説明

CO2吸収材及びその製造方法

【課題】ハンドリング性が高く、CO吸収性が良好なCO吸収材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】CO吸収材であって、アミノ基含有架橋重合体と、下記一般式(1)


(式中、R、Rは独立に水素原子、又は、ヒドロキシ基又はアミノ基で置換されてもよい炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基を示し、Xは基中にエーテル結合を含んでいてもよい炭素数2〜4の直鎖又は分岐アルキレン基を示す。)で示されるアルカノールアミンの極性溶媒溶液とを含むアミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルを有することを特徴とする、CO吸収材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO吸収材及びその製造方法に関する。詳しくは、アミノ基含有架橋重合体とアルカノールアミン極性溶媒溶液を含むアミノ基含有膨潤ゲルを含むCO吸収材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CO削減は国家的な、また世界的な急務である。温室効果ガスであるCOの排出源は大規模集中型排出源(発電所、プラント)と小規模分散型排出源(家庭、商業施設、自動車など)に大別される。このうち、発電所等の大規模集中型排出源から排出されるCOについては、CO吸収液を用いたCOの回収・分離方法が提案されている。吸収液を用いて回収・分離されたCOの一部はCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)技術による地中貯留、海洋隔離により大気への拡散を削減している。
【0003】
例えば、特許文献1には、濃度35重量%以上の高濃度のモノエタノールアミン水溶液とプラント等の燃焼排ガスを常圧下で接触させ、モノエタノールアミン水溶液にCOを吸収させるCO回収方法が記載されている。COを吸収したモノエタノールアミン水溶液が加熱されることで、COとモノエタノールアミン水溶液が分離される。
【0004】
特許文献2には、炭酸塩と第1級アミノ基を有するアミノ酸からなるCO吸収液を、多孔質膜又はポリアクリル酸やポリビニルアルコール等からなる含水ゲル膜に含浸させてなるCO分離液膜が記載されている。CO分離液膜は、COの促進輸送膜として用いられる。プラント等の排ガスを促進輸送膜に接触させ、促進輸送膜の排ガス接触面とは反対側を減圧すると、COが排ガス中に含まれる他の気体よりも速く促進輸送膜を透過し濃縮され、排ガスからCOが分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−184865号公報
【特許文献2】特開2000−229219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で用いられるモノエタノールアミン溶液をはじめとして、CO吸収液として主に用いられるアミン溶液は、その多くが揮発性であって悪臭がある。そのため、商業施設等の人が集まる小規模分散型排出源からのCO回収には不適であった。
また、吸収液はハンドリング性が悪いため、COを含むガスとCO吸収液を接触させる施設と、COをCO吸収液から分離させ回収する施設は、例えば、パイプで連結される等、近くに配置される必要があった。小規模分散型排出源ではCO吸収液からCOを分離・回収する施設を近傍に設けることは困難であるため、CO吸収液を用いた小規模分散型排出源由来のCO回収は困難であった。
【0007】
特許文献2に記載のCO分離液膜についても、促進輸送膜として利用する場合には、CO放出源と、CO促進輸送膜によって濃縮・分離されたCOを処理する施設とは近くに配置される必要があった。そのため、小規模分散型排出源ではその近傍に濃縮・分離されたCOを処理する施設に設けることは困難であり、CO分離液膜を小規模分散型排出源で利用することは困難であった。
また、特許文献2に記載のCO分離液膜において、CO吸収液を含浸させる多孔質膜又はポリアクリル酸やポリビニルアルコール等からなる含水ゲル膜には吸水性は求められていたが、CO吸収性が求められておらず、含水ゲル膜等のCO2吸収性が低かった。そのため、CO分離液膜を、CO促進輸送膜以外に、CO吸収材として利用することは想定されていなかった。
【0008】
この実状に鑑み、本発明の課題は、ハンドリング性が高く、悪臭が抑制され、CO吸収性が良好であって、小規模分散型排出源由来のCO削減に利用可能であるCO吸収材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記した課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに、アルカノールアミン極性溶媒溶液とアミノ基含有架橋重合体とを含むアミノ基含有膨潤ゲルが、ゲルが含有するのと同量のアルカノールアミン極性溶媒溶液と、水のみで膨潤させたアミノ基含有架橋重合体とを併せたよりも著しく多量のCOを吸収可能なことを見出した。そして、本発明者らは、アルカノールアミン極性溶媒溶液とアミノ基含有架橋重合体とを含むアミノ基含有膨潤ゲルが、CO吸収性が高く、ゲルに含有されるためアルカノールアミン極性溶媒溶液の揮発が抑えられて悪臭が抑制され、固体であるためハンドリング性が高いことから、優れたCO吸収材となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
従って、本発明は、CO吸収材及びその製造方法を提供するものであり、以下の[1]〜[6]からなるものである。
[1] CO吸収材であって、アミノ基含有架橋重合体と、下記一般式(1)
