説明

黄変の少ないアクリルアミド誘導体

【課題】他の樹脂と混合して樹脂組成物とし、基材の表面に塗布し硬化させてコーティング膜を形成させた場合に、該コーティング膜が経時的に黄変しない、アクリロイルモルホリンを得る。
【解決手段】アクリロイルモルホリンに、フェノール系酸化防止剤を0.5〜5.0重量%と3級アミンを0.05〜5重量%含有させる。フェノール系酸化防止剤は、2,5’−ジ−t−ブチルハイドロキノンまたは2,5’−ジ−t−アミルハイドロキノンが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造後に長期保存した場合においても熱による着色や変色が少なく、各種コーティング材料として有用なアクリロイルモルホリンと、そのアクリロイルモルホリンを配合されたコーティング剤としての樹脂組成物に関する。また、アクリロイルモルホリンを成分とするコーティング材料において、基材表面で塗膜を形成した後、高温に晒されても着色や変色を起こりにくくする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、透明板ガラスの代替として、樹脂成型品が軽量で機械特性や加工性に優れていることから広く用いられるようになってきた。特に、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂などから製造された樹脂成型品は透明性にも優れていることから、ガラスに変わる構造部材として建物や車両等の窓用、計器カバー等、種々の用途に使用されている。
【0003】
しかし、これらの樹脂成型品はガラスに比べて、耐傷性、耐候性、耐熱性、耐薬品性等の表面特性が劣ることから、表面特性を改良することが切望されており、その手段として表面コーティング処理が一般的に用いられている。
【0004】
表面コーティング処理として、例えばアクリル系樹脂フィルムなどを樹脂成型品の表面にラミネートする方法や、シリコン系、メラミン系の樹脂組成物からなるコーティング剤を樹脂成型品表面に塗布し、加熱縮合させて架橋被膜を形成させる方法、アクリルアミド誘導体等のラジカル重合性単量体からなる紫外線硬化型樹脂組成物を樹脂成型品の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射させコーティング膜を形成させる方法などがある。
【0005】
これらの表面コーティング処理のうち、その生産性の高さよりラジカル重合性単量体からなる紫外線硬化型樹脂組成物を塗布して活性エネルギー線を照射させてコーティング膜を形成させる方法が多く用いられるようになってきた(特開2010−65232号公報)。該樹脂組成物中のラジカル重合性単量体として、低粘度、高硬化性、基材との密着性、透明性などの利点からアクリルアミド誘導体の中でもアクリロイルモルホリンが好適に用いられる。特に、他のモノマー、オリゴマー、ポリマーをよく溶解して優れた透明性を発揮することから、アクリロイルモルホリンは、車のヘッドライト、計器カバー、照明器具のカバー、テレビ画面、携帯電話の画面など透明性が不可欠な部品の表面コーティング剤の成分に非常に適している。
しかしながら、アクリロイルモルホリンを含有する樹脂組成物を基材に塗布して硬化させ、形成した塗膜は、熱履歴により黄変しやすいという問題があった。特に基材が車のライトや計器カバー、またはテレビ、照明器具、電熱器具等の電気製品の場合、高温または長時間の熱に晒されることが多く、経時的に着色して外観を損なうことがあった。そのため、樹脂組成物中にアクリロイルモルホリンを多量に配合できないという問題点を抱えていた。
【0006】
一般的に、黄変を防止するための方法として樹脂組成物に予め、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等を添加することが一般的である(特開2010−170125号公報)。上記酸化防止剤等を添加すると、樹脂成形品であるコーティング膜の酸化劣化等による物性の低下及び黄変は防止できる。しかしながら、アクリロイルモルホリンを用いたコーティング膜の熱履歴による黄変に限っては、一般的に用いられる酸化防止剤等では効果が見られなかった。
【0007】
特開2002−338611号公報には、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤よりなる硬化性組成物を硬化させた硬化物は透明性や低着色性に優れることが開示されている。しかしながら、この硬化性組成物に用いられている重合性モノマーは(メタ)アクリル酸エステルモノマーであり、アクリロイルモルホリンに対して同文献に記載されているフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を用いた場合、基材に対する塗れ性(塗膜形成性)を悪化させたり、黄変を更に悪化させたりする等の問題があった。
【0008】
特開2006−193650号公報には、アクリル酸エステルモノマー、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤を組み合わせて用いた硬化性組成物から製した硬化物が耐熱老化性試験において硬度の保持、非着色性に優れることが開示されている。しかし、アクリロイルモルホリンに対して同文献に記載されているフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤を組み合わせて用いた場合、イオウ系酸化防止剤自身の着色により十分な黄変抑制効果が得られなかった。
【0009】
特開2009−096955号公報には、エチレン性不飽和モノマーとしてアクリロイルモルホリンと、紫外線吸収剤とを含む光学フィルムが加熱加工時に着色が少ないこと、フェノール系、ヒンダードアミン系、またはリン系の酸化防止剤の添加が望ましいことが開示されている。しかしながら、十分な効果が得られる量の紫外線吸収剤を添加した場合、硬化不良を招き、また、同文献に具体的に記載されたフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤の添加では所望の経時黄変抑制効果が得られず、改善の余地を残していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−65232号公報
