説明

ICチップトレイ

【課題】ICタグのICチップトレイへの着脱が容易であり、ICタグをICチップトレイへ確実に止着し、さらに上下一対の成形型のみにより成形することができるICタグ装着機構を備えたICチップトレイを提供する。
【構成】上面に多数のICチップを収納する凹部13を備え、弾性、150°Cまでの耐熱性、を有するICチップトレイにおいて、トレイ本体11の上面内側の側壁15寄りに、上部が略半球型の凸部17を一対配し、凸部17の側壁と反対側に近接させて、側壁15内側面との間でICタグTを挟着するための第1挟着板19を配し、第1挟着板19と相対する側壁15内側上部に、トレイ本体11の上面内側面との間でICタグTを挟着するための第2挟着板21を配し、一対の凸部17両側外方の側壁にスリット23をそれぞれ配したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグのICチップトレイへの着脱が容易であり、ICタグをICチップトレイへ確実に止着することができ、さらに上下一対の成形型により成形することができるICタグ装着機構を備えたICチップトレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICチップ(集積回路)は多岐にわたる用途に使用されている。このため、ICチップに不具合が生じた場合、その製造から輸送、保管等の履歴を調査し、その解析結果に基づいて製造、輸送、保管、等の各条件を改善し、ICチップの信頼性を向上させる必要があった。
【0003】
このICチップの製造履歴の調査を簡易に行うため、製造履歴をコード化したバーコードをICチップのパッケージに印刷することが知られている。
【0004】
一方、ICチップをそのまま液晶基板へ直接実装し、あるいは他の部品が実装される基板に直接実装することがしばしば行われている。
【0005】
このように、ICチップを基板に直接実装する場合、バーコードを付すことができず、その場合、製造履歴情報をICチップに直接記録しなければならないが、ICチップの記憶容量が増大するばかりか、ICチップ自体のコストが高騰する要因となっていた。
【0006】
前記手法によれば、完成したICチップの情報を管理することは可能であるが、ICチップそのものの情報、例えば加熱乾燥処理工程、等のどの工程中なのか、加えてどのような条件で後処理するのか、等の製造情報を、個々に管理することは不可能であった。
【0007】
この製造工程中のICチップを管理するため、ICチップを収納し、各工程間を移送させるトレイそのものに情報を記録したバーコード、二次元バーコード、あるいはICタグを貼付し、これら記憶媒体に記録された情報を専用リーダーにて読み取り、各情報を管理するシステムがあった(特許文献1参照)。
【0008】
この記録媒体はいずれもトレイに接着剤または粘着テーブを介して貼付するだけの構造であった。
【0009】
また、この種トレイを成形する際には、上下一対の成形型により成形することが常であるが、アンダーカットがある場合には、特殊な成形型あるいは別途中子となる成形型を使用しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−302248公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示された製品履歴管理方法に係るチップトレイによれば、情報を書き換え、読み取り可能なICタグをチップトレイに貼付しただけであるため、貼付する際、慎重に行う必要があり、この貼付作業が非常に煩雑であった。
【0012】
また、ICチップの製造工程には加熱乾燥処理工程も含まれることがあり、加熱処理中にICタグとチップトレイとを貼着している接着剤層が溶融し、接着機能を果たせなくなり、ICタグがチップトレイから剥離し易く、ICチップの製品履歴管理が不能となる恐れが極めて高かった。
【0013】
また、アンダーカットがある場合には、特殊な成形型あるいは別途中子となる成形型を使用しなければならず、成形コストが高騰する要因となっていた。
【0014】
本発明はこのような欠点に鑑み、ICタグのICチップトレイへの着脱が容易であり、ICタグをICチップトレイへ確実に止着することができ、さらに上下一対の成形型のみにより成形することができるICタグ装着機構を備えたICチップトレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るICチップトレイは、上面に多数のICチップを収納する凹部を備え、弾性を有するICチップトレイにおいて、トレイ本体の上面内側の側壁寄りに、アンダーカット部を有したICタグ装着構造を形成し、そのICタグ装着構造の両側外方の側壁にスリットを配したICタグ装着機構を備えたことを特徴とする。
前記アンダーカット部を曲面としてもよい。
すなわち本発明に係るICチップトレイは、上面に多数のICチップを収納する凹部を備え、弾性、150°Cまでの耐熱性、を有するICチップトレイにおいて、トレイ本体の上面内側の側壁寄りに、上部が略半球型の凸部を一対配し、凸部の側壁と反対側に近接させて、側壁内側面との間でICタグを挟着するための第1挟着板を配し、第1挟着板と相対する側壁内側上部に、トレイ本体の上面内側面との間でICタグを挟着するための第2挟着板を配し、一対の凸部両側外方の側壁にスリットをそれぞれ配してICタグ装着機構を備えたことを特徴とするもの、または、一対の凸部、第1および第2挟着板、スリットをトレイ本体の横方向および縦方向の一側の側壁部位に配したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るICチップトレイによれば、ICタグを装着するトレイ本体の一側の側壁に一対のスリットを配してICタグ装着機構を形成したため、ICタグを装着する際、スリットにより短尺に区画された装着部位のトレイ本体の側壁を、外方に弾性変形させて装着容積を広く確保した状態で装着することができ、取り外す際にも、短尺に区画された側壁を外方に弾性変形させて取り外すことができるため、ICタグのICチップトレイへの着脱が極めて容易となる。
