伝達機構167とを含んで構成される。容器支持体104よりも下方には、モータ158と、モータ158の回転を伝える軸が貫通する軸受159と、軸受159を筐体117に固定するための基台161と、伝達機構167とが配置される。各排出領域部分101の支持片106よりも下方の、基台161の一部分には、第2係止孔154を規定する部分と、引張りコイルばね162によって連結される係止凸部165が設けられる。この係止凸部165は、支持片106の突出部152よりも半径方向外方に位置する。引張りコイルばね162は、第2係止孔154を規定する部分と基台161に設けられる係止凸部165との距離を縮める向きの力を突出部152と基台161とに付与する。基台161は固定されるので、支持片106の突出部152が半径方向外方に引張られる。
【0248】
これによって、支持体は、電磁プランジャが駆動されない自然状態においては、支持位置109に配置される。第1係止孔153を規定する部分に連結される電磁プランジャは、ソレノイドを含んで構成される駆動源であり、通電とともに第1係止孔153を規定する部分を半径方向内方に変位させる。突出部152は、引張りコイルばね162によって、半径方向外方に向けて引張られるけれども、電磁プランジャは引張りコイルばね162の力に抗って、突出部152を半径方向内方に変位させる。これによって、支持片106は支持片係止軸148を中心に角変位し、支持片外方部材151は下方に変位する。
【0249】
本実施形態においては、良品と判断された魚23を収容する撮像容器79が第2位置119を通過するときに、第2位置119に位置する撮像容器79の下方の支持片106は、許容位置111となり、これによって、良品と判断された魚23を収容する撮像容器79は、第2位置119で排出姿勢99となり、第2〜第5位置123の範囲で排出姿勢99をとり続ける。不良品と判断された魚23を収容する撮像容器79が第3位置121を通過するときに、第3位置121に位置する撮像容器79の下方の支持片106は、許容位置111となり、これによって、不良品と判断された魚23を収容する撮像容器79は、第3位置121で排出姿勢99となり、第3〜第5位置123の範囲で排出姿勢99をとり続ける。再判定が必要と判断された魚23を収容する撮像容器79および魚23を収容していない撮像容器79が第4位置122を通過するときに、第4位置122に位置する撮像容器79の下方の支持片106は、許容位置111となり、これによって、再判定が必要と判断された魚23を収容する撮像容器79は、第4位置122で排出姿勢99となり、第4および第5位置122,123の範囲で排出姿勢99をとり続ける。
【0250】
撮像容器79が排出姿勢99となってさらに搬送され、排出姿勢99となった排出領域部分101よりも搬送方向下流側の支持片106近傍を通過するときには、支持片106が支持位置109であるか許容位置111であるかに関わらず、撮像容器79が姿勢支持体143が支持片106に接触することはない。
【0251】
第5位置123には、撮像手段83が配置される。撮像容器79は、第2〜第4位置122のいずれか1つの排出領域部分101で排出姿勢99をとるので、第5位置123に搬送された撮像容器79は排出姿勢99である。したがって、撮像手段83が第5位置123に配置されていても、搬送されてきた撮像容器79がカメラに接触することはない。撮像手段83は、第5位置123から、第1位置118の撮像域81にある撮像容器79と、第1位置118の撮像容器79に収容された魚23を撮像する。撮像手段83は、電荷結合素子(Charge Coupled Device, 略号「CCD])を備えるカメラを含んで構成される。カメラによって撮像された結果、カメラは撮像した画像情報をデジタル情報として、判定手段84に出力する。
【0252】
図26は、本発明の第1実施形態に係る魚体処理装置に含まれる電気的接続関係を表すブロック図である。本実施形態において判定手段84は、デジタル情報の形態を有する画像情報を解析して、魚23の輪郭を抽出し、魚23の輪郭に基づいて、魚23の良不良を判定する手段である。判定手段84は、コンピュータと、コンピュータの動作を規定するソフトウェアとを含んで構成される。判定手段84は、魚23を撮像した画像情報から、魚23の輪郭を抽出して、魚23の形状を認識する。魚23の輪郭の抽出は、画像を構成する各画素について、明暗の程度に判断基準を設定して、判断基準よりも明るい部分と暗い部分とを分別することによって行う。ただし、画素の位置と明暗の程度を関数とし、これを微分する方法によって輪郭を抽出しても良い。
【0253】
判定手段84は抽出された輪郭に対して正規化相関を行い、魚23の位置および姿勢の向きを検出する。正規化相関はパターンマッチングということもある。正規化相関によって、魚23の位置および姿勢の向きを決定した後、魚23の輪郭の形状について測定を行い、特徴抽出を行う。これはたとえば魚23の標準体長、体高、および標準体長と体高との比など複数の項目について、測定を行う。複数の項目の測定結果に基づいて、魚23に対して良不良の判定を行う。
【0254】
図27は、本発明の第1実施形態において判定手段84が行う処理の工程を表したフローチャートである。本処理開始後、ステップc1の画像取込工程に移行し、カメラから出力される画像情報を取得する。次にステップc2の前処理工程に移行し、画像のノイズの除去および輪郭の抽出を行う。次にステップc3の姿勢特定工程に移行し、魚23の位置および姿勢の向きを特定する。次にステップc4の測定工程に移行し、形状測定および特徴抽出を行う。次にステップc5の判定工程に移行し、形状測定および特徴抽出の結果に基づいて、魚23の良不良について判定を行う。その後、本処理は終了する。
