説明

2電極アーク溶接終了方法

【課題】消耗電極アーク溶接において、1トーチ内で2本のワイヤを送給して溶接するアーク溶接の終了方法の改善に関するものである。溶接速度が速いときに、ビード幅が減少したり、溶け込み不足が発生したり、ハンピングビードが生じる場合があり、溶接終了位置付近の溶接ビードが均一で美麗な外観を得ることができない。
【解決手段】1つの溶接トーチ内で先行ワイヤ及び後行ワイヤを送給して溶接する消耗2電極アーク溶接終了方法において、溶接終了に際して前記後行ワイヤの送給及び通電を停止し、前記後行ワイヤのアーク力によって窪んだ溶融池を埋める方向に前記溶接トーチを移動させて前記先行ワイヤがクレータ処理を行う消耗2電極アーク溶接終了方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消耗電極アーク溶接において、1トーチ内で2本の消耗電極(以下、ワイヤという)を送給して溶接するアーク溶接の終了方法の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種溶接構造物の建造において、薄板高速溶接又は厚板高溶着溶接を行うことによって作業能率の向上を図っているが、さらに向上させるために、図2に示すように、1本のトーチから2本のワイヤを送給する2電極1トーチ方式の消耗電極アーク溶接方法が採用されている。同図において、先行チップ1及び後行チップ2と被溶接物8との間に図示しない溶接用電源から電力を供給し、先行チップ1及び後行チップ2からそれぞれ送給される先行ワイヤ先端3a及び後行ワイヤ先端4aからアーク5及び6がそれぞれ発生している。ノズル10は先行チップ1及び後行チップ2を囲繞して、ノズル10の内部にシールドガス11を供給する。
【0003】
図2において、先行ワイヤ3から発生しているアーク5によって形成される溶融池7の溶融金属が表面張力によって後方へ流れていこうとするが、後行ワイヤ4から発生しているアーク力がこの後方へ流れようとする溶融金属を先行ワイヤ3から発生するアーク5の直下へ押し戻して、各溶接位置における溶融金属量を均一にしている。
【0004】
図3は前述した2電極1トーチ方式の溶接ロボットの一般的な構成を示す図である。同図において、先行チップ1及び後行チップ2を有する溶接トーチ14がマニピュレータ21の先端に取付けられ、先行チップ1に供給する先行ワイヤ溶接用電源装置23及び後行チップ2に供給する後行ワイヤ溶接用電源装置24が先行チップ1及び後行チップ2と被溶接物8との間にそれぞれ溶接用電力を供給する。先行ワイヤ送給装置25及び後行ワイヤ送給装置26が先行チップ1及び後行チップ2にそれぞれワイヤを送給する。ロボット制御装置27がマニピュレータ21及び先行ワイヤ溶接用電源装置23及び後行ワイヤ溶接用電源装置24を制御する。
尚、溶接方向を変更すると先行と後行とが入れ代わるので、先行チップ1、先行ワイヤ3、先行ワイヤ送給装置25及び先行ワイヤ溶接用電源装置23と後行チップ2、後行ワイヤ4、後行ワイヤ送給装置26及び後行ワイヤ溶接用電源装置24との各符号の説明の先行及び後行とが入れ代わる。
【0005】
[従来技術1]
従来から提案されている2電極1トーチ方式の溶接ロボットを使用した溶接終了方法(以下、従来技術1という)を、図4及び図5を参照して説明する。説明を簡略化するために、先行ワイヤ3及び後行ワイヤ4を送給する場合とする。図4は、従来技術1の2電極1トーチ方式の消耗電極アーク溶接の終了方法を説明する図であり、図5は図4に続く従来技術1の2電極1トーチ方式の消耗電極アーク溶接の終了方法を説明する図である。
【0006】
図4(A)は2電極1トーチ方式の消耗電極アーク溶接中の状態である。同図において、ノズル10から先行ワイヤ3及び後行ワイヤ4が突出し、図3に示した先行ワイヤ溶接用電源装置23及び後行ワイヤ溶接用電源装置24から先行ワイヤ3及び後行ワイヤ4と被溶接物8との間にそれぞれ電力が供給されて、先行ワイヤ先端3a及び後行ワイヤ先端4aからアーク5及び6がそれぞれ発生し、溶接ビード9が形成されている。
【0007】
そして、図4(B)に示すように、先行ワイヤ3が形成する溶接ビードの終端部である溶接終了位置P2に先行ワイヤ先端3aが達したときに、図3に示すロボット制御装置27が、先行ワイヤ先端3aが溶接終了位置P2に到達したことを判別して、先行ワイヤ溶接用電源装置23及び後行ワイヤ溶接用電源装置24にクレータ処理指令信号を出力する。
【0008】
ここで、クレータ処理を説明する。溶接ビード終端部においては、アーク直下の溶融池にアーク力によって窪んだ部分、いわゆるクレータが生じる。このクレータには、割れ、収縮孔等の欠陥が生じ易い。これを防止するために、クレータを小さくしたり無くす操作をクレータ処理という。一般的に溶接ビード終端部で溶接電流を連続的又は段階的に下げたり、溶接電流を断続するなどの方法が用いられる。
なお、上記の従来技術1のクレータ処理を本発明において、第2クレータ処理とする。
【0009】
その後、クレータ処理を終了したときに、図3に示すロボット制御装置27が、先行ワイヤ溶接用電源装置23及び後行ワイヤ溶接用電源装置24に溶接終了指令信号を入力されて、図4(C)に示すように、溶接を終了する。
【0010】
図5は、従来技術1の2電極1トーチ方式の消耗電極アーク溶接の終了方法による溶接ビード終端部の外観を示す図である。同図に示すように、先行ワイヤ3と後行ワイヤ4との両方がクレータ処理を行うために、クレータ処理跡15、16が2箇所生じる。したがって、溶接ビード外観が不良になるだけでなく、クレータ処理を行うと、2つのクレータ処理跡の間に窪み15aが生じて、溶接継手強度が弱くなる。また、高速溶接を行うときには、クレータ処理を行う手前の窪んだ溶融池がクレータ処理されずに凝固し溶融池跡13となるために、割れ、収縮孔等の欠陥が生じ易い。
【0011】
[従来技術2]
上記の不具合を解決するために特許文献1
(以下、従来技術2という)が提案されている。
図6は、従来技術2のタンデムアーク溶接を行うための装置を示す図である。同図において、先行チップ41及び後行チップ42と被溶接物2との間に先行ワイヤ溶接用電源装置44及び後行ワイヤ溶接用電源装置45が電力をそれぞれ供給する。先行ワイヤ送給装置46及び後行ワイヤ送給装置47が先行チップ41及び後行チップ42に先行ワイヤ48及び後行ワイヤ49をそれぞれ供給してアーク50及びアーク51を発生している。アーク50及びアーク51によって溶融池52が形成され、その後方に溶接ビード53が形成される。溶接制御装置54が溶接ロボット55の動作制御と先行ワイヤ溶接用電源装置44及び後行ワイヤ溶接用電源装置45の出力制御とを行う。
【0012】
図7は、従来技術2の溶接終了時の制御方法を説明するタイムチャートであり、同図(A)は先行ワイヤ通電電流の時間の経過tを示し、同図(B)は先行ワイヤ印加電圧の時間の経過tを示し、同図(C)は先行チップ41及び後行チップ42の移動速度の時間の経過tを示し、同図(D)は後行ワイヤ通電電流の時間の経過tを示し、同図(E)は後行ワイヤ印加電圧の時間の経過tを示す。
【0013】
