説明

2層カスタードプリン及びその製造方法

【課題】脂肪分の多い上層と脂肪分の少ない下層からなる2層タイプで、なめらかな食感を有するカスタードプリンを安定して製造できる方法および該プリンを提供すること。
【解決手段】脂肪分が14〜16重量%の上層と脂肪分が2〜4重量%の下層からなる2層タイプのカスタードプリンの製造方法であって、乳製品、卵黄、砂糖を含むプリン生地を、一旦10℃以下に冷却し、それから焼成温度を145〜155℃に設定したオーブンで加湿焼成してなることを特徴とする2層カスタードプリンの製造方法に従ってプリンを製造すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
脂肪分の多い上層と脂肪分の少ない下層の2層からなるカスタードプリン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にプリンは、寒天、ゼラチン、カラギーナンなどのゲル化剤を用いて固めたゲル化タイプのものと、卵の蛋白質の熱凝固性を用いたカスタードタイプのものとに大別される。近年、人気が出て話題になっている“なめらかプリン”、“瓶詰めプリン”などは後者のタイプであり、食感や風味を変える目的で2層に分かれるように工夫したプリンもある。しかしながら、その製法は開示されておらず、また層の出来方にムラがあるなど、製造において再現性が難しいと言われてきた。また、他にも層状のプリンとしては、例えば、上部にスポンジ生地、スフレ生地を充填して焼成したものや、冷やし固めてからゼリー、ムースなどを別途上部に充填し固めたもの、裏ごししたマロン、餡、サツマイモなどによって風味付けされたプリンと、通常のプリンとを、非常に簡単な手段により容器内で2層化したもの(特許文献1)、乳化剤の有無で2層に分けたプリン(特許文献2)などがあるが、何れも工程が煩雑になるなど作業性がよくなかった。
【特許文献1】特開2006−25622号公報
【特許文献2】特開2006−6127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、脂肪分の多い上層と脂肪分の少ない下層からなる2層タイプで、なめらかな食感を有するカスタードプリンを安定して製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の配合、条件、製造方法を用いて焼成すること、即ち特定量の卵黄、砂糖、クリーム、牛乳及び香料を含む生地からなり、牛乳、クリームは低温で加熱してから他の原料を混合し、一旦、プリン生地を冷却してから加湿焼成することにより、脂肪分の多い上層と脂肪分の少ない下層からなる2層タイプで、なめらかな食感を有するカスタードプリンを安定して製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明の第一は、脂肪分が14〜16重量%の上層と脂肪分が2〜4重量%の下層からなる2層タイプのカスタードプリンの製造方法であって、乳製品、卵黄、砂糖を含むプリン生地を、一旦10℃以下に冷却し、それから焼成温度を145〜155℃に設定したオーブンで加湿焼成してなることを特徴とする2層カスタードプリンの製造方法に関する。好ましい実施態様は、プリン生地全体中のクリームの含有量が、25〜40重量%である上記記載のカスタードプリンの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に従えば、脂肪分の多い上層と脂肪分の少ない下層からなる2層タイプで、なめらかな食感を有するカスタードプリンを安定して製造できる方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の2層カスタードプリンは、カスタードタイプのプリンで、脂肪分の多い上層と脂肪分の少ない下層とに分かれている。そのような2層カスタードプリンは、乳製品、砂糖、卵を主体とする生地を用いて、該一旦10℃以下に冷却し、それから加湿焼成することで得ることができる。なお、本発明におけるカスタードの定義は、一般的に認知されている、卵、乳製品、砂糖を加え熱凝固させたものを指す。
【0008】