【特許文献2】特開2010−170125号公報
【特許文献3】特開2002−338611号公報
【特許文献4】特開2006―193650号公報
【特許文献5】特開2009−096955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
アクリロイルモルホリンを用いたコーティング膜の、熱履歴による黄変を防止する方法を得ること。
また、コーティング剤の樹脂組成成分として使用し、硬化後のコーティング膜が熱により経時的に黄変しない、アクリロイルモルホリンを得ること。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、アクリロイルモルホリンは、一般式[I]で示されるフェノール系酸化防止剤を添加する事でアクリロイルモルホリン、およびそれを用いた樹脂組成物において経時的な黄変が抑えられることを見出した。また、さらに3級アミンを添加することで、より効果的に黄変が抑えられることを見出した。
【0013】
すなわち本発明は、
(1)一般式[I] (式中、R1は、炭素数1〜5の直鎖または分枝鎖のアルキル基を示す。)で示されるフェノール系酸化防止剤と3級アミンとを含有することを特徴とするアクリロイルモルホリン、
【化1】


(2)前記フェノール系酸化防止剤が2,5’−ジ−t−ブチルハイドロキノンまたは2,5’−ジ−t−アミルハイドロキノンであることを特徴とする、上記(1)記載のアクリロイルモルホリン、
(3)前記フェノール系酸化防止剤の含有量が0.1〜10重量%であることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載のアクリロイルモルホリン、
(4)アクリロイルモルホリンと、前記一般式[I]
(式中、R1は、炭素数1〜5の直鎖または分枝鎖のアルキル基を示す。)で示されるフェノール系酸化防止剤と、3級アミンとを含有することを特徴とする樹脂組成物、
(5)上記(4)に記載の樹脂組成物を樹脂成型品の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射することによりコーティング膜を形成させた樹脂成型品、
(6)アクリロイルモルホリンを配合した樹脂組成物を基材の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射することによりコーティング膜を形成させる方法において、該樹脂組成物に前記一般式[I]
(式中、R1は、炭素数1〜5の直鎖または分枝鎖のアルキル基を示す。)で示されるフェノール系酸化防止剤と3級アミンとを含有させることを特徴とする、該コーティング膜の黄変を抑制する方法
に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアクリロイルモルホリンは、耐熱性、低粘度、高硬化性、透明性といった点でコーティング剤の原料として優れたモノマーであるだけでなく、それを用いたコーティング膜が、高温や長期間の熱に対しても黄変しにくいものである。
また、本発明の方法により、通常の方法で得られるアクリロイルモルホリンから簡単な方法で、黄変しにくいコーティング膜が得られるものである。それにより、熱履歴の大きい物品のコーティング剤にもアクリロイルモルホリンを用いることができるようになる。
また、黄変しにくいことにより、アクリロイルモルホリンを樹脂組成物中にも多量に配合することが可能となり、基材に対する耐候性、耐熱性、耐傷性(塗膜硬度)、耐薬品性等々を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアクリロイルモルホリンには、一般式[I](式中、R1は、炭素数1〜5の直鎖または分枝鎖のアルキル基を示す。)で示されるフェノール系酸化防止剤が含有される。そのうち、一般式[I]の式中、Rがメチル基又はエチル基で表される化合物である2,5’−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5’−ジ−t−アミルハイドロキノンが望ましく、具体的には川口化学工業製「アンテージDBH」、「アンテージDAH」が挙げられる。
【0016】
【化2】

【0017】
フェノール系酸化防止剤の添加量は概ね、アクリロイルモルホリン中0.1〜10重量%とすることが望ましく、さらに望ましくは0.5〜5重量%である。また、かかるアクリロイルモルホリンを配合した樹脂組成物から見た場合では、添加量が0.15〜1.5重量%であることが望ましい。添加量がこれより少ないと黄変抑制について効果は期待できず、これより多すぎるとかかる樹脂配合物の活性エネルギー線照射による硬化を阻害し、更にはコスト的にも不利になる。
【0018】
本発明のアクリロイルモルホリンには、前記フェノール系酸化防止剤と併せて、3級アミンが含有され、これによりさらに効果的に黄変が抑制される。
3級アミンの種類については特に限定されず、例えば、N-メチルアニリン、N-(2-ヒドロキシエチル)アニリン、N,N-ジメチルアニリン、4-t-ブチルジメチルアニリン、N-メチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、エチレンジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロパンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、4-ジメチルアミノフェニルエタノール、3-ジメチルアミノ安息香酸等が例示される。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、前記フェノール系酸化防止剤との相乗効果の点からN,N-ジメチル-p-トルイジンを用いることが好ましい。
