説明

2ピースブームを有する作業機

【課題】フロントに添って取付ける油圧ホースが作業中に天井に衝突して油圧ホースやその継手が損傷したり、この損傷によりフロントの上方への動作が制限されることのない構成の2ピースブームを有する作業機を提供する。
【解決手段】作業機は、走行体上に旋回装置を介して旋回体を設置し、この旋回体に、互いに上下回動自在に連結した下ブーム11と上ブーム14とアーム17とからなるフロント8を起伏可能に取付け、アーム17に作業具を取付けてなる。アーム17および作業具に備えた油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ホースのうち、上ブーム14に添設する部分33、34、43、44を、上ブーム14の下側に位置するように取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルや建物の地下工事等のように、天井の低い工事現場に用いる場合に好適な2ピースブームを有する作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルあるいは建物の地下階等において、解体、破砕、掘削等の作業を行なう場合、一般的に用いられるくの字形のブームとアームからなるフロントを用いた油圧ショベル等の作業機では、フロントが長すぎ、天井につかえて前記作業を行なうことが困難である。この問題を解決するため、特許文献1に開示の作業機においては、走行体上に旋回装置を介して設置した旋回体に、2ピースブーム式フロント、すなわちブームを短い直線状の下ブームと上ブームとに分割し、前記上ブームにアームを上下に回動自在に取付けたものを用い、アームの先端に作業具を取付けて作業機を構成している。
【0003】
【特許文献1】特開平8−158395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記2ピースブーム方式のフロントにおける上ブームの先端に取付けるアームには、作業具を回動させる油圧シリンダが取付けられると共に、このアームの先端に取付ける作業具にはこれを駆動する油圧シリンダ等の油圧アクチュエータを備える。そして、これらの油圧アクチュエータに、旋回体上に設置した油圧源から旋回体上のコントロール弁、およびフロントに添設した油圧配管を通して作動油を供給する。
【0005】
従来、この油圧配管として、下ブームに添設した油圧配管と、下ブームと上ブームとの関節部との間を連絡し、上ブームが下ブームに対して回動する際にこの回動に追従できるように弛みを持たせた油圧ホースと、同様の構造で上ブームとアームとの間の回動に追従できるように弛みを持たせて連絡した油圧ホースとを備える。
【0006】
従来の作業機においては、これらの関節部に弛みを持たせて設ける油圧ホースは、一般の油圧ショベル等と同様に関節部を構成する下ブーム、上ブーム、アームの各上面に継手を設けて継手間に橋渡しするように油圧ホースを取付けている。このため、関節部に設ける油圧ホースが上方に膨出し、下ブームや上ブームあるいはアームを上げる動作、すなわち作業具を上げる動作を行なう場合に、これらの関節部の油圧配管を連絡する油圧ホースがトンネルや地下階の天井に衝突して油圧ホースやその継手が損傷するおそれがあるという問題点があった。
【0007】
また、このような天井への油圧ホースの衝突の問題があるため、フロントの上方への動きが制限されるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、フロントに添って取付ける油圧ホースが作業中に天井に衝突して油圧ホースやその継手が損傷したり、この損傷によりフロントの上方への動作が制限されることのない構成の2ピースブームを有する作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の2ピースブームを有する作業機は、走行体上に旋回装置を介して旋回体を設置し、この旋回体に、互いに上下回動自在に連結した下ブームと上ブームとアームとからなるフロントを起伏可能に取付け、前記アームに作業具を取付けてなる2ピースブームを有する作業機において、
前記アームおよび前記作業具に備えた油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ホースのうち、前記上ブームに添設する部分を、前記上ブームの下側に位置するように取付けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の2ピースブームを有する作業機は、請求項1において、
