説明

4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン水溶液を用いた、ガス混合物からのCO2吸収

【課題】ガス混合物からCO2を吸収する方法、並びに吸収媒体、及び前記方法を実施するための装置であって、従来技術の欠点が解消されたものを提供すること。
【解決手段】ガス混合物を吸収媒体と接触させることにより、ガス混合物からCO2を吸収する方法において、前記吸収媒体が、水と、請求項1記載の式(I)の少なくとも1つのアミンとを含有し、当該式中、R1及びR2が相互に独立して水素、又はアルキル基であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス混合物からCO2を吸収する方法、並びに吸収媒体、及び前記方法を実施するための装置に関する。
【0002】
ガス混合物からCO2を吸収することは、煙道ガスからの二酸化炭素の除去にとって特に興味深く、とりわけ発電プロセスからの二酸化炭素放出(これはいわゆる温室効果の主要因と考えられている)の回避のために興味深い。さらに、いくつかのプロセスにとって二酸化炭素は必要であり、本発明による方法によって本方法のためにCO2を出発原料として用意することができる。
【背景技術】
【0003】
工業的なスケールでは、ガス混合物からCO2を吸収するために通常、アルカノールアミン水溶液を吸収媒体として使用する。負荷された吸収媒体は、加熱、より低圧への放圧、又はストリッピングにより再生され、この際に二酸化炭素が脱着される。再生プロセス後に、吸収媒体は再度使用できる。この方法は例えば、Rolker, J.; ArIt, W.著"Abtrennung von Kohlendioxid aus Rauchgasen mittels Absorption" Chemie Ingenieur Technik 2006, 78, 416〜424頁に記載されている。
【0004】
この方法には、吸収及び後続の脱着によりCO2を分離するために比較的多くのエネルギーが必要となり、脱着の際には吸収されたCO2の一部しか再び脱着されないため、吸収と脱着という循環におけるCO2吸収に利用されるアルカノールアミンの割合が僅かであるという欠点がある。これに加えて、使用される吸収媒体は非常に腐蝕性であり、酸素含有ガス混合物からCO2を吸収する際には、不都合な酸化性分解を被る。
【0005】
米国特許第7,419,646号公報は、排ガスの脱酸方法を記載しており、この方法では、酸性ガス吸収の際に2つの相互に分離可能な相を形成する吸収媒体が使用される。酸性ガス吸収のための反応性化合物としては、第6コラムでとりわけ4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンが挙げられている。CO2吸収のためにUS 7,419,646は、第3コラム、22〜32行目で
N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、
N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジプロピレントリアミン、
N,N−ビス(2,2−ジエトキシ−エチル)メチルアミン、及び
N,N−ジメチルジプロピレントリアミン
を吸収のための反応性化合物として使用することを開示している。US 7,419,646の方法には、吸収の際に生じる2つの相を分離するためのさらなる装置が必要であるという欠点がある。
【0006】
東独国特許出願第266 799号公報は、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの精製法を記載しており、この方法ではCO2を、水及びアセトン中の4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン溶液に導入し、沈殿した塩を90〜200℃に加熱することにより、再度CO2と4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンに分解させる。
【0007】
CO2吸収のためのイオン性液体の使用は、X. Zhang et al., "Screening of ionic Liquids to Capture CO2 by COSMO-RS and Experiments", AIChE Journal, Vol. 54, p2171〜2728に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,419,646号公報
【特許文献2】東独国特許出願第266 799号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Rolker, J.; ArIt, W.著、"Abtrennung von Kohlendioxid aus Rauchgasen mittels Absorption" Chemie Ingenieur Technik 2006, 78, 416〜424頁
