説明

EGRパイプ

【課題】 高温のEGRガスによる軸線方向の伸びと圧力変動の両方に対応して切損のない、かつ可撓性を併せもつEGRパイプの提供を目的としている。
【解決手段】 エンジンの排出ガスの1部を排気系(3)から取り出して吸気系(2)に戻し所定の燃焼温度以下に燃焼温度を制御するEGR用のEGRパイプ(6)において、該EGRパイプ(6)は半径方向に変位して、軸方向の変位を吸収する可撓性機構(16)を介装している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの排出ガスの1部を排気系から取り出して吸気系に戻し所定の燃焼温度以下に燃焼温度を制御するEGR用のEGRパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
図4、5は本発明のEGRパイプが装着される周辺の構成を示している。
図4は過給なしの自然吸気エンジンを示していて、吸気管2の所定位置と排気管3の所定位置との間にEGR(排気再循環)のためのEGRパイプ6が取付けられている。
【0003】
EGRは周知のように燃焼状態に応じてNOxを低減させるようにEGRの量を制御するので、燃焼状態を検知するセンサーSに信号線Lsで連結された制御装着C.Uが記憶装置Mに内蔵されたデータを参照して排気絞り8やEGR弁9を制御線L8、L9を介して制御するように構成されている。
【0004】
図5は過給機付のエンジンEを示していて、圧縮機Cから吸気マニホールド4に通じる吸気管2の所定の位置に設けた合流部2aと、排気タービンTから排気マニホールド5に通じる排気マニホールド5の所定の位置に設けた分岐部3aと、にEGRパイプ6が連結されている。
なお、2点鎖線で示めされる符号11は周辺部材への熱害防止用のチューブである。
【0005】
したがって、EGRパイプ6には、EGRパイプ6の着脱性、周辺部材への熱害配慮を前提として、EGRガス温度による膨張負荷と膨張収縮の繰り返し負荷と、背圧のとくに排気ブレーキをかけた時の管内圧力の上昇による圧力負荷とその圧力変動の繰り返し負荷とに耐える特性を有することが必要である。
【0006】
図6及び図7は、従来のEGRパイプ6の側面(図6)と、その上面(図7)を示している。
図において、両端のフランジ13、14は前記図4、5の合流部2aと、分岐部3aとに取付けられるように構成されていて、フランジ13と14の間を錆びの生じない管11で連結し、管11には曲げ部7a、7bが形成されている。
【0007】
その管11の適所に蛇腹10aが形成されていて、着脱時の作業容易のための可撓性をもたせると共に、熱による伸縮を吸収し、また管内圧力の変動を吸収している。
【0008】
図8は上記の必要条件を充たすための従来の機構としての蛇腹状の構造を示している。EGRパイプ6に装着あるいは型で1体に形成されたサイン曲線状の蛇腹10aが、複数条にわたって軸線に直交して等ピッチで平行に設けられている。
【0009】
このようなサイン曲線状の蛇腹10aは製造が容易な長所を有する反面、蛇腹の1部が破損しやすいという欠点を併せて有している。
【0010】
EGR用パイプについては、従来から種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、これらの技術は蛇腹の配置や還流ガスの放熱に関していて、蛇腹にかかわる形状あるいは軸線方向の伸びと圧力変動の両方に対応し、かつ可撓性を併せもつ技術は開示されていない。
【特許文献1】特開平8−338321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、高温のEGRガスによる軸線方向の伸びと圧力変動の両方に対応して切損のない、かつ可撓性を併せもつEGRパイプの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のEGRパイプは、エンジンの排出ガスの1部を排気系(3)から取り出して吸気系(2)に戻し所定の燃焼温度以下に燃焼温度を制御するEGR用のEGRパイプ(6)において、該EGRパイプ(6)は半径方向に変位して、軸方向の変位を吸収する可撓性機構を介装したことを最も主要な特徴とする(請求項1)。
