説明

2軸可動スタンド

【課題】部品点数を大幅に削減した簡単な構造により、水平方向の回転とチルト角度を調整することができる安価な2軸可動スタンドを提供するものである。
【解決手段】円筒ケース20の内側に、回転プレート22の間に板バネ25を介在させて、回転プレート22の側面エッジ部26が円筒ケース20の内周面に摺接して取付けると共に、回転プレート22の上部両側にチルトブラケット10を、頭部15を形成したボルト状のシャフト16で傾動自在に取付け、シャフト16の頭部15とチルトブラケット10との間にスプリングワッシャ13を介在させ、回転プレート22の側面エッジ部26を板バネ25の弾性力により円筒ケース20の内周面に押し付けて水平方向の回転トルクを発生させると共に、チルトブラケット10をスプリングワッシャ13の弾性力により回転プレート22の上部に押し付けてチルト方向の回転トルクを発生させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビやモニターなどを支持して水平方向の回転と前後の傾動を可能にした2軸可動スタンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄型の液晶テレビやパソコンのモニターなどの画面を最適な状態に調整して見ることができるように種々のスタンドが開発されている。例えば支点軸を回転半径の中心として回転するフリクション軸により支持台にブラケットを組みつけ、その上でブラケットを平板を介してモニターに取付けて、支持台をモニタースタンドに取付けることによりモニターの前後の傾動(チルト)を可能にしたスタンドが提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、この従来のスタンドは前後の傾動角度を調整できるだけで、水平方向の回転角度を調整することができない。小型の液晶テレビやパソコンのモニターなどの水平方向の向きの調整は、液晶テレビやパソコンのモニターを手で持ってその向きを簡単に調整することができるが、大型の液晶テレビはその重量が重く持ち上げて簡単に水平方向の向きを調整することができない。
【0004】
このため、水平方向の回転とチルト角度を調整することができる2軸可動スタンドが開発されている。これは図13および図14に示すように、円筒ケース1の内側に支持円筒2が取付けられ、この上にワッシャ3aがスプリングワッシャ4を介して上部のワッシャ3bが設けられている。更にワッシャ3bの上部に水平回転プレート5を介してスペーサー6が設けられ、これと前記ワッシャ3aの底面との間にシャフト7がカシメ接合されて、水平回転機構8が形成されている。
【0005】
更に前記スペーサー6の上にはL字形のチルトベース9、9が逆T字形に組合わせて接合されている。またチルトベース9、9の両側に液晶テレビやモニターなどを取付ける逆L字形のチルトブラケット10、10が取付けられ、片側のチルトブラケット10の外側にはワッシャ12を介してスプリングワッシャ4が設けられている。また他方側のチルトブラケット10の外側にはワッシャ12が設けられ、これらは頭部15を形成したボルト状のシャフト16がスプリングワッシャ4側から貫通してカシメ接合され、チルト機構17が形成されている。
【0006】
この従来の2軸可動スタンドは、水平回転機構8のワッシャ3a、3bの間に介在させたスプリングワッシャ4の弾性による反発力が、これと摺接する水平回転プレート5との接触面Aに作用して、摩擦による回転トルクが発生し、チルトブラケット10に取付けた液晶テレビやモニターを手で左右に回転させると、所定の位置まで回転して保持される。
【0007】
またチルトブラケット10に取付けた液晶テレビやモニターを手で持って前後に傾動させると、チルト機構17のシャフト16の頭部15とワッシャ12との間に介在させたスプリングワッシャ4の弾性による反発力が、ワッシャ12と摺接するチルトブラケット10との接触面Bに作用して、摩擦による回転トルクが発生し、液晶テレビやモニターは所定の角度まで傾動して保持される。
【0008】
このように水平回転機構8とチルト機構17を組込んだ2軸可動スタンドにより水平方向の回転角度とチルト角度を調整することができる。しかしながらこの構造は、部品点数が28点にも及び、部品加工や組立に手間がかかり製造コストが高い問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−99065
