説明

2’位にアルキル型保護基を有するリボ核酸の製造法

【課題】リボ核酸の3’位と5’位の水酸基が保護されていない状態、あるいは5’位水酸基のみが保護されている状態で、2’位水酸基に選択的にかつ効率良く短工程で2−シアノエトキシメチル(CEM)基などのアルキル型保護基を導入する方法を提供する。
【解決手段】リボ核酸をアリールボロン酸存在下で調製した式[I]で表されるリボ核酸のボロン酸エステル体を、ルイス塩基および銀化合物の存在下、式[III]で表されるアルキル化剤と反応させ、式[II]で表される2’位水酸基にアルキル型保護基が導入されたリボ核酸を製造する。



(式中、BASEは保護基を有していてもよい核酸塩基を示し、Rは水素原子または水酸基の保護基を示し、Rはアルキル基を示し、Xは脱離基示し、Arはアリール基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リボース部分の2’および3’位の水酸基が保護されていないリボ核酸において、2’位水酸基にアルキル基を優先的に導入することが可能な方法により2’位水酸基にアルキル型保護基が導入されたリボ核酸の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、オリゴリボ核酸(オリゴRNA)は、アンチセンスRNA、siRNA、アプタマーなどの医薬品素材となる機能性分子として注目され、世界中で医薬品としての開発が進められている。
【0003】
しかしながら、これらRNA分子を医薬品として開発する上での重要な課題の1つに、オリゴRNAの製造コストが挙げられ、大きな問題となっている。
【0004】
オリゴRNAの製造方法としては、ホスホロアミダイト法という固相合成法が広く知られている。かかるホスホロアミダイト法は、リボ核酸のリボース部分の3’位の水酸基がホスホロアミダイト化されたリボ核酸(いわゆるホスホロアミダイト化合物)を用いて、複数の核酸モノマーを縮合しオリゴマー化していく方法である。
【0005】
ホスホロアミダイト法を用いたRNA合成において、2’位水酸基の保護基の構造は、縮合効率や合成されるRNAの純度に大きく影響を与えることが知られており、近年、種々のアルキル型保護基が開発されている(非特許文献1〜9)。
【0006】
これらを保護基としたホスホロアミダイト化合物は、従来、保護基として用いられているt−ブチルジメチルシリル基を有する化合物と比較して、その縮合反応において、高い反応性を示し、オリゴRNA合成のモノマー原料として有用であることが明らかとなっている。特に、2−シアノエトキシメチル(CEM)基を保護基として用いたホスホロアミダイト法によるRNA合成において、高い縮合効率で高純度な長鎖RNAを合成できることが明らかとなり(非特許文献3,10)、RNA医薬品の製造における有用な合成原料として期待されている。
【0007】
一般に、CEM基に代表されるアルキル型保護基のリボ核酸の2’位水酸基への導入法としては、3’位と5’位の水酸基がケイ素置換基で保護された状態で選択的にアルキル化を行うか(方法A)、もしくは5’位の水酸基が保護されたリボ核酸を用い、これを2’位および3’位の水酸基がアルキルスタレンニル基で保護された2’,3’−O−ジアルキルスタニレン誘導体へ変換し、当該誘導体に対し、非選択的にアルキル化を行った後、目的外の異性体を分離する方法(方法B)が用いられている(非特許文献1−9,特許文献1)。
【0008】
しかしながら、上記のようなリボ核酸の2’位水酸基への保護基の導入法において、方法Aの場合には3’位および5’位の水酸基に保護基を導入するために高価な試薬を用い、さらに反応工程が長くなること、また方法Bの場合には人体に有害な有機スズ試薬を用いることや5’位水酸基を4,4’−ジメトキシトリチルのような脂溶性の高い保護基を用いて保護する必要があるため、異性体を分離するためにシリカゲルカラムクロマトグラフィーのような煩雑な分離精製手段を必要とすることなどの理由から、工業的な製法としては満足のいく方法ではなかった。このため、RNA医薬品原料としての核酸モノマーの工業的製造法としては、より効率的な2’位水酸基への保護基導入法の開発が切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公報WO2006/022323 A1パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Tetrahedron Lett.,Vol.35,6827(1994)
【非特許文献2】Helv.Chim.Acta.vol.84,3773(2001)
【非特許文献3】Org. Lett,Vol.7,3477(2005)
【非特許文献4】J.Am.Chem.Soc.,Vol.128,12356(2006)
【非特許文献5】Org.Lett.,Vol.8,3869(2006)
【非特許文献6】Org.Biomol.Chem.,Vol.5,333(2007)
【非特許文献7】Org.Lett.,Vol.9,671(2007)
【非特許文献8】Tetrahedron Lett.,Vol.45,9529(2004)
【非特許文献9】Chem.Eur.J.,Vol.14,9135(2008)
