説明

鶏糞処理を目的とする発酵床用資材およびその製造方法並びにこれを利用した鶏糞処理方法

【課題】
排泄された鶏糞を効率良く分解処理することができ、アンモニア臭などの悪臭を効果的に軽減するとともに、汚泥化を抑制して廃棄物を減量することが可能な発酵床用資材を提供すること。
【解決手段】
杉より得られるチップ原料を圧力3〜6気圧、温度120〜160℃で60〜120分間蒸煮し、次いで得られた蒸煮物を擂り潰し、繊維状とすることにより得られる発酵床用資材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏舎用敷料に関し、さらに詳細には、排泄された鶏糞を効率良く分解処理し、アンモニア臭など悪臭の発生を抑制するとともに、汚泥化した廃棄物を著しく低減することが可能な発酵床用資材(以下、「資材」という)およびその製造方法およびこれを利用した鶏糞処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜の飼育においては、家畜を保温したり、また糞尿を吸収、分解して悪臭等を低減し衛生的な環境を保てるように床面に資材(敷料)が敷き詰められる。このような資材として、従来、もみ殻、麦わら、オガ粉、バークなどが利用されてきた。しかし、これらは吸水性が十分ではなかったり、硬すぎたり尖った形状のため、家畜を傷つけたり、不快感を与えるなどの問題があった。また、排泄された糞尿を分解し切れないため、悪臭がひどく、また糞尿と敷料が混ざり合って汚泥化してしまい、廃棄処分せざるを得ないのが実情であった。さらに家畜のストレスを引き起こし、ハエの発生、悪臭のアンモニア、硫化水素の発生は、近隣への環境問題になり、この解決のための堆肥設備運営コストの負担増等により、配合飼料価格の高騰の折、畜産業界に於いては、経営そのものが存続できない事態となっている。このため、畜産農家が、地域環境と融合し経営維持するための条件として、畜糞を農場外に出さないで農場内で処分するゼロエミッション化が不可欠となってくる。
【0003】
このような問題を解消するため、資材の原料を加工する試みがなされている。例えば、バークチップを200℃、20気圧の飽和水蒸気で蒸煮処理した資材が提案されている(特許文献1)。しかし、このような高温、高圧条件下で蒸煮処理した場合には、家畜にとって有害なフルフラールが多量に含まれるおそれがある。また、この資材は、一度使用した後は、再度蒸煮処理をしなければ再利用できないため、処理が煩雑でコストが高くなる問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−250371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、排泄された鶏糞を効率良く分解処理することができ、アンモニア臭などの悪臭を効果的に軽減するとともに、汚泥化を抑制して廃棄物を減量し、ゼロエミッション化を実現することが可能な資材の開発が望まれており、本発明は、そのような資材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、繊維分解菌がセルロース(繊維)を炭酸ガスと水に分解するために必要とされるエネルギー源として鶏糞中の窒素に着目し、スギのチップ原料を特定の条件下で蒸煮処理し繊維状にした資材を鶏舎の床面に敷き詰め、これに繊維分解菌を混合調整した環境下で鶏を飼育すると、定期的に攪拌するだけで、悪臭が著しく軽減され、ほとんど汚泥化が進行せず衛生的な状態が維持されるので、再利用するための処理を要さず、長期間にわたって使用することができ、廃棄物もほとんど発生しないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、杉より得られるチップ原料を圧力3〜6気圧、温度120〜160℃で60〜120分間蒸煮し、次いで得られた蒸煮物を擂り潰し、繊維状とすることにより得られる資材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の資材は、排泄された糞を速やかに分解し、アンモニア臭などの悪臭を軽減することができる。また鶏糞と資材を定期的に撹拌するだけで、汚泥化がほとんど生じず、衛生的な状態が保たれる。このため、飼育中の鶏糞や資材の廃棄量をほぼ0とすることが可能となり、環境負荷を著しく低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の資材を製造するための製造プラントを模式的に示す図面である。