【化1】


(式中、R、Rは独立に水素原子、又は、ヒドロキシ基又はアミノ基で置換されてもよい炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基を示し、Xは基中にエーテル結合を含んでいてもよい炭素数2〜4の直鎖又は分岐アルキレン基を示す。)
で示されるアルカノールアミンの極性溶媒溶液とを含むアミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルを有することを特徴とする、CO吸収材。
[2] 前記アミノ基含有架橋重合体が、下記一般式(2)
【化2】


(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表される構成単位を含む架橋重合体である[1]に記載のCO吸収材。
[3] 前記アルカノールアミンがモノエタノールアミンである請求項[1]又は[2]に記載のCO吸収材。
[4] CO吸収材の製造方法であって、アミノ基含有架橋重合体と、下記一般式(1)
【化3】


(式中、R、Rは独立に水素原子、又は、ヒドロキシ基又はアミノ基で置換されてもよい炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基を示し、Xは基中にエーテル結合を含んでいてもよい炭素数2〜4の直鎖又は分岐アルキレン基を示す。)で表されるアルカノールアミンの極性溶媒溶液とを混合し、該アミノ基含有架橋重合体を膨潤させて、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルを製造することを特徴とする、CO吸収材の製造方法。
[5] 前記アミノ基含有架橋重合体が、下記一般式(2)
【化4】


(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表される構成単位を含む架橋重合体である[4]に記載の製造方法。
[6] 前記アルカノールアミンがモノエタノールアミンである[4]又は[5]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ハンドリング性が高く、CO吸収性が良好なCO吸収材及びその製造方法が提供される。特に、本発明のCO吸収材は、ハンドリング性に優れているため、CO吸収液やCO促進輸送膜では回収困難であった、小規模分散型排出源由来のCOの回収に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】CO吸収材(液)にCO2を吸収させるための装置を示した図である。
【図2】CO2を吸収させたCO吸収材(液)のCO2吸収量評価に用いる装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のCO吸収材は、特定のアルカノールアミン極性溶媒溶液と、特定の膨潤ゲルとを有する。以下、その実施形態について説明する。
膨潤ゲル
本発明において膨潤ゲルとは、液体を含有して膨潤した状態の重合体であり、実質的に水に不溶であって実質的に流動性を失った固体の状態にある。好ましくは、膨潤ゲルは、重合体と架橋剤との反応(以下、「架橋反応」ということもある)によって構成される架橋構造、好ましくは網目構造中に液体を取り込んで膨潤した状態の架橋重合体である。膨潤ゲルが液体を含有するその他の態様としては、例えば、ゲルがその表面に多孔構造をもつ場合に、その孔部から、液体が含浸している態様が考えられる。
【0014】
本発明のCO吸収材又はその製造方法においてアミノ基含有架橋重合体は、アミノ基を含む構成単位を有する重合体と架橋剤とを反応させて得られる架橋重合体であれば特に限定されず、例えば、ポリアルキレンアミン、ポリアルキレンイミン、ポリアミジン、ポリイミダゾール、ポリピリジン等のアミノ基を含む構成単位を有する重合体と架橋剤とを反応させて得られる架橋重合体が挙げられる。中でも、本発明のCO吸収材又はその製造方法においてアミノ基含有架橋重合体は、好ましくは、下記一般式(2)
【化5】


(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表される構成単位を有する重合体と架橋剤とを反応させて得られる架橋重合体である。なお、この架橋重合体においては、一般式(2)で表される構成単位の一部は架橋剤との反応の結果その構造が変化するが、他の一部の構成単位は、依然一般式(2)で表される構造を維持する。
【0015】
上記一般式(2)で表される構成単位を形成する単量体の例としては、モノアリルアミン、N−メチルアリルアミン、N−エチルアリルアミン、N―プロピルアリルアミン、N−ブチルアリルアミン等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(2)で表される構成単位を含む重合体は、上記一般式(2)で表される構成単位を、重合体の総質量に対して、10質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上含むことがより好ましい。さらには、CO吸収性の観点及び重合体の水溶性の観点からは、上記一般式(2)で表される構成単位を含む重合体は、上記一般式(2)で表される構成単位のみからなることが特に好ましい。上記一般式(2)で表される構成単位のみからなる重合体としては、例えば、ポリアリルアミン、ポリ(N−メチルアリルアミン)、ポリ(N−エチルアリルアミン)、ポリ(N−プロピルアリルアミン)、ポリ(N−ブチルアリルアミン)を挙げることができ、第1級アミノ基を有しCO吸収性が特に良好な点から、ポリアリルアミンが最も好ましい。
【0017】