【非特許文献2】X. Zhang et al.著、"Screening of ionic Liquids to Capture CO2 by COSMO-RS and Experiments", AIChE Journal, Vol. 54, 2171〜2728頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ガス混合物からCO2を吸収する方法、並びに吸収媒体、及び前記方法を実施するための装置であって、従来技術の上記欠点が解消されたものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
公知の方法の欠点は意外なことに、CO2吸収のために4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを使用することにより回避できることが判明し、ここで4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンは4−アミノ基のところで1つ又は2つのアルキル基によって置換されていてよい。
【0012】
よって本発明の対象は、水及び少なくとも1つの式(I)
【化1】

[式中、R1及びR2は相互に独立して水素、又はアルキル基である]
のアミンを含有する吸収媒体を、ガス混合物と接触させることによってガス混合物からCO2を吸収するための方法である。
【0013】
本発明の対象はさらに、式(I)のアミン、水、及びスルホランを含有する吸収媒体、並びに式(I)のアミン、水、及びイオン性液体を含有する吸収媒体である。
【0014】
本発明の対象はさらにまた、吸収ユニット、脱着ユニット、及び循環に導入される吸収媒体を有する、ガス混合物からCO2を分離するための装置であり、前記吸収媒体は、水、及び式(I)のアミンを含有するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明による方法、及び本発明による吸収媒体により、式(I)のアミンを少なくとも1つ吸収媒体で用いれば、公知の方法と吸収媒体と比べて、とりわけ技術的に頻繁に使用されるアルカノールアミンと比べて、吸収時に吸収媒体のより高いCO2負荷度が可能になる。ここで負荷度とは本発明の意味合いにおいて、吸収媒体中のCO2対アミンのモル比をいう。さらに本発明による方法の吸収媒体は、アルカノールアミンを含む吸収媒体と比べて、腐蝕性や毒性がより低く、CO2に対する化学吸着速度はより早く、酸素による酸化分解性が低い。吸収と脱着からの循環プロセスの実施態様では、公知の方法及び吸収媒体と比べてさらに、とりわけアルカノールアミンと比べて、改善された二酸化炭素ハブが達成されろ。ここで二酸化炭素ハブとは本発明の意味合いにおいて、吸収後の吸収媒体のCO2負荷度と、CO2脱着後の吸収媒体のCO2負荷度との差をいう。これらの利点により、CO2分圧が低いガス混合物からCO2を効果的に吸収することが可能になり、また従来技術から公知の方法に比べて装置の小型化、及びエネルギー消費の低下が可能になる。腐蝕性がより低いため、本発明による方法ではさらに腐食防止剤も、公知の方法に比べて必要となる量が少ない。
【0016】
水及び式(I)のアミンに加えてさらにスルホランを含有する本発明による吸収媒体は、さらに改善された二酸化炭素ハブを示し、とりわけ温度上昇によるCO2脱着による方法の場合にそうである。
【0017】
水及び式(I)のアミンに加えてさらに少なくとも1つのイオン性液体を含有する本発明による吸収媒体により、CO2脱着をより高い温度及び/又はより低い圧力で行うことができ、脱着の際の溶剤損失、又は水の蒸発による固体の沈殿、又は吸収剤の相分離につながることはない。
【0018】
本発明による方法においてCO2の吸収は、ガス混合物と、水及び少なくとも1つの式(I)
【化2】

[式中、R1及びR2は相互に独立して水素、又はアルキル基である]
のアミンを含有する吸収媒体とを接触させることにより行う。
【0019】
本発明による方法は原則的に、CO2を含有するあらゆるガス混合物によって、特に燃焼排ガスによって行うことができる;生物学的プロセスからの排ガス、例えばコンポスト化、発酵、又は浄化装置からの排ガス;か焼プロセスからの排ガス、例えば石灰燃焼、及びセメント製造からの排ガス;鉄製造の高炉プロセスからの残留ガス;並びに化学法からの残留ガス、例えばカーボンブラック製造、又は蒸気改質による水素製造からの残留ガス。ガス混合物は好適には、燃焼排ガス、特に好ましくはCO2を1〜60体積%、とりわけ2〜20体積%含む燃焼排ガスである。特に好ましい実施態様においてガス混合物は、発電工程からの燃焼排ガス、とりわけ発電工程からの脱硫された燃焼排ガスである。発電工程からの脱硫された燃焼排ガスによる、特に好ましい実施態様においては、発電工程のためのあらゆる公知の脱硫法が使用でき、好適には石灰乳による、又はベルマン−ロード法(Wellmann-Lord-Verfahren)によるガス洗浄が使用できる。
【0020】
