説明

2−シアノアクリレート系接着剤組成物

【課題】特定の2−シアノアクリル酸エステルを含有し、柔軟性があり、かつ、優れた力学特性を有する2−シアノアクリレート系接着剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルと、(B)炭素数6〜12のアルキル基を有する2−シアノアクリル酸エステルとを含有する2−シアノアクリレート系接着剤組成物であって、前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して5〜95質量%であり、かつ、前記組成物のフィルム状成形品が特定の条件を満たすことを特徴とする2−シアノアクリレート系接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−シアノアクリレート系接着剤組成物に関する。更に詳しくは、特定の2−シアノアクリル酸エステルを含有し、柔軟性があり、かつ、優れた力学特性を有する2−シアノアクリレート系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2−シアノアクリル酸エステルを含有する2−シアノアクリレート系接着剤組成物は、主成分である2−シアノアクリル酸エステルが有する特異なアニオン重合性により、被着体表面に付着する僅かな水分等の微弱なアニオンによって重合を開始し、各種材料を短時間で強固に接合することができる。そのため、所謂、瞬間接着剤として、工業用、家庭用、医療用等の広範な分野において用いられている。 しかし、この2−シアノアクリレート系接着剤組成物は、その硬化物が硬く脆いため、優れたせん断接着強さを有する反面、剥離接着強さ及び衝撃接着強さが低く、特に異種の被着体間での接着性、シール性に劣るという問題点を有する。従来、このような問題点を改良するため、例えば、特許文献1には特定の可塑剤を含む接着剤組成物が記載されている。また、特許文献2には、2−シアノアクリル酸エステルとしてアルコキシアルキルエステル等を使用した接着剤組成物も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−34678号公報
【特許文献2】特開平10−176142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された改質方法では、2−シアノアクリル酸エステルの硬化樹脂に柔軟性は付与されるものの、樹脂強度が低く、力学特性が不十分であるという問題がある。また、特許文献2に記載された改質方法では、硬化樹脂の柔軟性、力学特性ともに不十分な場合があり、結果的に接着性やシール性が要求特性に満たないという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、特定の2−シアノアクリル酸エステルを含有し、柔軟性があり、かつ、優れた力学特性を有する2−シアノアクリレート系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定の2−シアノアクリル酸エステルを特定量混合することにより、硬化樹脂に柔軟性を付与することができるだけでなく、硬化樹脂の力学特性が優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.(A)2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルと、(B)炭素数6〜12のアルキル基を有する2−シアノアクリル酸エステルとを含有する2−シアノアクリレート系接着剤組成物であって、前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して5〜95質量%であり、かつ、前記組成物のフィルム状成形品が下記(a)及び(b)の条件を満たすことを特徴とする2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
(a)フィルム成形品の引張降伏強度が、2N/mm2以上
(b)フィルム状成形品の引張破断強度α(N/mm2)、引張破断伸びβ(%)とした時の積α×βが、300以上
2.上記(B)成分が、2−シアノアクリル酸2−オクチルであることを特徴とする上記1に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
3.更に、(C)可塑剤を含有し、上記2−シアノアクリル酸エステルの合計を100質量部とした場合に、当該可塑剤は1〜15質量部であることを特徴とする上記1又は2に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る2−シアノアクリレート系接着剤組成物は、以上のように、特定の2−シアノアクリル酸エステルを複数含有する。そのため、室温下、短時間で各種の被着体を強固に接着、又はシールすることができる。硬化した樹脂は、単に柔軟性があるだけでなく、力学特性に優れるため、結果的に高い接着性やシール性を得ることができる。
更に、可塑剤を含有し、上記2−シアノアクリル酸エステルの合計を100質量部とした場合に、当該可塑剤が1〜15質量部であるときは、より優れた柔軟性を有する2−シアノアクリレート系接着剤組成物とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0008】
本発明に係る2−シアノアクリレート系接着剤組成物は、(A)2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルと、(B)炭素数6〜12のアルキル基を有する2−シアノアクリル酸エステルとを含有する組成物である。更に、上記接着剤組成物は、(C)可塑剤を含有することができる。ここで、本発明に係る2−シアノアクリレート系接着剤組成物の各構成成分について、具体的に説明する。
【0009】
(A)2−シアノアクリル酸2−エトキシエチル
