説明

IL−21アンタゴニスト

【課題】IL-21タンパク質に結合するモノクローナル抗体を投与する段階を含む方法であり、IL−21に媒介される障害を抑制又は軽減する方法を提供する。
【解決手段】IL-21の中和抗体の提供。及びハイブリドーマおよび抗IL-21モノクローナル抗体を作製する方法。モノクローナル抗体は、IL-21に媒介される疾患を治療する際に有用であり、これらの疾患には、膵炎、I型糖尿病(IDDM)、グレーブス病、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性結腸炎、過敏性腸症候群、多発性硬化症、関節リウマチ、憩室症、全身性エリテマトーデス、乾癬、強直性脊椎炎、強皮症、全身性硬化症、乾癬性関節炎、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、などの自己免疫疾患および炎症性疾患が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
免疫系は、病原体、すなわち、細菌、ウイルス、真菌などによって引き起こされる疾患、ならびに、身体自身の細胞および組織の異常増殖によって引き起こされる疾患(すなわち癌性腫瘍)に対抗する、身体の一次防御である。通常、免疫系は、身体の正常細胞または「自己」と外来病原体もしくは異常細胞または「非自己」とを区別することができる。免疫系が自分自身の身体に反応しないようにするプロセスは、トレランスと呼ばれる。時折、免疫系は、「自己」を正常と認識する能力を失い、組織または細胞を対象とするその後の応答はトレランスを失い、自己免疫の状態となる。自己免疫に起因する病態は、重篤な臨床転帰をしばしば有し、かつ、世界中、特に先進国における主要な健康問題の1つである。
【0002】
サイトカインは、一般に、造血系統の細胞の増殖もしくは分化を刺激するか、または、身体の免疫応答メカニズムおよび炎症応答メカニズムに関与する。インターロイキンは、免疫学的応答を媒介するサイトカインのファミリーである。サイトカインに結合する受容体は、典型的には、高い親和力でサイトカインに結合し、かつ、特定の受容体サブユニットの細胞質内部分を介して、この結合事象を細胞に伝達する、1つまたは複数の内在性膜タンパク質から構成される。サイトカイン受容体は、細胞外のリガンド結合ドメインの類似性に基づいて、いくつかのクラスにグループ分けされている。例えば、インターフェロンの結合および/または作用の伝達を担っている受容体鎖は、特徴的な200残基の細胞外ドメインに基づき、クラスIIサイトカイン受容体ファミリーのメンバーである。
【0003】
本発明は、自己免疫障害および炎症性障害として発現する症状および生物活性を阻害し、かつ、IL-21/IL-21受容体相互作用に関連している抗IL-21モノクローナル抗体、ならびにそれらの抗体を使用する方法を提供する。
【発明の概要】
【0004】
発明の簡単な説明
1つの局面において、本発明は、ヒトIL-21の抗原領域に結合する抗IL-21モノクローナル抗体を提供する。特定の態様において、モノクローナル抗体は、SEQ ID NO:6のアミノ酸残基97〜122に示される、IL-21の抗原領域に結合する。別の態様において、モノクローナル抗体は、SEQ ID NO:6のアミノ酸残基145〜148に示される抗原領域に結合する。別の態様において、モノクローナル抗体は、SEQ ID NO:6のアミノ酸残基154〜162に示される抗原領域に結合する。別の態様において、モノクローナル抗体は、SEQ ID NO:6のアミノ酸残基30〜50に示される抗原領域に結合する。別の態様において、モノクローナル抗体は、SEQ ID NO:6のアミノ酸残基40〜50に示される抗原領域に結合する。さらなる態様は、ヒトIL-21タンパク質活性を中和するか、ヒトIL-21-Fcタンパク質に結合するか、ヒトムテインFcタンパク質(変異は、SEQ ID NO:6のGln145および/もしくはIle148にある)に結合するか、または、マウスIL-21-マウスFc融合タンパク質に結合することを示すことができる、本明細書において説明するモノクローナル抗体を含む。一般に、本発明のモノクローナル抗体は、2種またはそれ以上のIL-21タンパク質に結合する。
【0005】
他の局面において、モノクローナル抗体は、モノクローナル抗体272.21.1.3.4.2(ATCCアクセッション番号PTA-10395)が結合するエピトープに特異的に結合する。他の態様において、モノクローナル抗体は、モノクローナル抗体268.5.1.11.42.1.4.3.9(ATCCアクセッション番号PTA-10394)が結合するエピトープに特異的に結合する。本発明のモノクローナル抗体はまた、検出可能なマーカーで標識してもよく、かつ、検出可能なマーカーは、放射性同位元素、酵素、色素、およびビオチンより選択することができるが、それらに限定されるわけではない。
【0006】
別の局面において、本発明は、ヒトIL-21抗原に結合する際にモノクローナル抗体272.21.1.3.4.2(ATCCアクセッション番号PTA-10395)と競合することができるビン(bin)(または抗体のグループ)を提供する。
【0007】
本発明の別の局面は、ヒトIL-21抗原に結合する際にモノクローナル抗体268.5.1.11.42.1.4.3.9(ATCCアクセッション番号PTA-10394)と競合することができるビンを提供する。
【0008】
特許請求の範囲のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマもまた、本発明に含まれる。
【0009】
本発明は、特許請求の範囲のモノクローナル抗体を作製する方法であって、(a)モノクローナル抗体を産生することができるハイブリドーマを提供する段階、および(b)ハイブリドーマによるモノクローナル抗体の産生を提供する条件下でハイブリドーマを培養する段階を含む方法を提供する。
【0010】
別の局面において、本発明は、自己免疫疾患を治療する方法であって、治療的有効量の特許請求の範囲の抗IL-21モノクローナル抗体を患者に投与する段階を含む方法を提供する。特定の態様において、自己免疫疾患は、膵炎、I型糖尿病(IDDM)、グレーブス病、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性結腸炎、過敏性腸症候群、多発性硬化症、関節リウマチ、憩室症、全身性エリテマトーデス、乾癬、強直性脊椎炎、強皮症、全身性硬化症、乾癬性関節炎、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病(GVHD)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、IgA腎症、移植片対宿主病、移植拒絶、アトピー性皮膚炎、抗リン脂質症候群、および喘息、ならびに他の自己免疫疾患からなる群より選択される。
【0011】
本発明はまた、IL-21に媒介される障害を抑制または軽減する方法であって、対象においてIL-21に媒介される生物活性を阻害するか、または低減させるのに十分な量の抗IL-21モノクローナル抗体を投与する段階を含む方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の説明
以下の定義は、本明細書において説明する本発明の理解を容易にするために提供される。
【0013】
「抗体」または「抗体ペプチド」という用語は、完全な抗体、または特異的結合について完全な抗体と競合するその結合断片を意味し、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全なヒト抗体、および二重特異性抗体が含まれる。特定の態様において、結合断片は、組換えDNA技術によって作製される。さらなる態様において、結合断片は、完全な抗体の酵素的切断または化学的切断によって作製される。結合断片には、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、および単鎖抗体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0014】
「単離された抗体」という用語は、その天然環境の構成要素から、同定および分離され、かつ/または回収された抗体を意味する。その天然環境の混入物構成要素は、抗体の診断的使用および治療的使用を妨げると思われる材料であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク性溶質または非タンパク性溶質が含まれ得る。好ましい態様において、抗体は、(1)ローリー法によって決定した場合に、抗体の95重量%を上回るまで、および最も好ましくは99重量%を上回るまで、(2)スピニングカップ配列決定装置の使用によってN末端もしくは内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または、(3)クーマシーブルー染色、もしくは好ましくは銀染色を用いる、還元条件もしくは非還元条件下でのSDS-PAGEによって、均質になるまで、精製される。単離された抗体には、組換え細胞内部のインサイチューの抗体が含まれ、これは、抗体の天然環境の少なくとも1種の構成要素が存在しないと考えられるためである。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製段階によって調製される。
【0015】
「変種」抗IL-21抗体とは、本明細書において、親抗体配列中の1つまたは複数のアミノ酸残基の付加、欠失、および/または置換によって、「親」抗IL-21抗体アミノ酸配列とアミノ酸配列が異なる分子を意味する。好ましい態様において、変種は、親抗体の1つまたは複数の超可変領域中に1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。例えば、変種は、親抗体の1つまたは複数の超可変領域中に、少なくとも1個、例えば、約1個〜約10個、および好ましくは、約2個〜約5個の置換を含んでよい。通常、変種は、親抗体の重鎖可変ドメイン配列または軽鎖可変ドメイン配列とのアミノ酸配列同一性が少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%であるアミノ酸配列を有する。この配列に関する同一性または相同性は、本明細書において、配列をアラインし、必要な場合には、最大の配列同一性パーセントを実現するためにギャップを導入した後の、親抗体残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。抗体配列に対するN末端、C末端、または内部の伸長、欠失、または挿入のいずれも、配列の同一性または相同性に影響を及ぼすものとして解釈されない。変種は、ヒトIL-21に結合する能力を保持し、かつ、好ましくは、親抗体の特性より優れた特性を有する。例えば、変種は、より強力な結合親和力を有し、IL-21によって誘導される免疫細胞の刺激を阻害する能力が増強されている場合がある。抗IL-21抗体の形態が、本明細書において開示する生物活性アッセイ法におけるその活性に影響を与えることが見出されているため、このような特性を解析するには、例えば、Fab型の変種をFab型の親抗体と比較するか、または、完全長型の変種を完全長型の親抗体と比較するべきである。本明細書において特に関心の対象とする変種抗体は、親抗体と比べた場合に、生物活性の少なくとも約10倍、好ましくは少なくとも約20倍、および最も好ましくは少なくとも約50倍の増大を示すものである。
【0016】
本明細書において使用される「親抗体」という用語は、変種の調製のために使用されるアミノ酸配列にコードされている抗体を意味する。好ましくは、親抗体は、ヒトフレームワーク領域を有し、かつ、存在する場合には、ヒト抗体定常領域を有する。例えば、親抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体でよい。
【0017】
「アゴニスト」という用語は、別の分子の活性、活性化、または機能を増大させる、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、抗体断片、大分子、または小分子(10kD未満)を含む、任意の化合物を意味する。IL-21アゴニストは、例えば、NK細胞、T細胞サブセット、およびB細胞サブセット、ならびに樹状細胞の刺激を引き起こす。
【0018】
「アンタゴニスト」という用語は、別の分子の活性、活性化、または機能を低減させる、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、抗体断片、大分子、または小分子(10kD未満)を含む、任意の化合物を意味する。IL-21アンタゴニストは、NK細胞、T細胞サブセット、およびB細胞サブセット、ならびに樹状細胞の免疫機能の低下を引き起こし、かつ、IL-21に結合し、その結果、IL-21タンパク質の相互作用が妨害、阻害、減少、拮抗、または相殺される。
【0019】
「多重特異性」抗体または「多機能性」抗体以外の「二価抗体」は、特定の態様において、同一の抗原特異性を有する結合部位を含むと理解される。
【0020】
「二重特異性」抗体または「二機能性」抗体は、2種の異なる重鎖/軽鎖ペアおよび2種の異なる結合部位を有するハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、限定されるわけではないが、ハイブリドーマの融合またはFab'断片の連結を含む様々な方法によって、作製され得る。例えば、SongsivilaiおよびLachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315-321:(1990)、Kostelny et al., J. Immunol. 148:1547-1553 (1992)を参照されたい。
【0021】
「キメラ抗体(chimeric antibody)」または「キメラ抗体(chimeric antibodies)」という用語は、その軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子が、典型的には遺伝子工学によって、異なる種に属する免疫グロブリン可変領域遺伝子および定常領域遺伝子から構築されている抗体を意味する。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変セグメントが、γ1およびγ3などのヒト定常セグメントに連結され得る。したがって、典型的な治療用キメラ抗体は、マウス抗体由来の可変ドメインまたは抗原結合ドメインおよびヒト抗体由来の定常ドメインから構成されるハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種を使用してもよい。
【0022】
本明細書において使用される「有効な中和力価」という用語は、(ヒトにおいて)臨床的に効果的であるか、または、例えば、コットンラットにおいてウイルスを99%減少させることが示されている、動物(ヒトまたはコットンラット)の血清中に存在する量に対応する抗体の量を意味する。99%の減少は、例えば、103pfu、104pfu、105pfu、106pfu、107pfu、108pfu、または109pfuのRSVの個々の攻撃接種によって定義される。
【0023】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープの決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、かつ、通常、特定の三次元構造特徴、ならびに特定の電荷特性を有する。より具体的には、本明細書において使用される「IL-21エピトープ」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、および最も好ましくはマウスまたはヒトにおいて抗原活性または免疫原活性を有するIL-21ポリペプチドの一部分を意味する。免疫原活性を有するエピトープは、動物における抗体応答を誘発する、IL-21ポリペプチドの一部分である。抗原活性を有するエピトープは、当技術分野において周知である任意の方法によって、例えばイムノアッセイ法によって決定されるように、抗体が免疫特異的に結合する、IL-21ポリペプチドの一部分である。抗原エピトープは、必ずしも免疫原性である必要はない。
【0024】
「エピトープタグ付き」という用語は、本明細書において使用される場合、「エピトープタグ」に融合された抗IL-21抗体を意味する。エピトープタグポリペプチドは、それに対して抗体が産生され得るエピトープを提供するのに十分な残基を有するが、IL-21抗体の活性を妨げない程度に短い。エピトープタグは、好ましくは、十分に独特であり、したがって、抗体は他のエピトープと実質的に交差反応しない。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6個のアミノ酸残基を有し、かつ、通常、約8個〜50個の間のアミノ酸残基(好ましくは約9個〜30個の間の残基)を有する。例には、flu HAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5(Field et al. Mol. Cell. Biol. 8:2159-2165(1988));c-mycタグならびにそれに対する8F9抗体、3C7抗体、6E10抗体、G4抗体、B7抗体、および9E10抗体(Evan et al., Mol. Cell. Biol. 5(12):3610-3616(1985));ならびに単純ヘルペス(Herpes Simplex)ウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体(Paborsky et al., Protein Engineering 3(6):547-553(1990))が含まれる。特定の態様において、エピトープタグは、「サルベージ(salvage)受容体結合エピトープ」である。本明細書において使用される場合、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボでの血清半減期の延長に関与している、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを意味する。
【0025】
本明細書において使用される「断片」という用語は、IL-21ポリペプチドまたはIL-21ポリペプチドに免疫特異的に結合する抗体のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続したアミノ酸残基、少なくとも10個の連続したアミノ酸残基、少なくとも15個の連続したアミノ酸残基、少なくとも20個の連続したアミノ酸残基、少なくとも25個の連続したアミノ酸残基、少なくとも40個の連続したアミノ酸残基、少なくとも50個の連続したアミノ酸残基、少なくとも60個の連続したアミノ酸残基、少なくとも70個の連続したアミノ酸残基、少なくとも80個の連続したアミノ酸残基、少なくとも90個の連続したアミノ酸残基、少なくとも100個の連続したアミノ酸残基、少なくとも125の連続したアミノ酸残基、少なくとも150個の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドを意味する。
【0026】
本明細書において使用される場合、「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされている1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質を意味する。1つの型の免疫グロブリンは、抗体の基本構造単位を構成する。この型はテトラマーであり、免疫グロブリン鎖の2つの同一なペアからなり、各ペアは1つの軽鎖および1つの重鎖を有する。各ペアにおいて、軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原への結合を一緒に担っており、かつ、定常領域は、抗体エフェクター機能を担っている。
【0027】
完全長免疫グロブリンの「軽鎖」(約25Kdまたは214アミノ酸)は、NH2末端を可変領域遺伝子にコードされ(約110アミノ酸)、かつ、COOH末端をκまたはλ定常領域遺伝子にコードされている。完全長免疫グロブリンの「重鎖」(約50Kdまたは446アミノ酸)は、同様に、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)および前述の他の定常領域遺伝子のうち1つ(約330アミノ酸)にコードされている。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεに分類され、それぞれ、抗体のアイソタイプをIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEと定義する。軽鎖および重鎖内部で、可変領域および定常領域は、約12個またはそれ以上のアミノ酸からなる「J」領域によって連結されており、重鎖は、約10個またはそれ以上のアミノ酸からなる「D」領域も含む(一般に、Fundamental Immunology(Paul, W.編、第2版、Raven Press, N.Y., 1989)、7章を参照されたい)。
【0028】
免疫グロブリンの軽鎖または重鎖の可変領域は、3つの超可変領域が割り込んだ「フレームワーク」領域からなる。したがって、「超可変領域」という用語は、抗原結合を担っている、抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」に由来するアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、および89〜97(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン中の残基31〜35(H1)、50〜65(H2)、および95〜102(H3))(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1991))、ならびに/または、「超可変ループ」に由来する残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン中の残基26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3); ChothiaおよびLesk, J.Mol.Biol. 196:901-917, 1987))を含む(いずれの文献も、参照により本明細書に組み入れられる)。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書において定義する超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内では比較的保存されている。したがって、「ヒトフレームワーク領域」は、天然のヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域に実質的に(約85%またはそれ以上、通常90%〜95%またはそれ以上)同一であるフレームワーク領域である。構成要素である軽鎖および重鎖の組み合わされたフレームワーク領域である、抗体のフレームワーク領域は、CDRを配置し、かつ整列させるのに役立つ。CDRは、主として、抗原のエピトープへの結合を担っている。