【0255】
判定手段84による魚23の判別の終了後、判定手段84は、判定結果を制御手段116に対して出力する。制御手段116は、判定結果に応じて、第2〜第5位置123のいずれか1つで支持片106を許容位置111に変位させ、撮像手段83を排出姿勢99とする。制御手段116は、容器位置検出手段114に接続される。容器位置検出手段114は、ターンテーブル96によって回転軸線L2まわりに移動する各撮像容器79が、ある時刻にどこに位置するかを検出する手段である。容器位置検出手段114は、各撮像容器79の半径方向内方のターンテーブル96の下方に突出して設けられる複数の突出片166と、各突出片166の半径方向内方および半径方向外方に配置され、予め定める位置に突出片166が存在するか否かを検出する位置検出センサとを含んで構成される。
【0256】
突出片166はターンテーブル96に固着され、ターンテーブル96の回転に伴って回転軸線L2まわりに回転する8つの部材である。8つの突出片166は、複数の撮像容器79よりも半径方向内方の、ターンテーブル96の下方に取付けられ、回転軸線L2を中心とする周方向に、一定の間隔を設けて並んで配置される。位置検出センサは、第6位置124の半径方向内方において、突出片166の有無を検出する。第6位置124に撮像容器79が位置したとき、この撮像容器79の半径方向内方のターンテーブル96の下方に位置する突出片166の存在を、位置検出センサが検出し、第6位置124に撮像容器79が存在するとの情報を制御手段116に出力する。第6位置124に位置した撮像容器79が第6位置124と第7位置126との間に移動すると、位置検出センサが検出する範囲には突出片166が存在せず、位置検出センサは、突出片166が存在しないとの情報を制御手段116に出力する。
【0257】
ターンテーブル96は、およそ8秒ほどで1回転する。したがって、位置検出センサが検出する領域には、突出片166の存在する時間と突出片166が存在しない時間とが、合わせておよそ1秒程度となる。
【0258】
制御手段116は、位置検出センサからの情報に基づいて、第6位置124を通過した撮像容器79の個数を把握する。これによって、第1位置118に位置した撮像容器79内の魚23が良品と判定された場合、第1位置118に位置した撮像容器79が第2位置119に移動したことを把握することができ、第2位置119の撮像容器79に対応する支持片106を許容位置111に変位させる。第1位置118に位置した撮像容器79内の魚23が不良品と判定された場合、制御手段116は、第1位置118に位置した撮像容器79が第3位置121に移動したことを把握し、第3位置121の撮像容器79に対応する支持片106を許容位置111に変位させる。第1位置118に位置した撮像容器79内の魚23が再判定必要と判定された場合および第1位置118に位置した撮像容器79内に魚23がいないと判定された場合、制御手段116は、第1位置118に位置した撮像容器79が第4位置122に移動したことを把握し、第4位置122の撮像容器79に対応する支持片106を許容位置111に変位させる。
【0259】
撮像容器79は、第2〜第4位置122のいずれか1つの排出領域部分101で排出姿勢99をとるので、第5位置123に搬送された撮像容器79は排出姿勢99である。したがって、カメラが第5位置123に配置されていても、搬送されてきた撮像容器79がカメラと第1位置118の撮像容器79との間に位置することはなく、第5位置123に位置するカメラによる第1位置118の撮像容器79の撮影が妨げられることはない。
【0260】
図28は、本発明の第1実施形態における案内体108の斜視図である。第5位置123と第6位置124と間には、排出姿勢99の撮像容器79を収容姿勢98に戻す案内体108が設けられる。案内体108は姿勢調整手段102の一部であり、第5位置123と第6位置124との間は、姿勢復帰域103である。姿勢復帰域103では、容器支持体104には切り欠きが形成され、容器支持体104の切り欠かれた領域に、案内体108が位置する。案内体108は、容器支持体104に固定されて設けられる。案内体108を半径方向に見ると、図21に示されるように、三角形の形状である。第5位置123から第6位置124に向かうにつれて鉛直方向の長さは、長くなる。案内体108の、最も第6位置124に近い端部の上面は、ターンテーブル96の下面と平行である。案内体108を鉛直方向に見ると、案内体108の半径方向外方の外縁部は、回転軸線L2から等しい距離の曲線を描く。鉛直方向に見ると、案内体108の半径方向外方の外縁部は、第5位置123側においても第6位置124側においても、容器支持体104の外縁部と一つながりの曲線を描く。
【0261】
案内体108の上面は、ターンテーブル96の下面の近傍に位置し、姿勢支持体143の回転体146よりも上方に位置する。案内体108の鉛直方向の長さは、第6位置124から第5位置123側に向かうにつれて、短くなっており、案内体108の第5位置123側の端部は、半径方向に見て三角形の頂点を成し、回転体146よりも上方に位置する。案内体108の下面は、案内体108の半径方向外方の側面とともに1つの曲面として形成される。この一つながりの曲面が案内面110である。
【0262】