上記一般式(2)で表される構成単位を含む重合体は、上記一般式(2)で表される構成単位を形成する単量体と、この単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体でもよい。上記一般式(2)で表される構成単位を形成する単量体と共重合可能な他の単量体の例としては、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N−ジエチルアリルアミン、N,N−メチルエチルアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、N−エチルジアリルアミン、N−プロピルジアリルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ジアリルアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)ジアリルアミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)ジアリルアミン、N,N−ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、N,N−ジエチルジアリルアンモニウムクロリド、N,N−ジプロピルジアリルアンモニウムクロリド、N,N−ジブチルジアリルアンモニウムクロリド、ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシエチルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン、アクリル酸、塩化ビニル、ビニルイソシアネート、メタクリロニトリル、メタクリル酸、メチルビニルケトン、メチルビニルエーテル、ビニルピリジン、アクロレイン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル等が挙げられる。
【0018】
本発明のCO吸収材又はその製造方法に用いるアミノ基含有架橋重合体の製造に利用できるアミノ基を含む構成単位を有する重合体として、上記一般式(2)で表される構成単位を含む重合体以外に、好ましくは、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリジアリルアミンが挙げられる。
【0019】
本発明のCO吸収材又はその製造方法に用いるアミノ基含有架橋重合体の製造に利用できるアミノ基を含む構成単位を有する重合体中のアミノ基は、一部が酸性化合物との塩を形成していてもよい。ここで酸性化合物としては、例えば、塩酸、酢酸、硫酸、アミド硫酸等が挙げられる。
【0020】
本発明のCO吸収材又はその製造方法に用いるアミノ基含有架橋重合体の製造に利用できるアミノ基を含む構成単位を有する重合体の分子量は、架橋反応後、液体を含有して膨潤ゲルを生じる限り特に限定されない。例えば、アミノ基含有架橋重合に利用できる重合体の分子量としては、1,000〜1,000,000が挙げられる。この範囲の中でも、膨潤ゲル形成時に架橋重合体が有するアミノ基量と膨潤ゲル中の溶液とのバランスが良く、膨潤ゲルのCO吸収性が高いことから、アミノ基を含む構成単位を有する重合体の分子量は、好ましくは、5,000〜100,000であり、より好ましくは、10,000〜50,000である。
ここで、分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量を意味する。
【0021】
本発明のCO吸収材又はその製造方法に用いるアミノ基含有架橋重合体の製造に利用できる架橋剤は、架橋反応を通じて、アミノ基を含む構成単位を有する重合体中の2つのアミノ基を他の原子を介して又は直接的に連結可能な化合物であれば特に制限はないが、上記一般式(2)で表される構成単位を含む重合体中のアミノ基と共有結合を生成可能な官能基を、少なくとも2個含有する化合物が好ましい。このような官能基としては、例えば、ハロゲン基、アルデヒド基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、酸ハライド基、N−クロロホルミル基、クロロホルメート基、イミドエーテル基、アミジニル基、イソシアネート基、ビニル基等が挙げられる。また、ホルムアルデヒドは、アミノ基2個と反応してアミナールを形成できるため、架橋剤として好適に使用できる。
【0022】
本発明のCO吸収材又はその製造方法に用いるアミノ基含有架橋重合体の製造に利用できる架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、エピクロロヒドリン、トルエンジイソシアネート、エチレンビスメタクリルアミド、エチリデンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2−エタンジオールジグリシジルエーテル、1,3−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモエタン、スクシニルジクロリド、ジメチルスクシネート、アクリロイルクロリド、ピロメリティックジアンヒドリドが挙げられる。これらの中でも、アミノ基を含む構成単位を有する重合体との架橋性に優れるため、エピクロロヒドリン、メチレンビスアクリルアミド、1,4−ブタンジオールジクリシジルエーテル、1,2−エタンジオールジグリシジルエーテル(エチレングリコールジグリシジルエーテル)、1,3−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモエタン、スクシニルジクロリド、ジメチルスクシネート、トルエンジイソシアネート、アクリロイルクロリド及びピロメリティックジアンヒドリドからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、エピクロロヒドリン又はメチレンビスアクリルアミドがより好ましい。