実施に際しては、EGRパイプは少なくとも1つ以上の曲がり部を有することが好ましい。
【0013】
ここで、前記可撓性機構は、全体が曲面から成り、半径方向外方へ突出した突起部分(17)で構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0014】
前記可撓性機構は、全体が曲面から成り、半径方向外方へ突出した突出部分(23)と軸線方向に延在した軸線方向延在部分(25)とを有しているのが好ましい(請求項3)。
【0015】
本発明のEGRパイプは、エンジンの排出ガスの1部を排気系(3)から取り出して吸気系(2)に戻し所定の燃焼温度以下に燃焼温度を制御するEGR用のEGRパイプ(8)において、該EGRパイプ(6)は軸方向へ潰れて、且つ、半径方向外方へ膨張する蛇腹状部分(36)を介装したことを最も主要な特徴とする(請求項4)。
【0016】
前記蛇腹状部分(36)は、螺旋形状に構成されていることが好ましい(請求項5)。
実施に際して、螺旋の傾斜角を15〜45度に形成することがよい。
【発明の効果】
【0017】
上述した様な構成を具備する本発明(請求項1)によれば、半径方向に変位して軸方向の変位を吸収する可撓性機構を介装しているので、EGRパイプが加熱されて軸線方向に伸びても可撓性機構によってEGRパイプにかかる応力が低減され、また管内の圧力変動による繰り返し応力が低減されて、従来のベローズに生じた切損等が起こらない利点がある。また、可撓性機構によって、EGRパイプの吸、排気系への取付けは従来の蛇腹状部と同様に容易である。
【0018】
また、可撓性機構が全体に曲面で形成され半径方向外方へ突出している(請求項2)ので、この曲面の変形によって軸方向への変位を吸収することが容易で、軸方向への伸びの吸収と圧力変動の吸収量が大きく従来のベローズに生じた切損等が起こらない利点がある。
【0019】
また、可撓性機構が全体に曲面で形成され、半径方向外方へ突出している突出部分と軸線方向に延在した延在部分とを有している(請求項3)ので、変形量を大きくとることができて、軸方向への伸びの吸収と圧力変動の吸収量が大きく従来のベローズに生じた切損等が起こらない利点がある。
【0020】
前述した様な構成を具備する本発明(請求項4)によれば、EGRパイプは軸方向へ潰れて、且つ、半径方向外方へ膨張する蛇腹状部分を介装しているので、軸方向への伸びの吸収と圧力変動の吸収量が大きく従来のベローズに生じた切損等が起こらない利点がある。また、製造が容易な利点がある。
【0021】
前記蛇腹状部分は、螺旋形状に構成されている(請求項5)ので、その傾斜(15〜45度)によって軸方向の実伸びが低減され応力振幅が低減される利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明を構成する可撓性機構の第1の実施形態の側断面図である。
図1において、可撓性機構16は、EGR管6に半径方向外方に管壁全周にわたって突出する突起部分17で構成されている。
【0023】
突起部分17は、管壁から上方手前に反り返る第1の円弧部18と、第1の円弧部18に接続して上方先方に反り返る第2の円弧部19と、第2の円弧部19に接続して管壁にほぼ平行にかつ、半径方向外方に膨らんでいる第3の円弧部20とで、突起部分17の半分が形成されている。
【0024】
相対的に、第1及び第2の円弧部18、19の曲率は第3の円弧部20より小さく、曲率中心は管壁の外方にあり、第3の円弧部20の曲率中心は第3の円弧部20の半径方向内方にあって形成されている。
【0025】
突起部分17の他の半分は、第3の円弧部20の端部で第2の円弧部19と対称する第4の円弧部21と、第1の円弧部18と対称する第5の円弧部22とで対称に形成されている。
【0026】