【非特許文献10】Nucleic Acids Res.,Vol.35,3287(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、3’位と5’位の水酸基が保護されていない状態、あるいは5’位のみが保護されている状態のリボ核酸を用い、2’位水酸基に選択的かつ効率良く、しかも短工程で2−シアノエトキシメチル(CEM)基などのアルキル型保護基を導入し、結晶化などの簡単な精製手段で目的のリボ核酸を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、実用的なリボ核酸の2’位水酸基への保護基導入法を確立すべく鋭意検討を重ねた結果、常法により調製できる式[I]で表されるリボ核酸のボロン酸エステル体を、ルイス塩基および銀化合物の存在下、式[III]で表されるアルキル化剤と反応させるという簡便な方法で、式[II]で表される2’位にアルキル型保護基が導入されたリボ核酸を選択的かつ効率的に取得できることを見出し、本発明を完成させた。したがって、本発明は以下の通りである。
【0013】
(1)式[I]で表されるリボ核酸のボロン酸エステル体を、ルイス塩基および銀化合物の存在下、式[III]で表されるアルキル化剤と反応させ、式[II]で表される化合物を調製することを特徴とする2’位にアルキル型保護基を有するリボ核酸の製造法。

(式中、BASEは保護基を有していてもよい核酸塩基を示し、Rは水素原子または水酸基の保護基を示し、Rはアルキル基を示し、Xは脱離基を示し、Arはアリール基を示す。)
【0014】
(2)Rで表されるアルキル基が、メチル、エチル、アリル、2−シアノエチル、2−トリメチルシリルエチル、ベンジル、メトキシメチル、エトキシメチル、2−シアノエトキシメチル、ベンジルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、アセチルオキシメチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、またはトリイソプロピルシリルオキシメチルから選択されたアルキル基である、上記(1)記載の製造法。
【0015】
(3)ルイス塩基が、3価リン試薬、ヨードアニオン、または3級アミン類である、請求項1記載の製造法。
(4)銀化合物が、酸化銀、炭酸銀、酢酸銀、または硝酸銀である、上記(1)記載の製造法。
(5)結晶化により式[II]で表される化合物を単離する、上記(1)記載の製造法。
すなわち、上記式[I]で表されるリボ核酸のボロン酸エステル体を式[III]で表されるアルキル化剤と反応させ、調製した式[II]で表される化合物を含む反応物を結晶化して式[II]で表される化合物を単離することを特徴とする(1)記載の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明方法は、3’位および5’位の水酸基に保護基が導入されていないリボ核酸もしくは3’位水酸基に保護基が導入されていないリボ核酸であっても、リボースの2’位水酸基に、短工程で選択的にかつ効率よくアルキル型保護基を導入することができ、さらに得られた化合物は結晶化などを利用して容易に精製することができることから、オリゴRNAの化学合成原料である2’−O−アルキルリボ核酸の効率的な製法として有用である。
【0017】
特に、短工程で効率良く調製することが困難であった2’−O−(2−シアノエトキシメチル)リボヌクレオシドを、工業的スケールで簡便に製造することが初めて可能となり、siRNAなどのRNA医薬品をより安価に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明方法は、上述したように、式[I]で表されるリボ核酸のボロン酸エステル体を、ルイス塩基および銀化合物の存在下、式[III]で表されるアルキル化剤と反応させ、式[II]で表される2’位にアルキル型保護基が導入されたリボ核酸を製造しようとするものである。
【0019】
原料として利用する式[I]で表されるリボ核酸のボロン酸エステル体は、常法により調製可能である(J.Chem.Soc.,2325(1961),J.Org.Chem.,vol.70,8400(2005))。具体的には、原料リボ核酸である式[IV]で表される化合物と式[V]で表されるボロン酸試薬を共沸脱水することで、式[I]で表されるリボ核酸のボロン酸エステル体を容易に取得することができる。

【0020】
式[IV]で示される化合物におけるBASEは、核酸塩基を意味し、当該核酸塩基としては保護基を有していてもかまわない。具体的には、ウラシル、N−アセチルアデニン、N−ベンゾイルアデニン、N−アセチルシトシン、N−ベンゾイルシトシン、N−フェノキシアセチルグアニン、N−イソブチリルグアニンなどを例示することができる。
【0021】
また、式[IV]で示される化合物におけるRは、水素原子または水酸基の保護基を意味する。当該水酸基の保護基としては、アセチル、ベンゾイルなどのアシル基、トリチル、4−メトキシトリチル、4,4’−ジメトキシトリチル、ベンジルなどのアルキル基、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリルなどのシリル基を例示することができる。
【0022】
式[V]で示されるボロン酸試薬におけるArは、アリール基を意味し、具体的には、フェニル基もしくはアルキルやハロゲンなどの置換基を有するフェニル基などが例示され、置換基の位置や数は特に限定されない。
【0023】
式[I]で示されるリボ核酸のボロン酸エステル体の調製法は、式[IV]で示される化合物1モルに対し、1モル以上の式[V]で示されるボロン酸試薬を用い、ピリジン、トルエン、1,4−ジオキサン、アセトニトリルなどの単独またはそれらの混合溶媒中で、1〜5回程度共沸脱水することで実施することができる。また、必要に応じて加熱還流などの加熱処理を行ってもかまわない。
【0024】