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記問題を改善し、部品点数を大幅に削減した簡単な構造により、水平方向の回転角度とチルト角度を調整することができる安価な2軸可動スタンドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1記載の2軸可動スタンドは、底部を閉塞した円筒ケースの内側に、2枚の回転プレートを板バネを介在させて、回転プレートの側面エッジ部が前記円筒ケースの内周面に摺接するように、水平方向に回転自在に取付けると共に、前記回転プレートの上部を円筒ケースの上部に突設させ、回転プレートの上部両側に2個のチルトブラケットを、頭部を形成したボルト状のシャフトで前後に傾動自在に取付け、このシャフトの頭部とチルトブラケットとの間、または2枚の回転プレートの上部との間にスプリングワッシャを介在させ、回転プレートの側面エッジ部を板バネの弾性力により円筒ケースの内周面に摺動させて水平方向の回転トルクを発生させると共に、チルトブラケットをスプリングワッシャの弾性力により回転プレートの上部に摺動させてチルト方向の回転トルクを発生させるようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項2記載の2軸可動スタンドは、底部を閉塞した円筒ケースの内側に、2枚の回転プレートを板バネを介在させて、回転プレートの下部側の側面エッジ部が前記円筒ケースの内周面に摺接するように、水平方向に回転自在に取付けると共に、前記回転プレートと板バネの上部を円筒ケースの上部に突設させ、板バネを介在させた回転プレートの上部両側に2個のチルトブラケットを、頭部を形成したボルト状のシャフトで前後に傾動自在に取付け、回転プレートの側面エッジ部を板バネの弾性力により円筒ケースの内周面に摺動させて水平方向の回転トルクを発生させると共に、チルトブラケットを板バネの弾性力により回転プレートの上部に摺動させてチルト方向の回転トルクを発生させるようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項3記載の2軸可動スタンドは、請求項1または2において、回転プレートの下部を折曲して支持脚部を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る請求項1記載の2軸可動スタンドによれば、水平回転機構はチルトブラケットの上に取付けた液晶テレビやモニターを手で左右に回転させると、2枚の回転プレートが左右に円筒ケース内を回転し、片側の側面エッジ部が円筒ケースの内周面に摺接し、板バネの弾性力により側面エッジ部を円筒ケースの内周面に押し付けて、摩擦による回転トルクが発生し、所定の位置まで水平回転して保持される。
【0015】
またチルト機構は、液晶テレビやモニターを手で持って前後に傾動させると、シャフトの頭部と片側のチルトブラケットとの間に介在させたスプリングワッシャの弾性による反発力により、チルトブラケットが回転プレートの上部に押し付けられて、摩擦による回転トルクが発生し、重量のある液晶テレビやモニターは所定の角度まで傾動して保持される。このように回転プレートが水平回転機構とチルト機構を共用し、回転プレートの側面エッジ部が円筒ケースの内周面に摺接して摩擦による回転トルクを発生させるようにしたので、所定の角度まで回転、傾動してこの状態を保持できると共に、部品点数を削減して、材料費や部品加工費、組立の手間が削減され製造コストを大幅に低減することができる。
【0016】
また請求項2記載の2軸可動スタンドによれば、2枚の回転プレートとこの間に介在させた板バネとが、水平回転機構とチルト機構を共用し、1枚の板バネで構成されているので部品点数を更に削減することができる。
【0017】
また請求項3記載の2軸可動スタンドによれば、回転プレートの下部を折曲して支持脚部を形成したので、重量のある液晶テレビやモニターを支持しながら円筒ケース内を滑らかに回転させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明の実施の一形態を図1ないし図9を参照して詳細に説明する。図において20は底部を閉塞した円筒ケースで、この内側底部に図2に示す滑りプレート21が取付けられている。22は円筒ケース20内に縦方向に取付けられた2枚の回転プレートで、これは図5に示すように下部を折曲してL字形に形成され、この折曲した部分が前記滑りプレート21の上を摺動する支持脚部23となっている。更にこの回転プレート22の上部は幅が狭く形成され、ここにシャフト貫通孔24が開孔されている。
【0019】
2枚の回転プレート22、22の間には図6に示す波形の板バネ25が介在されている。この板バネ25の弾性力により、図7に示すように2枚の回転プレート22、22は、片側の側面エッジ部26が前記円筒ケース20の内周面に摺接するように、水平方向に回転自在に取付けられ、板バネ25の弾性力が接触面Aに作用して、摩擦による回転トルクが発生する水平回転機構8が形成されている。
