説明

2電極パルスアーク溶接制御方法

【課題】2つのアークの相互干渉によって発生するアーク発生状態の不安定性を抑制して、被溶接物への入熱を減少させて溶け込みを浅くして、より薄い板厚に対して溶接を行うことができる。
【解決手段】本発明の2電極パルスアーク溶接制御方法は、1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された第1の溶接ワイヤ及び第2の溶接ワイヤをそれぞれ予め設定した送給速度で送給し、第1の溶接ワイヤには電極プラス極性で直流パルス電流又は交流パルス電流を通電し、第2の溶接ワイヤには交流パルス電流を通電し、ミグ溶接の場合、第1のピーク電流と前記第2のピーク電流とで一方のピーク電流通電期間中に他方のピーク電流通電期間の全部又は一部が無いようにし、マグ溶接の場合、前記第1のピーク電流の立下りと前記第2のピーク電流の立下りとを同期させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された2本の溶接ワイヤと被溶接物との間に2つのアークを発生させて溶接する改善された2電極パルスアーク溶接制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2電極パルスアーク溶接制御方法では、1つの溶接トーチに設けた電気的に絶縁した2つのコンタクトチップを通して2本の溶接ワイヤを送給して、それらの溶接ワイヤと被溶接物との間に2つのパルスアークを発生させて溶接を行う。この溶接方法は、2本の溶接ワイヤが同時に溶融するので高溶着量を得ることができるので、薄板の溶接では4[m/分]を超える高速溶接を行うことができ、また、厚板の多層溶接では層数を減らして溶接を行うことができ、溶接作業の高効率化を図ることができる。かつ、本溶接方法はパルスアーク溶接方法であるので、スパッタの発生が少なく、美しいビード外観を得ることができる。
【0003】
図5は、一般的な2電極パルスアーク溶接装置の構成図である。同図において、一般的なパルスアーク溶接用の第1の溶接電源装置A5及び第2の溶接電源装置B5から第1のワイヤ送給装置AW及び第2のワイヤ送給装置BWに、第1の送給制御信号AWc及び第2の送給制御信号BWcをそれぞれ出力して、第1の溶接ワイヤA1及び第2の溶接ワイヤB1の送給をそれぞれ制御する。
【0004】
ロボット制御装置6からの指令信号によって動作制御されるマニピュレータ(図示を省略)のアームの先端に取付けられた溶接トーチ7には、互いに電気的に絶縁された第1のコンタクトチップA4及び第2のコンタクトチップB4が取付けられている。これらのコンタクトチップA4及びB4と被溶接物2との間に、第1の溶接電源装置A5及び第2の溶接電源装置B5から第1の電力AE及び第2の電力BEがそれぞれ供給される。そして、ロボット制御装置6からの起動信号に基づいてコンタクトチップA4及びB4を通して第1の溶接ワイヤA1及び第2の溶接ワイヤB1が送給及び給電されて、被溶接物2との間に第1のアークA3及び第2のアークB3がそれぞれ発生する。これらの2つのアークによって1つの溶融池8が形成される。
【0005】
[従来技術1]
本出願人は、アルゴンガスに炭酸ガスが混合されたシールドガスを噴出して軟鋼を溶接する場合の2電極パルスアーク溶接制御方法を、特許文献1において、開示している。その方法を、図6を参照して説明する。図6は、従来技術1の2電極パルスアーク溶接制御方法の電流・電圧波形を示す図であって、同図(A)は、第1の溶接ワイヤに通電する第1の溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、第2の溶接ワイヤに通電する第2の溶接電流BIwの時間変化を示している。
【0006】
(1)時刻t1〜t2の期間
図6(A)に示すように、第1の溶接ワイヤに、第1のピーク電流通電期間ATpは、第1の溶接ワイヤが陽極で被溶接物が陰極である電極プラス極性で、第1のピーク電流AIpが通電する。また、同図(B)に示すように、第2の溶接ワイヤに、第2のピーク電流通電期間BTpは、電極プラス極性で第2のピーク電流BIpが通電する。これらの第1のピーク電流AIpと第2のピーク電流BIpとの立下りとを同期させている。
(2)時刻t2〜t3の期間
同図(A)に示すように、第1の溶接ワイヤに、第1のベース電流通電期間ATbは、電極プラス極性で第1のベース電流AIbが通電する。また、同図(B)に示すように、第2の溶接ワイヤに、第2のベース電流通電期間BTbは、電極プラス極性で第2のベース電流BIbが通電する。
(3)時刻t3以降は、時刻t1〜t3の期間の動作を繰返す。
【0007】
従来技術1において、2本のワイヤに同時にピーク電流が通電されるときに、両方のアークが互いに引っ張られようとするが、両方のアークが互いに引っ張られることが少ない。その理由は、炭酸ガスCO2は、高温になると一酸化炭素COと酸素Oとに解離し、そのとき熱量が奪われる。この結果、下記に説明する熱的ピンチ効果によって図7に示すように、アークに硬直性が発生し、第1のアークA3及び第2のアークB3は電磁気的な干渉によって、溶接ワイヤの送給方向から大きく曲がることがない。従って、両方のアークが互いに引っ張られることが少なく、安定したアーク長制御を行うことができる。図7は、アルゴンガスに炭酸ガスが混合されたシールドガスを噴出して軟鋼を溶接する場合に、2本の溶接ワイヤに同時にピーク電流が通電されたときのアークの発生状態を示す図である。