姿勢支持体143の回転体146は、排出姿勢99で第5位置123を通過し、案内体108の第5位置123側端部の下面に接触する。案内体108の下面は第6位置124側に向かうにつれて下方に向かうので、回転体146は案内面110によって下方に押され、撮像容器79および姿勢支持体143はヒンジ147を中心に角変位し、収容姿勢98に近づく。案内面110は半径方向外方の側面に滑らかに連なり、1つの曲面を形成するので、回転体146は第6位置124に向かうにつれて半径方向外方に押される。回転体146は、案内体108の第6位置124側の端部の外縁部に押され、撮像容器79は収容姿勢98となる。案内体108の第6位置124側端部を通過した後の回転体146は、容器支持体104に支持され、撮像容器79は収容姿勢98で投入域94の第6〜第8位置127を通過する。
【0263】
案内体108を通過した撮像容器79には、液体24が注入される。撮像容器79は、第6位置124に到達するまでに、液体24によって満たされる。撮像容器79が第6位置124に位置した状態で、撮像容器79内の魚23の有無は、撮像魚検出装置によって検出される。撮像魚検出装置は、発光素子129と受光素子131とからなるフォトインタラプタである。撮像容器79よりも半径方向内方には、発光素子129を配置し、半径方向外方には受光素子131を配置する。発光素子129は半径方向外方に向けて光線を照射し、光線は放出容器89を通過する。受光素子131は、撮像容器79を通過した発光素子129からの光線を受光できる位置に配置され、受光素子131の受光面で発光素子129からの光線を受光する。発光素子129および受光素子131間に、魚23がいれば、発光素子129からの光線は魚23によって、反射または吸収され、受光素子131の受光面にに光線が届かない。これによって、撮像容器79内に魚23が放出容器89内に存在するか否かを検出する。
【0264】
各放出容器89には常時液体24が注入され続ける。各放出容器89内の液体24の高さを検出する液位検出センサ163がそれぞれ配置される。各放出容器89に魚23が存在しておらず、各放出容器89の液体24の高さが5cm以上になるという2つの条件がみたされた状態で、各放出容器89は魚23が投入されてよい状態となる。各放出容器89近傍には、それぞれランプ164が配置され、各放出容器89に魚23が投入されてよい状態となると、各ランプ164が点灯する。これによって、放出容器89に魚23を人の手によって投入するときには、魚23を投入する作業者は各ランプ164の点灯によって、各放出容器89が魚23を投入してよい状態となったことを知ることができる。
【0265】
各放出容器89に魚23が投入された状態で、撮像容器79が各放出容器89の下方に位置し、撮像容器79に魚23が入っていない状態で、各底蓋体91は開かれる。各底蓋体91の駆動と、その時期については、制御手段116が制御を行う。
【0266】
制御手段116は、コンピュータと、コンピュータの動作を規定するソフトウェアとを含んで構成される。制御手段116は、3つの液位検出センサ163と、3つの放出魚検出手段112と、撮像魚検出手段113と、容器位置検出手段114と、撮像手段83と、判別手段と、3つのランプ164と、ロータリソレノイドと、テーブル駆動部97と、3つの電磁プランジャとに接続される。制御手段116は、撮像手段83と、3つのランプ164と、ロータリソレノイドと、テーブル駆動部97と、3つの電磁プランジャとを制御する。テーブル駆動部97に対しては、制御手段116によって制御され、ターンテーブル96を8秒で一周させる。
【0267】
制御手段116は、液位検出センサ163と、放出魚検出手段112と、撮像魚検出手段113と、容器位置検出手段114とからの出力信号に基づいて、放出容器89に魚23が存在しない状態でランプ164を点灯する。放出魚検出手段112が、放出容器89に魚23が存在するという情報を制御手段116に出力し、容器位置検出手段114が、放出容器89の下方に撮像容器79が位置するという情報を制御手段116に出力し、撮像魚検出装置が撮像容器79に魚23が存在しないという情報を制御手段116に出力すると、制御手段116はロータリソレノイドを駆動し、底蓋体91を変位させて放出口92が開かれる。
【0268】
撮像容器79が第6位置124に存在するときには、他の撮像容器79が第1位置118に位置するので、容器位置センサが第6位置124に撮像容器79が存在するという情報を制御手段116に出力すると、即座に制御手段116はカメラを駆動して第1位置118の撮像容器79を撮像する。撮像の結果、判断手段から、第1位置118を通過した魚23の良不良についての判定結果が制御手段116に出力されると、制御手段116はその判定結果に基づいて第2〜第3位置121の支持片駆動部内の電磁プランジャに通電を行い、支持片駆動部を制御して、撮像容器79を横転させる。
【0269】
図29は、本発明の第1実施形態において、制御手段116が3つの魚放出手段88を制御する工程を表したフローチャートである。本処理開始後、ステップd1の第6放出魚情報取得工程に移行し、制御手段116は、第6位置124の上方に位置する放出容器89に魚23が存在するか否かの情報を、第6位置124上方に位置する放出魚検出手段112から取得する。次にステップd2の第6位置撮像魚情報取得工程に移行し、撮像容器79が第6位置124に存在するという情報を容器位置検出手段114から取得するとともに、撮像容器79に魚23が存在するかの情報を取得する。第6位置124上方の放出容器89に魚23が存在し、第6位置124の撮像容器79に魚23が存在しない場合、ステップd3の第6位置底蓋体開放工程に移行し、第6位置上方の放出容器89内の魚23と液体24とを落下させる。
【0270】