本発明による方法では、吸収媒体は式(I)のアミンを少なくとも1つ含み、式中、R1及びR2は相互に独立して水素、又はアルキル基である。好ましいアルキル基は、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基、とりわけメチル基である。特に好ましい実施態様において、R1及びR2は水素である。
【0021】
式(I)のアミンは、市販のトリアセトンアミンから、還元アミノ化によって、すなわちトリアセトンアミンを式R12NHのアミン及び水素と、水素化触媒の存在下で反応させることによって製造できる。トリアセトンアミンの還元アミノ化法は、従来技術から当業者に公知であり、例えばEP 0 033 529からは、R1、R2=Hの式(I)のアミンが製造される。
【0022】
本発明による方法において吸収媒体は、少なくとも1つの式(I)のアミンに加えて、水も含む。吸収媒体中の水対式(I)のアミンの質量比は好適には、10:1〜1:10の範囲、特に好適には5:1〜1:1の範囲、及びとりわけ4:1〜2:1の範囲にある。吸収媒体は好適には、式(I)のアミンを少なくとも5質量%、特に好適には少なくとも10質量%、及びとりわけ少なくとも25質量%含む。
【0023】
本発明による方法のためには、ガス混合物と吸収媒体とを接触させるため、気相と液相との接触に適したあらゆる装置が使用可能である。
【0024】
好適には従来技術から公知のガス洗浄器、又は吸収塔を使用し、例えば膜接触器、放射流洗浄器、ジェット式洗浄器(Strahlwaescher)、ベンチュリー洗浄器、回転スプレー洗浄器、不規則充填塔、規則充填塔、及び棚段塔(Bodenkolonnen)である。
【0025】
特に好ましくは、吸収塔を向流稼働で使用する。
【0026】
本発明による方法において、CO2吸収は好適には、0〜70℃の範囲、特に好ましくは20〜50℃の範囲の吸収媒体温度で行う。吸収塔を向流稼働で使用する際、吸収媒体の温度は特に好ましくは、塔に入る際に30〜60℃であり、塔を出る際には35〜70℃である。
【0027】
CO2吸収は好適には、0.8〜50barの範囲、特に好ましくは0.9〜30barの範囲のガス混合物圧力で行う。特に好ましい実施態様において吸収は、ガス混合物の全圧が0.8〜1.5barの範囲、とりわけ0.9〜1.1barの範囲で行う。この特に好ましい実施態様により、発電所の燃焼排ガスからのCO2吸収が、燃焼排ガスを圧縮することなく可能になる。
【0028】
本発明による方法において吸収媒体は、水及び少なくとも1つの式(I)のアミンに加えて、さらに1つ又は複数の溶剤を含むことができる。
【0029】
本発明による吸収媒体は好適には、水及び少なくとも1つの式(I)のアミンに加えてさらにスルホラン(CAS−No.126-33-0)を含み、そのスルホラン割合は好適には少なくとも5質量%、特に好ましくは少なくとも10質量%、及びとりわけ少なくとも25質量%である。水対スルホランの質量比はこのような吸収媒体において、好ましくは10:1〜1:1の範囲、特に好ましくは5:1〜2:1の範囲にある。スルホラン対式(I)のアミンの質量比は、好ましくは3:1〜1:3の範囲、特に好ましくは2:1〜1:2の範囲にある。
【0030】
さらなる実施態様において本発明による吸収媒体は、水及び少なくとも1つの式(I)のアミンに加えてさらに少なくとも1つのイオン性液体を含み、そのイオン性液体の割合は好適には少なくとも5質量%、特に好ましくは少なくとも10質量%、及びとりわけ少なくとも25質量%である。水対イオン性液体の質量比はこのような吸収媒体の場合、好ましくは10:1〜1:1の範囲、特に好ましくは5:1〜2:1の範囲にある。イオン性液体対式(I)のアミンの質量比は、好ましくは3:1〜1:10の範囲、特に好ましくは2:1〜1:5の範囲にある。
【0031】
イオン性液体とは本発明の意味合いにおいて、アニオン及びカチオンからの塩、又はこれらの塩の混合物であり、ここで塩若しくは塩の混合物は、融点が100℃未満である。イオン性液体は好適には、有機カチオンと、有機若しくは無機のアニオンとの1つ又は複数の塩から成る。異なる有機カチオンと同じアニオンとを有する複数の塩からの混合物が、特に好ましい。
【0032】
有機カチオンとして適しているのはとりわけ、式(II)〜(VI)
【化3】

のカチオンであり、
前記式中、
1、R2、R3、R4、R5、R6は同じであっても異なっていてもよく、水素、1〜30個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族又はオレフィン系の炭化水素基、5〜40個の炭素原子を有する脂環式又はシクロオレフィン系炭化水素基、6〜40個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、7〜40個の炭素原子を有するアルキルアリール基、以下の基−O−、−NH−、−NR’−、−O−C(O)−、−(O)−C−O−、−NH−C(O)−、−(O)C−NH−、−(CH3)N−C(O)−、−(O)C−N(CH3)−、−S(O2)−O−、−O−S(O2)−、−S(O2)−NH−、−NH−S(O2)、−S(O2)−N(CH3)−、又は−N(CH3)−S(O2)−の1つ又は複数によって中断されていてよい、2〜30個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族又はオレフィン系炭化水素基、末端でOH、OR’、NH2、N(H)R’、又はN(R’)2によって官能化された、1〜30個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族又はオレフィン系炭化水素基、又はブロック状若しくはランダムに構成された式−(R7−O)n−R8のポリエーテル基であり、ここで式(VI)のカチオンについてR5は水素ではなく、
