説明

魚釣用リール

【課題】リール本体の限られたスペースを有効活用し、コストの低減を図りつつ十分な強度を維持することができる魚釣用リールを提供すること。
【解決手段】巻取り駆動部46を配置したフレーム16bに、ハンドル30の回転操作で連動回転するラチェット54の逆転を防止する逆転防止機構を設け、このフレーム16bに、側板20bをネジ部材18で取付け固定したリール本体12を備える魚釣用リール10であって、フレーム16bに、ラチェット54の逆回転を阻止するストッパ56を支持するボス部60を配置し、このボス部60に、側板20bを抜け止めするネジ部材18を螺合した魚釣用リール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関し、特に、ハンドルの回転操作で連動回転する回転体の逆転を防止する逆転防止機構を備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、掛かった魚で釣糸が不必要に繰出されるのを防止するため、魚釣用リールには、ハンドルの回転操作で連動回転する回転体の逆転を防止する逆転防止機構が設けられるのが一般的である。このような逆転防止機構には、魚釣用スピニングリールの巻取り駆動機構が設けられるリール本体内に、ハンドルの回転操作に連動回転する逆転防止体とこの逆転防止体の釣糸の繰出し方向の逆転を防止する係止部材とを配置し、この係止部材を、リール本体に一体的に形成したボス部に回転可能に支持すると共に、このボス部に螺合した別個のネジで抜け止めしたものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
また、両軸リールのリール本体に形成したボス部を介して、複数のネジで固定されて巻取り駆動機構および逆転防止機構を閉塞する外側板の内壁面により、このような係止部材を抜け止めしたものもある(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】実開昭52−19490号公報
【特許文献2】特開2002−238417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、リール本体の駆動部材が装着される部分、例えば両軸リールのフレーム基板、スピニングリールのボディの内壁等に、逆転を防止する係止部材の支持用ボス部(ネジ取付け用ボス部を含む)と外側板の取付け用ボス部のそれぞれを設けるスペースを確保する必要があり、このために、リール本体が大型化すると共に、他の駆動部材を装着するスペース上の制約が生じ、設計の自由度が低下する。
【0005】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、リール本体の限られたスペースを有効活用し、コストの低減を図りつつ十分な強度を維持することができる魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明によると、巻取り駆動機構を配置した駆動部品装着部に、ハンドルの回転操作で連動回転する回転体の逆転を防止する逆転防止機構を設け、この駆動部品装着部に、側カバー部材をネジ部材で取付け固定したリール本体を備える魚釣用リールであって、前記駆動部品装着部に、前記回転体の逆回転を阻止する係止部材を支持するボス部を配置し、このボス部に、前記側カバー部材を抜け止めするネジ部材を螺合した魚釣用リールが提供される。
【発明の効果】
【0007】
この魚釣用リールによると、逆転防止用の係止部材を支持するボス部と側カバー部材の取付け用のボス部とを兼用することにより、駆動部品が装着されるリール本体の限られたスペースを最大限に有効活用して、リール本体を小型化し、更に、取付け用のネジ部材を係止部材の抜け止めとして兼用化することにより、部品点数およびコストを低減し、更に、逆転防止用の係止部材を支持するボス部が、側カバー部材の取り付けネジをねじ込まれることにより、このボス部が補強される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1から図3は、本発明の好ましい実施形態による魚釣用リール10を示す。
【0009】
図1および図2に示すように、本実施形態の魚釣用リール10は、両軸受型手巻きリールとして形成してある。この魚釣用リール10のリール本体12は、支柱状の連結部材14等で一体化される左右一対のフレーム16a,16bのそれぞれの外側に、複数のネジ部材18により、側カバー部材である側板20a,20bを取付けて、全体的に剛性構造のハウジングとして形成され、取付脚部22を介して釣竿に固定される。
【0010】