【0019】
3級アミンの添加量は、アクリロイルモルホリン中0.01〜10重量%とすることが望ましく、さらに望ましくは0.05〜5重量%である。また、かかるアクリロイルモルホリンを配合した樹脂組成物から見た場合では、添加量が0.015〜1.5重量%であることが望ましい。
【0020】
本発明のアクリロイルモルホリンは、他の重合性モノマーと混合して、樹脂組成物とする。
なお、前記フェノール系酸化防止剤、3級アミンは、該樹脂組成物に含有されていればよく、アクリロイルモルホリンに添加しても、他のモノマーの方に添加してから混合しても、また該樹脂組成物となった後で添加してもよい。
該樹脂組成物は、基材に塗布した後、活性エネルギー線を照射すると、架橋してコーティング膜を形成する。
活性エネルギー線照射により硬化する際には、樹脂組成物を基材上に好ましくは膜厚1〜50μm、さらに好ましくは、3〜20μmになるように塗布し、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を用いて、波長340nm〜380nmの紫外線を200〜1000mJ/cmとなるように照射する。照射する雰囲気は、空気でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガス中でもよい。
【0021】
本発明のアクリロイルモルホリンを用いたコーティング膜は、基材たる各種樹脂成型品の表面特性の改質に使用できるが、この樹脂成型品としては、従来から耐候性の改善の要望のある各種熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。具体的には、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂などが挙げられる。特に、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂は、透明性に優れることから本発明のアクリロイルモルホリンを用いたコーティング膜を用いるのが特に有効である。また、樹脂成型品とは、これらの樹脂からなるシート状成型品、フィルム状成型品、各種射出成型品などである。
【0022】
以上の如く、本発明のアクリロイルモルホリンとその組成物、および本発明のアクリロイルモルホリンを用いたコーティング膜においては長期に渡って黄変を抑制することができる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例及び比較例を掲げ本発明について詳しく説明する。本発明の特許請求の範囲や実施例に記載の諸物性は、以下の測定方法に従って求めた。
【0024】
<黄色度>
活性エネルギー線により形成されたコーティング膜は、加速試験として120℃で10日間加熱する耐熱試験に供され、耐熱試験前後のコーティング膜の透過スペクトルを透過色測定専用機(TZ−6000、日本電色工業(株)製)を用いて数点測定した。そして、その測定値から計算される黄変度としてL*a*b*よりb*値の差(Δb*値)を求めた。
【0025】
実施例1:
フェノール系酸化防止剤として2,5’−ジ−t−アミルハイドロキノン(川口化学工業株式会社「アンテージDAH」)を0.5重量%、3級アミンとしてN,N-ジメチル-p-トルイジンを0.3重量%添加したアクリロイルモルホリン(株式会社 興人)90重量部と、イソボルニルアクリレート(ダイセル・サイテック株式会社)10重量部、および紫外線硬化開始剤(BASF社製 商品名「ダロキュア1173」)2重量部よりなる混合液を膜厚5μmになるようにPETフィルム(100mm四方)上に塗布後、高圧水銀ランプにて積算光量 1000mJ/cmを照射してコーティング膜を得た。
【0026】
実施例2:
実施例1において、フェノール系酸化防止剤として2,5’−ジ−t−アミルハイドロキノンに代えて、2,5’−ジ−t−ブチルハイドロキノン「アンテージDBH」を添加した以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜を得た。
【0027】
実施例3:
実施例1において、3級アミンとしてN,N-ジメチル-p-トルイジンに代えて、N,N-ジメチルアニリンを添加した以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜を得た。
【0028】
実施例4:
実施例1において、3級アミンとしてN,N-ジメチル-p-トルイジンに代えて、N-メチル-N,N-ジエタノールアミンを添加した以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜を得た。
【0029】
実施例5:
実施例1において、3級アミンとしてN,N-ジメチル-p-トルイジンに代えて、トリエタノールアミンを添加した以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜を得た。
【0030】
実施例6:
実施例1において、3級アミンとしてN,N-ジメチル-p-トルイジンに代えて、テトラメチルエチレンジアミンを添加した以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜を得た。
【0031】
実施例7:
実施例1において、3級アミンとしてN,N-ジメチル-p-トルイジンに代えて、テトラメチルプロパンジアミンを添加した以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜を得た。
【0032】
比較例1:
何も添加していないアクリロイルモルホリン(株式会社 興人)90重量部と、イソボルニルアクリレート(ダイセル・サイテック株式会社)10重量部、および紫外線硬化開始剤(BASF社製 商品名「ダロキュア1173」)2重量部よりなる混合液を膜厚5μmlになるようにPETフィルム(100mm四方)上に塗布後、高圧水銀ランプにて積算光量 1000mJ/cmを照射してコーティング膜を得た。