【図2】製造プラントで用いる蒸煮缶の正面図である。
【図3】蒸煮缶の右側面図である。
【図4】実施例5において各試験区で資材を敷詰めた状態を模式的に示した図である。(a)は試験区1、(b)は試験区2、(c)は試験区3を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の資材(鶏舎用敷料)は、木材からのチップ原料を蒸煮し、この蒸煮物を擂り潰し、繊維状としたものである。
【0011】
原料となるチップは、チッパー等の装置を用い、木材を、6から16cm2程度の大きさ、2から3mm程度の厚みとしたものである。チップを得るための木材としては、特に制約はないが、古材でなく、生の木材を利用することが好ましく、特に、新規用途の開発が求められている杉間伐材を利用することが好ましい。
【0012】
このチップ原料の蒸煮は、3から6気圧、好ましくは、4から5気圧程度の圧力下、120から160℃、好ましくは130〜160℃、より好ましくは150から160℃程度の温度で、60から180分間、好ましくは60から120分間、より好ましくは90〜120分間程度行われる。
【0013】
このように蒸煮されたチップ原料(以下、「蒸煮チップ」という)は、次に擂り潰し、繊維状とされる。
【0014】
この擂り潰しは、例えば、リファイナー(解繊機)の固定刃と回転刃の刃間を2mm程度として擂り潰すことにより行われる(刃先が磨り減った場合は0.85mm程度まで許容される)。
【0015】
この擂り潰しにより、繊維状物が得られ、このものは放冷されて資材として使用することができる。
【0016】
本発明においては、上記のように例えば、6気圧以下の圧力、150℃程度の温度で蒸煮されるため、木材が柔軟化するとともに、木材中のセルロースや、ヘミセルロースが軟化し、腐朽、食害への抵抗性を有し、白色腐朽菌にしか分解できないリグニンの結合を壊す。そして、リファイナー等の作用により繊維状に解繊され、微生物が利用しやすい性状となる。この資材は、有害物質のフルフラールをほとんど含んでおらず(多くとも2ppm以下)、安全性の高いものである。
【0017】
次に、本発明の資材を実施するために用いる製造プラントの一例について説明する。
【0018】
図1は、発明の資材を製造するために用いる製造プラントを模式的に示した図面であり、図2は、この製造プラントで用いる蒸煮缶の正面図、図3は、その右側面図である。図中、1は蒸煮缶、2は台車レール、3はホイストコンベア、4はホイストクレーン、5は収納網篭、6はレシプロサイロを示す。また、7はスクリューコンベア、8は搬送コンベア、9はリファイナー入口、10はリファイナー、11はスロートスクリュー、12は回転刃物・固定刃物部、13はリファイナー出口である。
【0019】
このプラントで用いる蒸煮缶1の中に収納網篭5が3個収納される。この蒸煮缶は、正面から見ると図2に示すように開閉扉が取り付けられた状態になっている。この蒸煮缶1の側面には、図3に示すように圧力計19、温度計20を供え、圧力・温度を一定に保つ機能を供えている。また、ボイラーからの蒸気を導入するための蒸気入口18も設けられている。
【0020】
また、収納網篭5の出し入れは、着脱可能な台車レール2上を電動式で 行なわれ、ホイストクレーン4で収納網篭5を吊り上げ、ホイストコンベア3でレシプロサイロ6まで搬送する。
【0021】
このレシプロサイロ6は、蒸煮チップを受納して、センサーにより自動的に 作動する内蔵のレーキで蒸煮チップをスクリューコンベア7に送り、スクリューコンベア7は蒸煮チップを定時定量で搬送コンベア8に送る自動式操作サイロである。
【0022】
更に搬送コンベア8はチップを定時定量でリファイナー10に搬送する 設備である。
【0023】
リファイナー10は、その入口9より蒸煮チップを受け入れ、スロートスクリュー11により蒸煮チップを擂り潰す回転刃物・固定刃物部12に送り、ここで擂り潰され、出口13より繊維状の資材として排出される。排出された資材は空送ファン14で風送管15を通り、サイクロン16を介して集積室17にいたる。
【0024】
図1に示す製造プラントで資材を調製するには、次のようにすればよい。すなわち、まず、蒸煮缶1の開閉扉を開け、中に収納されている収納網篭5を台車レール2の上を転がし外に出す。フォークリフトで収納網篭5を持ち上げ、チップサイロでチップを受け、台車レール2に乗せ、再度蒸煮缶1の中に収用する。耐圧性の扉を閉めて、ボイラーからの蒸気を蒸気入口18より取り入れ蒸気加圧する。この工程は、チップのセルロース、ヘミセルロースを軟化し木質の柔軟化を図るためのものである。