図7に示す時刻t1において、先行チップ41が溶接終了位置P2に達した時、同図(A)に示すように、先行ワイヤ48の通電電流をI1からI2に減少させ、また、同図(B)に示すように、先行ワイヤ48の印加電圧をE1からE2に減少させる。
その後、待ち時間Td1経過後に先行ワイヤ48のアークを停止して溶融池を縮小させる。
【0014】
同図の時刻t2において、後行チップ42が溶接終了位置P2に達した時、同図(C)に示すように、先行チップ41及び後行チップ42の移動を停止する。そして、同図(D)に示すように、後行ワイヤ49の通電電流をI3からI4に減少させ、また、同図(E)に示すように、後行ワイヤ49の印加電圧をE3からE4に減少させる。
その後、待ち時間Td2経過後に後行ワイヤ49のアークを停止する。
【0015】
上記のアークを停止する前に減少させた通電電流I2及びI4は、通常の溶接電流I1及びI2のそれぞれ半分程度が適切である。また、アークを停止する前に減少させた印加電圧E2及びE4は、減少させた通電電流I2及びI4に適した値にそれぞれ設定すれば良い。
【0016】
このように溶接終了時に先行ワイヤ48及び後行ワイヤ49に通電する電流及び印加する電圧を減少させ、待ち時間後に停止させることによって、溶融金属の飛散防止、溶融池の安定凝固が図れるばかりでなく、凹凸やピットや割れなど溶接欠陥のない良好な溶接終了部を得ることができることが開示されているが、下記に示すような課題を有している。
【0017】
【特許文献1】特開2001−113373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述した従来技術2においては、図7に示すように、先行ワイヤ48に通電する電流及び電圧を減少させた後に、後行ワイヤ49のみによって溶接を行っている。この時の溶接速度は、同図(C)に示すように、高速溶接を行う速度である。したがって、先行ワイヤ48に通電する電流及び電圧を減少させた後、後行ワイヤ49のアークのみで溶接を行うには先行チップ41及び後行チップ42の移動速度が早過ぎるために、溶接ビード幅が減少したり、溶け込み不足が発生したり、ハンピングビードが生じる場合があり、溶接終了位置付近の溶接ビードが均一で美麗な外観を得ることができない。
また、溶接速度が2[m/分]を超える高速溶接では、均一な溶接ビードを得るためには、先行ワイヤ48に通電する電流と後行ワイヤ49に通電する電流との比が2対1程度である。したがって、高速溶接の速度を維持したままで先行ワイヤ48に通電する電流を減少して停止させると、先行ワイヤ48と後行ワイヤ49とに通電する電流比が適切比率でなくなり、高速溶接を行うには後行ワイヤ49のアーク力が過大になり、このアーク力が溶融池を吹き飛ばして溶接ビードが不均一になり、溶接欠陥が発生する。
【0019】
さらに、従来の技術2においては、例えば、図8に示すように、被溶接物8の形状が箱形で溶接終了位置P2の溶接方向の前面に壁が有る底板の隅肉溶接を行う場合、先行チップ41が溶接終了位置P2に達して先行チップ41が壁に当たり、先行チップ41及び後行チップ42を溶接方向に移動させることができないために、従来技術2のタンデムアーク溶接の制御方法を実施することができない。図8は、被溶接物8の形状が箱形で、底板の隅肉溶接を行う場合を説明するために図である。したがって、後行チップ42が溶接終了位置P2に達することができないために、図9に示すように、溶接終了位置P2近傍の溶接が先行ワイヤ48のみによる溶接になるために、溶接終了位置P2近傍の溶接ビード9aが細くなったり、溶接ビード9が不均一になり、溶接欠陥が発生する。図9は、従来技術2によって被溶接物8の形状が箱形で、底板の隅肉溶接を行う場合の溶接終了位置P2における溶接ビード9が不均一になることを説明するための図である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、1つの溶接トーチ内で先行ワイヤ及び後行ワイヤを送給して溶接する消耗2電極アーク溶接終了方法において、
溶接終了に際して前記後行ワイヤの送給及び通電を停止し、
前記後行ワイヤのアーク力によって窪んだ溶融池を埋める方向に前記溶接トーチを移動させて前記先行ワイヤがクレータ処理を行う、ことを特徴とする消耗2電極アーク溶接終了方法である。
【0021】
第2の発明は、1つの溶接トーチ内で先行ワイヤ及び後行ワイヤを送給して溶接する消耗2電極アーク溶接終了方法において、
溶接終了に際して前記後行ワイヤの送給及び通電を停止し、
前記溶接トーチを溶接方向とは逆方向に移動させて前記先行ワイヤがクレータ処理を行う、ことを特徴とする消耗2電極アーク溶接終了方法である。
【0022】
第3の発明は、1つの溶接トーチ内で先行ワイヤ及び後行ワイヤを送給して溶接する消耗2電極アーク溶接終了方法において、
溶接終了に際して前記後行ワイヤの送給及び通電を停止し、
前記溶接トーチを溶接方向とは逆方向に移動させて前記先行ワイヤが前記後行ワイヤのアーク力によって窪んだ溶融池を埋めながらクレータ処理を行う、ことを特徴とする消耗2電極アーク溶接終了方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、2電極1トーチ方式の消耗電極アーク溶接の終了方法において、溶接終了位置P2で後行ワイヤ4の送給及び通電を停止して、先行ワイヤ3のみでクレータ処理を行うので、クレータ処理跡が一箇所だけになり、溶接終了位置においても、溶接ビードの外観が良好になり、溶接継手強度も確保することができる。また、高速溶接を行うときに、クレータ処理を行う手前の窪んだ溶融池もクレータ処理を行うことができるので、溶接終了位置に溶融池跡が生じることがなく、割れ、収縮孔等の欠陥が生じることがない。
さらに、被溶接物8の形状が箱形で溶接終了位置P2の溶接方向の前面に壁が有る底板の隅肉溶接を行う場合においても、均一な溶接ビード9を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本出願に係る発明の特徴を最もよく表す図である。後述する図10と同じなので、説明は図10で後述する。
1トーチ内で2本のワイヤを送給して溶接する溶接ロボットにおいて、被溶接物8の各溶接区間における予め定めた(1)溶接開始パラメータと(2)溶接終了パラメータとを記憶させている作業プログラムファイル出力回路29と、予め定めた「先行ワイヤ3又は後行ワイヤ4の標準突出し長さ」L1及び「標準突出し長さのワイヤ先端間距離」L2から成る電極パラメータを記憶させている電極パラメータ出力回路31と、(1)作業プログラムファイル出力回路29の出力信号が入力されて、溶接開始位置から溶接終了位置に溶接トーチを移動させるためのマニピュレータ21の各関節角度を算出して(後述するサーボ制御回路33に)各関節角度の算出値を出力し、(2)溶接開始位置に溶接トーチが達したときに、先行ワイヤ溶接開始指令信号S1を(後述する先行ワイヤ溶接条件出力回路35に)出力し、後行ワイヤ溶接開始指令信号S2を(後述する後行ワイヤ溶接条件出力回路36に)出力し、通常の溶接速度を(後述するサーボ制御回路33に)出力し、(3)先行チップ1が溶接終了位置P2に達したときに、後行ワイヤ溶接終了処理指令信号S10を(後述する後行ワイヤ溶接条件出力回路36に)出力し、第1クレータ処理指令信号S11を(後述する先行ワイヤ溶接条件出力回路