【0023】
本発明のCO吸収材又はその製造方法に用いるアミノ基含有架橋重合体の製造に利用できる架橋剤は、アミノ基を含む構成単位を有する重合体中のアミノ基の総モル量に対して、1.5〜15モル%を用いることが好ましい。架橋剤の量が1.5モル%以上では、架橋反応によるゲル化を十分進行させることが容易であり、15モル%以下では、得られる膨潤ゲルが含有できる液体の量の著しい低下を抑制できる。さらには、膨潤ゲルが含有できる液体の量が著しく増加することから、架橋剤の量は、アミノ基を含む構成単位を有する重合体中のアミノ基の総モル量に対して、2〜4モル%であることがより好ましく、2.5〜3.5モル%であることがさらに好ましい。
【0024】
架橋反応は、均一なゲルの効率的な製造という観点から、溶媒の存在下で行われることが好ましい。溶媒としては、極性溶媒が挙げられる。架橋反応に用いられる極性溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、これらの混合溶媒等を挙げることができる。安全性及び使用が容易なこととから、溶媒としては水が好ましい。
溶媒の使用量は、上記一般式(2)で表される構成単位を含む重合体の総量1質量部に対して、0.1〜15質量部であることが好ましい。
水を含む溶媒の存在下で架橋反応を進行させるため、上記一般式(2)で表される構成単位を含む重合体は水溶性であることが好ましい。
【0025】
架橋反応の反応条件については特に限定されないが、COの削減に貢献するという観点からは、加熱及び加圧を行わずに室温常圧条件で架橋反応が進行することが好ましい。また、均一なゲルの効率的な製造という観点からは、この反応条件において、ゲル化開始時間が重合体と架橋剤を混合した後10〜60分であることが好ましい。そして、このような架橋反応が生じる重合体、架橋剤及び溶媒を前記した範囲から選択することが好ましい。なお、ゲル化の開始とは、溶液が固化することを意味する。
ここで、室温とは、10〜35℃の範囲の温度をいう。
また、常圧とは、1013±50hPaの範囲の圧力のことであり、自然界における大気圧の変動範囲とほぼ一致する。
【0026】
アルカノールアミン極性溶媒溶液
本発明のCO吸収材は、上記一般式(1)で表されるアルカノールアミンの極性溶媒溶液を含む。
本発明のCO吸収材又はその製造方法において、上記一般式(1)で表されるアルカノールアミンは、CO吸収性を有することが好ましい。上記一般式(1)で表されるCO吸収性を有するアルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、ジグリコールアミン(X中にエーテル結合を含むものの一例)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(Xが分岐アルキレン基であるものの一例)、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン(Xが分岐アルキレン基であるものの一例)、ジエチルエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン(Xが分岐アルキレン基であるものの一例)、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリブタノールアミンが挙げられ、中でも、安価であって入手が容易なことから、モノエタノールアミンが好ましい。
【0027】
本発明のCO吸収材又はその製造方法において、上記一般式(1)で表されるアルカノールアミンの極性溶媒溶液に用いられる極性溶媒は、分子内において正電荷と負電荷の偏りが存在し極性を示す分子を含む比誘電率の高い溶媒であって、上記一般式(1)で表されるアルカノールアミンを溶解可能な溶媒であれば特に限定されず、プロトン性極性溶媒であっても非プロトン性極性溶媒であってもよく、これらの極性溶媒と少量の非極性溶媒との混合溶媒であってもよい。上記一般式(1)で表されるアルカノールアミンの極性溶媒溶液に用いられる極性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、エチレンカーボネート、エチレングリコール、グリセリン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、及びこれらの混合溶媒等を挙げることができる。中でも、安全性及び使用が容易であり、かつ、COの溶解性が高く膨潤ゲルのCO吸収性が良好なことから、極性溶媒としては、水又は水を主に含む混合溶媒が好ましく、水がより好ましい。
【0028】
本発明のCO吸収材において、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルに含まれる上記一般式(1)で表されるアルカノールアミンの極性溶媒溶液のアルカノールアミン濃度は特に限定されないが、アルカノールアミン極性溶媒溶液を含むアミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルのCO吸収性が高まることから、1質量%以上35質量%未満であることが好ましく、2質量%以上30質量%未満であることがより好ましく、3質量%以上25質量%未満であることがさらに好ましく、5質量%以上20質量%未満であることが特に好ましく、そのうちでも7質量%以上15質量%未満であることが、とりわけ好ましい。