【0029】
したがって、「ヒト化」免疫グロブリンという用語は、ヒトフレームワーク領域および非ヒト(通常、マウスまたはラット)免疫グロブリン由来の1つまたは複数のCDRを含む免疫グロブリンを意味する。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは、「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と呼ばれる。定常領域は存在する必要がないが、存在する場合には、それらは、ヒト免疫グロブリン定常領域に実質的に同一、すなわち、少なくとも約85%〜90%、好ましくは約95%またはそれ以上同一でなければならない。したがって、ヒト化免疫グロブリンの部分はすべて、おそらくはCDRを除いて、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分に実質的に同一である。「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖免疫グロブリンおよびヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。例えば、ヒト化抗体は、例えば、キメラ抗体の可変領域全体が非ヒトであるため、上記に定義した典型的なキメラ抗体を包含しないと思われる。
【0030】
本明細書において使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、かつ、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または、例えば、米国特許第5,939,598号においてKucherlapatiらによって説明されているように、1種または複数種のヒト免疫グロブリンに関してトランスジェニックであり、かつ、内因性免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体を含む。
【0031】
「遺伝的に改変された抗体」という用語は、アミノ酸配列がネイティブ抗体の配列から変更されている抗体を意味する。抗体を作製する際に組換えDNA技術が関連するため、天然抗体中に存在するアミノ酸の配列に限定される必要はない。所望の特徴を得るように抗体を再設計することができる。可能な変異は多数あり、かつ、ただ1つのアミノ酸または少数のアミノ酸の変更から、例えば、可変領域または定常領域の完全な再設計まで及ぶ。定常領域中の変更は、一般に、補体結合、膜との相互作用、および他のエフェクター機能などの特徴を改善または改変するために行われる。可変領域中の変更は、抗原結合特性を改善するために行われる。
【0032】
抗体の他に、免疫グロブリンは、例えば、単鎖またはFv、Fab、および(Fab')2、ならびにダイアボディ、直鎖状抗体、多価性または多重特異性のハイブリッド抗体(前記およびLanzavecchia et al., Eur. J. Immunol. 17. 105(1987)に詳細に説明されている)を含む、様々な他の形態で、かつ、単鎖で(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85 5879-5883(1988)およびBird et al., Science, 242:423-426(1988))、存在し得る(一般に、参照により本明細書に組み入れられる、Hood et al., 「Immunology」、Benjamin, N.Y.,第2版(1984)ならびにHunkapillerおよびHood, Nature, 323:15-16(1986)を参照されたい)。
【0033】
本明細書において使用される場合、「単鎖Fv」、「単鎖抗体」、「Fv」、または「scFv」という用語は、単一のポリペプチド鎖内に、重鎖および軽鎖の両方に由来する可変領域を含むが、定常領域を欠いている抗体断片を意味する。一般に、単鎖抗体は、抗原結合を可能にすると思われる所望の構造を形成するのを可能にする、VHドメインとVLドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。単鎖抗体は、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer-Verlag, New York、269〜315頁(1994)においてPluckthunによって詳細に考察されている。同様に、開示内容が任意の目的のために参照により組み入れられる、国際特許出願公開WO 88/01649および米国特許第4,946,778号および同第5,260,203号を参照されたい。特定の態様において、単鎖抗体はまた、二重特異性であるか、かつ/またはヒト化されていてよい。
【0034】
「Fab断片」は、1本の軽鎖、ならびに1本の重鎖のCH1領域および可変領域から構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とのジスルフィド結合を形成できない。
【0035】
「Fab'断片」は、1本の軽鎖、ならびに、鎖間のジスルフィド結合が2つの重鎖間で形成されて、F(ab')2分子を形成できるように、CH1ドメインおよびCH2ドメイン間の定常領域のより多くの部分を含む1本の重鎖を含む。
【0036】
「F(ab')2断片」は、2本の軽鎖、ならびに、鎖間のジスルフィド結合が2つの重鎖間で形成されるようにCH1ドメインおよびCH2ドメイン間の定常領域の一部分を含む2本の重鎖を含む。
【0037】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小型の抗体断片を意味し、この断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)中に軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間でのペア形成を起こさせないくらい短いリンカーを用いることによって、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインとペアになり、かつ、2つの抗原結合部位を作り出すことを余儀なくされる。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO93/11161、およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448(1993)において、より十分に説明されている。
【0038】
「直鎖状抗体」という用語は、Zapata et al. Protein Eng. 8(10):1057-1062(1995)において説明されている抗体を意味する。手短に言えば、これらの抗体は、一対の抗原結合領域を形成する、一対の直列型Fdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性または単一特異性でよい。
【0039】
本明細書において使用される「免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片」という用語は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変ドメインを少なくとも含むポリペプチド断片を意味する。本発明の免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片は、リガンドに結合すること、受容体へのリガンドの結合を防止すること、受容体へのリガンド結合に起因する生物学的応答を妨害すること、またはそれらの任意の組合せを行うことができる。好ましくは、本発明の免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片は、IL-21に特異的に結合する。
【0040】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術によって作製される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、任意の真核生物クローン、原核生物クローン、またはファージクローンを含む、単一のクローンに由来する抗体を意味し、それを作製する方法を意味しない。
【0041】
本発明は、IL-21タンパク質およびIL-21ポリペプチドと特異的に結合するモノクローナル抗体および抗体断片を提供する。ヒトおよびマウスのIL-21ポリペプチド、タンパク質、およびそれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、Parrish-Novak et al., Nature 408:57-63, 2003、米国特許第6,307,024号および同第6,686,178号、ならびにWO 04/055168において開示されている。例示的な抗体には、中和抗体が含まれ、かつ、マウスモノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体に由来するヒト化抗体、およびヒトモノクローナル抗体でよい。例示的な抗体断片には、F(ab')2、F(ab)2、Fab'、Fab、Fv、scFv、および最小限の認識単位が含まれる。中和抗体は、好ましくは、IL-21に結合し、その結果、IL-21タンパク質の相互作用が妨害、阻害、減少、拮抗、または相殺される。治療的モノクローナル抗体に対する標的として同定されたヒトIL-21タンパク質のエピトープ、ならびに構造的特徴および機能的特徴を定義する領域が、本明細書において説明される。野生型ヒトIL-21、変異体IL-21タンパク質、および/またはヒトIL-21のペプチド領域に結合する能力を有する、例示的なマウス抗ヒトIL-21モノクローナル抗体およびラット抗ヒトモノクローナル抗体、ならびにこれらのモノクローナル抗体のプールが提供される。本発明はさらに、担体、および本明細書において説明するペプチド、ポリペプチド、または抗体を含む組成物も含む。
【0042】
したがって、本発明は、炎症性疾患の治療的処置において有用である、抗IL-21抗体のような、IL-21活性に対するアンタゴニストを提供する。例えば、抗IL-21抗体は、膵炎、I型糖尿病(IDDM)、グレーブス病、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性結腸炎、過敏性腸症候群、多発性硬化症、関節リウマチ、憩室症、全身性エリテマトーデス、乾癬、強直性脊椎炎、強皮症、全身性硬化症、乾癬性関節炎、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病(GVHD)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、IgA腎症、移植片対宿主病、移植拒絶、アトピー性皮膚炎、抗リン脂質症候群、および喘息、ならびに他の自己免疫疾患、または、IL-21およびIL-21受容体アゴニストに媒介される他の疾患の治療において有用である。
【0043】
本発明はまた、前述の抗体に機能的に等価である、遺伝的に改変された抗体も含む。改善された安定性および/または治療的有効性を提供する修飾抗体が好ましい。修飾抗体の例には、アミノ酸残基の保存的置換、および、抗原結合の有用性を著しく改悪しない、アミノ酸の1つまたは複数の欠失または付加を含むものが含まれる。置換は、治療的有用性が維持される限り、1つまたは複数のアミノ酸残基の変更または修飾から、ある領域の完全な再設計まで及んでよい。本発明の抗体は、翻訳後に修飾されてよく(例えば、アセチル化およびリン酸化)、または、合成的に修飾されてもよい(例えば、標識基の結合)。
【0044】
遺伝的に改変された抗体には、抗IL-21抗体に由来するキメラ抗体も含まれる。好ましくは、キメラ抗体は、マウスまたはラットに由来する可変領域およびヒトに由来する定常領域を含み、したがって、キメラ抗体は、ヒト対象に投与された場合に、より長い半減期を有し、かつ、免疫原性はより少ない。キメラ抗体を作製する方法は、当技術分野において公知である。これらの抗体の可変領域をヒトIgGの定常領域と結合させて、所望のキメラ抗体を形成させることができる。
【0045】
好ましくは、本発明において使用される遺伝的に改変された抗IL-21抗体には、本明細書において説明する抗体のヒト化型が含まれる。特定の態様において、ヒト化抗体は、マウスドナー免疫グロブリンのCDR、ならびに、ヒトアクセプター免疫グロブリンの重鎖および軽鎖のフレームワークを含む。ヒト化抗体を作製する方法は、米国特許第5,301,101号、同第5,585,089号、同第5,693,762号、および同第6,180,370号において開示されている(それぞれ、その全体が参照により組み入れられる)。次いで、これらの抗体のCDRを、当技術分野において公知である任意の選択されたヒトフレームワークにグラフティングして、所望のヒト抗体を作製することができる。
【0046】
本発明の抗体は、それらが認識するか、または特異的に結合する本発明のポリペプチドのエピトープまたは部分の観点から説明または特定することができる。エピトープまたはポリペプチド部分は、本明細書において説明されるように、例えば、N末端位置およびC末端位置によって、または、連続したアミノ酸残基のサイズによって、特定することができる。本発明の抗体はまた、交差反応性の観点から説明または特定することもできる。本発明のポリペプチドの他のいかなる類似体、オルソログ、またはホモログにも結合しない抗体が含まれる。
【0047】
エピトープビニング(binning)とは、IL-21タンパク質に同時に結合できるか、または結合できない抗体のペアを同定し、それによって、タンパク質上の同じエピトープまたは共通部分のあるエピトープに結合する抗体を同定するための競合的結合アッセイ法の使用を意味する。次いで、同じ結合特異性を有する抗体のファミリー(またはビン)を用いて、IL-21上の特異的なエピトープを定義することができる。エピトープビニング実験により、抗原的に異なるエピトープが存在するという証拠が提供される。しかしながら、それらは、それら自体によっては、IL-21タンパク質分子上の特定のアミノ酸配列または位置を確認することも、エピトープをそれらに「位置づける(map)」こともしない。
【0048】
結合の際の競合は、任意のペアの抗体または断片に関して評価することができる。例えば、適切な検出試薬を用いて、任意の種/供給源に由来する抗体または結合断片の結合特異性を、本明細書において開示するモノクローナル抗体の結合特異性と比較することができる。エピトープビニングは、「単離された抗体」または細胞培養上清を用いて実施することができる。しばしば、ビニングは、その後に開発しようとするクローンの選択を導くために、最初の回のクローン上清を用いて実施される。比較しようとする抗体は、実質的に同種の抗原結合ドメインを有しているべきである。「二重特異性」抗体または「二機能性」抗体の場合、2種の異なる結合部位の結合特異性は、独立に評価またはビニングする必要がある。
【0049】
本発明は、受容体特異的な抗体およびリガンド特異的な抗体の両方を特徴とする。抗体の競合的結合の他に、エピトープビニングはまた、リガンドおよびその受容体のビニングを競合的に妨げる受容体またはリガンドのいずれかに対する抗体を同定するのに使用することもできる。しばしば、抗体のファミリー(またはビン)の有利な特性は、エピトープビンによって定義される特異的エピトープへの結合と関係付けることができる。
【0050】
競合的結合実験は、結合親和力を直接的に測定しないが、試験される抗体は、競合相手として作用するのに十分に強く結合しなければならない。一般に、実験条件は、結合親和力の差異の影響を最小化するように設計される。
【0051】
抗抗原IL-21抗体はまた、IL-21タンパク質の診断的アッセイ法、例えば、特定の細胞、組織、または血清における発現の検出においても有用であり得る。異なるビンに割り当てられ、かつ、IL-21の異なる免疫原性部分またはエピトープに結合できる抗体は、サンドイッチアッセイ法のための反応物として使用することができる。サンドイッチアッセイ法において、試験試料分析物は、固体支持体上に固定化された第1の抗体によって捕捉され、その後、その分析物に同様に結合する第2の抗体によって検出され、その結果、3部分からなる不溶性の複合体を形成する。例えば、米国特許第4,376,110号を参照されたい。二次抗体は、検出可能な部分でそれ自体を標識してよく(直接的サンドイッチアッセイ法)、または、検出可能な部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を用いて測定してよい(間接的サンドイッチアッセイ法)。例えば、1つのタイプのサンドイッチアッセイ法はELISAアッセイ法であり、この場合、検出可能部分は酵素である。
【0052】
本発明の抗体は、当技術分野において公知である任意の方法によって、特異的結合に関して分析することができる。多くの異なる競合的結合アッセイ形式をエピトープビニングのために使用することができる。使用され得るイムノアッセイ法には、ほんの数例を挙げれば、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ法、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ法、免疫沈降アッセイ法、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ法、凝集アッセイ法、補体結合アッセイ法、イムノラジオメトリックアッセイ法、蛍光イムノアッセイ法、プロテインAイムノアッセイ法などの技術を用いた競合的アッセイ系および非競合的アッセイ系が含まれるが、それらに限定されるわけではない。このようなアッセイ法は日常的であり、かつ、当技術分野において周知である(例えば、Ausubel et al.編、1994, Current Protocols in Molecular Biology.第1巻、John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照されたい)。例示的なイムノアッセイ法は、下記に手短に説明する(ただし、限定するためのものではない)。さらに、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed HarlowおよびDavid Lane(1988)に記載されているもののような日常的な交差ブロッキングアッセイ法も実施することができる。
【0053】
Biacoreは、モノクローナル抗体のパネルをエピトープビニングするのに日常的に使用される様々なアッセイ形式のうちの1つにすぎない。多くの参考文献(例えば、The Epitope Mapping Protocols, Methods in Molecular Biology. 第6.6巻 Glenn E.Morris編)では、抗体をビニングするのに使用できると考えられ、かつ、IL-21タンパク質に対する抗体の結合特異性に関する同一の情報を提供すると予想される代替の方法を説明している。Biacoreシステムを使用する場合、エピトープビニング実験は、可溶性のネイティブな抗原を用いて実施する。エピトープビニング研究は、Biacore 1000(登録商標)システム(Biacore, Uppsalla Sweden)を用いて実施することができる。BIAlogue(登録商標)バージョン1.2ソフトウェアを、試験方法をプログラムするために使用することができる。IL-21に対して産生させたマウスモノクローナル抗体をビニングするためにBiacoreを使用する例の場合、ポリクローナルヤギ抗マウスIgG Fc抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)をBiacore(登録商標)CM5センサーチップに共有結合的に固定化し、かつ、試験系列のモノクローナル一次抗体をそのチップに結合(捕捉)するのに使用することができる。次いで、ポリクローナルIgG Fc断片(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)を用いて、チップ上の空いているFc結合部位をブロックする。続いて、IL-21タンパク質を注入し、捕捉されたモノクローナル一次抗体に特異的に結合させる。Biacore機器は、センサーチップに結合されたタンパク質の質量を測定し、かつ、一次抗体およびIL-21抗原の両方の結合を各サイクルに関して確認することができる。一次抗体および抗原がチップに結合した後、可溶性の二次抗体を注入し、予め結合された抗原に結合させる。モノクローナル二次抗体がモノクローナル一次抗体と同時にIL-21抗原に結合できる場合、その結合は、Biacoreによって検出される。しかしながら、モノクローナル二次抗体がモノクローナル一次抗体と同時にIL-21抗原に結合できない場合、さらなる結合は検出されない。各モノクローナル抗体を、陰性対照としてそれ自身に対して試験して、バックグラウンド(結合無し)シグナルのレベルを確かめる。
【0054】
非標識競合ELISA形式(LFC-ELISA)もまた、抗体をビニングするのに使用することができる。この方法は、Nagata et al., J. Immuno Methods 292:141-155, 2004によって説明される。エピトープビニングのためのこの方法では、ビオチン標識したIL-21を使用した。IL-21に対して産生させたマウスモノクローナル抗体をビニングする例の場合、ELISA B(PBS, 0.1% Tween 20, 1% BSA)中で希釈した1μg/mLヤギ抗マウスIgG Fc-γ特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)で、100μL/ウェルでマイクロタイタープレートをコーティングする。周囲温度で3時間、このコーティング抗体を結合させた後、mAbを含む各馴化培地をELISA B中で希釈してmAb濃度を約0.5μg/mLにし、かつ、4℃で一晩、ヤギ抗マウスIgGでコーティングしたプレートに結合させる(一次抗体)。平行して、馴化培地の第2のセット(二次抗体)をポリスチレン試験管中で希釈してELISA B中約0.5μg/mLのmAbとし、50ng/mLのビオチン標識IL-21抗原と混合し、かつ、4℃で一晩インキュベートする。一次抗体をコーティング抗体と共にインキュベーションした後、無関係の抗体でプレートをブロックして、プレート上の空いている結合部位を占有する。二次抗体-ビオチン-IL-21混合物をプレートに添加し、結合させる。アッセイ法における(非競合)の対照として、50ng/mLのビオチン標識IL-21を、(二次抗体とのプレインキュベーションを実施せずに)直接、固定化した一次抗体を含むウェルに添加する。ビオチン標識IL-21-二次抗体複合体と共にインキュベーションした後、ストレプトアビジン-HRP(Pierce, Rockford, IL)を0.5μg/mLでプレートに添加する。TMB基質(BioFX Laboratories, Owings Mills, MD)を用いてこれらのプレートを発色させ、かつ、個々のウェルの450nmでの吸光度を、プレートリーダー(Molecular Devices SpectraMax(登録商標)340, Sunnyvale, CA)を用いて測定する。一次抗体が二次抗体とは異なるエピトープに結合する場合、ビオチン-IL-21-二次抗体複合体はプレートに結合して、吸光度の測定値は高くなると考えられる。一次抗体が二次抗体と同じエピトープに結合する場合、ビオチン-IL-21-二次抗体複合体はプレートに結合せず、吸光度の測定値は低くなると考えられる。
