説明

鼻腔挿入デバイス用固定具、および、鼻腔挿入デバイス用固定具を備える鼻腔挿入デバイスセット

【課題】睡眠障害の患者の睡眠中に鼻腔挿入チューブの位置がずれたり鼻腔挿入チューブが脱離したりすることを防止する鼻腔挿入デバイス用固定具を提供する。
【解決手段】本発明に係る鼻腔挿入デバイス用固定具100は、鼻孔NHの内面に当接することによって鼻腔に挿入されるデバイス200を固定する。この鼻孔挿入デバイス用固定具100は、外周面が鼻孔NHの内面に当接するチューブ状の当接部を有することが好ましい。そして、チューブ状の鼻孔挿入デバイス用固定具100の内部は、鼻腔挿入チューブ200を収容可能であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻腔挿入デバイス用固定具およびその鼻腔挿入デバイス用固定具を備える鼻腔挿入デバイスセットに関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞型睡眠時無呼吸症候群の患者は、睡眠時に上気道の咽頭部が筋肉の弛緩と肥満等との合併症で閉塞され、一時的な窒息(無呼吸、低呼吸)状態を断続的に繰り返す。このため、閉塞型睡眠時無呼吸症候群の患者は、高血圧症を患ったり脳血管及び心血管に障害を患ったりする。また、閉塞型睡眠時無呼吸症候群の患者は、十分な睡眠がとれず、日中に眠気を催したり、日中に集中力や活力を欠いたりするようになる。また、閉塞型睡眠時無呼吸症候群の患者が自動車の運転をする場合には、その患者は居眠り運転で事故や重大事故等を起こしやすくなる。
【0003】
また、いびきは、閉塞型睡眠時無呼吸症候群と同様に、睡眠時に上気道が狭窄又は閉塞されることにより、咽頭部等の気道粘膜が振動することによって発生する。いびきは、同居人の眠りの妨害だけでなく、当人の熟睡の妨げとなり、日中に眠気を催したり、日中に集中力や活力を欠いたりするようになる。
【0004】
以下、上記した「閉塞型睡眠時無呼吸症候群」及び「いびき症」を総称して、「睡眠障害」とする。
【0005】
そこで、近年、閉塞型睡眠時無呼吸症候群を治療したり解消したりするための様々な提案がなされている。例えば、「閉塞型睡眠時無呼吸症候群解消チューブを鼻孔経由で咽頭部に挿入する方法(例えば、特開2009−072581号公報)」や、「先端部に水膨潤樹脂が塗布された閉塞型睡眠時無呼吸症候群解消チューブを鼻孔経由で咽頭部に挿入した後、咽頭部周辺の水分を利用して水膨潤樹脂を膨潤させて咽頭部を押し広げる方法(例えば、特開2009−072581号公報等参照)」、「先端部に拡張部分が設けられた閉塞型睡眠時無呼吸症候群解消チューブを鼻孔経由で咽頭部に挿入した後、ユーザの操作により拡張部分を拡張させて咽頭部を押し広げる方法(例えば、特開2006−204630号公報、特開2009−034384号公報、特開2009−072581号公報、特開2009−072582号公報等参照)」等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−204630号公報
【特許文献2】特開2009−034384号公報
【特許文献3】特開2009−072581号公報
【特許文献4】特開2009−072582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のような方法において、睡眠障害の患者の睡眠中に鼻腔挿入チューブの位置がずれたり鼻腔挿入チューブが脱離したりして、睡眠障害の患者の治療が十分に行われなくなることが懸念されている。
【0008】
本発明の課題は、睡眠障害の患者の睡眠中に鼻腔挿入チューブの位置がずれたり鼻腔挿入チューブが脱離したりすることを防止する鼻腔挿入デバイス用固定具及びその鼻腔挿入デバイス用固定具を備えた鼻腔挿入デバイスセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1局面に係る鼻腔挿入デバイス用固定具は、鼻腔に挿入されるデバイスを、鼻孔の内側から当該鼻孔を拡張する力によって固定する。
【0010】
上記構成によれば、鼻孔の内側から当該鼻孔を拡張する力によってデバイスを固定することができるので、睡眠障害の患者の睡眠中にデバイスの位置がずれたりデバイスが脱離したりすることを防止することができる。