本発明に係る2−シアノアクリレート系接着剤組成物には、2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルが含有される。2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルは、2−シアノアクリル酸エステルの1種であり、下記化学式(1)に示される化合物である。
【0010】
【化1】

【0011】
上記2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルを用いることにより、2−シアノアクリレート系接着剤組成物の硬化樹脂の柔軟性や力学特性を高めることができる。また、2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルは、本来低臭気、低白化性という特長を有しており、この特長を接着剤組成物に付与することができる。ここで、低臭気とは、モノマーの刺激臭が低いことをいい、低白化とは、揮発した2−シアノアクリル酸エステルが大気中の水分で重合し、白い粉となって被着体の接着部周辺に付着する現象が少ないことをいう。
【0012】
(B)炭素数6〜12のアルキル基を有する2−シアノアクリル酸エステル
上記2−シアノアクリレート系接着剤組成物には、炭素数6〜12のアルキル基を有する2−シアノアクリル酸エステルが含有される。この2−シアノアクリル酸エステルを含有させることによって、上記接着剤組成物の柔軟性及び力学特性を飛躍的に高めることができる。炭素数6〜12のアルキル基を有する2−シアノアクリル酸エステルとは、下記一般式(2)で示される化合物である。アルキル基は直鎖状でも、側鎖を有していてもよい。炭素数6〜12のアルキル基を有する2−シアノアクリル酸エステルとしては、例えば、2−シアノアクリル酸のn−ヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、2−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル等のエステルが挙げられる。これらの2−シアノアクリル酸エステルは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
【化2】

[上記式(2)におけるR1は、直鎖又は側鎖を有する炭素数6〜12のアルキル基である。]
【0014】
本発明に用いられる2−シアノアクリル酸エステルは、シアノ酢酸エステルとパラホルムアルデヒドを塩基性触媒存在下で脱水縮合反応を行い、得られた縮合物を解重合して粗製2−シアノアクリル酸エステルを得たのち、蒸留によって精製2−シアノアクリル酸エステルを得ることで製造することができる。また、例えば、特開平7−33726号公報に記載されているように、2−シアノアクリル酸エステルとシクロペンタジエンのディールスアルダー反応を利用した方法によっても製造することができる。更に、例えば、特表平8−505383号公報に記載されているように、2−シアノアクリル酸又はその酸ハロゲン化物をアルコールとエステル化反応させて2−シアノアクリル酸エステルを製造することもできる。
【0015】
本発明に係る2−シアノアクリレート系接着剤組成物は、上記(A)2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルと、(B)炭素数6〜12のアルキル基を有する2−シアノアクリル酸エステルとを特定量含有する点に特長がある。前記特定の2−シアノアクリル酸エステルを混合することにより、単独の2−シアノアクリル酸エステルでは得られない柔軟性や力学特性が得られることを見出した。前記(B)成分の含有量は、前記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して5〜95質量%である。前記(B)成分の含有量は、15〜85質量%であることが好ましく、25〜75質量%であることがより好ましい。前記含有量が5質量%未満であると、硬化樹脂の柔軟性が不十分な場合がある。一方、前記含有量が95質量%を超えると、力学特性が不十分な場合がある。
【0016】
本発明の2−シアノアクリレート系接着剤組成物において、引張降伏強度、引張破断強度及び伸びは、当該組成物をフィルム状に成型したものを23℃、60%RH雰囲気下にて測定したものである。具体的な測定方法は、後述する。この時の引張降伏強度は、2N/mm2以上であり、引張破断強度α(N/mm2)、引張破断伸びβ(%)とした時の積α×βが、300以上である。前記積α×βは、400以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましい。積α×βが300未満であると、力学特性が不十分となり、結果的に十分な接着耐久性が得られない場合がある。一方、上限は特に限定されないが、樹脂の歪を考慮すると5000以下であり、より好ましくは3000以下である。
【0017】
また、引張降伏強度及び引張破断強度が低い場合は、被着体を十分な強度で保持することができないため、部品の脱落等の可能性がある。よって、引張降伏強度及び引張破断強度は、2N/mm2以上であることが好ましい。また、引張破断伸びが低いと、被着体が機械的負荷に耐えきれず、樹脂にクラック等を生じる可能性があるため、引張破断伸びは70%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましい。
【0018】
(C)可塑剤
上記2−シアノアクリレート系接着剤組成物には、上記(A)2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルと、(B)炭素数6〜12のアルキル基を有する2−シアノアクリル酸エステル以外に、(C)可塑剤を含有することができる。可塑剤は、硬化樹脂の柔軟性を向上させる成分であり、2−シアノアクリル酸エステルの重合性や保存安定性に悪影響を及ぼさず、相溶するものであればよい。