【0055】
本発明の抗体は、IL-21のアンタゴニストとして作用する。例えば、本発明は、IL-21の受容体/リガンド相互作用を部分的または完全に混乱させる抗体を含む。本発明は、受容体の活性化を防ぐリガンド特異的な抗体を特徴とする。本発明は、リガンドに結合し、受容体へのリガンドの結合を防ぐ中和抗体、ならびに、リガンドに結合し、それによって、受容体の活性化を防ぐが、リガンドが受容体に結合するのを妨げはしない抗体を含む。受容体活性化(すなわち、シグナル伝達)は、本明細書において説明するか、またはそうでなければ、当技術分野において公知の技術によって決定することができる。例えば、受容体活性化は、免疫沈降法とそれに続くウェスタンブロットまたは(例えば、前記に説明したような)ルミネックス(luminex)に基づいた解析により、受容体またはその基質のリン酸化(例えば、チロシンまたはセリン/トレオニン)を検出することによって決定することができる。特定の態様において、抗体の不在下での活性の少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%、リガンドまたは受容体活性を阻害する抗体が提供される。
【0056】
抗IL-21抗体の作製
IL-21に対する抗体は、例えば、IL-21発現ベクターの産物または天然供給源から単離されたIL-21を抗原として用いて、得ることができる。特に有用な抗IL-21抗体は、IL-21と「特異的に結合する」。抗体は、以下の2つの特性のうち少なくとも1つを示す場合、特異的に結合するとみなされる:(1)抗体が、閾値レベルの結合活性にてIL-21に結合する、および(2)抗体が、IL-21に関連するポリペプチドと有意に交差反応しない。
【0057】
第1の特徴に関して、抗体は、106M-1またはそれ以上、好ましくは107M-1またはそれ以上、より好ましくは108M-1またはそれ以上、および、最も好ましくは109M-1またはそれ以上の結合親和力(Ka)で、IL-21ポリペプチド、ペプチド、またはエピトープに結合する場合、特異的に結合する。抗体の結合親和力は、当業者によって、例えば、スキャッチャード解析により(Scatchard, Ann. NY Acad. Sci. 51:660 1949)、または市販されているバイオセンサー機器(BIAcore, Pharmacia Biosensor, Piscataway, NJ)を用いて、容易に決定することができる。第2の特徴に関して、例えば、標準的なウェスタンブロット解析または捕捉ELISAによって、抗体がIL-21を検出するが、他の公知のポリペプチドを検出しない場合、抗体は、関連するポリペプチド分子と有意に交差反応しない。関連する公知のポリペプチドの例には、IL-2ファミリーの公知のメンバーが含まれる。
【0058】
抗IL-21抗体は、抗原性のIL-21エピトープを有するペプチドおよびポリペプチドを用いて作製することができる。本発明の抗原性のエピトープを有するペプチドおよびポリペプチドは、SEQ ID NO:2または本明細書において開示する別のアミノ酸配列内に含まれる少なくとも9個、または15個〜約30個の間のアミノ酸の配列を含む。しかしながら、本発明のアミノ酸配列のアミノ酸のより多くの部分を含むか、30個〜50個のアミノ酸、または本発明のポリペプチドのアミノ酸配列全体を含む長さまでの任意の長さを含むペプチドまたはポリペプチドもまた、IL-21に結合する抗体を導入するのに有用である。エピトープを有するペプチドのアミノ酸配列は、水溶性溶媒中で実質的な溶解性を提供するように選択されることが望ましい(すなわち、配列は、比較的親水性の残基を含み、疎水性残基は典型的には避けられる)。さらに、プロリン残基を含むアミノ酸配列もまた、抗体作製のために望ましい場合がある。
【0059】
抗IL-21モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法によって作製することができる。特定の抗原に対するげっ歯動物モノクローナル抗体は、公知の方法によって得ることができる(例えば、Kohler et al., Nature 256:495(1975), Coligan et al.(編)、 Current Protocols in Immunology、第1巻、2.5.1〜2.6.7頁(John Wiley & Sons 1991)["Coligan"]、Picksley et al., 「Production of monoclonal antibodies against proteins expressed in E. coli」、DNA Cloning 2:Expression Systems、第2版、Glover et al.(編)、93頁(Oxford University Press 1995))。
【0060】
抗体断片ライブラリーのディスプレイからの結合物の選択は、モノクローナル抗体開発に対するインビトロでの代替方法である。ディスプレイ技術の原理は、結合部分とコードする遺伝物質との物理的結合の確立である。この概念は、バクテリオファージ、細菌、および酵母の表面でのタンパク質およびペプチドのライブラリーのディスプレイから、インビトロでリボソームに結合されたタンパク質のディスプレイまで、いくつかの様式で使用されている(例えば、Rothe et al., FASEB J. 20:1599(2006)を参照されたい)。一本鎖バクテリオファージの表面での抗体ディスプレイは、これらの技術のうちで最も高度に発達している。抗体ディスプレイに使用される典型的な方法は、単鎖Fv断片または重鎖Fd(Fabの重鎖部分)のいずれかをファージのgene IIIタンパク質と融合させるものである。抗体ライブラリーは、ナイーブ、すなわち天然の免疫レパートリーに相当してもよく、または、半合成、すなわち多様性を高めるために合成CDR配列ライブラリーと組み合わされた、ネイティブなヒト鋳型から獲得されたフレームワークからなってもよい。特異的な結合活性を有するファージは、増殖および選択を数回繰り返した後、抗体断片(特にFabおよびscFv)またはペプチドのランダムライブラリーから単離することができる(例えば、Hoogenboom, Nature Biotech. 23:1105(2005)を参照されたい)。
【0061】
さらなる態様において、本発明の抗体はまた、当技術分野において公知の様々なファージディスプレイ法を用いて作製することもできる。ファージディスプレイ法では、機能的な抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を有するファージ粒子の表面にディスプレイされる。特定の場合において、このようなファージを用いて、レパートリーまたは抗体コンビナトリアルライブラリー(例えばヒトもしくはマウス)から発現される抗原結合ドメインをディスプレイすることができる。関心対象の抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原を用いて、例えば、標識抗原または固体表面もしくはビーズに結合もしくは捕捉された抗原を用いて、選択または同定することができる。これらの方法で使用されるファージは、典型的には、fdおよびM13を含む繊維状ファージであり、ファージから発現される結合ドメインは、ファージのgene IIIタンパク質またはgeneVIIIタンパク質のいずれかに組換えによって融合された、Fab、Fv、またはジスルフィドで安定化されたFv抗体のドメインを有する。本発明の抗体を作製するのに使用され得るファージディスプレイ法の例には、Brinkman et al., J. Immunol. Methods 182:41-50(1995); Ames et al., J. Immunol. Methods 184:177-186(1995); Kettleborough et al., Eur. J. Immunol. 24:952-958(1994); Persic et al., Gene 187:9-18(1997); Burton et al., Advances in Immunology 57:191-280(1994);PCT出願番号PCT/GB91/01134;PCT公報WO 90/02809;WO 91/10737;WO92/01047;WO 92/18619;WO 93/11236;WO 95/15982;WO 95/20401;ならびに米国特許第5,698,426号;同第5,223,409号;同第5,403,484号;同第5,580,717号;同第5,427,908号;同第5,750,753号;同第5,821,047号;同第5,571,698号;同第5,427,908号;同第5,516,637号;同第5,780,225号;同第5,658,727号;同第5,733,743号;および同第5,969,108号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)において開示されているものが含まれる。さらに別の態様において、抗体または抗体断片は、McCafferty et al., Nature, 348:552-554(1990)において説明される技術を用いて作製した抗体ファージライブラリーから単離することができる。Clackson et al., Nature, 352:624-628(1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597(1991)は、それぞれ、ファージライブラリーを用いたマウス抗体およびヒト抗体の単離を説明している。後続の論文では、チェインシャフリングによる高親和力(nMの範囲)ヒト抗体の作製(Marks et al., Bio/Technology, 10:779-783(1992))、ならびに非常に大規模なファージライブラリーを構築するための戦略としてのコンビナトリアル感染およびインビボ組換え(Waterhouse et al., Nuc. Acids. Res., 21:2265-2266(1993))を説明している。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実用的な代替案である。
【0062】
上記の参考文献において説明されているように、ファージ選択後、ファージ由来の抗体コード領域は、単離し、かつ、ヒト抗体を含む全抗体、または他の任意の所望の抗原結合断片を作製するのに使用し、かつ、例えば下記に詳述するように、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌を含む任意の所望の宿主において発現させることができる。例えば、Fab断片、Fab'断片、およびF(ab')2断片を組換えによって作製するための技術もまた、PCT公報WO 92/22324;Mullinax et al., BioTechniques 12(6):864-869, 1992;およびSawai et al., AJRI 34:26-34, 1995;ならびにBetter et al., Science 240: 1041-1043, 1988(参考文献はすべて、その全体が参照により組み入れられる)において開示されているもののような当技術分野において公知の方法を用いて使用することができる。
【0063】
ヒト抗体はまた、機能的な内因性免疫グロブリンを発現できないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを用いて作製することもできる。例えば、ヒト重鎖免疫グロブリン遺伝子およびヒト軽鎖免疫グロブリン遺伝子の複合体を、ランダムに、または相同組換えによって、マウス胚性幹細胞に導入することができる。あるいは、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域(diversity region)を、ヒト重鎖遺伝子およびヒト軽鎖遺伝子に加えて、マウス胚性幹細胞中に導入することができる。マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子およびマウス軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入と別々に、または同時に非機能的にすることができる。特に、JH領域のホモ接合性欠失は、内因性抗体の産生を妨げる。改変された胚性幹細胞を増殖させ、かつ、胚盤胞中に微量注入して、キメラマウスを作製する。次いで、キメラマウスを飼育して、ヒト抗体を発現するホモ接合性の子孫を産ませる。トランスジェニックマウスを、選択された抗原、例えば、本発明のポリペプチドの全体または一部分を用いて、通常の様式で免疫化する。抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて、免疫化したトランスジェニックマウスから得ることができる。トランスジェニックマウスに保持されたヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再編成し、続いて、クラススイッチおよび体細胞変異を受ける。したがって、このような技術を用いて、治療的に有用なIgG抗体、IgA抗体、IgM抗体、およびIgE抗体を作製することが可能である。ヒト抗体を作製するためのこの技術の概要については、LonbergおよびHuszar(Int. Rev. Immunol. 13:65-93,1995)を参照されたい。
【0064】
ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのこの技術、ならびにこのような抗体を作製するためのプロトコールの詳細な考察については、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551(1993); Jakobovits et al., Nature, 362: 255-258(1993); Bruggermann et al., Year in Immuno., 7:33(1993);PCT公報WO 98/24893; WO 96/34096; WO 96/33735; ;米国特許第5,413,923号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,569,825号;同第5,661,016号;同第5,545,806号;同第5,814,318号;および同第5,939,598号を参照されたい。さらに、Medarex, Inc.(Princeton, New Jersey)およびGenpharm(San Jose, Calif.)などの会社は、前述の技術に類似した技術を用いて選択された抗原に対するヒト抗体を提供することを保証できる。例えば、米国特許第7,135,287号を参照されたい。
【0065】
本発明の抗体は、抗体を合成するための当技術分野において公知である任意の方法によって、特に、化学合成によって、または好ましくは、組換え発現技術によって、作製することができる。本発明の抗体、またはその断片、誘導体、もしくは類似体、例えば、本発明の抗体の重鎖または軽鎖の組換え発現は、その抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築を必要とする。本発明の抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖、またはその一部分(好ましくは、重鎖または軽鎖の可変ドメインを含む)をコードするポリヌクレオチドを一旦得ると、その抗体分子を作製するためのベクターは、当技術分野において周知の技術を使用する組換えDNA技術によって作製することができる。したがって、抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを発現させることによってタンパク質を調製する方法を、本明細書において説明する。当業者には周知である方法を用いて、抗体をコードする配列ならびに適切な転写および翻訳の制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えば、インビトロの組換えDNA技術、合成技術、およびインビボの遺伝子組換えが含まれる。したがって、本発明は、プロモーターに機能的に連結された、本発明の抗体分子、またはその重鎖もしくは軽鎖、または重鎖もしくは軽鎖の可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを提供する。このようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含んでよく(例えば、PCT公報WO 86/05807;PCT公報WO 89/01036;および米国特許第5,122,464号を参照されたい)、かつ、完全な重鎖または軽鎖を発現させるために、抗体の可変ドメインをそのようなベクターにクローニングすることができる。
【0066】
従来技術によって宿主細胞に発現ベクターを導入し、次いで、トランスフェクトされた細胞を従来技術によって培養して、本発明の抗体を産生させる。したがって、本発明は、異種プロモーターに機能的に連結された、本発明の抗体またはその重鎖もしくは軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。二重鎖抗体を発現させるための好ましい態様において、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、下記に詳述するように、完全な免疫グロブリン分子を発現させるために宿主細胞において同時発現され得る。
【0067】
様々な宿主発現ベクター系が、本発明の抗体分子を発現させるために使用され得る。このような宿主発現系は、それによって関心対象のコード配列を作製し、続いて精製することができる媒体(vehicle)を表すが、同様に、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされた場合に、本発明の抗体分子をインサイチューで発現し得る細胞も表す。これらには、抗体をコードする配列を含む、組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、組換えプラスミドDNA発現ベクター、もしくは組換えコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌(E. coli)、枯草菌(B. subtilis))のような微生物;抗体をコードする配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミケス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia));抗体をコードする配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus)(CaMV);タバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus)(TMV))に感染させた植物細胞系、もしくは抗体をコードする配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)、または哺乳動物のウイルスに由来するプロモーター(例えば、MPSV、CMV、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS細胞、CHO細胞、BHK細胞、293細胞、3T3細胞)が含まれるが、それらに限定されるわでではない。好ましくは、大腸菌のような細菌細胞、およびより好ましくは、特に、組換え抗体分子全体の発現のためには、真核細胞が、組換え抗体分子の発現のために使用される。例えば、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中初期(intermediate early)遺伝子プロモーターエレメント、CMVエンハンサー、またはMPSVプロモーターなどのベクターと組み合わせた、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、のような哺乳動物細胞は、抗体の効果的な発現系である(Foecking et al., 1986, Gene 45:101; Cockett et al., 1990, Bio/Technology 8:2)。
【0068】
細菌系において、抗体分子の発現を目的とする使用に応じて、いくつかの発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、抗体分子の薬学的組成物を製造するために、このようなタンパク質を多量に産生させようとする場合、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を指示するベクターが望ましい場合がある。このようなベクターには、抗体をコードする配列が、lacZをコードする領域とインフレームでベクターに個別に連結され得、その結果、融合タンパク質が産生される大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al., 1983, EMBO J. 2:1791);およびpINベクター(InouyeおよびInouye、Nucleic Acids Res. 13:3101-3109, 1985; Van HeekeおよびSchuster, J. Biol. Chem. 24:5503-5509, 1989)などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。pGEXベクターもまた、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるために使用され得る。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、かつ、溶解させた細胞から、マトリックスグルタチオン−アガロースビーズへの吸着および結合とそれに続く遊離グルタチオン存在下での溶出によって容易に精製することができる。。pGEXベクターは、トロンビンまたはXa因子のプロテアーゼ切断部位を含むように設計され、その結果、クローン化された標的遺伝子産物は、GST部分から遊離され得る。
【0069】
昆虫系において、オートグラファカリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)は、外来遺伝子を発現させるためのベクターとして使用される。このウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞において増殖する。抗体をコードする配列を、このウイルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)中に個別にクローニングし、かつ、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に配置することができる。