また、管壁〜第1の円弧部18〜第4の円弧部22〜管壁の接続は、すべてが滑らかに接続されて、全体が曲面で構成されている。
【0027】
この突起部分17の曲面の長い構成によって、軸線方向に直交する方向への曲げを許容する可撓性を有してEGRパイプ6のエンジンEへの着脱性を容易にしている。
【0028】
上記構成の可撓性機構16は、図6及び図7で示したEGRパイプ6の適宜の位置に蛇腹部分10aに替えた状態で取付けられ、そのEGRパイプ6のエンジンへの取付けはフランジ13、14が図4、5に示す排気管3の分岐部3aと吸気管2の合流部2aに取付けられる。このとき突起部分17が従来の蛇腹部分より曲げ剛性が小さく、フランジ13、14の取付け作業が容易である。
【0029】
そして、エンジンの運転時、特にEGR時に、高温のEGRガスによるEGRパイプ6の軸線方向への伸びは、突起部分17を前後の両側から圧縮して半径方向外方に2点鎖線20Aの方向に膨張して変形し、伸びを吸収し弱部に応力を集中させない。
【0030】
また、エキゾーストブレーキ時に背圧が上昇して管壁に与えるフープ応力は、管径に比して大径の突起部分17で吸収して管壁の破損を防護するので、従来の蛇腹部分で生じた破損等は起こらない。
【0031】
なお、EGRパイプ6の伸長は、フランジ13と14が固定されることによって抑制され1部は内部応力となり、他部は変形となる。このEGRパイプ6においては、弾性の小さい突起部分17の変形でほとんどが吸収され、その他は曲げ部7a、7bの曲げ角度の変化によって吸収される。
また、内圧の増加は、突起部17の半径方向外方への変形によってほとんどが吸収される。
【0032】
図2は本発明を構成する可撓性機構の第2の実施形態の側断面図である。
図2において、可撓性機構16Aは、EGR管6に半径方向外方に管壁全周にわたって突出する突出部分23と、突出部分23に一体に接続されて軸線方向に延在している延在部分25とで構成されている。
【0033】
突出部分23は、管壁から上方手前に反り返る第1の円弧部33と、第1の円弧部33に接続して上方先方に反る第2の円弧部32と、第2の円弧部32に接続して管壁に対して緩やかな傾斜で上昇し、半径方向外方に僅かに膨らむ第3の円弧部31とで、構成されている。
【0034】
延在部分25は、第3の円弧部31の端部31aに接続して半径方向内方に湾曲する第4の円弧部30と、第4の円弧部30の端部に接続して第1の円弧部33の方向に戻る平板状の平板部29と、平板部29の端部に接続して第4の円弧部30方向に反り返って管壁に接続する第5の円弧部28とで、構成されている。
【0035】
相対的に、第1、第4及び第5の円弧部33、30、28の曲率は小さくて曲率中心は管壁の外方にあり、第2の円弧部32の曲率はやや大きくて半径方向の内方に曲率中心があり、第3の円弧部31は曲率が大きくて曲率中心は第3の円弧部31の半径方向内方にあって形成されている。
【0036】
また、管壁〜第1の円弧部33〜第5の円弧部28〜管壁の接続は、すべてが滑らかに接続されて、全体が曲面で構成されている。
【0037】
この可撓性機構16Aの曲面の長い構成によって、軸線方向に直交する方向への曲げを許容する可撓性を有してEGRパイプ6のエンジンEへの着脱性を容易にしている。
【0038】
上記構成の可撓性機構16Aは、図6及び図7で示したEGRパイプ6の適宜の位置に蛇腹部分10aに替えた状態で取付けられ、そのEGRパイプ6のエンジンEへの取付はフランジ13、14が図4、5に示す排気管3の分岐部3aと吸気管2の合流部2aに取付けられる。このとき可撓性機構16Aが従来の蛇腹部分より曲げ剛性が小さく、フランジ13、14の取付け作業が容易である。
【0039】
そして、エンジンの運転時、特にEGR時に、高温のEGRガスによるEGRパイプ6の軸線方向への伸びは、突出部分23を前後の両側から圧縮して半径方向外方に2点鎖線24Aの方向に膨張して変形し、伸びを吸収し弱部に応力を集中させない。
【0040】
