説明

GaN系半導体素子

【課題】小さいオン抵抗を維持しながら閾値を確実にプラスに引き上げ、実効的にノーマ
リオフになるGaN系半導体素子を提供する。
【解決手段】電界効果トランジスタ20では、サファイア基板1上に、バッファ層2と、チャネル層(アンドープGaN層)3と、電子供給層(アンドープAlGaN層)4とを順に積層している。電子供給層4上のソース部分にnpn積層構造9が形成され、積層構造9上にソース電極Sが形成されている。電子供給層4のドレイン部分にドレイン電極Dが形成され、そのゲート部分に形成された開口部11に絶縁膜8が形成されている。ゲート電極Gに順方向に閾値以上の電圧を印加すると、反転層Aと反転層Bが形成されてドレイン電流が流れる。p型(In)GaN層6の厚さやその不純物濃度を変えることで、閾値電圧を制御することができる。ドリフト層12によりゲート電極Gとドレイン電極D間の電界集中が緩和され、耐圧が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GaN系電界効果トランジスタなどのGaN系半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のGaN系電界効果トランジスタとして、例えば、特許文献1に開示された技術が知られている。このGaN系電界効果トランジスタは、ソース電極とドレイン電極、i−GaN系半導体材料またはp−GaN系半導体材料である第1のGaN系半導体材料からなりソース電極およびドレイン電極と電気的に接続して形成されるチャネル部、第1のGaN系半導体材料よりバンドギャップエネルギーが大きい第2のGaN系半導体材料からなり、チャネル部と接合し、互いに離隔された第1および第2の電子供給部、第1および第2の電子供給部の間に位置するチャネル部の表面上に形成される絶縁層、および絶縁層上に形成されるゲート電極を具備する。この従来技術によれば、ノーマリオフ型で、オン抵抗が小さく大電流動作が可能なGaN系電界効果トランジスタが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO03/071607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術のようなノーマリオフ型のGaN系電界効果トランジスタでは、閾値の制御が難しく、閾値が0V〜+1V程度であった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたもので、その目的は、小さいオン抵抗を維持しながら閾値を確実にプラスに引き上げ、実効的にノーマリオフになるGaN系半導体素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係るGaN系半導体素子は、GaN系半導体からなる導電性の半導体層と、前記半導体層上の一部に積層された、GaN系半導体からなる第1のnpn積層構造と、前記npn積層構造上に形成されたソース電極と、前記半導体層上に形成されたドレイン電極と、少なくとも前記npn積層構造の側壁部分、および前記半導体層上の他の部分に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成されたゲート電極と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ゲート電極に順方向に閾値以上の電圧が印加されていないゲート開放時には、npn積層構造のp型GaN層に反転層(B)が形成されないと共に、ゲート電極直下の導電性の半導体層に反転層(A)が形成されない。このため、ゲート開放時にはドレイン電流が流れない。一方、ゲート電極Gに順方向に閾値以上の電圧を印加すると、反転層(B)が形成されてnpn積層構造の側壁部分にチャネルが形成されると共に、反転層(A)形成され、ドレイン電流が流れる。これにより、実効的にノーマリオフになるGaN系半導体素子が得られる。
【0008】
また、npn積層構造のp型GaN層の厚さやその不純物濃度を変えたりすることで、閾値電圧を容易に制御することができる。したがって、小さいオン抵抗を維持しながら閾値を確実にプラスに引き上げ、実効的にノーマリオフになるGaN系半導体素子が得られる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係るGaN系半導体素子は、前記半導体層は、第1のGaN系半導体からなるチャネル層と、該チャネル層上に形成され、前記第1のGaN系半導体よりも大きいバンドギャップエネルギーを持つ第2のGaN系半導体からなる電子供給層とを有するヘテロ接合構造であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明に係るGaN系半導体素子は、前記電子供給層は、前記他の部分の一部に前記チャネル層に達する深さの開口部を備え、該開口部に前記絶縁膜を介して前記ゲート電極が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明に係るGaN系半導体素子は、前記電子供給層は、前記他の部分の一部に前記チャネル層に達する深さの開口部を備え、該開口部に前記絶縁膜を介して前記ゲート電極が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明に係るGaN系半導体素子は、前記半導体層上のドレインに相当する部分に、該半導体層側から順にn型層,p型層およびn型層が積層された第2のnpn積層構造、及び該第2のnpn積層構造上に前記ドレイン電極を備え、前記第1のnpn積層構造の側壁部分と、前記半導体層上のゲートに相当する部分と、前記第2のnpn積層構造の側壁部分とを覆う前記絶縁膜を備えていることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために、請求項6に記載の発明に係るGaN系半導体素子は、GaN系半導体からなる導電性の半導体層と、前記半導体層上の一部に積層された、GaN系半導体からなるpnp積層構造と、前記pnp積層構造上に形成されたソース電極と、前記半導体層上に形成されたドレイン電極と、少なくとも前記pnp積層構造の側壁と、前記半導体層上のゲートに相当する部分とを覆うように形成された絶縁膜と、前記半導体層上に前記絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、ゲート電極に逆方向に閾値以上の電圧が印加されていないゲート開放時には、pnp積層構造のn型GaN層に反転層(B)が形成されないと共に、ゲート電極直下の導電性の半導体層に反転層(A)が形成されない。このため、ゲート開放時にはドレイン電流が流れない。一方、ゲート電極Gに逆方向に閾値以上の電圧を印加すると、反転層(B)が形成されてpnp積層構造の側壁部分にチャネルが形成されると共に、反転層(A)形成され、ドレイン電流が流れる。これにより、実効的にノーマリオフになるGaN系半導体素子が得られる。
【0015】
また、pnp積層構造のn型層の厚さやその不純物濃度を変えたりすることで、閾値電圧を容易に制御することができる。したがって、小さいオン抵抗を維持しながら閾値を確実にプラスに引き上げ、実効的にノーマリオフになるGaN系半導体素子が得られる。
【0016】
請求項7に記載の発明に係るGaN系半導体素子は、前記電子供給層上であって、ドレインに相当する部分に前記電子供給層よりバンドギャップエネルギーが小さいGaN系化合物半導体からなる表面層が形成され、前記絶縁膜が、前記積層構造の側壁部分、前記表面層および前記電子供給層の他の部分の一部を除去して表出させた前記チャネル層の表面を底面とするリセス部の内表面上に形成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、電子供給層上に絶縁膜が直接形成されている場合と比べて界面準位密度が低減され、電流コラプスの発生を抑制することができる。従って、耐圧が高く、オン抵抗が低く、電流コラプスによる特性変動の影響を受けにくいGaN系半導体素子を実現できる。
【0018】
請求項8に記載の発明に係るGaN系半導体素子は、前記電子供給層と前記チャネル層との間に、前記電子供給層よりもバンドギャップエネルギーが小さく、前記チャネル層より不純物濃度の低いp型またはアンドープのGaN系化合物半導体材料からなるドリフト層を備えていることを特徴とする。
【0019】
請求項9に記載の発明に係るGaN系半導体素子は、前記表面層がn型またはアンドープのGaNであることを特徴とする。
【0020】
請求項10に記載の発明に係るGaN系半導体素子は、前記表面層がAlxGa1-xNであり、前記電子供給層がAlyGa1-yN(ただし、x<y)であることを特徴とする。
この構成によれば、表面層として電子供給層よりもAl組成比が小さいAlGaNを用いることで、表面層と絶縁膜間の界面準位が低減され、電流コラプスを低減することができる。
【0021】
請求項11に記載の発明に係るGaN系半導体素子は、前記電子供給層がAlGa1-zN(0≦z<1)であり、Al組成比が表面側に行くにつれて小さくなり、前記電子供給層の最表面において前記n型またはアンドープのGaNからなる表面層となることを特徴とする。
この構成によれば、電子供給層は、基板側ではドリフト層とヘテロ接合構造を構成して2次元電子ガス層を発生させ、表面側では表面層をかねることで絶縁膜との間の界面準位密度を低減することができる。
【0022】
請求項12に記載の発明に係るGaN系半導体素子は、前記半導体層は、基板の上に形成されたp型のGaN系化合物半導体材料からなるチャネル層と、前記チャネル層上に形成され、前記チャネル層よりもバンドギャップエネルギーが大きいGaN系化合物半導体材料からなる電子供給層とを備え、前記積層構造が前記電子供給層上のソースに相当する部分に形成され、前記絶縁膜である第1の絶縁膜が、前記積層構造及び前記電子供給層の一部を除去して表出させた前記チャネル層の表面を底面とするリセス部の内表面上に形成され、
前記第1の絶縁膜とは別の絶縁膜であって、電流コラプス低減効果のある第2の絶縁膜が前記電子供給層表面上の前記ドレインに相当する部分に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、電子供給層上には電流コラプス低減効果のある第2の絶縁膜が形成されているため、界面準位が低減され、電流コラプスを低減することができる。
【0023】
請求項13に記載の発明に係るGaN系半導体素子は、前記第1の絶縁膜は、前記第2の絶縁膜よりも絶縁破壊耐圧が大きい材料からなることを特徴とする。
この構成によれば、第1の絶縁膜として絶縁破壊耐圧が大きいSiOやAlなどの材料を用いることで、電流コラプス対策を行ったためにゲート耐圧が低減するといったトレードオフを回避することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、小さいオン抵抗を維持しながら閾値を確実にプラスに引き上げ、実効的にノーマリオフになるGaN系半導体素子を実現することができる。
本発明によれば、ノーマリオフ型で、小さいオン抵抗を維持しながら閾値の制御を容易にしたGaN系半導体素子を実現することができる。
【0025】