前記油圧ホースを、前記下ブームと前記上ブームとの間の関節部の下に弛ませて設けた油圧ホースと、前記上ブームと前記アームとの間の関節部に弛ませて設けた油圧ホースとに分割配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項3の2ピースブームを有する作業機は、請求項1または請求項2において、
前記下ブームの上面に、前記作業具に備えた油圧アクチュエータ用のリリーフ弁および流量再生弁を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、アームおよび作業具に備える油圧アクチュエータへ作動油を供給する油圧配管のうち、上ブームに添設する部分を、上ブームの下に位置するように取付けたので、上下ブームおよびアームからなるフロントを上方に動作させる場合において、上ブームに添設される油圧ホースの部分が天井に衝突するおそれがなく、油圧ホースや継手の破損が防止される。
【0013】
すなわち、2ブームブームを有する作業機を用いて天井の低い現場で作業を行なう場合、上ブームに添設する油圧ホースを上ブームの下側に設けているので、この油圧ホースの天井との衝突が防止される。
【0014】
また、フロントを上方に動かす場合に、上ブームに添設する油圧ホースが天井に衝突しないように配慮することなくフロントの動作が行なえ、油圧ホースによる上動の制限がなくなり、上動の範囲が拡大される。
【0015】
請求項2の発明によれば、上ブームに添設する油圧ホースを、下ブームと上ブームとの関節部の下に弛みを持たせて添設する部分と、上ブームとアームとの関節部の下に弛みを持たせて添設する部分とに分割配置したので、上ブーム全体の下に弛みを持たせて油圧ホースを設ける場合に比較して弛み部分を少なくし、油圧ホースをコンパクトに収めることができる。
【0016】
請求項3の発明は、前記下ブームの上面に、前記作業具に備えた油圧アクチュエータ用の流量再生弁を設けたので、流量再生弁により、容量の大きな油圧アクチュエータを設けることができ、作業能率の向上が図れる。また、流量再生弁は旋回体上ではなく、フロント上に設けられ、作業具に備えた油圧アクチュエータに短い油圧配管を介して接続されるので、作動油の流動抵抗を少なくした状態で作業具の油圧アクチュエータを効率良く動作させることができる。
【0017】
また、作業中は前記下ブームは斜めに傾斜した姿勢となり、トンネルや地下での工事では下ブームの上面は上ブームの上面より低い位置にあるので、リリーフ弁や流量再生弁が天井に衝突するおそれはなく、弁類が作業機のスペースを利用して効率良く配置できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明による2ピースブームを有する作業機の一実施の形態を示す側面図である。図1において、1は走行体、2はこの走行体1上に旋回装置3を介して設置した旋回体、4、5はそれぞれこの旋回体2に設置した運転室と油圧パワーユニットであり、油圧パワーユニット5はエンジンにより駆動される油圧ポンプや油タンクからなる油圧源6を有する。また、旋回体2上には、前記油圧源6からの作動油を各部アクチュエータに切換え供給するためのコントロール弁7を備える。
【0019】
8は先端に作業具9を有するフロントである。このフロント8は、前記旋回体2にピン60を中心に油圧シリンダ10により上下回動可能、すなわち起伏可能に設けた下ブーム11と、この下ブーム11の先端にピン12を中心に油圧シリンダ13により上下回動可能に設けた上ブーム14と、この上ブーム14の先端にピン15を中心に油圧シリンダ16により上下回動可能に取付けたアーム17とからなる。上ブーム14は下ブーム11およびアーム17よりも長さが短く構成される。前記下ブーム11を起伏させる油圧シリンダ10は、この下ブーム11の左右に配置され、前記上ブーム14を回動させる油圧シリンダ13は、下ブーム11および上ブーム14の下面に取付けられ、アーム16を回動させる油圧シリンダ16は、上ブーム14とアーム17の下面に取付けられる。
【0020】
本実施の形態においては作業具9がブレーカである場合について示す。19はこの作業具9のフレームであり、このフレーム19は、前記アーム17にピン20を中心に油圧シリンダ21および回動範囲拡大のためのリンク22、23を介して回動可能に取付けられる。前記作業具9を回動させる油圧シリンダ21はアーム17の上面に取付けられる。
【0021】
前記作業具9のフレーム19には、振動を発生させるための特殊構造の油圧シリンダ24が取付けられ、この油圧シリンダ24によりチゼル25を上下に振動させてコンクリート床面等を破砕するものである。