また、エキゾーストブレーキ時に背圧が上昇して管壁に与えるフープ応力は、突出部分23と延在部分25の内容積を膨張、増加させて圧力と圧力変動を吸収するので、従来の蛇腹部分で生じた破損等は起こらない。
【0041】
図3は本発明の第3の実施形態を構成する蛇腹状部分の側断面図である。
図3において、複数の蛇腹状部分36は、EGR管6の軸心に”θ=15〜45度”の傾斜を設けたて螺旋形状に構成されている。
【0042】
蛇腹状部分36は、図においては外方への凸部38と内方への凸部39とでサイン曲線状に形成されているが、管壁の外方に凸な円弧と内方に凸な円孤をずらせて突き合わせた形状であってもよい。
【0043】
この複数の蛇腹状部分36によって、軸線方向に直交する方向への曲げを許容する可撓性を有してEGRパイプ6のエンジンEへの着脱性を容易にしている。
【0044】
上記構成の蛇腹状部分36は、図6及び図7で示したEGRパイプ6の適宜の位置に蛇腹部分10aに替えた状態で取付けられ、そのEGRパイプ6のエンジンへの取付けはフランジ13、14が図4、5に示す排気管3の分岐部3aと吸気管2の合流部2aに取付けられる。このとき蛇腹状部分36が従来の蛇腹部分より曲げ剛性が小さく、フランジ13、14の取付け作業が容易である。
【0045】
そして、エンジンの運転時、特にEGR時に、高温のEGRガスによるEGRパイプ6の軸線方向への伸びは、蛇腹状部分36の傾斜した軸線方向に伸びて管軸方向の伸びを低減させる。したがって、EGRパイプ6の軸線方向への伸びの低減は応力の低減となって蛇腹状部分36の破損を起こさせない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のEGRパイプの可撓性機構を備えた第1の実施形態を示す側断面図である。
【図2】第2の実施形態を示す側断面図である。
【図3】第3の実施形態を示す側断面図である。
【図4】本発明のEGRパイプが装着されるエンジンの周辺を示している構成図である。
【図5】本発明のEGRパイプが装着される別のエンジン周辺構成を示している構成図である。
【図6】可撓性機構の取付位置を示すEGRパイプの上面図である。
【図7】同上の側面図である。
【図8】従来の可撓性機構を示す側、断面図である。
【符号の説明】
【0047】
2・・・吸気管
3・・・排気管
4・・・吸気マニホールド
5・・・排気マニホールド
6・・・EGRパイプ
10a・・・蛇腹部分
16、16A・・・可撓性機構
36・・・蛇腹状部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排出ガスの1部を排気系から取り出して吸気系に戻し所定の燃焼温度以下に燃焼温度を制御するEGR用のEGRパイプにおいて、該EGRパイプは半径方向に変位して、軸方向の変位を吸収する可撓性機構を介装したことを特徴としているEGRパイプ。
【請求項2】
前記可撓性機構は、全体が曲面から成り、半径方向外方へ突出した突起部分で構成されている請求項1のEGRパイプ。
【請求項3】
前記可撓性機構は、全体が曲面から成り、半径方向外方へ突出した半径方向外方突出部分と軸線方向に延在した延在部分とを有している請求項1のEGRパイプ。
【請求項4】
エンジンの排出ガスの1部を排気系から取り出して吸気系に戻し所定の燃焼温度以下に燃焼温度を制御するEGR用のEGRパイプにおいて、該EGRパイプは軸方向へ潰れて、且つ、半径方向外方へ膨張する蛇腹状部分を介装したことを特徴としているEGRパイプ。
【請求項5】
前記蛇腹状部分は、螺旋形状に構成されている請求項4のEGRパイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−29197(P2006−29197A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208722(P2004−208722)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】