【0008】
ここで、熱的ピンチ効果を説明する。アークの外周部が冷却された場合、この外周部が中心部より低温になり、外周部の電気伝導性が低下し、アーク電流が伝導性の高い中心部に集中して、中心部の電流密度が高くなる。この結果、アークに強い硬直性が発生する。これが熱的ピンチ効果である。
【0009】
[従来技術2]
一方、アルミニウムを溶接する場合は、不活性ガスであるアルゴンガスをシールドガスとして使用し、また、ステンレスや一部の鉄鋼材料を溶接する場合は、アルゴンガスに3〜5体積%の酸素が混合されたガスをシールドガスとして使用して溶接する。これらの場合、アークの硬直性が弱い。
【0010】
従って、2本の溶接ワイヤに同時にピーク電流が通電されると、図8に示すように、両方のアークが互いに引っ張られるために、一方の溶接ワイヤから溶滴が離脱するとき、溶滴が他方の溶接ワイヤの方向に飛び出し、溶滴が溶融池に落下しないでスパッタに成り、溶接ビード形状が整わなくなる。図8は、アルミニウム又はステンレスを溶接する場合に、2本の溶接ワイヤに同時にピーク電流が通電されたときのアークの発生状態を示す図である。また、両方のアークが互いに引っ張られると、被溶接物に対して垂直方向のアーク力が減少することになり、被溶接物の溶け込みが浅くなる。
【0011】
そこで、本出願人は、アルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極パルスアーク溶接制御方法を、特許文献2において、開示している。その方法を図9を参照して説明する。図9は、従来技術2の2電極パルスアーク溶接制御方法の電流・電圧波形を示す図であって、同図(A)は、第1の溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、第2の溶接電流BIwの時間変化を示している。
【0012】
(1)時刻t1〜t2の期間
図9(A)に示すように、第1の溶接ワイヤに、第1のピーク電流通電期間ATpは、電極プラス極性で第1のピーク電流AIpが通電する。また、同図(B)に示すように、第2の溶接ワイヤには、第2のベース電流通電期間BTbであるので、電極プラス極性で第2のベース電流BIbが通電する。
【0013】
(2)時刻t2〜t3の期間
同図(A)に示すように、第1の溶接ワイヤには、第1のベース電流通電期間ATbであるので、電極プラス極性で第1のベース電流AIbが通電する。また、同図(B)に示すように、第2の溶接ワイヤには、第2のベース電流通電期間BTbであるので、電極プラス極性で第2のベース電流BIbが通電する。
【0014】
(3)時刻t3〜t4の期間
同図(A)に示すように、第1の溶接ワイヤには、第1のベース電流通電期間ATbであるので、電極プラス極性で第1のベース電流AIbが通電する。また、同図(B)に示すように、第2の溶接ワイヤに、第2のピーク電流通電期間BTpは、電極プラス極性で第2のピーク電流BIpが通電する。
【0015】
(4)時刻t4〜t5の期間
同図(A)に示すように、第1の溶接ワイヤには、第1のベース電流通電期間ATbであるので、電極プラス極性で第1のベース電流AIbが通電する。また、同図(B)に示すように、第2の溶接ワイヤには、第2のベース電流通電期間BTbであるので、電極プラス極性で第2のベース電流BIbが通電する。
【0016】
(5)時刻t5以降は、時刻t1〜t5の期間の動作を繰返す。
【0017】
従って、第1の溶接ワイヤ及び第2の溶接ワイヤに電極プラス極性で通電し、かつ、一方の溶接ワイヤにベース電流を通電する期間に他方の溶接ワイヤにピーク電流を通電している。即ち、第2のベース電流通電期間BTbに第1のピーク電流AIpを通電し、第1のベース電流通電期間ATbに第2のピーク電流BIpを通電している。この結果、2本の溶接ワイヤに同時にピーク電流が通電されないために、両方のアークが互いに引っ張られることがなく、安定したアーク長制御を行うことができる。
【0018】
[従来技術3]
一方、本出願人は、1電極による交流パルスアーク溶接方法を、特許文献3において開示している。この交流パルスアーク溶接方法は、アルミニウム及びその合金、ステンレス鋼、鉄鋼等の溶接に使用されており、特に被溶接材の板厚が数mm以下の薄板であるときに使用されることが多い。この理由は、以下の通りである。
【0019】
即ち、電極プラス極性期間には被溶接物が陰極となりその陰極降下電圧によって被溶接物への入熱は大きくなる。他方、被溶接物側から溶接ワイヤ側方向に通電する電極マイナス極性期間には被溶接物は陽極となりその陽極降下電圧は上記の陰極降下電圧よりも小さいために被溶接物への入熱は電極プラス極性期間に比べて小さくなる。同様に、電極プラス極性期間には溶接ワイヤは陽極になるので入熱は小さくなり、溶接ワイヤの溶融速度は小さくなる。他方、電極マイナス極性期間には溶接ワイヤは陰極になるので入熱は大きくなり、溶接ワイヤの溶融速度は大きくなる。したがって、交流パルスアーク溶接方法では、電極プラス極性期間と電極マイナス極性期間との時間比率を制御することによって、被溶接物及び溶接ワイヤへの入熱を調整することができるので、良好な薄板溶接を行うことができる。