35に)出力し、通常の溶接速度よりも遅い速度の第1クレータ処理速度を(後述するサーボ制御回路33に)出力し、(4)先行チップ1が第2クレータ処理位置P3に達したときに、第2クレータ処理指令信号S13を(後述する先行ワイヤ溶接条件出力回路36に)出力する溶接トーチ移動経路算出回路32と、(1)溶接トーチ移動経路算出回路32から溶接トーチを移動させるためのマニピュレータ21の各関節角度の算出値が入力されてマニピュレータ21を制御し、(2)第1クレータ処理速度が入力されたときに溶接トーチを溶接方向と逆方向に移動し、(3)先行チップ1が第2クレータ処理位置P3に達したときに、マニピュレータ21を停止するサーボ制御回路33と、(1)先行ワイヤ溶接開始指令信号S1が入力されたときに、先行ワイヤ3の溶接電流の通電を指令する信号を(後述する先行ワイヤ溶接用電源装置23に)出力し、(2)先行ワイヤ先端3aにアーク5が発生したときに、先行ワイヤ溶接開始完了信号S3を溶接トーチ移動経路算出回路32に出力し、(3)第1クレータ処理指令信号S11が入力されたときに、第1クレータ処理電流値及び第1クレータ処理電圧値を(後述する先行ワイヤ溶接用電源装置23に)出力し、(4)第2クレータ処理指令信号S13が入力されたときに第2クレータ処理電流値及び第2クレータ処理電圧値を(後述する先行ワイヤ溶接用電源装置23に)出力し、予め定めた第2クレータ処理時間の計測を開始し、(5)第2クレータ処理時間の計測を満了したときに、先行ワイヤ3のアンチスチック処理及び溶着解除処理を行う指令信号を(後述する先行ワイヤ溶接用電源装置23に)出力し、先行ワイヤ3の溶着無しと判別したときに、先行ワイヤ溶接終了処理完了信号S14を溶接トーチ移動経路算出回路32に出力する先行ワイヤ溶接条件出力回路35と、先行ワイヤ溶接条件出力回路35から先行ワイヤ3の溶接電流の通電を指令する信号が入力されたときに、先行ワイヤ3に溶接電流を通電し、先行ワイヤ3のアンチスチック処理及び溶着解除処理を行う指令信号が入力されたときに先行ワイヤ3のアンチスチック処理及び溶着解除処理を行う先行ワイヤ溶接用電源装置23と、(1)後行ワイヤ溶接開始指令信号S2が入力されたときに、後行ワイヤ4の溶接電流の通電を指令する信号を(後述する後行ワイヤ溶接用電源装置24に)出力し、(2)後行ワイヤ先端4aにアーク6が発生したときに、後行ワイヤ溶接開始完了信号S4を溶接トーチ移動経路算出回路32に出力し、(3)後行ワイヤ溶接終了処理指令信号S10が入力されたときに、後行ワイヤ4のアンチスチック処理及び溶着解除処理を行う指令信号を(後述する後行ワイヤ溶接用電源装置24に)出力し、後行ワイヤ4の溶着無しと判別したときに、溶接トーチ移動経路算出回路32に後行ワイヤ溶接終了処理完了信号S12を出力する後行ワイヤ溶接条件出力回路36と、後行ワイヤ溶接条件出力回路36から後行ワイヤ4の溶接電流の通電を指令する信号が入力されたときに、後行ワイヤ4に溶接電流を通電し、後行ワイヤ4のアンチスチック処理及び溶着解除処理を行う指令信号が入力されたときに後行ワイヤ4のアンチスチック処理及び溶着解除処理を行う後行ワイヤ溶接用電源装置24とを備えた溶接ロボットである。
【実施例1】
【0025】
以下、実施例1において溶接終了方法について説明し、次に実施例2においてロボット制御装置27による溶接終了制御方法及び溶接ロボットについて説明する。
【0026】
[実施例1]
図10は、本発明の消耗2電極アーク溶接終了方法の実施例を説明する図である。同図(A)は2電極1トーチ方式の消耗電極アーク溶接中の状態であって、図4(A)に示す同一の機能に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0027】
そして、図10(B)に示すように、先行ワイヤ先端3aが溶接終了位置P2に達したときに、図3に示すロボット制御装置27が、先行ワイヤ先端3aが溶接終了位置P2に到達したことを判別して、後行ワイヤ溶接用電源装置24に溶接終了指令信号を出力し、先行ワイヤ溶接用電源装置23に第1クレータ処理指令信号を出力する。図10(B)に示されたL2は、標準突出し長さのワイヤ先端間距離であって、後述する後行ワイヤ第1クレータ処理距離D1として使用することができる。
その後、同図(C)に示すように、溶接トーチが溶接方向とは逆方向に第1クレータ処理距離D1、例えば、ワイヤ先端間距離L2を移動しながら先行ワイヤ3が第1クレータ処理を行う。
【0028】
ここで第1クレータ処理とは、後行ワイヤ4の送給及び通電を停止して、先行ワイヤ3のみに通電して溶接トーチを溶接方向と逆方向に移動させながら溶接終了処理を行うことである。第1クレータ処理期間の溶接電流値、溶接電圧値及び溶接速度を任意に設定でき、通常、溶接トーチが溶接終了位置に達するまでの溶接(以下、通常の溶接という)の溶接電流値、溶接電圧値及び溶接速度よりも低い値で行う。
【0029】
図11は、実施例1の溶接終了方法において図10に続く溶接終了方法を説明する図である。図10(C)に続く図11(A)乃至図11(C)について説明する。そして、溶接トーチが溶接方向とは逆方向に第1クレータ処理距離D1、例えば、ワイヤ先端間距離L2を移動し終わると溶接トーチが停止して、図3に示すロボット制御装置27が、先行ワイヤ溶接用電源装置23に第2クレータ処理指令信号を出力し、図11(A)に示すように、先行ワイヤ3が第2クレータ処理を行う。
【0030】
ここで、第2クレータ処理とは、先行ワイヤ3が第1クレータ処理を行った後に、溶接トーチを停止した状態でクレータを処理することであって、溶接電流値及び溶接電圧値を任意に設定できる。従来技術1で説明したクレータ処理に該当する。
【0031】
そして、先行ワイヤ3が第2クレータ処理を終了したときに、図3に示すロボット制御装置27が、先行ワイヤ溶接用電源装置23に溶接終了指令信号を出力し、図11(B)に示すように溶接を終了する。
【0032】
上記のように実施例1は、第2クレータ処理で先行ワイヤ3のみが従来技術1で説明したクレータ処理を行うので、図11(C)に示すように、クレータ処理跡15が一つしか生じない。また、図10(C)に示す第1クレータ処理中の溶接トーチの移動速度を通常の溶接の速度よりも減速させているので、溶接トーチを移動させながら先行ワイヤ3によって発生する溶融金属がアーク力によってトーチの移動方向へ押されて、この溶融金属が後行ワイヤ4のアーク力によって窪んだ溶融池を埋めることができ、図5に示した溶融池跡13が生じることがなく、溶接ビードの外観が良好である。
【0033】
さらに、図8に示した被溶接物8の形状が箱形で溶接終了位置P2の溶接方向の前面に壁が有る底板の隅肉溶接を行う場合においても、先行ワイヤ3が溶接終了位置P2に達した後、後行ワイヤ4の通電を停止した後に、先行ワイヤ3及び後行ワイヤ4を溶接方向と逆方向に移動させて先行ワイヤ3が第1クレータ処理を行い、先行ワイヤ3及び後行ワイヤ4が第1クレータ処理距離D1移動した後、先行ワイヤ3が第2クレータ処理を行うので、図12に示すように均一な溶接ビード9を得ることができる。図12は、実施例1の溶接終了方法によって被溶接物8の形状が箱形で、底板の隅肉溶接を行う場合を説明するための図である。
【0034】