放出容器89内に魚23がいない場合、または撮像容器79に魚23が存在する場合と、ステップd3の第6位置底蓋体開放工程が終了した場合とには、ステップd4の第7放出魚情報取得工程に移行し、制御手段116は、第7位置126の上方に位置する放出容器89に魚23が存在するか否かの情報を、第7位置126上方に位置する放出魚検出手段112から取得する。次にステップd5の第7位置撮像魚情報取得工程に移行し、撮像容器79が第7位置126に存在するという情報を容器位置検出手段114から取得するとともに、撮像容器79に魚23が存在するかの情報を取得する。第7位置126上方の放出容器89に魚23が存在し、第7位置126の撮像容器79に魚23が存在しない場合、ステップd6の第7位置底蓋体開放工程に移行し、第7位置上方の放出容器89内の魚23と液体24とを落下させる。
【0271】
放出容器89内に魚23がいない場合、または撮像容器79に魚23が存在する場合と、ステップd6の第7位置底蓋体開放工程が終了した場合とには、ステップd7の第8放出魚情報取得工程に移行し、制御手段116は、第8位置127の上方に位置する放出容器89に魚23が存在するか否かの情報を、第8位置127上方に位置する放出魚検出手段112から取得する。次にステップd8の第8位置撮像魚情報取得工程に移行し、撮像容器79が第8位置127に存在するという情報を容器位置検出手段114から取得するとともに、撮像容器79に魚23が存在するかの情報を取得する。第8位置127上方の放出容器89に魚23が存在し、第8位置127の撮像容器79に魚23が存在しない場合、ステップd9の第8位置底蓋体開放工程に移行し、第8位置上方の放出容器89内の魚23と液体24とを落下させる。その後、本処理は終了する。
【0272】
図30は、本発明の第1実施形態において、判定装置による魚23の判定と制御手段116による魚23の判別との工程を表したフローチャートである。本処理開始後、ステップe1の撮像工程に移行し、撮像容器79が第1位置118に到達すると同時に、制御手段116がカメラを駆動して撮像を行い、撮像画像が判定手段84に出力される。次にステップe2の解析工程に移行し、判定手段84によって解析が行われ、魚23の形状についての良不良の判定が行われる。次にステップe3の記憶工程に移行し、判定手段84による判定の結果を記憶する。これは、判定手段84が行ってもよいけれども、本実施形態においては制御手段116が記憶する。
【0273】
次にステップe4の第2位置判断工程に移行し、撮像の結果が良品であったか否かを判断する。撮像の結果が良品であった場合には、ステップe5の第2位置駆動工程に移行し、第2位置119下方の支持片駆動部を駆動し、第2位置119下方の支持片106を許容位置111に変位させる。撮像の結果が良品でなかった場合、ステップe6の第3位置判断工程に移行し、撮像の結果が不良品であったか否かを判断する。撮像の結果が不良品であった場合と、ステップe6の第3位置判断工程が終了した場合とには、ステップe7の第3位置駆動工程に移行し、第3位置121下方の支持片駆動部を駆動し、第3位置121下方の支持片106を許容位置111に変位させる。
【0274】
撮像の結果が不良品でなかった場合と、ステップe7の第3位置駆動工程が終了した場合とには、ステップe8の第4位置駆動工程に移行し、第4位置122下方の支持片駆動部を駆動し、第4位置122下方の支持片106を許容位置111に変位させる。その後、本処理は終了する。本実施形態では、第4位置122の下方にも、図24に示す支持片平板状部材149、支持片外方部材151および電磁プランジャ157を配置するけれども、他の実施形態において、第4位置122の下方には、支持片平板状部材149、支持片外方部材151および電磁プランジャ157を配置せずに、本実施形態と同様の切欠きを容器支持体104のみ形成する構成とすることもできる。これによって、第4位置122に位置した撮像容器79を強制的に排出姿勢99とすることができ、撮像容器79が第5位置123に配置されたカメラに衝突することを確実に防止することができる。
【0275】
本実施形態によれば、魚23は、正立状態で撮像容器79に収容されるので、魚23を正立状態で撮像することができる。これによって、魚23の背部と腹部とを逆に判断することによる判別の誤りを防止することができる。また魚23は、液体24とともに撮像容器79に収容されるので、魚23を液体24の中で撮像することができる。魚23が液体24から取出されて取扱われると、魚23が液体24中で取扱われる場合に比べて、魚23には傷がつきやすく魚23の健康状態が悪化し、また傷からの感染が起こる可能性が増大する。魚体形状判別装置は、魚23を液体24の中で撮像するので、魚23が傷つくことを防止することができる。魚23の判別は、魚23の画像を解析することによって行うので、人間による判断に伴う判断結果の誤りを防止することができる。魚体形状判別装置は、魚23の撮像と、撮像手段83によって得られる魚23の画像の解析と、魚23の判別とを行うので、人が行う労力を削減することができ、魚23を判別することの効率を高くすることが可能になる。
【0276】
また実施形態によれば、刺激付与手段86は魚23に刺激を与えるので、魚23に鰭を開かせることができる。魚23の撮像に先立って刺激付与手段86によって魚23に刺激を与えることによって、魚23の鰭を魚体の輪郭から除外して魚体を撮像することができる。したがって、魚23の鰭が魚体の輪郭に含まれることによる輪郭の変化を防止することができる。これによって、魚23の鰭を除く輪郭を鮮明に撮像することができる。したがって、魚23の形状の細部を検出して、魚23の形状を判別することができる。
【0277】