本発明のCO吸収材において、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルにアルカノールアミンと極性溶媒とが共に含まれることで、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルにアルカノールアミンのみが含まれるよりも、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルのCO吸収性が著しく高まる。さらに、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルに含まれるアルカノールアミン極性溶媒溶液が高濃度ではなく、一定の濃度範囲である場合に、特にアミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルのCO吸収性が高まる。
【0029】
本発明のCO吸収材の製造方法において、アミノ基含有架橋重合体と混合されるアルカノールアミンの極性溶媒溶液のアルカノールアミン濃度は特に限定されないが、例えば、10〜90質量%が挙げられ、20〜80質量%が好ましく、30〜75質量%がより好ましく、40〜70質量%がさらに好ましい。
本発明のCO吸収材の製造方法において、アミノ基含有架橋重合体とアルカノールアミンはともにアミノ基を有するため、静電反発により、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルは水を優先的に含有する。アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルが水を優先的に含有することで、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルに含まれるアルカノールアミン極性溶媒溶液の濃度が高くなりすぎず、上述したCO吸収に適した濃度とすることが容易である。
【0030】
本発明のCO吸収材又はその製造方法において、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルは、上述したアミノ基含有架橋重合体と上記一般式(1)で表されるアルカノールアミンの極性溶媒溶液とを含むものであり、アミノ基含有架橋重合体がアルカノールアミン極性溶媒溶液を含有して膨潤したものである。ここで、アルカノールアミン極性溶媒溶液は、好ましくは、アミノ基含有架橋重合体の架橋構造中に取り込まれているが、アミノ基含有架橋重合体の孔部に含浸されていてもよく、アミノ基含有架橋重合体の表面に付着していてもよい。
本発明のCO吸収材又はその製造方法において、アルカノールアミン極性溶媒溶液は、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルに含有されるため、アルカノールアミン極性溶媒溶液の状態よりもアルカノールアミンの揮発が抑えられる。そのため、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルの状態では、アルカノールアミンの悪臭が抑制される。
【0031】
本発明のCO吸収材又はその製造方法において、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルは、上述したアミノ基含有架橋重合体と上記一般式(1)で表されるアルカノールアミンの極性溶媒溶液とを混合して、アミノ基含有架橋重合体にアルカノールアミン極性溶媒溶液を含有させ膨潤させることで製造される。例えば、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルは、多量のアルカノールアミン極性溶媒溶液中に乾燥させたアミノ基含有架橋重合体を浸漬し、アミノ基含有架橋重合体にアルカノールアミン極性溶媒溶液を含有させ膨潤させることで製造される。
【0032】
本発明のCO吸収材又はその製造方法において、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルの膨潤度は、下記式(a)により求められる。
膨潤度=(Wwet−Wdry)/Wdry (a)
ここで、Wwetは、膨潤ゲルを蒸留水で洗浄した後、表面の水をティッシュペーパーで除去し、次いで、液体中に浸漬して膨潤ゲルを膨潤させ、最後に表面の余分な液体をティッシュペーパーで除去した後に測定した膨潤ゲルの重量である。Wdryは、膨潤ゲルを重量が一定値となるまで60℃の真空オーブンで乾燥させ、次いで、乾燥器内で冷却した後に測定した膨潤ゲルの重量である。
本発明のCO吸収材又はその製造方法において、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルがとる膨潤度としては、5〜250を挙げることができる。CO吸収性が高いことから、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルの膨潤度は、20〜80であることが好ましく、CO吸収性が特に高いことから、25〜60であることがより好ましい。
【0033】
本発明のCO吸収材は、CO吸収性を有する上述のアミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルを含むものである。アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルは、固体であり、容易に運搬ができ、形状を加工できる程度の硬度を有するため、ハンドリング性が良好である。そのため、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルを有する本発明のCO吸収材は、アルカノールアミン極性溶媒溶液等のCO吸収液よりもハンドリング性が高く、小規模分散型排出源由来のCO回収に利用できる。さらに、本発明のCO吸収材は、COを吸収させた後、加熱することで又は常温でCOを放出可能である。また、COを吸収させた後にCOを放出させた本発明のCO吸収材は、再びCOを吸収することが可能である。
