説明

HDR式連続圧延方法

【課題】 製造設備を長大化させることなく省エネルギー・高能率の連続圧延を可能にする。
【解決手段】 連続鋳造機1により連続鋳造されたビレット10を順次接続ライン12に直送し、ビレットのスケールをスケール除去装置3において除去した後、先行ビレットの後端面と後行ビレットの先端面を走間フラッシュバット溶接装置4においてフラッシュバット溶接し、その溶接部15のバリを走間バリ取り装置5においてグラインダー51〜53により削除し、連続ビレットを誘導加熱装置6で加熱し、圧延機列7で連続圧延する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、連続鋳造されたビレットを高温下で直送し、連続的に接続し圧延することにより条鋼及び線材を製造するHDR式連続圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】線材、棒鋼、あるいは形鋼を省エネルギー・高能率に製造する圧延方法として、直送圧延法(HDR,Hot Direct Rollingの略)が知られている。これは、連続鋳造されたビレットをそのまま圧延機に直送、または加熱炉で適宜の温度に昇温したのち、圧延機列に送り込んで連続的に圧延するものである。しかし、この方法は、ビレットを1本ずつ圧延するものであるため、製品の短尺が出るなど歩留りが悪く、このため最近ではより一層の高能率化を可能にするべく、ビレットを連続的に接続してから圧延する連続圧延法が試みられている。この連続圧延法には、例えば特開昭52−43754号公報がある。この方法は、連続鋳造されたビレットは一旦冷却されたのち加熱炉で適宜の温度に加熱され、加熱炉からの抽出ビレットの後端と次の抽出ビレットの先端を走間フラッシュバット溶接機でフラッシュバット溶接し、スカーフアで溶接部のバリ取りを行い、このように接続した連続ビレットを誘導加熱装置で再加熱したのち、圧延機列で連続的に圧延するものである。
【0003】しかしながら、従来の連続圧延法では、ビレットの鋳造ラインと圧延ラインとが直結されていないためにビレットの加熱工程と再加熱工程の2つの工程が必要不可欠なものとなっている。その結果、省エネルギー化に逆行する一面を持つばかりでなく、製造設備が極めて長大化する不利益を招く。また、ビレットの加熱と再加熱を一台の加熱炉で共用するものも提案されている(特公昭57−11722号)が、この方法でもビレットの加熱と再加熱の2工程を必要とする点では同じであり、しかもビレットを接続する前に一旦圧延方向と反対方向に加熱炉から搬出し、ついで方向転換してから、接続工程、溶接部のバリ取り工程、再加熱工程(同じ加熱炉による)、圧延工程と続くものであるから、熱損失が大きく、製造設備の長大化も免れない。さらに、前記特開昭52−43754号、特公昭57−11722号公報の方法では、溶接部のバリを総形バイト等の工具で強引に剥ぎ取るような方法であるから、バイトの摩滅が激しく、実用には適しない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、製造設備の長大化を極力おさえて省エネルギー・高能率の連続圧延を実現することを課題としており、いわば前述した直送圧延法と連続圧延法の各々の特長を活かすよう両方法の組み合わせに係るHDR式連続圧延方法を得ることを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明に係るHDR式連続圧延方法は、連続鋳造機により連続的に鋳造されたビレットを順次直送し、先行ビレットの後端と後行ビレットの先端を走間においてフラッシュバット溶接で連続的に接続する工程と、前記フラッシュバット溶接による溶接部のバリを走間においてグラインダーにより削除する工程と、この連続ビレットを誘導加熱装置により所定温度に昇温する工程と、加熱された連続ビレットを圧延機列により圧延する工程とを有することを特徴とするものである。
【0006】連続鋳造されたビレットを直送しフラッシュバット溶接することにより、ビレットの加熱昇温が最小限で済むため、製造設備を長大化させることなく省エネルギー・高能率の連続圧延が可能である。連続鋳造機からの直送ビレットは800〜900℃の高温下にあり、直ちに走間においてフラッシュバット溶接を行うようにしているので、フラッシュバット溶接に必要な予熱時間を短くすることができ、溶接時間も短くなる。また、フラッシュバット溶接であるため、アプセットにより不純物が溶接部に介在する恐れがなく、組織変化も微少であり、接合強度を母材(ビレット)とほぼ同等にすることができる。さらに、アプセットによりビレット外周上に隆起した溶接部のバリを走間においてグラインダーにより削除することにしているので、バリ取りを容易に行うことができるとともに、バリ取り時間が短く、また砥石研削の特徴としてグラインダーが摩耗してもその切れ味を長期間一定に保つことができる。このように接続された連続ビレットは、誘導加熱装置により950〜1050℃に加熱された後、圧延機列で連続圧延される。