上記の実施例1において、第1クレータ処理距離D1を「標準突出し長さのワイヤ先端間距離」L2とすることができる。また、第1クレータ処理距離D1を第1クレータ処理移動速度及び第1クレータ処理移動時間から算出することができる。さらに、第1クレータ処理距離D1を「標準突出し長さのワイヤ先端間距離」L2の百分率で算出することができる。
【0035】
[図13の説明]
図13は、本発明の実施例1の先行ワイヤ3がクレータ処理をする場合の溶接開始位置P1から第1クレータ処理開始位置及び第2クレータ処理位置までの溶接トーチの移動距離を説明するための図である。
同図において、溶接開始時に後行ワイヤ4が形成する溶接ビードの始端部である「溶接開始位置」P1から先行ワイヤ3が形成する溶接ビードの終端部である「溶接終了位置」P2までの距離である全溶接トーチ移動距離L3を算出する。ここで、「溶接終了位置」と「第1クレータ処理開始位置」とが同じ位置になる。そして、後行チップ2の位置が溶接開始位置P1から先行チップ1が溶接終了位置P2(第1クレータ処理開始位置)に達するまでは、通常の溶接速度で溶接トーチを移動させる。そして、先行チップ1が溶接終了位置P2(第1クレータ処理開始位置)から第1クレータ処理距離D1だけ溶接方向と逆方向に移動した位置である第2クレータ処理位置P3までは、通常の溶接速度よりも減速させた第1クレータ処理速度で溶接トーチを移動させる。
【0036】
実施例1の溶接終了方法は、図13に示すように、後行ワイヤ4の送給及び通電を停止して、先行ワイヤ3が第1及び第2クレータ処理を行う溶接終了方法であって、先行チップ1が溶接終了位置P2に到達したときに後行ワイヤ4の送給及び通電を停止すると共に、溶接トーチを溶接方向と逆方向に移動させながら通常の溶接速度よりも遅い第1クレータ処理速度で第1クレータ処理電流値及び第1クレータ処理電圧値で先行ワイヤ3が第1クレータ処理をし、
次に、先行ワイヤ3が上記第2クレータ処理位置P3に達したときに溶接トーチを停止し、第2クレータ処理電流値及び第2クレータ処理電圧値によって、第2クレータ処理を開始すると共に第2クレータ処理時間の計測を開始し、予め定めた第2クレータ処理時間の計測を満了したときに第2クレータ処理を終了する消耗2電極アーク溶接終了方法である。
【0037】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2について説明する。
[図14の説明]
図14は、実施例2に使用する溶接線WLをX軸としノズル10の中心軸をY軸としたときに、ノズル10の中心軸に対して先行チップ1及び後行チップ2に角度を設けて配置したときの先行ワイヤ先端3aと後行ワイヤ先端4aとの位置関係を示す図である。
ノズル10の中心軸のY軸に対して先行チップ1及び後行チップ2に角度を設けて配置した図14において、(1)先行チップ角度αは、先行チップ1の中心軸がノズルの中心Y軸に前進角α傾斜した角度であり、(2)後行チップ角度βは、後行チップ2の中心軸がノズルの中心Y軸に後退角β傾斜した角度であり、(3)「先行ワイヤ3又は後行ワイヤ4の標準突出し長さ」L1(例えば20[mm])は、先行チップ1又は後行チップ2の先端から先行ワイヤ3又は後行ワイヤ4を予め定めた長さ突出したときの先行ワイヤ3又は後行ワイヤ4の先端位置(ツールセンタ位置)までの長さであり、(4)「標準突出し長さのワイヤ先端間距離」L2は、先行ワイヤ3又は後行ワイヤ4の突出し長さが標準突出し長さL1のときの先行ワイヤと後行ワイヤとのワイヤ先端間距離であって、これらは予め定めた設定値である。
【0038】
[図15の説明]
図15は、本発明の溶接終了方法を図3に示す溶接ロボットに適用した場合のロボット制御装置27のブロック図である。
図15において、作業プログラムファイル出力回路29には、被溶接物8の各溶接区間における予め定めた(1)溶接開始パラメータと(2)溶接終了パラメータとを記憶させている。
ここで、上記の「溶接開始パラメータ」とは、各溶接区間の溶接開始位置での(1)先行ワイヤ3及び後行ワイヤ4の溶接電流値及び溶接電圧値と(2)通常の溶接速度とである。
また、上記の「溶接終了パラメータ」とは、先行ワイヤ3が行う第1及び第2クレータ処理の条件であって、(1)第1クレータ処理電流値及び第1クレータ処理電圧値と(2)第1クレータ処理期間の溶接トーチの溶接方向と逆方向の移動速度及び溶接トーチの移動距離(図13に示すD1)と(3)第2クレータ処理電流値及び第2クレータ処理電圧値と(4)第2クレータ処理時間とから成るパラメータである。
【0039】
また、上記の実施例2における第1クレータ処理距離D1は、例えば、(1)「標準突出し長さのワイヤ先端間距離」L2に設定してもよい。または、(2)後行ワイヤ及び第1クレータ処理期間の溶接トーチの移動時間を設定してもよい。この場合、(第1クレータ処理距離)D1=(第1クレータ処理期間の溶接トーチの移動速度)×(第1クレータ処理期間の溶接トーチの移動時間)で求められる。または、(3)「標準突出し長さのワイヤ先端間距離」L2の百分率で指定して、(第1クレータ処理距離)D1/L2[%]で設定してもよい。
【0040】
また、発明者らの実験によると、従来技術1の図5に示すように溶融池跡13が形成される程度に溶融池が窪んでいるとき、先行ワイヤの溶融金属が窪んだ溶融池を埋めるために、先行チップ1を「標準突出し長さのワイヤ先端間距離」L2よりも溶接方向と逆方向に移動させる必要がある。したがって、図13に示すように、第1クレータ処理距離D1は、「標準突出し長さのワイヤ先端間距離」L2よりも長くする。
【0041】
図15に示す電極パラメータ出力回路31には、図14に示す予め定めた(1)先行チップ1又は後行チップ2の先端から先行ワイヤ3又は後行ワイヤ4を予め定めた長さ突出したときの先行ワイヤ3又は後行ワイヤ4の先端位置(ツールセンタ位置)までの長さである「先行ワイヤ3又は後行ワイヤ4の標準突出し長さ」L1(例えば20[mm])及び(2)先行ワイヤ3又は後行ワイヤ4の突出し長さが標準突出し長さL1のときの先行ワイヤと後行ワイヤとのワイヤ先端間距離である「標準突出し長さのワイヤ先端間距離」L2から成る電極パラメータを記憶させている。
【0042】
また、溶接トーチ移動経路算出回路32は、作業プログラムファイル出力回路29の出力信号が入力されて、溶接開始位置から溶接終了位置に溶接トーチを移動させるためのマニピュレータ21の各関節角度を算出して、後述するサーボ制御回路33に各関節角度の算出値を出力する。
【0043】
サーボ制御回路33は、上記溶接トーチ移動経路算出回路32から溶接トーチを移動させるためのマニピュレータ21の各関節角度の算出値が入力されてマニピュレータ21を制御する。
【0044】
先行ワイヤ溶接条件出力回路35は、先行チップ1が予め定めた溶接開始位置に達して、溶接トーチ移動経路算出回路32から先行ワイヤ3に溶接電流の通電を指令する先行ワイヤ溶接開始指令信号S1が入力されたときに、上記作業プログラムファイル出力回路29が出力する先行ワイヤ3の溶接電流値の溶接電流の通電を指令する信号を出力する。
先行ワイヤ溶接用電源装置23は、先行ワイヤ溶接条件出力回路35から先行ワイヤの溶接電流の通電を指令する信号が入力されたときに先行ワイヤ3に溶接電流を通電する。