【0025】
この様にして蒸煮の工程が終了したら、次に蒸煮缶1の扉を開け、収納網篭5を台車レール2を使って取り出し、ホイストクレーン4で吊り上げ、ホイストコンベア3を移動してレシプロサイロ6に投入する。その場合、収納網篭5をレシプロサイロ6の上部に到着すると自動的に収納網篭5の底板が開き、蒸煮チップがレシプロサイロ6に投入される。
【0026】
このレシプロサイロ6は、蒸煮チップを受納して、センサーにより自動的に作動する内蔵のレーキで蒸煮チップをスクリューコンベア7に送り、スクリューコンベア7は蒸煮チップを定時定量で搬送コンベア8に送り、搬送コンベア8は蒸煮チップを定時定量でリファイナー10に搬送する。
【0027】
このリファイナー10では、その入口9で受けた蒸煮チップがスロートスクリュー11により回転刃物・固定刃物部12まで送られ、擂り潰され、資材として出口13から排出される。この排出された資材は、風送ファン14により風送管15を通り、サイクロン16で空気と資材に分離され集積室17に集積される。
【0028】
以上のようにして本発明の資材を製造することができるが、本発明の資材を利用した鶏糞処理方法では、この資材に微生物を添加して用いる。使用できる微生物としては、消臭機能および堆肥化促進機能を有する微生物であれば制限なく使用できるが、枯草菌類、放線菌類、糸状菌類等が好ましく、これらの1種または2種以上を使用することができる。放線菌類としては、ストレプトミセス属、ノカルディア属、アクチノマイセス属、フランキア属、アクチノプラネス属、ミクロモノスボラ属などが例示でき、また糸状菌類としては、アスペルギルス属、トリコデルマ属、ペニシリウム属、セファロスポリウム属、アクレモニウム属、アルテルナリア属、クラドスポリウム属などが例示できる。これらの微生物は、公知の培養方法を適用して培養を行うことができ、液体培養により得られた培養物をそのまま利用してもよく、また、この培養物から遠心分離等の手段により菌体を集めて用いてもよい。さらに培養物を凍結乾燥して粉末状にしたものを用いてもよい。これらの微生物を含有する市販の微生物製剤を用いることもでき、例えば、HDMシステム(株式会社HAKKOコーポレーション)、ハーベスト(ハーベスト九州)、ヨフルトα(ヨフルトフィード)、スーパーラクトA−90(ラクトー酵素有限会社)、ビオグリーン(豊栄物産株式会社)等を挙げることができる。なお、鶏の飼育条件等によっては、上記微生物を添加することなく資材のみによって鶏糞の処理が可能な場合もある。例えば、鶏の飼料中に上記微生物が添加されている場合には、糞中に含まれる当該微生物の作用によって分解処理がなされ得る。
【0029】
このような微生物を、本発明の資材に添加、混合して資材に担持させる。資材に対する微生物の添加量は特に限定されないが、通常乾燥物換算で通常0.01〜1質量%、好ましくは0.07〜0.12質量%、さらに好ましくは0.08〜0.1質量%である。資材を微生物に添加するにあたっては、資材を鶏舎の床面に敷き詰めてから、微生物をその上に散布、混合してもよく、予め資材に微生物を添加、混合してから、床面に敷き詰めてもよい。資材は、通常15〜50cm程度、好ましくは20〜40cmの厚さで床面に敷き詰めればよい。なお、本発明の資材は、従来公知のノコクズ、バーク、かんなくずなどの資材と混合して使用することもできる。その場合、本発明の資材を全体の30%以上用いることが好ましく、100%用いることがより好ましい。
【0030】
ケージに収容された鶏が排泄した糞は、資材上に落下し堆積していくが、微生物による糞の減少効果を促進するために、資材と糞が均一になるよう定期的に撹拌することが望ましい。撹拌の頻度は、鶏舎の規模や、資材、微生物の使用量等によっても相違するが、通常1週間に2回以上行うことが好ましい。
【0031】
本発明の資材を利用した鶏糞処理方法では、このようにただ定期的に撹拌するだけで、悪臭の発生と汚泥化を顕著に抑制することができる。このため、資材を入れ替えたり、再利用のための処理をする必要がなく、微生物の分解による減少分を追加するだけでよい。その減少もわずかであるため、通常2年程度の採卵鶏の飼育期間、1年ごとに当初の1/10程度資材追加するだけですむ。このようにして、糞や汚染された資材の廃棄量をほぼ0とするゼロエミッションを実現することが可能となる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
実 施 例 1
資材の製造(1):