【0020】
図10は、従来技術3の交流パルスアーク溶接制御方法の電流波形を示す図である。以下、同図を参照して説明する。
【0021】
(1)時刻t1〜t2の期間
時刻t1に、電極プラス極性においてピーク電流通電期間Tpは、ピーク電流Ipが通電する。通常、このピーク電流通電期間Tp及びピーク電流Ipの両値は、溶接ワイヤがアーク熱と電磁ピンチ力によって1パルス1溶滴移行するように予め設定する。
【0022】
(2)時刻t2〜t3の期間
時刻t2において上記のピーク電流通電期間Tpが終了すると、電極プラス極性で溶滴を成長させない範囲内で切換電流通電期間Tcは切換電流Icを通電する。この期間は溶滴移行直後の残留溶滴の不安定形状が安定形状(球状)へと遷移する期間となる。
【0023】
(3)時刻t3〜t4の期間
時刻t3において、電極プラス極性から電極マイナス極性へ切り換わると、電極マイナス電流通電期間Tenは電極マイナス電流Ienが通電する。通常、この電極マイナス電流通電期間Ten及び電極マイナス電流Ienの両値は、被溶接物の材質、板厚、形状等に応じて溶滴移行をさせない範囲内で適正値に予め設定する。
【0024】
(4)時刻t4〜t5の期間
時刻t4において、再び電極プラス極性になると、ベース電流通電期間Tbは溶滴移行をさせないベース電流Ibが通電する。
【0025】
(5)時刻t5以降は、時刻t1〜t5の期間の動作を繰返す。
【0026】
この結果、従来技術3の交流パルスアーク溶接制御方法は、電極プラス極性の期間と電極マイナス極性の期間との時間比率を制御することによって、被溶接物及び溶接ワイヤへの入熱を調整することができるので、良好な薄板溶接を行うことができる。
【特許文献1】特開2001−252768号公報
【特許文献2】特開2004−001033号公報
【特許文献3】特開2002−086271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上述した従来技術1及び従来技術2に記載の2電極パルスアーク溶接制御方法は、電極プラス極性で通電しているために、一般に、被溶接物への入熱が大きく、溶け込みが大きくなる。そのために、薄板の溶接の適用範囲が制限される不具合がある。
【0028】
また、上述した従来技術3の1電極による交流パルスアーク溶接方法は、1電極で溶接を行うために、溶着量が少なく、薄板の溶接では、高速溶接を行うことができない。また、厚板の多層溶接では、層数を減らして溶接を行うことができず、溶接作業の高効率化を図ることができない。
【0029】
また、上述した従来技術1及び従来技術2に記載の2電極パルスアーク溶接制御方法と従来技術3の1電極による交流パルスアーク溶接方法とを、単に、組合せただけでは、2つのアークの相互干渉によって発生するアーク形状の変形やアーク長の変動等のアーク発生状態の不安定性を抑制することができず、常に良好な溶接品質を得ることができない。
【0030】
本発明は、2つのアークの相互干渉によって発生するアーク発生状態の不安定性を抑制して、被溶接物への入熱を減少させて溶け込みを浅くして、より薄い板厚に対して溶接を行うことができる2電極パルスアーク溶接制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記目的を達成するために、第1の発明は、
1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された第1の溶接ワイヤ及び第2の溶接ワイヤをそれぞれ予め設定した送給速度で送給し、
前記第1の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第1のピーク電流の通電と予め設定した第1のベース電流の通電とを1周期とする通電を繰り返すと共に、
前記第2の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第2のピーク電流を通電し、続けて電極マイナス極性で予め設定した第2の電極マイナス電流を通電し、続けて再び前記電極プラス極性で予め設定した第2のベース電流を通電し、前記通電を1周期として繰り返し、
前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤと被溶接物との間に2つのアークを発生させてミグ溶接する2電極パルスアーク溶接制御方法において、
前記第1のピーク電流及び前記第2のピーク電流のうち一方のピーク電流通電期間中に他方のピーク電流通電期間の全部又は一部が無いことを特徴とする2電極パルスアーク溶接制御方法である。
【0032】
第2の発明は、
1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された第1の溶接ワイヤ及び第2の溶接ワイヤをそれぞれ予め設定した送給速度で送給し、
前記第1の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第1のピーク電流を通電し、続けて電極マイナス極性で予め設定した第1の電極マイナス電流を通電し、続けて再び前記電極プラス極性で予め設定した第1のベース電流を通電し、前記通電を1周期として繰り返すと共に、