【0045】
後行ワイヤ溶接条件出力回路36は、後行チップ2が予め定めた溶接開始位置に達して、溶接トーチ移動経路算出回路32から後行ワイヤ4に溶接電流の通電を指令する後行ワイヤ溶接開始指令信号S2が入力されたときに、上記作業プログラムファイル出力回路29が出力する後行ワイヤ4の溶接電流値の溶接電流の通電を指令する信号を出力する。
後行ワイヤ溶接用電源装置24は、後行ワイヤ溶接条件出力回路36から後行ワイヤの溶接電流の通電を指令する信号が入力されたときに後行ワイヤ4に溶接電流を通電する。
【0046】
[実施例2]
実施例2は、図13及び図17及び図18に示すように、溶接終了位置P2で後行ワイヤ4の送給及び通電を停止すると共に、溶接トーチを溶接方向と逆方向に移動させながら先行ワイヤ3が第1クレータ処理を行い、続いて、溶接トーチを略停止させて第2クレータ処理を行う溶接終了制御方法及び溶接用ロボットである。
実施例2の溶接終了制御方法は、図13に示すように、先行チップ1が溶接終了位置P2に達したときに後行ワイヤ4の送給及び通電を停止すると共に、溶接トーチを溶接方向と逆方向に移動させながら通常の溶接速度よりも遅い第1クレータ処理速度で第1クレータ処理電流値及び後行ワイヤ第1クレータ処理電圧値で先行ワイヤ3が第1クレータ処理を行い、次に、先行ワイヤ3が上記第2クレータ処理位置P3に達したときに溶接トーチを停止し、第2クレータ処理電流値及び第2クレータ処理電圧値によって、第2クレータ処理を開始すると共に第2クレータ処理時間の計測を開始し、予め定めた第2クレータ処理時間の計測を満了したときに第2クレータ処理を終了する消耗2電極アーク溶接終了制御方法である。
【0047】
次に、実施例2のロボット制御装置27の動作を図16の信号のタイムチャートと図17及び図18に示すフローチャートとを参照して説明する。
[図16の説明]
図16は実施例2のロボット制御装置の溶接トーチ移動経路算出回路32が出力する信号と先行チップ1及び後行チップ2移動速度とを示す図である。同図において、同図(A)は先行ワイヤ溶接開始指令信号S1の時間の経過tを示し、同図(B)は第1クレータ処理指令信号S11の時間の経過tを示し、同図(C)は第2クレータ処理指令信号S13の時間の経過tを示し、同図(D)は先行チップ1及び後行チップ2移動速度の時間の経過tを示し、同図(E)は後行ワイヤ溶接開始指令信号S2の時間の経過tを示し、同図(F)は後行ワイヤ溶接終了処理指令信号S10の時間の経過tを示している。ここで、説明を簡単にするために、各溶接区間の溶接開始位置と溶接終了位置との経路は1本の直線で教示されていることとする。
【0048】
[図17及び図18の説明]
図17及び図18は、実施例2のロボット制御装置27の動作を示すフローチャートである。図17に示すステップST1「電極パラメータ設定ステップ」において、電極パラメータ出力回路31に(1)先行ワイヤ3又は後行ワイヤ4の標準突出し長さL1と(2)先行ワイヤ3及び後行ワイヤ4の「標準突出し長さのワイヤ先端間距離」L2とを含む電極パラメータを設定する。
【0049】
ステップST2「作業プログラムファイル設定ステップ」において、作業プログラムファイル出力回路29に被溶接物8の各溶接区間における予め定めた(1)溶接開始パラメータと(2)溶接終了パラメータとを設定する。
【0050】
図17に示すステップST3「電極パラメータ及びクレータ処理作業プログラムファイル入力ステップ」及び図16に示す時刻t1において、溶接ロボットシステムを起動し、電極パラメータ出力回路31に設定した電極パラメータと、作業プログラムファイル出力回路29に設定した被溶接物8の各溶接区間における予め定めた溶接開始位置での通常の溶接速度を溶接トーチ移動経路算出回路32に出力する。
また、被溶接物8の各溶接区間における予め定めた(1)各溶接区間の溶接開始位置での先行ワイヤ3の溶接電流値及び溶接電圧値と(2)第1クレータ処理電流値及び第1クレータ処理電圧値と(3)第2クレータ処理電流値及び第2クレータ処理電圧値とを先行ワイヤ溶接条件出力回路35に出力し、被溶接物8の各溶接区間における予め定めた(1)各溶接区間の溶接開始位置での後行ワイヤ4の溶接電流値及び溶接電圧値を後行ワイヤ溶接条件出力回路36に出力する。
【0051】
図17に示すステップST4「溶接開始位置溶接トーチ移動経路算出、出力ステップ」において、溶接トーチ移動経路算出回路32が、溶接開始位置に溶接トーチを移動させるためのマニピュレータ21の各関節角度を算出して、上記各関節角度の算出値をサーボ制御回路33に出力する。
【0052】
図17に示すステップST5「先行ワイヤ及び後行ワイヤ溶接開始信号出力ステップ」及び図16に示す時刻t2において、溶接開始位置に溶接トーチが移動して、ステップST4に記載した溶接開始位置の関節角度の算出値に達したときに、溶接トーチ移動経路算出回路32が、先行ワイヤ溶接開始指令信号S1を先行ワイヤ溶接条件出力回路35に出力し、後行ワイヤ溶接開始指令信号S2を後行ワイヤ溶接条件出力回路36に出力する。
【0053】
図17に示すステップST6「先行ワイヤ及び後行ワイヤ通電開始ステップ」において、先行ワイヤ溶接開始指令信号S1が先行ワイヤ溶接条件出力回路35に入力され、後行ワイヤ溶接開始指令信号S2が後行ワイヤ溶接条件出力回路36に入力されたときに、これらの先行ワイヤ溶接条件出力回路35及び後行ワイヤ溶接条件出力回路36が、溶接開始位置での先行ワイヤ3及び後行ワイヤ4にそれぞれ供給する溶接電流値と溶接電圧値とを先行ワイヤ溶接用電源装置23及び後行ワイヤ溶接用電源装置24に出力して先行ワイヤ3及び後行ワイヤ4をそれぞれ通電する。
【0054】
図17に示すステップST7「溶接終了位置溶接トーチ移動経路算出ステップ」において、先行ワイヤ溶接開始指令信号S1が先行ワイヤ溶接条件出力回路35に入力され、後行ワイヤ溶接開始指令信号S2が後行ワイヤ溶接条件出力回路36に入力された後に、溶接トーチ移動経路算出回路32が、作業プログラムファイル出力回路29から(1)第1クレータ処理期間の溶接トーチの移動速度である第1クレータ処理速度及び溶接方向と逆方向に溶接トーチが移動する第1クレータ処理距離(図13に示すD1)と(2)第2クレータ処理時間とが入力されて、溶接終了位置に溶接トーチを移動させるためのマニピュレータ21の各関節角度を算出する。
【0055】
ステップST8「先行ワイヤ及び後行ワイヤ溶接開始完了信号出力ステップ」において、先行ワイヤ先端3a及び後行ワイヤ先端4aにアーク5及びアーク6がそれぞれ発生したときに、先行ワイヤ溶接条件出力回路35及び後行ワイヤ溶接条件出力回路36が先行ワイヤ溶接開始完了信号S3及び後行ワイヤ溶接開始完了信号S4を溶接トーチ移動経路算出回路32にそれぞれ出力する。
【0056】
図18に示すステップST9「第1クレータ処理開始位置溶接トーチ移動ステップ」において、溶接トーチ移動経路算出回路32が、先行ワイヤ溶接開始完了信号S3及び後行ワイヤ溶接開始完了信号S4が入力されたときに、溶接トーチ移動経路算出回路32が図17に示すステップST7において算出した溶接終了位置P2(第1クレータ処理開始位置)に先行チップ4を移動させるためのマニピュレータ21の各関節角度をサーボ制御回路33に出力する。この結果、マニピュレータ21は予め設定された通常の溶接速度で直線動作を開始し、通常の溶接を行う。
