説明

IHコンロ装置

【課題】従来のIHコンロ装置では、誘導加熱コイルに高周波電力を供給するインバータ部が1個であったため、大容量のインバータ部を用いなければならなかった。インバータ部のコストは容量が大きくなるに伴って急激に高くなるため、結果的にIHコンロ装置全体の価格が高くなるという不具合があった。
【解決手段】小径の有効加熱コイル4を複数個用いることにより、各々の誘導加熱コイル4に接続されるインバータ部5は小容量のものでよくなり、インバータ部5の個数は増加するが、全体のコストを低減させることができる。また、小径の誘導加熱コイル21には一部の誘導加熱コイル4のみを作動させればよいので、効率を低下させることなく、かつ漏洩磁束を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板の下方に配設した誘導加熱コイルによって、天板上の調理具を加熱するIHコンロ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のIHコンロ装置として、例えば小径の調理具を天板上に載置した場合に漏洩磁束が増加して効率が低下するという不具合を解消するために、小径の誘導加熱コイルと、この小径の誘導加熱コイルを囲繞する大径の誘導加熱コイルとを設け、小径の調理具が載置された場合には、小径の誘導加熱コイルで調理具を加熱すると共に、大径の誘導加熱コイルで逆位相の磁束を発生させて、漏洩磁束を減少させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、赤外線を用いたセンサで小径の調理具であること検知する構成が特許文献1に示されているが、誘導加熱コイルの上方に調理具が載置されているか否かを検知する調理具検知機能を発揮する構成も多数提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−214138号公報(図1、段落0003)
【特許文献2】特開平5−115364号公報(図1、請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されているIHコンロ装置では、小径の調理器であっても磁束の漏洩を可及的に減少させることができるものの、インバータ部は大径の調理具を加熱する場合には、大径及び小径の誘導加熱コイルを1個のインバータ部で駆動している。そのため、インバータ部は大容量のものを用いなければならない。
【0005】
大容量のインバータ部を製造するためには、大容量に対応した部品を用いなければならないが、対応する容量が大きくなるに伴って部品の価格は飛躍的に高くなり、その結果、大容量のインバータ部の価格は非常に高価なものになる。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、小径の調理具であっても漏洩磁束が少なく、かつ価格が安いIHコンロ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明によるIHコンロ装置は、天板上に設定された調理具載置範囲の下方に誘導加熱コイルが配設され、この誘導加熱コイルによって調理具が加熱されるIHコンロ装置であって、調理具載置範囲内の調理具の有無を検知する調理具検知機能を備え、調理具が載置されている場合に誘導加熱コイルを作動させるインバータ部を有するものにおいて、上記調理具載置範囲より小さい複数個の誘導加熱コイルを天板に対して平行に並設し、各誘導加熱コイルに各々インバータ部を接続したことを特徴とする。
【0008】
従来は大径の誘導加熱コイルが用いられていたが、複数の小径の誘導加熱コイルに分割したので、調理具の直径に応じた個数の誘導加熱コイルのみを作動させることができ、その結果として漏洩磁束が低減される。また、上述のようにインバータ部の容量が大きくなるに伴ってインバータ部の価格が高くなるが、逆にインバータ部の容量が小さくなると価格は急激に安くなる。上述のように、小径の誘導加熱コイル毎にインバータ部を設ければ各インバータ部の容量を小さくすることができ、全インバータ部の合計のコストを大容量の1個のインバータ部より安くすることができる。
【0009】
なお、上記複数の誘導加熱コイルは互いに同一の形状であり、各誘導加熱コイルに接続されているインバータ部は互いに同一の仕様のものとすれば、部品の共用化が図れ、全体のコストをさらに低くすることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明は、誘導加熱コイルを小径のものに分割したので、小径の調理具から外れた誘導加熱コイルは作動せず、従って、効率を下げることがなく、同時に漏洩磁束を低減させることができる。また、インバータ部を小容量に分割しているので、全体のコストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1を参照して、1は本発明が適用されるビルトイン型のIHコンロ装置である。このIHコンロ装置1はガラス製の天板11を備えている。このガラス製の天板11は透明であり、光を透過させることができる。天板11上には、電磁誘導により鍋などの調理具を加熱する左右2箇所のIH加熱部2と、ラジエントヒータから発せられる赤外線で調理具を加熱する赤外線加熱部3とが設けられている。
【0012】
図2を参照して、IH加熱部2のほぼ全域をカバーするように、小径の誘導加熱コイル4を配設した。本実施の形態では12個の誘導加熱コイル4を用いたが、誘導加熱コイル4の直径を適宜変更して、配設する誘導加熱コイル4の個数を増減することができる。
【0013】
これら誘導加熱コイル4は全て同一の形状であり、各誘導加熱コイル4に各々インバータ部5を接続した。これらインバータ部5は全て互いに同じものであり、調理具の有無を判別する調理具検知機能が備わっている。従って、小径の調理具21を天板11上に載置すると、調理具21が覆う中央の4個の誘導加熱コイル4は作動して磁束を発生させるが、調理具21から外れた8個の誘導加熱コイル4には通電されず、従って磁束は発生されない。
【0014】
このため、中央の4個の誘導加熱コイル4が発する磁束は調理具21内へ流れて漏洩することがなく、また、外れた8個の誘導加熱コイル4は磁束を発生させないので、結果として、磁束を漏洩させることなく、かつ中央の4個の誘導加熱コイル4を効率よく作動させることができる。
【0015】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】誘導加熱コイルの配設状態を示す図
【符号の説明】
【0017】
1 IHコンロ装置
2 IH加熱部
3 赤外線加熱部
4 誘導加熱コイル
5 インバータ部
21 小径の調理具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板上に設定された調理具載置範囲の下方に誘導加熱コイルが配設され、この誘導加熱コイルによって調理具が加熱されるIHコンロ装置であって、調理具載置範囲内の調理具の有無を検知する調理具検知機能を備え、調理具が載置されている場合に誘導加熱コイルを作動させるインバータ部を有するものにおいて、上記調理具載置範囲より小さい複数個の誘導加熱コイルを天板に対して平行に並設し、各誘導加熱コイルに各々インバータ部を接続したことを特徴とするIHコンロ装置。
【請求項2】
上記複数の誘導加熱コイルは互いに同一の形状であり、各誘導加熱コイルに接続されているインバータ部は互いに同一の仕様のものであることを特徴とする請求項1に記載のIHコンロ装置。

【図1】
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【図2】
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