このような可塑剤としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、グルタル酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソトリデシル、フタル酸ジペンタデシル、テレフタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジイソノニル、トルイル酸デシル、ショウノウ酸ビス(2−エチルヘキシル)、2−エチルヘキシルシクロヘキシルカルボキシレート、フマ−ル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、カプロン酸トリグリセライド、安息香酸2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリオクチル等が挙げられる。これらの中では、2−シアノアクリル酸エステルとの相溶性が良く、かつ可塑化効率が高いという点から、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、安息香酸2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエートが好ましい。これらの可塑剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
可塑剤の含有量は、2−シアノアクリル酸エステルの合計を100質量部とした場合に、1〜15質量部であることが好ましく、 3〜10質量部であることがより好ましい。可塑剤の含有量が、1質量部未満では柔軟性を向上させるためには不十分な場合があり、一方、15質量部を超えると、硬化樹脂の力学特性が低下する場合がある。
【0020】
本発明の2−シアノアクリレート系接着剤組成物には、上記の必須成分の他に、従来、2−シアノアクリル酸エステルを含有する接着剤組成物に配合して用いられているアニオン重合促進剤、安定剤、増粘剤、着色剤、香料、溶剤、強度向上剤等を、目的に応じて、接着剤組成物の硬化性及び硬化樹脂の特性を損なわない範囲で適量配合することができる。
【0021】
アニオン重合促進剤としては、ポリアルキレンオキサイド類、クラウンエーテル類、シラクラウンエーテル類、カリックスアレン類、シクロデキストリン類及びピロガロール系環状化合物類等が挙げられる。ポリアルキレンオキサイド類とは、ポリアルキレンオキサイド及びその誘導体であって、例えば、特公昭60−37836号、特公平1−43790号、特開昭63−128088号、特開平3−167279号、米国特許第4386193号、米国特許第4424327号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、(1)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレンオキサイド、(2)ポリエチレングリコールモノアルキルエステル、ポリエチレングリコールジアルキルエステル、ポリプロピレングリコールジアルキルエステル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル等のポリアルキレンオキサイドの誘導体などが挙げられる。クラウンエーテル類としては、例えば、特公昭55−2236号、特開平3−167279号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ベンゾ−12−クラウン−4、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、トリベンゾ−18−クラウン−6、asym−ジベンゾ−22−クラウン−6、ジベンゾ−14−クラウン−4、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、シクロヘキシル−12−クラウン−4、1,2−デカリル−15−クラウン−5、1,2−ナフト−15−クラウン−5、3,4,5−ナフチル−16−クラウン−5、1,2−メチルベンゾ−18−クラウン−6、1,2−tert−ブチル−18−クラウン−6、1,2−ビニルベンゾ−15−クラウン−5等が挙げられる。シラクラウンエーテル類としては、例えば、特開昭60−168775号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、ジメチルシラ−11−クラウン−4、ジメチルシラ−14−クラウン−5、ジメチルシラ−17−クラウン−6等が挙げられる。カリックスアレン類としては、例えば、特開昭60−179482号、特開昭62−235379号、特開昭63−88152号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、5,11,17,23,29,35−ヘキサ−tert−butyl−37,38,39,40,41,42−ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42−ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42−ヘキサ−(2−オキソ−2−エトキシ)−エトキシカリックス〔6〕アレン、25,26,27,28−テトラ−(2−オキソ−2−エトキシ)−エトキシカリックス〔4〕アレン等が挙げられる。シクロデキストリン類としては、例えば、公表平5−505835号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、α−、β−又はγ−シクロデキストリン等が挙げられる。ピロガロール系環状化合物類としては、特開2000−191600号等で開示されている化合物が挙げられる。具体的には、3,4,5,10,11,12,17,18,19,24,25,26−ドデカエトキシカルボメトキシ−C−1、C−8、C−15、C−22−テトラメチル[14]−メタシクロファン等が挙げられる。これらのアニオン重合促進剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