また実施形態によれば、刺激付与手段86は、押圧片87を含んで構成され、押圧片87は魚23を押圧して刺激を与えるので、魚23に刺激を与えると同時に、魚23の動きを停止させることができる。魚23の撮像に先立って、押圧片87で魚23の側方から魚23を押圧して刺激することによって、魚23の鰭を魚体の輪郭から除外して魚体を撮像することと、魚23を停止させて撮像することとを両立することができる。また押圧片87は魚23の側方から魚23を押圧するので、魚23が頭尾方向を軸線として傾いている場合に、傾きを低減することができる。したがって、魚23の鰭を除く輪郭を鮮明に撮像することができる。したがって、魚23の形状の細部を検出して、魚23の形状を判別することができる。
【0278】
また実施形態によれば、魚放出手段88は、魚23を泳ぐことができる状態で、魚23を液体24とともに収容するので、魚23が自分で正立状態になることができる。魚23には液体24中で自ら正立状態になる性質があるので、この性質を利用して、魚23を正立状態にすることができる。これによって、魚23を落下させた後の状態においても、撮像容器79内で正立状態とすることができる。また魚放出手段88は、魚23を液体24とともに下方に放出するので、魚23および液体24を自重に基づく駆動力によって下方に放出させることができる。したがって、魚23を移動させるための外力を魚23に付与する場合に比べて、魚23を傷つける可能性を低減させることができる。
【0279】
また実施形態によれば、魚放出手段88は放出容器89と底蓋体91とを含んで構成され、底蓋体91は放出容器89の底部に形成された放出口92を開閉するので、底蓋体91を開くことによって、魚23および液体24に対する支持を解除し、魚23および液体24を、自重に基づく駆動力によって下方に移動させることができる。これによって、魚23が液体24の流れに逆らって上方に進行することを防止することができる。また魚23を放出するために、魚23に外力を付与する場合に比べて、魚23を傷つける可能性を低減させることができる。
【0280】
また実施形態によれば、搬送手段93は、撮像容器79を投入域94から撮像域81へ、また撮像域81から排出域82に搬送し、再び投入域94に戻すように搬送するので、魚23を液体24とともに撮像容器79に収容したまま搬送し、撮像し、また排出することができる。魚23を液体24から取出して取扱う必要がないのいで、魚23が傷つくことを防止することができる。また搬送手段93は、撮像容器79が排出域82で魚23を排出した後、再び撮像容器79を投入域94に戻すので、撮像容器79を繰返し使用することができる。
【0281】
また実施形態によれば、搬送手段93は駆動部を含んで構成され、駆動部は、撮像容器79の搬送を回転駆動によって行うので、1つの駆動部によって撮像容器79を駆動することができる。したがって、複数の駆動部によって撮像容器79を駆動する場合に比べて、搬送手段93の機構を簡単化することができる。
【0282】
また実施形態によれば、収容姿勢98における撮像容器79は、開口を上方に向けた姿勢であるので、魚23および液体24を収容することができる。排出姿勢99における撮像容器79は、収容姿勢98から横転した状態の姿勢であるので、収容姿勢98から排出姿勢99に変化することによって、収容姿勢98において収容していた魚23および液体24を、排出することができる。また収容姿勢98から排出姿勢99に変化するときには、開口を上方に向けた姿勢から横転することによって魚23および液体24を排出するので、魚23および液体24の自重に基づく駆動力を利用して、魚23および液体24を排出することができる。これによって、魚23が液体24の流れに逆らって上方に進行することを防止することができる。また魚23を放出するために、魚23に外力を付与する場合に比べて、魚23を傷つける可能性を低減させることができる。
【0283】
また実施形態によれば、排出域82には複数の排出領域部分101が設けられ、判定結果に対応する排出領域部分101で撮像容器79を横転させるので、魚23の分別を位置の違いによって行うことができる。これによって、分別された魚23を判定結果に応じて異なる経路に進行させることができ、魚23の分別を行うことができる。
【0284】
また実施形態によれば、姿勢調整手段102は、排出域82と投入域94との間で排出姿勢99から収容姿勢98に撮像容器79の姿勢を変化させるので、排出が終了した後に、撮像容器79を開口を上方に向けた収容姿勢98に戻すことができる。また撮像容器79を排出域82から投入域94に搬送する途中で撮像容器79の姿勢を戻すので、撮像容器79を排出姿勢99から収容姿勢98に変化させることと、撮像容器79を投入域94に搬送することとの両方を同時に行うことができる。
【0285】
また実施形態によれば、撮像容器79の、収容姿勢98から排出姿勢99への変化には、撮像容器79の自重に基づく駆動力を利用するので、魚23を排出するための駆動にかかるエネルギーを低減することができる。姿勢調整手段102は、容器支持体104を含んで構成される。これによって、姿勢復帰域103から排出域82までの経路部分と、排出域82における各排出領域部分101を除く領域部分とにおいて、撮像容器79が排出姿勢99に変化することを防止し、撮像容器79内に収容された魚23および液体24が排出されることを防止することができる。複数の支持片106は個別に、支持位置109と許容位置111とにわたって、支持片駆動部によって変位駆動される。これによって、撮像容器79が収容姿勢98から排出姿勢99に変化する位置を、変位駆動する支持片106を選択することによって決定することができる。案内体108は、撮像容器79を排出姿勢99から収容姿勢98に変化させることと、撮像容器79が支持片106によって支持される位置にまで撮像容器79を案内することの両方を行うので、魚23および液体24を排出した後の撮像容器79を、魚23および液体24の収容可能な状態にすることができる。
