説明

APD測定装置

【課題】インタフェースの転送容量やソフトウェア処理側の記憶容量を不足させることなく、大量にサンプリングされた信号レベルをソフトウェア処理側に転送することができるAPD測定装置を提供すること。
【解決手段】ハードウェア部2は、測定対象信号が所定のサンプリングレートでサンプリングされた各周波数帯域成分の信号レベルの時系列の差分値を算出する差分算出部21と、差分値を可逆な可変長ビットに対応させたテーブルを格納するテーブル格納部22と、信号レベルの時系列の差分値をテーブルに基づいて可変長ビットの列に変換するコード変換部23と、APDの作成用のPDFデータと共に、周波数帯域成分毎の信号レベルの初期値およびコード変換部23によって変換された可変長ビットの列をソフトウェア処理部3に転送するバッファ20、24とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、APD(Amplitude Probability Distribution、振幅確率分布)を測定するAPD測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
APD測定は、振幅が一定レベルを超える受信信号の時間確率を求める統計データの取得方法の1つであり、統計的に受信信号を観測することにより、瞬時に見て取れない信号特性を観測することができる。
【0003】
従来のAPD測定装置としては、受信信号をアナログデジタル変換器(以下、単に「A/D変換器」という)でデジタルデータに変換して、その出力をフィルタバンクで複数の周波数帯域成分に振り分けて、各周波数帯域成分の振幅を個々に所望の量で重み付けをして合成し、その出力を受けて重付APDが合成後の合成振幅の発生頻度に基づく確率を求め、求めた確率を様々な態様で表示部に表示させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなAPD測定装置の測定対象とする信号の帯域が広い場合には、時間的な信号の振る舞いをつぶさに観測しようとすると、この帯域のなかで最も高い周波数の2倍以上の速さで信号をサンプリングして観測する必要がある。例えば、測定帯域が10MHzの場合は、その帯域の10倍の10M×10=100M/秒でサンプリングしてデータを観測する必要がある。
【0005】
この膨大なデータのAPDを測定する場合には、データを実時間処理で記憶し累積する必要が生じてくる。この実時間処理を減らすため、従来のAPD測定装置は、サンプリングしたデータを実用に差し支えない精度で量子化して、ある一定時間(例えば、1秒間)あたりの出現頻度を蓄えることにより、確率密度関数(PDF、Probability Density function)のデータを作成する。
【0006】
このPDFデータは、一定時間毎(例えば、1秒毎)に発生するので、PDFデータを累積加算して求める分布関数であるAPD統計データを作成する処理は、実時間で実行する必要はなく、一定時間毎に処理することができて、表示処理や信号処理等のより複雑なハードウェアでは対応しがたい処理を容易に処理できるソフトウェア処理により実行することができる。
【0007】
ソフトウェア処理は、処理速度の点ではハードウェアに比べれば遅いが、製造コスト面や将来の技術継承性では非常によい実現方法であり、判断子を含む制御等のような、より複雑な処理ができ、ソフトウェア処理の有用性を含めてハードウェア処理との並存が有効な実現手段となる。
【0008】
このように従来のAPD測定装置は、実時間処理と非実時間処理との2つの処理によってAPD測定を実現するようになっている。ここで、実時間処理は、ハードウェアによって処理され、非実時間処理は、ソフトウェアによって処理される。
【0009】
ハードウェアにおいては、受信信号が、同相(In-Phase、以下、単に「I」という)成分と直交(Quadrature-Phase、以下、単に「Q」という)成分とに分離され、包絡線検波され、対数変換される。
【0010】
ここで、信号レベルを0.1dB毎にカウントする場合には、1000個のカウンタを用意することにより、ダイナミックレンジが100dBで0.1dB毎の信号履歴を蓄積することができる。同様に、信号レベルを0.05dB毎にカウントする場合には、2000個のカウンタを用意することにより、ダイナミックレンジが100dBで0.05dB毎の信号履歴を蓄積することができる。
【0011】