杉間伐材を、チッパーを用い、厚さ約3mm程度のチップとした。この原料チップ2,000kgを、図1で示した装置の蒸煮缶(直径2m、長さ4.5m)の中の収納網篭に入れ、4気圧、150℃で180分間、1時間当たり1,690kgの水蒸気を用いて蒸煮した。次にこの蒸煮チップ1,000kgをリファイナーにより、3,300V、132kWの力で60分間かけて擂り潰し、繊維状の資材を得た。外観は茶褐色であり、握るとフンワリとした繊維状を呈し、かすかに芳香性を有するものであった。また、下記条件により製品5点についてフルフラールを分析したところ、フルフラールの含量は最大2μg/g(ppm)、最小は検出限界(1μg/g)以下であり、試料中3点が検出限界以下であった。
【0034】
(フルフラール分析条件)
試薬及び装置:
フルフラール(2-furaldehyde):和光純薬工業(株)製
その他の試薬はすべて和光純薬工業(株)製残留農薬試験用を用いた。
バキュームコントローラー:EYELA社製 NVC−1100型
ガスクロマトグラフ:ヒューレットパッカード社製HP5890 SERIES II
データ処理装置:同上 HP3396A
【0035】
ガスクロマトグラフ操作条件:
検出器:水素炎イオン化検出器(DID)
分離カラム:J&W Scientific社製 DB−210
(0.25mm I.D.×30m、膜厚 0.25μm)
キャリアガス:ヘリウム
メイクアップガス:ヘリウム
水素ガス:1.2kg/cm2
乾燥空気:3.2kg/cm2
カラムオーブン温度:60℃(1分)〜昇温5℃/分〜160℃(1分)〜昇温30℃/分〜250℃(5分)
注入口温度:250℃
検出器温度:260℃
注入量:2μL
試料導入方法:スプリットレス
【0036】
実 施 例 2
4万羽の鶏を収容した床面35m×85mの高床式の採卵鶏舎において、実施例1で得られた資材を厚さ30cmで床面に敷き詰めた。その上にビオグリーン(枯草菌と放線菌と糸状菌からなる微生物製剤;豊栄物産株式会社製)を1m当たり100g散布して、資材と混合した。1週間に2回、資材と糞を撹拌する作業を行った。平成21年11月〜平成22年3月の床面のアンモニア濃度を測定した。その結果を表1に示す。なお、従来の鶏舎(資材及び微生物製剤未使用)を対照として、同様にしてアンモニア濃度を測定した。また、深さ10、20、30cmにおける資材の内部温度を測定した。その結果を併せて表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示されるように、微生物を添加した本発明の資材を敷き詰めた鶏舎では、アンモニア濃度が4〜14ppmと非常に低い範囲で抑制されていた。これに対し、資材を使用しない対照の鶏舎では、アンモニア濃度は約200〜300ppmの範囲であり、強い悪臭が感じられた。また、本発明の資材を使用した鶏舎では、糞と資材が汚泥化しないため、約4カ月の測定期間の間、これらを全く廃棄する必要がなかった。さらに、分解による減少もほとんどなく、資材を追加する必要もなかった。一方、対照の鶏舎では、汚泥化し、悪臭は絶えず、常時ハエ等が発生している状態であった。また、資材の内部は高温に保たれ、資材に担持された微生物の分解機能が活発に行われていることが示唆された。
【0039】
実 施 例 3
実施例2と同じ農場内にある4万羽の鶏を収容した床面35×85mの高床式の採卵鶏舎において、実施例1で得られた資材を厚さ30cmで床面に敷き詰めた。その上に繊維分解菌(HDMシステム;株式会社HAKKOコーポレーション)を1m当たり100g散布し、資材と混合した。76日後の資材の深さ20cmでの内部温度は38℃であり微生物による分解が活発に行われていることが示唆された。またその間、蠅の発生は見られず、悪臭も無かった。
【0040】
実 施 例 4
肉用鶏を飼育している農場の堆肥舎において、肉用鶏畜糞消滅試験を実施した。実施例1で得られた資材1,500kgと、その容積に相当する鶏糞を1:1で混合させたものに繊維分解菌(HDMシステム;株式会社HAKKOコーポレーション)を1m当たり100g更に混合し、全体の容積の減少程度を目視で確認した。平成23年6月29日〜7月29日の30日間実施し、概ね1週間おきに容積の減少の目視確認を行い、深さ20cm程度の内部温度も測定した。
【0041】
容積の変化は7日経過で約1割減、22日経過で約2割減、温度は7日経過で70℃、15日経過で64℃、22日経過で58℃であった。
【0042】
実 施 例 5