R’は1〜30個の炭素原子を有する脂肪族又はオレフィン系の炭化水素基であり、
7は2〜4個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基であり、
nは1〜200、好適には2〜60であり、
8は水素、1〜30個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族又はオレフィン系炭化水素基、5〜40個の炭素原子を有する脂環式又はシクロオレフィン系炭化水素基、6〜40個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、7〜40個の炭素原子を有するアルキルアリール基、又は−C(O)−R9基であり、
9は1〜30個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族又はオレフィン系炭化水素基、5〜40個の炭素原子を有する脂環式又はシクロオレフィン系炭化水素基、6〜40個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、又は7〜40個の炭素原子を有するアルキルアリール基であり、
Xは酸素原子、又は硫黄原子であり、
ここでR1、R2、R3、R4、R5、及びR6のうち少なくとも1つ、好適にはすべてが水素とは異なる。
【0033】
同様に式(II)〜(VI)のカチオンは、基R1及びR3が一緒に4〜10員環、好適には5〜6員環を形成するものが適している。
【0034】
式(V)のカチオンでは好適には、基R1〜R5がメチル基であり、基R6がエチル基又はn−プロピル基である。
【0035】
式(VI)のカチオンでは好適には、基R1〜R4がメチル基である。
【0036】
同様に適しているのは、先に定義した基R1を有する環中に第四級窒素原子を少なくとも1つ有するヘテロ芳香族カチオン、好適には窒素原子のところで置換された、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、イソキノリン、シノリン、キノキサリン、又はフタラジンの誘導体である。
【0037】
無機アニオンとして適しているのはとりわけ、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、水酸化物イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、及びハロゲン化物イオン、好適には塩化物イオンである。
【0038】
有機アニオンとして適しているのはとりわけ、RaOSO3-、RaSO3-、RaOPO32-、(RaO)2PO2-、RaPO32-、RaCOO-、Ra-、(RaCO)2-、(RaSO22-、NCN-、Rb3PF3-、及びRbBF3-であり、ここでRaは1〜30個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族炭化水素基、5〜40個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜40個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、7〜40個の炭素原子を有するアルキルアリール基、又は1〜30個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のペルフルオロアルキル基であり、Rbは1〜30個の炭素原子、好適には1〜3個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基である。
【0039】
好ましい実施態様においてイオン性液体は、1つ又は複数の1,3−ジアルキルイミダゾリウム塩を含み、ここでアルキル基は特に好ましくは相互に独立してメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、及びn−ヘキシルから選択されている。
【0040】
さらなる好ましい実施態様においてイオン性液体は、一価のアニオンと一般式(II)のカチオンとを有する1つ又は複数の第四級アンモニウム塩を含み、
前記式中、
1は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、
2は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、