また、鼻腔挿入デバイス用固定具が鼻孔の内側に配置されるので、鼻腔挿入デバイス用固定具を目立ちにくくすることができる。
また、鼻腔挿入デバイス用固定具の取付位置が鼻になるので、使用者が自ら鼻腔挿入デバイス用固定具を取り付けることができる。
【0011】
本発明の第2局面に係る鼻腔挿入デバイス用固定具は、第1局面に係る鼻腔挿入デバイス用固定具であって、少なくとも鼻翼の内面に当接する。
【0012】
上記構成によれば、鼻翼に当接する力によって、デバイスを固定することができる。
【0013】
本発明の第3局面に係る鼻腔挿入デバイス用固定具は、第1局面または第2局面に係る鼻腔挿入デバイス用固定具であって、外周面が鼻孔の内面に当接するチューブ状の当接部を備えている。
【0014】
上記構成によれば、チューブ状の当接部の外周面が鼻孔の内面に当接するので、デバイスをしっかりと固定することができる。したがって、睡眠障害の患者の睡眠中にデバイスの位置がずれたりデバイスが脱離したりすることを防止することができる。
また、当接部が空気の通過可能なチューブ状であるので、鼻腔挿入デバイス用固定具により患者の呼吸が妨げられるのを抑制することができる。
【0015】
本発明の第4局面に係る鼻腔挿入デバイス用固定具は、第3局面に係る鼻腔挿入デバイス用固定具であって、チューブ状の当接部の内部は、デバイスを収容可能である。
【0016】
上記構成によれば、チューブ状の当接部の内部にデバイスを収容することができるので、デバイスを挿入する鼻孔と、鼻腔挿入デバイス用固定具を挿入する鼻孔と、を共通にすることができる。これにより、咽頭部の閉塞が発生しない正常な鼻腔を開放しておくことができるので、鼻腔挿入デバイス用固定具により患者の呼吸が妨げられるのを防止することができる。
【0017】
本発明の第5局面に係る鼻腔挿入デバイス用固定具は、第1局面または第2局面に係る鼻腔挿入デバイス用固定具であって、一方の鼻翼の内面に当接する第1当接部と、他方の鼻翼の内面に当接する第2当接部と、第1当接部を当該一方の鼻翼の内面に所定の接触力で接触させ且つ第2当接部を当該他方の鼻翼の内面に所定の接触力で接触させるように第1当接部と第2当接部とを連結する連結部と、を備えている。
【0018】
上記構成によれば、鼻腔挿入デバイス用固定具が両方の鼻孔で固定されるので、鼻腔挿入デバイス用固定具およびその鼻腔挿入デバイス用固定具に設けられるデバイスをしっかりと固定することができる。
【0019】
本発明の第6局面に係る鼻腔挿入デバイス用固定具は、第5局面に係る鼻腔挿入デバイス用固定具であって、第1当接部、第2当接部および連結部は、1枚の板バネにより形成される。
【0020】
上記構成によれば、1枚の板バネにより第1当接部、第2当接部および連結部を有する鼻腔挿入デバイス用固定具を形成することができる。すなわち、鼻腔挿入デバイス用固定具を簡単な構成にすることができる。これにより、鼻腔挿入デバイス用固定具の再利用時において、鼻腔挿入デバイス用固定具の清掃が簡単になり、鼻腔挿入デバイス用固定具を衛生的に使用することができる。
【0021】
本発明の第7局面に係る鼻腔挿入デバイス用固定具は、第1局面または第2局面に係る鼻腔挿入デバイス用固定具であって、外周面が鼻孔の内面に当接する膨張部を備え、膨張部は、空気が通過可能である。
【0022】
上記構成によれば、膨張部が鼻孔の内壁に当接するので、デバイスをしっかりと固定することができる。この際、膨張部が空気を通過可能であるので、膨張部を鼻孔に挿入したとしても、鼻腔挿入デバイス用固定具により患者の呼吸の妨げとなるのを抑制することができる。
【0023】
本発明の第8局面に係る鼻腔挿入デバイス用固定具は、第7局面に係る膨張部は、網状部材である。
【0024】
上記構成によれば、膨張部を網状部材にすることによって、簡単な構成で空気を通過可能とすることができる。
【0025】
本発明の第9局面に係る鼻腔挿入デバイスセットは、上記したいずれかの鼻腔挿入デバイス用固定具と、鼻腔に挿入されるデバイスと、を備える。
【0026】
上記構成によれば、鼻孔の内面への当接力によってデバイスを固定することができるので、睡眠障害の患者の睡眠中にデバイスの位置がずれたりデバイスが脱離したりすることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセットの全体構成を示した平面図である。