【0022】
図2は本実施の形態における主として下ブーム11の上面側の油圧配管の構成を示し、図3はフロントの下面側の油圧配管の構成を示す斜視図である。これらの図に示すように、前記上ブーム14は、上面が平坦な形状に形成され、下部に前記油圧シリンダ13、16の取付ブラケット14aを有する。
【0023】
図2、図3において、30は前記作業具9の油圧シリンダ24に作動油を供給するために、前記コントロール弁7と油圧シリンダ24との間の油圧配管に設けられた流量再生弁、31は同じくリリーフ弁である。
【0024】
前記流量再生弁30は、油圧シリンダ24に供給される作動油を実質的に増量させるため、油圧シリンダのボトム室とロッド室との間の短絡回路に挿入されるものである。この流量再生弁30は、油圧シリンダのボトム室側から作動油を供給する場合、ロッド室側の油圧管路に絞りを入れると、ボトム室とロッド室との圧力バランス上、受圧面積の狭いロッド室側の油圧がボトム室の油圧より高くなることを利用して、ロッド室から出る作動油の一部がコントロール弁7を介して油タンクに戻るのではなく、流量再生弁30を介してボトム室に戻る(還流する)ようにするものである。この流量再生弁30としては例えば特開平6−307405号公報に開示されたものが用いられる。リリーフ弁31も、前記ボトム室に接続される管路とロッド室に接続される管路間に設けられ、油圧シリンダ24の作動時における油圧の上限を設定するものである。
【0025】
32は前記流量再生弁30やリリーフ弁31につながる管路や上ブーム14より前部にある油圧アクチュエータへ作動油を供給する油圧配管である。
【0026】
33、34は前記作業具9の油圧シリンダ24へ作動油を供給するための油圧ホースである。これらの油圧ホース33、34のうち、一方の油圧ホース33は、下ブーム11と上ブーム14との間に両端を継手35、36により油圧配管37、38に接続して、下ブーム11と上ブーム14の関節部の下に弛ませて設けられる。他方の油圧ホース34は、上ブーム14とアーム17との間に両端を継手39、40により油圧配管38、42に接続して、上ブーム14とアーム17の関節部の下に弛ませて設けられる。
【0027】
43、44は前記作業具9を回動させる油圧シリンダ21へ作動油を供給するための油圧ホースである。これらの油圧ホース43、44のうち、一方の油圧ホース43は、下ブーム11と上ブーム14(本実施の形態においては上ブーム14に設けたブラケット14a)との間に両端を継手45、46により油圧配管47、48に接続して、下ブーム11と上ブーム14の関節部の下に弛ませて設けられる。他方の油圧ホース44は、上ブーム14(本実施の形態においては上ブーム14に設けたブラケット14a)とアーム17との間に両端を継手49、50により油圧配管48および油圧ホース52に接続して、上ブーム14とアーム17の関節部の下に弛ませて設けられる。
【0028】
このように、本実施の形態においては、アーム17および作業具9に備える油圧アクチュエータ21、24へ作動油を供給する油圧配管のうち、上ブーム14に添設する部分を、上ブーム14の下に位置するように取付けたので、下ブーム11、上ブーム14およびアーム17からなるフロント8を上方に動作させる場合において、上ブーム14に添設される油圧ホース33、34、43、44の部分が天井に衝突するおそれがなく、油圧ホース33、34、43、44や継手39、40、49、50の破損が防止される。
【0029】
すなわち、2ブームブームを有する作業機を用いて天井53(図1参照)の低い現場で作業を行なう場合、上ブーム14に添設する油圧ホース33、34、43、44を上ブーム14の下側に設けているので、これらの油圧ホース33、34、43、44が天井53に衝突することが防止される。
【0030】
また、下ブーム11、上ブーム14およびアーム17を上方に動かす場合に、油圧ホース33、34、43、44が天井53に衝突しないように配慮することなくフロント8の動作が行なえ、油圧ホース33、34、43、44による上動の制限がなくなり、上動の範囲が拡大される。
【0031】
また、本発明を実施する場合、油圧シリンダ24に作動油を供給する油圧ホースは、下ブーム11に添設する油圧配管からアーム17に添設する油圧配管に直接接続するようにしてもよいが、本実施の形態においては、上ブーム14の下面に油圧ホース33、34、43、44の継手39、40、49、50を設けて、上ブーム14に添設する油圧ホースを、下ブーム11と上ブーム14との関節部に弛みを持たせて添設する部分33、43と、上ブーム14とアーム17との関節部に弛みを持たせて添設する部分43、44とに分割して配置したので、油圧ホース33、34、43、44の弛み部分を少なくし、油圧ホース33、34、43、44をコンパクトに収めることができる。