【0017】
また、トレイ本体の一側の側壁に配した一対のスリットにより、第2挟着板を配した側壁部位が短尺に区画されるため、脱型時に第2挟着板を配した側壁部位を、外方に弾性変形させて成形型から取り出すことができ、第2挟着板を損傷させることなく、スムーズな脱型を行うことができると共に、アンダーカットとなる第2挟着板があっても、特殊な成形型あるいは別途中子となる成形型を使用することなく、上下一対の成形型のみにより成形することが可能となり、成形コストを大幅に削減することができる。
【0018】
また、装着時には、トレイ本体に対して側壁が復帰して垂直状態となり、ICタグが、一対の凸部、第1、第2挟着板とトレイ本体上面内側および側壁内面との間に、トレイ本体の成形素材が有する弾性力が作用した状態で挟着されるため、ICタグをICチップトレイへ確実に止着することができる。
【0019】
また、凸部の上部が略半球型となる形状に成形してあるため、ICタグの着脱時にICタグを案内する役目を果たし、スムーズな着脱を可能とするばかりか、脱型時にこの凸部の損傷を防止し、脱型することができる。
【0020】
さらに、凸部、第1および第2挟着板、スリットを、トレイ本体の横方向および縦方向の一側の側壁部位に予め配することにより、使用状況に応じてICタグの装着位置を使い分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るICチップトレイの要部拡大斜視図である。
【図2】同、要部を示す(イ)は正面図、(ロ)は平面図である。
【図3】ICタグ装着機構を備えたICチップトレイの正面図である。
【図4】同、平面図である。
【図5】同、側面図である。
【図6】同、背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ICタグのICチップトレイへの着脱を容易とし、ICタグをICチップトレイへ確実に止着し、さらに上下一対の成形型のみにより成形する目的を、トレイ本体の上面内側の側壁寄りに配した上部が略半球型の一対の凸部と、凸部の側壁と反対側に近接させて配した第1挟着板と、第1挟着板と相対する側壁内側上部に配した第2挟着板と、一対の凸部両側外方の側壁に配したスリットと、により実現した。
【実施例1】
【0023】
図1〜図6を参照して本発明に係るICタグ装着機構を備えたICチップトレイについて説明する。
【0024】
本発明に係るトレイ本体11の基本構成は、上面に多数のICチップを収納する凹部13を備え、弾性、150°Cまでの耐熱性、を有する樹脂素材により一体成形したものである。
【0025】
この種ICチップトレイには所定の規格があり、例えば耐熱温度が150°Cと規定されている。
【0026】
前記規格に適合すべく成形されたトレイ本体11の上面内側の側壁15寄りに、上部が略半球型若しくは曲面とされる凸部17を一対配してある。
【0027】
本例において、凸部17の上部を略半球型としてあるのは、ICタグT装着時にICタグTを案内し易くすると共に、脱型時に凸部17の損傷を防止し、スムーズに脱型するためである。凸部17の上部がその高さ方向における他の部位より細くなる形状、すなわち先細形状であれば、その形状は略半球型に限定されない。
【0028】
凸部17の側壁15と反対側に近接させて、側壁15内側面との間でICタグTを挟着するための第1挟着板19を配してある。
【0029】
第1挟着板19と相対する側壁15内側上部に、トレイ本体11の上面内側面との間でICタグTを挟着するための第2挟着板21を配してある。トレイ本体11の上面内側面と対向する第2挟着板21の側面、すなわちアンダーカット部は曲面21aとされる。
【0030】
一対の凸部17両側外方の側壁15にスリット23をそれぞれ配してある。
【0031】
本例において、トレイ本体11は上下一対の成形型(図示略)にて樹脂素材により一体成形されるものである。このスリット23により側壁15が短尺に区画され、この区画された側壁15の内側に配した第2挟着板21が、樹脂成形におけるアンダーカット部となる。しかし、樹脂成形工程における脱型時にこの第2挟着板21を配した側壁15部位が短尺に区画されるため、外方に弾性変形させて成形型から取り出すことができる。さらにトレイ本体11の上面内側面と対向する第2挟着板21の側面は曲面21aとされるので、第2挟着板21の損傷を防止し、スムーズな取り出しが可能となる。加えて短尺に区画された側壁15部位を外方に弾性変形させることにより、ICタグTのICチップトレイへの着脱も極めて容易となる。
【0032】
加えて、アンダーカット部となる第2挟着板21があっても、特殊な成形型、あるいは別途中子となる成形型を使用することなく、上下一対の成形型のみにより一体成形することが可能となり、成形コストを大幅に削減することができる。
【0033】