【図2】図1に示した鼻腔挿入デバイスセットを鼻孔に挿入した状態を示した模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセットを鼻孔に挿入した状態を示した模式図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセットの平面図である。
【図5】参考例に係る鼻腔挿入デバイスセットを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
−第1実施形態−
<鼻腔挿入デバイスセット>
本発明の第1実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセット1は、図1に示すように、鼻腔挿入チューブ200と、この鼻腔挿入チューブ200を鼻に固定するための鼻腔挿入デバイス用固定具(以下、適宜、「固定具」と略記する)100と、を備えている。
【0029】
<鼻腔挿入チューブ>
鼻腔挿入チューブ200は、シリコーン樹脂製もしくは熱可塑性エラストマー(スチレン系、塩ビ系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系など)のチューブ体であって、鼻孔から咽頭部まで延在するように形成されている。この鼻腔挿入チューブ200は、円管形状の本体部210と、本体部210の先端部(咽頭部側)に設けられる拡張部220とを有している。本体部210は、鼻腔挿入チューブ200が鼻腔に装着されたときに空気の流路を形成する機能を果たしている。また、拡張部220は、咽頭部を拡張させるために設けられており、睡眠障害を患っている患者の狭窄または閉塞する咽頭部を拡張させる。そして、本実施形態では、鼻腔挿入チューブ200の基端部(鼻孔側)には、固定具100が設けられている。
【0030】
<固定具>
本実施形態に係る固定具100は、図2に示すように、鼻孔NHの内面に当接することによって、当該固定具100に接続される鼻腔挿入チューブ200を固定する。この固定具100は、シリコーン樹脂製のチューブ体であって、撓み変形可能な部材である。固定具100は、その外周面が鼻孔NHの内面に当接するように、外径が鼻孔NHの内径より大きくなっている。前述した鼻孔NHの内径の大きさは、各患者によって異なるため、固定具の外径は適時患者に合わせたものを選択することが好ましい。この固定具100を鼻孔NHに挿入する際には、固定具100を圧縮して縮径させた状態で、鼻孔NHに挿入する。そうすると、鼻孔NHに挿入された固定具100は、元の形状に復元して、その外周面が所定の当接力で鼻孔NHの内面(鼻翼の内面を含む)に当接する。すなわち、本実施形態では、鼻孔NHの内側から当該鼻孔NHを拡張する力によって鼻孔挿入チューブ200を固定している。これにより、固定具100が鼻孔NH内に固定される。
【0031】
チューブ状の固定具100の内部には、鼻腔挿入チューブ200が配置されている。つまり、本実施形態では、固定具100と鼻腔挿入チューブ200とで、2重筒構造となっている。固定具100と鼻腔挿入チューブ200との間には、複数の保持部300が設けられており、これらの保持部300により、固定具100と鼻腔挿入チューブ200とが所定の間隔を隔てて配置される。このように、固定具100と鼻腔挿入チューブ200とを所定の間隔を隔てて配置することによって、空気の流路を確保することができる。その結果、固定具100および鼻腔挿入チューブ200が、患者の呼吸の妨げになるのを抑制することができる。保持部300は、固定具100を外側に付勢する弾性体であって、バネやゴム等から構成されている。
【0032】
<鼻腔挿入デバイスセットの使用方法>
先ず、鼻腔挿入チューブ200の拡張部220を咽頭部まで挿入していく。そして、固定具100を鼻孔NHに挿入する。この際、固定具100を縮径させた状態で、鼻孔NHに挿入する。固定具100の鼻孔NHへの挿入が完了すると、固定具100が元の形状に復元して、固定具100の外周面が鼻孔NHの内面に当接する。これにより、固定具100による鼻孔NHを拡張する力により、鼻腔挿入チューブ200が鼻孔に固定される。