本発明のCO吸収材は、例えば、家庭等の小規模分散型排出源で排出される排気ガスから、本発明のCO吸収材にCOを吸収させ、COを吸収したCO吸収材を植物工場等に運搬して集積し、CO吸収材から放出されるCOにより光合成生物の光合成を促進することで、大気中のCOを光合成生物の光合成により効率的に固定化し、COの削減に貢献できる。
【0034】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
[実施例1]
(1)モノエタノールアミン水溶液を含有したポリアリルアミン膨潤ゲルの製造
ポリアリルアミン(以下、「PAA」ということもある)と架橋剤であるエピクロロヒドリン(以下、「ECH」ということもある)を架橋反応させて得られるゲルにモノエタノールアミン(以下、「MEA」ということもある)水溶液を含有させて、MEA水溶液含有PAA膨潤ゲルを製造した。
具体的には、PAA(日東紡績社製、商品名:PAA−25、重量平均分子量:25,000)の10.3%水溶液2ml(PAA中のアミノ基の総量3.6mmol相当分)に、ECH(東京化成工業株式会社製)(8.44ml、ECH0.108mmol相当分、PAA中のアミノ基の総モル量に対して3.0mol%相当分)を加え、40℃の条件で、20時間撹拌しながら架橋反応を進行させ、PAA膨潤ゲルを得た。
次いで、PAA膨潤ゲルを蒸留水に浸漬し、1日ごとに蒸留水を交換しながら10日間振とう洗浄を行い、未反応のPAAと架橋剤を除去した。
次いで、洗浄したPAA膨潤ゲルを凍結乾燥機(東京理科器株式会社製)で質量が一定となるまで乾燥させた。
【0036】
次いで、凍結乾燥させたPAA膨潤ゲル0.15g(含まれうるアミノ基の最大量2.63mmol)をMEA(東京化成工業株式会社製;純度>99%)水溶液(MEA/HO=25ml/25ml)に浸漬し、膨潤ゲルの重量が4.5gになるまでMEA水溶液をゲルに含有させ、MEA水溶液含有PAA膨潤ゲルを得た。なお、PAA膨潤ゲルに含まれうるアミノ基の最大量は、架橋密度が0であると仮定して、PAA膨潤ゲルの質量を、構成単位あたりアミノ基を1つ含んでいるPAAの構成単位分子量(57.09)で除すことで算出した。
ここで、得られたMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルは、MEA0.446g(7.3mmol)を含有していた。従って、このCO吸収材を構成するMEA及び、架橋重合体に含まれうるアミノ基の合計量は、最大9.93mmolとなる。なお、MEA水溶液含有PAA膨潤ゲルが含有するMEA量は、先ず膨潤に用いたMEA水溶液中に残留するMEA量を一般的な中和滴定で求め、当初のMEA量から残留するMEA量を引くことで求めた。
得られたMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルには、PAAハイドロゲルと外観上の差異はなかった。したがって、実施例1で得られたMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルは、PAAハイドロゲルが水を含有するのと同様の態様でMEA水溶液を含有すると推定される。
また、得られたMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルからは、揮発するMEA水溶液に由来する臭気が感じられなかった。
【0037】
(2)MEA水溶液含有PAA膨潤ゲルのCO吸収量評価
前述した方法で製造されたMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルにCOを吸収させ、次いで、COを吸収させたMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルのCO吸収量を評価した。
【0038】
具体的には、先ず、(1)で作成したMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルを図1に示す装置の丸底フラスコ内に加え、次いで、フローメーターを用いてCO流量を0.15ml/minに調節し、吸湿器を通して飽和蒸気圧にしたCOを25℃の条件で20時間かけてMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルに吸収させた。
【0039】
次に、図2に示す装置を用いて、COを吸収させたMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルのCO吸収量を測定した。具体的には、図2において、COを吸収させたMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルをナスフラスコ内に加え、次いで、COを吸収させたMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルを120℃に加熱してCOを放出させ、目盛り付きの円筒中の水位が下がった量を見積もることによりCO吸収量(体積ml)を決定し、この吸収量をモル数に変換して評価した。なお、図2中に示す酸性溶液としては1mol/l塩酸水溶液を用いた。なお、MEA水溶液含有PAA膨潤ゲルは120℃に加熱した後でも、ゲルの形状を維持しており、MEA水溶液の漏出は起こらなかった。
(1)で作成したMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルのCO吸収量を表1に示す。
【0040】
[実施例2]