【0007】また、フラッシュバット溶接を行う際には、電極を通じて大電流の通電を良好にするため、好ましくはその溶接前にビレットのスケールを水圧式または機械式により除去するものとする。この場合において、ビレットのスケールを除去する部分をフラッシュバット溶接用の電極が接触する先端部及び後端部に限定することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】図1は本発明のHDR式連続圧延装置の一構成例を示す概要図で、各構成装置の平面的な配置関係を示している。同図において、1は連続鋳造機であり、この例では2ストランドの連続鋳造機として示してある。また、鋳造ライン11と圧延ライン13とは平行になっている。連続鋳造機1により連続鋳造されたビレット10は、ビレットの接続ライン12に対し直交する方向に設置されたチェーンコンベア2上に移載される。ビレットの接続ライン12は圧延ライン13の上流側に直線状に接続されており、接続ライン12上には、上流側より順次、スケール除去装置3、走間フラッシュバット溶接装置4、走間バリ取り装置5、及び誘導加熱装置6が配置されている。7は圧延ライン13を構成する多数の圧延機スタンドからなる圧延機列である。
【0009】スケール除去装置3は、例えば高圧水の吹き付け、または回転ブラシにより、ビレット10のスケールを除去するようになっている。これにより、フラッシュバット溶接時の通電を良くするとともに、電極面の損傷を防止することができる。また、ビレット10のスケールを除去する部分は、必ずしもビレットの全長とする必要はなく、フラッシュバット溶接用の電極が接触するビレット10の先端部及び後端部に限定することができる。また、ビレット10の端面もスケールを除去した方が良い。
【0010】図2は走間フラッシュバット溶接装置4の概要図、図3は同溶接装置の内部のクランプ装置の部分断面側面図、図4は同クランプ装置の正面図である。この溶接装置4は、走行機体40の内部に固定ヘッド41と移動ヘッド42を設け、各ヘッドに、先行ビレット10a及び後行ビレット10bをそれぞれクランプするための油圧シリンダ43a、44a、43b、44bを複数装備してなるものである。これらのうちビレットの端面に近い方の油圧シリンダ43aと油圧シリンダ43bのクランプ体は電極45、46となっている。また、固定ヘッド41と移動ヘッド42は複数のアプセット用油圧シリンダ47で結合されている。なお、電極駆動用の油圧シリンダ43a、43bはビレットの端面にできるだけ近い位置にセットされる。図中、48は固定ヘッド41を取り付ける架台である。
【0011】上記溶接装置4により、先行ビレット10aの後端面と後行ビレット10bの先端面をフラッシュバット溶接したときの溶接部15の断面形状を図5(a)に模式的に示す。フラッシュバット溶接時のアプセットにより、溶接部15が外周上に隆起するので、このバリ15aを次に述べる走間バリ取り装置5によって削除する。バリ取りした後の状態を図5(b)に示す。
【0012】図6は丸ビレットを対象とした場合の走間バリ取り装置の概要図、図7は角ビレットを対象とした場合の走間バリ取り装置の概要図で、図7(a)は側面図、図7(b)は正面図である。図6に示す走間バリ取り装置5は、図示しない走行機体上に、独立に回転駆動される複数のグラインダー51〜53をビレット10の外周上に等間隔に配置し、かつ、各グラインダー51〜53をビレット10の中心軸に対し斜めに配置するとともに、ビレット10の回りに旋回するように構成したものである。さらに、各グラインダー51〜53はビレット10の半径方向に移動可能になっている。各グラインダー51〜53をビレット10の中心軸に対し斜めに配置することにより、比較的厚さの薄いグラインダーを用いても溶接部15のバリ15aを幅広く削除することができる。丸ビレット10に対しては、このように複数のグラインダー51〜53を丸ビレット10の回りに旋回させることによって、図5(b)に示すようにバリ15aを研削することができる。
【0013】角ビレット14の場合には、図7に示すようにグラインダー54〜57を角ビレット14の周囲を囲むように配置し、かつ、それぞれ斜めに配置するとともに、左右のグラインダー54、55と上下のグラインダー56、57とを角ビレット14の進行方向に対してずらして配置し、機械的に干渉しないようにしている。したがって、この場合にはバリは2段階で削除されることになる。
【0014】誘導加熱装置6及び圧延機列7は周知のものであるから、それらの詳細な図示は省略する。
【0015】次に、本発明の方法について動作とともに説明する。連続鋳造機1により連続鋳造されたビレット10は、例えばチェーンコンベア2上に移載し、または単に1本ずつ切出し、次いで接続ライン12に順次直送される。この直送ビレット10は、ほぼ一定の間隔を保って移動し、まず、スケール除去装置3において、水圧式または機械式により、主としてビレット10の端面、先端部及び後端部のスケールが除去される。次に、走間フッシュバット溶接装置4がビレット10とほぼ同速度で走行しているときに、先行ビレット10aと後行ビレット10bをそれぞれ油圧シリンダ43a、44a、43b、44bによりクランプし、アプセット用油圧シリンダ47により後行ビレット10bを先行ビレット10aに近づけて接触させ、両端面に電極45、46を通じて大電流を流し、短絡・アークを発生させ、両端面を溶融状態にした後、アプセット用油圧シリンダ47により後行ビレット10bにアプセットをかけ、先行ビレット10aと接合する。このフラッシュバット溶接装置4は図1に示す所定のストロークS1 をビレット搬送速度とほぼ同一速度で走行する間にフラッシュバット溶接を行い、溶接後は元の位置に復帰し、このように接続した連続ビレット10cに次の後行ビレット10bを接続するために上記と同じ動作を繰り返して、フラッシュバット溶接を行う。このように次々にビレット10をフラッシュバット溶接で接続していく。