前記第2の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第2のピーク電流を通電し、続けて電極マイナス極性で予め設定した第2の電極マイナス電流を通電し、続けて再び前記電極プラス極性で予め設定した第2のベース電流を通電し、前記通電を1周期として繰り返し、
前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤと被溶接物との間に2つのアークを発生させてミグ溶接する2電極パルスアーク溶接制御方法において、
前記第1のピーク電流及び前記第2のピーク電流のうち一方のピーク電流通電期間中に他方のピーク電流通電期間の全部又は一部が無いことを特徴とする2電極パルスアーク溶接制御方法である。
【0033】
第3の発明は、
1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された第1の溶接ワイヤ及び第2の溶接ワイヤをそれぞれ予め設定した送給速度で送給し、
前記第1の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第1のピーク電流の通電と予め設定した第1のベース電流の通電とを1周期とする通電を繰り返すと共に、
前記第2の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第2のピーク電流を通電し、続けて電極マイナス極性で予め設定した第2の電極マイナス電流を通電し、続けて再び前記電極プラス極性で予め設定した第2のベース電流を通電し、前記通電を1周期として繰り返し、
前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤと被溶接物との間に2つのアークを発生させてマグ溶接する2電極パルスアーク溶接制御方法において、
前記第1のピーク電流の立下りと前記第2のピーク電流の立下りとを同期させることを特徴とする2電極パルスアーク溶接制御方法である。
【0034】
第4の発明は、
1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された第1の溶接ワイヤ及び第2の溶接ワイヤをそれぞれ予め設定した送給速度で送給し、
前記第1の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第1のピーク電流を通電し、続けて電極マイナス極性で予め設定した第1の電極マイナス電流を通電し、続けて再び前記電極プラス極性で予め設定した第1のベース電流を通電し、前記通電を1周期として繰り返すと共に、
前記第2の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第2のピーク電流を通電し、続けて電極マイナス極性で予め設定した第2の電極マイナス電流を通電し、続けて再び前記電極プラス極性で予め設定した第2のベース電流を通電し、前記通電を1周期として繰り返し、
前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤと被溶接物との間に2つのアークを発生させてマグ溶接する2電極パルスアーク溶接制御方法において、
前記第1のピーク電流の立下りと前記第2のピーク電流の立下りとを同期させることを特徴とする2電極パルスアーク溶接制御方法である。
【0035】
第5の発明は、
前記ピーク電流の通電と前記電極マイナス電流の通電との間に電極プラス極性で予め定めた切換電流を通電することを特徴とする第1の発明〜第4の発明のいずれか1発明に記載の2電極パルスアーク溶接制御方法である。
【発明の効果】
【0036】
本発明の2電極パルスアーク溶接制御方法は、1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された第1の溶接ワイヤ及び第2の溶接ワイヤをそれぞれ予め設定した送給速度で送給し、第1の溶接ワイヤには電極プラス極性で直流パルス電流又は交流パルス電流を通電し、第2の溶接ワイヤには交流パルス電流を通電し、ミグ溶接の場合、一方のピーク電流通電期間中に他方のピーク電流通電期間の全部又は一部が無いようにし、マグ溶接の場合、前記第1のピーク電流の立下りと前記第2のピーク電流の立下りとを同期させている。
【0037】
この結果、2つのアークの相互干渉によって発生するアーク形状の変形やアーク長の変動等のアーク発生状態の不安定性を抑制して、被溶接物への入熱を減少させて溶け込みを浅くすることができる。この結果、より薄い板厚に対して溶接を行うことができる。また、過多の入熱量により割れ等が生じやすい材料に対しては、入熱量を減少することができ、割れの発生を防ぐことができる。従って、2電極パルスアーク溶接制御方法の適用範囲を著しく拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
[実施の形態1]