上記特許文献1などに開示された従来のGaN系半導体素子の場合、閾値が0V〜+1V程度だったのに対し、従来と同様の耐圧とオン抵抗を維持しながら閾値を+3〜5Vに向上できることが可能になった。このことにより、低オン抵抗かつノーマリオフ型のGaN系半導体素子を実現することができる。そのため、高耐圧のインバータやコンバータなどへの応用が可能になる。以上のことより、高耐圧で、かつ高い信頼性をもつGaN系半導体素子の実現が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る電界効果トランジスタを示す断面図。
【図2】(A)乃至(D)は第1実施形態に係る電界効果トランジスタの作製手順を示す説明図。
【図3】(A)乃至(D)は図2(A)乃至(D)に続く作製手順を示す説明図。
【図4】第2実施形態に係る電界効果トランジスタを示す断面図。
【図5】第3実施形態に係る電界効果トランジスタを示す断面図。
【図6】第4実施形態に係る電界効果トランジスタを示す断面図。
【図7】第5実施形態に係る電界効果トランジスタを示す断面図。
【図8】第6実施形態に係る電界効果トランジスタを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態の説明において同様の部位には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る電界効果トランジスタ(GaN系半導体素子)20を、図1に基づいて説明する。
【0028】
この電界効果トランジスタ20においては、サファイア(0001)基板1の上に、例えばGaNからなるバッファ層2と、アンドープGaN層(チャネル層3)と、電子供給層(アンドープAlGaN層)4とを順に積層して成る層構造(ヘテロ接合構造のエピタキシャル層)が形成されている。バッファ層2は、AlNとGaNの積層構造で構成してもよい。
【0029】
チャネル層(アンドープGaN層)3の表面には、電子供給層(アンドープAlGaN層)4がヘテロ接合しているため、接合している部分の界面には二次元電子ガス層10が形成される。そのため、二次元電子ガス層10がキャリアとなってチャネル層3は導電性を示すようになる。つまり、AlGaN/GaNヘテロ接合界面には、自発分極、および圧電効果(ピエゾ効果)によって、チャネル層(アンドープGaN層)3側にマイナスの電荷(電子)が蓄積する。この蓄積電子はAlGaN層にドーピングを行わなくても、ヘテロ接合界面の直下に高濃度の二次元電子ガスをGaN層に形成し、チャンネルの抵抗、即ち電界効果トランジスタ20のオン抵抗を小さくする効果がある。
【0030】
このように、第1のGaN系半導体材料(アンドープGaN)からなるチャネル層(アンドープGaN層)3と、第1のGaN系半導体材料よりも大きいバンドギャップエネルギーを持つ第2のGaN系半導体材料(アンドープAlGaN)からなる電子供給層(アンドープAlGaN層)4とにより、GaN系半導体からなる導電性の半導体層が構成される。
【0031】
電子供給層4上の一部(ソースに相当する部分)には、電子供給層4側から順にn型GaN層(n型層)5、p型(In)GaN層(p型層)6およびn型GaN層(n型層)7が積層されている。これらn型GaN層5、p型(In)GaN層6およびn型GaN層7により、npn積層構造(第1のnpn積層構造)9が構成されている。このnpn積層構造9上に、n型GaN層5と電気的に接続するソース電極Sが形成されている。電子供給層4のドレインに相当する部分には、この電子供給層4と電気的に接続するドレイン電極Dが形成されている。
【0032】
電子供給層4のゲートに相当する部分には、エッチングによりチャネル層3に達する深さの開口部11が形成されている。この開口部11に絶縁膜8が形成されている。絶縁膜8は、少なくともnpn積層構造9の開口部側壁部分と、電子供給層4上の一部(半導体層上の一部)とに形成されている。本実施形態では、絶縁膜8は、n型GaN層5表面のソース電極Sより開口部11寄りの部分と、npn積層構造9の開口部側壁部分と、電子供給層4の開口部側壁部分と、電子供給層4表面のドレイン電極Dより開口部11寄りの部分(半導体層上の他の部分)とを覆うように形成されている。
【0033】
このような構成を有する電界効果トランジスタ20では、ゲート電極Gに順方向に閾値以上の電圧を印加すると、npn積層構造9のp型(In)GaN層6に反転層(反転分布層)Bが形成されてnpn積層構造9の開口部側壁部分にチャネルが形成されるようになっている。
【0034】
また、この電界効果トランジスタ20では、チャネル層(アンドープGaN層)3のゲート電極G直下の領域はAlGaN層が開口されヘテロ接合が形成されないため、この領域では二次元電子ガス層10が形成されていない(途切れている)。ゲート電極Gに順方向に閾値以上の電圧を印加すると、ゲート電極G直下のチャネル層(アンドープGaN層)3に反転層(反転分布層)Aが形成される。この反転層Aが、ゲート電極Gとドレイン電極との間にある二次元電子ガス層10、つまり、チャネル層3をドリフトするキャリア(電子)が分布する領域であるドリフト層12と連結されるようになっている。このように、本実施形態では、ドリフト層12は二次元電子ガス層10である。
【0035】
上記構成を有する電界効果トランジスタ20は以下のようにして作製することが可能である。即ち、成長装置はMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を用い、基板はサファイア(0001)基板1を用いた。
【0036】
(1)まず、サファイア(0001)基板1をMOCVD装置内に導入し、ターボポンプでMOCVD装置内の真空度を1×10-6hPa以下になるまで真空引きした後、真空度を100hPaとし基板1を600℃に昇温した。温度が安定したところで、基板1を900rpmで回転させ、原料となるトリメチルアルミニウム(TMA)を100cm3/min、アンモニアを12リットル/minの流量で基板1の表面に導入しAlNから成るバッファ層2の成長を行った(図2(A)参照)。バッファ層2の膜厚は50nm程度である。