釣糸が巻回されるスプール24は、左右のフレーム16a,16b間に回転自在に支持され、右側板20bは、スプール24を回転駆動させる巻取り駆動部46を支持し、この右側板20b内に右フレーム16bで区画された空間内に、この巻取り駆動部46の駆動力伝達系やドラグ系等の各種機構が収容される。本実施形態では、リール本体12の特に右フレーム16bが、巻取り駆動機構を配置するための駆動部品装着部を形成する。
【0011】
このリール本体12のフレーム16a,16b間には、スプール24を装着してこのスプール24と共に回転するスプール軸24aの両端部が、例えば図示のようなボール軸受26a,26bを介して回転自在に支持されている。このスプール軸24aの一端側から右フレーム16bを通して突出する端部は、このスプール軸24aと一体で同軸状に配置されるピニオン軸28aとして形成してあり、軸受26cを介して側板20bで回転自在に支えられている。このピニオン軸28a上に、ハンドル30で回転駆動されるピニオン28が移動可能に支持されている。
【0012】
このピニオン28は、ピニオン軸28aを挿通する筒状構造を有し、ピニオン軸28a上に回転可能かつ軸方向に移動可能に支持されている。このピニオン28は、支軸32aが右側板20bを貫通しかつこの右側板20bで支えられたクラッチレバー32を介して、クラッチ機構34をON/OFF操作することにより、図2に示すように、スプール軸24aに嵌合してスプール軸24aと一体的に回転する係合位置と、スプール軸24aとの係合状態が解除された非係合位置との間を移動することができる。
【0013】
このピニオン28の移動は、ピニオン28に形成された周溝28bに係合する作動部材36を、クラッチ機構34のON/OFF操作に連動させて、ピニオン軸28aに沿って移動することで行うことができる。ピニオン28が図1に示す係合位置に配置されたときに、クラッチONの釣糸巻取可能状態となり、図示しない非係合位置では、クラッチOFFのスプールフリー回転状態となる。このクラッチOFFの状態からハンドル30を回転すると、図示しない復帰機構を介して、クラッチONの状態に復帰することができる。
【0014】
本実施形態の作動部材36は、ピニオン28の周溝28bに嵌合する中央部から径方向外方に延びる各腕部の先端が、右フレーム16から突設させた短軸38(図1)に摺動自在に装着され、右フレーム16b側にバネ付勢されている。また、クラッチ機構34は、右フレーム16bと作動部材36との間で、右フレーム16bに沿って矢印Sで示すピニオン28に近接する方向および離隔する方向に往復動する作動プレート40に設けられたカム40aを有し、この作動プレート40がピニオン28側に移動すると、カム40aが作動部材36の腕部を右フレーム16bから離隔する方向に移動する。この作動部材36の移動により、周溝28bを介してピニオン28を右側板20b側に移動され、スプール軸24aとピニオン28との係合が解除され、クラッチOFFの状態となる。スプール24は自由に回転することができる。
【0015】
この作動プレート40を移動するため、クラッチレバー32の支軸32aにリンク部材42(図2)を回り止めして連結し、このリンク部材42に設けた係合ピン42aを作動プレート40の長孔40bに嵌合させることにより、このクラッチレバー32と作動プレート40とを連結してある。作動プレート40は、クラッチONの状態とクラッチOFFの状態とのそれぞれの位置に、公知の振分けバネ(図示しない)で振り分け付勢保持される。
【0016】
また、ピニオン28には、釣糸の繰り出しで回転するドライブギア44が噛合する。このドライブギア44は、巻取り駆動部46を構成する支軸としてのハンドル軸30aに回転可能に支持されている。このハンドル軸30aの両端部は、右フレーム16bおよび側板20bに軸受48(一方のみを示す)によって回転可能に支持されている。
【0017】
ハンドル軸30aを、その外端部に取り付けられたハンドル30により、釣糸巻取り方向に回転操作すると、ドライブギア44とハンドル軸30aとの間に介挿されたドラグ機構50を介してドライブギア44が回転され、それに伴ってピニオン28が回転する。そして、クラッチ機構がクラッチONの状態にあると、スプール軸24aが回転駆動され、スプール24が回転される。このとき、図示しないレベルワインド機構により、釣糸がスプール24上に均等に巻回される。
【0018】
このハンドル軸30aの途中には、このハンドル軸30aを釣糸巻取り方向である一方向にのみ回転を許容するローラタイプの一方向クラッチ52が設けられている。また、ハンドル軸30aの内端部には、ハンドル30の回転操作で連動回転する回転体として、ラチェット54が回り止め嵌合されており、係止部材としてリール本体12の右側板20bに装着されたストッパ56と噛合する。これらのラチェット54およびストッパ56は、一方向クラッチ52に滑りが生じた場合であっても、ストッパ56がラチェット54の歯と機械的に確実に噛合することにより、回転体であるラチェット54およびハンドル軸30aの逆転を確実に阻止することができる逆転防止機構を形成する。なお、符号54aは、このラチェット54から右フレーム16b側に突出し、クラッチOFFの状態からハンドル30を回転したときに、クラッチONの状態に復帰させる復帰機構(図示しない)を作動するクラッチ復帰用のボスを示す。