このようにして得られた、式[I]で示されるリボ核酸のボロン酸エステル体は、溶媒を留去した後、そのまま本発明方法の原料として使用してもよく、必要に応じて、結晶化による精製を行った後に使用してもかまわない。
【0025】
本発明方法で使用するアルキル化剤は式[III]で表される化合物であり、Rのアルキル基としては、メチル、エチル、アリル、2−シアノエチル、2−トリメチルシリルエチル、ベンジル、メトキシメチル、エトキシメチル、2−シアノエトキシメチル、ベンジルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、アセチルオキシメチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、トリイソプロピルシリルオキシメチルなどのアルキル基を例示することができ、導入するアルキル基に応じて適宜選択すればよい。
【0026】
また、アルキル化剤におけるXの脱離基としては、クロロ、ブロモ、ヨードなどのハロゲン原子、アセテートなどのカルボキシレート基、メタンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基などを例示することができ、特にXがハロゲン原子、好ましくはクロロであるアルキル化剤が選択性と収率の点で好適である。
【0027】
銀化合物としては、酸化銀、炭酸銀、酢酸銀、硝酸銀などが例示でき、特に酸化銀(I)が好適である。銀化合物の使用量は、式[I]で示される化合物1モルに対して1〜10モルが適当である。
【0028】
ルイス塩基としては、ルイス塩基性を有するものであればよく、具体的にはトリアルキルホスファイトやトリアルキルホスフィンなどの3価リン試薬、テトラブチルアンモニウムヨージドやテトラエチルアンモニウムヨージドといったカウンターイオンとして4級アンモニウムなどを含むヨードアニオン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの3級アミン類を用いることができ、その使用量は式[I]で示される化合物1モルに対して0.1〜10モルが適当である。
【0029】
このような試薬を用いる2’位水酸基へのアルキル化反応は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどの単独または混合溶媒中、銀化合物およびルイス塩基の存在下、式[III]で示されるアルキル化剤を式[I]で示される化合物1モルに対して0.5〜10モル程度使用し、反応温度−78℃〜120℃で1〜24時間程度反応させることにより実施することができる。
【0030】
また、必要に応じて、式[I]で示されるリボ核酸のボロン酸エステル体を、ビストリメチルシリルアセタミドなどのシリル化剤で処理することで5’位水酸基および塩基部をシリル化して、有機溶媒に対する溶解性を向上させた後、上記のアルキル化反応を実施することで、収率よく目的化合物を取得することが可能である。
【0031】
このようにして合成された目的の式[II]で示される化合物は、必要により通常のヌクレオシド誘導体の精製手段(有機溶媒−水による分配、各種クロマトグラフィー処理、結晶化)により単離精製することができるが、特に結晶化などの簡単な手段で単離できるのが特長である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明がこれに限定されないことは明らかである。
【0033】
<実施例1>
5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−O−(2−シアノエトキシメチル)ウリジン(式[II]:BASE=ウラシル,R=5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル),R=2−シアノエトキシメチル)の合成
【0034】
実施例1では、式[IV]で示されるリボ核酸として5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン(式[IV]:BASE=ウラシル,R=5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル),R=H)を原料とし、式[II]で示される化合物として5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−O−(2−シアノエトキシメチル)ウリジンを合成した。具体的には、まず、5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン109mg(0.2mmol)とボロン酸試薬であるフェニルボロン酸(式[V]:Ar=Ph)26mg(0.2mmol)を酢酸エチルに溶解し、減圧下で濃縮した後、残渣をトルエンで3回共沸脱水し、式[I]で示される化合物として5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジン(式[I]:BASE=ウラシル,R=5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル),Ar=Ph)を得た。これをトルエン(2ml)に溶解し、氷冷下で、銀化合物としての酸化銀(I)232mg(1.0mmol)、アルキル化剤としての2−シアノエトキシメチルクロリド(式[III]:R=2−シアノエトキシメチル,X=Cl)48mg(0.4mmol)およびトリエチルアミン56μl(0.4mmol)のトルエン溶液(1ml)を加え、60℃で100分間攪拌した。反応液にメタノールおよび水を加え、減圧下で濃縮した。残渣をHPLCで分析し、目的物の合成収率を算出した(52%)。