本発明における乳製品としては、例えば、牛乳、クリーム、濃縮乳等が挙げられるが、乳脂肪分の多い方が味、風味として好ましい。クリーム及び濃縮乳としては、純生タイプ、加工タイプ及び牛乳何れでも構わないが、加工タイプとしては、例えば、「フレッシュブレンド50」(商品名、株式会社カネカ社製)、濃縮乳としては、例えば、「ミルレックス200M」(商品名、株式会社カネカ社製)等が挙げられる。また、加工タイプのクリーム及び濃縮乳に含まれる油脂の種類は、限定しないが、牛脂、豚脂、バターなどの動物油、菜種油、コーン油、パーム油、綿実油などの植物油、それらをエステル交換、分別、硬化したものを少なくとも1種用いることができるが、中でも風味の観点からバターが好ましい。乳製品の割合は、プリン生地全体中70〜90重量%が好ましく、より好ましくは75〜85重量%の範囲内である。特に、なめらかな食感にするには、乳製品の1つであるクリームの含有量を、プリン生地全体中25〜40重量%にすることが好ましく、より好ましくは37〜40重量%である。乳製品の割合が90重量%より多いと、凝固性が悪くなる場合があり、また、70重量%より少ないと食感は硬く、なめらかさもなくなる場合がある。
【0009】
本発明における卵は、特に限定はしないが、液全卵、生卵黄、生卵白、凍結卵黄、凍結卵白等が挙げられ、中でも凍結卵黄を用いることが好ましい。卵の割合は2層カスタードプリン全体中12〜15重量%が好ましく、より好ましくは13〜14重量%である。15重量%より多いと、卵臭さが強くなる場合がある。また、12重量%より少ないと、風味が乏しく、凝固性も悪くなり好ましくない場合がある。
【0010】
本発明における砂糖は、グラニュー糖、上白糖、ぶどう糖、果糖、麦芽糖、液糖等の一般的な糖質であればよい。砂糖の割合は、2層カスタードプリン全体中6〜12重量%が好ましく、より好ましくは8〜10重量%である。6重量%より少ないと、甘さの足りない、淡白な味になる場合がある。12重量%より多いと、甘さが強く、濃厚な味になりすぎる場合がある。
【0011】
本発明における生地の調製は、例えば以下の手順で行う。まず、卵、砂糖を加え混合する。次に、予め60℃以下(乳蛋白の加熱変性の影響が少ない温度帯)に加熱しておいた牛乳、クリームを混合する。次に、香料を加えて混合し、篩いで漉す。得られた生地を10℃以下、好ましくは10℃以下且つ−1℃以上に冷却した後カップに充填し、温度145〜155℃のオーブンで、約60分間焼成することにより、2層カスタードプリンを得ることができる。焼成の際は、加湿となるように湯煎するのが好ましい。
【実施例】
【0012】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0013】
(実施例1)
卵黄13重量部、砂糖9重量部を加え混合した。別途クリーム(株式会社カネカ社製「フレッシュブレンド50」、乳脂肪:23.5%)38.8重量部、濃縮乳(株式会社カネカ社製「ミルレックス200M」、乳脂肪:1.5%)13重量部、水26重量部を加え混合し、60℃に加熱した。前記加熱した混合物に卵黄と砂糖の混合物を加え、均一になるまで撹拌した。さらに、香料0.2重量部を加え、篩いで漉した。そうして得られたものをプリン生地とし、該生地を5℃に冷却してカップに充填し、カップの周囲に水を張り、その後150℃で60分間加湿焼成し、焼成後冷蔵庫で冷却して2層カスタードプリンを得た。得られた2層カスタードプリンは、形状、食感、風味が良好であった。
【0014】
(実施例2)
クリーム、濃縮乳、水からなる混合物を加熱しなかった以外は、実施例1と同様にして2層カスタードプリンを得た。得られた2層カスタードプリンは、形状、食感、風味は良好であったが、日持ち性が劣った。
【0015】
(実施例3)
クリーム、濃縮乳、水からなる混合物を90℃で加熱した以外は、実施例1と同様にして2層カスタードプリンを得た。得られた2層カスタードプリンは、形状、食感は良好だが、乳風味が不足した。
【0016】
(比較例1)
プリン生地を冷却しなった以外は、同様にしてカスタードプリンを得た。しかし形状は2層にならなかった。
【0017】
(比較例2)
焼成条件が強い(温度:170℃、時間:90分間)以外は、同様にしてカスタードプリンを得た。しかし食感は硬く、口溶けも悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪分が14〜16重量%の上層と脂肪分が2〜4重量%の下層からなる2層タイプのカスタードプリンの製造方法であって、乳製品、卵黄、砂糖を含むプリン生地を、一旦10℃以下に冷却し、それから焼成温度を145〜155℃に設定したオーブンで加湿焼成してなることを特徴とする2層カスタードプリンの製造方法。
【請求項2】
プリン生地全体中のクリームの含有量が、25〜40重量%である請求項1記載のカスタードプリンの製造方法。

【公開番号】特開2010−136664(P2010−136664A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315331(P2008−315331)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】