【0057】
図18に示すステップST10「第1クレータ処理指令信号出力ステップ」及び図16に示す時刻t3において、先行チップ1が溶接終了位置P2(第1クレータ処理開始位置)に移動して、図17に示すステップST7に記載した溶接終了位置P2(第1クレータ処理開始位置)の関節角度の算出値に達したときに、溶接トーチ移動経路算出回路32が、後行ワイヤ溶接終了処理指令信号S10を後行ワイヤ溶接条件出力回路36に出力し、第1クレータ処理指令信号S11を先行ワイヤ溶接条件出力回路35に出力する。
また、溶接トーチ移動経路算出回路32が、第1クレータ処理速度をサーボ制御回路33に出力し、このサーボ制御回路33が溶接トーチを溶接方向と逆方向に移動させる。
【0058】
図18に示すステップST11「後行ワイヤ溶接終了処理ステップ」及び図16に示す時刻t3において、後行ワイヤ溶接条件出力回路36が溶接トーチ移動経路算出回路32から後行ワイヤ溶接終了処理指令信号S10が入力されたときに、後行ワイヤ溶接用電源装置24がアンチスチック処理及び溶着解除処理を行う。そして、アンチスチック処理及び溶着解除処理終了後、後行ワイヤ溶接条件出力回路36が、溶着無しと判別したときに、溶接トーチ移動経路算出回路32に後行ワイヤ溶接終了処理完了信号S12を出力する。
ここで、アンチスチック処理とは、ワイヤ送給装置に停止信号が入力された後も、モータは慣性力によってワイヤを送給する。したがって、ワイヤが溶融池に突っ込み、溶融池が冷却するとワイヤ先端が溶着金属に固着(スチック)してしまう。このスチックを防ぐために、ワイヤ送給装置に停止信号が入力された後に、溶接電流値よりも小さい電流を通電することによってワイヤの溶融を継続させて、ワイヤが溶融池に突っ込むことを防止する処理である。
また、溶着解除処理とは、ワイヤに通電を終了した後、ワイヤの先端が被溶接物に溶着しているかどうかを、例えば、短絡検出回路又は溶接電流リレーで検出する。そして、溶着を検出したときはワイヤの先端と被溶接物との間に無負荷電圧を印加して通電し、ワイヤを燃え上がらせて溶着を解除する処理である。
【0059】
図18に示すステップST12「第1クレータ処理ステップ」において、先行ワイヤ溶接条件出力回路35が第1クレータ処理指令信号S11が入力されたときに、この先行ワイヤ溶接条件出力回路35が、第1クレータ処理電流値及び第1クレータ処理電圧値を先行ワイヤ溶接用電源装置23に出力する。
【0060】
図18に示すステップST13「第2クレータ処理開始ステップ」及び図16に示す時刻t4において、溶接トーチが溶接方向と逆方向に移動して、図17に示すステップST7で算出した図13に示す第2クレータ処理位置P3の関節角度の算出値に達したときに、サーボ制御回路33がマニピュレータを停止して、溶接トーチ移動経路算出回路32が、第2クレータ処理指令信号S13を先行ワイヤ溶接条件出力回路35に出力する。
【0061】
図18に示すステップST14「第2クレータ処理ステップ」において、先行ワイヤ溶接条件出力回路35が第2クレータ処理指令信号S13が入力されたときに、この先行ワイヤ溶接条件出力回路35が、第2クレータ処理電流値及び第2クレータ処理電圧値を先行ワイヤ溶接用電源装置23に出力し、第2クレータ処理時間の計測を開始する。
【0062】
図18に示すステップST15「先行ワイヤ溶接終了処理ステップ」において、先行ワイヤ溶接条件出力回路35が第2クレータ処理時間の計測を満了したときに、先行ワイヤ溶接用電源装置23が先行ワイヤのアンチスチック処理及び溶着解除処理を行う。そして、アンチスチック処理及び溶着解除処理終了後、先行ワイヤ溶接条件出力回路35が先行ワイヤ3の溶着無しと判別したときに、溶接トーチ移動経路算出回路32に先行ワイヤ溶接終了処理完了信号S14を出力する。
【0063】
図18に示すステップST16「次溶接区間溶接ステップ」において、溶接トーチ移動経路算出回路32が先行ワイヤ溶接終了処理完了信号S14及び後行ワイヤ溶接終了処理完了信号S12が入力されたときに、図17に示すステップST4乃至図18に示すステップST15を繰り返して次の溶接区間の溶接を行い、作業プログラムファイル出力回路29に設定された全溶接区間の溶接を終了したときに溶接ロボットの起動を停止する。
【0064】
以上説明した実施例2の溶接終了制御方法を要約すると下記のとおりである。実施例2の溶接終了制御方法は、電極パラメータ出力回路31に(1)先行ワイヤ3又は後行ワイヤ4の標準突出し長さL1と(2)先行ワイヤ3及び後行ワイヤ4の「標準突出し長さのワイヤ先端間距離」L2とを含む電極パラメータを設定する「電極パラメータ設定ステップ」(ステップST1)と、
作業プログラムファイル出力回路29に被溶接物8の各溶接区間における予め定めた(1)溶接開始パラメータと(2)溶接終了パラメータとを設定する「作業プログラムファイル設定ステップ」(ステップST2)と、
溶接ロボットシステムを起動し、電極パラメータ出力回路31に設定した電極パラメータと、作業プログラムファイル出力回路29に設定した被溶接物8の各溶接区間における予め定めた溶接開始位置での通常の溶接速度を溶接トーチ移動経路算出回路32に出力し、被溶接物8の各溶接区間における予め定めた(1)各溶接区間の溶接開始位置での先行ワイヤ3の溶接電流値及び溶接電圧値と(2)第1クレータ処理電流値及び第1クレータ処理電圧値と(3)第2クレータ処理電流値及び第2クレータ処理電圧値とを先行ワイヤ溶接条件出力回路35に出力し、被溶接物8の各溶接区間における予め定めた(1)各溶接区間の溶接開始位置での後行ワイヤ4の溶接電流値及び溶接電圧値を後行ワイヤ溶接条件出力回路36に出力する「電極パラメータ及びクレータ処理作業プログラムファイル入力ステップ」(ステップST3)と、
溶接トーチ移動経路算出回路32が、溶接開始位置に溶接トーチを移動させるためのマニピュレータ21の各関節角度を算出して、各関節角度の算出値をサーボ制御回路33に出力する「溶接開始位置溶接トーチ移動経路算出、出力ステップ」(ステップST4)と、
溶接開始位置に溶接トーチが達したときに、溶接トーチ移動経路算出回路32が、先行ワイヤ溶接開始指令信号S1を先行ワイヤ溶接条件出力回路35に出力し、後行ワイヤ溶接開始指令信号S2を後行ワイヤ溶接条件出力回路36に出力する「先行ワイヤ及び後行ワイヤ溶接開始完了信号出力ステップ」(ステップST5)と、
先行ワイヤ溶接開始指令信号S1が先行ワイヤ溶接条件出力回路35に入力され、後行ワイヤ溶接開始指令信号S2が後行ワイヤ溶接条件出力回路36に入力されたときに、先行ワイヤ溶接条件出力回路35及び後行ワイヤ溶接条件出力回路36が、溶接開始位置での先行ワイヤ3及び後行ワイヤ4にそれぞれ供給する溶接電流値と溶接電圧値とを先行ワイヤ溶接用電源装置23及び後行ワイヤ溶接用電源装置24に出力して先行ワイヤ3及び後行ワイヤ4をそれぞれ通電し、溶接トーチ移動経路算出回路32が、通常の溶接速度をサーボ制御回路33に出力する「先行ワイヤ及び後行ワイヤ通電開始ステップ」(ステップST6)と、