【0035】
H−NMR(DMSO−d6):δ11.40(1H,brs),7.74(1H,d,J=8.1Hz),7.39−7.24(9H,m),6.91(4H,d,J=8.8Hz),5.83(1H,d,J=3.5Hz),5.39(1H,d,J=6.3Hz),5.29(1H,d,J=8.1Hz),4.83(1H,d,J=7.4Hz),4.82(1H,d,J=7.4Hz),4.28−4.22(2H,m),4.00−3.97(1H,m),3.74−3.66(8H,m),3.34−3.22(2H,m),2.82−2.73(2H,m)
【0036】
<参考例1>
2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジン(式[I]:BASE=ウラシル,R=H,Ar=Ph)の合成
【0037】
式[IV]で示されるリボ核酸としてウリジン(式[IV]:BASE=ウラシル,R=H)733mg(3.0mmol)を用い、これとフェニルボロン酸(式[V]:Ar=Ph)385mg(3.0mmol)をピリジンに溶解し、ピリジンで3回、1,4−ジオキサンで3回共沸脱水した。さらに1,4−ジオキサン(15ml)に溶解し、100℃で1時間攪拌した後、減圧下で濃縮した。残渣にアセトニトリル(4ml)を加え、室温で5分間攪拌した。析出した結晶をろ過し、乾燥して式[I]で表される化合物である2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジンを目的物として866mg(87%)、得た。
【0038】
H−NMR(DMSO−d6):δ11.46(1H,brs),7.80(1H,d,J=8.1Hz),7.74(2H,dd,J=1.2&8.0Hz),7.57−7.53(1H,m),7.43(2H,t,J=7.7Hz),5.96(1H,d,J=3.0Hz),5.69(1H,dd,J=2.2&8.0Hz)5.28(1H,dd,J=3.0&7.5Hz),5.11(1H,t,J=5.6Hz),5.04(1H,dd,J=4.4&7.5Hz),4.13(1H,q,J=4.7Hz),3.72−3.63(2H,m)
【0039】
<実施例2>
2’−O−(2−シアノエトキシメチル)ウリジン(式[II]:B=ウラシル,R=H,R=2−シアノエトキシメチル)の合成
【0040】
実施例2では、参考例1で合成した2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジン(式[I]:BASE=ウラシル,R=H,Ar=Ph)を用い、目的物として式[II]で示される化合物である2’−O−(2−シアノエトキシメチル)ウリジンを合成した。具体的には、2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジン33mg(0.1mmol)をトルエン(1.0ml)に懸濁し、ビストリメチルシリルアセタミド27μl(0.11mmol)を加え、100℃で30分間攪拌した。得られた溶液に、氷冷下で酸化銀(I)116mg(0.5mmol)、2−シアノエトキシメチルクロリド(式[III]:R=2−シアノエトキシメチル,X=Cl)24mg(0.2mmol)およびトリエチルアミン28μl(0.2mmol)のトルエン(0.5ml)溶液を加え、60℃で5時間攪拌した。反応液にメタノールおよび80%酢酸水を加え、減圧下で濃縮した。残渣をHPLCで分析し、目的物の合成収率(2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジンに対する収率)を算出した(73%)。
【0041】
H−NMR(DMSO−d6):δ11.36(1H,brs),7.94(1H,d,J=8.1Hz),5.88(1H,d,J=4.8Hz),5.65(1H,d,J=8.1Hz),5.27(1H,d,J=5.6Hz),5.17(1H,t,J=4.9Hz),4.62(1H,d,J=7.1Hz),4.77(1H,d,J=7.1Hz),4.17−4.11(2H,m),3.88(1H,dd,J=3.0&7.5Hz),3.72−3.55(4H,m),2.78(1H,ddd,J=5.4,6.6&17.1Hz),2.72(1H,ddd,J=5.4,7.0&17.1Hz)
【0042】
<実施例3>
2’−O−(2−シアノエトキシメチル)ウリジン(式[II]:BASE=ウラシル,R=H,R=2−シアノエトキシメチル)の合成
【0043】
2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジン(式[I]:BASE=ウラシル,R=H,Ar=Ph)330mg(1.0mmol)をトルエン(10ml)に懸濁し、ビストリメチルシリルアセタミド270μl(1.1mmol)を加え、100℃で30分間攪拌した。得られた溶液に、氷冷下で酸化銀(I)1.16g(5.0mmol)、2−シアノエトキシメチルクロリド(式[III]:R=2−シアノエトキシメチル,X=Cl)240mg(2.0mmol)およびトリエチルアミン280μl(2.0mmol)のトルエン(5ml)溶液を加え、60℃で5時間攪拌した。反応液にメタノールおよび80%酢酸水を加え、減圧下で濃縮した。残渣を逆相ODSカラムクロマトグラフィーに付して試薬残渣を除去した後、エタノールより結晶化することにより3’−異性体を分離し、目的物を得た。
【0044】
<参考例2>
2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−アセチルシチジン(式[I]:BASE=N−アセチルシトシン,R=H,Ar=Ph)の合成