また、安定剤としては、(1)二酸化イオウ、メタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、三弗化ホウ素ジエチルエーテル、三弗化ホウ素メタノール等の三弗化ホウ素錯体、HBF4及びトリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤、(2)ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、カテコール及びピロガロール等のラジカル重合禁止剤などが挙げられる。これらの安定剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
更に、増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、アクリルゴム、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル−α−シアノアクリル酸エステル及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの増粘剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明に係る2−シアノアクリレート系接着剤組成物は、以上のような成分を含有するが、その製造方法は特に限定されるものではない。具体的には、上記の各成分を従来公知の方法を適宜選択して用いて、混合することにより製造することができる。
【実施例】
【0025】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0026】
1.評価方法
2−シアノアクリレート系接着剤組成物の硬化樹脂の作成、及び評価は以下のように行った。
1−1.硬化樹脂の作成方法
a)厚さ300μmのPETフィルムを13cm角に切り取り、型枠を作成する。
b)硬化促進剤を含む溶液(1% N,N−ジエチル−m−トルイジン含有ペンタン溶液)を綿布で塗布した離型紙を用意する。
c)ガラス板の上に硬化促進剤を塗布した面を上にして離型紙を載せ、この上に上記型枠を置く。
d)接着剤組成物を型枠の中に約7〜8g入れた後、硬化促進剤を塗布した別の離型紙を載せて、更にガラス板(縦15cm×横15cm、重さ100g)で押さえる。接着剤組成物は、硬化促進剤が塗布された離型紙で挟まれた状態となる。
e)一晩(16時間以上)、室温下で放置して硬化樹脂を得る。
1−2.力学特性の評価方法
上記方法で得られた硬化樹脂を、3号ダンベル型で打ち抜き、試験片とした。JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、この試験片の引張降伏強度、引張破断強度及び引張破断伸びを測定した。測定は、23℃、60%RH環境下で行い、引張速度は、50mm/分とした。
【0027】
2.2−シアノアクリレート系接着剤組成物の製造
○実施例1
250mlポリエチレン容器に、2−シアノアクリル酸2−エトキシエチル70g(二酸化硫黄20ppm、ハイドロキノン1000ppm含有)と、2−シアノアクリル酸2−オクチル30g(二酸化硫黄20ppm、ハイドロキノン1000ppm含有)を入れて、室温下で10分間振とうし、混合して接着剤組成物を製造した。
【0028】
○実施例2〜5及び比較例1〜3
2−シアノアクリル酸エステルの種類、及び可塑剤の含有量を表1の記載となるように配合した他は、実施例1と同様にして2−シアノアクリレート系接着剤組成物を製造した。
【0029】
【表1】

【0030】
表1の結果によれば、本発明に係る2−シアノアクリレート系接着剤組成物は、優れた柔軟性と、力学特性を有することが分かる。一方、2−シアノアクリル酸エステルが単一である比較例1及び2は、力学特性に劣る。また、本発明の(B)成分以外の2−シアノアクリル酸エチルを含む比較例3では、硬化樹脂の引張強度は高いものの、引張破断伸びが低く、力学特性に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の2−シアノアクリレート系接着剤組成物は、特定の2−シアノアクリル酸エステルを複数含有し、所謂、瞬間接着剤として利用することができる。この接着剤組成物の硬化樹脂は、柔軟であることに加え、優れた力学特性を有するため、一般用、工業用及び医療用など広範囲の分野において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)2−シアノアクリル酸2−エトキシエチルと、(B)炭素数6〜12のアルキル基を有する2−シアノアクリル酸エステルとを含有する2−シアノアクリレート系接着剤組成物であって、前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して5〜95質量%であり、かつ、前記組成物のフィルム状成形品が下記(a)及び(b)の条件を満たすことを特徴とする2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
(a)フィルム成形品の引張降伏強度が、2N/mm2以上
(b)フィルム状成形品の引張破断強度α(N/mm2)、引張破断伸びβ(%)とした時の積α×βが、300以上
【請求項2】
上記(B)成分が、2−シアノアクリル酸2−オクチルであることを特徴とする請求項1に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項3】
更に、(C)可塑剤を含有し、上記2−シアノアクリル酸エステルの合計を100質量部とした場合に、当該可塑剤は1〜15質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。

【公開番号】特開2013−103999(P2013−103999A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249226(P2011−249226)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】