【0019】
図3に拡大して示すように、このストッパ56は、その先端部に、ラチェット56の歯を係止する爪が形成され、基端部に形成された貫通孔56aを介して、右フレーム16bから右側板20b側に突出するボス部60に装着される。このストッパ56は、一端が右フレーム16bに固定されたコイルバネ58の他端により、先端部がラチェット54に係合する方向に常時付勢されている。
【0020】
本実施形態のボス部60は、右フレーム16b側の大径部60aと右側板20b側の小径部60bとを有する段付構造に形成されており、この大径部60aと小径部60bとの間に段部60cが形成される。ストッパ56は、基端部の貫通孔56aを小径部60bに嵌合して、この段部60cに載置されることにより、右フレーム16bおよびラチェット54に対して、位置決めされる。このストッパ56をボス部60に装着して位置決めした後、コイルバネ58をこの小径部60bに装着し、コイルバネ58の端部をそれぞれ右フレーム16bとストッパ56とに係止することにより、ストッパ56は、ボス部60を中心として揺動することができる。
【0021】
このようにストッパ56を揺動自在に支えるボス部60は、その小径部60bの軸芯に沿う中央部にネジ孔62を形成してあり、右側板20bを右フレーム16bに取付けるネジ部材18を螺合することができる。
【0022】
このように、ハンドル軸30aおよびラチェット54の逆転防止用の係止部材であるストッパ56を支持するボス部60が、右側板20bの取付け用のネジ部材18を螺合するボス部を兼用することにより、巻取り駆動機構のハンドル軸30a、ドライブギア44およびドラグ機構50等の駆動部品が装着されるリール本体12内の限られたスペースを最大限に有効活用して、リール本体12の全体を小型化し、更に、取付け用のネジ部材18をストッパ56の抜け止めとして兼用化することにより、部品点数およびコストを低減することができる。
【0023】
更に、ストッパ56を支持するボス部60が、右側板20bの取り付け用のネジ部材18をねじ込まれることにより、このボス部60がネジ部材18および右側板20bで補強される。これにより、ボス部60の小径部60bを更に小径化し、右フレーム16bと右側板20bとで囲まれるスペースを更に有効に活用することもできる。なお、図1および図3に示すように、ボス部60を右フレーム16bの周壁部16cと一体化することにより、その強度を増大することが可能であるが、周壁部16cから分離した状態に形成することも可能である。
【0024】
図4および図5は、スピニングリールとして形成した魚釣用リール110の実施形態を示す。
【0025】
図4に示すように、本実施形態の魚釣用リール110は、リール本体112が、剛性構造のリールボディ112aと、このリールボディ112aの一側に複数本のネジ部材114で着脱可能に固定される側カバーである蓋体112bとを有し、リールボディ112aから延出する脚部112cの端部に形成された竿取付部(図示しない)を介して釣竿に取付けることができる。このリールボディ112aと蓋体112bとで形成されるリール本体112の内部空間内には、スプール116に釣糸を巻回するための巻取駆動機構が収容される。
【0026】
このリールボディ112aの一側には、種々の駆動部材を挿入して組み付ける収容凹部118を形成し、この収容凹部118の開口部を蓋体112bで閉じ、リール本体112の全体を剛性構造に形成している。具体的には、この巻取駆動機構は、リール本体112内に回転自在に支持され、一端に連結したハンドル120(図4)により、リール本体112に対して回転するハンドル軸122を有する。このハンドル軸122には、ハンドル120により回転されたときに、このハンドル軸122と共に回転するドライブギア124が取付けられている。このドライブギア124にはピニオン126が噛合している。本実施形態では、このリール本体112の特にリールボディ112aが巻取り駆動機構を配置するための駆動部品装着部を形成する。
【0027】
ピニオン126は、ハンドル軸122に対して直交する方向に延び、かつリールボディ112aと蓋体112bとで支えられる軸受128(一方のみを示す)を介して回転可能に支持された軸筒130に一体的に設けられている。このピニオン126が設けられた軸筒130の先端部には、ベール132および釣糸案内部134を備えたロータ136が一体的に取り付けられ、この軸筒130を、ハンドル軸122と直交する方向に延在するスプール軸138が貫通している。このスプール軸138は、ピニオン126と同心的に配されており、スプール往復動装置140により、ハンドル軸122と直交する方向すなわちピニオン126の軸方向に沿ってこの内部を前後動することができる。このスプール軸138の先端部に、釣糸が巻回されるスプール116が取り付けられる。