【0020】
前記円筒ケース20の上部には図1に示すようにキャップ27がカシメ接合され、このキャップ27は図8に示すように中央部に回転プレート22の幅が狭い上部が貫通する両側に広がった鼓状の貫通孔28が開孔され、この範囲で回転プレート22が水平方向に回転するようになっている。また2枚の回転プレート22の幅が狭い上部の間には図2に示すようにワッシャ12が介在されて一体に接合されている。
【0021】
更に2枚の回転プレート22の上部両側には、液晶テレビやモニターなどを取付けるコ字形のチルトブラケット10、10が取付けられ、片側のチルトブラケット10の外側には図9に示すスプリングワッシャ13が設けられている。チルトブラケット10の中間にはシャフト貫通孔24が開孔されている。頭部15を形成したボルト状のシャフト16が、スプリングワッシャ13側からチルトブラケット10側までシャフト貫通孔24を貫通してカシメ接合され、チルト機構17が形成されている。なお図2においてベース取付部29は図示しないベースに円筒ケース20を取付ける取付部である。
【0022】
上記構成の2軸可動スタンドは、図示しないベースにベース取付部29を取付けると共に、チルトブラケット10、10の上に液晶テレビやモニターを取付ける。液晶テレビやモニターを手で左右に回転させると、チルトブラケット10、10の間に介在させた2枚の回転プレート22、22が図8に示すキャップ27の貫通孔28の範囲内で左右に回転する。この回転プレート22、22が円筒ケース20内を回転すると、図7に示すように板バネ25の弾性力により側面エッジ部(接触部A)26が円筒ケース20の内周面に押し付けられて、摩擦による回転トルクが発生し、所定の位置まで回転して保持される。
【0023】
またチルトブラケット10に取付けた液晶テレビやモニターを手で持って前後に傾動させると、図2に示すチルト機構17のシャフト16の頭部15と片側のチルトブラケット10との間に介在させたスプリングワッシャ13の弾性による反発力により、チルトブラケット10が回転プレート22の上部の接触面Bに押し付けられて、摩擦による回転トルクが発生し、重量のある液晶テレビやモニターは所定の角度まで傾動して保持される。
【0024】
このように水平回転機構8とチルト機構17を組込んだ2軸可動スタンドにより水平方向の回転角度とチルト角度を調整し、重量のある液晶テレビやモニターを保持することができる。また本発明の2軸可動スタンドは、部品点数が14点であり、図14に示す従来の構造が28点のものに比べて部品点数が半減でき、材料費や部品加工費、組立の手間が削減され製造コストを大幅に低減することができる。
【0025】
図10は本発明の他の実施の形態を示すもので、水平回転機構8は図2と同様なのでその説明を省略する。チルト機構17は、2枚の回転プレート22、22の上部の間に、図9に示すスプリングワッシャ13を介在させ、回転プレート22、22の上部両側には、液晶テレビやモニターを取付けるコ字形のチルトブラケット10、10が取付けられている。頭部15を形成したボルト状のシャフト16が、片側のチルトブラケット10側から反対側のチルトブラケット10まで、シャフト貫通孔24を順次貫通してカシメ接合されている。
【0026】
上記構成をなす2軸可動スタンドの水平回転機構8は図8と同様に、2枚の回転プレート22、22がキャップ27の鼓状の貫通孔28の範囲内で左右に円筒ケース20内を回転し、片側の側面エッジ部26が円筒ケース20の内周に摺接し、板バネ25の弾性力により側面エッジ部(接触部A)26が押し付けられて、摩擦による回転トルクが発生し、所定の位置まで回転して保持される。
【0027】
またチルトブラケット10に取付けた液晶テレビやモニターを手で持って前後に傾動させると、チルト機構17の回転プレート22、22の間に介在させたスプリングワッシャ13の弾性による反発力により、回転プレート22の上部がチルトブラケット10との接触面Bに押し付けられて、摩擦による回転トルクが発生し、重量のある液晶テレビやモニターは所定の角度まで傾動して保持される。
【0028】
図11は本発明の異なる他の実施の形態を示すもので、板バネ30は図12に示すように、上部の幅が狭く形成され図5の回転プレート22とほぼ同形状に形成されている。チルト機構17は、2枚の回転プレート22、22の間に、板バネ30の上部が介在され、回転プレート22、22の上部両側には、コ字形のチルトブラケット10、10が取付けられ、ボルト状のシャフト16がワッシャ12側からシャフト貫通孔24を順次貫通してカシメ接合されている。
【0029】