【0037】
その後、アンモニアを12リットル/minの流量を流しながら温度上昇させ、1050℃に保った後に、トリメチルガリウム(TMG)を300cm3/min、アンモニアを12リットル/minの流量でバッファ層2の上に導入してGaN層から成るチャネル層3の成長を行った(図2(A)参照)。チャネル層3の膜厚は3000nmであった。
【0038】
次に、トリメチルアルミニウム(TMA)を50cm3/min、トリメチルガリウム(TMG)を100cm3/min、アンモニアを12リットル/minの流量で導入し、Al0.25Ga0.75N層4から成る電子供給層4の成長を行った(図2(A)参照)。電子供給層4の膜厚は20nmである。
【0039】
その後、同様に100nmのn型GaN層5、500nmのp型(In)GaN層6、100nmのn型GaN層7を順に積層し、図2(B)に示す層構造が完成する。n型GaN層5の不純物濃度は1e19cm-3であり、p型(In)GaN層6の不純物濃度(Mg濃度)は5e19cm-3であり、n型GaN層7の不純物濃度は1e19cm-3である。
【0040】
(2)次に、塩素ガスなどを用いて素子分離を行う。その後、ゲートおよびドレインを形成する領域を、塩素系ガスを用いてドライエッチングする。このドライエッチングは、2回に分けて行う。最初は、図2(C)に示すように、n型GaN層7、p型GaN層6およびn型GaN層5を、ソースを形成する領域を残して、電子供給層4に達する深さまでドライエッチングする。次に、図2(D)に示すように、電子供給層4のゲートに相当する部分を、チャネル層3に達する深さまでドライエッチングする。
【0041】
その後、ゲート絶縁膜となる、薄層50nmのSiO絶縁膜(SiO/SiN)8を形成する(図3(A)参照)。この後、全体の表面にSiO膜14を堆積させ、パターニングを行って、ゲート電極を形成すべき箇所のSiO絶縁膜8をマスクして、ソース電極Sとドレイン電極Dを形成すべき箇所に開口部8a,14aと開口部8b,14bを開けて、n−GaN層7の表面と、電子供給層4の表面とを表出させる(図3(B)参照)。
【0042】
それらの表面に、Ti、AlとSiの合金膜、Wを順次蒸着してソース電極Sとドレイン電極Dを形成し、この後SiO膜14を除去する(図3(C)参照)。この後、再び全体の表面にSiO膜15を堆積させ、パターニングを行って、ソース電極S、ドレイン電極Dの上を覆い、ゲートとなる部分に開口部15aを開けた(図3(D)参照)。そこに、Ti、Auを蒸着してゲート電極Gを形成した。この後、SiO膜15を除去して図1に示す電界効果トランジスタ20が作製できた。
【0043】
次に、このようにして作製された電界効果トランジスタ20の動作を説明する。
ゲート電極Gに順方向に閾値以上の電圧が印加されていないゲート開放時には、npn積層構造9のp型(In)GaN層6に反転層Bが形成されておらず、npn積層構造9の開口部側壁部分にチャネルが形成されていない。これと共に、ゲート電極G直下のチャネル層(アンドープGaN層)3に反転層Aが形成されていない。このため、ゲート開放時にはドレイン電流が流れない。
【0044】
一方、ゲート電極Gに順方向に閾値以上の電圧を印加すると、npn積層構造9のp型(In)GaN層6に反転層Bが形成されてnpn積層構造9の開口部側壁部分にチャネルが形成されると共に、ゲート電極G直下のチャネル層3に反転層Aが形成される。p型(In)GaN層6に反転層Bが形成されることで、npn積層構造9の開口部側壁部分にチャネルが形成される。また、ゲート電極G直下のチャネル層3に反転層Aが形成されることで、この反転層Aが、ゲート電極Gとドレイン電極との間にある二次元電子ガス層10、つまり、チャネル層3をドリフトするキャリア(電子)が分布する領域であるドリフト層12と連結される。これにより、反転層Aとドリフト層12(二次元電子ガス層10)とで、チャネル層3におけるチャネルが形成される。
【0045】
これにより、ソース電極Sからnpn積層構造9のn型GaN層7に供給される電子は、図1の矢印で示すように、npn積層構造9の開口部側壁部分に形成されたチャネルを走行し、電子供給層4および反転層Aを通り、ドリフト層12(二次元電子ガス層10)でドリストされてドレイン電極D側へ走行し、さらに、ドレイン電極Dの直下で電子供給層4を通ってドレイン電極Dへ入る。これにより、ドレイン電流が流れる。このようにして、ノーマリオフ型の電界効果トランジスタ20の動作が得られる。
【0046】
この電界効果トランジスタ20の閾値電圧に関しては、npn積層構造9のp型(In)GaN層6の厚さを変えたり、その不純物濃度を変えたりすることで、その閾値電圧を制御することができる。具体的には、p型(In)GaN層6の厚さを厚くする程、閾値電圧を高くすることができ、その不純物濃度を高くする程、閾値電圧を高くすることができる。また、npn積層構造9のn型GaN層5、p型(In)GaN層6およびn型GaN層7の各不純物濃度のバランスを調整することで、電界効果トランジスタ20の閾値電圧を制御することができる。
【0047】
以上のように構成された第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○ゲート電極Gに順方向に閾値以上の電圧が印加されていないゲート開放時には、上述したように反転層Aと反転層Bが形成されず、ドレイン電流が流れない。一方、ゲート電極Gに順方向に閾値以上の電圧を印加すると、上述したように反転層Aと反転層Bが形成されることで、ドレイン電流が流れる。これにより、実効的にノーマリオフになるGaN系電界効果トランジスタが得られる。