【0028】
本実施形態の魚釣用リール110は、逆転防止機構として、筒軸130に回り止めされて装着された回転部材としてのラチェット142と、このラチェット142に係合して逆転を防止する係止部材としてのストッパ144とを有する。このラチェット142は、上述の実施形態のラチェット54と同様に、釣糸の巻取り側に緩傾斜面を形成し、逆転側に急傾斜の傾斜面を形成する多数の爪部を有し、ストッパ144は、この爪部に係合する係合端144aが板状に形成されており、筒軸130およびラチェット142が釣糸繰出し方向に逆転したときに、逆転を阻止し、釣糸巻取り方向に回転した場合には、筒軸130およびラチェット142の回転を可能とするように構成されている。
【0029】
このストッパ144は、中間部144bを介して、リールボディ112aに一体形成されたボス部148に装着され、この中間部144bから腕部144cが後方すなわちスプール116と反対方向に向け、係合端144に略直交する方向に延び、全体的にL字状に屈曲した形状を有する。具体的には、中間部144bに形成された貫通孔146を、ハンドル軸122と平行なボス部148の支柱あるいは小径部150に装着され、バネ部材152により、係合端144aがラチェット142に係合する方向に付勢されている。このボス部148に設けた小径部150に、蓋体112bの取付けネジ部材114を螺合するネジ孔154が形成されている。
【0030】
また、このストッパ148の腕部144cを介して、ストッパ144を回動し、係合端144aがラチェット142に係合する位置と、非係合位置との間で移動するため、リール本体12の後端に切換レバー156を設けてあり、この切換レバー156に連結されたロッド部材158の先端に設けた作動部158aが、リールボディ112aに中間部を枢着された中間レバー160を通じて切換操作し、ラチェット142、筒軸130およびロータ136が正逆転可能な状態と、正転可能でかつ逆転不能の状態とに切換えることができる。ロータ136がいずれの状態にあっても、ハンドル120を正転方向(釣糸をスプールに巻き取る方向)に回転すると、図示しない復帰機構を介して、釣糸放出位置にあるベール132を、図1に示す釣糸巻取位置に復帰させることができる。
【0031】
なお、中間レバー160は、バネ部材162により、作動部158aに係合する状態に付勢されているが、作動部158aが中間レバー160の端部を挟持するように保持する場合には、このバネ部材162を省略することもできる。
【0032】
なお、上述の実施形態は、それぞれ変形可能なことは明らかであり、例えばスピニングリール110に、図1から図3の実施形態と同様なローラタイプの一方向クラッチおよびドラグ装置を設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の好ましい実施形態による魚釣用リールを示す部分断面図。
【図2】図1の魚釣用リールの釣糸繰出し方向から見た部分断面図。
【図3】図1の円IIIで囲んだ部分の拡大図であり、(B)は(A)のA−A線に沿う断面図。
【図4】他の実施形態による魚釣用リールの部分断面図。
【図5】図4の円Vで囲んだ部分の拡大図。
【符号の説明】
【0034】
10,110…魚釣用リール、12,112…リール本体(駆動部品装着部)、20a,20b…側板(側カバー)、112b…蓋体(側カバー)、18,114…ネジ部材、60,148…ボス部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取り駆動機構を配置した駆動部品装着部に、ハンドルの回転操作で連動回転する回転体の逆転を防止する逆転防止機構を設け、この駆動部品装着部に、側カバー部材をネジ部材で取付け固定したリール本体を備える魚釣用リールであって、
前記駆動部品装着部に、前記回転体の逆回転を阻止する係止部材を支持するボス部を配置し、このボス部に、前記側カバー部材を抜け止めするネジ部材を螺合したことを特徴とする魚釣用リール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−187897(P2008−187897A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22094(P2007−22094)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】