【0045】
式[IV]で示されるリボ核酸としてN−アセチルシチジン(式[IV]:BASE=N−アセチルシトシン,R=H)856mg(3.0mmol)を用い、これとフェニルボロン酸(式[V]:Ar=Ph)385mg(3.0mmol)をピリジンに溶解し、ピリジンで3回、1,4−ジオキサンで3回共沸脱水した。さらに1,4−ジオキサン(15ml)に溶解し、100℃で1時間攪拌した後、減圧下で濃縮した。残渣にアセトニトリル(6ml)を加え、4℃で30分間攪拌した。析出した結晶をろ過し、乾燥して式[I]で表される化合物である2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−アセチルシチジンを目的物として1.0g(モノアセトニトリル含有結晶,81%)、得た。
【0046】
H−NMR(DMSO−d6):δ10.98(1H,brs),8.23(1H,d,J=7.5Hz),7.75(2H,dd,J=1.2&8.0Hz),7.57−7.54(1H,m),7.44(2H,t,J=7.6Hz),7.23(1H,d,J=7.5Hz),5.96(1H,d,J=2.3Hz),5.32(1H,dd,J=2.3&7.3Hz),5.12−5.08(2H,m),4.25(1H,q,J=4.6Hz),3.74(1H,dt,J=4.9&11.7Hz),3.69−3.57(1H,m),2.12(3H,s)
【0047】
<実施例4>
2’−O−(2−シアノエトキシメチル)−N−アセチルシチジン(式[II]:BASE=N−アセチルシトシン,R=H,R=2−シアノエトキシメチル)の合成
【0048】
実施例4では、参考例2で合成した2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−アセチルシチジン(式[I]:BASE=N−アセチルシチジン,R=H,Ar=Ph)を用い、目的物として式[II]で示される化合物である2’−O−(2−シアノエトキシメチル)−N−アセチルシチジンを合成した。具体的には、2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−アセチルシチジン41mg(0.1mmol)をアセトニトリル(1.0ml)に懸濁し、氷冷下で酸化銀(I)23mg(0.1mmol)、テトラエチルアンモニウムヨージド13mg(0.05mmol)、および2−シアノエトキシメチルクロリド(式[III]:R=2−シアノエトキシメチル,X=Cl)13mg(0.11mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応液にメタノールおよび80%酢酸水を加え、減圧下で濃縮した。残渣をHPLCで分析し、目的物の合成収率(2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−アセチルシチジンに対する収率)を算出した(62%)。
【0049】
また、もう少し大量に目的化合物を合成するため、2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−アセチルシチジン(式[I]:BASE=N−アセチルシトシン,R=H,Ar=Ph)412mg(1.0mmol)をアセトニトリル(14.0ml)に懸濁し、氷冷下で酸化銀(I)232mg(1.0mmol)、テトラエチルアンモニウムヨージド129mg(0.5mmol)、および2−シアノエトキシメチルクロリド(式[III]:R=2−シアノエトキシメチル,X=Cl)132mg(1.1mmol)を加え、4℃で3.5時間攪拌した。反応液にメタノールおよび80%酢酸水を加え、減圧下で濃縮した。残渣を逆相ODSカラムクロマトグラフィーに付して試薬残渣を除去した後、メタノールより結晶化することにより目的外の3’−異性体を分離し、目的物を得た。
【0050】
H−NMR(DMSO−d6):δ10.88(1H,brs),8.46(1H,d,J=7.5Hz),7.20(1H,d,J=7.5Hz),5.84(1H,d,J=1.9Hz),5.24−5.19(2H,m),4.94(1H,d,J=6.8Hz),4.83(1H,d,J=6.8Hz),4.12−4.08(2H,m),3.94−3.91(1H,m),3.81−3.60(4H,m),2.80−2.75(2H,m),2.10(3H,s)
【0051】
<参考例3>
2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−アセチルアデノシン(式[I]:BASE=N−アセチルアデニン,R=H,Ar=Ph)の合成
【0052】
式[IV]で示されるリボ核酸としてN−アセチルアデノシン(式[IV]:BASE=N−アセチルアデニン,R=H)600mg(1.9mmol)を用い、これとフェニルボロン酸(式[V]:Ar=Ph)244mg(1.9mmol)をピリジンに溶解し、ピリジンで3回、1,4−ジオキサンで3回共沸脱水した。さらに1,4−ジオキサン(10ml)に溶解し、100℃で1時間攪拌した後、減圧下で濃縮した。残渣にアセトニトリル(3ml)を加え、室温で30分間攪拌した。析出した結晶をろ過し、乾燥して式[I]で表される化合物である2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−アセチルアデノシンを目的物として673mg(90%)、得た。
【0053】