凍結乾燥させたPAA膨潤ゲル0.15g(含まれうるアミノ基の最大量2.63mmol)を、MEA水溶液(MEA/HO=25ml/25ml)に代えて、MEA水溶液(MEA/HO=33.4ml/16.6ml)に浸漬し、膨潤ゲルの重量が4.5gになるまでこのMEA水溶液をゲルに含有させ、MEA水溶液含有PAA膨潤ゲルを得た他は、実施例1と同様にMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルのCO吸収量を評価した。なお、実施例2で得られたMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルは、MEA0.794g(13.0mmol)を含有していた。従って、このCO吸収材を構成するMEA及び、架橋重合体に含まれうるアミノ基の合計量は、最大15.63mmolとなる。
実施例2で得られたMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルのCO吸収量を表1に示す。
【0041】
[実施例3]
凍結乾燥させたPAA膨潤ゲル0.15g(含まれうるアミノ基の最大量2.63mmol)を、MEA水溶液(MEA/HO=25ml/25ml)に代えて、MEA水溶液(MEA/HO=40ml/10ml)に浸漬し、膨潤ゲルの重量が4.5gになるまでこのMEA水溶液をゲルに吸収させ、MEA水溶液含有PAA膨潤ゲルを得た他は、実施例1と同様にMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルのCO吸収量を評価した。なお、実施例3で得られたMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルは、MEA1.411g(23.1mmol)を含有していた。従って、このCO吸収材を構成するMEA及び、架橋重合体に含まれるアミノ基の合計量は、最大25.73mmolとなる。
実施例3で得られたMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルのCO吸収量を表1に示す
【0042】
[比較例1]
凍結乾燥させたPAA膨潤ゲル0.15g(含まれうるアミノ基の最大量2.63mmol)を、MEA水溶液(MEA/HO=25ml/25ml)に代えて、MEA50mlに浸漬し、膨潤ゲルの重量が4.5gになるまでMEAをゲルに含有させ、MEA含有PAA膨潤ゲルを得た他は、実施例1と同様にMEA含有PAA膨潤ゲルのCO吸収量を評価した。なお、比較例1で得られたMEA含有PAA膨潤ゲルは、MEA4.35g(71.2mmol)を含有していた。従って、このCO吸収材を構成するMEA及び、架橋重合体に含まれうるアミノ基の最大量は、73.83mmolとなる。
なお、得られたMEA含有PAA膨潤ゲルには、PAAハイドロゲルと外観上の差異はなかった。したがって、比較例1で得られたMEA含有PAA膨潤ゲルは、PAAハイドロゲルが水を含有するのと同様の態様でMEAを含有すると推定される。
比較例1で得られたMEA含有PAA膨潤ゲルのCO吸収量を表1に示す。
【0043】
[比較例2]
凍結乾燥させたPAA膨潤ゲル0.15g(含まれうるアミノ基の最大量2.63mmol)を、MEA水溶液(MEA/HO=25ml/25ml)に代えて、蒸留水50mlに浸漬し、膨潤ゲルの重量が4.5gになるまで蒸留水をゲルに含有させてPAAハイドロゲルを得た他は、実施例1のMEA水溶液含有PAA膨潤ゲルと同様に、得られたPAAハイドロゲルのCO吸収量を評価した。なお、このCO吸収材を構成する架橋重合体に含まれうるアミノ基の最大量は、2.63mmolであった。
比較例2で得られたPAAハイドロゲルのCO吸収量を表1に示す。
【0044】
[比較例3]
MEA水溶液含有PAA膨潤ゲルを使用せず、MEA水溶液(MEA0.446g及びHO3.904g)のみを用いた他は、実施例1と同様に、MEA水溶液のCO吸収量を評価した。なお、このCO吸収材を構成するMEA水溶液に含まれうるアミノ基の最大量は、7.30mmolであった。
比較例3のMEA水溶液のCO吸収量を表1に示す。
【0045】
[比較例4]
MEA水溶液含有PAA膨潤ゲルに代えて、MEA水溶液含有ポリビニルアルコール(以下、「PVA」ということもある)膨潤ゲルを用いた他は、実施例1と同様に、MEA水溶液含有PVA膨潤ゲルのCO吸収量を評価した。
比較例4のMEA水溶液含有PVA膨潤ゲルのCO吸収量を表1に示す。
【0046】
MEA水溶液含有PVA膨潤ゲルは、具体的には、PVA(東京化成工業株式会社製、重合度:n=1750±50)の10%ジメチルスルホキシド/N,N−ジメチルホルムアミド(1/1)溶液20ml(PVA中の水酸基の総量45mmol相当分)と架橋剤であるヘキサメチレンジイソシアナート(0.22ml、1.35 mmol相当分、PVA中の水酸基の総モル量に対して3.0mol%相当分)のとを25℃の条件で20時間かけて架橋反応させ、得られたPVA膨潤ゲルを実施例1と同様に洗浄・凍結乾燥した後、凍結乾燥させたPVA膨潤ゲル0.15gをMEA水溶液(MEA/HO=25ml/25ml)に浸漬し、MEA水溶液をゲルに吸収させて製造した。
得られたMEA水溶液含有PVA膨潤ゲルは、その重量が0.8175gであり、MEA0.6675g(10.9mmol)を含有していた。従って、このCO吸収材を構成するMEA水溶液、及びPVA膨潤ゲルに含まれうるアミノ基の合計量は、最大10.9mmolとなる。
【0047】
この結果より、PVA膨潤ゲルはMEA水溶液からMEAを選択的に含有することが確認された。一方、PAA膨潤ゲルがMEAよりも水を含有しやすいのは、PAA及びMEAは共に水中でプラスに荷電しており、その静電反発によりPAA膨潤ゲルがMEAを含有することが困難であったためと考えられる。
【0048】