【0032】
また、本実施の形態においては、前記下ブーム11の中間部分の上面に、前記作業具9に備えた油圧シリンダ24用の流量再生弁30を設けたので、容量の大きな油圧アクチュエータを設けることができ、作業能率の向上が図れる。また、流量再生弁30は旋回体上ではなく、フロント8上に設けられ、作業具9に備えた油圧シリンダ24に短い油圧配管を介して接続されるので、作動油の流動抵抗を少なくした状態で作業具9の油圧シリンダ24を効率良く動作させることができる。
【0033】
また、作業中は前記下ブーム11は斜めに傾斜した姿勢となり、トンネルや地下での工事では下ブームの中間部分の上面は上ブーム14の上面より低い位置にあるので、これらの弁30、31が天井53に衝突するおそれはなく、弁類が作業機のスペースを利用して効率良く配置できる。なお、ここで、弁30、31を設ける下ブーム11の中間部分とは、下ブーム11の頂部より低い部分を意味する。
【0034】
本発明は、作業具9がバケットや鋏状の破砕機等を取付ける場合や、作業具に旋回装置を設ける場合等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による作業機の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】本実施の形態における主として下ブーム周りの上面側の油圧配管の構成を示す斜視図である。
【図3】本実施の形態における主としてフロントの下面側の油圧配管の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1:走行体、2:旋回体、3:旋回装置、4:運転室、5:油圧パワーユニット、6:油圧源、7:コントロール弁、8:フロント、9:ピン、10:油圧シリンダ、11:下ブーム、12:ピン、13:油圧シリンダ、14:上ブーム、14a:油圧シリンダの取付ブラケット、15:ピン、16:油圧シリンダ、17:アーム、19:フレーム、20:ピン、21:油圧シリンダ、22、23:リンク、24:油圧シリンダ、25:チゼル、30:流量再生弁、31:リリーフ弁、32:油圧配管、33、34:油圧シリンダ24用油圧ホース、35、36:継手、37、38:油圧配管、39、40:継手、42:油圧配管、43、44:油圧シリンダ21用油圧ホース、45、46:継手、47、48:油圧配管、49、50:継手、52:油圧ホース、53:天井、60:ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体上に旋回装置を介して旋回体を設置し、この旋回体に、互いに上下回動自在に連結した下ブームと上ブームとアームとからなるフロントを起伏可能に取付け、前記アームに作業具を取付けてなる2ピースブームを有する作業機において、
前記アームおよび前記作業具に備えた油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ホースのうち、前記上ブームに添設する部分を、前記上ブームの下側に位置するように取付けたことを特徴とする2ピースブームを有する作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の2ピースブームを有する作業機において、
前記油圧ホースを、前記下ブームと前記上ブームとの間の関節部の下に弛ませて設けた油圧ホースと、前記上ブームと前記アームとの間の関節部に弛ませて設けた油圧ホースとに分割配置したことを特徴とする2ピースブームを有する作業機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の2ピースブームを有する作業機において、
前記下ブームの上面に、前記作業具に備えた油圧アクチュエータ用のリリーフ弁および流量再生弁を設けたことを特徴とする2ピースブームを有する作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−2513(P2006−2513A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182053(P2004−182053)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】