これらのカウンタは、各周波数帯域成分に対して用意する必要があるため、例えば、サンプリング周期を100M/sとし、カウンタの量子化したレベルを1000段階と仮定すると、1秒間に最大100M個×1000個のカウントの内容値がハードウェアからソフトウェア処理側に転送される。100Mまでの整数値は28ビットで表現できるため、この例では、各周波数帯域成分に対するカウント値は、28×1000=28kb/sで転送されることになる。一方、包絡線検波後の時系列データの転送の場合は、毎秒100M/s×16ビット(1サンプルあたり16bitとする。)となる、1.6Gb/sの転送量を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−275401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
APD測定においても、サンプリングされた各信号レベルを知りたいというニーズはある。例えば、APD測定時に異常値が検出されたときに、これらの信号レベルを解析することにより、何が起こったかを知ることができる。このように、どの時刻でどのような信号が出現していたかを知ることができれば異常時の例えば、現状分析やその対策に対して有益な情報となる。
【0014】
信号レベルは、実時間で取得できないとしても、オフライン処理で後程、解析できればよい。すなわち、信号レベルとAPD統計データとを対にして解析することにより、APD測定中に起こった現象をミクロな立場とマクロな立場との視点で同時に把握することができるようになる。
【0015】
しかしながら、従来のAPD測定装置は、ミクロな立場で観測しようとすると、前述のようにハードウェアからソフトウェア処理側に大量な時系列データを転送するインタフェースの転送容量や、ソフトウェア処理側の記憶容量が不足してしまうため、大量にサンプリングされた時系列信号をソフトウェア処理側に格納する、大量の記憶容量のデバイスを用意しなければならないといった課題があった。
【0016】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたもので、インタフェースの転送容量やソフトウェア処理側の記憶容量を不足させることなく、大量にサンプリングされた時系列の信号をソフトウェア処理側に転送することができるAPD測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のAPD測定装置は、ハードウェアによって構成されるハードウェア部(2)と、ソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理部(3)と、を備え、測定対象信号のAPDを測定するAPD測定装置において、前記ハードウェア部は、前記APDを測定するために、前記測定対象信号の予め定められた各周波数帯域成分の信号レベルを所定のサンプリングレートで取得する信号レベル取得部(13乃至18)と、前記信号レベル取得部によって取得された信号レベルの時系列の差分値を前記周波数帯域成分毎に算出する差分算出部(21)と、前記差分値を可逆な可変長ビットに対応させた第1テーブルを格納する第1テーブル格納部(22)と、前記差分算出部によって算出された時系列の差分値を前記第1テーブルに基づいて前記可変長ビットの列に変換するコード変換部(23)と、前記APDの測定用データと共に、前記信号レベル取得部によって取得された前記周波数帯域成分毎の信号レベルの初期値および前記コード変換部によって変換された可変長ビットの列を前記ソフトウェア処理部に転送する転送部(20、24)と、を有し、前記ソフトウェア処理部は、前記第1テーブルと同一な第2テーブルを格納する第2テーブル格納部(33)と、前記転送部から転送された可変長ビットの列を前記第2テーブルに基づいて前記時系列の差分値に変換し、前記初期値と該時系列の差分値とに基づいて、前記信号レベル取得部によって取得された前記周波数帯域成分毎の信号レベルを復元する復元部(30)と、を有している。
【0018】
この構成により、本発明のAPD測定装置は、信号レベル取得部によって取得された信号レベルの時系列の差分値を周波数帯域成分毎に算出することにより、ソフトウェア処理部に送信するデータの出現分布の偏りを利用して可逆な可変長ビットに変換するため、可変長ビットによる符号量の圧縮率が向上する。
【0019】