【0033】
固定具100を取り外す場合、単純に固定具100を手で掴んで固定具100を引き下げればよい。
【0034】
<鼻腔挿入デバイスセットおよび固定具の特徴>
(1)
第1実施形態に係る固定具100は、鼻孔NHの内側から当該鼻孔NHを拡張する力によって鼻腔挿入チューブ200を固定することができるので、睡眠障害の患者の睡眠中に鼻腔挿入チューブ200の位置がずれたり鼻腔挿入チューブ200が脱離したりすることを防止することができる。特に、本実施形態では、チューブ状の固定具100の外周面が、鼻孔NHの内周面に面接触するので、鼻腔挿入チューブ200をしっかりと固定することができる。
【0035】
(2)
また、第1実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセット1では、固定具100が鼻孔NHの内側に配置されるので、固定具100を目立ちにくくすることができる。
【0036】
(3)
また、第1実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセット1では、固定具100の取付位置が鼻になるので、使用者が自ら固定具100を取り付けることができる。
【0037】
(4)
また、第1実施形態に係る固定具100は、空気の通過可能なチューブ状であるので、固定具100により患者の呼吸が妨げられるのを抑制することができる。
【0038】
(5)
また、第1実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセット1では、チューブ状の固定具100の内部に鼻腔挿入チューブ200を収容することができるので、鼻腔挿入チューブ200を挿入する鼻孔NHと、固定具100を挿入する鼻孔NHと、を共通にすることができる。これにより、咽頭部の閉塞が発生しない正常な鼻腔を開放しておくことができるので、固定具100により患者の呼吸が妨げられるのを防止することができる。
【0039】
(6)
また、第1実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセット1では、鼻腔挿入チューブ200がチューブ状の固定具100の内部に収容されるので、鼻腔挿入チューブ200が目立つのを防止することができる。これにより、患者は、鼻腔挿入チューブ200および鼻腔挿入デバイスセット1を抵抗なく利用することができる。
【0040】
−第2実施形態−
<鼻腔挿入デバイスセット>
本発明の第2実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセット1aは、図3に示すように、鼻腔挿入チューブ200と、この鼻腔挿入チューブ200を固定するための固定具100aと、を備えている。鼻腔挿入チューブ200は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0041】
<固定具>
第2実施形態に係る固定具100aは、図3に示すように、両方の鼻孔NH1および鼻孔NH2の内面に当接することによって、当該固定具100aに接続される鼻腔挿入チューブ200を固定する。この固定具100aは、板バネであって、鼻腔挿入チューブ200が挿入される鼻孔NH1の内面に当接する第1湾曲部110aと、前記鼻孔NH1とは異なる鼻孔NH2の内面に当接する第2湾曲部120aと、第1湾曲部110aと第2湾曲部120aとを連結する連結部130aと、を有している。この連結部130aは、第1湾曲部110aを、鼻孔NH1を形成する鼻翼の内面に所定の接触力で接触させ、且つ、第2湾曲部120aを、鼻孔NH2を形成する鼻翼の内面に所定の接触力で接触させる。つまり、固定具100aは、両鼻翼の内面の間で押し当てられて支えられる状態となる。なお、板バネからなる固定具100aは、樹脂製であっても、金属製であっても良い。
【0042】
第1湾曲部110aは、鼻孔NH1の内面に接するように湾曲すると共に、第2湾曲部120aは、鼻孔NH2の内面に接するように湾曲する。このように、第1湾曲部110aおよび第2湾曲部120aを湾曲させることによって、鼻孔NH1およびNH2の内面が傷つくのを防止することができる。なお、連結部130aは、第1湾曲部110aおよび第2湾曲部120aを近接または離間させるように長さ調整可能であっても良い。連結部130aを長さ調節可能に構成すれば、患者の鼻のサイズに関わらず、固定具100aを固定することができる。