3は基(CH2CHRO)n−H、ただし、nは1〜200であり、R=H又はCH3であり、
4は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、又は基(CH2CHRO)n−H、ただし、nは1〜200であり、R=H又はCH3である。
【0041】
イオン性液体の製造方法は、従来技術から当業者に公知である。
【0042】
本発明による吸収媒体は、水及び少なくとも1つの式(I)のアミンに加えて、イオン性液体もスルホランも含有することができる。
【0043】
本発明による方法では好ましくは、上記の本発明による吸収媒体を使用する。
【0044】
本発明による方法では、吸収媒体は既に挙げた成分に加えて更に添加剤、好適には腐食防止剤、及び/又は濡れ作用のある添加剤を含有することができる。
【0045】
本発明による方法では腐食防止剤として、CO2吸収のための方法でアルカノールアミンを用いる際に適切な腐食防止剤として当業者に知られているすべての物質が使用でき、とりわけUS 4,714,597に記載された腐食防止剤である。
【0046】
濡れ作用のある添加剤として好適には、非イオン性界面活性剤、双性イオン界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤の群からの界面活性剤を、1つ又は複数使用する。
【0047】
適切な非イオン性界面活性剤は、アルキルアミンアルコキシレート、アミドアミン、アルカノールアミド、アルキルホスフィンオキシド、アルキル−N−グルカミド、アルキルグルコシド、胆汁酸、アルキルアルコキシレート、ソルビタンエステル、ソルビタンエステルエトキシレート、脂肪アルコール、脂肪酸エトキシレート、エステルエトキシレート、及びポリエーテルシロキサンである。
【0048】
適切な双性イオン界面活性剤は、ベタイン、アルキルグリシン、スルタイン(Sultaine)、両性プロピオネート、両性アセテート、第三級アミンオキシド、及びシリコベタインである。
【0049】
適切なカチオン性界面活性剤は、8〜20個の炭素原子を有する1つ又は2つの置換基を有する第四級アンモニウム塩、とりわけ相応するテトラアルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、エステル第四級化合物(Esterquat)、ジアミドアミン第四級化合物、イミダゾリニウム第四級化合物、アルコキシアルキル第四級化合物、ベンジル第四級化合物、及びシリコーン第四級化合物である。
【0050】
好ましい実施態様では、濡れ作用のある添加剤は、一般式
R(OCH2CHR’)mOH
の非イオン性界面活性剤を1つ又は複数含み、前記式中、mは4〜40であり、Rは8〜20個の炭素原子を有するアルキル基、8〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール基、又は3〜40個のプロピレンオキシド単位を有するポリプロピレンオキシド基であり、R’はメチル、又は好適には水素である。
【0051】
さらなる好ましい実施態様では、濡れ作用のある添加剤は、[Si(CH32O]単位を10質量%超、及び[CH2CHR−O]単位を10質量%超含有するポリエーテル−ポリシロキサンコポリマーを含み、ここでRは水素又はメチルである。特に好ましいのは、一般式(VII)〜(IX)
【化4】

のポリエーテルポリシロキサンコポリマーであり、
前記式中、
Aは式−[CH2CHR3−O]r−の二価の基であり、
Bは式−[Si(CH32−O]s−の二価の基であり、
Zは2〜20個の炭素原子を有する二価の直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、好適には−(CH23−であり、
n=1〜30であり、
m=2〜100であり、
p、q=0又は1であり、
r=2〜100であり、
s=2〜100であり、
基R1のうち1〜5個は一般式−Z−O−A−R2の基であり、残りの基R1はメチルであり、
2は水素、又は1〜20個の炭素原子を有する脂肪族又はオレフィン系のアルキル基又はアシル基であり
3は水素又はメチルである。
【0052】
濡れ作用のある添加剤は、従来技術から既に当業者に水溶液用添加剤として知られており、従来技術から公知の方法に従って製造できる。
【0053】
本発明による方法では、吸収における温度及び圧力、並びに吸収媒体の組成を、好適にはCO2吸収後の吸収媒体が一相で存在するように、すなわち、吸収媒体におけるCO2吸収が、固体の沈殿、又は第二の液相の分離(Abscheidung)につながらないように選択する。この本発明による方法の好ましい実施態様は、相分離のための付加的な装置を必要とせず、従来技術から公知の、アルカノールアミンによるCO2吸収のための装置で行うことができる。
【0054】
本発明による方法の好ましい実施態様では、吸収媒体に吸収されたCO2は、温度の上昇及び/又は圧力の低下により再度脱着され、吸収媒体はCO2脱着後に再度CO2吸収のために使用される。吸収と脱着から成るこのような循環プロセスにより、CO2をガス混合物から完全に、又は部分的に分離でき、ガス混合物の他の成分とは別に得ることができる。