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態1の2電極パルスアーク溶接制御方法の電流波形を示す図であって、同図(A)は、第1の溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、第2の溶接電流BIwの時間変化を示している。先行側の第1の溶接ワイヤには、被溶接物への溶け込みを確保するために、直流のパルス電流を通電し、追従側の第2の溶接ワイヤには、交流パルス電流を通電している。また、電極プラスのピーク電流の通電の期間が先行側と追従側とで、一方のピーク電流通電期間中に他方のピーク電流通電期間の全部又は一部が無いようにしている。この電流波形は主に、シールドガスとして純アルゴンを用いるアルミのミグ溶接や、アルゴンに5体積%までの酸素を混合したガスを用いるステンレスや一部の鉄鋼材料のミグ溶接に用いられる。
【0039】
(1)時刻t1〜t2の期間
(1A)第1の溶接ワイヤへの通電
図1(A)に示す時刻t1に、電極プラス極性で第1のピーク電流通電期間ATpに第1のピーク電流AIpが通電する。通常、この第1のピーク電流通電期間ATp及び第1のピーク電流AIpの両値は、溶接ワイヤがアーク熱と電磁ピンチ力によって1パルス1溶滴移行するように予め設定する。
【0040】
(1B)第2の溶接ワイヤへの通電
(a)時刻t1〜t11の期間
同図(B)に示す時刻t1において、第2のピーク電流通電期間BTp(後述する時刻t2〜t3と同様)が終了すると、電極プラス極性で溶滴を成長させない範囲内で予め定めた第2の切換電流通電期間BTcに、予め定めた第2の切換電流BIcを通電する。この期間は溶滴移行直後の残留溶滴の不安定形状が安定形状(球状)へと遷移する期間となる。
【0041】
(b)時刻t11〜t12の期間
同図(B)に示す時刻t11において、電極プラス極性から電極マイナス極性へ切り換わると、第2の電極マイナス電流通電期間BTenは第2の電極マイナス電流BIenが通電する。通常、これらの第2の電極マイナス電流通電期間BTen及び第2の電極マイナス電流BIenの両値は、被溶接物の材質、板厚、形状等に応じて溶滴移行をさせない範囲内で適正値に予め設定する。
【0042】
(c)時刻t12〜t2の期間
同図(B)に示す時刻t12において、再び電極プラス極性になると、第2のベース電流通電期間BTbは第2のベース電流BIbが通電する。
【0043】
(2)時刻t2〜t3の期間
(2A)第1の溶接ワイヤへの通電
同図(A)に示す時刻t2において、電極プラス極性において、第1のベース電流通電期間ATbは溶滴移行しない範囲で予め設定した第1のベース電流AIbが通電する。
【0044】
(2B)第2の溶接ワイヤへの通電
同図(B)に示す時刻t2において、電極プラス極性において、第2のピーク電流通電期間BTpは第2のピーク電流BIpが通電する。通常、これらの第2のピーク電流通電期間BTp及び第2のピーク電流BIpの両値は、溶接ワイヤがアーク熱と電磁ピンチ力によって1パルス1溶滴移行するように予め設定する。
【0045】
(3)時刻t3以降は、時刻t1〜t3の期間の動作を繰返す。
【0046】
図1に示した2電極パルスアーク溶接制御方法の電流波形を通電してミグ溶接を行うことによって、2つのアークの相互干渉によって発生するアーク形状の変形やアーク長の変動等のアーク発生状態の不安定性を抑制して、被溶接物への入熱を減少させて溶け込みを浅くすることができる。この結果、より薄い板厚に対してミグ溶接を行うことができる。また、過多の入熱量により割れ等が生じやすい材料に対しては、入熱量を減少することができ、割れの発生を防ぐことができる。従って、2電極パルスアーク溶接制御方法の適用範囲を著しく拡大することができる。
【0047】
[実施の形態2]
図2は、本発明の実施の形態2の2電極パルスアーク溶接制御方法の電流波形を示す図であって、同図(A)は、第1の溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、第2の溶接電流BIwの時間変化を示している。先行側の第1の溶接ワイヤには、実施の形態1の先行側よりも被溶接物への溶け込みを浅くするために、交流のパルス電流を通電し、追従側の第2の溶接ワイヤにも、交流パルス電流を通電している。また、電極プラスのピーク電流の通電の期間が先行側と追従側とで、一方のピーク電流通電期間中に他方のピーク電流通電期間の全部又は一部が無いようにしている。この電流波形は主に、ミグ溶接に用いられる。
【0048】
(1)時刻t1〜t2の期間
第1のワイヤ及び第2のワイヤへの通電は、図1で示した実施の形態1の時刻t1〜t2の期間と同じであるので、説明を省略する。
【0049】
(2)時刻t2〜t3の期間
(2A)第1の溶接ワイヤへの通電
(a)時刻t2〜t21の期間
同図(A)に示す時刻t2において、第1のピーク電流通電期間ATpが終了すると、電極プラス極性で溶滴を成長させない範囲内で予め定めた第1の切換電流通電期間ATcに、予め定めた第2の切換電流BIcを通電する。
【0050】
(b)時刻t21〜t22の期間
同図(A)に示す時刻t21において、電極プラス極性から電極マイナス極性へ切り換わると、第1の電極マイナス電流通電期間ATenは第1の電極マイナス電流AIenが通電する。
【0051】
(c)時刻t22〜t3の期間
同図(A)に示す時刻t22において、再び電極プラス極性になると、第1のベース電流通電期間ATbは第1のベース電流AIbが通電する。
【0052】
(2B)第2の溶接ワイヤへの通電
図2(B)に示す時刻t2に、電極プラス極性で第2のピーク電流通電期間BTpに第2のピーク電流BIpが通電する。