【0048】
また、npn積層構造9のp型(In)GaN層6の厚さを変えたり、その不純物濃度を変えたり、或いは、n型GaN層5、p型(In)GaN層6およびn型GaN層7の各不純物濃度のバランスを調整することで、閾値電圧を容易に制御することができる。したがって、小さいオン抵抗を維持しながら閾値を確実にプラスに引き上げ、実効的にノーマリオフになるGaN系電界効果トランジスタが得られる。
【0049】
○ゲート電極Gとドレイン電極との間の領域に、チャネル層3をドリフトするキャリア(電子)が分布する領域であるドリフト層12が二次元電子ガス層10により形成されているので、ゲート電極Gとドレイン電極Dの間の電界集中が緩和され、耐圧が向上する。これにより、小さいオン抵抗と高耐圧の両立を図りながら閾値を確実にプラスに引き上げ、実効的にノーマリオフになるGaN系電界効果トランジスタが得られる。
【0050】
○チャネル層3の表面には高濃度の二次元電子ガス層10が形成されるので、チャンネルの抵抗、即ち電界効果トランジスタ20のオン抵抗を小さくする効果がある。これにより、小さいオン抵抗と高耐圧の両立を図りながら、閾値を確実にプラスに引き上げ、実効的にノーマリオフになるGaN系電界効果トランジスタが得られる。
【0051】
○ゲート電極Gに順方向に閾値以上の電圧を印加すると、npn積層構造9のp型(In)GaN層6に反転層Bが形成されてnpn積層構造9の開口部側壁部分にチャネルが形成されると共に、ゲート電極G直下のチャネル層3に反転層Aが形成され、この反転層Aがドリフト層12と連結される。このような構成により、高耐圧でかつ低オン抵抗なノーマリオフ型の電界効果トランジスタ20において、閾値を確実にプラスに引き上げ、実効的にノーマリオフになる電界効果トランジスタを実現することができる。
【0052】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る電界効果トランジスタ20Aを示している。
この電界効果トランジスタ20Aの特徴は、次の構成にある。
【0053】
(1)上記第1実施形態に係る電界効果トランジスタ20において、電子供給層4となるアンドープAlGaN層に代えて、チャネル層44となるp型InGaN層をアンドープGaN層34上に形成している。
【0054】
(2)チャネル層44上のソースに相当する部分には、チャネル層(p型InGaN層)44側から順にp型GaN層(p型層)45、n型GaN層(n型層)46およびp型GaN層(p型層)47が積層されている。これらp型GaN層45、n型GaN層46およびp型GaN層47により、pnp積層構造19が構成されている。このpnp積層構造19上に、p型GaN層47と電気的に接続するソース電極Sが形成されている。チャネル層44のドレインに相当する部分には、このチャネル層44と電気的に接続するドレイン電極Dが形成されている。
【0055】
上記構成(1)により、チャネル層(p型InGaN層)44の表面には、アンドープGaN層34がヘテロ接合しているため、接合している部分の界面には二次元ホールガス層100が形成される。そのため、二次元ホールガス層100がキャリアとなってチャネル層44は導電性を示すようになる。
【0056】
上記構成(2)により、ゲート電極Gに逆方向に閾値以上の電圧を印加すると、pnp積層構造19のn型GaN層46に反転層(反転分布層)Bが形成されてpnp積層構造19の開口部側壁部分にチャネルが形成されるようになっている。
【0057】
また、アンドープGaN層34のゲート電極G直下の領域は絶縁膜8と界面をなしているので、ゲート電極Gに逆方向に閾値以上の電圧を印加すると、ゲート電極G直下のアンドープGaN層34に反転層(反転分布層)Aが形成される。この反転層Aが、ゲート電極Gとドレイン電極との間にある二次元ホールガス層100、つまり、チャネル層44となるp型InGaN層をドリフトするキャリア(ホール)が分布する領域であるドリフト層120と連結されるようになっている。このように、本実施形態では、ドリフト層120は二次元ホールガス層100である。
【0058】
以上のように構成された第2実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○ゲート電極Gに逆方向に閾値以上の電圧が印加されていないゲート開放時には、反転層Aと反転層Bが形成されず、ドレイン電流が流れない。一方、ゲート電極Gに逆方向に閾値以上の電圧を印加すると、pnp積層構造19のn型GaN層46に反転層Bが形成されると共に、ゲート電極G直下のアンドープGaN層34に反転層Aが形成される。これにより、ドレイン電極Dから供給されるホールは、図4の矢印で示す経路でソース電極S側へ移動し、ドレイン電流が流れる。これにより、実効的にノーマリオフになるGaN系電界効果トランジスタが得られる。
【0059】
また、pnp積層構造19のn型GaN層46の厚さを変えたり、その不純物濃度を変えたり、或いは、p型GaN層45、n型GaN層46およびp型GaN層47の各不純物濃度のバランスを調整することで、閾値電圧を容易に制御することができる。したがって、小さいオン抵抗を維持しながら閾値を確実にプラスに引き上げ、実効的にノーマリオフになるGaN系電界効果トランジスタが得られる。
【0060】
○ゲート電極Gとドレイン電極との間の領域に、チャネル層44となるp型InGaN層をドリフトするキャリア(ホール)が分布する領域であるドリフト層120が二次元ホールガス層100により形成されているので、ゲート電極Gとドレイン電極Dの間の電界集中が緩和され、耐圧が向上する。これにより、小さいオン抵抗と高耐圧の両立を図りながら閾値を確実にプラスに引き上げ、実効的にノーマリオフになるGaN系電界効果トランジスタが得られる。