一方、静電反発にかかわらず、PAA膨潤ゲルがMEAを含有できるのは、PAAとMEAとが共に有するアルキレン基間の疎水性相互作用、及びPAA中のプラスに帯電していないアミノ基と、MEA中のヒドロキシ基又はプラスに帯電していないアミノ基との水素結合が存在するためだと推定される。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示される実施例1から3及び比較例2の比較では、MEA水溶液中のMEA濃度が一定値以上であれば、MEA濃度が低い場合にCO吸収量が上昇する傾向が見られた。この傾向から、膨潤ゲル中においては、MEA水溶液中のアミノ基の密度が下がることで、膨潤ゲル又はMEA水溶液中のアミノ基とCOとの反応性が向上することが推定される。また、膨潤ゲル中の水の量が増えることにより、水への溶解吸収量も多くなったものと推定される。
【0051】
表1に示されるように、実施例と比較例2及び3との比較より、MEA水溶液含有PAA膨潤ゲルのCO吸収量は、比較例2で示されるPAAハイドロゲルのCO吸収量と、比較例3で示される膨潤ゲルが含有するのと同量のMEA水溶液のCO吸収量とを足し合わせたものよりも著しく高いことが確認された。
実施例と比較例1との比較より、PAA膨潤ゲルがMEA水溶液を含有する方が、MEAを含有するよりも、CO吸収量が著しく上昇することが確認された。
さらに、特に実施例1においては、CO吸収材(液)中に含まれ得るアミノ基の最大量(mmol)よりも、CO吸収量(mmol)が高いことが確認された。つまり、MEA水溶液を含有したPAA膨潤ゲル中において、アミノ基とCOが単純に1対1の反応をするわけではないことが確認された。
これらの結果より、PAA膨潤ゲル中にMEA水溶液を含有させることにより、CO吸収に関して、相乗効果があることが確認された。
【0052】
表1に示されるように、実施例と比較例4の比較より、MEA含有PVA膨潤ゲルのCO吸収量はMEA含有PAA膨潤ゲルよりも著しく小さい。前述のように、CO吸収においては、MEA濃度低下によるMEAの反応性向上と、PAA膨潤ゲル中の水への溶解吸収が重要な因子であると推定されるところ、PVAゲルは疎水性相互作用によりMEA水溶液からMEAを選択的に含有するため、MEA含有膨潤ゲルのCO吸収量はMEA含有PAAゲルよりもが低くなったと推定される。この結果は、水中での静電反発によりMEAを含有しにくいと推定されるPAA膨潤ゲルは、PVA膨潤ゲルよりも、CO高吸収材料に適していることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のCO吸収材は、ハンドリング性が高く、CO吸収性が良好である。そのため、特に家庭等の小規模分散型排出源で排出されるCOの回収に好適である。例えば、小規模分散型排出源由来のCOを本発明のCOの吸収材に吸収させて回収し、野菜や藻類等を含む光合成生物の大規模栽培(培養)施設等でCO2吸収材からCOを放出することで、小規模分散型排出源由来のCOを光合成生物の光合成により固定化してCOを削減することが期待される。また、COを吸収させた本発明のCO吸収材を、野菜や果実等のCA貯蔵(Controlled Atmosphere Storage)に利用することが期待される。この様に本発明は、高い産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO吸収材であって、アミノ基含有架橋重合体と、下記一般式(1)
【化1】


(式中、R、Rは独立に水素原子、又は、ヒドロキシ基又はアミノ基で置換されてもよい炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基を示し、Xは基中にエーテル結合を含んでいてもよい炭素数2〜4の直鎖又は分岐アルキレン基を示す。)
で示されるアルカノールアミンの極性溶媒溶液を含むアミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルを有することを特徴とする、CO吸収材。
【請求項2】
前記アミノ基含有架橋重合体が、下記一般式(2)
【化2】


(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表される構成単位を含む架橋重合体である請求項1に記載のCO吸収材。
【請求項3】
前記アルカノールアミンがモノエタノールアミンである請求項1又は2に記載のCO吸収材。
【請求項4】
CO吸収材の製造方法であって、アミノ基含有架橋重合体と、下記一般式(1)
【化3】


(式中、R、Rは独立に水素原子、又は、ヒドロキシ基又はアミノ基で置換されてもよい炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基を示し、Xは基中にエーテル結合を含んでいてもよい炭素数2〜4の直鎖又は分岐アルキレン基を示す。)で表されるアルカノールアミンの極性溶媒溶液とを混合し、該アミノ基含有架橋重合体を膨潤させて、アミノ基含有架橋重合体膨潤ゲルを製造することを特徴とする、CO吸収材の製造方法。
【請求項5】
前記アミノ基含有架橋重合体が、下記一般式(2)
【化4】


(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表される構成単位を含む架橋重合体である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記アルカノールアミンがモノエタノールアミンである請求項4又は5に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−179584(P2012−179584A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46043(P2011−46043)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】