H−NMR(DMSO−d6):δ10.98(1H,brs),8.23(1H,d,J=7.5Hz),7.75(2H,dd,J=1.2&8.0Hz),7.57−7.54(1H,m),7.44(2H,t,J=7.6Hz),7.23(1H,d,J=7.5Hz),5.96(1H,d,J=2.3Hz),5.32(1H,dd,J=2.3&7.3Hz),5.12−5.08(2H,m),4.25(1H,q,J=4.6Hz),3.74(1H,dt,J=4.9&11.7Hz),3.69−3.57(1H,m),2.12(3H,s)
【0054】
<実施例5>
2’−O−(2−シアノエトキシメチル)−N−アセチルアデノシン(式[II]:B=N−アセチルアデニン,R=H,R=2−シアノエトキシメチル)の合成
【0055】
実施例5では、参考例3で合成した2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−アセチルアデノシン(式[I]:BASE=N−アセチルアデニン,R=H,Ar=Ph)を用い、目的物として式[II]で示される化合物である2’−O−(2−シアノエトキシメチル)−N−アセチルアデノシンを合成した。具体的には、2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−アセチルアデノシン40mg(0.1mmol)を1,2−ジクロロエタン(1.5ml)に溶解し、室温で酸化銀(I)23mg(0.1mmol)、テトラエチルアンモニウムヨージド13mg(0.05mmol)、および2−シアノエトキシメチルクロリド(式[III]:R=2−シアノエトキシメチル,X=Cl)18mg(0.15mmol)を加え、室温で7時間攪拌した。反応液にメタノールおよび80%酢酸水を加え、減圧下で濃縮した。残渣をHPLCで分析し、目的物の合成収率(2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−アセチルアデノシンに対する収率)を算出した(40%)。
【0056】
H−NMR(DMSO−d6):δ10.69(1H,brs),8.72(1H,s),8.66(1H,s),6.18(1H,d,J=5.6Hz),5.39(1H,d,J=5.4Hz),5.17(1H,t,J=5.7Hz),4.78−4.73(3H,m),4.37(1H,dd,J=5.0&9.0Hz),4.02(1H,dd,J=3.8&7.7Hz),3.71(1H,ddd,J=4.2,5.0&12.0Hz),3.63−3.57(2H,m),3.46−3.41(1H,m),2.63(1H,ddd,J=5.2,6.7&17.0Hz),2.55(1H,ddd,J=5.3,7.3&17.1Hz),2.26(3H,s)
【0057】
<参考例4>
2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−フェノキシアセチルグアノシン(式[I]:BASE=N−フェノキシアセチルグアニン,R=H,Ar=Ph)の合成
【0058】
式[IV]で示されるリボ核酸としてN−フェノキシアセチルグアノシン(式[IV]:BASE=N−フェノキシアセチルグアニン,R=H)835mg(2.0mmol)を用い、これとフェニルボロン酸(式[V]:Ar=Ph)257mg(2.0mmol)をピリジンに溶解し、ピリジンで3回、1,4−ジオキサンで3回共沸脱水した。さらに1,4−ジオキサン(10ml)に溶解し、100℃で1時間攪拌した後、減圧下で濃縮し、未精製の目的物として式[I]で表される化合物である2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−フェノキシアセチルグアノシン1.10gを得た。
【0059】
H−NMR(DMSO−d6):δ11.84(1H,brs),11.70(1H,brs),8.30(1H,s),7.80−7.75(2H,m),7.58−7.54(1H,m),7.45(2H,t,J=7.6Hz),7.38−7.30(2H,m),7.00−6.98(3H,m),6.17(1H,d,J=2.9Hz),5.66(1H,dd,J=2.9&7.3Hz),5.33(1H,dd,J=3.8&7.2Hz),5.14(1H,brs),4.90(2H,s),4.28−4.25(1H,m),3.67−3.60(2H,m)
【0060】
<実施例6>
2’−O−(2−シアノエトキシメチル)−N−フェノキシアセチルグアノシン(式[II]:BASE=N−フェノキシアセチルグアニン,R=H,R=2−シアノエトキシメチル)の合成
【0061】
実施例6では、参考例4で合成した粗2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−フェノキシアセチルグアノシン(式[I]:B=N−フェノキシアセチルグアニン,R=H,Ar=Ph)を用い、目的物として式[II]で示される化合物である2’−O−(2−シアノエトキシメチル)−N−フェノキシアセチルグアノシンを合成した。具体的には、粗2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−フェノキシアセチルグアノシン50mg(0.1mmol)をアセトニトリル(1.5ml)に溶解し、ビストリメチルシリルアセタミド15μl(0.06mmol)を加え、60℃で30分間攪拌した。氷冷下で酸化銀(I)23mg(0.1mmol)、テトラエチルアンモニウムヨージド13mg(0.05mmol)、および2−シアノエトキシメチルクロリド(式[III]:R=2−シアノエトキシメチル,X=Cl)14mg(0.12mmol)を加え、4℃で30分間攪拌した。反応液にアセトンおよび80%酢酸水を加え、減圧下で濃縮した。残渣をHPLCで分析し、目的物の合成収率(参考例4で原料としたN−フェノキシアセチルグアノシンに対する収率)を算出した(49%)。