【0061】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る電界効果トランジスタ20Bを示している。
この電界効果トランジスタ20Bの特徴は、次の構成にある。
【0062】
上記第1実施形態に係る電界効果トランジスタ20において、電子供給層4上のドレインに相当する部分にも、電子供給層4から順にn型GaN層5、p型(In)GaN層6およびn型GaN層7が積層されている。これらn型GaN層5、p型(In)GaN層6およびn型GaN層7により、第2のnpn積層構造29が構成されている。この第2のnpn積層構造29上に、n型GaN層7と電気的に接続するソース電極Sが形成されている。なお、この電界効果トランジスタ20Bでは、ソース電極Sとゲート電極Gの一端部との間隔Xを、ドレイン電極Dとゲート電極Gの他端部との間隔Yより小さくしている。
【0063】
ゲート電極Gに順方向に閾値以上の電圧を印加すると、npn積層構造9,29の各p型(In)GaN層6に反転層B,Bが形成されてnpn積層構造9,29の各開口部側壁部分にチャネルが形成されると共に、ゲート電極G直下のチャネル層3に反転層Aが形成される。npn積層構造9,29の各p型(In)GaN層6に反転層B,Bが形成されることで、npn積層構造9,29の各開口部側壁部分にチャネルが形成される。これらのチャネルがゲート電極G直下のチャネル層3に形成される反転層Aと連結される。
【0064】
これにより、ソース電極Sから供給される電子は、図5の矢印で示すように、npn積層構造9の開口部側壁部分に形成されたチャネルを走行し、電子供給層4および反転層Aを通り、さらに、電子供給層4を通った後、npn積層構造29の開口部側壁部分に形成されたチャネルを走行してドレイン電極Dへ入る。これにより、ドレイン電流が流れる。このようにして、ノーマリオフ型の電界効果トランジスタの動作が得られる。
【0065】
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態に係る電界効果トランジスタ20Cを示している。
この電界効果トランジスタ20Cの特徴は、次の構成にある。
(1)図1に示す上記第1実施形態に係る電界効果トランジスタ20において、上記半導体層は、サファイア(0001)基板1の上に形成されたp型のGaN系化合物半導体材料からなるチャネル層3と、チャネル層3に形成され、チャネル層3よりもバンドギャップエネルギーが大きいGaN系化合物半導体材料からなる電子供給層4とを備える。
(2)npn積層構造9が電子供給層4上のソースに相当する部分に形成され、電子供給層4上のドレインに相当する部分に電子供給層4よりバンドギャップエネルギーが小さいGaN系化合物半導体材料からなる表面層50が形成されている。
(3)絶縁膜8が、npn積層構造9、表面層50および電子供給層4の一部を除去して表出させたチャネル層3の表面を底面とするリセス部としての開口部11の内表面上および表面層50上に形成されている。
その他の構成は、上記第1実施形態に係る電界効果トランジスタ20と同様である。
【0066】
第4実施形態に係る電界効果トランジスタ20Cによれば、上記第1実施形態の奏する作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
電子供給層4上に、電子供給層4のGaN系半導体材料よりバンドギャップエネルギーが小さいGaN系化合物半導体材料からなる表面層50が形成され、この表面層50上に絶縁膜8が形成されている。このため、電子供給層4上に絶縁膜が直接形成されている場合と比べて界面準位密度が低減され、電流コラプスの発生を抑制することができる。従って、耐圧が高く、オン抵抗が低く、電流コラプスによる特性変動の影響を受けにくい電界効果トランジスタを実現できる。
【0067】
(第5実施形態)
図7は、第5実施形態に係る電界効果トランジスタ20Dを示している。
この電界効果トランジスタ20Dの特徴は、次の構成にある。
(1)図1に示す上記第1実施形態に係る電界効果トランジスタ20において、上記電子供給層4に代えて電子供給層4Aを用いている。この電子供給層4Aは、AlGa1-zN(0≦z<1)であり、Al組成比が表面側に行くにつれて小さくなり、電子供給層4Aの最表面においてn型またはアンドープのGaNからなる表面層50Aとなる。つまり、電子供給層4Aが基板1側から徐々にAl組成比が小さくなるAlGaNからなっており、電子供給層4Aの表面側は表面層50Aを兼ねている。
【0068】
電子供給層4AのAlの組成比は、基板1側では、15〜25%であり、表面側では、0〜15%であることが好ましい。このような電子供給層4Aは、成長時の原料ガスの流量を調整する、具体的には、経時的にTMAの流量を減少させることで得ることができる。その他の構成は、上記第1実施形態に係る電界効果トランジスタ20と同様である。
このような構成とすることで、電子供給層406は、基板406側ではドリフト層とヘテロ接合構造を構成して2次元電子ガス層を発生させ、表面側では表面層をかねることで絶縁膜(ゲート絶縁膜411)との間の界面準位密度を低減することができる。
【0069】
(第6実施形態)
図8は、第6実施形態に係る電界効果トランジスタ20Eを示している。
この電界効果トランジスタ20Eの特徴は、次の構成にある。
(1)図1に示す上記第1実施形態に係る電界効果トランジスタ20において、上記半導体層は、サファイア(0001)基板1の上に形成されたp型のGaN系化合物半導体材料からなるチャネル層3と、チャネル層3に形成され、チャネル層3よりもバンドギャップエネルギーが大きいGaN系化合物半導体材料からなる電子供給層4とを備える。