【0043】
本実施形態では、固定具100aと鼻腔挿入チューブ200との接合は、溶着であっても良いし、接着であっても良い。
【0044】
本実施形態では、第1湾曲部110aおよび第2湾曲部120aの各々は、鼻孔NH1およびNH2内において、鼻柱NPから離れた内面を押圧する。すなわち、固定具100aは、両鼻翼に押し当てられて支えられる。この際、板バネである固定具100aの弾性力により、所定の当接力で固定具100aが固定される。
【0045】
<鼻腔挿入デバイスセットの使用方法>
先ず、鼻腔挿入チューブ200の拡張部220を咽頭部まで挿入していく。そして、固定具100aの第1湾曲部110aを鼻孔NH1に挿入すると共に、第2湾曲部120aを鼻孔NH2に挿入する。これにより、第1湾曲部110aが鼻孔NH1の内面(鼻孔NH1を形成する鼻翼の内面)を所定の当接力で押圧すると共に、第2湾曲部120aが鼻孔NH2の内面(鼻孔NH2を形成する鼻翼の内面)を所定の当接力で押圧する。その結果、固定具100aが両鼻翼に押し当てられて支えられる状態となり、固定具100aに設けられる鼻腔挿入チューブ200が固定される。
【0046】
固定具100aを取り外す場合、単純に固定具100aを手で掴んで固定具100aを引き下げればよい。
【0047】
<鼻腔挿入デバイスセットおよび固定具の特徴>
(1)
第2実施形態に係る固定具100aは、鼻孔NHの内側から当該鼻孔NHを拡張する力によって鼻腔挿入チューブ200を固定することができるので、睡眠障害の患者の睡眠中に鼻腔挿入チューブ200の位置がずれたり鼻腔挿入チューブ200が脱離したりすることを防止することができる。特に、第2実施形態に係る固定具100aは、固定具100aが両方の鼻孔NH1およびNH2で固定されるので、固定具100aおよびその固定具100aに設けられる鼻腔挿入チューブ200をしっかりと固定することができる。
【0048】
(2)
また、第2実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセット1aでは、固定具100aの湾曲部110aおよび120aの各々が、鼻孔NH1およびNH2の内側に配置されるので、固定具100aを目立ちにくくすることができる。
【0049】
(3)
また、第2実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセット1aでは、固定具100aの取付位置が鼻になるので、使用者が自ら固定具100aを取り付けることができる。
【0050】
(4)
また、第2実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセット1aでは、1枚の板バネにより第1湾曲部110a、第2湾曲部120aおよび連結部130aを有する固定具100aを形成することができる。すなわち、固定具100aを簡単な構成にすることができる。これにより、固定具100aの再利用時において、固定具100aの清掃が簡単になり、固定具100aを衛生的に使用することができる。
【0051】
−第3実施形態−
<鼻腔挿入デバイスセット>
本発明の第3実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセット1bは、図4に示すように、鼻腔挿入チューブ200と、この鼻腔挿入チューブ200を固定するための固定具100bと、を備えている。鼻腔挿入チューブ200は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0052】
<固定具>