上記構成の2軸可動スタンドの水平回転機構8の作用は、上記説明と同様に回転プレート22の側面エッジ部26と円筒ケース20の内周面との摩擦による回転トルクが発生し、所定の位置まで回転して保持される。またチルトブラケット10に取付けた液晶テレビやモニターを手で持って前後に傾動させると、チルト機構17の回転プレート22、22の間に介在させた板バネ30の上部の弾性による反発力により、回転プレート22の上部が、これと摺接するチルトブラケット10に押し付けられて、接触面Bで摩擦による回転トルクが発生し、重量のある液晶テレビやモニターは所定の角度まで傾動して保持される。この構造では、ワッシャ12とスプリングワッシャ13が不要となり1枚の板バネ30で済み、部品点数を削減することができる。
【0030】
なお上記説明では、回転プレート22の下部を折曲して支持脚部23を形成した構造について示したが、回転プレート22が円筒ケース20内を回転できれば他の構造でも良い。また液晶テレビやモニターを支持する場合について説明したが、他の電子機器などを支持する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の一形態による2軸可動スタンドの斜視図である。
【図2】図1に示す2軸可動スタンドの縦断正面図である。
【図3】図2に示す2軸可動スタンドの正面図である。
【図4】図2に示す2軸可動スタンドの側面図である。
【図5】図2の回転プレートを示す斜視図である。
【図6】図2の板バネを示す斜視図である。
【図7】図2の水平回転機構を示す水平断面図である。
【図8】図2の円筒ケースの上部に取付けるキャップを示す斜視図である。
【図9】図2のスプリングワッシャを示す斜視図である。
【図10】本発明の他の実施の形態による2軸可動スタンドの縦断正面図である。
【図11】本発明の異なる他の実施の形態による2軸可動スタンドの縦断正面図である。
【図12】図11の板バネを示す斜視図である。
【図13】従来の2軸可動スタンドを示す斜視図である。
【図14】図13の縦断正面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 円筒ケース
2 支持円筒
3a、3b ワッシャ
4 スプリングワッシャ
5 水平回転プレート
6 スペーサー
7 シャフト
8 水平回転機構
9 チルトベース
10 チルトブラケット
12 ワッシャ
13 スプリングワッシャ
15 頭部
16 シャフト
17 チルト機構
20 円筒ケース
21 滑りプレート
22 回転プレート
23 支持脚部
24 シャフト貫通孔
25 板バネ
26 側面エッジ部
27 キャップ
28 貫通孔
29 ベース取付部
30 板バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部を閉塞した円筒ケースの内側に、2枚の回転プレートを板バネを介在させて、回転プレートの側面エッジ部が前記円筒ケースの内周面に摺接するように、水平方向に回転自在に取付けると共に、前記回転プレートの上部を円筒ケースの上部に突設させ、回転プレートの上部両側に2個のチルトブラケットを、頭部を形成したボルト状のシャフトで前後に傾動自在に取付け、このシャフトの頭部とチルトブラケットとの間、または2枚の回転プレートの上部との間にスプリングワッシャを介在させ、回転プレートの側面エッジ部を板バネの弾性力により円筒ケースの内周面に摺動させて水平方向の回転トルクを発生させると共に、チルトブラケットをスプリングワッシャの弾性力により回転プレートの上部に摺動させてチルト方向の回転トルクを発生させるようにしたことを特徴とする2軸可動スタンド。
【請求項2】
底部を閉塞した円筒ケースの内側に、2枚の回転プレートを板バネを介在させて、回転プレートの下部側の側面エッジ部が前記円筒ケースの内周面に摺接するように、水平方向に回転自在に取付けると共に、前記回転プレートと板バネの上部を円筒ケースの上部に突設させ、板バネを介在させた回転プレートの上部両側に2個のチルトブラケットを、頭部を形成したボルト状のシャフトで前後に傾動自在に取付け、回転プレートの側面エッジ部を板バネの弾性力により円筒ケースの内周面に摺動させて水平方向の回転トルクを発生させると共に、チルトブラケットを板バネの弾性力により回転プレートの上部に摺動させてチルト方向の回転トルクを発生させるようにしたことを特徴とする2軸可動スタンド。
【請求項3】
回転プレートの下部を折曲して支持脚部を形成したことを特徴とする請求項1または2記載の2軸可動スタンド。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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