説明

CADシステム間のデータ受渡し方法

【課題】 互いに異なる2つのCADシステム間で、例えば設備機器の形態情報や仕様情報を正確に受け渡す。
【解決手段】 本発明は、第1CADシステムにおいて、複数のオブジェクトに対して唯一で個別のインデックスをそれぞれ付与することと、データ管理ソフトにおいて、各インデックスに関連付けて各オブジェクトの特性データを管理することと、インデックスを含む第1CADシステム内の情報を、中間フォーマットを介して、第2CADシステムへ受け渡すことと、第2CADシステムにおいて、各インデックスに関連付けられた各オブジェクトの特性データをデータ管理ソフトから取得することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CADシステム間のデータ受渡し方法に関する。さらに詳細には、本発明は、互いに異なる2つのCADシステム間でオブジェクトの特性データを受け渡す方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
BIM(Building Information Modeling:ビルディング インフォメーション モデリング)を実現するCAD(Computer Aided Design:コンピュータ支援設計)システムが知られている。この種のCADシステムでは、コンピュータ上に建物の三次元デジタルモデルを作成し、設計から施工、維持管理に至るまで建築ライフサイクル全体でモデルに蓄積された情報を活用することにより、建築ビジネスの業務を効率化する。
【0003】
設備設計用のCADでは、配管や設備機器などの設備用オブジェクトに関する情報を入力することができ、平面だけでなく高さ方向を含む三次元モデルの設計を行うことができる。配管については、経路情報のみを示す単線表示、経路情報に形状情報を付加した複線表示が可能である。配管の口径や用途を含む仕様情報、例えば「給水用塩ビライニング鋼管の25mm」、「水道用ステンレス管の50mm」といった仕様情報も、CADに内蔵される。
【0004】
設備機器については、寸法のような形状情報に加えて、「空調機」や「照明器具」といったおおまかな分類情報が、CADに内蔵される。また、設備機器の詳細な要求仕様、例えば空調機の場合には「冷房能力」、「冷水往還温度」、「加湿能力」などの仕様情報は、CADとは別に作成された機器表などを介して、見積・生産へと情報伝達される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
入力した第1CADシステムとは異なる別の第2CADシステムにおいて三次元デジタルモデルを開く場合、第1CADシステム内の情報を中間フォーマット(例えば、DWG,BE-Bridge,IFCなど)に変換し、中間フォーマットに変換された情報を第2CADシステムで読み込む。しかしながら、従来技術では、互いに異なる2つのCADシステム間で中間フォーマットを介して設備機器の情報を伝達しようとすると、設備機器の形状情報については正確な受け渡しが可能であるが、形状以外の情報については受け渡しが不可能であることが多い。
【0006】
これは、情報を抽出する側である第1CADシステムと情報を読み取る側である第2CADシステムとの間で、どの場所に何の情報を格納するかといった約束事を事前に規定しておかなければならないからである。そのため、現状では、BIMの活用に際して、各社が互いに同じCADシステムを利用するか、あるいは互いに異なる2つのCADシステム間で受け渡しのできない情報を紙媒体等によって伝達せざるを得ない。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、互いに異なる2つのCADシステム間で、例えば設備機器の形態情報や仕様情報を正確に受け渡すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明では、互いに異なる2つのCADシステム間でオブジェクトの特性データを受け渡すデータ受渡し方法であって、
第1CADシステムにおいて、複数のオブジェクトに対して唯一で個別のインデックスをそれぞれ付与することと、
前記第1CADシステムとは別のデータ管理ソフトにおいて、各インデックスに関連付けて各オブジェクトの特性データを管理することと、
前記インデックスを含む前記第1CADシステム内の情報を、中間フォーマットを介して、第2CADシステムへ受け渡すことと、
前記第2CADシステムにおいて、各インデックスに関連付けられた各オブジェクトの特性データを前記データ管理ソフトから取得することとを含むことを特徴とするデータ受渡し方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、オブジェクトの特性データの伝達がCADシステムとは別のデータ管理ソフトを用いて行われるので、CADシステムに依存することなくオブジェクトの特性データの伝達を図ることができる。その結果、本発明では、互いに異なる2つのCADシステム間で、例えば設備機器の形態情報や仕様情報を正確に受け渡すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態にかかるCADシステム間のデータ受渡し方法を説明する第1の図であって、設備用オブジェクトの情報を示している。
【図2】本実施形態にかかるデータ受渡し方法を説明する第2の図であって、空調機の仕様情報の一部である機器表が含む情報を示している。
【図3】本実施形態にかかるデータ受渡し方法を説明する第3の図であって、本実施形態におけるデータ受渡し方法の基本的な考え方を示している。
【図4】本実施形態にかかるデータ受渡し方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかるCADシステム間のデータ受渡し方法を説明する第1の図であって、設備用オブジェクトの情報を示している。設備用オブジェクト(主に設備機器)の情報は、図1に示すように、仕様情報と形態情報に大別される。
【0012】
設備用オブジェクトの仕様情報は、機器表、器具表などの情報を含んでいる。一方、形態情報は、系統図、平面図、詳細図、機器姿図などの情報を含んでいる。具体的に、空調機の場合には、その仕様情報の一部である機器表は、図2に示すように、記号、名称、型式、必要冷却能力、吸込温度、必要加熱能力、給気風量、外気量、機外静圧、電源容量、冷媒配管、加湿機、エアフィルタ、防振、参考型番などに関する情報を含んでいる。
【0013】