そして、本発明のAPD測定装置は、この圧縮率が向上した可変長ビットの列をソフトウェア処理部に転送するため、インタフェースの転送容量やソフトウェア処理部の記憶容量を不足させることなく、大量にサンプリングされた信号レベルをソフトウェア処理部に転送することができる。
【0020】
例えば、前記第1テーブルは、0に近い差分値ほど、ビット長が短い可変長ビットが対応付けられている。
【0021】
なお、本発明のAPD測定装置は、前記APDの事前測定の結果に基づいて、出現頻度が高い差分値ほど、ビット長が短い可変長ビットを対応付けるように前記第1テーブルを調整するテーブル調整部(63)を備えるようにしてもよい。
【0022】
この構成により、本発明のAPD測定装置は、時系列データの出現頻度が変動する測定環境において出現頻度が高い差分値ほど、ビット長が短い可変長ビットを対応付けることにより、その測定環境に応じて第1および第2テーブルを調整することができるため、可変長ビットによる符号量の圧縮率をより向上させることができる。
【0023】
また、本発明のAPD測定方法は、ハードウェアによって構成されるハードウェア部(2)と、ソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理部(3)と、を備えたAPD測定装置(1)を用いて、測定対象信号のAPDを測定するAPD測定方法において、前記ハードウェア部が、前記APDを測定するために、前記測定対象信号の予め定められた各周波数帯域成分の信号レベルを所定のサンプリングレートで取得する信号レベル取得ステップと、前記ハードウェア部が、前記信号レベル取得ステップで取得された信号レベルの時系列の差分値を前記周波数帯域成分毎に算出する差分算出ステップと、前記ハードウェア部が、前記差分値を可逆な可変長ビットに対応させた第1テーブルに基づいて、前記差分算出ステップで算出された時系列の差分値を前記可変長ビットの列に変換するコード変換ステップと、前記ハードウェア部が、前記APDの測定用データと共に、前記信号レベル取得ステップで取得された前記周波数帯域成分毎の信号レベルの初期値および前記コード変換ステップで変換された可変長ビットの列を前記ソフトウェア処理部に転送する転送ステップと、前記ソフトウェア処理部が、前記第1テーブルと同一な第2テーブルに基づいて、前記ハードウェア部から転送された可変長ビットの列を前記時系列の差分値に変換し、前記初期値と該時系列の差分値とに基づいて、前記信号レベル取得ステップで取得された前記周波数帯域成分毎の信号レベルを復元する復元ステップと、を有する。
【0024】
したがって、本発明のAPD測定方法は、信号レベル取得ステップで取得された信号レベルの時系列の差分値を周波数帯域成分毎に算出することにより、ソフトウェア処理部に送信するデータの出現分布の偏りを利用して可逆な可変長ビットに変換するため、可変長ビットによる符号量の圧縮率が向上する。
【0025】
そして、本発明のAPD測定方法は、この圧縮率が向上した可変長ビットの列をソフトウェア処理部に転送するため、インタフェースの転送容量やソフトウェア処理部の記憶容量を不足させることなく、大量にサンプリングされた信号レベルをソフトウェア処理部に転送することができる。
【0026】
例えば、前記第1テーブルは、0に近い差分値ほど、ビット長が短い可変長ビットが対応付けられている。
【0027】
また、本発明のAPD測定方法は、前記ハードウェア部が、前記APDの事前測定の結果に基づいて、出現頻度が高い差分値ほど、ビット長が短い可変長ビットを対応付けるように前記第1テーブルを調整するテーブル調整ステップを有するようにしてもよい。
【0028】
したがって、本発明のAPD測定方法は、出現頻度が高い差分値ほど、ビット長が短い可変長ビットを対応付けることにより、測定環境に応じて第1および第2テーブルを調整することができるため、可変長ビットによる符号量の圧縮率をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、インタフェースの転送容量やソフトウェア処理側の記憶容量を不足させることなく、大量にサンプリングされた信号レベルをソフトウェア処理側に転送することができるAPD測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施の形態のAPD測定装置のブロック図であり、特に、ハードウェア部を詳細に示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