【0033】
比較例2:
フェノール系酸化防止剤として2,5’−ジ−t−アミルハイドロキノン(川口化学工業株式会社「アンテージDAH」)を0.5重量%添加したアクリロイルモルホリン(株式会社 興人)90重量部と、イソボルニルアクリレート(ダイセル・サイテック株式会社)10重量部、および紫外線硬化開始剤(BASF社製 商品名「ダロキュア1173」)2重量部よりなる混合液を膜厚5μmになるようにPETフィルム(100mm四方)上に塗布後、高圧水銀ランプにて積算光量 1000mJ/cmを照射してコーティング膜を得た。
【0034】
比較例3:
実施例1において、2,5’−ジ−t−アミルハイドロキノンに代えて、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名「Irganox1076」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)を添加した以外は実施例1と同様にしてPETフィルム上に塗布したが、基材に対する濡れ性が悪化したためコーティング膜を得ることが出来なかった。
【0035】
比較例4:
実施例1において、2,5’−ジ−t−アミルハイドロキノンに代えて、イミダゾール系酸化防止剤メルカプトベンズイミダゾール(商品名 「アンテージMB」、川口化学薬品製)を添加した以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜を得た。
【0036】
比較例5:
実施例1において、2,5’−ジ−t−アミルハイドロキノンに代えて、リン系酸化防止剤 ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(商品名 「PEP−36」、ADEKA製)を添加した以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜を得た。
【0037】
比較例6:
実施例1において、2,5’−ジ−t−アミルハイドロキノンに代えて、リン系酸化防止剤 トリス(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名「Irgafos168」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)を添加した以外は実施例1と同様にしてPETフィルム上に塗布したが、基材に対する濡れ性が悪化したためコーティング膜を得ることが出来なかった。
【0038】
実施例1〜7及び比較例1〜6で得られたコーティング膜を、熱風乾燥機中に120℃(RH75%)の条件下で10日保管後、Δb*値を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示すように、フェノール系酸化防止剤として2,5’−ジ−t−ブチルハイドロキノンまたは2,5’−ジ−t−アミルハイドロキノンを0.5重量%、3級アミンを0.3重量%含有させたアクリロイルモルホリンを用いることで黄変度Δb*値は1以内に抑えることが出来る。因みに、Δb*値が1以内とは目視で黄変を判断することが出来ない程度を指す。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明してきたように、本発明のアクリロイルモルホリンは、それを用いたコーティング膜が高温や長期間の加熱条件下にあっても長期にわたって黄変しにくいものである。したがって、樹脂成型品の表面コーティング剤の樹脂成分として好適に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[I] (式中、R1は、炭素数1〜5の直鎖または分枝鎖のアルキル基を示す。)で示されるフェノール系酸化防止剤と3級アミンとを含有することを特徴とするアクリロイルモルホリン。
【化1】

【請求項2】
前記フェノール系酸化防止剤が2,5’−ジ−t−ブチルハイドロキノンまたは2,5’−ジ−t−アミルハイドロキノンであることを特徴とする、請求項1に記載のアクリロイルモルホリン。
【請求項3】
前記フェノール系酸化防止剤の含有量が0.1〜10重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアクリロイルモルホリン。
【請求項4】
アクリロイルモルホリンと、前記一般式[I]
(式中、R1は、炭素数1〜5の直鎖または分枝鎖のアルキル基を示す。)で示されるフェノール系酸化防止剤と、3級アミンとを含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂組成物を樹脂成型品の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射することによりコーティング膜を形成させた樹脂成型品。
【請求項6】
アクリロイルモルホリンを配合した樹脂組成物を基材の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射することによりコーティング膜を形成させる方法において、該樹脂組成物に前記一般式[I]
(式中、R1は、炭素数1〜5の直鎖または分枝鎖のアルキル基を示す。)で示されるフェノール系酸化防止剤と3級アミンとを含有させることを特徴とする、該コーティング膜の黄変を抑制する方法。


【公開番号】特開2013−57020(P2013−57020A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196601(P2011−196601)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000142252)興人ホールディングス株式会社 (182)
【Fターム(参考)】