先行ワイヤ溶接開始指令信号S1が先行ワイヤ溶接条件出力回路35に入力され、後行ワイヤ溶接開始指令信号S2が後行ワイヤ溶接条件出力回路36に入力された後に、溶接トーチ移動経路算出回路32が、作業プログラムファイル出力回路29から(1)第1クレータ処理期間の溶接トーチの移動速度で通常の溶接速度よりも遅い第1クレータ処理速度及び溶接方向と逆方向に溶接トーチが移動する第1クレータ処理距離D1と(2)第2クレータ処理時間とが入力されて、溶接終了位置に溶接トーチを移動させるためのマニピュレータ21の各関節角度を算出する「溶接終了位置溶接トーチ移動経路算出ステップ」(ステップST7)と、
先行ワイヤ先端3a及び後行ワイヤ先端4aにアーク5及びアーク6がそれぞれ発生したときに、先行ワイヤ溶接条件出力回路35及び後行ワイヤ溶接条件出力回路36が先行ワイヤ溶接開始完了信号S3及び後行ワイヤ溶接開始完了信号S4を溶接トーチ移動経路算出回路32にそれぞれ出力する「先行ワイヤ及び後行ワイヤ溶接開始完了信号出力ステップ」(ステップST8)と、
溶接トーチ移動経路算出回路32が、先行ワイヤ溶接開始完了信号S3及び後行ワイヤ溶接開始完了信号S4を入力されたときに、溶接トーチ移動経路算出回路32がステップST7において算出した溶接終了位置P2に先行チップ4を移動させるためのマニピュレータ21の各関節角度をサーボ制御回路33に出力する「第1クレータ処理開始位置溶接トーチ移動ステップ」(ステップST9)と、
先行チップ1が溶接終了位置P2に達したときに、溶接トーチ移動経路算出回路32が、後行ワイヤ溶接終了処理指令信号S10を後行ワイヤ溶接条件出力回路36に出力し、第1クレータ処理指令信号S11を先行ワイヤ溶接条件出力回路35に出力し、溶接トーチ移動経路算出回路32が、第1クレータ処理速度をサーボ制御回路33に出力し、サーボ制御回路33が溶接トーチを溶接方向と逆方向に移動させる「第1クレータ処理指令信号出力ステップ」(ステップST10)と、
後行ワイヤ溶接条件出力回路36が溶接トーチ移動経路算出回路32から後行ワイヤ溶接終了処理指令信号S10を入力されたときに、後行ワイヤ溶接用電源装置24がアンチスチック処理及び溶着解除処理を行い、アンチスチック処理及び溶着解除処理終了後、後行ワイヤ溶接条件出力回路36が、後行ワイヤ4の溶着無しと判別したときに、溶接トーチ移動経路算出回路32に後行ワイヤ溶接終了処理完了信号S12を出力する「後行ワイヤ溶接終了処理ステップ」(ステップST11)と、
先行ワイヤ溶接条件出力回路35が第1クレータ処理指令信号S11を入力されたときに、先行ワイヤ溶接条件出力回路35が、第1クレータ処理電流値及び第1クレータ処理電圧値を先行ワイヤ溶接用電源装置23に出力する「第1クレータ処理ステップ」(ステップST12)と、
溶接トーチが溶接方向と逆方向に移動して、第2クレータ処理位置P3に達したときに、サーボ制御回路33がマニピュレータを停止して、溶接トーチ移動経路算出回路32が、第2クレータ処理指令信号S13を先行ワイヤ溶接条件出力回路36に出力する「第2クレータ処理開始ステップ」(ステップST13)と、
先行ワイヤ溶接条件出力回路35が第2クレータ処理指令信号S13を入力されたときに、先行ワイヤ溶接条件出力回路35が、第2クレータ処理電流値及び第2クレータ処理電圧値を先行ワイヤ溶接用電源装置23に出力し、第2クレータ処理時間の計測を開始する「第2クレータ処理ステップ」(ステップST14)と、
先行ワイヤ溶接条件出力回路35が第2クレータ処理時間の計測を満了したときに、先行ワイヤ溶接用電源装置23が先行ワイヤのアンチスチック処理及び溶着解除処理を行い、先行ワイヤ溶接条件出力回路35が先行ワイヤ3の溶着無しと判別したときに、溶接トーチ移動経路算出回路32に先行ワイヤ溶接終了処理完了信号S14を出力する「先行ワイヤ溶接終了処理ステップ」(ステップST15)とからなる消耗2電極アーク溶接終了制御方法である。
【0065】
上記溶接終了制御方法を適用した実施例2の溶接ロボットを要約すると下記のとおりである。実施例2の溶接ロボットは、被溶接物8の各溶接区間における予め定めた(1)溶接開始パラメータと(2)溶接終了パラメータとを記憶させている作業プログラムファイル出力回路29と、
予め定めた(1)先行ワイヤ3又は後行ワイヤ4の標準突出し長さL1及び(2)標準突出し長さのワイヤ先端間距離L2から成る電極パラメータを記憶させている電極パラメータ出力回路31と、
(1)作業プログラムファイル出力回路29の出力信号が入力されて、溶接開始位置から溶接終了位置に溶接トーチを移動させるためのマニピュレータ21の各関節角度を算出して(後述するサーボ制御回路33に)各関節角度の算出値を出力し、(2)溶接開始位置に溶接トーチが達したときに、先行ワイヤ溶接開始指令信号S1を(後述する先行ワイヤ溶接条件出力回路35)に出力し、後行ワイヤ溶接開始指令信号S2を(後述する後行ワイヤ溶接条件出力回路36)に出力し、通常の溶接速度を(後述するサーボ制御回路33)に出力し、(3)先行チップ1が溶接終了位置P2に達したときに、後行ワイヤ溶接終了処理指令信号S10を(後述する後行ワイヤ溶接条件出力回路36に)出力し、第1クレータ処理指令信号S11を(後述する先行ワイヤ溶接条件出力回路35に)出力し、通常の溶接速度よりも遅い第1クレータ処理速度を(後述するサーボ制御回路33)に出力し、(4)先行チップ1が第2クレータ処理位置P3に達したときに、第2クレータ処理電流値及び第2クレータ処理電圧値を(後述する先行ワイヤ溶接条件出力回路36に)出力する溶接トーチ移動経路算出回路32と、
(1)溶接トーチ移動経路算出回路32から溶接トーチを移動させるためのマニピュレータ21の各関節角度の算出値が入力されてマニピュレータ21を制御し、(2)第1クレータ処理速度を入力されたときに、溶接トーチを溶接方向と逆方向に移動し、(3)先行チップ1が第2クレータ処理位置P3に達したときに、マニピュレータを停止するサーボ制御回路33と、
(1)先行ワイヤ溶接開始指令信号S1が入力されたときに、先行ワイヤ3の溶接電流の通電を指令する信号を(後述する先行ワイヤ溶接用電源装置23に)出力し、(2)先行ワイヤ先端3aにアーク5が発生したときに、先行ワイヤ溶接開始完了信号S3を溶接トーチ移動経路算出回路32に出力し、(3)第1クレータ処理指令信号S11を入力されたときに、第1クレータ処理電流値及び第1クレータ処理電圧値を(後述する先行ワイヤ溶接用電源装置23に)出力し、(4)第2クレータ処理指令信号S13を入力されたときに、第2クレータ処理電流値及び第2クレータ処理電圧値を(後述する先行ワイヤ溶接用電源装置23に)出力し、第2クレータ処理時間の計測を開始し、(5)第2クレータ処理時間の計測を満了したときに、先行ワイヤのアンチスチック処理及び溶着解除処理を行う指令信号を(後述する先行ワイヤ溶接用電源装置23に)出力し、先行ワイヤ3の溶着無しと判別したときに、溶接トーチ移動経路算出回路32に先行ワイヤ溶接終了処理完了信号S14を出力する先行ワイヤ溶接条件出力回路35と、
先行ワイヤ溶接条件出力回路35から先行ワイヤ3の溶接電流の通電を指令する信号が入力されたときに、先行ワイヤ3に溶接電流を通電し、先行ワイヤ3がアンチスチック処理及び溶着解除処理を行う指令信号を入力されたときに、先行ワイヤ3がアンチスチック処理及び溶着解除処理を行う先行ワイヤ溶接用電源装置23と、