第3実施形態に係る固定具100bは、図4に示すように、鼻孔NH(図2参照、以下同様)の内面に当接することによって、当該固定具100bに接続される鼻腔挿入チューブ200を固定する。この固定具100bは、鼻腔挿入チューブ200の先端が膨出した形状であって、外形が略球体形状の網状部材である。この略球体形状の固定具100bの外径は、鼻孔の内径より大きくなっている。前述した鼻孔NHの内径の大きさは、各患者によって異なるため、固定具の外径は適時患者に合わせたものを選択することが好ましい。そして、本実施形態では、固定具100bは、拡縮可能となっており、固定具100bを鼻孔NHに挿入する際には、固定具100bを縮径させた状態で、鼻孔NHに挿入する。そうすると、鼻孔NHに挿入された固定具100bは、元の形状に復元して、その外周面が所定の当接力で鼻孔NHの内面(鼻翼の内面を含む)に当接する。すなわち、本実施形態では、鼻孔NHの内側から当該鼻孔NHを拡張する力によって鼻孔挿入チューブ200を固定している。これにより、固定具100bが鼻孔NH内に固定される。
【0053】
<鼻腔挿入デバイスセットの使用方法>
先ず、鼻腔挿入チューブ200の拡張部220を咽頭部まで挿入していく。そして、固定具100bを鼻孔NHに挿入する。この際、固定具100bを縮径させた状態で、鼻孔NHに挿入する。固定具100bの鼻孔NHへの挿入が完了すると、固定具100bが元の形状に復元して、固定具100bの外周面が鼻孔NHの内面に当接する。これにより、固定具100bによる鼻孔NHを拡張する力により、鼻腔挿入チューブ200が固定される。
【0054】
固定具100bを取り外す場合、単純に固定具100bを手で掴んで固定具100bを引き下げればよい。
【0055】
<鼻腔挿入デバイスセットおよび固定具の特徴>
(1)
第3実施形態に係る固定具100bは、鼻孔NHの内側から当該鼻孔NHを拡張する力によって鼻腔挿入チューブ200を固定することができるので、睡眠障害の患者の睡眠中に鼻腔挿入チューブ200の位置がずれたり鼻腔挿入チューブ200が脱離したりすることを防止することができる。特に、本実施形態では、固定具100bの網目部分が、鼻腔の内周面に多点で接触するので、固定具100bおよびその固定具100bに設けられる鼻腔挿入チューブ200をしっかりと固定することができる。
【0056】
(2)
また、第3実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセット1bでは、固定具100bが鼻孔NHの内側に配置されるので、固定具100bを目立ちにくくすることができる。
【0057】
(3)
また、第3実施形態に係る鼻腔挿入デバイスセット1bでは、固定具100bの取付位置が鼻になるので、使用者が自ら固定具100bを取り付けることができる。
【0058】
(4)
また、第3実施形態に係る固定具100bは、空気を通過可能な網状部材であるから、固定具100bを鼻孔NHに挿入したとしても、固定具100bにより患者の呼吸の妨げとなるのを抑制することができる。
【0059】
−参考例−
本願発明者らは、本発明の参考例として、図5に示すような鼻腔挿入デバイスセット1fを提案する。この鼻腔挿入デバイスセット1fは、鼻腔挿入チューブ200と、当該鼻腔挿入チューブ200の基端部に設けられる接着シート100fと、を備えている。この鼻腔挿入チューブ200は、上記した第1実施形態に係る鼻腔挿入チューブ200と同様であるので、その説明を省略する。そして、この参考例では、接着シート100fは、鼻に接着される。これにより、接着シート100fに設けられる鼻腔挿入チューブ200が、鼻に固定される。
【0060】
<変形例>
以上、本発明の実施形態および実施例について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0061】
上記した第1〜第3実施形態では、固定具の色について言及しなかったが、固定具が装着時に目立たなくなるように、固定具の色が透明色であっても良いし、固定具の色が肌色であっても良いし、固定具の色がピンク色であっても良いし、固定具の色が黒色であっても良い。
【0062】