【0070】
哺乳動物宿主細胞において、いくつかのウイルスベースの発現系が使用され得る。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、関心対象の抗体コード配列は、アデノウイルスの転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび3分節リーダー配列に連結され得る。次いで、このキメラ遺伝子は、インビトロまたはインビボでの組換えによって、アデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、E1領域またはE3領域)に挿入すると、生存能力があり、かつ、感染した宿主において抗体分子を発現できる組換えウイルスが生じる(例えば、LoganおよびShenk、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:355-359, 1984を参照されたい)。特定の開始シグナルもまた、挿入された抗体コード配列の効率的な翻訳のために必要とされ得る。これらのシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接する配列が含まれる。さらに、開始コドンは、挿入断片全体の翻訳を確実にするために、所望のコード配列のリーディングフレームと同調しなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、様々な起源のもの、すなわち天然および合成の両方であり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めることによって向上させることができる(Bittner et al., Methods in Enzymol. 153:51-544, 1987を参照されたい)。
【0071】
さらに、挿入された配列の発現を調節するか、または、所望の特定の様式で遺伝子産物を修飾およびプロセッシングする宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産生物のこのような修飾(例えばグリコシル化)およびプロセッシング(例えば切断)は、タンパク質の機能にとって重要な場合がある。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセッシングおよび修飾のための特徴的かつ特異的なメカニズムを有する。適切な細胞株または宿主系は、発現される外来タンパク質の正確な修飾およびプロセッシングを確実にするように選択され得る。このために、一次転写物の適切なプロセッシング、遺伝子産物のグリコシル化、およびリン酸化のための細胞機構を有する真核宿主細胞が使用され得る。このような哺乳動物宿主細胞には、CHO、VERO、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、WI38、および特に、例えば、BT483、Hs578T、HTB2、BT20、およびT47Dなどの乳癌細胞株、ならびに、例えば、CRL7030およびHs578Bstなど正常な乳腺細胞株が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0072】
組換えタンパク質を長期に渡って高収率で産生させるには、安定な発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定に発現する細胞株を設計することができる。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを使用する代わりに、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター配列、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって制御されるDNAおよび選択マーカーで宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAを導入した後、操作された細胞を強化培地中で1日〜2日間増殖させてよく、次いで、選択培地に交換する。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対する耐性を与え、細胞が染色体中にプラスミドを安定に組み込み、かつ増殖して増殖巣を形成するのを可能にする。次に、この増殖巣をクローン化し、かつ増殖させて細胞株にすることができる。この方法は、抗体分子を発現する細胞株を設計するために、有利に使用され得る。このような操作された細胞株は、直接的または間接的に抗体分子と相互作用する化合物のスクリーニングおよび評価において、特に有用であり得る。
【0073】
限定されるわけではないが、単純ヘルペス(herpes simplex)ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wigler et al., Cell 11:223, 1977)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(SzybalskaおよびSzybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:202, 1992)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowy et al., Cell 22:817, 1980)を含む、いくつかの選択系を使用することができ、tk-細胞、hgprt-細胞、またはaprt-細胞においてそれぞれ使用することができる。また、代謝拮抗物質耐性も、以下の遺伝子を選択する根拠として使用され得る:メトトレキサートに対する耐性を与えるdhfr(Wigler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:357, 1980; O'Hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527, 1981);ミコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt(MulliganおよびBerg、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072, 1981); アミノグリコシドG-418に対する耐性を与えるneo(WuおよびWu、Biotherapy 3:87-95, 1991; Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596, 1993; Mulligan, Science 260:926-932, 1993;ならびにMorganおよびAnderson、Ann. Rev. Biochem. 62:191-217, 1993; TIB TECH 11(5):155-215), May, 1993);ならびに、ヒグロマイシンに対する耐性を与えるhygro(Santerre et al., Gene 30:147, 1984)。使用され得る、組換えDNA技術の分野において一般に公知の方法は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Ausubel et al.(編), 1993, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY; Kriegler, 1990, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY;ならびに、Dracopoli et al.(編), 1994, Current Protocols in Human Genetics、12章および13章、John Wiley & Sons, NY.; Colberre-Garapin et al., J. Mol. Biol. 150:1, 1981に記載されている。
【0074】
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅によって上昇させることができる(総説については、BebbingtonおよびHentschel、「The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells」、DNA cloning、第3巻(Academic Press, New York, 1987)を参照されたい)。抗体を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養物中に存在する阻害物質のレベルが上昇すると、マーカー遺伝子のコピー数が増加すると考えられる。増幅される領域は抗体遺伝子と関連しているので、抗体の産生も増加すると考えられる(Crouse et al., Mol. Cell. Biol. 3:257, 1983)。
【0075】
宿主細胞は、本発明の2種の発現ベクター、すなわち、重鎖由来のポリペプチドをコードする第1のベクターおよび軽鎖由来のポリペプチドをコードする第2のベクターで同時トランスフェクトすることができる。これら2種のベクターは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする同一の選択マーカーを含んでよい。あるいは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一のベクターを使用してもよい。このような状況では、重鎖より先に軽鎖を配置して、毒性の遊離重鎖が過剰になるのを避けるべきである(Proudfoot, Nature 322:52, 1986; Kohler, Proc. Natl. Acad. Sci.USA 77:2197, 1980)。重鎖および軽鎖のコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含んでよい。
【0076】
本発明の抗体分子は、組換えによって発現させた後、免疫グロブリン分子を精製するための当技術分野において公知である任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー(特に、プロテインAに対する特異的抗原の親和力による)、およびサイジング(sizing)カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、差示的溶解度によって、または、タンパク質を精製するための他の任意の標準的な技術によって、精製することができる。
【0077】
特定の用途の場合、抗IL-21抗体の断片を調製することが望ましい場合がある。このような抗体断片は、例えば、抗体のタンパク分解性の加水分解によって得ることができる。抗体断片は、従来の方法による全抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。例として、抗体断片は、F(ab')2と表される5S断片を提供するように、ペプシンで抗体を酵素的に切断することによって作製することができる。この断片をチオール還元剤によってさらに切断して、一価の3.5S Fab'断片を作製することができる。任意で、ジスルフィド結合の切断に起因するスルフヒドリル基に対するブロック基を用いて、切断反応を実施してよい。代替の方法として、ペプシンを用いた酵素的切断では、一価のFab断片2つおよびFc断片1つが直接生じる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,331,647号;Nisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 89:230, 1960; Porter, Biochem. J. 73:119, 1959; Edelman et al., Methods in Enzymology第1巻、422頁(Academic Press 1967);Coligan、2.8.1〜2.8.10頁および2.10〜2.10.4頁に記載されている。
【0078】
一価の軽鎖-重鎖断片を形成するための重鎖の分離、断片のさらなる切断、または他の酵素的、化学的、もしくは遺伝的技術など抗体を切断する他の方法も、それらの断片が、完全な抗体によって認識される抗原に結合する限りにおいて、使用してよい。
【0079】
例えば、Fv断片は、VH鎖およびVL鎖の結合を含む。この結合は、Inbar et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 69:2659, 1972によって説明されているように、非共有結合性でよい。あるいは、これらの可変鎖は、分子間のジスルフィド結合によって連結され得るか、またはグルタルアルデヒドなどの化学物質によって架橋され得る(例えば、Sandhu, Crit. Rev. Biotech. 12:437, 1992を参照されたい)。
【0080】
Fv断片は、ペプチドリンカーによって連結されたVH鎖およびVL鎖を含んでよい。これら単鎖の抗原結合タンパク質(scFv)は、オリゴヌクレオチドによって連結されたVHドメインおよびVLドメインをコードするDNAを含む構造遺伝子を構築することによって調製される。構造遺伝子は、発現ベクター中に挿入され、続いて、このベクターは、大腸菌のような宿主細胞中に導入される。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを有する単一のポリペプチド鎖を合成する。scFvを作製するための方法は、例えば、Whitlow et al., Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:97(1991)によって説明されている(同様に、Bird et al., Science 242:423, 1988、Ladner et al.、米国特許第4,946,778号、Pack et al., Bio/Technology 11:1271, 1993、およびSandhu、前記も参照されたい)。
【0081】
例として、scFVは、リンパ球をIL-21ポリペプチドにインビトロで曝露させ、かつ、(例えば、固定化または標識したIL-21タンパク質またはIL-21ペプチドの使用によって)ファージベクターまたは同様のベクター中の抗体ディスプレイライブラリーを選択することによって得ることができる。潜在的なIL-21ポリペプチド結合ドメインを有するポリペプチドをコードする遺伝子は、ファージ上(ファージディスプレイ)または大腸菌のような細菌上にディスプレイされたランダムペプチドライブラリーをスクリーニングすることによって得ることができる。これらのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ランダム変異誘発およびランダムポリヌクレオチド合成によるなど、いくつかの方法で得ることができる。これらのランダムペプチドディスプレイライブラリーを使用して、タンパク質またはポリペプチド、例えば、リガンドもしくは受容体、生物学的巨大分子もしくは合成巨大分子、または有機物質もしくは無機物質などであり得る、公知の標的と相互作用するペプチドをスクリーニングすることができる。このようなランダムペプチドディスプレイライブラリーを作製およびスクリーニングするための技術は、当技術分野において公知であり(Ladner et al.、米国特許第5,223,409号、Ladner et al.、米国特許第4,946,778号、Ladner et al.、米国特許第5,403,484号、Ladner et al.、米国特許第5,571,698号、およびKay et al., Phage Display of Peptides and Proteins(Academic Press, Inc. 1996))、かつ、このようなライブラリーをスクリーニングするためのランダムペプチドディスプレイライブラリーおよびキットは、例えば、CLONTECH Laboratories, Inc. (Palo Alto, CA)、Invitrogen Inc. (San Diego, CA、New England Biolabs, Inc. (Beverly, MA)、およびPharmacia LKB Biotechnology Inc. (Piscataway, NJ)から市販されている。本明細書において開示するIL-21配列を用いてランダムペプチドディスプレイライブラリーをスクリーニングして、IL-21に結合するタンパク質を同定することができる。
【0082】
抗体断片の別の形態は、1つの相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、関心対象の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。このような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法を用いて、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することによって、調製する(例えば、Larrick et al., Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106(1991)、Courtenay-Luck, 「Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies」、Monoclonal Antibodies:Production, Engineering and Clinical Application, Ritter et al.(編)、166頁(Cambridge University Press 1995)、およびWard et al., 「Genetic Manipulation and Expression of Antibodies」、Monoclonal Antibodies:Principles and Applications, Birch et al.(編)、137頁(Wiley-Liss, Inc. 1995)を参照されたい)。
【0083】
あるいは、抗IL-21抗体は、「ヒト化」モノクローナル抗体に由来してもよい。ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変鎖に由来するマウスまたはラットの相補性決定領域をヒト可変ドメイン中に導入することによって作製される。次いで、ヒト抗体の典型的な残基でマウス対応物のフレームワーク領域を置換する。ヒト化モノクローナル抗体に由来する抗体構成要素を使用することにより、マウスの定常領域の免疫原性に関連する潜在的な問題が回避される。マウスの免疫グロブリン可変ドメインをクローニングするための一般的技術は、例えば、Orlandi et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:3833, 1989によって説明されている。ヒト化モノクローナル抗体を作製するための技術は、例えば、Jones et al., Nature 321:522, 1986; Carter et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:4285, 1992; Sandhu, Crit. Rev. Biotech. 12:437, 1992; Singer et al., J.Immun. 150:2844, 1993; Sudhir(編)、Antibody Engineering Protocols(Humana Press, Inc. 1995)、Kelley, 「Engineering Therapeutic Antibodies」、Protein Engineering:Principles and Practice, Cleland et al.(編)、399〜434頁(John Wiley & Sons, Inc. 1996)およびQueen et al.、米国特許第5,693,762号によって説明されている。
【0084】
単量体タンパク質のコレクションを用いて代替フレームワークを構築して、単量体ドメインを形成させることも可能である。これらの単量体ドメインは、組織に入り込める程度に小さくてよい。単量体ドメインは、天然の変種(vaiant)もしくは非天然の変種、またはそれらの組合せでよい。単量体ドメインは、2つまたはそれ以上のドメインからなる多量体を形成することができる。単量体ドメインは、標的分子上の、本明細書において説明するエピトープに類似した位置に結合する。場合によっては、多量体は、様々な単量体ドメインから形成され得る(例えば、米国特許出願第2004-0132028号および米国特許出願第2006-0177831号を参照されたい)。
【0085】
本発明の抗体には、修飾された、すなわち、抗体がIL-21に結合するのも受容体活性化を防ぐのも共有結合が妨げないように、任意のタイプの分子を抗体に共有結合させることによる、誘導体が含まれる。例えば、限定されるわけではないが、抗体誘導体には、例えば、公知の保護基/ブロック基、タンパク質分解切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質への連結などによるグリコシル化、アセチル化、ペグ化、ホスフィル化(phosphylation)、アミド化、誘導体化によって修飾された抗体が含まれる。限定されるわけではないが、特異的化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含む公知の技術によって、多数の化学修飾のいずれかを実施することができる。さらに、誘導体は、1つまたは複数の非古典的なアミノ酸を含んでよい。
【0086】
抗IL-21抗体を検出可能な標識と結合させて、抗IL-21免疫複合体を形成させることができる。適切な検出可能標識には、例えば、放射性同位体、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、生物発光標識、またはコロイド金が含まれる。このような検出可能となるように標識された免疫複合体を作製および検出する方法は当業者に周知であり、かつ、下記により詳細に説明する。検出可能な標識は、オートラジオグラフィーによって検出される放射性同位体でよい。本発明の目的のために特に有用である同位体は、3H、125I、131I、35S、および14Cである。
【0087】
抗IL-21免疫複合体はまた、蛍光性化合物で標識することもできる。蛍光標識した抗体の存在は、適切な波長の光にその免疫複合体を曝露させ、かつ、結果として生じる蛍光を検出することによって決定される。蛍光標識化合物には、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、フィコエリテリン(phycoerytherin)、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタアルデヒド(phthaldehyde)、およびフルオレスカミンが含まれる。