【0053】
(3)時刻t3以降は、時刻t1〜t3の期間の動作を繰返す。
【0054】
図2に示した2電極パルスアーク溶接制御方法の電流波形を通電してミグ溶接を行うことによって、2つのアークの相互干渉によって発生するアーク形状の変形やアーク長の変動等のアーク発生状態の不安定性を抑制して、実施の形態1よりも、さらに被溶接物への入熱を減少させて溶け込みを浅くすることができる。この結果、より薄い板厚に対してミグ溶接を行うことができる。また、過多の入熱量により割れ等が生じやすい材料に対しては、入熱量を減少することができ、割れの発生を防ぐことができる。従って、2電極パルスアーク溶接制御方法の適用範囲を著しく拡大することができる。
【0055】
[実施の形態3]
図3は、本発明の実施の形態3の2電極パルスアーク溶接制御方法の電流波形を示す図であって、同図(A)は、第1の溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、第2の溶接電流BIwの時間変化を示している。先行側の第1の溶接ワイヤには、被溶接物への溶け込みを確保するために、直流のパルス電流を通電し、追従側の第2の溶接ワイヤには、交流パルス電流を通電している。また、電極プラスのピーク電流の通電の立下りを先行側と追従側とで同期させている。この電流波形は主に、シールドガスとしてアルゴンに20体積%の炭酸ガスを混合したガスを用いるマグ溶接で軟鋼を溶接するときに用いられる。
【0056】
(1)時刻t1〜t2の期間
(1A)第1の溶接ワイヤへの通電
図3(A)に示す時刻t1に、電極プラス極性で第1のピーク電流通電期間ATpに第1のピーク電流AIpが通電する。
【0057】
(1B)第2の溶接ワイヤへの通電
同図(A)に示す時刻t1に、電極プラス極性で第2のピーク電流通電期間BTpに第2のピーク電流BIpが通電する。
【0058】
(2)時刻t2〜t3の期間
(2A)第1の溶接ワイヤへの通電
同図(A)に示す時刻t2において、電極プラス極性において、第1のベース電流通電期間ATbは溶滴移行しない範囲で予め設定した第1のベース電流AIbが通電する。
【0059】
(2B)第2の溶接ワイヤへの通電
(a)時刻t2〜t21の期間
時刻t2において第2のピーク電流通電期間BTpが終了すると、電極プラス極性で溶滴を成長させない範囲内で予め定めた第2の切換電流通電期間BTcは予め定めた第2の切換電流BIcを通電する。
【0060】
(b)時刻t21〜t22の期間
時刻t21において、電極プラス極性から電極マイナス極性へ切り換わると、第2の電極マイナス電流通電期間BTenは第2の電極マイナス電流BIenが通電する。
【0061】
(c)時刻t22〜t3の期間
時刻t22において、再び電極プラス極性になると、第2のベース電流通電期間BTbは第2のベース電流BIbが通電する。
【0062】
(3)時刻t3以降は、時刻t1〜t3の期間の動作を繰返す。
【0063】
図3に示した2電極パルスアーク溶接制御方法の電流波形を通電してマグ溶接を行うことによって、2つのアークの相互干渉によって発生するアーク形状の変形やアーク長の変動等のアーク発生状態の不安定性を抑制して、被溶接物への入熱を減少させて溶け込みを浅くすることができる。この結果、より薄い板厚に対してマグ溶接を行うことができる。また、過多の入熱量により割れ等が生じやすい材料に対しては、入熱量を減少することができ、割れの発生を防ぐことができる。従って、2電極パルスアーク溶接制御方法の適用範囲を著しく拡大することができる。
【0064】
[実施の形態4]
図4は、本発明の実施の形態4の2電極パルスアーク溶接制御方法の電流波形を示す図であって、同図(A)は、第1の溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、第2の溶接電流BIwの時間変化を示している。先行側の第1の溶接ワイヤには、実施の形態3のよりも被溶接物への溶け込みを浅くするために、交流のパルス電流を通電し、追従側の第2の溶接ワイヤにも、交流パルス電流を通電している。また、電極プラスのピーク電流の通電の立下りを、先行側と追従側とで同期させている。この電流波形は主に、マグ溶接で軟鋼を溶接するときに用いられる。
【0065】
(1)時刻t1〜t2の期間
(1A)第1の溶接ワイヤへの通電
図3(A)に示す時刻t1に、電極プラス極性で第1のピーク電流通電期間ATpに第1のピーク電流AIpが通電する。
【0066】
(1B)第2の溶接ワイヤへの通電
同図(A)に示す時刻t1に、電極プラス極性で第2のピーク電流通電期間BTpに第2のピーク電流BIpが通電する。
【0067】
(2)時刻t2〜t3の期間
(2A)第1の溶接ワイヤへの通電
(a)時刻t2〜t21の期間
時刻t2において第1のピーク電流通電期間ATpが終了すると、電極プラス極性で溶滴を成長させない範囲内で予め定めた第1の切換電流通電期間ATcは予め定めた第1の切換電流AIcを通電する。
【0068】
(b)時刻t21〜t22の期間
時刻t21において、電極プラス極性から電極マイナス極性へ切り換わると、第1の電極マイナス電流通電期間ATenは第1の電極マイナス電流AIenが通電する。
【0069】
(c)時刻t22〜t3の期間