(1)後行ワイヤ溶接開始指令信号S2が入力されたときに、後行ワイヤ4の溶接電流の通電を指令する信号を(後述する後行ワイヤ溶接用電源装置24に)出力し、(2)後行ワイヤ先端4aにアーク6が発生したときに、後行ワイヤ溶接開始完了信号S4を溶接トーチ移動経路算出回路32に出力し、(3)後行ワイヤ溶接終了処理指令信号S10を入力されたときに、後行ワイヤ4がアンチスチック処理及び溶着解除処理を行う指令信号を(後述する後行ワイヤ溶接用電源装置24に)出力し、後行ワイヤ4の溶着無しと判別したときに、溶接トーチ移動経路算出回路32に後行ワイヤ溶接終了処理完了信号S12を出力する後行ワイヤ溶接条件出力回路36と、
後行ワイヤ溶接条件出力回路36から後行ワイヤ4の溶接電流の通電を指令する信号が入力されたときに、後行ワイヤ4に溶接電流を通電し、後行ワイヤ4がアンチスチック処理及び溶着解除処理を行う指令信号を入力されたときに後行ワイヤ4のアンチスチック処理及び溶着解除処理を行う後行ワイヤ溶接用電源装置24とを備えた溶接ロボットである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本出願に係る発明の特徴を最もよく表す図である。
【図2】2電極1トーチ方式の消耗電極アーク溶接終了方法を説明する図である。
【図3】2電極1トーチ方式の溶接ロボットの一般的な構成を示す図である。
【図4】従来技術1の2電極1トーチ方式の消耗電極アーク溶接の終了方法を説明する図である。
【図5】図4に続く従来技術1の2電極1トーチ方式の消耗電極アーク溶接の終了方法を説明する図である。
【図6】従来技術2のタンデムアーク溶接を行うための装置を示す図である。
【図7】従来技術2の溶接終了時の制御方法を説明するタイムチャートである。
【図8】被溶接物8の形状が箱形で、底板の隅肉溶接を行う場合を説明するための図である。
【図9】従来技術2によって被溶接物8の形状が箱形で、底板の隅肉溶接を行う場合の溶接終了位置P2における溶接ビード9が不均一になることを説明するための図である。
【図10】本発明の実施例1の消耗2電極アーク溶接終了方法において、先行ワイヤ3及び後行ワイヤ4を送給し、先行ワイヤ3が第1及び第2クレータ処理を行う場合を説明する図である。
【図11】実施例1の溶接終了方法において図10に続く溶接終了方法を説明する図である。
【図12】実施例1の溶接終了方法によって被溶接物8の形状が箱形で、底板の隅肉溶接を行う場合を説明するための図である。
【図13】本発明の先行ワイヤ3がクレータ処理をする場合の溶接開始位置P1から第1クレータ処理開始位置及び第2クレータ処理位置までの溶接トーチの移動距離を説明するための図である。
【図14】実施例2に使用する溶接線WLをX軸としノズル10の中心軸をY軸としたときに、ノズル10の中心軸に対して先行チップ1及び後行チップ2に角度を設けて配置したときの先行ワイヤ先端3aと後行ワイヤ先端4aとの位置関係を示す図である。
【図15】本発明の溶接終了方法又は溶接終了制御方法を図3に示す溶接ロボットに適用した場合のロボット制御装置27のブロック図である。
【図16】実施例2のロボット制御装置の溶接トーチ移動経路算出回路32が出力する信号と先行チップ1及び後行チップ2移動速度とを示す図である。
【図17】実施例2のロボット制御装置27の動作を示すフローチャートである。
【図18】図17に続く実施例2のロボット制御装置27の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 先行チップ
2 後行チップ
3 先行ワイヤ
3a 先行ワイヤ先端
4 後行ワイヤ
4a 後行ワイヤ先端
5、6 アーク
7 溶融池
8 被溶接物
9 溶接ビード
10 ノズル
11 シールドガス
13 溶融池跡
14 溶接トーチ
15、16 クレータ処理跡
21 マニピュレータ
23 先行ワイヤ溶接用電源装置
24 後行ワイヤ溶接用電源装置
25 先行ワイヤ送給装置
26 後行ワイヤ送給装置
27 ロボット制御装置
29 作業プログラムファイル出力回路
31 電極パラメータ出力回路
32 溶接トーチ移動経路算出回路
33 サーボ制御回路
35 先行ワイヤ溶接条件出力回路
36 後行ワイヤ溶接条件出力回路
41 先行チップ
42 後行チップ
44 先行ワイヤ溶接用電源装置
45 後行ワイヤ溶接用電源装置
46 先行ワイヤ送給装置
47 後行ワイヤ送給装置
48 先行ワイヤ
49 後行ワイヤ
50、51 アーク
52 溶融池
53 溶接ビード
54 溶接制御装置
55 溶接ロボット
D1 第1クレータ処理距離
L1 先行ワイヤ3又は後行ワイヤ4の標準突出し長さ
L2 標準突出し長さのワイヤ先端間距離
L3 全溶接トーチ移動距離
P1 溶接開始位置
P2 溶接終了位置
P3 第2クレータ処理位置
S1 先行ワイヤ溶接開始指令信号
S2 後行ワイヤ溶接開始指令信号
S3 先行ワイヤ溶接開始完了信号
S4 後行ワイヤ溶接開始完了信号
S5 先行ワイヤ溶接終了処理指令信号
S10 後行ワイヤ溶接終了処理指令信号
S11 第1クレータ処理指令信号
S12 後行ワイヤ溶接終了処理完了信号
S13 第2クレータ処理指令信号
S14 先行ワイヤ溶接終了処理完了信号
α 先行チップ角度
β 後行チップ角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの溶接トーチ内で先行ワイヤ及び後行ワイヤを送給して溶接する消耗2電極アーク溶接終了方法において、
溶接終了に際して前記後行ワイヤの送給及び通電を停止し、
前記後行ワイヤのアーク力によって窪んだ溶融池を埋める方向に前記溶接トーチを移動させて前記先行ワイヤがクレータ処理を行う、ことを特徴とする消耗2電極アーク溶接終了方法。
【請求項2】
1つの溶接トーチ内で先行ワイヤ及び後行ワイヤを送給して溶接する消耗2電極アーク溶接終了方法において、
溶接終了に際して前記後行ワイヤの送給及び通電を停止し、
前記溶接トーチを溶接方向とは逆方向に移動させて前記先行ワイヤがクレータ処理を行う、ことを特徴とする消耗2電極アーク溶接終了方法。
【請求項3】
1つの溶接トーチ内で先行ワイヤ及び後行ワイヤを送給して溶接する消耗2電極アーク溶接終了方法において、
溶接終了に際して前記後行ワイヤの送給及び通電を停止し、
前記溶接トーチを溶接方向とは逆方向に移動させて前記先行ワイヤが前記後行ワイヤのアーク力によって窪んだ溶融池を埋めながらクレータ処理を行う、ことを特徴とする消耗2電極アーク溶接終了方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−229808(P2007−229808A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156177(P2007−156177)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【分割の表示】特願2001−177931(P2001−177931)の分割
【原出願日】平成13年6月13日(2001.6.13)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】