態のAPD測定装置のハードウェア部を構成するテーブル格納部に格納されるテーブルの一例を示す概念図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態のAPD測定装置のブロック図であり、特に、ソフトウェア処理部を詳細に示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態のAPD測定装置のソフトウェア処理部を構成する表示装置の表示例を示す概念図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態のAPD測定装置の動作例を示すシーケンス図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態のAPD測定装置のブロック図であり、特に、ハードウェア部を詳細に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示す本実施の形態においては、屋外等で受信される外来電波から得られる信号を測定対象信号としてAPDを測定する例について説明する。
【0032】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態のAPD測定装置1は、ハードウェアによって構成されるハードウェア部2と、ソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理部3と、ハードウェア部2からソフトウェア処理部3にデータを転送するためのインタフェース4とを備えている。
【0033】
ハードウェア部2は、アンテナ10を介してRF(Radio Frequency)信号を受信するRF受信器11と、RF信号をベースバンド信号にダウンコンバートするダウンコンバータ(以下、単に「D/C」という)12と、ベースバンド信号をデジタル信号に変換するA/D変換器13と、デジタル信号に対して測定対象の帯域で帯域制限を行う帯域制限フィルタ14と、帯域制限された信号をI成分とQ成分とに分離するI/Q分離部15と、測定対象として予め定められた各周波数帯域成分を抽出するフィルタバンク16と、周波数帯域成分毎に包絡線検波する包絡線検波部17と、包絡線検波の結果を対数変換する対数変換部18とを備えている。
【0034】
なお、本実施の形態において、A/D変換器13、帯域制限フィルタ14、I/Q分離部15、フィルタバンク16、包絡線検波部17および対数変換部18は、本発明における信号レベル取得部を構成する。
【0035】
フィルタバンク16は、測定対象の各周波数帯域成分のI成分とQ成分とにそれぞれ対応する複数のバンドパスフィルタによって構成される。包絡線検波部17は、測定対象の各周波数帯域成分にそれぞれ対応する複数の包絡線検波回路によって構成され、各包絡線検波回路は、該当する周波数帯域成分のI成分とQ成分とに基づいて自乗検波することにより、各周波数帯域成分の信号レベルを算出するようになっている。
【0036】
対数変換部18は、各包絡線検波回路に対応した複数の対数変換回路によって構成され、各周波数帯域成分の信号レベルをdB単位に対数変換するようになっている。
【0037】
また、ハードウェア部2は、対数変換された信号レベルの出現頻度を周波数帯域成分毎に累積するカウンタ部19と、カウンタ部19のカウント値をソフトウェア処理部3に転送するためのバッファ20とを更に備えている。
【0038】
カウンタ部19は、測定対象の周波数帯域成分と、信号レベルを量子化するときの解像度とに応じた複数のカウンタによって構成される。例えば、カウンタ部19は、測定対象の周波数帯域成分の数をNとし、ダイナミックレンジを100dBとし、0.1dB毎の信号履歴を蓄積する場合には、1000×N個のカウンタによって構成される。
【0039】
バッファ20は、カウンタ部19を構成する各カウンタの値を一定の時間間隔T(例えば、1秒間隔)でソフトウェア処理部3にインタフェース4を介して転送するようになっている。なお、カウンタ部19を構成する各カウンタは、時間間隔Tでバッファ20にカウント値を転送し、カウント値を0にリセットするようになっている。
【0040】