(2)絶縁膜8に代えて、第1の絶縁膜8Aが、npn積層構造及9及び電子供給層4の一部を除去して表出させたチャネル層3の表面を底面とするリセス部である開口部11の内表面上に形成されている。
(3)第1の絶縁膜8Aとは別の絶縁膜であって、電流コラプス低減効果のある第2の絶縁膜60が電子供給層4表面上のドレインに相当する部分に形成されている。
(4)第1の絶縁膜8Aは、第2の絶縁膜60よりも絶縁破壊耐圧が大きい材料からなる。
【0070】
この構成によれば、電子供給層4表面上のドレインに相当する部分に電流コラプス低減効果のある第2の絶縁膜60が形成されているため、界面準位が低減され、電流コラプスを低減することができる。
また、第1の絶縁膜8Aとして絶縁破壊耐圧が大きいSiOやAlなどの材料を用いることで、電流コラプス対策を行ったためにゲート耐圧が低減するといったトレードオフを回避することができる。
【0071】
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記各実施形態では、導電性のGaN系半導体層として、アンドープGaN層(チャネル層3)とアンドープAlGaN層(電子供給層4)をヘテロ接合させたものを用い、ヘテロ接合界面の直下に2次元電子ガス10を発生させて、チャネル層3が導電性を示すようにしていた。しかしながら、チャネル層は、アンドープGaN層(チャネル層3)とアンドープAlGaN層(電子供給層4)のヘテロ接合構造に限らず、導電性を示すGaN系半導体層であれば何でも良い。例えば、チャネル層3をp型のGaN系化合物半導体材料で構成したものであってもよい。
【0072】
例えば、上記各実施形態において、バッファ層2の上に、Mgをドープしたp型の導電性を示すGaN系半導体層を形成し、このGaN系半導体層をチャネル層に用いても良い。なお、Mgに代えてBe、C,Znを用いても良い。この場合、p型の導電性を示すGaN系半導体層上に絶縁膜8が形成されるように構成する。これと共に、p型の導電性を示すGaN系半導体層におけるゲート電極Gとドレイン電極Dの間の領域に、ドリフト層としてn型のGaN層を形成する。
【0073】
このような構成により、ゲート電極Gとドレイン電極との間の領域に、ドリフト層としてn型のGaN層を形成しているので、ゲート電極Gとドレイン電極Dの間の電界集中が緩和され、耐圧が向上する。したがって、上記第1実施形態と同様に、小さいオン抵抗と高耐圧の両立を図りながら、閾値を確実にプラスに引き上げ、実効的にノーマリオフになるGaN系電界効果トランジスタが得られる。
【0074】
・上記各実施形態において、サファイア基板に限らず、SiC基板、Si基板、GaN基板、MgO基板、ZnO基板、ダイヤモンド基板、SOI基板上の素子などを用いることも可能である。
【0075】
・上記各実施形態では、基板上に電界効果トランジスタが作製されていたが、基板をエッチングなどにより除去した電界効果トランジスタ、つまり、基板の無い電界効果トランジスタにも本発明は適用可能である。
【0076】
・上記各実施形態において、チャネル層3、n型GaN層、p型GaN層を構成する半導体材料は、単結晶のGaNに限らず、GaN系化合物半導体を用いることができる。また、p型GaN層6を構成する半導体材料は、GaNに限らず、InGaNなどのGaN系化合物半導体を用いることができる。さらに、電子供給層4は、AlGaNに限らず、他のGaN系化合物半導体、例えばInAlN、BAlGaN等を用いることができる。
【0077】
・上記各実施形態における絶縁膜8の材料はSiOに限られるものでなく、絶縁性があり、この絶縁膜8と界面をなす各半導体層と密着性があれば何でも良い。例えば、絶縁膜8の材料として、SiN、SiON、Al、AlN、HfOなどを用いることができる。また、絶縁膜8は,SiO絶縁膜などの単層に限らず、SiO/SiNなどの複数層で構成しても良い。
【0078】
・上記各実施形態では、MOS構造についての例を示したが、GaNを用いたHEMT構造やDiode、Bipolar Transistorなどへの適用も可能であることはいうまでも無い。
・図6に示す上記第4実施形態に係る電界効果トランジスタ20Cおいて、GaN系化合物半導体材料からなる表面層50をAlGaNからなる層とし、この表面層50のAl組成比をAlGaNからなる電子供給層4のAl組成比よりも小さくした構成の電界効果トランジスタにも本発明は適用可能である。つまり、この電界効果トランジスタでは、表面層がAlxGa1-xNであり、電子供給層がAlyGa1-yN(ただし、x<y)である。このような表面層3を得るためには、ドリフト層12上にAl組成が25%のAlGaNからなる電子供給層4をエピタキシャル成長させ、さらに、電子供給層4上にAl組成が5%のAlGaNからなる表面層をエピタキシャル成長させる。
このように、表面層として電子供給層よりもAl組成比が小さいAlGaNを用いることで、表面層と絶縁膜(ゲート絶縁膜)8間の界面準位が低減され、電流コラプスを低減することができる。表面層として用いるAlGaNのAl組成比は、0%より大きく、15%以下が好ましい。
【符号の説明】
【0079】
A,B,B,B…反転層
S…ソース電極
D…ドレイン電極
G…ゲート電極
1…サファイア(0001)基板
2…バッファ層
3…チャネル層(アンドープGaN層)
4…電子供給層(AlGaN層)
5…n型GaN層(n型層)
6…p型(In)GaN層(p型層)
7…n型GaN層(n型層)
8…絶縁膜
8A…第1の絶縁膜
9…npn積層構造(第1のnpn積層構造)
10…二次元電子ガス層
11…開口部(リセス部)
12,120…ドリフト層
19…pnp積層構造