本発明に係るICタグ装着機構を備えたICチップトレイにICタグを装着する方法を以下に詳述する。
【0034】
まず、一対の凸部17、第1および第2挟着板19,21を配したトレイ本体11の側壁15を、成形素材が有する弾性力に抗して外方に弾性変形させてICタグTの装着容積を広く確保する。
【0035】
この際、一対の凸部17、第1および第2挟着板19,21を配したトレイ本体11の側壁15が一対のスリット23により、短尺に区画されるため、成形素材が有する弾性力に抗して外方に弾性変形させることが極めて容易となる。
【0036】
次に、装着容積を広く確保した状態で、ICタグTを装着させる。
【0037】
本例において、ICタグTは、ICチップに加熱乾燥処理を行う都合上、150°Cまでの耐熱性を備え、また製造処理情報を大量に記憶できる容量であることが望ましく、さらにその大きさは外形が数mm〜10mm角程度のものである。
【0038】
この際、一対の凸部17がICタグTの横方向の止着機能を、第1挟着板19と側壁15とがICタグTの前後方向の止着機能を、第2挟着板21とトレイ本体11の上面内側面とがICタグTの縦方向(垂直方向)の止着機能を、それぞれ司り、ICタグTを確実にICチップトレイに止着することができる。
【0039】
また、ICチップトレイからICタグTを取り外す際にも、一対の凸部17、第1および第2挟着板19,21を配したトレイ本体11の側壁15を、成形素材が有する弾性力に抗して外方に弾性変形させてICタグTの装着容積を広く確保して行うことにより、容易に取り外すことができる。
【0040】
また、ICタグTは側壁15内面に接触した状態で止着されるため、専用リーダーを製造、処理ラインの幅方向の一側で、移送されるICチップトレイに近接させて設置することにより、確実にICタグTに記録された情報を読み取ることができ、各ICチップトレイおよびICチップトレイに収納されたICチップ群を個別に管理することが可能となる。
【実施例2】
【0041】
本発明に係るICタグ装着機構を備えたICチップトレイの別の使用例が、図6の想像線にて示してある。
【0042】
本例は、ICタグTの装着機構の構成要素である一対の凸部17、第1および第2挟着板19,21、スリット23を、トレイ本体11の横方向の一側の側壁15の所定部位およびトレイ本体11の縦方向の一側の側壁15の所定部位に配したものである。これによってICチップトレイの使用形態によって、どちらかの装着機構に、ICタグTを装着して使用に供する効果を奏するものであり、その他の構成、作用は実施例1と同様である。
【0043】
なお、両例において、スリット23はICチップトレイと一体成形されているが、後工程にて切削加工にて形成させることは自明である。
【0044】
また、ICタグTは、その大きさが数mm〜10mm角程度のものであるが、必ずしもこの大きさに限定されることはなく、大量の情報を記録させる必要がない場合には少量の記憶容量のものでもよい。
【0045】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は実施例1、2に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るICチップトレイは、ICタグ装着機構を備え、ICチップ収納用として使用に供するものであるが、他の極小部品の収納、搬送、保管、等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0047】
11 トレイ本体
13 凹部
15 側壁
17 凸部
19 第1挟着板
21 第2挟着板
23 スリット
T ICタグ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に多数のICチップを収納する凹部を備え、弾性を有するICチップトレイにおいて、トレイ本体の上面内側の側壁寄りに、アンダーカット部を有したICタグ装着構造を形成し、そのICタグ装着構造の両側外方の側壁にスリットを配したICタグ装着機構を備えたことを特徴とするICチップトレイ。
【請求項2】
前記アンダーカット部が曲面とされてなる請求項1記載のICチップトレイ。
【請求項3】
前記ICチップトレイが150°Cまでの耐熱性を有し、前記ICタグ装着構造がトレイ本体の上面内側の側壁寄りに配した一対の凸部と、前記側壁内側と対向して配した第1挟着板と、前記第1挟着板と相対する前記側壁内側上部に配したアンダーカット部である第2挟着板とよりなり、前記一対の凸部両側外方の側壁に前記スリットを配したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のICチップトレイ。
【請求項4】
前記一対の凸部は上部が略半球型にされたことを特徴とする請求項3記載のICチップトレイ。
【請求項5】
前記ICタグ装着構造をトレイ本体の横方向および縦方向の一側の側壁部位に配したことを特徴とする請求項3または請求項4記載のICチップトレイ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−14363(P2013−14363A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148349(P2011−148349)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(304037669)立山ケース株式会社 (2)
【Fターム(参考)】