また、ハードウェア部2は、信号レベルの時系列の差分値を周波数帯域成分毎に算出する差分算出部21と、これら差分値をハフマン符号のような可逆な可変長ビットに対応させた第1テーブルを格納するテーブル格納部22と、差分算出部21によって算出された時系列の差分値を第1テーブルに基づいて可変長ビットの列(以下、単に「可変長ビット列」という)に変換するコード変換部23と、信号レベルの初期値およびコード変換部23によって変換された可変長ビット列等をソフトウェア処理部3に転送するためのバッファ24とを更に備えている。
【0041】
差分算出部21は、信号レベルを周波数帯域成分毎に保持し、次のサンプリング周期で取得された信号レベルとの差分値を周波数帯域成分毎に算出するようになっている。ここで、帯域制限された信号は、帯域幅の大きさに反比例して、信号レベルの時間的な変動が緩やかになる。これは、フーリエ変換・逆変換の時間分解能(△t)と周波数分解能(△f)との関係が一定であることからも理解できる。
【0042】
すなわち、時系列で隣り合う狭い帯域の信号レベルは相関が高く、差分値が小さい部分に集中するため、本発明においては、信号レベルの時系列の差分値を適用することにより、コード変換部23によって変換される可変長ビットによる符号量の圧縮率を向上させる。
【0043】
なお、本実施の形態においては、差分算出部21は、時系列で連続する2つの信号レベルの差分値を算出するものとして説明するが、時系列で連続する3つ以上の信号レベルの差分値を算出するようにしてもよい。
【0044】
テーブル格納部22は、例えば、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性の記憶媒体によって構成され、本発明における第1テーブル格納部を構成する。ここで、第1テーブルは、例えば、図2に示すように、0に近い差分値ほど、ビット長が短い可変長ビットが対応付けられている。
【0045】
図1において、コード変換部23は、各周波数帯域成分に対して、差分算出部21によって算出された時系列の差分値を第1テーブルに基づいて可変長ビット列に変換し、変換した可変長ビット列をソフトウェア処理部3に転送するためにバッファ24に転送するようになっている。なお、バッファ20およびバッファ24は、本発明における転送部を構成する。
【0046】
本実施の形態において、バッファ24は、バッファ20によって転送されるカウント値、すなわち、各周波数帯域成分の信号レベルの初期値をAPDの測定用データと同じ周期Tでソフトウェア処理部3にインタフェース4を介して転送するものとする。
【0047】
また、バッファ24は、時系列で各周波数帯域成分の信号レベルの初期値を送信してから次のサンプリング周期の各周波数帯域成分の信号レベルの初期値を送信するまでの間に、各周波数帯域成分の可変長ビット列をソフトウェア処理部3にインタフェース4を介して転送するようになっている。
【0048】
図3に示すように、ソフトウェア処理部3は、インタフェース4を構成するバスにそれぞれ接続された、CPU(Central Processing Unit)30と、RAM(Random Access Memory)31と、ROM32と、ハードディスク装置33と、キーボード装置やポインティングデバイス等よりなる入力装置34と、液晶ディスプレイ等よりなる表示装置35とを備えている。
【0049】
ROM32およびハードディスク装置33には、ソフトウェア処理部3を機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPU30がRAM31を作業領域としてROM32およびハードディスク装置33に記憶されたプログラムを実行することにより、ソフトウェア処理部3が機能する。
【0050】
ハードディスク装置33は、本発明における第2テーブル格納部を構成し、ハードディスク装置33には、第1テーブルと同一な第2テーブルが格納されている。また、CPU30は、バッファ20から転送された各カウンタのカウント値と、バッファ24から転送された各周波数帯域成分の信号レベルの初期値と、バッファ24から転送された各周波数帯域成分の可変長ビット列をハードディスク装置33に格納するようになっている。なお、ハードディスク装置33は、不揮発性メモリの機能をもった記憶装置でもよい。
【0051】
また、CPU30は、本発明における復元部を構成し、ハードディスク装置33に格納された可変長ビット列を第2テーブルに基づいて信号レベルの時系列の差分値に変換し、各周波数帯域成分の信号レベルの初期値とこの時系列の差分値とに基づいて、各周波数帯域成分の信号レベルを復元するようになっている。