60頭の豚を収容する6m×12mの豚房において、実施例1で得られた資材及びノコクズを用い、これらの使用割合及び敷詰め方法を変えた3種類の試験区(図4、(a)〜
(c))を設けた。すなわち、各試験区にはそれぞれ資材を合計5,400kg用いるが、試験区1((a))は、資材として実施例1の資材のみを用い、試験区2((b))お
よび3((c))では、全体の30質量%(以下、単に「%」で示す)の1,600
kgのみを実施例1の資材とし、残りの70%はノコクズを用いた。また、各試験区にはこのような資材を深さ約60cmで敷詰め、糞尿場所が浅くなるように傾斜を設けるが、試験区2では、上層の実施例1の資材が糞尿場所に直接接触するように敷詰めるのに対し、試験区3では、下層のノコクズが糞尿に接触するように積層させた。なお、豚には、スーパーラクトA−90(納豆菌を主として含む微生物資材:ラクトー酵素有限会社)を添加した飼料を与えた。約3カ月間深さ40cmにおける資材内部の温度及び外気温を測定した。その結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
この結果から明らかなように、実施例1の資材を100%使用した試験区1は、30%のみ使用した試験区2および3と比較して、資材の内部温度が高温に保たれ、微生物の分解が活発に行われていることが示された。また、実施例1の資材を糞尿に接触させるように敷詰めた試験区2の方が、ノコクズを接触させるようにした試験区3よりも資材内部温度が高温となった。さらに、本実施例では、資材に微生物を担持させなくても、本発明の資材のみを敷詰めれば、糞中の微生物の作用によって糞の分解処理が促進され得ることが示唆された。
【0045】
実 施 例 6
資材の製造(2):
杉間伐材を、チッパーを用い、厚さ約3mm程度のチップとした。この原料チップ3,000kgを、図1で示した装置の蒸煮缶(直径2.1m、長さ7.8m)の中の収納網篭に入れ、6気圧、160℃で60分間、1時間当たり1,690kgの水蒸気を用いて蒸煮した。次にこの蒸煮チップ1,000kgをリファイナーにより、3,300V、132kWの力で60分間かけて擂り潰し、繊維状の資材を得た。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の資材は、悪臭を軽減し、また汚泥化を抑制して廃棄物の量を著しく低減できるものであり、鶏舎用の資材として極めて有用なものである。
【符号の説明】
【0047】
1……蒸煮缶
2……台車レール
3……ホイストコンベア
4……ホイストクレーン
5……収納網篭
6……レシプロサイロ
7……スクリューコンベア
8……搬送コンベア
9……リファイナー入口
10……リファイナー
11……スロートスクリュー
12……回転刃物・固定刃物部
13……リファイナー出口
14……風送ファン
15……風送管
16……サイクロン
17……集積室
18……蒸気入口
19……圧力計
20……温度計
21……豚房
22……実施例1の資材
23……ノコクズ
24……糞尿場所
25……自動給餌機
26……給与場

以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杉より得られるチップ原料を圧力3〜6気圧、温度120〜160℃で60〜120分間蒸煮し、次いで得られた蒸煮物を擂り潰し、繊維状とすることにより得られる発酵床用資材。
【請求項2】
フルフラールの含量が2ppm以下である請求項1記載の発酵床用資材。
【請求項3】
枯草菌類、放線菌類および糸状菌類よりなる群から選ばれる微生物を添加した請求項1または2記載の発酵床用資材を床面に敷き詰め、資材上に排泄された鶏糞と発酵床用資材とを定期的に撹拌することを特徴とする鶏糞処理方法。
【請求項4】
発酵床用資材を床面上に厚さ20〜40cmで敷き詰めるものである請求項3記載の鶏糞処理方法。
【請求項5】
杉より得られるチップ原料を圧力3〜6気圧、温度120〜160℃で60〜120分間蒸煮し、次いで得られた蒸煮物を擂り潰し、繊維状とすることを特徴とする発酵床用資材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−115263(P2012−115263A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247072(P2011−247072)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(391039520)宮崎みどり製薬株式会社 (2)
【Fターム(参考)】