【0088】
抗体構成要素を化学発光化合物に結合させることによって抗IL-21免疫複合体を検出可能となるように標識できることもまた、可能である。化学発光タグ付き免疫複合体の存在は、化学反応の過程を通じて生じる発光の存在を検出することによって決定される。化学発光標識化合物の例には、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸エステルが含まれる。
【0089】
同様に、生物発光化合物を使用して、本発明の抗IL-21免疫複合体を標識することもできる。生物発光は、触媒的タンパク質によって化学発光反応の効率が高められる生物学的系において見出される、あるタイプの化学発光である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識するのに有用な生物発光化合物には、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリンが含まれる。
【0090】
あるいは、抗IL-21免疫複合体は、抗IL-21抗体構成要素を酵素に結合させることによって、検出可能に標識することもできる。抗IL-21-酵素結合体を適切な基質の存在下でインキュベートすると、酵素部分は基質と反応して、例えば、分光光度的手段、蛍光定量的手段、または視覚的手段によって検出できる化学的部分を生成する。多特異性の免疫複合体を検出可能に標識するのに使用できる酵素の例には、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、およびアルカリホスファターゼが含まれる。
【0091】
当業者は、本発明に従って使用できる他の適切な標識について知っていると考えられる。抗IL-21抗体へのマーカー部分の結合は、当技術分野において公知である標準的な技術を用いて実施することができる。この点に関する典型的な方法論は、Kennedy et al., Clin. Chim. Acta 70:1, 1976; Schurs et al., Clin. Chim. Acta 81:1, 1977; Shih et al., Int'l J. Cancer 46:1101, 1990; Stein et al., Cancer Res. 50:1330, 1990;およびColigan、前記によって説明されている。
【0092】
さらに、免疫化学的検出の利便性および汎用性は、アビジン、ストレプトアビジン、およびビオチンと結合させた抗IL-21抗体を用いることによって高めることができる(例えば、Wilchek et al.(編)、「Avidin-Biotin Technology」、Methods In Enzymology、第184巻(Academic Press 1990)、および Bayer et al., 「Immunochemical Applications of Avidin-Biotin Technology」、Methods In Molecular Biology、第10巻、Manson(編)、149〜162頁(The Humana Press, Inc.1992を参照されたい)。
【0093】
イムノアッセイ法を実施するための方法は、十分に確立されている。例えば、CookおよびSelf、「Monoclonal Antibodies in Diagnostic Immunoassays」、Monoclonal Antibodies:Production, Engineering, and Clinical Application、RitterおよびLadyman(編)、180〜208頁(Cambridge University Press, 1995)、Perry、「The Role of Monoclonal Antibodies in the Advancement of Immunoassay Technology」、Monoclonal Antibodies:Principles and Applications、BirchおよびLennox(編)、107〜120頁(Wiley-Liss, Inc. 1995)、ならびにDiamandis, Immunoassay(Academic Press, Inc. 1996)を参照されたい。
【0094】
インビボでの半減期の長い抗体またはその断片は、当業者に公知の技術によって作製することができる。例えば、インビボでの半減期の長い抗体またはその断片は、FcドメインとFcRn受容体の相互作用に関与していることが確認されたアミノ酸残基を改変(例えば、置換、除去、または付加)することによって作製することができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、国際公開WO 97/34631およびWO 02/060919を参照されたい)。インビボでの半減期の長い抗体またはその断片は、高分子量のポリエチレングリコール(PEG)のようなポリマー分子を、該抗体または抗体断片に結合させることによって作製することができる。PEGは、該抗体もしくは抗体断片のN末端もしくはC末端にPEGを部位特異的に結合させることによって、または、リシン残基上に存在するεアミノ基を介して、多官能性リンカーを使用または使用せずに、該抗体または抗体断片に結合させることができる。生物活性の損失が最小限である直鎖状または分枝状のポリマー誘導体化が使用される。抗体へのPEG分子の適切な結合を徹底させるために、結合の程度は、SDS-PAGEおよび質量分析によって厳密にモニターされる。未反応のPEGは、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーによって、抗体-PEG結合体から分離することができる。
【0095】
薬学的組成物
本発明はさらに、薬学的に許容される担体、および本明細書において説明するポリペプチドまたは抗体を含む薬学的組成物も含む。薬学的組成物は、限定されるわけではないが、細胞障害性物質、サイトトキシン、例えば、細胞増殖抑制物質もしくは細胞破壊物質、治療物質、または放射性金属イオンを含む、付加的な治療物質を含んでよい。サイトトキシンまたは細胞障害性物質には、細胞に有害である任意の作用物質が含まれる。例には、パクリタキソール(paclitaxol)、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそれらの類似体またはホモログが含まれる。治療物質には、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分裂物質(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、薬学的組成物は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドを含んでよい。このようなタンパク質には、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナスエキソトキシン、もしくはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α-IFN、β-IFN、神経成長因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、血栓性物質、もしくは抗血管新生物質、例えば、アンギオスタチンもしくはエンドスタチンなどのタンパク質;または、例えば、リンフォカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、もしくは他の増殖因子などの生体応答調節物質が含まれ得る。
【0096】
治療法のために、抗IL-21抗体分子および薬学的に許容される担体は、治療的有効量で患者に投与される。本発明の治療的分子および薬学的に許容される担体の組合せは、投与される量が生理学的に有意である場合、「治療的有効量」で投与されると言われる。作用物質は、その存在により、受容者である患者の生理機能に検出可能な変化がもたらされる場合、生理学的に有意である。例えば、炎症を治療するのに使用される作用物質は、その存在により、炎症応答が軽減される場合、生理学的に有意である。
【0097】
抗IL-21抗体を含む薬学的組成物は、液状形態で、エアロゾルで、または固形形態で提供され得る。液状形態の例は、注射液剤および経口懸濁剤である。例示的な固形形態には、カプセル剤、錠剤、および制御放出形態が含まれる。後者の形態の例は、ミニ浸透圧ポンプおよび埋め込み剤である(Bremer et al., Pharm. Biotechnol. 10:239(1997); Ranade、「Implants in Drug Delivery」、Drug Delivery Systems、RanadeおよびHollinger(編)、95〜123頁(CRC Press 1995); Bremer et al.、「Protein Delivery with Infusion Pumps」、Protein Delivery:Physical Systems、SandersおよびHendren(編)、239〜254頁(Plenum Press 1997); Yewey et al.、「Delivery of Proteins from a Controlled Release Injectable Implant」、Protein Delivery:Physical Systems、SandersおよびHendren(編)、93〜117頁(Plenum Press 1997))。
【0098】
リポソームは、静脈内に、腹腔内に、くも膜下腔内に、筋肉内に、皮下に、または、経口投与、吸入、もしくは鼻腔内投与を介して、対象に治療的ポリペプチドを送達するための1つの手段を提供する。リポソームは、水溶性の区画を取り囲む1つまたは複数の脂質二重層からなる顕微鏡的小胞である(一般に、Bakker-Woudenberg et al., Eur. J. Clin. Microbiol. Infect. Dis. 12(補遺1):S61(1993)、Kim, Drugs 46:618(1993)、およびRanade、「Site-Specific Drug Delivery Using Liposomes as Carriers」、Drug Delivery Systems、RanadeおよびHollinger(編)、3〜24頁(CRC Press 1995)を参照されたい)。リポソームは、組成が細胞膜に類似しており、結果として、リポソームは安全に投与することができ、かつ生分解性である。調製方法によって、リポソームは、単層または多重層でよく、かつ、リポソームのサイズは様々でよく、直径は0.02μm〜10μm超の範囲である。様々な作用物質をリポソーム中に封入することができる。疎水性作用物質は二重層に分配し、親水性作用物質は内側の水溶性空間内に分配する(例えば、Machy et al., Liposomes In Cell Biology And Pharmacology (John Libbey 1987)、およびOstro et al., American J. Hosp. Pharm. 46:1576(1989)を参照されたい)。さらに、リポソームサイズ、二重層の数、脂質組成、ならびにリポソームの電荷および表面の特徴を変更することによって、封入された作用物質の治療的有効性を制御することも可能である。
【0099】
あるいは、抗体、抗体断片、炭水化物、ビタミン、および輸送タンパク質など様々なターゲティングリガンドをリポソームの表面に結合させることもできる。例えば、リポソームを分枝型のガラクトシル脂質誘導体で修飾して、肝臓細胞表面で専ら発現される、アシアロ糖タンパク質(ガラクトース)受容体を標的にさせることができる(KatoおよびSugiyama, Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 14:287, 1997、Murahashi et al., Biol. Pharm. Bull. 20:259, 1997)。同様に、Wu et al., Hepatology 27:772, 1998では、アシアロフェツインでリポソームを標識すると、リポソームの血漿半減期が短縮され、かつ、アシアロフェツイン標識リポソームの肝細胞による取込みが大幅に増強されたことが示された。一方で、分枝型ガラクトシル脂質誘導体を含むリポソームの肝臓蓄積は、アシアロフェツインを前もって注射することにより阻害され得る(Murahashi et al., Biol. Pharm. Bull. 20:259(1997))。ポリアコニチル化ヒト血清アルブミンリポソームは、肝臓細胞にリポソームをターゲティングするための別のアプローチを提供する(Kamps et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 94:11681(1997))。さらに、Gehoらの米国特許第4,603,044号では、肝臓の特殊な代謝細胞に関連した肝胆道受容体に対する特異性を有する、肝細胞を対象とするリポソーム小胞送達系を記載している。
【0100】
組織ターゲティングに対するより一般的なアプローチでは、標的細胞は、標的細胞によって発現されるリガンドに特異的なビオチン化抗体で前標識される(Harasym et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 32:99(1998))。遊離抗体を血漿から除去した後、ストレプトアビジンを結合させたリポソームが投与される。別のアプローチでは、ターゲティング抗体がリポソームに直接結合される(Harasym et al., 同書(1998))。
【0101】
ポリペプチドおよび抗体は、タンパク質マイクロカプセル化の標準的技術を用いて、リポソーム内に封入され得る(例えば、Anderson et al., Infect. Immun. 31:1099(1981)、Anderson et al., Cancer Res. 50:1853(1990)、およびCohen et al., Biochim. Biophys. Acta 1063:95(1991)、Alving et al. 「Preparation and Use of Liposomes in Immunological Studies」、 Liposome Technology、第2版、第3巻、Gregoriadis(編)、317頁(CRC Press 1993)、Wassef et al., Meth. Enzymol. 149:124(1987)を参照されたい)。上記のように、治療的に有用なリポソームは、様々な構成要素を含んでよい。例えば、リポソームは、ポリ(エチレングリコール)の脂質誘導体を含んでよい(Allen et al., Biochim. Biophys. Acta 1150:9(1993))。
【0102】
分解性ポリマーマイクロスフェアは、治療タンパク質の高い全身レベルを維持するために設計された。マイクロスフェアは、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、非生分解性酢酸エチルビニルポリマーなどの分解性ポリマーから調製され、その際、タンパク質はポリマー中に閉じ込められる(GombotzおよびPettit, Bioconjugate Chem. 6:332, 1995; Ranade、「Role of Polymers in Drug Delivery」、Drug Delivery Systems, RanadeおよびHollinger(編)、51〜93頁(CRC Press 1995);RoskosおよびMaskiewicz、「Degradable Controlled Release Systems Useful for Protein Delivery」、Protein Delivery:Physical Systems、SandersおよびHendren (編)、45〜92 頁(Plenum Press 1997);Bartus et al., Science 281:1161, 1998;PutneyおよびBurke、Nature Biotechnology 16:153, 1998;Putney, Curr. Opin. Chem. Biol. 2:548, 1998)。ポリエチレングリコール(PEG)でコーティングされたナノスフェアもまた、治療用タンパク質の静脈内投与のための担体を提供し得る(例えば、Gref et al., Pharm. Biotechnol. 10:167, 1997を参照されたい)。
【0103】
他の剤形は、例えば、AnselおよびPopovich、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第5版(Lea&Febiger 1990)、Gennaro(編)、Remington's Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Company 1995)により、かつ、RanadeおよびHollinger、Drug Delivery Systems(CRC Press 1996)により示されているように、当業者によって考案され得る。
【0104】
薬学的組成物は、中和性抗IL-21抗体を含む容器を含むキットして供給され得る。治療的ポリペプチドは、単回投与もしくは複数回投与用の注射液剤の形態で、または、注射前に溶解される滅菌粉末として、提供され得る。あるいは、このようなキットは、治療的ポリペプチドを投与するための乾燥粉末分散装置、液体エアロゾル発生装置、またはネブライザーも含んでよい。このようなキットは、薬学的組成物の適応症および使用法に関する書面情報をさらに含んでよい。
【0105】
抗IL-21抗体を含む薬学的組成物は、液状形態で、エアロゾルで、または固形形態で提供され得る。液状形態の例は、注射液剤、エアロゾル、液滴、トポロジー(topological)液剤、および経口懸濁剤である。例示的な固形形態には、カプセル剤、錠剤、および制御放出形態が含まれる。後者の形態の例は、ミニ浸透圧ポンプおよび埋め込み剤である(Bremer et al., Pharm.Biotechnol. 10:239, 1997; Ranade、「Implants in Drug Delivery」、Drug Delivery Systems、RanadeおよびHollinger(編)、95〜123頁(CRC Press 1995); Bremer et al.、「Protein Delivery with Infusion Pumps」、Protein Delivery:Physical Systems、SandersおよびHendren(編)、239〜254頁(Plenum Press 1997); Yewey et al.、「Delivery of Proteins from a Controlled Release Injectable Implant」、Protein Delivery:Physical Systems、SandersおよびHendren (編)、93〜117頁(Plenum Press 1997))。他の固形形態には、クリーム剤、パスタ剤、および他のトポロジー適用などが含まれる。
【0106】
抗IL-21抗体の治療的用途
IL-21は、最適なCD8+T細胞性免疫、NK細胞活性化、ならびに、抗体産生およびB細胞成熟など最適な体液性応答のために重要であるCD4+T細胞由来のサイトカインである。IL-21は、IL-18、IL-15、IL-5、IL-6、TNFRII、sCD25、およびRANTESなどいくつかの炎症誘発性のケモカインおよびサイトカインを誘導することが示されている。IL-21は、非ヒト霊長類およびヒトにおいて、急性期応答も誘導する。IL-21受容体発現の増大が、全身性硬化症(Distler et al., Arthritis & Rheumatism 52:865-864, 2004)および関節リウマチ滑膜線維芽細胞(Jungel et al., Arthritis & Rheumatism 50:1468-1476, 2004)に罹患している患者の表皮において示されている。さらに、自己免疫性の糖尿病NOD マウスでも、IL-21受容体発現が増大していた(King et al., Cell 117:265-277, 2004)。IgGおよびIL-21の発現が、自己免疫性エリテマトーデス様疾患を発症するBXSB-Yaaマウスモデルにおいて増大していることが示された(Ozaki et al., J. Immunol. 173:5361-5371, 2004)。IL-21発現は、狼瘡易発症サンロケ(Sanroque)マウスにおいて、より高い(Vinuesa et al. Nature 435:452, 2005)。IL-21発現は、クローン病患者において、より高い(Monteleone, et al., Gastroenterology 128:687-694, 2005)。
【0107】
抗IL-21抗体の治療的有効量とは、対象に投与された場合に、疾患または障害に関連した症状または生物活性を予防、遅延、軽減、または阻害するのに有効である抗体の量を意味する。投与は、単回投与または複数回投与からなってよく、かつ、他の薬学的組成物と組み合わせて与えられ得る。
【0108】
本発明は、膵炎、I型糖尿病(IDDM)、グレーブス病、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性結腸炎、過敏性腸症候群、多発性硬化症、関節リウマチ、憩室症、全身性エリテマトーデス、乾癬、強直性脊椎炎、強皮症、全身性硬化症、乾癬性関節炎、変形関節炎、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病(GVHD)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、IgA腎症、移植片対宿主病、移植拒絶、アトピー性皮膚、抗リン脂質症候群、および喘息、ならびに他の自己免疫疾患などの炎症性および免疫性の疾患または状態においてIL-21アンタゴニストを使用するための組成物および方法を提供する。
【0109】
接触性皮膚炎
アレルギー性接触性皮膚炎は、皮膚と接触する抗原に対するT細胞性免疫反応と定義される。アレルゲン依存性のT細胞応答が、CLA+細胞集団にほとんど限局されているため、CLA+T細胞集団は、皮膚炎の開始に関与していると考えられている(Santamaria-Babi, L.F., et al., J Exp Med 181:1935,(1995)を参照されたい)。最近のデータでは、一般的な接触過敏症アレルゲンであるニッケルに応答して増殖し、かつ1型(IFN-γ)サイトカインおよび2型(IL-5)サイトカインの両方を産生するのは、記憶(CD45RO+)CD4+CLA+T細胞のみであり、CD8+T細胞は該当しないことが判明した。さらに、CD4、CD45RO(記憶)、またはCD69と組み合わせてCLAを発現する細胞は、ニッケル特異的な刺激の後に増加し、かつ、ケモカイン受容体CXCR3、CCR4、CCR10を発現するが、CCR6は発現しない。Moed H., et al., Br J Dermatol 51:32,(2004)を参照されたい。