【0052】
また、CPU30は、バッファ20から転送された各カウンタのカウント値に基づいて、APDを算出するようになっている。CPU30は、例えば図4に一例を示すように、算出したAPDおよび復元した各周波数帯域成分の信号レベルを表示装置35に表示させるようになっている。
【0053】
図4においては、入力装置34を介して指定された周波数帯域成分のAPD測定の結果が上段に示され、このAPD測定の結果に対して入力装置34を介して操作されたマーカ50に対応する時間帯の各信号レベルが下段に示されている。
【0054】
なお、図4におけるAPD測定の結果は、上からAPD≦10%、10%<APD≦50%、50%<APD≦70%、70%<APD≦100%といったAPD確率の帯で表示されている。
【0055】
以上のように構成されたAPD測定装置1について図5を用いてその動作を説明する。なお、以下に説明するAPD測定装置1の動作は、ソフトウェア処理部3の入力装置34によって入力される測定開始の指示に応じて開始されるものとする。
【0056】
まず、A/D変換器13、帯域制限フィルタ14、I/Q分離部15、フィルタバンク16、包絡線検波部17および対数変換部18によって測定対象信号の周波数帯域成分毎の信号レベルが取得される。
【0057】
このように取得された測定対象信号の周波数帯域成分毎の信号レベルの初期値は、ハードウェア部2からソフトウェア処理部3に転送され(ステップS1)、ソフトウェア処理部3のハードディスク装置33に周波数帯域成分毎に格納される(ステップS2)。
【0058】
ここで、差分算出部21によって算出された測定対象信号の周波数帯域成分毎の信号レベルの差分値からコード変換部23によって変換された周波数帯域成分毎の可変長ビット列が、バッファ24の予め定められた容量まで格納された場合、すなわち、送信タイミングとなった場合には(ステップS3:YES)、バッファ24に格納された周波数帯域成分毎の可変長ビット列がハードウェア部2からソフトウェア処理部3に転送される(ステップS4)。
【0059】
一方、送信タイミングとなっていない場合には(ステップS3:NO)、APD測定装置1の動作は、送信タイミングとなるまで待つ。このように、ソフトウェア処理部3に受信された周波数帯域成分毎の可変長ビット列は、ソフトウェア処理部3のハードディスク装置33に周波数帯域成分毎に格納される(ステップS5)。
【0060】
ここで、APD測定周期内の周波数帯域成分毎の可変長ビット列の送信が完了していない場合には(ステップS6:NO)、APD測定装置1の動作は、送信タイミングとなるまで待つ(ステップS3)。
【0061】
一方、APD測定周期内の周波数帯域成分毎の可変長ビット列の送信が完了した場合には(ステップS6:YES)、APDの測定用データがハードウェア部2からソフトウェア処理部3に転送される(ステップS7)。
【0062】
APD作成用のPDFデータを受信したソフトウェア処理部3では、CPU30によってAPDが算出され(ステップS9)、表示装置35による表示が更新され(ステップS10)、APDの算出結果がハードディスク装置33に周波数帯域成分毎に格納される(ステップS11)。ここで、ステップS11を実行した後で、ステップS10を実行するようにしてもよい。
【0063】
一方で、APDの測定用データを送信したハードウェア部2では、測定終了であるか否かが判断され(ステップS8)、測定終了であると判断された場合には、APD測定装置1の動作は、終了する一方、測定終了でないと判断された場合には、APD測定装置1の動作は、ステップS3に戻る。
【0064】
なお、測定終了であるか否かの判断は、ソフトウェア処理部3から送信される測定終了の指示に基づいて行うようにしてもよく、ソフトウェア処理部3から送信される測定開始時刻と測定時間との指示に基づいて行うようにしてもよい。
【0065】
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態のAPD測定装置1は、ハードウェア部2において、信号レベルの時系列の差分値を周波数帯域成分毎に算出することにより、ソフトウェア処理部3に送信するデータの出現分布の偏りを利用して可逆な可変長ビットに変換するため、可変長ビットによる符号量の圧縮率が向上する。
【0066】