【0016】各溶接部15のバリ15aは、走間バリ取り装置5において連続的に削除される。すなわち、同装置5は、連続ビレット10cの溶接部15を検出すると、下流側に走行しながら、定常的に回転しているグラインダー51〜53を適当な油圧シリンダ等によりビレット中心側に移動させていき、ビレット10cにプリセットする。そして、ビレット10cが更に下流側に搬送されて、グラインダー51〜53の下面にビレット10cの溶接部15が到達すると、駆動モータの駆動電流が急激に増加するので、それによって溶接部15の到達を検出する。溶接部15がグラインダー51〜53の下面に到達すると、回転中のグラインダー51〜53をプリセットした位置に固定し、更にビレット10cの回りに旋回させることによって、ビレット10cの周方向全体のバリ15aを研削することができる。このバリ取り装置5も図1に示す所定のストロークS2 を走行する間にバリ取りを行い、バリ取り後は元の位置に復帰して次の溶接部15に対するバリ取り動作を上記と同様に行う。このようにして各溶接部15のバリ15aが連続的に削除される。また、角ビレット14を対象とする場合は、グラインダー54〜57を図7に示すように配置することによって、各グラインダー54〜57を回転させながら上流側のグラインダー54、55から順次溶接部に近づけていくことにより、バリの左右部、次いで上下部と、2段階でバリを研削することができる。
【0017】上記のように連続ビレット10cは、走間バリ取り装置5において各溶接部15のバリ取りを行いつつ、次の誘導加熱装置6に搬入され、ここで950〜1050℃に昇温され、さらに加熱昇温後の連続ビレット10cを圧延機列7によって連続圧延する。
【0018】以上により明らかなように、連続鋳造されたビレット10を順次直送し、スケール除去工程、走間フラッシュバット溶接工程、走間バリ取り工程、加熱工程を経て連続圧延するものであるので、ビレットの加熱工程が1工程で済み、省エネルギー化に大いに寄与するとともに、製造設備が長大化することなく高能率の連続圧延を実施することができる。また、フラッシュバット溶接の際には、未だ直送ビレットが800〜900℃という高温を保持している間に溶接が行われるので、フラッシュバット溶接に必要な予熱時間を短縮することができ、したがって溶接時間を短くすることができるため、サイクルタイムの短縮化が可能である。強度的にもフラッシュバット溶接であれば何ら問題はない。そしてさらに、溶接部15のバリ取りをグラインダーで行っているので、時間がかからず、砥石研削の特徴としてグラインダーが摩耗しても、良好な切れ味を長期間保つことができる。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、連続鋳造された直送ビレットの一連の連続圧延であるので、製造設備を長大化させることなく省エネルギー・高能率の連続圧延が可能である。また、ビレットの溶接時間、溶接部のバリ取り時間の短縮が可能なのでサイクルタイムの短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のHDR式連続圧延装置の概要図である。
【図2】走間フラッシュバット溶接装置の概要図である。
【図3】上記溶接装置の内部のクランプ装置の部分断面側面図である。
【図4】上記クランプ装置の正面図である。
【図5】ビレットの溶接部のバリ取り前及びバリ取り後の状態を示す断面図である。
【図6】丸ビレットの場合の走間バリ取り装置の概略正面図である。
【図7】角ビレットの場合の走間バリ取り装置の概略側面図及び概略正面図である。
【符号の説明】
1 連続鋳造機
2 チェーンコンベア
3 スケール除去装置
4 走間フラッシュバット溶接装置
5 走間バリ取り装置
6 誘導加熱装置
7 圧延機列
10 ビレット(丸ビレット)
10a 先行ビレット
10b 後行ビレット
10c 連続ビレット
14 角ビレット
15 溶接部
15a バリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 連続鋳造機により連続的に鋳造されたビレットを順次直送し、先行ビレットの後端と後行ビレットの先端を走間においてフラッシュバット溶接で連続的に接続する工程と、前記フラッシュバット溶接による溶接部のバリを走間においてグラインダーにより削除する工程と、この連続ビレットを誘導加熱装置により所定温度に加熱する工程と、加熱された連続ビレットを圧延機列により圧延する工程と、を有するHDR式連続圧延方法。
【請求項2】 前記フラッシュバット溶接を行う前に、ビレットのスケールを水圧式または機械式により除去する工程を有する請求項1記載のHDR式連続圧延方法。
【請求項3】 ビレットのスケールを除去する部分は、フラッシュバット溶接用の電極が接触する先端部及び後端部とする請求項2記載のHDR式連続圧延方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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