また、第1実施形態の固定具100および鼻腔挿入チューブ200の材料として、シリコーン樹脂を例示したが、本発明はこれに限らず、シリコーン樹脂の他に以下の材料として適用可能である。具体的には、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン),ブタジエン−スチレンゴム,ポリエステル共重合体,エチレン−プロピレンゴム(エチレン−プロピレン−ターポリマーラバー),EVA樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体),高密度ポリエチレン,高密度ポリプロピレン,耐衝撃性ポリスチレン,低密度ポリエチレン,メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体,クロロプレンゴム,ニトリルブタジエンゴム,ポリアミド樹脂,PETG樹脂,ポリアセタール樹脂,ポリブチレンテレフタレート樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリエーテルサルホン樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリエチレンテレフタレート樹脂,ポリイミド樹脂,イソブチレン−イソプレン共重合体,ポリプロピレン樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリスルホン樹脂,ポリテトラフルオロエチレン樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリビニルアセテート樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂,スチレン−ブタジエン樹脂,スチレン−ブタジエンゴム,アクリル変性シリコーン樹脂,一液性RTV(Room Temperature
Vulcanizable:常温加硫)ゴム、が挙げられる。
【符号の説明】
【0063】
1,1a,1b 鼻腔挿入デバイスセット
100 固定具(チューブ状の当接部)
100a 固定具
110a 第1湾曲部(第1当接部)
120a 第2湾曲部(第2当接部)
130a 連結部
100b 固定具(膨張部)
200 鼻腔挿入チューブ
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る固定具及び鼻腔挿入デバイスセットは、睡眠障害の患者の睡眠中に鼻腔挿入チューブの位置がずれたり鼻腔挿入チューブが脱離したりすることを防止することができるという特徴を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻腔に挿入されるデバイスを、鼻孔の内側から当該鼻孔を拡張する力によって固定することを特徴とする、鼻腔挿入デバイス用固定具。
【請求項2】
少なくとも鼻翼の内面に当接することを特徴とする、請求項1に記載の鼻腔挿入デバイス用固定具。
【請求項3】
外周面が鼻孔の内面に当接するチューブ状の当接部を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鼻腔挿入デバイス用固定具。
【請求項4】
前記チューブ状の当接部の内部は、前記デバイスを収容可能であることを特徴とする、請求項3に記載の鼻腔挿入デバイス用固定具。
【請求項5】
一方の鼻翼の内面に当接する第1当接部と、
他方の鼻翼の内面に当接する第2当接部と、
前記第1当接部を当該一方の鼻翼の内面に所定の接触力で接触させ且つ前記第2当接部を当該他方の鼻翼の内面に所定の接触力で接触させるように前記第1当接部と前記第2当接部とを連結する連結部と、を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鼻腔挿入デバイス用固定具。
【請求項6】
前記第1当接部、前記第2当接部および前記連結部は、1枚の板バネにより形成されることを特徴とする、請求項5に記載の鼻腔挿入デバイス用固定具。
【請求項7】
外周面が鼻孔の内面に当接する膨張部を備え、
前記膨張部は、空気が通過可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鼻腔挿入デバイス用固定具。
【請求項8】
前記膨張部は、網状部材であることを特徴とする、請求項7に記載の鼻腔挿入デバイス用固定具。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の鼻腔挿入デバイス用固定具と、
鼻腔に挿入されるデバイスと、を備えることを特徴とする、鼻腔挿入デバイスセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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