【0055】
温度の上昇若しくは圧力の低下に代えて、又は温度の上昇若しくは圧力の低下に加えて、脱着はCO2負荷された吸収媒体をガスでストリッピングすることにより行うこともできる。
【0056】
CO2脱着の際、吸収媒体から付加的に水も除去される場合、吸収媒体には、吸収に再び使用する前に場合によりさらに水を添加することができる。
【0057】
脱着のためには、液体からのガス脱着のために従来技術から公知のあらゆる装置が使用できる。脱着は好適には、脱着塔で行う。CO2の脱着は代替的には、1つ又は複数のフラッシュ蒸発段階で行うこともできる。
【0058】
温度上昇により脱着を行う場合、CO2の脱着は好適には、50〜200℃の範囲、特に好適には80〜150℃の範囲の吸収媒体温度で行う。ここで脱着の際の温度は好適には、少なくとも20℃、特に好ましくは少なくとも50℃、吸収の際の温度を上回る。
【0059】
圧力低下による脱着の場合、CO2の脱着は好適には、気相における全圧で0.01〜10barの範囲、とりわけ0.1〜5barの範囲で行う。ここで脱着の際の圧力は好適には、少なくとも1.5bar、特に好ましくは少なくとも4bar、吸収の際の圧力を下回る。
【0060】
温度上昇による脱着の場合、CO2脱着の際の圧力は、CO2吸収の際の圧力よりも高くてよい。この実施態様では、CO2脱着の際の圧力は好適には、最大5bar、特に好適には最大3bar、CO2吸収の際の圧力を上回る。この実施態様によれば、ガス混合物から分離されたCO2を、機械的なエネルギーを投入せずにガス混合物の圧力より高い圧力に圧縮することができる。
【0061】
ガス混合物からCO2を分離するための本発明による装置は、吸収ユニット、脱着ユニット、及び循環に導入される本発明による吸収媒体を有する。本発明による装置の吸収ユニットとして適しているのは、先に本発明による方法における吸収で記載した装置である。本発明による装置の脱着ユニットとして適しているのは、先に本発明による方法における脱着で記載した装置である。本発明による装置は好適には、アルカノールアミンを用いたガス混合物からのCO2分離のために当業者に知られた、吸収ユニットと脱着ユニットを有する。
【0062】
本発明による方法、及び本発明による吸収媒体により、式(I)のアミンを少なくとも1つ吸収媒体で用いれば、公知の方法と吸収媒体と比べて、とりわけ技術的に頻繁に使用されるアルカノールアミンと比べて、吸収時に吸収媒体のより高いCO2負荷度が可能になる。ここで負荷度とは本発明の意味合いにおいて、吸収媒体中のCO2対アミンのモル比をいう。さらに本発明による方法の吸収媒体は、アルカノールアミンを含む吸収媒体と比べて、腐蝕性や毒性がより低く、CO2に対する化学吸着速度はより早く、酸素による酸化分解性が低い。吸収と脱着からの循環プロセスの実施態様では、公知の方法及び吸収媒体と比べてさらに、とりわけアルカノールアミンと比べて、改善された二酸化炭素ハブが達成されろ。ここで二酸化炭素ハブとは本発明の意味合いにおいて、吸収後の吸収媒体のCO2負荷度と、CO2脱着後の吸収媒体のCO2負荷度との差をいう。これらの利点により、CO2分圧が低いガス混合物からCO2を効果的に吸収することが可能になり、また従来技術から公知の方法に比べて装置の小型化、及びエネルギー消費の低下が可能になる。腐蝕性がより低いため、本発明による方法ではさらに腐食防止剤も、公知の方法に比べて必要となる量が少ない。
【0063】
水及び式(I)のアミンに加えてさらにスルホランを含有する本発明による吸収媒体は、さらに改善された二酸化炭素ハブを示し、とりわけ温度上昇によるCO2脱着による方法の場合にそうである。
【0064】
水及び式(I)のアミンに加えてさらに少なくとも1つのイオン性液体を含有する本発明による吸収媒体により、CO2脱着をより高い温度及び/又はより低い圧力で行うことができ、脱着の際の溶剤損失、又は水の蒸発による固体の沈殿、又は吸収剤の相分離につながることはない。
【0065】
以下の実施例により本発明を説明するが、本発明の対象はこれにより制限されることはない。
【実施例】
【0066】
実施例1
温度調節され、圧力制御を備える気液平衡測定装置に、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン30質量%と、水70質量%とからなる混合物を一定の温度で装入し、気体の二酸化炭素と一定の圧力で接触させたのだが、圧力と温度を様々に変えた。それぞれ平衡状態に達した後に、吸収されたCO2含分を負荷された吸収剤中で測定し、その測定結果から、負荷された吸収剤中のCO2対アミンのモル比として負荷度を算出した。試験した温度と圧力、測定された負荷度は、表1にまとめてある。
【0067】
実施例2
4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン30質量%、スルホラン35質量%、及び水35質量%から成る混合物を用いて、実施例1を繰り返した。
【0068】
実施例3(比較例)