図3は、本実施形態にかかるCADシステム間のデータ受渡し方法を説明する第3の図であって、本実施形態におけるデータ受渡し方法の基本的な考え方を示している。本実施形態では、図3に示すように、例えばBIMを実現する第1CADシステム11内のオブジェクトの諸情報が、ある中間フォーマットを介して、第1CADシステム11とは異なる第2CADシステム12へ受け渡される。以下、第1CADシステム11内のオブジェクトのうち、設備用オブジェクト(主に設備機器)の特性データ(仕様情報、形態情報など)の受渡し(伝達)に着目して説明する。
【0014】
本実施形態では、図4のフローチャートに示すように、第1CADシステム11において、複数のオブジェクトに対して唯一で個別のインデックス(図3では図面の明瞭化のために1つだけを例示)13をそれぞれ付与する(S11)。具体的に、ステップS11において付与されるインデックス13はオブジェクト毎に個別に設定されるものであり、同じ仕様の機器であっても異なるインデックス13が割り当てられる。
【0015】
したがって、インデックス13の情報に基づいて、どの建物のどの機器が該当しているかを特定することができる。インデックス13の採番方法、桁数などは、例えばインターネットのIPアドレスのように予め定義される。第1CADシステム11内の1つのオブジェクトに与えられるインデックス13は、1個の単純なデータであり、その入力作業は容易である。
【0016】
また、本実施形態では、第1CADシステム11とは別のデータ管理ソフト14において、各インデックス13に関連付けて各オブジェクトの特性データを管理する(S12)。具体的に、ステップS12では、例えばエクセルのような汎用的な表計算ソフトを用いて、各インデックス13と各設備用オブジェクトの仕様情報、形態情報などとを関連付けたデータベースを作成する。
【0017】
こうして、第1CADシステム11内の各設備用オブジェクトとデータ管理ソフト14内の特性データとが、インデックス13により関連付けられる。その結果、第1CADシステム11と第2CADシステム12とで、相互にデータ管理ソフト14内の特性データを参照することが可能になる。
【0018】
次いで、インデックス13を含む第1CADシステム11内の情報を、中間フォーマットを介して、第2CADシステム12へ受け渡す(S13)。具体的に、ステップS13では、第1CADシステム11内のインデックス13を含む所要情報を所定の中間フォーマットに変換し、中間フォーマットに変換された所要情報を第2CADシステム12で読み込む。このとき、1つのオブジェクトについてインデックス13の受け渡し領域を1個だけ規定すればよいので、互いに異なる2つのCADシステム11と12との間の受け渡し領域に関する取り決め事項は非常に簡素である。
【0019】
最後に、第2CADシステム12において、各インデックス13に関連付けられた各オブジェクトの特性データをデータ管理ソフト14から取得する(S14)。具体的に、ステップS14では、第2CADシステム12が、データ管理ソフト14内の情報を参照し、第1CADシステム11から受け渡されたインデックス13に関連付けられたオブジェクトの特性データを読み込む。
【0020】
その結果、互いに異なる2つのCADシステム11と12との間で、例えば設備用オブジェクトの仕様情報、形態情報などの特性データが正確に受け渡される。換言すれば、第1CADシステムに入力された三次元デジタルモデルを第2CADシステムにおいて開いても、設備用オブジェクトの仕様情報、形態情報などの特性データが、第1CADシステム11から第2CADシステムへ正確に受け渡される。
【0021】
以上のように、本実施形態では、設備用オブジェクトの仕様情報を含む特性データの伝達がCADシステム11,12とは別のデータ管理ソフト14を用いて行われるので、CADシステム11,12に依存することなく、設備用オブジェクトの特性データの伝達を図ることができる。また、CADシステム11,12とデータ管理ソフト14とはインデックス13に基づいて関連付けられているので、中間フォーマットを介した受け渡しに際して情報の欠落を防止することができる。さらに、生産段階での詳細検討や設計変更などをデータ管理ソフト14に更新入力することにより、データ管理ソフト14内の情報が完成データとなり、竣工後の維持や管理にそのまま活用することができる。
【0022】
なお、上述の説明では、例えばBIMを実現する2つのCADシステム11,12の間で、設備用オブジェクト(主に設備機器)の仕様情報、形態情報などを受け渡す方法に対して本発明を適用している。しかしながら、これに限定されることなく、互いに異なる2つのCADシステム間で設備用以外のオブジェクトの特性データを受け渡す方法に対しても同様に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
11 第1CADシステム
12 第2CADシステム
13 インデックス
14 データ管理ソフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる2つのCADシステム間でオブジェクトの特性データを受け渡すデータ受渡し方法であって、
第1CADシステムにおいて、複数のオブジェクトに対して唯一で個別のインデックスをそれぞれ付与することと、
前記第1CADシステムとは別のデータ管理ソフトにおいて、各インデックスに関連付けて各オブジェクトの特性データを管理することと、
前記インデックスを含む前記第1CADシステム内の情報を、中間フォーマットを介して、第2CADシステムへ受け渡すことと、
前記第2CADシステムにおいて、各インデックスに関連付けられた各オブジェクトの特性データを前記データ管理ソフトから取得することとを含むことを特徴とするデータ受渡し方法。
【請求項2】
前記インデックスが付与されるオブジェクトは、設備用オブジェクトであることを特徴とする請求項1に記載のデータ受渡し方法。
【請求項3】
前記特性データは、前記設備用オブジェクトの仕様情報を含むことを特徴とする請求項2に記載のデータ受渡し方法。
【請求項4】
前記2つのCADシステムは、BIMを実現するCADシステムであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデータ受渡し方法。
【請求項5】
前記データ管理ソフトは、汎用ソフトであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のデータ受渡し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−230578(P2012−230578A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98916(P2011−98916)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】