時刻t22において、再び電極プラス極性になると、第1のベース電流通電期間ATbは第1のベース電流AIbが通電する。
【0070】
(2B)第2の溶接ワイヤへの通電
(a)時刻t2〜t21の期間
時刻t2において第2のピーク電流通電期間BTpが終了すると、電極プラス極性で溶滴を成長させない範囲内で予め定めた第2の切換電流通電期間BTcは予め定めた第2の切換電流BIcを通電する。
【0071】
(b)時刻t21〜t22の期間
時刻t21において、電極プラス極性から電極マイナス極性へ切り換わると、第2の電極マイナス電流通電期間BTenの間は第2の電極マイナス電流BIenが通電する。
【0072】
(c)時刻t22〜t3の期間
時刻t22において、再び電極プラス極性になると、第2のベース電流通電期間BTbは第2のベース電流BIbが通電する。
【0073】
(3)時刻t3以降は、時刻t1〜t3の期間の動作を繰返す。
【0074】
図4に示した2電極パルスアーク溶接制御方法の電流波形を通電してマグ溶接を行うことによって、2つのアークの相互干渉によって発生するアーク形状の変形やアーク長の変動等のアーク発生状態の不安定性を抑制して、実施の形態3よりも、被溶接物への入熱を減少させて溶け込みを浅くすることができる。この結果、より薄い板厚に対してマグ溶接を行うことができる。また、過多の入熱量により割れ等が生じやすい材料に対しては、入熱量を減少することができ、割れの発生を防ぐことができる。従って、2電極パルスアーク溶接制御方法の適用範囲を著しく拡大することができる。
【0075】
上述した交流パルス電流において、切換電流Icを通電しない方法もあるが、この切換電流Icを通電した方が、ピーク電流通電期間Tpから電極マイナス電流通電期間Tenへ切換えるときに発生するチリと呼ばれる細かなスパッタを減少させることができる。また、上述した直流パルス電流及び交流パルス電流のそれぞれのピーク電流通電期間には、立上り期間と立下り期間(図示を省略)とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態1の2電極パルスアーク溶接制御方法の電流波形を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態2の2電極パルスアーク溶接制御方法の電流波形を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態3の2電極パルスアーク溶接制御方法の電流波形を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態4の2電極パルスアーク溶接制御方法の電流波形を示す図である。
【図5】一般的な2電極パルスアーク溶接装置の構成図である。
【図6】従来技術1の2電極パルスアーク溶接制御方法の電流波形を示す図である。
【図7】アルゴンガスに炭酸ガスが混合されたシールドガスを噴出して軟鋼を溶接する場合、2本の溶接ワイヤに同時にピーク電流が通電されたときのアークの発生状態を示す図である。
【図8】アルミニウム又はステンレスを溶接する場合に、2本の溶接ワイヤに同時にピーク電流が通電されたときのアークの発生状態を示す図である。
【図9】従来技術2の2電極パルスアーク溶接制御方法の電流波形を示す図である。
【図10】従来技術3の交流パルスアーク溶接制御方法の電流波形を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
2 被溶接物
6 ロボット制御装置
7 溶接トーチ
8 溶融池
A1 第1の溶接ワイヤ
A3 第1のアーク
A4 第1のコンタクトチップ
A5 第1の溶接電源装置
AE 第1の電力
AIb 第1のベース電流
AIc 第1の切換電流
AIen 第1の電極マイナス電流
AIp 第1のピーク電流
AIw 第1の溶接電流
ATb 第1のベース電流通電期間
ATc 第1の切換電流通電期間
ATen 第1の電極マイナス電流通電期間
ATp 第1のピーク電流通電期間
AW 第1のワイヤ送給装置
AWc 第1の送給制御信号
B1 第2の溶接ワイヤ
B3 第2のアーク
B4 第2のコンタクトチップ
B5 第2の溶接電源装置
BIb 第2のベース電流
BIc 第2の切換電流
BIen 第2の電極マイナス電流
BIp 第2のピーク電流
BIw 第2の溶接電流
BTb 第2のベース電流通電期間
BTc 第2の切換電流通電期間
BTen 第2の電極マイナス電流通電期間
BTp 第2のピーク電流通電期間
BW 第2のワイヤ送給装置
BWc 第2の送給制御信号
Ib ベース電流
Ic 切換電流
Ien 電極マイナス電流
Ip ピーク電流
Tb ベース電流通電期間
Tc 切換電流通電期間
Ten 電極マイナス電流通電期間
Tp ピーク電流通電期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された第1の溶接ワイヤ及び第2の溶接ワイヤをそれぞれ予め設定した送給速度で送給し、
前記第1の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第1のピーク電流の通電と予め設定した第1のベース電流の通電とを1周期とする通電を繰り返すと共に、