【0062】
H−NMR(DMSO−d6):δ11.80(1H,brs),11.78(1H,brs),8.30(1H,s),7.34−7.30(2H,m),7.00−6.97(3H,m),5.97(1H,d,J=6.2Hz),5.34(1H,d,J=4.9Hz),5.09(1H,t,J=5.3Hz),4.87(2H,s),4.77(1H,d,J=6.9Hz),4.73(1H,d,J=6.9Hz),4.60(1H,dd,J=5.0&6.1Hz),4.32(1H,dd,J=4.8&8.1Hz),3.97(1H,dd,J=3.9&7.4Hz),3.68−3.56(3H,m),3.46(1H,ddd,J=5.2,6.7&12.1Hz),2.69−2.56(2H,m)
【0063】
<実施例7>
本発明のアルキル化反応における2’位選択性を向上させるために反応条件を種々検討した。反応条件とアルキル化の選択性を以下の表1に示す。その結果、反応にはルイス塩基および銀化合物は必須であり、5’位水酸基に保護基(R)を有していなくとも、2’位に選択的にアルキル型保護基を導入できることが明らかとなった。
【表1】

【0064】
<実施例8>
2’−O−メトキシメチルウリジン(式II:BASE=ウラシル,R=H,R=メトキシメチル)の合成
【0065】
実施例8では、参考例1で合成した2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジン(式[I]:BASE=ウラシル,R1=H,Ar=Ph)を用い、目的物として式[II]で示される化合物である2’−O−メトキシメチルウリジンを合成した。具体的には2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジン33mg(0.1mmol)をトルエン(1.0ml)に懸濁し、ビストリメチルシリルアセタミド27μl(0.11mmol)を加え、100℃で60分間攪拌した。得られた溶液に、氷冷下で酸化銀(I)116mg(0.5mmol)、メトキシメチルクロリド(式III:R=メトキシメチル,X=Cl)16mg(0.2mmol)およびトリエチルアミン28μl(0.2mmol)のトルエン(0.5ml)溶液を加え、60℃で5時間攪拌した。反応液にメタノールおよび80%酢酸水を加え、減圧下で濃縮した。残渣をHPLCで分析し、目的物の合成収率(2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジンに対する収率)を算出した(73%)。
【0066】
H−NMR(DMSO−d6):δ7.96(1H,d,J=8.1Hz),5.90(1H,d,J=4.4Hz),5.66(1H,d,J=8.1Hz),4.67(1H,d,J=6.6Hz),4.63(1H,d,J=6.6Hz),4.14−4.11(2H,m),3.89−3.88(1H,m),3.64(1H,dd,J=2.9&12.2Hz),3.58(1H,dd,J=2.8&12.1Hz),3.22(3H,s)
【0067】
<実施例9>
2’−O−ベンジルオキシメチルウリジン(式II:BASE=ウラシル,R=H,R=ベンジルオキシメチル)の合成
【0068】
実施例9では、参考例1で合成した2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジン(式[I]:BASE=ウラシル,R1=H,Ar=Ph)を用い、目的物として式[II]で示される化合物である2’−O−ベンジルオキシメチルウリジンを合成した。具体的には2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジン33mg(0.1mmol)をトルエン(1.0ml)に懸濁し、ビストリメチルシリルアセタミド27μl(0.11mmol)を加え、100℃で60分間攪拌した。得られた溶液に、氷冷下で酸化銀(I)116mg(0.5mmol)、ベンジルオキシメチルクロリド(式III:R=ベンジルオキシメチル,X=Cl)31mg(0.2mmol)およびトリエチルアミン28μl(0.2mmol)のトルエン(0.5ml)溶液を加え、60℃で5時間攪拌した。反応液にメタノールおよび80%酢酸水を加え、減圧下で濃縮した。残渣をHPLCで分析し、目的物の合成収率(2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジンに対する収率)を算出した(72%)。
【0069】
H−NMR(MeOD):δ8.03(1H,d,J=8.1Hz),7.90−7.23(5H,m),6.05(1H,d,J=4.7Hz),5.65(1H,d,J=8.1Hz),4.91(1H,d,J=6.9Hz),4.87(1H,d,J=6.8Hz),4.62(1H,d,J=11.8Hz),4.59(1H,d,J=11.8Hz),4.35(1H,t,J=5.0Hz),4.28(1H,t,J=5.0Hz),4.04−4.02(1H,m),3.85(1H,dd,J=2.5&12.3Hz),3.75(1H,dd,J=2.9&12.3Hz)
【0070】
<実施例10>
2’−O−ピバロイルオキシメチルウリジン(式II:BASE=ウラシル,R=H,R=ピバロイルオキシメチル)の合成
【0071】