【0110】
動物モデルにおいて、アレルギー性接触性皮膚炎がT細胞依存性であること、およびアレルギー応答性T細胞が、アレルゲン適用部位に遊走することが実証された。一般に、Engeman T.M., et al., J Immunol 164:5207, (2000); Ferguson T.A.およびKupper T.S. J Immunol 150:1172,(1993);ならびにGorbachev A.V.およびFairchild R.L. Crit Rev Immunol. 21:451(2001)を参照されたい。
【0111】
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎(AD)は、この10年間の間に、発病率が劇的に増加した、慢性的に再発する炎症性皮膚疾患である。臨床的に、ADは、慢性的な再発性経過を示す、著しくそう痒性で、しばしば擦りむけた斑および丘疹を特徴とする。ADの診断は、主として、主要な臨床所見および軽微な臨床所見に基づく。Hanifin J.M., Arch Dermatol 135: 1551(1999)を参照されたい。組織病理学により、急性病変における海綿状態、過錯角化、および限局的な錯角化が明らかになるのに対し、過錯角化および錯角化、アカントシス/顆粒層肥厚、ならびにリンパ球および大量の肥満細胞による真皮の血管周囲浸潤を伴う著しい表皮過形成は、慢性病変の特徴である。
【0112】
T細胞は、組織における局所的免疫応答開始の中心的役割を果たし、かつ、証拠により、特に、皮膚浸潤性のT細胞が、皮膚における調節されていない免疫応答の開始および維持において重要な役割を果たし得ることが示唆されている。皮膚炎症部位中の浸潤性T細胞の約90%は、Eセレクチン、すなわち内皮上の誘導性接着分子に結合する、皮膚リンパ球関連Agを発現する(CLA+)(Santamaria-Babi L.F., et al., Eur J Dermatol 14:13,(2004)に総説がある)。対照個体と比較して有意な、AD患者における循環血中CLA+ T細胞の増加が実証されているのに対し(Teraki Y., et al., Br J Dermatol 143:373(2000)を参照されたい)、他の研究者らは、AD患者由来のCLA+記憶T細胞が、CLA-集団と比較してアレルゲン抽出物に優先的に応答することを実証した(Santamaria-Babi, L.F., et al., J Exp Med. 181:1935,(1995)を参照されたい)。ヒトにおいて、皮膚のアトピー性障害の病因は、IL-5 およびIL-13に類似したTh-2型サイトカインを高いレベルで発現するCLA+ T細胞の増加に関連付けられている。Akdis M., et al., Eur J Immunol 30:3533(2000)およびHamid Q., et al., J Allergy Clin Immunol 98:225(1996)を参照されたい。
【0113】
NC/Ngaマウスは、約6週齢〜8週齢で、指定された病原体を有する(非SPF)条件で飼育した場合、臨床経過および臨床徴候、組織病理学および免疫病理学を含む多くの局面でヒトADに類似しているAD様病変を自然発症的に発症する。一方、SPF条件下で飼育されたNC/Ngaマウスは、皮膚病変を発症しない。しかしながら、自然発症的皮膚病変の発症および引っ掻き行動は、天然のままのチリダニ抗原を毎週皮内注射することによって、SPF施設で飼育されたNC/Ngaマウスにおいて同時発生させることができる。Matsuoka H., et al., Allergy 58:139(2003)を参照されたい。したがって、NC/NgaにおけるADの発症は、AD治療用の新規な治療物質を評価するための有用なモデルである。
【0114】
自然発症的ADのNC/Ngaモデルの他に、OVAを用いたマウス皮膚感作もまた、感作マウスの皮膚における単核浸潤物による抗原依存性の表皮肥厚および真皮肥厚を誘導するモデルとして使用することができる。これは、通常、全IgEおよび特定のIgEの血清レベルの上昇と同時に発生するが、皮膚バリアの機能不全もそう痒症も、このモデルにおいて普通は発生しない。Spergel J.M., et al., J Clin Invest, 101 :1614,(1998)を参照されたい。DO 11.10 OVA TCRトランスジェニックマウスをOVAで感作することにより、皮膚バリアの調節不全およびそう痒症を誘導するために、このプロトコールを改良することができる。感作抗原を認識できる抗原特異的T細胞の数を増加させると、皮膚の炎症レベルが上昇して、可視的な引っ掻き行動および皮膚の苔癬化/落屑が誘導され得る。
【0115】
関節炎
変形関節炎、関節リウマチ、および傷害が原因で関節炎を起こした関節などを含む関節炎は、抗炎症性の抗体および結合ポリペプチドの治療的使用から利益を受けると思われる一般的な炎症性状態である。例えば、関節リウマチ(RA)は、身体全体に影響を及ぼす全身性疾患であり、関節炎の最も一般的な形態の1つである。これは、疼痛、こわばり、熱感、発赤、および腫脹を引き起こす、関節の内側を覆う膜の炎症を特徴とする。炎症細胞は、硬骨および軟骨を消化し得る酵素を放出する。関節リウマチの結果として、炎症を起こした関節の内層、すなわち滑膜は、硬骨および軟骨に浸入し、かつそれらを損傷して、他の生理的作用に混じって関節の劣化および重度の疼痛をもたらし得る。巻き込まれた関節は、その形状および配列を失って、疼痛および動作低下をもたらし得る。
【0116】
関節リウマチ(RA)は、重度の障害および死亡率の上昇を招く、炎症およびそれに続く組織損傷を特に特徴とする免疫介在性疾患である。様々なサイトカインが、リウマチ関節において局所的に産生される。多数の研究により、2種のプロトタイプの炎症誘発性サイトカインであるIL-1およびTNF-αが、滑膜炎症および進行性の関節破壊に関与するメカニズムにおいて重要な役割を果たしていることが実証された。実際、TNF-αおよびIL-1の阻害物質をRA患者に投与すると、炎症の臨床徴候および生物学的徴候が劇的に改善し、かつ、骨びらんおよび軟骨破壊の放射線医学的徴候が減少した。しかしながら、これらの有望な結果にもかかわらず、かなりの比率の患者がこれらの作用物質に応答しないことから、他のメディエーターも関節炎の病態生理に関与していることが示唆されている(Gabay, Expert. Opin. Biol. Ther. 2(2):135-149, 2002)。
【0117】
当技術分野において公知である、いくつかの関節リウマチ動物モデルがある。例えば、コラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルでは、マウスは、ヒト関節リウマチによく似ている慢性の炎症性関節炎を発症する。CIAは、RAと同様の免疫学的特徴および病理学的特徴を有するため、これは、潜在的なヒト抗炎症性化合物をスクリーニングするための理想的なモデルになる。CIAモデルは、存在するために、免疫応答および炎症応答の両方に依存する、周知のマウスモデルである。免疫応答は、抗原として与えられるコラーゲンに応答したB細胞およびCD4+T細胞の相互作用を含み、かつ、抗コラーゲン抗体の産生をもたらす。炎症期は、これらの抗体の一部がマウス固有のコラーゲンに交差反応し、かつ補体カスケードを活性化した結果としての、炎症メディエーターに由来する組織応答の結果である。CIAモデルを使用する利点は、病因の基本的メカニズムが公知であるということである。II型コラーゲン上のT細胞およびB細胞関連エピトープが同定されており、かつ、免疫介在性関節炎に関係する様々な免疫学的パラメーター(例えば、遅延型過敏症および抗コラーゲン抗体)ならびに炎症性パラメーター(例えば、サイトカイン、ケモカイン、およびマトリックス分解酵素)が決定されており、したがって、CIAモデルにおける試験化合物の有効性を評価するのに使用することができる(Wooley, Curr. Opin. Rheum. 3:407-20, 1999; Williams et al., Immunol. 89:9784-788, 1992; Myers et al., Life Sci. 61:1861-78, 1997;およびWang et al., Immunol. 92:8955-959, 1995)。
【0118】
これらのCIAモデルマウスに対する抗IL-21抗体の投与は、抗IL-21抗体を使用することにより、症状が改善され、かつ疾患の経過が変化するかを評価するために使用される。
【0119】
炎症性腸疾患(IBD)
アメリカ合衆国では、約500,000人の人々が炎症性腸疾患(IBD)に罹患しており、この疾患は、結腸および直腸(潰瘍性結腸炎)、または小腸および大腸の両方(クローン病)のいずれかを冒し得る。これらの疾患の病因は不明であるが、これらは罹患組織の慢性的な炎症を伴う。潰瘍性結腸炎(UC)は、一般に結腸(colon)と呼ばれる大腸の炎症性疾患であり、結腸の粘膜または最も内側の壁の炎症および潰瘍を特徴とする。この炎症は、結腸の頻繁な排便を引き起こし、結果として下痢を生じる。症状には、ゆるい大便、ならびに付随する腹部の有痛性痙攣、発熱、および体重減少が含まれる。UCの正確な原因は不明であるが、最近の研究により、身体の天然の防御が、身体が異物であると考える身体中のタンパク質に対抗して作用すると示唆されている(「自己免疫反応」)。おそらく、これらのタンパク質が腸中の細菌タンパク質に似ているため、それらは、結腸の内壁を破壊し始める炎症プロセスを扇動または刺激する可能性がある。結腸の内壁が破壊される間に、潰瘍が形成して、粘液、膿、および血液を放出する。この疾患は、通常、直腸領域で始まり、最終的には大腸全体に拡大し得る。炎症のエピソードが繰り返されると、瘢痕組織によって腸および直腸の壁が肥厚する。結腸組織の死滅または敗血症が、重度の疾患と共に発生し得る。潰瘍性結腸炎の症状の重症度は様々であり、かつ、それらの発症は漸進的または急激であり得る。呼吸器感染症またはストレスを含む多くの因子によって、発病が引き起こされ得る。
【0120】
UCの有効な治療法は現在は無いが、治療は、結腸内壁における異常な炎症プロセスを抑制することに焦点を合わせられている。コルチコステロイド免疫抑制薬(例えば、アザチオプリン、メルカプトプリン、およびメトトレキサート)ならびにアミノサリチル酸を含む治療薬が、この疾患を治療するために利用可能である。しかしながら、コルチコステロイドおよびアザチオプリンなどの免疫抑制薬を長期間使用すると、骨の希薄化、白内障、感染症、ならびに肝臓および骨髄に対する作用を含む、深刻な副作用をもたらし得る。現在の療法が成功していない患者においては、外科手術が選択肢である。外科手術は、結腸全体および直腸の除去を含む。
【0121】
慢性の潰瘍性結腸炎を部分的に再現することができるいくつかの動物モデルがある。最も広く使用されているモデルは、結腸中に慢性の炎症および潰瘍を誘発する2,4,6-トリニトロベンスルホン酸(trinitrobenesulfonic acid)/エタノール(TNBS)誘発性結腸炎モデルである。直腸内への点滴注入によって感受性の高いマウスの結腸中にTNBSを導入すると、結腸の粘膜においてT細胞性免疫応答が誘導され、この場合、大腸壁全体にわたるT細胞およびマクロファージの密な浸潤を特徴とする広範囲の粘膜炎症が生じる。さらに、この組織病理学的な病像は、進行性の体重減少(衰弱)、血性下痢、直腸脱、および大腸壁肥厚の臨床像を伴う(Neurath et al. Intern. Rev. Immunol. 19:51-62, 2000)。
【0122】
別の結腸炎モデルは、血性下痢、体重減少、結腸の短縮、および好中球浸潤を伴う粘膜潰瘍を発症する急性結腸炎を誘導するデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を使用する。DSS誘発性結腸炎は、組織学的には、リンパ様過形成、限局的な陰窩損傷、および上皮潰瘍と共に、固有層中への炎症細胞の浸潤を特徴とする。これらの変化は、上皮に対するDSSの毒性作用に起因し、かつ、固有層細胞の食作用ならびにTNF-αおよびIFN-γの産生によって起こると考えられている。一般的に使用されているものの、ヒト疾患との関連性に関するDSSのメカニズムについてのいくつかの問題は、依然として解明されていない。SCIDマウスのようなT細胞欠損動物において観察されるため、DSSは、T細胞に依存しないモデルとみなされている。
【0123】
これらのTNBSモデル、DSSモデル、またはCD4導入モデルに対する抗IL-21抗体の投与は、IL-21アンタゴニストの使用により、胃腸疾患の症状が改善され、かつそれらの経過が変化するかを評価するために使用することができる。IL-21は、結腸炎での炎症応答においてある役割を果たしている可能性があり、IL-21アンタゴニストの投与によるIL-21活性の中和は、IBDに対する潜在的な治療アプローチである。
【0124】
乾癬
乾癬は、700万人を超えるアメリカ人に発症する慢性皮膚病態である。乾癬は、新しい皮膚細胞が異常に増殖した結果、古い皮膚が十分な速さで剥がれ落ちていない、炎症を起こし、隆起し、かつ鱗屑を有する皮膚部分を生じる場合に発生する。最も一般的な型である尋常性乾癬は、銀白の鱗屑で覆われた、皮膚の炎症部分(「病変」)を特徴とする。乾癬は、少数のプラークに限定されるか、または中程度から広範囲の皮膚領域を含む場合があり、頭皮、膝、肘、および胴に最も一般的に現れる。極めて目立つが、乾癬は、接触感染性疾患ではない。これらの疾患の病因は、罹患組織の慢性的な炎症に関係する。本発明の抗IL-21抗体は、乾癬、他の炎症性皮膚疾患、皮膚アレルギーおよび粘膜アレルギー、ならびに関連した疾患における炎症および病理学的作用を減少させる有益な治療物質としての機能を果たす可能性がある。
【0125】
乾癬は、かなりの不快感を引き起こし得る、皮膚のT細胞性炎症性障害である。これは、治療法が無く、かつあらゆる年齢の人々に発症する疾患である。乾癬は、ヨーロッパ人および北米人の人口の約2%に発症する。軽度の乾癬に罹患している個体は、しばしば、局所剤を用いて疾患を制御することができるが、世界中の100万人を超える患者は、紫外線療法または全身的免疫抑制療法を必要とする。残念ながら、紫外線放射は不便でリスクがあり、かつ、多くの治療法は毒性があるため、長期の使用には制限がある。さらに、患者は、通常、乾癬を再発し、症例によっては、免疫抑制療法の中止後すぐに、元に戻る。抗IL-21抗体は、最近開発された、CD4+CD45RB導入モデルに基づく乾癬モデルを用いて試験することができる(Davenport et al., Internat. Immunopharmacol., 2:653-672, 2002)。
【0126】
本明細書において説明する他の疾患モデルに加えて、ヒト乾癬病変に由来する炎症組織に対する抗IL-21抗体の活性は、重症複合免疫不全(SCID)マウスモデルを用いてインビボで測定することができる。ヒト細胞が免疫不全マウスに移植された、いくつかのマウスモデルが開発されている(まとめて、異種移植モデルと呼ばれる)。例えば、Cattan AR, Douglas E, Leuk. Res. 18:513-22, 1994、およびFlavell, DJ, Hematological Oncology 14:67-82, 1996を参照されたい。乾癬のインビボ異種移植モデルとして、ヒト乾癬皮膚組織をSCID マウス モデルに移植し、かつ、適切なアンタゴニストを攻撃接種する。さらに、当技術分野における他の乾癬動物モデルも、IL-21アンタゴニストを評価するのに使用することができ、例えば、AGR129マウスモデルにヒト乾癬皮膚移植片を移植し、かつ、適切なアンタゴニストを攻撃接種する(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Boyman, O. et al., J. Exp. Med.オンライン出版番号20031482, 2004を参照されたい)。同様に、ヒト結腸炎、IBD、関節炎、または他の炎症性病変由来の組織または細胞をSCIDモデルにおいて使用して、本明細書において説明する抗IL-21抗体の抗炎症特性を評価することができる。
【0127】
治療の有効性は、当技術分野において周知の方法を用いて、処置集団における抗炎症作用の経時的な増大として測定され、かつ統計学的に評価される。いくつかの例示的な方法には、例えば、乾癬モデルにおいて、表皮の厚さ、真皮上層中の炎症細胞の数、および錯角化のグレードを測定することが含まれるが、それに限定されるわけではない。このような方法は当技術分野において公知であり、かつ本明細書において説明する。例えば、Zeigler, M. et al. Lab Invest 81:1253, 2001; Zollner, T.M. et al. J. Clin. Invest. 109:671, 2002; Yamanaka, N. et al. Microbio.l Immunol. 45:507, 2001; Raychaudhuri, S.P. et al. Br. J. Dermatol. 144:931, 2001; Boehncke, W. H et al. Arch. Dermatol. Res. 291:104, 1999; Boehncke, W. H et al., J. Invest. Dermatol. 116:596, 2001; Nickoloff, B. J. et al. Am.J.Pathol. 146:580, 1995; Boehncke, W.H et al. J.Cutan. Pathol. 24:1, 1997; Sugai, J., M. et al. J. Dermatol. Sci. 17:85, 1998;およびVilladsen L.S. et al. J. Clin. Invest. 112:1571, 2003を参照されたい。また、フローサイトメトリー(またはPCR)のような周知の方法を用いて経時的に炎症をモニターして、試料中に存在する炎症細胞または損傷細胞の数、IBDに関するスコア(体重減少、下痢、直腸出血、結腸の長さ)、CIA RAモデルの足疾患スコアおよび炎症スコアを定量することもできる。
【0128】
全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデス(SLE)は、遍在する自己抗原を対象とする慢性的なIgG抗体(例えば抗dsDNA)産生を特徴とする、免疫複合体に関連した障害である。SLEの作用は、特定の器官に限局されるのではなく、全身性である。多数の染色体座位がこの疾患に関係付けられており、かつ、抗dsDNA抗体および糸球体腎炎など、疾患の様々な局面をもたらしている可能性がある。CD4+T細胞は、SLEのマウスモデルにおいて活動的な役割を果たすことが示されている(Horwitz, Lupus 10:319-320, 2001; YellinおよびThienel, Curr. Rheumatol. Rep., 2:24-37, 2000)。CD8+T細胞の役割は、明瞭に定義されていないが、狼瘡患者において「サプレッサー」CD8+T細胞機能が障害されていることを示唆する証拠がある(Filaci et al., J. Immunol., 166:6452-6457, 2001; Sakane et al, J. Immunol., 137:3809-3813, 1986)。
【0129】
IL-21は、B細胞に直接的に作用することによって抗体応答を調節することが示されている(Mehta et al., J. Immunol., 170:4111-4118, 2003; Ozaki et al., Science, 298:1630-1634, 2002; Suto et al., Blood, 100:4565-4573, 2002)。例えば、Ozakiら(J. Immunol. 173:5361, 2004)は、SLEモデルであるBXSB-Yaaマウスにおいて、血清IL-21レベルが上昇していることを実証した。さらに、IL-21はCD8+T細胞の活性を増強するため、抗IL-21抗体を投与することにより、T細胞サプレッサー機能が損なわれている狼瘡患者において、より強いT細胞サプレッサー機能が提供されると考えられる。
【0130】
抗IL-21抗体は、IFNγ、NOVANTRONE(登録商標)、ENBREL(登録商標)、REMICADE(登録商標)、LEUKINE(登録商標)、およびIL-2などの免疫調節物質を含む、自己免疫において既に使用されている他の作用物質と組み合わせて投与することができる。最適用量レベルの確立および抗IL-21抗体のスケジュール決定は、抗IL-21抗体の薬物動態および薬力学の研究、動物モデルにおける有効量の決定、ならびに抗IL-21抗体の毒性評価を含む、様々な手段によって実施される。次いで、霊長類および臨床試験において実施される直接的な薬物動態学的測定を用いて、患者において生物学的応答を実現するのに十分な大きさおよび持続期間の血漿中抗IL-21抗体レベルを実現する、患者における理論的投与量を予測することができる。
【0131】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに例示される。
【実施例】
【0132】
実施例1
IL-21タンパク質の調製
IL-21タンパク質を、その全体が本明細書に組み入れられる米国特許出願第2006-0134754号およびWO 04/055168において説明されているようにして作製した。手短に言えば、IL-21ヌクレオチド配列を最適化し、かつ、ATCCアクセッション番号PTA-4853として寄託されている大腸菌発現ベクター中に挿入した。この発現ベクターを、大腸菌株W3110(ATCCアクセッション番号27325中に導入した。
【0133】
振とうフラスコ培養により、適切な培地中でIL-21を発現する大腸菌株を適切な培地中で増殖させることによって宿主細胞を発酵させた。フルクトース、グルコース、ガラクトース、ラクトース、およびグリセロールなどの炭水化物を添加してよい。イソプロピルチオガラクトピラノシド(IPTG)を、濃度0.1mM〜2.0mMまで培養物に添加してよい。
【0134】
発酵後、これらの細胞を遠心分離によって回収し、ホモジナイゼーション緩衝液中に再懸濁し、かつホモジナイズする。ホモジネートを採取した後、グアニジンを含む溶液にこれを再懸濁し、かつ、可溶性IL-21を含む上清をデカントし、確保した。可溶性画分中のIL-21の濃度を逆相HPLCによって決定した。還元剤を含むグアニジン溶液中で封入体を可溶化および変性させた後、次いで、制御された復元段階で、還元されたIL-21を酸化した。この段階は、塩酸アルギニン、塩、およびオキシドシャッフリング系を含むリフォールディング緩衝液中での希釈を含んだ。
【0135】