【0286】
また実施形態によれば、放出魚検出手段112が、魚放出手段88に魚23が収容されていることを検出し、撮像魚検出手段113が、撮像容器79に魚23が収容されていないことを検出し、容器位置検出手段114が、魚放出手段88の下方に撮像容器79が配置されていることを検出したときに、制御手段116は、魚放出手段88に魚23および液体24を放出させることができる。これによって、魚放出手段88が魚23および液体24を下方に放出したときに、魚23が撮像容器79に収容されることを確実にすることができる。
【0287】
また実施形態によれば、魚体形状判別装置は、制御手段116を含んで構成され、制御手段116は、魚23に対する判定手段84による判定結果に基づいて、搬送手段93と、撮像手段83と、支持片駆動部とを制御する。これによって、魚体形状判別装置は、魚23を撮像することと、魚23の形状を判定することと、魚23を搬送することと、魚23を排出することとを行うことができる。
【0288】
筐体117の、放出容器89の下方に位置する部分には、貫通孔が形成される。半径方向に垂直かつ水平な方向の貫通孔は、分類の対象となる魚23の体長よりも短く設定される。これによって、底蓋体91を開いたときに鉛直下方に落下する魚23が、吻端から落下して背部と腹部とが逆になって撮像容器79に進入することを防止することができる。吻端から先に落下する魚23の吻端を、筐体117の貫通孔を規定する部分に接触させ、吻端の落下速度を低減させ、腹部から撮像容器79内に進入させることができる。尾びれは筐体117の貫通孔を規定する部分に接触しても、吻端に比べて柔軟に曲がり易いので、落下速度は低下することはない。したがって、筐体117の貫通孔を通過した魚23を、腹部を下方に向けて落下させることができる。
【0289】
魚23判別装置には、魚放出手段88が3つ設けられる。これによって、人の手によって魚23の判別装置に魚23を投入する場合、魚23の投入を3人で行うことができる。したがって、魚23の判別装置に魚23を1人で投入する場合よりも、作業効率を高くすることができる。
【0290】
本実施形態において、撮像容器79が収容姿勢98にあるとき、支持部材144の一端部から他端部への向きは、鉛直方向の向きとなるとしたけれども、支持部材144は、撮像容器79が開口を上方に向けて収容姿勢98をとることができる状態で撮像容器79を支持することができれば、足りる。たとえば他の実施形態において、支持部材144の一端部から他端部への向きは、鉛直方向の向きと角度を成す向きであってもよい。
【0291】
本実施形態において、魚23に鰭を開かせるための刺激付与手段86は、魚23の腹部を側方から押圧する押圧片87であるものとしたけれども、刺激付与手段86は、魚23に刺激を与えて鰭を開かせることができれば、足りる。たとえば他の実施形態において、刺激付与手段86は、魚23を収容する液体24に振動を与える機構であってもよい。
【0292】
本実施形態において、判別手段と制御手段116とは、それぞれ互いに別のコンピュータであるものとしたけれども、判別手段と制御手段116とは、別の機能を平衡して行えれば、足りる。たとえば他の実施形態において、判別手段と制御手段116とは、1つのコンピュータによって実現されてもよい。この場合には、1つのコンピュータを判別手段としても、制御手段116としても機能させるプログラムをコンピュータに搭載させる。
【図面の簡単な説明】
【0293】
【図1】本発明の第1実施形態に係る魚の分離装置20の、水槽21と分離体22との斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る魚の分離装置20の側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る魚の分離方法の工程を表すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る魚の分離装置20の、水槽21と分離体22との正面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る底部材27の一部分を、第1板状部材51と第2板状部材52とに分離して示した分離図である。
【図6】本発明の第1実施形態における流路構成体33および通路幅制限手段34の斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態における分離体22、流路構成体33、通路幅制限手段34および魚捕捉機54の平面図である。
【図8】本発明の第2実施形態における分離体22、流路構成体33、通路幅制限手段34および魚捕捉機54の平面図である。
【図9】本発明の第1実施形態における魚捕捉機54の平面図である。
【図10】本発明の第1実施形態における魚捕捉機54を幅方向内方から見た側面図である。
【図11】本発明の第1実施形態における魚捕捉機54を、図9に示す切断面線A−Aで切断して見た断面図である。
【図12】本発明の第1実施形態において、閉じた状態における魚捕捉機54の断面図である。
【図13】本発明の第1実施形態における支持誘導部76を表す斜視図である。
【図14】本発明の第1実施形態において魚捕捉機54が駆動する様子を表す平面図である。
【図15】魚捕捉機54に含まれる電気的接続関係を表すブロック図である。
【図16】本発明の第1実施形態における魚捕捉方法の工程を表したフローチャートである。
【図17】本発明の第1実施形態に係る魚体形状判別装置の内部を示す断面図である。
【図18】本発明の第1実施形態に係る魚体形状判別装置の平面図である。