そして、APD測定装置1は、全体のデータ量が低減された可変長ビット列をハードウェア部2からソフトウェア処理部3に転送するため、ハードウェア部2からソフトウェア処理部3にデータを転送するためのインタフェース4の転送容量やハードディスク装置33の記憶容量を不足させることなく、大量にサンプリングされた信号レベルをソフトウェア処理部3に転送することができる。
【0067】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態のAPD測定装置を図6に示す。なお、本実施の形態においては、本発明の第1の実施の形態におけるAPD測定装置1の構成要素と同一な構成要素には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
図6に示すように、本発明の第2の実施の形態のAPD測定装置61は、ハードウェアによって構成されるハードウェア部62と、ソフトウェア処理部3と、インタフェース4とを備えている。
【0069】
ハードウェア部62は、本発明の第1の実施の形態のAPD測定装置1を構成するハードウェア部2の構成に加えて、テーブル格納部22に格納された第1テーブルを調整するテーブル調整部63を備えている。
【0070】
APD測定装置61は、APDの事前測定を実行するモードと、APD測定を実行するモードとの何れかのモードをとる。APDの事前測定は、APD測定を実行する前に実行される。なお、APD測定を実行する前にAPDの事前測定を実行するか否かは、入力装置34を介して選択できるようにしてもよい。
【0071】
テーブル調整部63は、APDの事前測定の結果に基づいて、出現頻度が高い差分値ほど、ビット長が短い可逆な可変長ビットを対応付けるように第1テーブルを調整するようになっている。なお、本実施の形態において、テーブル格納部22は、例えば、フラッシュメモリ等のように電気的に書き換え可能な記憶媒体によって構成される。
【0072】
また、テーブル調整部63は、調整した第1テーブルをソフトウェア処理部3にインタフェース4を介して転送し、ソフトウェア処理部3のハードディスク装置33に第2テーブルとして格納させるようになっている。
【0073】
すなわち、本実施の形態において、ソフトウェア処理部3のCPU30は、APDの事前測定が終了したときに、ハードウェア部2からインタフェース4を介して転送されたテーブルをハードディスク装置33に格納するようになっている。
【0074】
なお、APDの事前測定時に、ハードウェア部62は、APD測定を予め定められた時間実行するが、APDの測定結果、各周波数帯域成分の信号レベルの初期値、および、各周波数帯域成分の可変長ビット列をソフトウェア処理部3に転送しないようにしてもよい。すなわち、APDの事前測定時に、ハードウェア部62は、カウンタ部19、バッファ20およびコード変換部23を停止させていてもよい。
【0075】
また、本実施の形態において、テーブル格納部22には、測定対象の各周波数帯域成分に対応して第1テーブルを格納するようにしてもよい。この場合には、テーブル調整部63は、各周波数帯域成分に対応した第1テーブルを調整するように構成される。また、ソフトウェア処理部3のハードディスク装置33には、各周波数帯域成分に対応した第2テーブルが格納される。
【0076】
以上に説明したように、本発明の第2の実施の形態のAPD測定装置61は、出現頻度が高い差分値ほど、ビット長が短い可逆な可変長ビットを対応付けることにより、測定環境に応じて第1および第2テーブルを調整することができるため、可変長ビットによる符号量の圧縮率をより向上させることができて、データ伝送量を低減でき、APDのマクロ表示と対応するミクロ表示が可能となる。
【符号の説明】
【0077】
1、61 APD測定装置
2、62 ハードウェア部
3 ソフトウェア処理部
4 インタフェース
10 アンテナ
11 RF受信器
13 A/D変換器
14 帯域制限フィルタ
15 I/Q分離部
16 フィルタバンク
17 包絡線検波部
18 対数変換部
19 カウンタ部
20、24 バッファ
21 差分算出部
22 テーブル格納部
23 コード変換部
30 CPU
31 RAM
32 ROM
33 ハードディスク装置
34 入力装置
35 表示装置
63 テーブル調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードウェアによって構成されるハードウェア部(2)と、ソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理部(3)と、を備え、測定対象信号のAPDを測定するAPD測定装置において、