IL-21タンパク質の精製は、疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いたIL-21の精製を含んでよい。IL-21は、高速陽イオン交換クロマトグラフィーによってさらに精製することができる。IL-21精製のための方法は、タンパク質を濃縮する段階およびタンパク質のバッファー交換を実施する段階を含んでよい。この段階は、高速陽イオン交換カラム溶出液を濃縮し、かつ、それを調合緩衝液に交換するように設計されている。最終のカラム溶出液プールを濃縮して、IL-21の濃度を高める。残存する不純物および汚染物質を除去するためにIL-21をさらに精製することが望ましい場合がある。例えば、陰イオン交換カラムを用いて、エンドトキシンレベルを低下させることができる。
【0136】
実施例2
IL-21受容体タンパク質の調製
IL-21受容体(zalpha11またはIL-21rとも呼ばれる)ヘテロ二量体タンパク質は、その全体が本明細書に組み入れられる米国特許出願第2002-0137677号に記載されているようにして作製することができる。手短に言えば、分泌性のヒトhzalpha11/hIL2Rγヘテロ二量体を発現するベクターを構築する。この構築物では、hzalpha11の細胞外ドメインをIgG γ1のCH1ドメインに融合する。CH1ドメインを哺乳動物の発現ベクター中にクローニングする。ヒトκ軽鎖のCL1ドメインを哺乳動物発現ベクターにクローニングする。
【0137】
CH1ドメインに融合されたヒトzalpha11を有する構築物を作製し、かつ、ベクターを配列決定して、融合が正確であることを確認する。CL1に融合されたhIL2Rγを有する単独の構築物を構築することもできる。結果として生じるベクターを配列決定して、ヒトIL-2Rγ/CL1融合が正確であることを確認する。
【0138】
ヒトzalpha11(IL-21r)およびヒトIL-2Rγの受容体融合物を、同時発現させる。当業者に公知の方法によって、各発現ベクターを哺乳動物宿主細胞中に同時トランスフェクトする。トランスフェクトされた細胞をメトトレキサート(MTX)中で10日間、およびG418(Gibco/BRL)中で10日間、選択する。結果として生じるトランスフェクタントのプールを、MTXおよびG418中で10日間、再び選択する。
【0139】
結果として生じる、二重に選択した細胞のプールを用いて、タンパク質を得る。このプールを含むFactories(Nunc, Denmark)を用いて、馴化培地を作製する。この無血清馴化培地は、プロテインAカラムを通過させ、画分中に溶出させる。最高濃度を有することが見出された画分を集め、かつPBSに対して透析する(カットオフ分子量10kD)。最後に、透析した材料をアミノ酸解析(AAA)にかける。精製した可溶性ヒトzalpha11受容体/IL-2Rγ受容体は、BaF3増殖アッセイ法において、ヒトzalpha11リガンドの結合に際して競合する能力を評価するのに使用することができる。
【0140】
B.カルボキシル末端にGluGluタグ(Grussenmeyer et al., Proc. Natl. Acad. Sci.USA 82:7952-4, 198))を有するFc9(ヒトγ1のFc領域(Kabatの番号付け221-447; Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Dept. Health and Human Serv., Bethesa, MD, 1991))に融合されたヒトzalpha11の細胞外ドメインを、オーバーラップPCRによって作製した。酵母での組換えによって、pZMP31 (米国特許出願第2003/023414号に記載されている。サイトメガロウイルスエンハンサーおよび骨髄増殖性肉腫ウイルスプロモーターを有するハイブリッドベクター)にcDNAを挿入した。ヒトIL2受容体に共通のγ鎖の細胞外ドメインを、Fc9のカルボキシル末端に6XHisタグを有するFc9に融合させた。zalpha11 Fc9CEEに関して説明したのと同じ方法を用いて、酵母組換えにより、この構築物をpZMP21z中に挿入した。結果として生じる構築物を配列決定して、挿入が正確であることを確認した。両方のプラスミドを、無血清に順応させたCHO細胞懸濁液にエレクトロポレーションによってトランスフェクトし、かつ、ヒポキサンチンおよびチミジンを含まず、200ng/mLゼオマイシンを添加した無タンパク質PFCHO培地(BioWhittaker)中で選択した。次いで、これらの細胞を、1uMメトトレキサートおよび200ng/mLゼオマイシンの両方に細胞が耐性になるまで濃度を漸増させてメトトレキサートを加えた同じ培地中で選択した。EEおよびhisタグの両方の存在に関するウェスタンブロット解析により、これらの細胞を、ヘテロ二量体IL21受容体の産生に関して試験した。
【0141】
zcytor26f2の設計(ヒトIL2受容体に共通のγ鎖の細胞外ドメインを、6XHisタグを有するFc9に融合させた)は、3種類のタグ(GluGlu、His、およびFc)が精製のために利用できるようにし、このうち2種類が、2種のホモ二量体混在物からヘテロ二量体を最も上手く区別するのに利用される。Fcドメインを含む全分子(ホモ二量体混在物および標的のヘテロ二量体)を捕捉し、かつ、宿主細胞の構成要素および関連する培地産生物から精製した。全種類を含むプールを濃縮し、かつ、凝集体を除去するために適切なサイズ排除カラム(Superdex 200)に注入した。3種すべて(2種のホモ二量体および1種のヘテロ二量体)を含むSECプールを、識別力の高い負荷条件および溶出条件下でNi対イオンを使用する、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)に供した。IMAC溶出プールは、高純度のヘテロ二量体を含み、残存するホモ二量体の混入はわずかであった。残存する任意の凝集生成物を同様に除去するサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200)を用いて、IMACプール緩衝液を調合緩衝液に交換した。抗体の中和活性を試験する場合、このIL-21ヘテロ二量体タンパク質を比較測定器として使用した。
【0142】
実施例3
IL-21モノクローナル抗体の調製
ラットモノクローナル抗体は、雌のスプラーグドーリーラット(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)4匹を精製組換えIL-21タンパク質で免疫化することによって調製する。これらのラットにそれぞれ、完全フロイントアジュバント(Pierce, Rockford, IL)中の精製組換えタンパク質25μgを最初に腹腔内(IP)注射し、続いて、不完全フロイントアジュバント中の精製組換えタンパク質10μgを2週間毎に腹腔内注射して追加免疫を行う。2回目の追加免疫注射の実施後7日目に、動物から採血し、血清を採取する。
【0143】
IL-21特異的ラット血清試料を、1ug/mlの精製組換えIL-21受容体タンパク質を特異的抗体標的として使用するELISAによって特徴付けする。ELISAは、IL-21抗原を調製する段階、96ウェルマイクロタイタープレートをその抗原でコーティングする段階、関心対象のラット血清をウェルに添加する段階、および、ラット血清中の抗体が抗原に結合するのを可能にする一定期間インキュベートする段階を含む。酵素基質のような検出可能な化合物(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)に結合された検出可能な化合物に結合された(ラット血清内に含まれる関心対象の抗体を認識する)検出用二次抗体を、これらのウェルに添加する。当業者は、検出されるシグナルを増大させるために改良することができるパラメーター、ならびに当技術分野において公知であるELISAの他の変形法に関して精通していると思われる。ELISAに関するさらなる考察については、例えば、Ausubel et al.編、1994, Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、John Wiley & Sons, Inc., New York、11.2.1を参照されたい。
【0144】
脾細胞を1匹の高力価ラットから採取し、かつ、単一の融合手順でPEG1500を用いて、SP2/0(マウス)骨髄腫細胞と融合させる(脾細胞と骨髄腫細胞の融合比4:1、「Antibodies: A Laboratory Manual」、E. HarlowおよびD. Lane, Cold Spring Harbor Press)。融合後9日間増殖させた後、特異的な抗体産生ハイブリドーマのプールを、特異的抗体標的として500ng/mlの組換えIL-21タンパク質を使用するELISAによって同定する。陽性のハイブリドーマプールを、IL-21受容体配列を発現するBaF3細胞に対する精製組換えIL-21タンパク質の細胞増殖活性を妨害する能力に関してさらに解析する(「中和アッセイ法」)。
【0145】
「中和アッセイ法」によって陽性の結果を生じるハイブリドーマプールを、限界希釈によって少なくとも2回クローニングする。
【0146】
クローンによって産生されるモノクローナル抗体を、ビニング(すなわち、各抗体が、他の任意の結合の結合を阻害し得るかを決定すること)、相対的親和性、および中和を含むいくつかの方法で特徴付ける。組織培養培地から精製されるモノクローナル抗体を、受容体配列を発現するBaf3細胞に対する精製組換えIL-21の細胞増殖活性を妨害する能力に関して特徴付ける(「中和アッセイ法」)。「中和性」モノクローナル抗体は、このようにして同定する。
【0147】
試料をハイブリドーマプールから採取し、かつ、中和アッセイ法および直接滴定ELISAの両方を用いて分析した。このアッセイ法では、どのクローンが最も高いOD測定値を維持し得るかを調べるために、4倍段階希釈物を用いて、試料を滴定した。中和アッセイ法および滴定アッセイ法の両方の結果を用いて、最初の大元の各ウェルから特定のクローンを、先に進めるために選択した。もう1度中和スクリーニングを実施して、これらの試料すべてを同じアッセイ法で試験し、かつ、この時点で、細胞株の数を上位4つの精選物に絞りこんだ。これらをさらにもう1回のクローニングに供して、培養物の均質性を徹底し、かつ、直接ELISAによってスクリーニングした。もう1回、滴定アッセイ法を実施した後、2種の最終IL-21クローンを選択し、268.5.1.11.42.1.4.3.9(ラット抗マウスIL-21、ATCCアクセッション番号PTA-10394)および272.21.1.3.4.2(ラット抗ヒトIL-21、ATCCアクセッション番号PTA-10395)と呼んだ。これらのハイブリドーマクローンによって産生されるモノクローナル抗体は、2mM L-グルタミン、100μg/mLペニシリン、および100μg/mL硫酸ストレプトマイシン、および10% Fetal Clone I Serum(Hyclone Laboratories)を含む90%イスコフ改変ダルベッコ培地からなる増殖培地で培養することができる。これらのクローンは、2×105細胞/mlで培養を開始し、かつ、37℃、5%〜6%CO、1×105細胞/ml〜5×105細胞/mlの間で維持することによって、増殖させることができる。その後の移動の際に、細胞を無血清条件に順応させることができる。凍結した細胞を、90%血清、10%DMSO中で保存し、かつ、液体窒素冷凍器の気相中で保存する。
【0148】
実施例4
モノクローナル抗体の血清スクリーニング
抗IL-21抗体の活性は、細胞ベースの力価バイオアッセイ法を用いて測定する。このバイオアッセイ法は、IL-21R cDNAを用いた安定なトランスフェクションによってIL-21受容体(IL-21R)を発現するように操作されたBaF3受容体細胞株を使用する。IL-21R/BaF3をトランスフェクトされた細胞は、その増殖をrIL-21またはIL-3に著しく依存しており、これらの不在下では、増殖することができず、24時間以内にアポトーシスを受ける。細胞ベースのバイオアッセイ法では、IL-21R/BaF3をトランスフェクトされた細胞を、様々な濃度の抗IL-21抗体含有血清と共にインキュベートし、かつ、その後の細胞増殖を測定する。
【0149】
実施例5
抗体の特徴付け
エピトープビニング
Biacore1000(商標)システム(Biacore, Uppsalla Sweden)を用いてエピトープビニング研究を実施する。方法は、方法定義言語(Method Definition Language)(MDL)を用いてプログラムし、かつ、Biacore Control Software、1.2バージョンを用いて実行する。ポリクローナルヤギ抗マウスIgG Fc抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)を、Biacore CM5センサーチップに共有結合的に固定化し、かつ、試験系列のモノクローナル一次抗体をそのチップに結合(捕捉)するのに使用する。次いで、ポリクローナルIgG Fc断片(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)を用いて、チップ上の空いているFc結合部位をブロックする。続いて、IL-21を注入し、捕捉されたモノクローナル一次抗体に特異的に結合させる。Biacore機器は、センサーチップ表面に結合されたタンパク質の質量を測定し、したがって、一次抗体およびIL-21抗原の両方の結合を各サイクルに関して確認する。一次抗体および抗原がチップに結合した後、試験系列のモノクローナル抗体を二次抗体として注入し、予め結合された抗原に結合させる。モノクローナル二次抗体がモノクローナル一次抗体と同時にIL-21抗原に結合できる場合、チップ表面での質量または結合の増加が検出される。しかしながら、モノクローナル二次抗体がモノクローナル一次抗体と同時にIL-21抗原に結合できない場合、付加的な質量も結合も検出されない。それ自体に対して試験された各モノクローナル抗体を陰性対照として使用して、バックグラウンド(結合無し)シグナルのレベルを確かめる。BioEvaluation 3.2 RCIソフトウェアを用いてデータをまとめ、次いで、データ処理のためにExcel(商標)にロードする。
【0150】
ウェスタンブロット法
クローン由来のモノクローナル中和抗体が、変性したIL-21および還元/変性されたIL-21を2種の供給源から検出する能力を、ウェスタンブロット形式によって評価する。ウェスタンブロット形式においてIL-21を検出することが公知であるウサギポリクローナル抗体を陽性対照として使用する。
【0151】
IL-21タンパク質を、分子量標準物質(SeeBlue; Invitrogen)と共に、非還元性試料緩衝液または還元性試料緩衝液(Invitrogen)のいずれかに溶かした4%〜12%NuPAGE Bis-Trisゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)上に添加し、かつ、電気泳動を実施する。電気泳動後、タンパク質をゲルから転写し、ニトロセルロースブロットを一晩ブロックし、かつ、各抗体に曝露させる。次いで、これらのブロットを、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合させた二次抗体でプローブする。二次抗体は、モノクローナル抗体に対してはヒツジ抗マウスIgG-HRP(Amersham:Piscataway, NJ)であり、ポリクローナル抗体に対してはロバ抗ウサギIg-HRP(Amersham)である。結合された抗体を、化学発光試薬(Lumi-Light Plus Reagent:Roche, Mannheim, Germany)を用いて検出し、かつ、ブロットの画像をLumi-Imager(Mannheim-Boehringer)で記録した。
【0152】
実施例6
DTHマウスモデル
DTH応答は、CD4+T細胞によって開始され、かつ、T細胞、好中球、およびマクロファージによって媒介される古典的な免疫応答である。DTH応答は、CD4+T細胞によって媒介される応答の好適な指標である。2種類のアジュバント、すなわちRIBIまたはCFAのいずれかに溶かしたニワトリ卵白アルブミン(OVA)を皮下投与して、マウスを免疫化する。この段階は、感作期(0日目〜6日目)と呼ぶ。7日後に耳測定値を測定する。次いで、マウスの耳に対照のPBS(左耳)またはOVA(右耳)を注射する。この段階は、攻撃接種期(7日目〜8日目)と呼ぶ。OVAに対して生じさせた免疫応答により、耳に炎症が誘導され、結果として、OVAで処置した耳は24時間で耳の厚さが増すが、PBSで処置した耳では耳の厚みは増えない。これは、カリパスを用いて測定する。
【0153】
総体積200μlのRIBIアジュバント(Corixa, Seattle, WA)中で乳化させたニワトリ卵白アルブミン(OVA)100μgをC57BL/6マウス(n=8/群)の背中に投与して免疫化する。RIBIを入れた1つのバイアルに0.5mg/ml卵白アルブミンを添加し、2分間勢いよくボルテックスして、マウスに注射するのに使用する乳濁液を作る。免疫化後7日目に、マウスの左耳にPBS 10μl(対照)を、右耳に体積10μlのPBS中OVA 10μgを注射する。マウスの耳に注射する前に、すべてのマウスの耳の厚さを測定する(0時点測定値)。攻撃接種後24時間目に、耳の厚さを測定する。耳の厚さの0時点測定値と24時間目の測定値の差を計算し、耳の炎症を示す。0日目〜6日目(感作期)または7日目〜8日目(攻撃接種期)から、PBSまたは様々な濃度の抗IL-21抗体をマウス群に腹腔内注射する。7日目および8日目の注射は、0時点および24時間時点に耳の厚さを測定する2時間前に実施する。24時間の期間の最後に、耳の厚さを測定した後、耳を切断し、かつ組織学的分析のためにホルマリン中に入れる。
【0154】
実施例7
多発性硬化症のマウスモデル
抗IL-21が多発性硬化症に対して任意の作用を有するかを試験するために、抗IL-21抗体が実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を抑制する能力に関して、MSのマウスモデルを試験する。十分に特徴付けられているC57BL/6マウスのミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)35-55ペプチド免疫化モデルを使用する。この実験は、抗IL-21抗体が、DCを介した抗原提示を阻害することによって、またはCD8 T細胞応答を増強することによってEAEの疾患スコアを遅延および/または抑制し得るかを決定するために実施する。このモデルにおいて効率的なCD8 T細胞応答が無いと、EAEが増悪する(Malipiero et. al., Eur. J. Immunol., 27:3151-3160, 1997)。EAEモデルの疾患の発症が用量依存的な様式で遅延することから、抗IL-21抗体の使用がMSにおいて有益であり得ることが示唆される。
【0155】
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、MSのマウスモデルである。このような1つのモデルにおいて、RIBIアジュバント中に乳化させたMOGペプチド(MOG35-55)100μgまたは組換えMOGタンパク質100μgでC57BL/6マウスを免疫化する。RIBIを入れたバイアルに、PBS中0.5mg/mlのMOG35-55調製物2mlを添加し、かつ、勢いよくボルテックスして溶液を乳化させるか、または、1:1の比率のDFA中組換えMOGを調製する。マウスの背中を剪毛し、かつ、マウスの背中にMOG/RIBI 100μgを皮下注射する。免疫化の2日前および免疫後毎日、マウスの体重を測定する。次いで、2日目に、最終濃度が200ng/マウスとなるように百日咳毒素(PT)200μlをマウスに静脈注射する。マウスの臨床スコアを毎日モニターする。0日目〜20日目、または1週3回で3週間、体積200μlのPBS200μl、BSA100μg、抗IL-21抗体10μg〜200μgをマウス群に腹腔内注射する。マウスの体重、臨床スコア、および発病率を評価し、解析のためにプロットする。
【0156】
実施例8
CD4+CD45RBhi(CD25-)結腸炎および乾癬のマウスモデル
CD4+ CD45RBhi T細胞またはCD4+CD25- T細胞を同系のSCIDマウスに移入すると、マウスにおいて結腸炎が生じる。制御性T細胞(CD4+CD25+またはCD4+CD45RBlo)を同時移入すると、この結腸炎が抑制される。CD4+CD25- T細胞をマウスに移入した後、マウスにブドウ球菌腸毒素B(SEB)をさらに注射した場合、マウスは結腸炎だけでなく、乾癬も発症する。細胞移入後0日目〜21日目に抗IL-21抗体を投与し、かつ、結腸炎および乾癬の症状をモニターする。乾癬スコアまたは結腸炎(組織像)が抑制されることから、抗IL-21抗体がこれらの自己免疫疾患を抑制し得ることが示される。
【0157】
脾臓および鼠径リンパ節をB10.D2マウスから切り離す。単細胞懸濁液を作製し、計数する。Miltenyi Beadシステムを用いて、ポジティブ選択によってCD25+細胞を選別する。希釈率1:100のCD25-PE(BD Pharmingen)で細胞を染色し、かつ15分間インキュベートする。過剰な抗体を洗い流し、かつ、抗PEビーズ10ul/106細胞と共に20分間、細胞をインキュベートする。細胞をPBSで洗浄し、かつ、LSカラム(Miltenyi Biotech)を通過させる。カラムを通過する細胞(CD25-)をさらなる解析のために確保する。CD4濃縮カクテル(Stem Cell technologies)をこれらのCD25-細胞に添加し(1:100)、かつ、15分間インキュベートする。細胞をPBSで洗浄する。抗ビオチンテトラマーの1:10希釈物をこれらの細胞に15分間添加し、続いて、磁性コロイド(60ul/106細胞)を15分間添加する(すべてStem Cell Technologies社製)。細胞をネガティブ選択カラムに通す(0.5秒、Stem cell Technologies)。通過する細胞は、CD4+CD25-細胞である。フローサイトメトリーを用いて純度を解析する。0.4×106個の細胞をナイーブなCB-17 SCIDマウスに総体積200μlで静脈注射する。翌日(1日目)、マウスにSEB 10μgを腹腔内注射する。乾癬および結腸炎の症状を2週間〜5週間追跡する。1日目〜20日目、または1週3回で3週間、PBS、BSA 100μg、またはIL-21 10μg〜200μgをマウス群に腹腔内注射する。
【0158】
抗IL-21抗体で処置したマウスにおいて乾癬および結腸炎の症状が抑制されることから、抗IL-21抗体が乾癬および結腸炎のこのモデルにおいて自己免疫性の症状を抑制し得ることが示される。
【0159】
実施例9
接触過敏症マウスモデル
接触過敏症は、ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)およびオキサゾロンを含む様々な接触アレルゲンを用いて、マウスにおいて誘発することができる。アセトンおよびオリーブ油からなるビヒクル中のアレルゲンでマウスを局所的に感作し、次いで、オリーブ油のみに溶かしたアレルゲンを耳に攻撃接種する。耳の厚さの変化は、アレルゲンに対する免疫応答の尺度である。感作期(0日目〜5日目)に、または攻撃接種期(5日目〜6日目)の間に抗IL-21抗体を投与する。IL-21によって耳の厚さが抑制されることから、接触過敏症を抑制する際のIL-21の役割が示唆される。