20,20A,20B…電界効果トランジスタ(GaN系半導体素子)
29…第2のnpn積層構造
44…チャネル層(p型InGaN層)
45…p型GaN層(p型層)
46…n型GaN層(n型層)
47…p型GaN層(p型層)
50,50A…表面層
60…第2の絶縁膜
100…二次元ホールガス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaN系半導体からなる導電性の半導体層と、
前記半導体層上の一部に積層された、GaN系半導体からなる第1のnpn積層構造と、
前記npn積層構造上に形成されたソース電極と、
前記半導体層上に形成されたドレイン電極と、
少なくとも前記npn積層構造の側壁部分、および前記半導体層上の他の部分に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
を備えることを特徴とするGaN系半導体素子。
【請求項2】
前記半導体層は、第1のGaN系半導体からなるチャネル層と、該チャネル層上に形成され、前記第1のGaN系半導体よりも大きいバンドギャップエネルギーを持つ第2のGaN系半導体からなる電子供給層とを有するヘテロ接合構造であることを特徴とする請求項1に記載のGaN系半導体素子。
【請求項3】
前記電子供給層は、前記他の部分の一部に前記チャネル層に達する深さの開口部を備え、該開口部に前記絶縁膜を介して前記ゲート電極が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のGaN系半導体素子。
【請求項4】
前記半導体層はp型またはアンドープのGaN系半導体からなるチャネル層と、前記チャネル層上に形成されたn型のGaN系半導体からなるドリフト層とを備えることを特徴とする請求項1に記載のGaN系半導体素子。
【請求項5】
前記半導体層上のドレインに相当する部分に、該半導体層側から順にn型層,p型層およびn型層が積層された第2のnpn積層構造、及び該第2のnpn積層構造上に前記ドレイン電極を備え、
前記第1のnpn積層構造の側壁部分と、前記半導体層上のゲートに相当する部分と、前記第2のnpn積層構造の側壁部分とを覆う前記絶縁膜を備えていることを特徴とする請求項1に記載のGaN系半導体素子。
【請求項6】
GaN系半導体からなる導電性の半導体層と、
前記半導体層上の一部に積層された、GaN系半導体からなるpnp積層構造と、
前記pnp積層構造上に形成されたソース電極と、
前記半導体層上に形成されたドレイン電極と、
少なくとも前記pnp積層構造の側壁と、前記半導体層上のゲートに相当する部分とを覆うように形成された絶縁膜と、
前記半導体層上に前記絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、を備えることを特徴とするGaN系半導体素子。
【請求項7】
前記電子供給層上であって、ドレインに相当する部分に前記電子供給層よりバンドギャップエネルギーが小さいGaN系化合物半導体からなる表面層が形成され、
前記絶縁膜が、前記積層構造の側壁部分、前記表面層および前記電子供給層の他の部分の一部を除去して表出させた前記チャネル層の表面を底面とするリセス部の内表面上に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のGaN系半導体素子。
【請求項8】
前記電子供給層と前記チャネル層との間に、前記電子供給層よりもバンドギャップエネルギーが小さく、前記チャネル層より不純物濃度の低いp型またはアンドープのGaN系化合物半導体材料からなるドリフト層を備えていることを特徴とする請求項7に記載のGaN系半導体素子。
【請求項9】
前記表面層がn型またはアンドープのGaNであることを特徴とする請求項7または8に記載のGaN系半導体素子。
【請求項10】
前記表面層がAlxGa1-xNであり、前記電子供給層がAlyGa1-yN(ただし、x<y)であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載のGaN系半導体素子。
【請求項11】
前記電子供給層がAlGa1-zN(0≦z<1)であり、Al組成比が表面側に行くにつれて小さくなり、前記電子供給層の最表面において前記n型またはアンドープのGaNからなる表面層となることを特徴とする請求項8に記載のGaN系半導体素子。
【請求項12】
前記半導体層は、基板の上に形成されたp型のGaN系化合物半導体材料からなるチャネル層と、前記チャネル層上に形成され、前記チャネル層よりもバンドギャップエネルギーが大きいGaN系化合物半導体材料からなる電子供給層とを備え、
前記積層構造が前記電子供給層上のソースに相当する部分に形成され、
前記絶縁膜である第1の絶縁膜が、前記積層構造及び前記電子供給層の一部を除去して表出させた前記チャネル層の表面を底面とするリセス部の内表面上に形成され、
前記第1の絶縁膜とは別の絶縁膜であって、電流コラプス低減効果のある第2の絶縁膜が前記電子供給層表面上の前記ドレインに相当する部分に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のGaN系半導体素子。
【請求項13】
前記第1の絶縁膜は、前記第2の絶縁膜よりも絶縁破壊耐圧が大きい材料からなることを特徴とする請求項12に記載のGaN系半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−239275(P2009−239275A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50749(P2009−50749)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】