モノエタノールアミン(MEA)30質量%と、水70質量%とから成る混合物を用いて、実施例1を繰り返した。
【0069】
負荷度から、表2に記載された吸収と脱着についての二酸化炭素ハブ(1.5bar、40℃から120℃への温度上昇による脱着)と、表3に記載された吸収と脱着についての二酸化炭素ハブ(120℃、1.5barから0.8barへの圧力低下による脱着)が得られる。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス混合物を吸収媒体と接触させることにより、ガス混合物からCO2を吸収する方法において、
前記吸収媒体が、水と、少なくとも1つの式(I)
【化1】

[式中、R1及びR2は相互に独立して水素、又はアルキル基である]
のアミンとを含有することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記ガス混合物が燃焼排ガスであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸収媒体が、CO2吸収後に一相で存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
式(I)中で、R1及びR2が水素であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
吸収媒体における水対式(I)のアミンの質量比が、10:1〜1:10の範囲にあることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記吸収媒体が、式(I)のアミンを少なくとも5質量%含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
吸収媒体に吸収されたCO2が、温度の上昇及び/又は圧力の低下により再度脱着され、前記吸収媒体がこのCO2脱着後に、再度CO2吸収に使用されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
吸収を0〜70℃の範囲の温度で行い、脱着を50〜200℃の範囲のより高い温度で行うことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
吸収を0.8〜50barの範囲の圧力で行い、脱着を0.01〜10barの範囲のより低い圧力で行うことを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
水、スルホラン、及び少なくとも1つの式(I)
【化2】

[式中、R1及びR2は相互に独立して水素、又はアルキル基である]
のアミンを含有する、ガス混合物からCO2を吸収するための吸収媒体。
【請求項11】
水対スルホランの質量比が、10:1〜1:1の範囲にあることを特徴とする、請求項10に記載の吸収媒体。
【請求項12】
スルホラン対式(I)のアミンの質量比が、3:1〜1:3の範囲にあることを特徴とする、請求項10又は11に記載の吸収媒体。
【請求項13】
水、少なくとも1つのイオン性液体、及び少なくとも1つの式(I)
【化3】

[式中、R1及びR2は相互に独立して水素、又はアルキル基である]
のアミンを含有する、ガス混合物からCO2を吸収するための吸収媒体。
【請求項14】
水対イオン性液体の質量比が、10:1〜1:1の範囲にあることを特徴とする、請求項13に記載の吸収媒体。
【請求項15】
イオン性液体対式(I)のアミンの質量比が、3:1〜1:10の範囲にあることを特徴とする、請求項13又は14に記載の吸収媒体。
【請求項16】
式(I)中で、R1及びR2が水素であることを特徴とする、請求項10から15までのいずれか1項に記載の吸収媒体。
【請求項17】
水対式(I)のアミンの質量比が、10:1〜1:10の範囲にあることを特徴とする、請求項10から16までのいずれか1項に記載の吸収媒体。
【請求項18】
式(I)のアミンを少なくとも5質量%含むことを特徴とする、請求項10から17までのいずれか1項に記載の吸収媒体。
【請求項19】
吸収媒体が、請求項10から18までのいずれか1項に記載の吸収媒体であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
吸収ユニット、脱着ユニット、及び循環に導入される吸収媒体を有する、ガス混合物からCO2を分離するための装置において、請求項10から18までのいずれか1項に記載の吸収媒体を有することを特徴とする、前記装置。

【公開番号】特開2012−223766(P2012−223766A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158004(P2012−158004)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【分割の表示】特願2011−546858(P2011−546858)の分割
【原出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】