【0160】
0日目に、アセトン:オリーブ油(4:1)中0.5% DNFBまたはアセトン:オリーブ油のみをC57B1/6マウスの背中に塗る。5日目に、カリパスを用いてマウスの耳の厚さを測定し、かつ、溶液25μlを耳に滴下することによって、オリーブ油のみ(対照)またはオリーブ油中0.25%DNFBをマウスの耳に攻撃接種する。耳の厚さの変化を6日目に測定し、かつ、5日目と6日目の耳の厚さの差として、炎症を算出する。0日目〜5日目または5日目〜6日目のいずれかに、PBSまたは抗IL-21抗体10μg〜100μgをマウス群に腹腔内注射する。
【0161】
抗IL-21抗体によって耳の厚さが抑制されることから、抗IL-21抗体が、接触過敏症を抑制する際に有用であり得ることが実証される。
【0162】
脾細胞を2匹の高力価Balb/cマウスから採取し、集め、かつ、単一の融合手順でPEG 1450を用いて、P3-X63-Ag8.653マウス骨髄腫細胞と融合させる(脾細胞対骨髄腫細胞の融合比2:1「Antibodies:A Laboratory Manual」、E. HarlowおよびD. Lane、Cold Spring Harbor Press)。融合後9日間増殖させた後、特異的抗体産生ハイブリドーマのプールを、特異的抗体標的としてタグ無しの組換えIL-21タンパク質およびヒトIgG Fcタグ付き組換えIL-21タンパク質を使用する直接および捕捉ELISAによって同定する。陽性のハイブリドーマプールを、IL-21受容体配列を発現するBaF3細胞に対する精製組換えIL-21タンパク質の細胞増殖活性を妨害する能力に関してさらに解析する(「中和アッセイ法」)。組織培養培地から精製されるモノクローナル抗体を、受容体配列を発現するBaf3細胞に対する精製組換えIL-21の細胞増殖活性を妨害する能力に関して特徴付ける(「中和アッセイ法」)。「中和性」モノクローナル抗体は、このようにして同定する。
【0163】
「中和アッセイ法」およびELISA形式によって陽性の結果を生じたハイブリドーマプールを、限界希釈によって少なくとも2回クローニングする。これらのアッセイ法では、4倍段階希釈によって試料を滴定して、どのクローンが最も高いOD測定値を維持するか調べる。中和アッセイ法および滴定アッセイ法の両方の結果を用いて、最初の大元の各ウェルから特定のクローン2種をさらに解析するために選択する。これらをさらにもう1回のクローニングに供して、培養物の均質性を徹底し、かつ、直接ELISAによってスクリーニングする。さらにもう1回の滴定アッセイ法の後、2種の最終的なIL-21クローンを選択する。ハイブリドーマクローンは、2mM L-グルタミン、100μg/mLペニシリン、および100μg/mL硫酸ストレプトマイシン、および10% Fetal Clone I Serum(Hyclone Laboratories)を含む90%イスコフ改変ダルベッコ培地からなる増殖培地で培養する。これらのクローンは、2×105細胞/mlで培養物を播種し、かつ、37℃、5%〜6%CO、1×105細胞/ml〜5×105細胞/mlの間で維持することによって、増殖させる。その後の移動の際に、細胞を無血清条件に順応させる。90%血清、10% DMSO中で細胞を凍結し、かつ、液体窒素冷凍器の気相中で保存する。
【0164】
ハイブリドーマクローンによって産生される精製モノクローナル抗体を、ビニング(すなわち、各抗体が他の任意の結合が結合するのを阻害し得るかを決定すること)、ペプチドを使用するエピトープマッピング、相対的親和性、および中和を含むいくつかの方法で特徴付ける。
【0165】
実施例11
ヒトIL-21に対するモノクローナル抗体の評価において使用するためのペプチド配列の選択
IL-21の様々なドメインに対するマウス抗ヒトIL21抗体の結合の評価を、一部には、ネイティブなヒトIL-21配列に由来する合成ペプチドへのモノクローナル抗体の結合能力を通じて、実施した。サイトカインムテイン研究から予測されるドメイン、および受容体結合または活性化において重要であるIL-21関連サイトカインの構造に焦点を合わせつつ、サイトカインポリペプチドの有意な適用範囲を提供するために、18〜29アミノ酸のペプチドを選択した。このサイズ範囲のペプチドはまた、製造するのに効率的であり、かつ、抗体認識のための限定された2次構造を提供し得るサイズである。ネイティブなペプチド結合中に存在する静電気的電荷をより良く再現するために、アミド化カルボキシル末端を有するペプチド1、ペプチド3、およびペプチド4を合成した。
【0166】
ペプチド1
IL-21(SEQ ID NO:6)の隣接したアミノ酸配列と共に、シグナルペプチド配列の哺乳動物プロセッシング後のヒトIL-21のN末端を1つのペプチドに対して選択した。ヒトIL-21の哺乳動物発現およびサイトカインのN末端配列決定により、シグナルペプチドの切断後、結果として生じるN末端アミノ酸がグルタミン-30のピログルタミン酸誘導体であることが以前に実証されていた。この誘導体を、ペプチドのN末端アミノ酸のために、かつ、ヒトIL-21のアミノ末端に存在する後続の20アミノ酸と共に、選択した。このペプチドを用いた解析のために必要な担体タンパク質または固相マトリックスにペプチドを効率的かつ特異的に結合させるために、付加的なシステイン残基をペプチドのカルボキシル末端に付加した。完全なペプチド配列は、以下である。

【0167】
ペプチド2
第2のペプチドは、親水性の特徴、プロリン残基の存在(予測される非らせん状部分)、およびIL-21配列中の予測されるAヘリックス領域およびBヘリックス領域の間の位置を理由として選択した。このペプチドのカルボキシ末端は、ヒトIL-21ポリペプチド配列中にシステイン残基が存在するため、選択した。ペプチド配列は、以下である。

【0168】
ペプチド3
このペプチド配列は、IL-21構造の親水性Cヘリックスのかなりの部分を含む予測される位置を理由として選択した。この非常に親水性の高い領域は、リガンド-受容体相互作用において重要であることが予測され、かつ、ペプチド全長もまた、上記のように適切な場合に効率的な結合を可能にするネイティブなシステイン残基(Cys-122)を含めることを可能にするように選択した。ペプチド配列は、以下である。

【0169】
ペプチド4
このペプチドは、サイトカインのカルボキシル末端の近くに位置するため、かつ、IL-21ムテインを用いた研究により、このペプチド領域が、リガンド-受容体活性化にとって重要であるが、リガンド結合に重要ではないことが実証されたため、選択した。このペプチドの配列内に含まれるGln-145および/またはIle-148の変異は、ヒトIL-21受容体活性化に影響を及ぼすことが示されている。29アミノ酸のペプチドは、上記のようにペプチドの化学結合における使用を可能にするためにネイティブなCys-125で開始し、かつ、Ser-153で終わった。このセリンは、マウスIL-21中の最終アミノ酸であり、したがって、ペプチド配列アミノ末端のこの残基は、リガンド活性にとって重要であるヒトIL-21配列のエレメントを含むと予測される。ペプチド配列は、以下である。

【0170】
実施例12
IL-21中和を検出するためのリン酸化STAT3アッセイ法
以前に誘導されたBaf3/ヒトIL21受容体(hIL-21R)トランスフェクタントを使用した(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,307,024号および同第6,686,178号を参照されたい)。RPMI、1×グルタマックス(Glutamax)、10%ウシ胎児血清、50uM β-メルカプトエタノール、200ug/mL ゼオシン(Zeocin)、1mg/mL G418(すべてInvitrogen Corporation(Carlsbad, CA)社製)からなるBaf3バイオアッセイ法用培地中で細胞を3回洗浄した。3回目の洗浄の後、標準的な方法(血球計数器)を用いて細胞を計数し、かつ、バイオアッセイ法用培地中に1mL当たり6×105細胞の濃度で再懸濁した。次いで、ウェル当たり細胞30,000個で、96ウェルの丸底組織培養プレートに細胞を播種した。次いで、このプレートを37℃の組織培養インキュベーターに移し、一方、他のアッセイ用プレートを準備した。
【0171】
次いで、試料用プレートを、2.0ng/mLヒトIL-21 30uLおよび以下のうち1種30uLを用いて準備した:希釈したマウス血清(最終濃度1:10、1:50、もしくは1:100)、培地、抗IL-21中和抗体(様々なロットおよび濃度)、可溶性hIL-21R(実施例2)、または無関係な対照。次いで、このプレートを37℃のインキュベーターに移した。30分〜40分後、細胞プレートおよび試料プレートの両方をインキュベーターから取り出し、かつ、試料プレート中の各ウェルの50uLを細胞プレートに移し、混合した。次いで、これらのプレートを37℃インキュベーターに厳密に8分間戻した。この時点で、プレートを氷上に置き、かつ、氷冷BioPlex Cell Wash Buffer(BioRad Laboratories, Hercules, CA)150 uLを添加することによって反応を停止させた。このプレートを、1500RPMおよび4℃で5分間、遠心分離した。遠心分離後、上清を流しに廃棄し、かつ、Factor1、Factor2、およびPMSFを含むBioPlex Cell Lysis Buffer(すべてBioRad社製)60uL中に細胞を溶解した。溶解した細胞をピペッティングして、塊をばらばらに砕き、次いで、4℃、600 RPMで20分間、振とうした。次いで、このプレートを、3000 RPM、4℃で20分間、再び遠心分離した。遠心分離後、溶解物55uLを取り出し、Phosphoprotein Testing Assay Buffer(BioRad)55uLと混合した。
【0172】
この時点で、フィルタープレートをリンタンパク質洗浄緩衝液(PWB)50uLで前もって湿らせ、吸引し、かつ、リン酸STAT3結合ビーズ(BioRad)50uLを播いた。次いで、これらのビーズを吸引し、かつ、プレートをPWB 75uLで3回洗浄した。最終の吸引後、希釈した溶解物50uLをプレートに移し、次いで、そのプレートに蓋をし、室温で一晩振とうした。翌朝、プレートをPWBで3回洗浄し、次いで、ビオチン化リン酸STAT3検出抗体(BioRad)を室温で20分間添加した。プレートをPWB中でさらに3回洗浄し、次いで、ストレプトアビジン-PEを10分間添加した。最後に、プレートをリンタンパク質再懸濁緩衝液(PRB)で3回洗浄し、これらのビーズをPRB 125uL中に再懸濁した。
【0173】
製造業者(Luminex Inc., Austin, TX)に推奨されているように、標準的なLuminex 100データ収集プロトコールに従うことによって、各ウェル中のリン酸化STAT3総量を測定した。次いで、データを解析し、かつ、培地のみの場合と比較した、リン酸化STAT3の誘導倍率として表現した。
【0174】
様々なIL-21ペプチドで免疫化したマウスに由来する血清(表1を参照されたい)を、IL21によって誘導されるSTAT3リン酸化の中和に関して試験した。37℃で30分間、IL-21を血清の希釈物と予備混合した。次いで、この溶液をBaf3/hIL21R トランスフェクタントに8分間添加した。次いで、反応を停止し、細胞を溶解させ、かつリン酸化STAT3を測定した。リン酸化STAT3の増加率は、対照の「培地のみ」をベースラインとして用いて算出する。より小さな値は、より強力なIL-21中和に相関している。このデータを下記の表2に要約する。
【0175】
手短に言えば、マウス3匹のうち1匹(1976番)をペプチド1で免疫化し、マウス3匹のうち2匹(1979番、1980番)をペプチド2で免疫化すると、IL-21中和抗体を産生した。ペプチド3およびペプチド4で免疫化したマウスは中和抗体を産生しなかった。1:10希釈カラムにおいて認められる中和は、血清の作用により、特異的な抗IL-21活性によらない可能性がある(「無関係な血清」データを参照されたい)。
【0176】
(表1)

【0177】
(表2)培地の場合と比較した、リン酸化STAT3レベルの平均増加率

【0178】
実施例13
直接EIAのアッセイ法の説明
ヒトIL-21ペプチド(実施例11)が抗ヒトIL-21抗体に結合する能力を、「直接」形式のELISAアッセイ法を用いて評価した。このアッセイ法では、96ウェルのポリスチレン製ELISAプレートのウェルを、コーティング緩衝液(0.1M Na2CO3、pH 9.6)中の濃度1μg/mLのヒトIL-21タンパク質をウェル当たり100μL用いて最初にコーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートした後、未結合ペプチドを吸引し、かつ、洗浄緩衝液(0.137M NaCl、0.0022M KCl、0.0067M Na2HPO4、0.0020M KH2PO4、0.05%(v/w)ポリソルベート20、pH 7.2と定義されるPBS-Tween)をウェル当たり300μL用いて、プレートを2回洗浄した。200μL/ウェルのブロッキング緩衝液(PBS-Tween に加えて1%(v/w)ウシ血清アルブミン(BSA))でウェルを1時間ブロッキングし、その後、プレートを洗浄緩衝液で2回洗浄した。5%FBS/IMDM培地中で抗体希釈物を調製し、かつ1ug/mlに調整した。次いで、抗ヒトIL-21ペプチドに結合させるために、各抗体希釈物の二つ組の試料を100μL/ウェルでアッセイプレートに移した。室温で1時間インキュベーションした後、これらのウェルを吸引し、かつ、前述したようにプレートを2回洗浄した。次いで、5%/IMDM培地を用いて1:5000で希釈したFc特異的な西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)を各ウェルに100μL/ウェルで添加し、かつ、プレートを室温で1時間インキュベートした。未結合のHRP結合抗体を除去した後、プレートを5回洗浄し、100μL/ウェルのテトラメチルベンジジン(TMB)(BioFX Laboratories, Owings Mills, MD)を各ウェルに添加し、かつ、プレートを室温で3分間インキュベートした。100μL/ウェルの450nm TMB停止試薬(BioFX Laboratories, Owings Mills, MD)を添加することによって発色を停止し、かつ、ウェルの吸光度の値をMolecular Devices Spectra MAX 340機器によって450nmで読み取った。
【0179】
実施例14
中和抗体の特徴付け
ハイブリドーマ培養物の上清に由来する試料の特徴付けは、ヒトIL-21 Fc融合タンパク質、マウスIL-21 Fc融合タンパク質、Gln145およびIle148に変異を有するヒトIL-21タンパク質(SEQ ID NO:6)、ならびに前述のペプチドを使用する結合アッセイ法を含んだ。IL-21 Fc融合物は、米国特許第6,307,024号および同第6,686,178号において開示されており、Fc融合物を作製するための方法は、米国特許第5,155,027号および同第5,567,584号において開示されており、これらはすべて、参照により本明細書に組み入れられる。IL-21変異タンパク質は、米国特許第6,929,932号および米国特許出願第2005-0244930号において説明されており、これらはすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【0180】
(表3)

【0181】
マウス抗体338.17
この試料は、ペプチド3に結合する能力に基づき、ヒトIL-21タンパク質構造体のCヘリックスの領域中に存在すると予測される部分に結合した。
【0182】
マウス抗体338.24
この試料は、ペプチド3に結合する能力に基づき、ヒトIL-21タンパク質構造体のC-ヘリックス-Cの領域中に存在すると予測される部分に結合した。
【0183】
マウス抗体338.25
この試料は、ネイティブなhIL-21に結合できるが、hIL-21ムテインに結合できないことに基づき、Q145および/またはI148の近くの分子のD-ヘリックス側面(SEQ ID NO:6)に結合した。結合は、IL-21ムテイン中の変異したネイティブなペプチド配列を含むペプチド4に結合できないことに基づき、不連続なエピトープに対するものである可能性があるか、または、エピトープは、ヒトIL-21配列(SEQ ID NO:6)のSer154〜Ser162の存在を必要とし得る。
【0184】
マウス抗体338.29
この試料は、ペプチド1に結合する能力に基づき、ヒトIL-21タンパク質構造体のAヘリックスの領域中に存在すると予測される部分に結合した。C末端に結合されたペプチド1と穏やかに反応するが、結合されていないペプチドに対して非常に強く反応する能力に基づいて、この抗体に対するエピトープが、ペプチド1中に示されるようにヘリックスAの中央のドメインまたはC末端ドメインを含むことが予測されると思われる。
【0185】
ラット抗体272.21.1.3.4.2
C末端に結合されたペプチド1および結合されていないペプチド1の両方と少し反応する能力、hIL-21を中和できるが、溶液からhIL-21-Fcを捕捉できないことに基づき、この抗体は、IL-21のN末端およびAヘリックスの領域中に存在し、かつ、Fc融合タンパク質に連結されているhIL-21の隣接したC末端の近くに空間を必要とすると予測される部分を含む、ヒトIL-21タンパク質構造体上のかなり不連続なエピトープに結合する。
【0186】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL-21の抗原領域に結合する抗IL-21モノクローナル抗体。
【請求項2】
ヒトIL-21の抗原領域がSEQ ID NO:6のアミノ酸残基97〜122に示される、請求項1記載の抗IL-21モノクローナル抗体。
【請求項3】
ヒトIL-21タンパク質活性を中和し、ヒトIL-21-Fcタンパク質に結合し、ヒトIL-21ムテイン-Fcタンパク質に結合し、かつ、マウスIL-21-マウスFcタンパク質に結合する、請求項2記載の抗IL-21モノクローナル抗体。
【請求項4】
ヒトIL-21の抗原領域がSEQ ID NO:6のアミノ酸残基145〜148に示される、請求項1記載の抗IL-21モノクローナル抗体。
【請求項5】
SEQ ID NO:6のアミノ酸残基154〜162に示される抗原領域にも結合する、請求項4記載の抗IL-21モノクローナル抗体。
【請求項6】
ヒトIL-21タンパク質活性を中和し、ヒトIL-21-Fcタンパク質に結合し、ヒトIL-21ムテイン-Fcタンパク質に結合せず、かつ、マウスIL-21-マウスFcタンパク質に結合する、請求項4記載の抗IL-21モノクローナル抗体。
【請求項7】
ヒトIL-21の抗原領域がSEQ ID NO:6のアミノ酸残基30〜50に示される、請求項1記載の抗IL-21モノクローナル抗体。
【請求項8】
ヒトIL-21タンパク質活性を中和し、ヒトIL-21-Fcタンパク質に結合し、ヒトIL-21ムテイン-Fcタンパク質に結合し、かつ、マウスIL-21-マウスFcタンパク質に結合する、請求項7記載の抗IL-21モノクローナル抗体。
【請求項9】
ヒトIL-21の抗原領域がSEQ ID NO:6のアミノ酸残基40〜50に示される、請求項1記載の抗IL-21モノクローナル抗体。
【請求項10】
ヒトIL-21タンパク質活性を中和し、ヒトIL-21-Fcタンパク質に結合し、ヒトIL-21ムテイン-Fcタンパク質に結合し、かつ、マウスIL-21-マウスFcタンパク質に結合する、請求項9記載の抗IL-21モノクローナル抗体。
【請求項11】
ヒトIL-21抗原の結合について、モノクローナル抗体272.21.1.13.4.2(ATCCアクセッション番号PTA-7142)と競合することができるビン(bin)。
【請求項12】
ヒトIL-21抗原の結合について、モノクローナル抗体268.5.1.11.42.1.4.3.9(ATCCアクセッション番号PTA-7143)と競合することができるビン。
【請求項13】
モノクローナル抗体272.21.1.13.4.2(ATCCアクセッション番号PTA-7142)が結合するエピトープに特異的に結合する、請求項11記載のモノクローナル抗体。
【請求項14】
モノクローナル抗体268.5.1.11.42.1.4.3.9(ATCCアクセッション番号PTA-7143)が結合するエピトープに特異的に結合する、請求項11記載のモノクローナル抗体。
【請求項15】
検出可能なマーカーで標識された、請求項1、2、4、7、9、13、または14記載のモノクローナル抗体。
【請求項16】
放射性同位元素、酵素、色素、およびビオチンからなる群より選択される検出可能なマーカーで標識された、請求項1、2、4、7、9、13、または14記載のモノクローナル抗体。
【請求項17】
請求項1、2、4、7、9、13、または14記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞。
【請求項18】
請求項17記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞。
【請求項19】
以下の段階を含む、請求項1、2、4、7、9、13、または14記載のモノクローナル抗体を作製する方法:
(a)該モノクローナル抗体を産生することができるハイブリドーマを提供する段階;および
(b)該ハイブリドーマによる該モノクローナル抗体の産生を提供する条件下で、該ハイブリドーマを培養する段階。
【請求項20】
自己免疫疾患を治療する方法であって、請求項1、2、4、7、9、13、または14記載の抗IL-21モノクローナル抗体の治療的有効量を患者に投与する段階を含む方法。
【請求項21】
自己免疫疾患が、膵炎、I型糖尿病(IDDM)、グレーブス病、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性結腸炎、過敏性腸症候群、多発性硬化症、関節リウマチ、憩室症、全身性エリテマトーデス、乾癬、強直性脊椎炎、強皮症、全身性硬化症、乾癬性関節炎、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病(GVHD)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、IgA腎症、移植片対宿主病、移植拒絶、アトピー性皮膚炎、抗リン脂質症候群、および喘息、ならびに他の自己免疫疾患からなる群より選択される、請求項20記載の方法。

【公開番号】特開2013−81461(P2013−81461A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235520(P2012−235520)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【分割の表示】特願2008−542537(P2008−542537)の分割
【原出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(505222646)ザイモジェネティクス, インコーポレイテッド (72)
【Fターム(参考)】