【図19】本発明の第1実施形態において、撮像容器79が撮像域81にあるときの、魚体形状判別装置を、図18に示す切断面線C−Cで切断して見た断面図である。
【図20】本発明の第1実施形態に係る魚体形状判別装置の平面図である。
【0294】
【図21】本発明の第1実施形態に係る魚体形状判別装置の断面図である。
【図22】本発明の第1実施形態に係る押圧片87の斜視図である。
【図23】本発明の第1実施形態において、鰭を開かせた魚23の撮像画像を、鰭を開かせなかった魚23の撮像画像に対して比較した図である。
【図24】本発明の第1実施形態に係る魚体形状判別装置を、図19に示す切断面線D−Dで切断して見た断面図である。
【図25】本発明の第1実施形態における支持片106が、支持位置109にある状態と許容位置111にある状態とを表した側面図である。
【図26】本発明の第1実施形態に係る魚体処理装置に含まれる電気的接続関係を表すブロック図である。
【図27】本発明の第1実施形態において判定手段84が行う処理の工程を表したフローチャートである。
【図28】本発明の第1実施形態における案内体108の斜視図である。
【図29】本発明の第1実施形態において、制御手段116が3つの魚放出手段88を制御する工程を表したフローチャートである。
【図30】本発明の第1実施形態において、判定装置による魚23の判定と制御手段116による魚23の判別との工程を表したフローチャートである。
【図31】従来技術に係る魚の分離装置において、複数の稚魚を1匹ずつに分離しようとする状態における、魚の分離装置の平面図である。
【符号の説明】
【0295】
20 魚の分離装置
21 水槽
22 分離体
23 魚
24 液体
26 底蓋
27 底部材
28 仕切り壁
29 傾斜面
31 板状部材
32 孔
33 流路構成体
34 通路幅制限手段
36 流路
37 溝部
38 床部
39 垂直部
41 通過領域
42 開口
46 傾斜部
53 魚体形状判別装置
54 魚捕捉機
56 合流点
66 側壁部
67 電磁石部
68 接触部
69 センサ
71 側壁駆動部
72 制御部
73 凸部
74 床板部
76 支持誘導部
77 凹溝
78 凹部
79 撮像容器
81 撮像域
82 排出域
83 撮像手段
84 判定手段
86 刺激付与手段
87 押圧片
88 魚放出手段
89 放出容器
91 底蓋体
92 放出口
93 搬送手段
94 投入域
96 ターンテーブル
97 テーブル駆動部
98 収容姿勢
99 排出姿勢
101 排出領域部分
102 姿勢調整手段
103 姿勢復帰域
104 容器支持体
106 支持片
107 支持片駆動部
108 案内体
109 支持位置
110 案内面
111 許容位置
112 放出魚検出手段
113 撮像魚検出手段
114 容器位置検出手段
116 制御手段
117 筐体
128 傾斜面
132 底蓋体駆動部
136 面光源
157 電磁プランジャ
158 モータ
161 基台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚の集合体を液体とともに収容可能で、底部が底蓋によって開閉可能に塞がれる水槽と、
水槽の下方に設けられ、複数の仕切り壁が平行に立てて設けられ、隣り合う仕切り壁の互いに対向する表面間の距離が魚の体幅の1倍以上2倍未満であり、各仕切り壁の下端部間が底部材によって連結される分離体とを含むことを特徴とする魚の分離装置。
【請求項2】
隣り合う前記仕切り壁同士の、厚み方向の間隔は、鉛直上方から鉛直下方に向かうにつれて、狭くなっていることを特徴とする請求項1に記載の魚の分離装置。
【請求項3】
厚み方向に隣り合う仕切り壁の下端部の、互いに対向する表面間の距離は、分離の対象となる魚の体幅の1.5倍以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の魚の分離装置。
【請求項4】
前記底部材の水槽側に臨む面の少なくとも一部は、水平な仮想平面に対して傾斜する傾斜面として形成され、
傾斜面は、仕切り壁の厚み方向に垂直でかつ水平な方向の一方に向かうにつれて、鉛直上方に向かう平面または曲面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の魚の分離装置。
【請求項5】
底部材は、厚み方向に貫通する複数の孔が形成された複数の板状部材を含み、複数の板状部材は厚み方向に重ねられ、複数の板状部材のうち一方の板状部材に形成された複数の孔と、他方の板状部材に形成された複数の孔とは板状部材の厚み方向に連通可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の魚の分離装置。
【請求項6】
前記分離体よりも、仕切り壁間の空間を通る液体の流れ方向下流側に設けられ、流路の幅寸法を魚の体幅の1倍以上2倍未満として、流路を構成する流路構成体と、
流路内に突出して設けられ、可撓性を有し、魚が通過する通過領域を幅方向から規定する通路幅制限手段とをさらに含み、
通路幅制限手段は、流路を流れる液体の流れ方向上流側から流れ方向下流側に向かうにつれて、前記通過領域の幅寸法が狭くなるように通過領域を規定することを特徴とする請求項4または5に記載の魚の分離装置。
【請求項7】
前記通路幅制限手段は、1つの流路内において複数設けられ、複数の通路幅制限手段は流れ方向にそれぞれ互いに離れて位置することを特徴とする請求項6に記載の魚の分離装置。
【請求項8】
前記流路構成体には、流路を規定する溝部が複数設けられ、
複数の溝部は、流れ方向に垂直でかつ水平な方向に並び、
各溝部は、流路を下方から規定する床部と、
床部から上方に突出し、流れ方向に長手方向を有し、流路を流路の幅方向両側から規定する垂直部とを含み、