前記第2の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第2のピーク電流を通電し、続けて電極マイナス極性で予め設定した第2の電極マイナス電流を通電し、続けて再び前記電極プラス極性で予め設定した第2のベース電流を通電し、前記通電を1周期として繰り返し、
前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤと被溶接物との間に2つのアークを発生させてミグ溶接する2電極パルスアーク溶接制御方法において、
前記第1のピーク電流及び前記第2のピーク電流のうち一方のピーク電流通電期間中に他方のピーク電流通電期間の全部又は一部が無いことを特徴とする2電極パルスアーク溶接制御方法。
【請求項2】
1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された第1の溶接ワイヤ及び第2の溶接ワイヤをそれぞれ予め設定した送給速度で送給し、
前記第1の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第1のピーク電流を通電し、続けて電極マイナス極性で予め設定した第1の電極マイナス電流を通電し、続けて再び前記電極プラス極性で予め設定した第1のベース電流を通電し、前記通電を1周期として繰り返すと共に、
前記第2の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第2のピーク電流を通電し、続けて電極マイナス極性で予め設定した第2の電極マイナス電流を通電し、続けて再び前記電極プラス極性で予め設定した第2のベース電流を通電し、前記通電を1周期として繰り返し、
前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤと被溶接物との間に2つのアークを発生させてミグ溶接する2電極パルスアーク溶接制御方法において、
前記第1のピーク電流及び前記第2のピーク電流のうち一方のピーク電流通電期間中に他方のピーク電流通電期間の全部又は一部が無いことを特徴とする2電極パルスアーク溶接制御方法。
【請求項3】
1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された第1の溶接ワイヤ及び第2の溶接ワイヤをそれぞれ予め設定した送給速度で送給し、
前記第1の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第1のピーク電流の通電と予め設定した第1のベース電流の通電とを1周期とする通電を繰り返すと共に、
前記第2の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第2のピーク電流を通電し、続けて電極マイナス極性で予め設定した第2の電極マイナス電流を通電し、続けて再び前記電極プラス極性で予め設定した第2のベース電流を通電し、前記通電を1周期として繰り返し、
前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤと被溶接物との間に2つのアークを発生させてマグ溶接する2電極パルスアーク溶接制御方法において、
前記第1のピーク電流の立下りと前記第2のピーク電流の立下りとを同期させることを特徴とする2電極パルスアーク溶接制御方法。
【請求項4】
1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された第1の溶接ワイヤ及び第2の溶接ワイヤをそれぞれ予め設定した送給速度で送給し、
前記第1の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第1のピーク電流を通電し、続けて電極マイナス極性で予め設定した第1の電極マイナス電流を通電し、続けて再び前記電極プラス極性で予め設定した第1のベース電流を通電し、前記通電を1周期として繰り返すと共に、
前記第2の溶接ワイヤには電極プラス極性で予め設定した第2のピーク電流を通電し、続けて電極マイナス極性で予め設定した第2の電極マイナス電流を通電し、続けて再び前記電極プラス極性で予め設定した第2のベース電流を通電し、前記通電を1周期として繰り返し、
前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤと被溶接物との間に2つのアークを発生させてマグ溶接する2電極パルスアーク溶接制御方法において、
前記第1のピーク電流の立下りと前記第2のピーク電流の立下りとを同期させることを特徴とする2電極パルスアーク溶接制御方法。
【請求項5】
前記ピーク電流の通電と前記電極マイナス電流の通電との間に電極プラス極性で予め定めた切換電流を通電することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の2電極パルスアーク溶接制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−192471(P2006−192471A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6998(P2005−6998)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】