前記ハードウェア部は、
前記APDを測定するために、前記測定対象信号の予め定められた各周波数帯域成分の信号レベルを所定のサンプリングレートで取得する信号レベル取得部(13乃至18)と、
前記信号レベル取得部によって取得された信号レベルの時系列の差分値を前記周波数帯域成分毎に算出する差分算出部(21)と、
前記差分値を可逆な可変長ビットに対応させた第1テーブルを格納する第1テーブル格納部(22)と、
前記差分算出部によって算出された時系列の差分値を前記第1テーブルに基づいて前記可変長ビットの列に変換するコード変換部(23)と、
前記APDの測定用データと共に、前記信号レベル取得部によって取得された前記周波数帯域成分毎の信号レベルの初期値および前記コード変換部によって変換された可変長ビットの列を前記ソフトウェア処理部に転送する転送部(20、24)と、を有し、
前記ソフトウェア処理部は、
前記第1テーブルと同一な第2テーブルを格納する第2テーブル格納部(33)と、
前記転送部から転送された可変長ビットの列を前記第2テーブルに基づいて前記時系列の差分値に変換し、前記初期値と該時系列の差分値とに基づいて、前記信号レベル取得部によって取得された前記周波数帯域成分毎の信号レベルを復元する復元部(30)と、を有することを特徴とするAPD測定装置。
【請求項2】
前記第1テーブルは、0に近い差分値ほど、ビット長が短い可変長ビットが対応付けられていることを特徴とする請求項1に記載のAPD測定装置。
【請求項3】
前記APDの事前測定の結果に基づいて、出現頻度が高い差分値ほど、ビット長が短い可変長ビットを対応付けるように前記第1テーブルを調整するテーブル調整部(63)を備えたことを特徴とする請求項1に記載のAPD測定装置。
【請求項4】
ハードウェアによって構成されるハードウェア部(2)と、ソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理部(3)と、を備えたAPD測定装置(1)を用いて、測定対象信号のAPDを測定するAPD測定方法において、
前記ハードウェア部が、前記APDを測定するために、前記測定対象信号の予め定められた各周波数帯域成分の信号レベルを所定のサンプリングレートで取得する信号レベル取得ステップと、
前記ハードウェア部が、前記信号レベル取得ステップで取得された信号レベルの時系列の差分値を前記周波数帯域成分毎に算出する差分算出ステップと、
前記ハードウェア部が、前記差分値を可逆な可変長ビットに対応させた第1テーブルに基づいて、前記差分算出ステップで算出された時系列の差分値を前記可変長ビットの列に変換するコード変換ステップと、
前記ハードウェア部が、前記APDの測定用データと共に、前記信号レベル取得ステップで取得された前記周波数帯域成分毎の信号レベルの初期値および前記コード変換ステップで変換された可変長ビットの列を前記ソフトウェア処理部に転送する転送ステップと、
前記ソフトウェア処理部が、前記第1テーブルと同一な第2テーブルに基づいて、前記ハードウェア部から転送された可変長ビットの列を前記時系列の差分値に変換し、前記初期値と該時系列の差分値とに基づいて、前記信号レベル取得ステップで取得された前記周波数帯域成分毎の信号レベルを復元する復元ステップと、を有することを特徴とするAPD測定方法。
【請求項5】
前記第1テーブルは、0に近い差分値ほど、ビット長が短い可変長ビットが対応付けられていることを特徴とする請求項4に記載のAPD測定方法。
【請求項6】
前記ハードウェア部が、前記APDの事前測定の結果に基づいて、出現頻度が高い差分値ほど、ビット長が短い可変長ビットを対応付けるように前記第1テーブルを調整するテーブル調整ステップを有することを特徴とする請求項4に記載のAPD測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−149713(P2011−149713A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8862(P2010−8862)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、電波資源拡大のための委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)