各溝部において、流路を前記幅方向から規定する2つの垂直部のそれぞれの流れ方向下流側端部は、流れ方向に互いに異なる位置に形成され、
前記下流側端部のうち、流れ方向上流側に位置する下流側端部の下流側の位置を合流点として、前記上流側に位置する下流側端部を挟む両側の2つの流路は、合流点の下流側において、互いに合流した1つの流路として形成され、
互いに合流した1つの流路の幅寸法は、魚の体幅の2倍未満であることを特徴とする請求項6または7に記載の魚の分離装置。
【請求項9】
魚の集合体を液体とともに収容可能で、底部が底蓋によって開閉可能に塞がれる水槽と、
水槽の下方に設けられ、複数の仕切り壁が平行に立てて設けられ、隣り合う仕切り壁の互いに対向する表面間の距離が魚の体幅の1倍以上2倍未満であり、各仕切り壁の下端部間を塞ぐ底部材が設けられる分離体とを用い、
複数の魚から成る魚の集合体を、1匹ずつの魚に分離する魚の分離方法であって、
前記底蓋によって前記水槽の下部を閉鎖する閉鎖工程と、
前記水槽に魚の集合体と液体とを入れる投入工程と、
前記閉じられた底蓋を予め定める時間内に開放する開放工程とを含むことを特徴とする魚の分離方法。
【請求項10】
魚が液体とともに通過する流路の下流側に設けられ、魚を、魚の体幅方向両側から捕捉する魚捕捉機をさらに含むことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載の魚の分離装置。
【請求項11】
前記魚捕捉機は、
魚が液体とともに通過する流路の下流側に設けられ、魚および液体の流れ方向に垂直かつ水平な交差方向の両側に離れて形成される2つの平板状部材を含み、流れ方向に垂直かつ水平な方向に変位可能に形成される側壁部と、
通電によって磁石として機能する電磁石を含み、側壁部よりも交差方向内方に側壁部の下端部に連結して設けられ、電磁石が磁石として機能すると、磁石の磁力によって側壁部を交差方向に変位させ、2つの平板状部材を互いに近接させる電磁石部と、
伸縮性材料から形成され、側壁部の交差方向内方に各平板状部材に固着して設けられ、交差方向内方に凹部が形成される2つの伸縮性部材を含んで形成される接触部であって、
側壁部の交差方向の位置に関わらず2つの伸縮性部材の間には常に内部空間が形成され、
この内部空間の交差方向の長さは、捕捉の対象となる魚の体幅よりも大きく設定され、
側壁部が最も交差方向内方に近接したときには、2つの伸縮性部材間の間隔は、前記内部空間の流れ方向下流側において、捕捉の対象となる魚の体幅よりも短い距離となる接触部とを含むことを特徴とする請求項10に記載の魚の分離装置。
【請求項12】
前記魚捕捉機は、
側壁部よりも流路を流れる液体の流れ方向上流側の、予め定める流路の一部において、魚の有無を検知し、魚の存在を検知すれば信号を出力するセンサと、
側壁部の2つの平板状部材のうち交差方向一方の側壁部を交差方向に変位させる側壁駆動部と、
センサからの信号を受取り、センサからの信号と、センサから信号を受信した時期とに基づいて、電磁石部の電磁石への通電の時期と側壁駆動部の駆動とを制御する制御部とをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の魚の分離装置。
【請求項13】
前記魚捕捉機は、
流路よりも流れ方向下流側に設けられ、側壁部、接触部および電磁石部よりも低い位置に形成され、側壁部、接触部および電磁石部を下方から支持する床板部と、
床板部に固定され、凹溝を規定し、交差方向に延びて形成され、床板部よりも交差方向一方に延在する凹部を含み、電磁石部の下部に設けられる凸部と交差方向に摺動可能に嵌合する支持誘導部とをさらに含むことを特徴とする請求項11または12に記載の魚の分離装置。
【請求項14】
魚が液体とともに通過する流路の下流側に設けられる側壁部であって、魚および液体の流れ方向に垂直かつ水平な交差方向の両側に離れて設けられる2つの平板状部材を含み、交差方向に変位可能に形成される側壁部と、通電によって磁石として機能する電磁石を含む電磁石部であって、側壁部よりも交差方向内方に側壁部の下端部に連結して設けられ、電磁石が磁石として機能すると、磁石の磁力によって側壁部を交差方向に変位させ、2つの平板状部材を互いに近接させる電磁石部と、側壁部よりも流路を流れる液体の流れ方向上流側の、予め定める流路の一部において、魚の有無を検知し、魚の存在を検知すれば信号を出力するセンサと、側壁部の2つの平板状部材のうち交差方向一方の側壁部を交差方向に変位させる側壁駆動部と、流路よりも流れ方向下流側に設けられる床板部であって、側壁部、接触部および電磁石部よりも低い位置に形成され、側壁部、接触部および電磁石部を下方から支持する床板部とを用い、
センサから出力される信号に基づいて電磁石部に通電を行う電磁石通電工程と、
側壁駆動部によって交差方向一方の平板状部材を床板部よりも交差方向一方に変位させる第1側壁部駆動工程と、
電磁石部への通電を停止する電磁石通電停止工程と、
電磁石通電停止工程の後、交差方向一方の平板状部材をさらに交差方向一方に変位させる第2側壁部駆動工程とをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の魚の分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2009−195172(P2009−195172A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40709(P2008−40709)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(592002950)
【Fターム(参考)】