実施例10では、参考例1で合成した2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジン(式[I]:BASE=ウラシル,R1=H,Ar=Ph)を用い、目的物として式[II]で示される化合物である2’−O−ピバロイルオキシメチルウリジンを合成した。具体的には2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジン330mg(1.0mmol)をトルエン(10ml)に懸濁し、ビストリメチルシリルアセタミド270μl(1.1mmol)を加え、100℃で60分間攪拌した。得られた溶液に、氷冷下で酸化銀(I)1.16g(5.0mmol)、ピバロイルオキシメチルクロリド(式III:R=ピバロイルオキシメチル,X=Cl)301mg(2.0mmol)およびトリエチルアミン280μl(2.0mmol)のトルエン(0.5ml)溶液を加え、60℃で5時間攪拌した。反応液にメタノールおよび80%酢酸水を加え、減圧下で濃縮した。残渣をHPLCで分析し、目的物の合成収率(2’,3’−O−フェニルボロニリデンウリジンに対する収率)を算出した(72%)。
【0072】
H−NMR(DMSO−d6):δ11.35(1H,brs),7.92(1H,d,J=8.1Hz),7.27(1H,brs),6.67(1H,brs),5.89(1H,d,J=5.4Hz),5.66(1H,d,J=8.1Hz),5.35(1H,d,J=6.5Hz),5.24(1H,d,J=6.5Hz),4.26(1H,t,J=5.2Hz),4.15(1H,t,J=4.4Hz),3.90−3.88(1H,m),3.65(1H,dd,J=2.8&12.2Hz),3.57(1H,dd,J=2.9&12.1Hz),1.11(9H,s)
【0073】
<実施例11>
2’−O−メトキシメチル−N−アセチルシチジン(式II:BASE=N−アセチルシトシン,R=H,R=メトキシメチル)の合成
【0074】
実施例11では、参考例2で合成した2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−アセチルシチジン(式[I]:BASE=N−アセチルシトシン,R1=H,Ar=Ph)を用い、目的物として式[II]で示される化合物である2’−O−メトキシメチル−N−アセチルシチジンを合成した。具体的には2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−アセチルシチジン82mg(0.2mmol)をアセトニトリル(3.0ml)に懸濁し、氷冷下で酸化銀(I)46mg(0.2mmol)、テトラエチルアンモニウムヨージド37mg(0.1mmol)、およびメトキシメチルクロリド(式III:R=メトキシメチル,X=Cl)18mg(0.2mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。さらにメトキシメチルクロリド(式III:R=メトキシメチル,X=Cl)18mg(0.2mmol)を加えて室温で1時間攪拌した。反応液にメタノールおよび80%酢酸水を加え、減圧下で濃縮した。残渣をHPLCで分析し、目的物の合成収率(2’,3’−O−フェニルボロニリデン−N−アセチルシチジンに対する収率)を算出した(56%)。
【0075】
H−NMR(DMSO−d6):δ10.90(1H,brs),8.45(1H,d,J=7.5Hz),7.20(1H,d,J=7.5Hz),5.87(1H,d,J=2.7Hz),5.24−5.21(2H,m),4.81(1H,d,J=6.5Hz),4.71(1H,d,J=6.5Hz),4.10−4.06(2H,m),3.94−3.92(1H,m),3.79−3.75(1H,m),3.64−3.60(1H,m),3.29(3H,s),2.51(3H,s)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[I]で表されるリボ核酸のボロン酸エステル体を、ルイス塩基および銀化合物の存在下、式[III]で表されるアルキル化剤と反応させ、式[II]で表される化合物を調製することを特徴とする2’位にアルキル型保護基を有するリボ核酸の製造法。


(式中、BASEは保護基を有していてもよい核酸塩基を示し、Rは水素原子または水酸基の保護基を示し、Rはアルキル基を示し、Xは脱離基を示し、Arはアリール基を示す。)
【請求項2】
で表されるアルキル基が、メチル、エチル、アリル、2−シアノエチル、2−トリメチルシリルエチル、ベンジル、メトキシメチル、エトキシメチル、2−シアノエトキシメチル、ベンジルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、アセチルオキシメチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、またはトリイソプロピルシリルオキシメチルから選択されたアルキル基である、請求項1記載の製造法。
【請求項3】
ルイス塩基が、3価リン試薬、ヨードアニオン、または3級アミン類である、請求項1記載の製造法。
【請求項4】
銀化合物が、酸化銀、炭酸銀、酢酸銀、または硝酸銀である、請求項1記載の製造法。
【請求項5】
結晶化により式[II]で表される化合物を単離する、請求項1記載の製造法。

【公開番号】特開2009−256335(P2009−256335A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67468(P2009−67468)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、機能性RNAプロジェクト委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000006770)ヤマサ醤油株式会社 (56)
【Fターム(参考)】